二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Mythology
- 日時: 2015/08/16 04:44
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。
本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。
投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。
目次
一章『神話戦争』
一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33
二章『慈愛なき崇拝』
一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78
三章『裏に生まれる世界』
一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101
四章『summer vacation 〜夏休〜』
一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148
五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』
一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207
六章『旧・太陽神話』
一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292
七章『続・太陽神話』
一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404
八章『十二神話・召還』
一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424
九章『聖夜の賢愚』
一話『祝祭の前夜』
>>425
二話『双子の門番』
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争』
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲』
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447
第十章『月の下の約束です』
一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508
第十一章『新年』
一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573
十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』
一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610
十三章『友愛「親友だから——」』
一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637
コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』
一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482
デッキ調査室
№1『空城夕陽1』 >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137
人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.20 )
- 日時: 2013/07/06 15:57
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
- プロフ: http://dm.takaratomy.co.jp/card/search/
タクさん
モノクロ的に、スノーフェアリーは自然文明だと一番好きですね。特に《薫風妖精コートニー》が好きでした。
仰る通り、このみの相手の少女はシノビとスノーフェアリーを組み合わせたコントロールにコンボを搭載したデッキです。一応五色ですが、割合は自然が多めですね。そのうちデッキレシピでも載せようかな……
『昇天太陽』がなんなのかは、このデュエルの終わりに明らかになるでしょう。まあ、サンセットが何なのかを考えれば、答えが出て来ないこともないですけど。ちなみにサンセットは普通に英語です。
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.21 )
- 日時: 2013/07/06 16:21
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
- プロフ: http://dm.takaratomy.co.jp/card/search/
ニンジャ・ストライクで召喚された《テンサイ・ジャニット》と《ハンゾウ》はどちらも《ユウナギ》によってマナに送られ、少女のターン。
「召喚、《土隠雲の超人》。効果で、山札から《斬隠蒼頭龍バイケン》《斬隠テンサイ・ジャニット》《不知火グレンマル》の三体を、相手に見せて、うち一体を、手札に、加える」
普通のサーチとは違い、これではこのみからは何をサーチしたのかが分からない。だがこのように揺さぶりをかけながら、心理戦に持ち込むのもシノビの戦術と言えるだろう。
「召喚、二体目、《薫風妖精コートニー》」
少女はさらに、二体目となる《コートニー》を召喚する。さらにさらに、
「攻撃、の代わりに、《魅了妖精チャミリア》の、タップ能力を、発動。デッキから、クリーチャーを、手札に」
またこれでターンを終えるのかと思ったこのみだが、少女はまだ終わらなかった。
「攻撃、《薫風妖精コートニー》で、《誕生の祈》と、相打ち」
「う……っ、《誕生の祈》!」
《コートニー》と《誕生の祈》が互いの攻撃を激しくぶつけ合い、どちらもその余波で破壊された。
「終了、ターンエンド」
そして少女はターンを終える。
(結局、仕掛けたのはこっちのクリーチャー破壊だけか……うーん、でも召喚時能力を持ったクリーチャーって、召喚した時点で役目を果たしてるから、普通は殴り返しとか気にせずに攻撃するものだよね? なんで攻撃してこないんだろ?)
守りが非常に薄いこのみとしてはありがたいことだが、不思議ではある。
だが、何度も言うようにこのみは直感で動くデュエリスト。細かいことは気にせず、自分のターンを謳歌する。
「ま、細かいことは言いや。あたしのターン! 《青銅の鎧》を召喚してマナチャージ! そんでもって進化《大地の猛攻》!」
何度戻されても、何度でも現れる《大地の猛攻》。さらに、
「《爆裂B—BOY》進化、《機神勇者スタートダッシュ・バスター》!」
このみは《機神勇者スタートダッシュ・バスター》を召喚。しかもその効果で、邪魔なクリーチャーをマナ送りにできる。
「《ユウナギ》をマナゾーンに!」
少女のバトルゾーンから《ユウナギ》がマナへと送られる。
「行くよ! まずは《大地の猛攻》で《チャミリア》を攻撃!」
《大地の猛攻》が獲物を振り回し、浮遊する《チャミリア》へと駆ける。が、しかし、
「発動、ニンジャ・ストライク7《光牙王機ゼロカゲ》。召喚して、ブロック」
突如、虚空から巨大なロボットのような機械が飛び出し、《大地の猛攻》の攻撃を止め、そのまま弾き返してしまった。地面に叩きつけられた《大地の猛攻》は静かに消滅し、墓地へと送られる。
「あぅ、《大地の猛攻》が……仕方ないか。《スタートダッシュ・バスター》でW・ブレイク!」
今度はクリーチャーを攻撃せず、《スタートダッシュ・バスター》はシールドを二枚、叩き割る。
割られたシールドの破片が少女の体を激しく切りつける。が、割られた二枚のシールドのうち一枚は、光となって渦巻くように収束し、少女の手元へと戻ってくる。
「……発動、S・トリガー《深緑の魔方陣》。効果で、マナを、一枚シールドに」
残り一枚だった少女のシールドが、《深緑の魔方陣》の効果により二枚となる。ニンジャ・ストライク中心の防御かと思ったが、S・トリガー呪文もないわけではないらしい。
このみターンが終了し、少女のターンが回ってくる。
その瞬間。
(……っ! な、なに……?)
背筋に何かが走る。言いようもない感覚が、このみに襲い掛かる。
(なんだろう、なにか、来る……!)
直感的に、このみはそう判断した。だからと言って、何が変わるわけでもない。
少女はカードを引き、場を確認、手札を確認、相手を確認。
そして、《魅了妖精チャミリア》を、二体の《土隠雲の超人》の上に重ね、さらにその上に一枚のカードを置く。
「発芽、せよ。森を、覆う雪を、突き抜け、大地から、新たな命が、芽吹く時——」
刹那、暴風が吹き荒れる。その発生源は、一枚のカード。
「う……な、なに、雪……?」
暴風と共に舞い散るのは、粉雪。だがその雪も次第に消えていき、やがて花びらが舞う。数多の花弁を従え、春を告げる神が開花する。
「神々よ、調和せよ。進化MV、《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》」
萌芽神話フォレスト・プロセルピナ 自然文明 (6)
進化クリーチャー:メソロギィ/スノーフェアリー/アース・ドラゴン 13000
進化MV—自分のスノーフェアリー一体と自然のクリーチャー二体を重ねた上に置く。
コンセンテス・ディー(このクリーチャーの下にある、このクリーチャーと同じ文明のすべてのクリーチャーのコストの合計を数える。その後、その数字以下の次のCD能力を使う)
CD6—バトルゾーンのクリーチャーを一体、持ち主のマナゾーンに置く。
CD7—このクリーチャーが攻撃する時、または自分の他の自然のクリーチャーを召喚した時、墓地または山札の一番上からカードを一枚、マナゾーンに置く。
CD12—カードの効果で自分のマナゾーンにクリーチャーが置かれた時、そのクリーチャー以下のコストのクリーチャーを一体、マナゾーン
からバトルゾーンに出してもよい。
T・ブレイカー
現れたのは、少女のような姿をしたクリーチャーだ。少女と言っても、子供と大人の中間、年齢だけで言えば、このみと同年齢くらいの姿をした少女。どこか民族的な、白と桃色を基調とした衣服を纏い、背中からは妖精の如く、花弁のような羽が生えている。
だがその裏。妖精の裏に蟠る影には、巨大な龍が潜んでいる。深緑の鱗を持ち、大木のように太い四肢。牙は雪のように白く、鋭く輝いている。背中からは木の枝を繋ぎ合わせたような、翼の骨格のようなものが飛び出している。
その二体の様子は、まるで少女が龍を手懐けているかのようだった。
「うわ、すご……!」
花びらと共に現れた神を見上げるこのみ。彼女にしては珍しく、その圧倒的な威圧感に戦慄していた。
「発動、《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》の効果、コンセンテス・ディー6で、《機神勇者スタートダッシュ・バスター》を、マナゾーンに」
「うそっ!?」
不服そうに声をあげるこのみ。しかし少女はそんなことはお構いなし。
《スタートダッシュ・バスター》を取り囲むように花びらが舞う。かと思えば、地面から無数の木の根が飛び出し、《スタートダッシュ・バスター》を覆い、そのまま地中へと引きずり込んでしまう。
「《スタートダッシュ・バスター》!」
「スタートダッシュ・バスター》は呆気なくマナへと還っていくのだった。
「召喚、《土隠妖精ユウナギ》。発動、《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》の効果、コンセンテス・ディー7で、墓地から、《華憐妖精ミンメイ》を、マナゾーンに」
今度は少女のマナが増える。だが、それだけでは終わらない。
「追加、発動《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》の効果、コンセンテスディー12、マナゾーンから、《華憐妖精ミンメイ》を、召喚」
「えぇ! そんなのアリ!?」
華憐妖精ミンメイ 自然文明 (6)
クリーチャー:スノーフェアリー 2000
自分のマナゾーンにある多色クリーチャーを召喚してもよい。
厄介なシステムクリーチャーを出され、焦るこのみ。しかも少女の場には何気にアタッカーが揃っている。
しかも悪いことは重なり、少女の攻めの手は止まらない。
「召喚、もう一体《土隠妖精ユウナギ》。発動、《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》の効果で、デッキの一番上を、マナゾーンに、置く」
果たしてマナに置かれたのは、《不知火グレンマル》だった。
「発動、《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》の効果で、マナから、《ダイヤモンド・カスケード》を、召喚、マナの《土隠雲の超人》から、進化」
「し、進化まで出せるの!? ていうか、え? ちょっと、待って——」
いくら直感で動くこのみでも、カードの効果を知らないわけではないし、理解できないわけでもない。この後に起こるであろう事態を予測し、思わずストップをかけるが、少女も《プロセルピナ》も止まらない。
「発動、《ダイヤモンド・カスケード》の、効果で、マナゾーンの、スノーフェアリーをすべて、回収。墓地から、スノーフェアリーをすべて、マナへ。追加、発動、《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》の効果で——」
——効果で、マナゾーンに置いたスノフェアリーの数だけ、マナからクリーチャーが呼び出される。
「う、嘘でしょ、これ……」
《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》を筆頭に、《華憐妖精ミンメイ》《薫風妖精コートニー》《土隠妖精ユウナギ》……他にも多数のスノーフェアリーやシノビが並んでいる。
少女が序盤からあまり墓地を肥やしていなかったことと、出て来たクリーチャーのほとんどがこのターンに攻撃できないことが、不幸中の幸いか。
とはいえ、この状況は明らかにピンチだ。
「まずいよ、どうしよう……」
ここでやっと、このみの中に明確な焦燥感が芽生え始めたのだった——
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.22 )
- 日時: 2013/07/06 17:05
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
- プロフ: http://dm.takaratomy.co.jp/card/search/
《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》。名前からも分かるように、これも『神話カード』である。
『神話カード』が持つ固有能力、コンセンテス・ディー。進化元となったクリーチャーのマナの総計によって最大三つの効果を得られる力。その力は互いにシナジーを形成することが多く、《プロセルピナ》はその中でも効果がほぼ自己完結している。
一番目の効果はひとまず置いておくとして、二番目と三番目の効果。
二番目の効果は、《プロセルピナ》が攻撃する時、または他の自然クリーチャーが召喚された時に、墓地かデッキの一番上からマナをチャージできるというもの。
終盤ではあまり意味のないマナチャージだが、《プロセルピナ》のマナチャージはただのマナチャージ以上の意味を持つ。
それが三つ目の効果。カードの効果で自分がマナを溜めた時、それがクリーチャーならそのクリーチャーのコスト以下のクリーチャーをバトルゾーンに出すというもの。
この二つの能力を駆使すれば、墓地からそのままクリーチャーを呼び出すことが可能になる。
たとえば、さっき少女が《土隠妖精ユウナギ》を召喚し、墓地の《華憐妖精ミンメイ》をマナゾーンに置き、そのままマナゾーンから出していたが、つまりはそういうことだ。
マナを経由すると言うだけで、実際は墓地から直接、コストを支払わずにバトルゾーンに出ているようなもの。冥府と樹海を繋ぐ神話、《プロセルピナ》。
これこそが彼女の力だ。
「攻撃、初撃は、《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》で、T・ブレイク」
《プロセルピナ》が諸手を上げると、下部のドラゴンが咆哮する。そして次の瞬間、その衝撃波でこのみのシールドが一気に三枚吹き飛んだ。
「うぁ……!」
割れたシールドの破片が、衝撃波と共にこのみに襲い掛かる。制服と共に、このみの肌が切り裂かれた。
「いったー……ていうか制服! ズタボロだよ……どうしよう、これ。おねーちゃんになんて言えば——」
「攻撃、二撃目、《薫風妖精コートニー》で、シールドを、ブレイク」
エプロンドレスの裾をつまんで弱った顔をするこのみに、容赦なく二撃目が繰り出される。
「うっ……!」
またシールドの破片がこのみを切り裂く。鋭い痛みが何度も体を走り、目尻に涙が溜まる。
「……? これって——」
「攻撃、三撃目、《ダイヤモンド・カスケード》で、シールドを、ブレイク」
さらに三撃目。このみの最後のシールドが破壊される。
この時点で、このみの勝利はほとんどない。このみのシールドはゼロ、クリーチャーもゼロ。片や少女の場には《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》を筆頭としたスノーフェアリーとシノビの大軍。シールドも二枚あり、うち一枚は《深緑の魔方陣》で仕込んだ《深緑の魔方陣》だ。あり余るマナを生かして進化クリーチャーを展開しようにも、とどめを刺すには最低でも三回の攻撃が必要。
さらに付け加えるのなら、《華憐妖精ミンメイ》と《薫風妖精コートニー》のコンボもある。
《華憐妖精ミンメイ》はマナから多色クリーチャーを召喚するクリーチャー。そして《薫風妖精コートニー》は、マナのカードを全ての文明として扱うクリーチャー。つまり、《コートニー》の効果でマナのカードは全て多色カードとして扱われるので、《ミンメイ》で召喚できるのだ。
だがこれだけでは、五色のカードとして色も支払わなければいけないため、5マナ以上のクリーチャーしか出せない。生憎、少女のデッキは4マナ以下の軽量クリーチャーが半分以上なので、その効果は半減してしまっている。
そこで出て来るのがシノビ、そしてニンジャ・ストライクだ。
《ミンメイ》の効果は召喚、なのでマナからコストを支払って召喚しなければならない。だがニンジャ・ストライクはコストを支払わずに“召喚”するのだ。
これが少女の得意としているコンボ。《コートニー》でマナのシノビを多色クリーチャーにして、《ミンメイ》の能力でマナからニンジャ・ストライクする。さらに《土隠妖精ユウナギ》がいればターンの終わりにマナへと戻るので、永遠にループさせることができる。ご丁寧にも、少女がマナからバトルゾーンに出したのはニンジャ・ストライクを持たないシノビばかりだ。このみが攻撃しようにも、その攻撃はシールドに届く前に、マナゾーンのシノビによって防がれてしまうだろう。このみもそれは分かっている。
だが、そんな絶望的状況の中でも、このみは勝機を見出していた。
「——S・バック発動!」
このみは今しがた手札に加わったカードを墓地に置き、
「《機神勇者スタートダッシュ・バスター》を捨てて——おいで《デュアルショック・ドラゴン》!」
デュアルショック・ドラゴン 火文明 (6)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン 8000
S・バック—火
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のシールドを1枚選び、自分の墓地に置く。
W・ブレイカー
S・バックでシールドを突き破りながら現れたのは、橙色に燃えるドラゴンだ。
《デュアルショック・ドラゴン》は強力なクリーチャーだが、登場と同時に自分のシールドを破壊するデメリットがある。しかしそのデメリットも、シールドがなければないも同然だ。
「……終了、ターンエンド」
意表を突かれたのか、少し間をおいて少女はターンの終了を告げる。その声は終始一貫して非常に落ち着いていた。
それはそうだろう、如何にこのみがクリーチャーの頭数を増やそうとも、少女は仕込んだS・トリガーや手札、そしてマナからのニンジャス・トライクがある。それを1ターンで突破するのは困難だ。しかも1ターンで決めなければ、次のターンには少女のクリーチャーがこのみにとどめを刺す。
だが、このみは自分が負けるだなんて微塵も思っていない。しかも嬉々とした表情で微笑んでいた。それは状況が理解できないからではない。
——逆転を確信したからだ。
「さーて、ここから逆転だよ! 《無頼勇騎タイガ》召喚!」
このみが召喚したのは、軽量スピードアタッカー獣。だがこれでは、少女を倒すには至らない。勿論このみもそれは分かっている。
そして彼女は、手札から一枚のカードを抜き取った。その行き先は——《デュアルショック・ドラゴン》。
「《デュアルショック・ドラゴン》進化!」
《デュアルショック・ドラゴン》が炎の渦に巻き込まれる。だがその炎は破壊の炎ではない、変化の炎だ。
炎の中で、《デュアルショック・ドラゴン》は進化する。
「爆誕! 《超竜バジュラズテラ》!」
超竜バジュラズテラ 火文明 (9)
進化クリーチャー:アーマード・ドラゴン 12000
進化—自分のドラゴン1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、各プレイヤーはドラゴンではないカードをすべて、自身のマナゾーンから墓地に置く。
T・ブレイカー
「え……?」
少女は呆けたように口を開けている。当然だろう、ここで《バジュラズテラ》が出て来るなど、誰も予想できない。というより、
「ぎ、疑問、なんで……なんで、そのデッキに、《超竜バジュラズテラ》が……?」
当然の疑問だ。《バジュラズテラ》は強力なクリーチャーだが、その効果は自分までもを巻き込む。そのデメリットはデッキにドラゴンを多く投入することで緩和されるが、このみのデッキは軽量ビーストフォークやヒューマノイドが大量に入った速攻デッキ。そもそもドラゴンは《デュアルショック》しかいない、そんなデッキに《バジュラズテラ》を組み込む意味は全くない。
このみは少女に対して答える。さも当然のように。
「え? そんなのきまってるじゃん。かっこいいからだよ」
「……っ!」
あまりに衝撃的なこのみの返答に、少女も二の句を次げず口をぱくぱくさせている。
デッキビルティングに関しては小学生以下と言っても過言ではないこのみだが、しかしその失敗が、結果としては成功を収めることとなった。
なにはともあれ、このみの場に《超竜バジュラズテラ》が召喚された。
刹那、このみと少女のマナがすべて吹き飛ぶ。
「あ、あ……」
「マナがなければ、《深緑の魔方陣》もニンジャ・ストライクもないよね?」
このみ言う通り、《深緑の魔方陣》はマナからシールドを追加するため、マナにカードがなければまったく意味をなさない。
そしてニンジャ・ストライクも、コストを支払って召喚することはないが、ニンジャ・ストライクを発動するためには、指定された数のマナが存在していることが条件となる。つまりニンジャ・ストライクも、突き詰めればマナがなくては使えない。
「よーし、総攻撃だー! 《超竜バジュラズテラ》で残り二枚のシールドをブレイク!」
《バジュラズテラ》の炎が少女の残ったシールドを焼き尽くす。S・トリガーは《深緑の魔方陣》のみで、使うに使えない。防御のほとんどをニンジャ・ストライクに頼った構成なので、少女のデッキにS・トリガー呪文はほとんど入っていないのだ。
少女を守るシールドはなくなった。少女を守るブロッカーもいない。いざという時のために握っていたシノビは、マナがないのでニンジャ・ストライクできない。
そしてこのみの場には、一体のクリーチャーが残っている。つまり、
「《無頼勇騎タイガ》で、とどめだぁー!」
その後、少女は全身から血を流し、慌てて逃げるように去ってしまった。その時このみの手元にやって来たのは《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》のカード。
お気楽で能天気なこのみだが、流石にことの異常性だけは理解している。自分はただ普通にデュエマしてたのではなく、襲われたというのもなんとなく分かった。
少女は言っていた。サンセットという人物はどこかと。それが今回のことに何か関係するのだろうと、彼女の足らない頭で推理した。
このみは少女が去った日の夜に、サンセットが何を意味するかを調べた。サンセットとは、英語にするとsunset、日没を意味する。
日没、沈む太陽、夕日——夕陽。
その名称に、このみは心当たりがあった。
ただの偶然かもしれない。しかし最近、彼女の親友が変だということに、彼女は気付いていた。自分に起こったことと親友の異変をすぐに繋げてしまうのは安直と言えるが、しかしそれも、彼女の直感だった。
彼女は翌日、放課後にその親友を呼び出した。彼は心底不思議そうな顔をしていたが、このみが手に入れたカードを見せると、それだけで表情が一変した。
この時、春永このみも、ゲームの参加者となったのであった——
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.23 )
- 日時: 2013/07/06 17:22
- 名前: タク ◆XaammrlXPk (ID: 39RfU1Y2)
どうも、タクです。何とか、このみは少女に勝利しましたね。少女のデッキはスノーフェアリー中心だから、最新のカード、《妖精左神パールジャム》や《五連妖精ミスティーナ》が出てくるかと思いましたが、それ以上に強力なコンボで攻め入っていきました。が、結局このみの一見下手に構築されたデッキの切り札、《バジュラズテラ》に倒されましたね。《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》も、今後は彼女の強力な切り札となると思います。
となると、次はどんな『神話カード』が現れるか楽しみです!続きを楽しみにしています!
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.24 )
- 日時: 2013/07/06 23:06
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
- プロフ: http://dm.takaratomy.co.jp/card/search/
タクさん
それも考えたのですが、シノビに《薫風妖精コートニー》と《華憐妖精ミンメイ》を合わせたコンボに加えて《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》も盛り込んでいるので、そこにゴッド・ノヴァを入れるスペースはないかな、と思って入れませんでした。《ミスティーナ》はかなりマッチしそうですが、もし出て来たらこのみが負けてしまうので……まあ、話の都合ということで。
《超竜バジュラズテラ》は、あまりに強くし過ぎてしまった少女のコンボをどう破るかと考えた結果です。原案のこのみのデッキには《デュアルショック・ドラゴン》が搭載されていたので、半ば無理やりねじ込みました。
《プロセルピナ》は確かに強力なんですが、実は根本的な弱点があるんですよね……まあ、それはほとんどの『神話カード』にも言えることですが。
ですが次に出て来る敵はその弱点をある方法で克服しています。どんな『神話カード』が出て来るかは、その時をお楽しみに。
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