二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.376 )
日時: 2014/02/03 02:29
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 仰向けのまま、流は靄がかかったようにはっきりしない眼で青い空を見上げる。雲一つない真っ青な空、電柱やら電線やら、民家の屋根がなければ、そこは海。どこまでも広がる大海となって見えただろう。
「……負けた、か」
 意識がはっきりしない。頭の中が真っ白になり、まともな思考ができない。身体は指一本動かせず、あらゆる痛みが迸り、声を出しているのかも分からない。もしかしたら心の中で呟いているだけなのかもしれないという錯覚に囚われる。
 だがそれでも、生きている。心臓の鼓動だけは、はっきりと聞こえてくる。
 五体満足ではないが、しかしこうして生きている以上、ハスターはデュエルが終わってからはなにも仕掛けて来なかったようだ。もうこの場からも立ち去っているのかもしれない。
「負けた……か」
 また、呟く。
 今まで流は、様々なものと戦い、様々なものに勝ち、様々なものに負けてきた。夕陽に勝ったこともある、汐に負けたこともある、零佑に負け、ひまりに勝ったこともあった。
 その中で一番大きな敗北は、汐とのデュエルだろう。あの一件で『神話カード』を失った流は、今でもそのことを、多少なりとも引きずっている。
 そんなことはおくびにも出さないが。逆に言えば、外面に現れるほど、気にしてはいないということだ。
 ふと、海の家の店長に言われた言葉を思い出した。

(リュウ坊。お前って、執着心がないよな)

 執着心がない。確かにその通りかもしれない。

(いや、お前が潔いとか、諦めがいいとか、そういうことを言ってんじゃなくてな。なんつーのか……なにかを失ってから、それを奪い返そう、っていう感じの意気込みが足らない、みたいな?)

 これも、その通りかもしれない。
 汐に負け、《ネプトゥーヌス》を失った。
 だが、それほど悔しくはなかった。《ネプトゥーヌス》を取り返そうという気もなかった。
 相手は中学生だ、高二の自分がそんなことでは、と大人気なく思ったというのもあるが、それだけではない。
 きっと、執着心が欠けていたからだろう。
 後悔がない、勝敗に囚われない。それが、水瀬流という人間だった。
 だった、はずなのだが。
「なんだ……この感じは。凄く、不愉快だ……今すぐ、あいつと、もう一度戦いたいと思っている……」
 勿論、この動かない身体でそんなことはできない。そもそもハスターの姿はもうない。今すぐにリベンジなど、できっこない。
 だが流は、紛れもなくリベンジをしたいと思っている。今まで、そんなことを感じたことはなかったというのに。
「なぜだ。なぜ、こんな——」

「リュウッ!」

 その時。
 後方から、怒声にも似た声が飛ぶ。同時に、地面を駆ける荒々しい足音も。
「おいリュウ! どうした、大丈夫か!?」
「……ナガレ、だ」
 そんなことを言っている場合でもないのだが、流は今にも消え入りそうな声で訂正する。
 とりあえず体を起こそうとしたが、その瞬間、全身に燻っていた激痛が全速力で駆け抜け、崩れ落ちそうになる。咄嗟に片手を着いたが、今度はその腕に痛みが集まり自重を支えられない。そして地面に倒れ、その衝撃でまたも鋭い痛みが駆け回る。
「ぁ、が……!」
「お、おい! 無理すんなよ」
 あまり強力な一撃ではなかったはずだが、ダメージが大きい。起き上がるのは無理そうだ。
「誰にやられた……いや、その前にまず病院か。救急車か? 119番でいいのか?」
「…………」
 流は無言でポケットの中の携帯を滑らせる。それだけでも痛みが走るが、先ほどの激痛よりマシだ。我慢する。
「? なんだ、行きつけの病院か? ここに電話しろって?」
「ああ……」
 短く答え、流はふと思ったことを、漏らすように言葉にする。
「……あいつは……?」
「あいつ?」
「朝比奈……ひまり……」
「ああ、朝比奈か。よく分かんねえけど、春永が見つけって、メールを寄越してたぜ。なんか、シダンチョーとかいう奴と戦ってるみたいだが」
「師団長……ジークフリートか……」
 名前だけなら聞いたことがある、掛け値なしで“ゲーム”参加者なら知らない者はいないレベルの超がいくらでもつく有名人だ。
(春永このみ……ということは、空城夕陽や、光ヶ丘姫乃、御舟汐もいるだろうな……俺も)
 そこに行く、と言いたいが、言えなかった。
 こんな様では、言ったところで邪魔なだけだろう。流も、そのくらいは弁えている。
 だから、ここで祈るしかないのだ。ひまりが、ジークフリートに勝つことを。

 

 ひまりとジークフリートのデュエル。
 ひまりのシールドは二枚。バトルゾーンには《緑神龍バルガザルムス》《黒神龍グールジェネレイド》《竜のフレア・エッグ》。
 ジークフリートのシールドも二枚。バトルゾーンには《紫電左神ヴィタリック》とリンクした《霊騎右神ニルヴァーナ》、《光姫左神ブラッディ・バレンタイン》とリンクした《真滅右神ブラー》、《双天右神クラフト・ヴェルク》とリンクした《イズモ》。
 リンク解除を活用し、打点や殴り返し要員を増やすジークフリートに追い詰められるひまり。そんなひまりに、神の腕が振りかざされる。
「《ヴィタリック&ニルヴァーナ》でWブレイク!」
 ひまりの残る二枚のシールドがまとめて消し飛ばされた。まだジークフリートの場には《イズモ》がいる。このままでは、ダイレクトアタックを決められてしまうが、
「S・トリガー発動! 《黒神龍オドル・ニードル》を二体、バトルゾーンに!」
 収束した光から現れたのは、二体の《オドル・ニードル》。これで、少なくともこのターンは凌げる。
「やっぱ出やがった……一応、片方は潰しておくか。二体神《イズモ》で《オドル・ニードル》に攻撃」
 《クラフト・ヴェルク》の能力でカードを引きつつシールドを増やし、光の矢が《オドル・ニードル》を射抜くと同時に《オドル・ニードル》も弾け飛ぶ。そして四方八方に散って行った無数の棘の一集団が《イズモ》へと降り注いだ。
「《イズモ》を残してもパワーが低いから殴り返されるだけか……《クラフト・ヴェルク》を残す」
 降り注いだ棘から《イズモ》は《クラフト・ヴェルク》を守り、破壊された。
「なんとか耐え切った……私のターン」
 この瞬間、《竜のフレア・エッグ》がカタカタと揺れ始める。
「《フレア・エッグ》の効果発動。ターンの初めに山札の一番上を墓地において、それが進化でないドラゴンならタダで場に出せるよ」
 非進化ドラゴンならどれだけ重くても、どんな文明でも踏み倒せるため、様々な文明のドラゴンが詰め込まれているであろう今のひまりのデッキなら、通常の二、三色程度で組まれた連ドラよりも高い効果が発揮されるだろう。
 そしてひまりのデックトップから墓地へと落ちたカードは、


龍聖大河・L・デストラーデ 光/水文明 (7)
クリーチャー:サイバー・コマンド/アポロニア・ドラゴン 6000
H・ソウル
M・ソウル
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
自分のターン中、このクリーチャーまたは自分の他のクリーチャーをバトルゾーンに出した時、それがそのターンに出す1体目のクリーチャーであれば、次のうちいずれかひとつを選ぶ。
▼自分のシールドの数が相手以上であれば、自分の山札の上から1枚目を見る。そのカードが、バトルゾーンに出したクリーチャーよりコストが小さいクリーチャーであれば、そのカードをバトルゾーンに出してもよい。
▼自分のシールドの数が相手より少ない場合、自分の山札の上から1枚目を裏向きのまま、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに加えてもよい。
W・ブレイカー


 刹那、《エッグ》の殻が弾け飛ぶ
「よしっ、ドラゴンだから《エッグ》を割ってバトルゾーンに! そして《L・デストラーデ》の能力発動! 私のシールドはあなたより少ないから、シールドを追加!」
 1ターンに一度だけ、しかもたった一枚しか追加されないが、それだけでもシールドゼロよりも安心感は段違いだ。
「さらに《インフィニティ・ドラゴン》も召喚!」
「……《インフィニティ》だ?」
 ジークフリートは眉根を寄せる。
 殿堂カードにまで指定されたドラゴンだ、《インフィニティ》は非常に強力な除去耐性を備えている。ひまりの今のデッキでもドラゴンの比率が高いため、十分に効果は発揮するのだが、この場合はそんな生温い意味は持たない。
「《オドル・ニードル》と《インフィニティ》かよ、面倒くせえ……!」
 《黒神龍オドル・ニードル》は、相手の攻撃対象を変更するし、バトルをすれば互いに破壊する、ドラゴンにしては珍しい防御的な能力を持つ。これに《インフィニティ》の除去耐性が加われば、攻撃対象を限定し、バトルをすれば相手は破壊、自身は生き残るという、堅牢なな防御態勢が完成する。
 いつか九頭龍がこれと似たようなコンボで完全に近い防御を構築していたが、この手の守りは相手にすると非常に鬱陶しく、対処が難しい。
 防御の布陣が完成すると、ひまりは一呼吸。そして
「……じゃあ、行くよ!」
 ひまりの掛け声と共に、彼女に付き従う龍たちが、唸りを上げる。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.377 )
日時: 2014/02/04 22:12
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「——『炎上孤軍アーミーズ』」
 栗須は、路上でうつ伏せに倒れている亜実を発見した。
「もしやとは思ったが、やはりいたのか」
 そう、栗須は呟く。
 このエンカウントは偶発的なものだ。栗須は別に亜実のことを探していたわけではない。もしかしたらいるかもしれないと思っていた程度だ。
「この様子を見る限り、負けたのか……隊長クラスに負けたのなら、嘲笑ってやるところだが」
 言って栗須は、道路の裏道、陰になっている奥の路地へと目を向ける。
「……これは、貴様の差し金か?」
 返ってきた答えは、迂遠ではあるが、肯定。
「そうか……ああ、そうだったな。そもそも、この場所で戦争が起きているという情報は、貴様が発信したものだったな。いや、構わんさ。貴様を非難するつもりはない。【神格社界ソサエティ】に属する以上、そうでなくとも“ゲーム”参加者である以上、敗北は弱さと繋がるだけだ。推理するまでもない」
 陰から聞こえてくる笑い声。不愉快だった。その者の有能さは栗須も認めるところだが、しかし一緒にいたい人物ではない。できれば関わり合いにすらなりたくなかった。
「死んではいないようだ。息はある、心臓も恐らく動いている。外傷は酷いがな……言っておくが、僕は助けるつもりなど毛頭ない。貸しを作りたければ、貴様がやれ」
 栗須の対応は冷たい。栗須は大抵の相手にはこんな態度だが、相手も相手だ。温和な態度を取る必要もない。
「ところで、『炎上孤軍アーミーズ』は誰にやられた? ……四天王? 『夢海星辰クトゥルー』? ……ああ、奴か。名前なら知っている。そうか、奴と戦ったのか。ならばこの体たらくも納得できる。擁護するつもりはないがな」
 そして栗須は、踵を返した。陰からは、問いが飛んでくる。
「帰るのさ。軽く見て回ったが、恐らくこの戦争も、もうすぐ終戦だ。ジークフリートも動き出したようだし、これ以上首を突っ込むと無駄な血を流す。無益な戦いほど虚しいものもないだろう」
 その言葉から返ってくるのは、肯定だった。しかし笑い声も込みで。
「……相変わらず、癪に障るな、貴様は。今回の情報提供には感謝するが、それは報酬という形だけで送ったはずだ」
 つまり、心からはまったく感謝の念がないということになる。
 栗須は陰に背を向け、歩き出す。陰から聞こえてくるのは、別れを告げる言葉。そして、再び合い見えることを仄めかす言葉。
「またなにかあれば連絡は入れる……ん? クリスマス? ああ、パーティーか。貴様は参加するのか。僕は……特に決めていない。なにもなければ、出席してもいいかもしれんな」
 最後は【神格社界ソサエティ】らしい与太話となったが、これで本当に、この会話は終わる。
 陰からはまだ気配が残っていた。栗須はそれを無視し、流し目で倒れた亜実を一瞥してから、その場を去った。



 ひまりとジークフリートのデュエル。
 ひまりのシールドは一枚。バトルゾーンには《緑神龍バルガザルムス》《黒神龍グールジェネレイド》《黒神龍オドル・ニードル》《龍聖大河・L・デストラーデ》《インフィニティ・ドラゴン》。
 ジークフリートのシールドは三枚。バトルゾーンには《双天右神クラフト・ヴェルク》《紫電左神ヴィタリック》とリンクした《霊騎右神ニルヴァーナ》《光姫左神ブラッディ・バレンタイン》とリンクした《真滅右神ブラー》。
 クリーチャーを殲滅されて窮地に立たされたひまりだったが、S・トリガーで二体飛び出した《オドル・ニードル》でなんとか持ちこたえ、《インフィニティ》と《オドル・ニードル》のコンボで鉄壁の布陣を構築した。
 防御面はもう心配ない。あとは攻撃するだけだ。
「とりあえず……《グール》で攻撃、Wブレイク!」
「ちっ……《ブラッディ・バレンタイン&ブラー》でブロック!」
 《ブラッディ・バレンタイン》の発生させる結界に阻まれ、《グールジェネレイド》は弾き飛ばされる。その時、《インフィニティ》が咆哮した。
「山札の一番上を墓地に置いて、ドラゴンかファイアー・バードならバトルゾーンに残るよ」
 墓地に置かれたのは《メンデルスゾーン》。呪文なので《グールジェネレイド》は破壊され、墓地へと落ちる。
 しかし《グール》はドラゴンが破壊されれば復活するので、墓地にいても不都合はない。
「だが《ブラー》の能力で、バトルに勝ったから手札を捨てろ」
 《ブラー》はバトルに勝利すれば、相手に手札を捨てさせ、自分はカードを引くことができる。一応、多少なりともアドバンテージは取れた。
「じゃあ次は《オドル・ニードル》で《ヴィタリック&ニルヴァーナ》を攻撃!」
 今度はシールドではなく、ゴッドを攻める。
 《グールジェネレイド》が止められたので、このターンにダイレクトアタックを決めるのは不可能。除去カードを引かれる前に攻め切れればいいが、そう上手くは行かないだろう。ならば先にゴッドを攻撃しておき、反撃の芽をできる限り摘み取っておく。
「くそっ……《ヴィタリック》を残す!」
「どっちでもいいよ。こっちは《インフィニティ》の能力で山札の一番上を墓地へ!」
 こちらも残り少なくなってきた山札を墓地へと落とした。ドラゴンだったので、《オドル・ニードル》は場に残る。
「《バルガザルムス》でシールドブレイク!」
 これでジークフリートのシールドは二枚。またどこかでシールドを追加されるかもしれないが、どうせ《バルガザルムス》ではゴッドを破壊できないのだから、割れる時に割っておいた方がいいだろう。
「くそっ、しゃらくせえ……!」
 《インフィニティ》と《オドル・ニードル》の防御陣形は確かに強力だ。特に、今のジークフリートには効果的だった。
「残りデッキもやばいし、粘られたら終わりだな」
 ジークフリートのデッキ枚数は、残り一桁の枚数しかない。このまま鉄壁の防御コンボで時間を稼がれれば、デッキ切れで負ける。
 そもそも彼のデッキは多量のマナ加速、ド手札補充、シールド追加、墓地肥やしなど、なんらかの方法で山札を削るカードが多い。こうなるのは当然の帰結だろう。
「まあ、だから当然、対策もしてるけどな。つってもこれ、墓地が根こそぎなくなるから嫌いなんだよな……」
 などとぼやきながら、そのカードを手札から抜き取る。
「《サイバー・N・ワールド》を召喚。互いの墓地と手札をすべて山札に戻す」
「っ、そう来たか……!」
 ひまりとジークフリートの手札、墓地はすべて山札へと送還される。そしてこれでもかというくらいシャッフルされ、山札の上から五枚のカードがそれぞれの手元に戻ってくる。
「手札は……まずまずだな。《戦慄のプレリュード》でコストを下げ《爆裂右神ストロークス》を召喚。効果で《オドル・ニードル》を破壊だ」
 しかし《インフィニティ》の能力でドラゴンが落ち、《オドル・ニードル》は生き残る。
「《ヴィタリック》と《ストロークス》をリンク。リンク時能力で再び《オドル・ニードル》を破壊」
 だがまたしてもドラゴンが捲れ、《オドル・ニードル》は生き残った。
「くっそうぜえ……! 《ヴィタリック&ストロークス》で《オドル・ニードル》を攻撃!」
「何度やっても無駄だよ。山札の上を墓地へ」
 やはり捲れるのはドラゴン。《ストロークス》は破壊され、《オドル・ニードル》は生き残る。
「残った《ヴィタリック》も攻撃だ!」
「《インフィニティ》の能力発動!」
 今度はファイアー・バードが墓地へ。《ヴィタリック》も全身に棘が貫通して破壊され、《オドル・ニードル》だけが生き残る。
「やっぱドラゴンの比率が高え……だが、《ヤバスギル・ラップ》や《運命》《メンデルスゾーン》のような呪文もそれなりに搭載されているみてーだし、そのうち当たるだろ。《クラフト・ヴェルク》で《オドル・ニードル》に攻撃!」
 シールドを追加しつつ、《オドル・ニードル》を弓矢で射抜く《クラフト・ヴェルク》。爆散した《オドル・ニードル》の棘が全身に突き刺さる。
「《インフィニティ》の能力で山札の一番上を墓地へ——」
 そうして捲ったカードを見て、ひまりは一瞬動きを止める。
 墓地へ落ちたのは、二枚目の《メンデルスゾーン》。
「あー……遂に破壊されちゃったか」
 ドラゴンでもファイアー・バードでもないため、《オドル・ニードル》は生き残れず、自身の効果で破壊される。
 しかし《ニルヴァーナ》《ストロークス》《ヴィタリック》《クラフト・ヴェルク》の四体を破壊したのだ。上出来だろう。
「やっと消えたか……なら《ブラッディ・バレンタイン&ブラー》で《バルガザルムス》を攻撃!」
 《インフィニティ》の能力で捲れたのは、またしても呪文。《バルガザルムス》も破壊されてしまう。
「さらにバトルで勝利したので、手札を一枚捨てな!」
 そしてジークフリートはカードをドローする。大きくはないが、《サイバー・N・ワールド》では取り難いハンドアドバンテージを広げられた。
「……短い布陣だったなぁ……」
 破壊され、墓地へと落ちた《オドル・ニードル》を見て、ひまりはふと呟いた。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.378 )
日時: 2014/02/06 02:06
名前: 大光 ◆HynV8xBjBc (ID: WXTMozUA)

どうも、大光です。【師団】との戦いも、そろそろ大詰めですかね。

ルシエルを登場させていただき、ありがとうございます。最後の《Zーファイル》によって逆転された時の発狂が特によかったです。

ついに現れた師団長ジークフリート。その補佐をする幼…少女シャルロッテ。そしてやっと姿を見せたひまり先輩。この戦いのラストを予感させるには十分過ぎる面子です。

ジークフリートのデッキはゴッド・ノヴァですが、まだ何かとんでもないものがまだデッキに眠っている気がします。例えば、ジークフリートの『神話カード』ですかね。

ひまりのデッキはまさかのゼロ文明を含めた全色のドラゴンデッキですか。最初は四色くらいかな?と思っていましたら、光の《グロリアス》の出てきたので驚きました。直前に使われた《運命》にも驚かされました。

サンデーで連載されていたマイナーなデュエマの漫画に、デッキのカードが全てドラゴンというものがありましたが、全色ドラゴンデッキも十分とんでもないデッキ構成だと個人的には思います。

このデュエルは本当にどう転ぶかわかりません。次回が楽しみです。
最後に【神格社界】のトップは、すでに登場している人物だったりしますか?深読みのし過ぎでしたらすみません。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.379 )
日時: 2014/02/06 21:09
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

大光さん


 そうですね、とりあえず今回の【師団】との戦いは、ここがピークだと思われます。

 そうでしたか。ルシエルは特に狂ったところの描写に自信がなかったのですが、そう言って頂けると嬉しいです。最後のところだけはちょっとだけ自信を持って書いたので。

 正直、シャルロッテは別に補佐もなにもしてませんけどね。ただ便宜上、そういう役職にある、というだけです。そのうち本編でも軽く触れると思いますが。
 ちなみにシャルロッテは本編でも幼女と表現しようかと思いましたが、作中で幼女幼女と言っていると締まりがなさそうだったので、妥協して幼い少女としています。

 ジークフリートのデッキはゴッド・ノヴァがメインです。これもこれでなかなか物凄い構成になっていますが、その辺は仕様です。
 『神話カード』抜きでもジークフリートは相当な実力ですが、彼の『神話カード』が出た時には……まあ、これはその時までのお楽しみですね。

 ひまりのデッキは、恐らく現実的に考えてほぼ回すのが不可能な、ゼロ文明も含めた五色のドラゴンデッキです。
 《運命》は《ベートーベン》に頼らずとも、《ゴスペル》や《ワーグナー》《スーパースペル・グレートブルー》などの踏み倒し手段があって、ドラゴンの多いデッキならそれなりに効果を発揮しますので、ひまりのデッキに入れてみました。

 そういえばありましたね、そんなの。漫画自体は読んだことはないですが、そのデッキの存在だけなら知っています。
 たぶんですが、それら二つのデッキを比べれば、ひまりのデッキの方が動かないと思います。普通に使えば色事故が多発するようなデッキですからね。

 このデュエルの結果は、予想できる人はできるかもしれませんが……いつもの如く、その時までのお楽しみです。

 【神格社界ソサエティ】のトップですか……一応、存在自体は少しだけ仄めかしているつもりですが、人物自体はまだ未登場です。少なくとも今まで名前が出て来たキャラクターの誰か、ということはありません。
 ……近いうちに登場させる予定ではありますが。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.380 )
日時: 2014/02/08 14:03
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 今にも朽ち果ててしまいそうな、【神聖帝国師団】臨時本部の廃墟。
 その一室で、四人の人間が向かい合っていた。
「これでよーやっとみんな集まったねー。まったく、みんな集合遅いんだから」
「私は最初からいましたけどね」
 真っ先に口を開いたのは、ハスター。それに対し、ニャルラトホテプは自身を弁護するように指摘する。
「…………」
「…………」
 その横でジッと黙っているのは、クトゥルーとクトゥグア。片方はただ無口なだけだが、クトゥグアが黙っているのには理由があった。彼女も口数が多い方ではないのだが、しかし、いまは下手に口を開きたくない事情がある。変に注目されてはならないのだ。
 だが、
「それより……クトゥグアさん? あなたの結果報告を聞いていないのですけれど?」
「……ルーには言った」
 ニャルラトホテプの声は、あからさまにクトゥグアの神経を逆撫でするようなものだった。クトゥグアはそっぽを向いてボソッと言うが、勿論、ニャルラトホテプはそれを聞き逃したりはしない。
「へぇ、そうですか。ルー、クトゥグアさんの勝敗はどうでした?」
「……対戦相手、光ヶ丘姫乃。結果、敗北」
 彼女の問いに、クトゥルーは静かに答えた。淡々と、機械的かつ事務的に。
「ほぅ、へー……そうですかー。負けっちゃったんですね、クトゥグアさん。私なら勝ってたとか、余裕とか、そんなこと言ってませんでしたっけー? ねぇ、クトゥグアさん? 余裕でした? 余裕で負けて来ました?」
「うるさい。そのさん付けもやめて、気持ち悪い」
 出撃する前、夕陽に負けたニャルラトホテプを非難したクトゥグアだったが、今度は逆に非難……というより、痛いところを突かれる立場になってしまった。
「てゆーか、ニャル、またキャラ変えた?」
「あ、分かります? 前の“身体”の、双子の妹さんなんですけど、結構いいですねこの性格。楽しいです。ねえ、クトゥグアさん?」
「黙って」
 ニヤニヤと口元がにやけているニャルラトホテプと、不愉快そうに目線をそらすクトゥグア、黙ったままのクトゥルーに、呆れ顔のハスター。
 こんなコントをしていると、この四人が集まっている理由を忘れそうになるが、勿論忘れてはならない。
「それよりもさ、師団長からの伝言。なんか『太陽一閃サンシャイン』と接触したから、適当な時間に迎えに来いだって」
「……承知」
 ハスターの言葉に反応したのはクトゥルーだけだった。他の二人は……言うまでもないだろう。
 そして四人は、その場に立ち尽くす。
 いつまでも、時が来るまで。



 ひまりとジークフリートのデュエル。
 ひまりのシールドは一枚。バトルゾーンには《龍聖大河・L・デストラーデ》《インフィニティ・ドラゴン》。
 ジークフリートのシールドは三枚。バトルゾーンには《サイバー・N・ワールド》《光姫左神ブラッディ・バレンタイン》とリンクした《真滅右神ブラー》。
 《インフィニティ》と《オドル・ニードル》のコンボでジークフリートの攻撃を止めていたひまりだが、度重なる攻撃で遂に《オドル・ニードル》も破壊されてしまった。
「とりあえず……《コッコ・ルピア》《竜のフレアエッグ》《光神龍セブンス》を召喚。クリーチャーを出したから《L・デストラーデ》の能力でシールドを追加」


光神龍セブンス 光文明 (6)
クリーチャー:アポロニア・ドラゴン 5500
バトルゾーンにある自分のドラゴンはすべて「ブロッカー」を得る。


 これでひまりのドラゴンはすべてブロッカーとなり、ジークフリートの攻撃を止められるようになる。
「攻め難くなってきたか……なんか来ねえもんか……」
 などとぼやくように言いながらカードを引くと、ジークフリートの目つきが鋭くなる。
「……はっ、来たか。《神誕の大地ヘラクレス》を召喚! マナゾーンのゴッドを回収!」
 ジークフリートが呼び出すのは《ヘラクレス》。高い打点とパワーを備えている上、ゴッドのコストを大きく下げるため、かなり厄介だ。
「さらに残ったマナで《パールジャム》召喚、マナを追加! 《ブラッディ・バレンタイン&ブラー》で攻撃! Wブレイク!」
「《L・デストラーデ》でブロック!」
 ゴッドの攻撃からひまりを守るべく盾となった《L・デストラーデ》。同時に《インフィニティ》の雄叫びでデックトップが墓地へと落ちる。


悠久を統べる者 フォーエバー・プリンセス 火/自然文明 (8)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター/エイリアン 8000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
スピードアタッカー
W・ブレイカー
相手がコストを支払わずにクリーチャーをバトルゾーンに出した時、そのクリーチャーを持ち主のマナゾーンに置く。
このクリーチャーがどこからでも自分の墓地に置かれる時、かわりにこのクリーチャーと自分の墓地を山札に加えてシャッフルする。


「あ……」
 墓地へと落ちたのは《フォーエバー・プリンセス》だった。
「《フォーエバー・プリンセス》が墓地に行ったから、私の墓地をすべて山札に戻すよ」
 ジークフリートのデッキもそうだったが、ひまりのデッキもそれなりにデッキの消費が激しい。普通ならデッキが切れる前に攻め切るのだが、もしもの時のための保険として《フォーエバー・プリンセス》が投入されていた。
「デッキ回復か……まあいい。《ブラー》の能力で手札を捨てろ。そんでターンエンド、《ブラッディ・バレンタイン&ブラー》をアンタップ」
 ブロッカーを起こしてターン終了。ひまりのターンが来る。
「私のターンの初めに《フレア・エッグ》の能力発動。山札の一番上を墓地へ」
 正直、ここでなにが来ようがひまりはジークフリートにとどめを刺せるだけの戦力が揃っている。とはいえジークフリートの三枚のシールドは《クラフト・ヴェルク》で仕込んだシールドだ。S・トリガーを埋められている可能性が高い。
 なのでできればここで、相手クリーチャーを除去できるようなカードが来て欲しいと願うひまりだった。そして、墓地へと落ちたのは、
「……! 《龍神ヘヴィ》! 《ヘヴィ》を破壊!」
「《ブラー》を破壊だ」
 ジークフリートはノータイムでブロッカーを残す。
 守りが薄いというのなら、ジークフリートのデッキも守りは薄い。シールド追加が多く、《ブラッディ・バレンタイン》もしぶとく残っているのであまりそのように感じさせないが、これらのカードがなければジークフリートの守りはスカスカになっている。
「カードをドローして……《エコ・アイニー》を召喚! 続けて《無双竜機ボルグレス・バーズ》も召喚! マナゾーンのドラゴンを回収!」
 クリーチャーがやられても、防御を崩されても、素早く立ち直り、攻めの体勢を見せるひまり。
「《L・デストラーデ》で攻撃! Wブレイク!」
「《ブラッディ・バレンタイン》でブロック!」
 バトルに負けた《L・デストラーデ》は破壊されるが、《インフィニティ》の能力で場を離れない。
「《インフィニティ》で《ブラッディ・バレンタイン》を攻撃!」
「なに?」
 ひまりは《インフィニティ》でシールドをブレイクせず、《ブラッディ・バレンタイン》を攻撃する。パワーは同じなので相打ちだが、自身の能力で《インフィニティ》は生き残った。
「シールドではなくブロッカーを破壊するかよ……本格的に攻めて来てるみてえだな」
 S・トリガーを警戒してこのターンには決めず、次のターンに繰り越す。このデュエル中では何度もそのようにしているが、結局は攻め切れていない。今回のそのパターンにはまってしまいそうだが、逆に言えばジークフリートはそのパターンを作り出さなければならない。
「こっちに守らせて攻撃させないってか。攻撃は最大の防御とは、よく言ったものだぜ」
 ひまりの策に乗せられるのは癪だが、しかし今は防御を考えなければいけないのも事実。実に面白くないと、ジークフリートは舌打ちする。
「俺のターン。《真滅右神ジーザス・メリーチェーン》を召喚。《パールジャム》とG・リンク。マナを追加」
 《ヘラクレス》の能力でマナが減っているので、それを《パールジャム》で補給する。
 お陰でまだマナに余裕はあるが、しかし手札のゴッドではひまりの従えるドラゴンの軍勢に対処することはできない。
「……これに賭けるか」
 と言って、ジークフリートは手札のカードを一枚抜き取った。
「呪文《プロジェクト・ゴッド》」
 山札の上から五枚を墓地へ送り、その中からバトルゾーンのゴッドとリンクできるゴッドがあればタダでバトルゾーンに出し、リンクさせることができる呪文。
 普通のゴッドに使用してもヒット率は芳しくないが、しかしリンク位置のみが指定され、リンク先がフリーなゴッド・ノヴァならばその限りではない。この呪文の能力を、最大限に活用できるだろう。
 そして、五枚目に墓地へと落ちたカードが、輝いた。
「! こいつだ……! さあ、現れろ!」
 それに目を付けたジークフリートは、間髪入れずにそのカードを墓地から釣り上げた。
 そして、神聖にして新星なる、神々しき人類が降臨する。

「《神人類 ヨミ》!」


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