二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.536 )
日時: 2014/03/19 06:54
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

絶超(ムッチャ)合金(アルケミー) ロビンフッド 水文明 (7)
エグザイル・クリーチャー:アウトレイジMAX 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、またはこのクリーチャーが攻撃する時、カードを1枚引くか、バトルゾーンにあるクリーチャーを1体選び、持ち主の手札に戻してもよい。
W・ブレイカー
ドロン・ゴー:このクリーチャーが破壊された時、名前に《合金》とあるエグザイル・クリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
自分の他の、名前に《合金》とあるエグザイル・クリーチャーをバトルゾーンに出すことはできない。


 《ロビー》がドロン・ゴーした姿、《超絶合金 ロビンフッド》。
 時空を超えた英雄たる《ロビンフッド》は、時に賢者の如き知識を与え、時に愚者を制裁する力がある。
「ドロン・ゴーで《ロビンフッド》をバトルゾーンに! 《ノーブル・アデル》をバウンス! これで攻撃できるようになったわ」
 しかし《ペイント・フラッペ》と《レミーラ》がいるため、ハスターのクリーチャーはすべてブロッカーだ。攻撃で来ても、攻撃を通すことはできない。
「《しずく》で攻撃! 《しずく》はブロックされないから、そのままシールドブレイク!」
「…………」
「続けて《シューマッハ》で攻撃!」
「……《青銅の鎧》でブロック、かな」
 流石にWブレイクは喰らいたくないと判断したのだろう、ハスターはブロッカーとなった《青銅の鎧》で《シューマッハ》の攻撃を防ぐ。
「うーん、あと一歩なんだけど……とりあえず《緑銅の鎧》を召喚して、山札から《ガガ・ラスト・ミステリカ》をマナゾーンに。続けて《ノーブル・アデル》を召喚して、ターン終了」
 大したこともできないまま、ハスターはターンを終える。これが好機だとささみは判断し、一気に畳み掛ける。
「《突撃奪取 ファルコン・ボンバー》召喚! さらに《マイパッド》進化!」
 《マイパッド》が進化する。しかしそれは、ただの進化ではない。いや、進化する先が、ただの進化クリーチャーでないというべきか。
 それはこの世でたった一つの、唯一無二なる存在。エグザイルの進化クリーチャーだ。

「《錬金魔砲 ロビン・チャンプ》!」


錬金魔砲(オリハルコン・ウィザード) ロビン・チャンプ 水文明 (6)
進化エグザイル・クリーチャー:アウトレイジMAX 8000
進化—自分のアウトレイジ1体の上に置く。
W・ブレイカー
いずれかのプレイヤーが自身の手札から呪文を唱えた時、その呪文をそのプレイヤーの墓地からコストを支払わずに唱えてもよい。そうした場合、その後、その呪文を持ち主の墓地に置く。
自分の他の、名前に《錬金魔砲》とあるエグザイル・クリーチャーをバトルゾーンに出すことはできない。


 《ロビンフッド》のもう一つの姿《錬金魔砲 ロビン・チャンプ》。時空を超えることのできる《ロビンフッド》だからこそ到達できた境地。彼が放つ銃撃は、魔法の力を増幅させることができる。
「うっわ、嫌なの出て来た……でも、君のマナはもうほとんど残ってないし、呪文連射はできない——」
「そう思う? だったら見せてあげるわ」
 ハスターの言葉を遮って、ささみは手札のカードを抜き取る。
「あたしの場にはアウトレイジがいる。だからG・ゼロで呪文! 《無法の裏技ドドンガ・ドン》!」


無法の裏技ドドンガ・ドン 火文明 (5)
呪文
G・ゼロ—バトルゾーンに自分のアウトレイジがあれば、この呪文をコストを支払わずに唱えてもよい。
このターン、バトルゾーンにある自分のクリーチャー1体は「パワーアタッカー+3000」を得、タップされていないクリーチャーを攻撃できる。


「能力の対象は《ロビンフッド》! これで《ロビンフッド》はパワーアタッカー+3000を得て、タップされていないクリーチャーを攻撃できる! そしてこの時《ロビン・チャンプ》の能力発動!」
 墓地に落ちた《ドドンガ・ドン》が光る。同時にそのカードは《ロビン・チャンプ》が構える銃のマガジンへとリロードされた。
「いずれかのプレイヤーが呪文を唱えた時、その呪文を墓地からもう一度唱えられる! というわけでワンモア《無法の裏技ドドンガ・ドン》! 今度は《しずく》を対象に選ぶわ」
 これで《しずく》もパワーアタッカーとアンタップキラーを得た。しかしパワーアタッカーなので、《ノーブル・アデル》がいる限り根本的に攻撃できるようにはならないが、
「《ロビンフッド》で《ノーブル・アデル》を攻撃! その時アタック・チャンス呪文発動! 《EX秘伝カツトンファー》!」
 エグザイルが攻撃する時にアタック・チャンスで唱えられる《カツトンファー》。普通に使うなら打点上昇か、ドロン・ゴーの補助。しかしこの呪文の対象は、なにも攻撃しているクリーチャーでなくてはならないというわけではない。
「効果の対象は《しずく》よ。さらに《ロビン・チャンプ》の能力発動! もう一度墓地から《カツトンファー》を唱えるわ。次の効果対象は《ファルコン・ボンバー》よ!」
 これで《しずく》と《ファルコン・ボンバー》はパワーが9000のWブレイカーだ。《ノーブル・アデル》の干渉を受けないどころか、高打点アタッカーとなる。
「さらに《ロビンフッド》の能力で《ペイント・フラッペ》をバウンス! さあ、どうする?」
「うーん、なんかわざと《レミーラ》を生かされた感じだなぁ……まあ、じゃあ、《緑銅の鎧》でブロックしよう」
 わざとブロックを促すことで、ハスターのクリーチャーを削るささみ。ブロックの権限はハスターにあるので、ブロックしないという選択肢もあるが、それならそれで、アンタップキラーとなったクリーチャーで潰すか、普通にシールドを割るだけだ。
「続けて《しずく》で《レミーラ》を攻撃! 《しずく》はブロックされない!」
 とはいえ、《レミーラ》はすぐに破壊するつもりだったようで、結局は《カツトンファー》で強化された《しずく》に殴り倒されてしまった。
 さらに、
「《カツトンファー》の効果で、攻撃後に《しずく》を破壊! 《しずく》が破壊されたのでドロン・ゴー発動! 《百仙閻魔 マジックマ瀧》!」
 《しずく》が破壊されたことで、手札から《瀧》がドロン・ゴーで現れる。
 これで準備は整った。相手は【師団】の四天王、ダメ押のオーバーキルで攻めるくらいがちょうどいい。
「これで決めるわ……《ファルコン・ボンバー》で攻撃! その時《瀧》をスピードアタッカーにしてWブレイク!」
 《レミーラ》がいなくなったのでハスターのシールドを守るクリーチャーはいない。《ファルコン・ボンバー》の攻撃はすんなり通った。
(《瀧》は攻撃時、アウトレイジにアンブロッカブルを付加できるから、S・トリガーでブロッカーが出ても無視できる。もしシノビを握ってても、一回は防がれても二回目はハンデスで叩き落とす。なによりこれだけ戦力が揃ってれば、突破できるはず)
 仮に《ペル・ペレ》や《ミスター・アクア》が出たとしても、スピードアタッカー付加でこのターンに攻撃できるようになった《瀧》の前では無力。まだ後続には《シューマッハ》や《サイバー・N・ワールド》もいるので、このターンにとどめまで行ける。
 だが、相手は【師団】の四天王の一人だ。
 最後の最後まで、なにをしでかすか分かったものではない。
「……ははっ。残念だったねぇ」
「? ……なにがよ」
「トリガーを引いちゃったんだよ。それも、最高のね」
 笑みを浮かべて、ハスターは最後にブレイクされたシールドを表向きにする。
「S・トリガー……《終末の時計 クロック》」
「な……っ!?」
 《クロック》が召喚される。その瞬間、時流が急速し、ささみのターンが飛ばされてしまった。
「君のターンはこれでお終い。ぼくのターンだね」
「っ、決めきれなかった……!」
 歯噛みするささみ。やはり、目の前の敵はただの少年ではない。
 ささみはハスターの、澄んでいるが、同時に暗いなにかが渦巻いているような瞳を見る。
 彼の瞳の奥には、どこまでも続く狂気の天空が、広がっているのだった——

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.537 )
日時: 2014/03/19 16:46
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 うさみが一気に戦況をひっくり返したこのデュエル。
 うさみのシールドは四枚、そのうち二枚はそれぞれ《DNA・スパーク》と《グローバル・ナビゲーション》が仕込まれている。そして場には《極太陽 シャイニング・キンジ》《獣音鼓笛 グローバル》《翔帆轟音 グローバ・ライズ》《ボルバルザーク・エクス》《奪太陽 サンサン》《極太茸 菌次郎》《一撃奪取 アクロアイト》《一撃奪取 ケラサス》《羊頭駆逐 パール》……《グローバル》と《グローバ・ライズ》でそれぞれ増えた手札とマナをフルに使い、大量のクリーチャーを展開している。
 対するクトゥグアのシールドはゼロ。なんとか《ミステリー・キューブ》から《閃光のメテオライト・リュウセイ》を踏み倒してうさみの攻撃を止め、生き残っている。他には《守護炎龍レヴィヤ・ターン》《黒神龍オドル・ニードル》、そして《竜のフレア・エッグ》が二体。
「私のターン……二体の《フレア・エッグ》の能力発動」
 クトゥグアのターンの初め、山札の上からそれぞれの能力で一枚ずつ墓地へと送られた。その墓地へと落ちたカードは、二枚ともドラゴンだ。
 《フレア・エッグ》が弾け飛び、二体の龍が目を覚ます。
「目覚めるのは……《竜星バルガライザー》そして——」
 片方の《フレア・エッグ》から生まれるのは、《竜星バルガライザー》。そしてもう一体は——

「火焔の龍、異星の力に触れ、次元の壁を焼き尽くせ——《ボルシャック・ギルクロス・NEX》……!」


ボルシャック・ギルクロス・NEX 火文明 (9)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/エイリアン 9000+
スピードアタッカー
パワーアタッカー+5000
T・ブレイカー
誰もサイキック・クリーチャーをバトルゾーンに出すことはできない。


 もう片方の《フレア・エッグ》から誕生したのは、エイリアンのと化した《ボルシャック・クロス・NEX》——その名も《ボルシャック・ギルクロス・NEX》だ。
 超次元を巧みに操るエイリアンの中でも《ボルシャック・ギルクロス・NEX》は特異な存在。その力は、サイキックを呼び出す超次元の門を焼き尽くし、サイキックの存在を根本から封じてしまうのだ。
 とはいえうさみのデッキにサイキック・クリーチャーはいないので、それほど意味はない。ただ普通に考えて、このサイズのクリーチャーが殴って来るのは驚異的だ。
(で、でも、大丈夫……わたしのシールドには、《DNA・スパーク》が仕込まれているから、いくら数を増やしても、このターンでとどめを刺されることはない、はずなのです……)
 だが、どうしても不安が拭えない。なにか、嫌な予感がする。
「《インフィニティ・ドラゴン》を召喚……《オドル・ニードル》で《グローバ・ライズ》を攻撃して破壊、さらに《竜星バルガライザー》も《キンジ》に攻撃」
 今度は手札から普通にドラゴンを召喚、さらに《グローバ・ライズ》を破壊しつつ、《バルガライザー》のアタックトリガーでもドラゴンを踏み倒す。《メテオライト・リュウセイ》で《インフィニティ》も踏み倒されるドラゴンもどちらもスピードアタッカーになるが、《DNA・スパーク》の前には無力。除去耐性をつけようが殴り返そうが手数を増やそうが、すべてタップすれば問題ない。
 そう、思っていたが、
「《バルガライザー》の能力発動……」
 飛翔する《バルガライザー》の咆哮が、クトゥグアのデッキのドラゴンを呼び覚ます。
 その呼び覚まされたドラゴンは、うさみにとっては最悪と言っていい存在。禁じられた魔弾を内包する、異星の龍だった。

「魔弾の龍、異星の地獄に触れ、すべての銀河を焼き尽くせ——《超銀河竜 GILL》……!」


超銀河竜 GILL(ギル) 火文明 (10)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/エイリアン 9000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、パワーの合計が9000以下になるように相手のクリーチャーを好きな数選び、破壊する。その後、相手のシールドをひとつ選び、持ち主の墓地に置く。
W・ブレイカー


 《バルガライザー》の咆哮で呼び覚まされたのは、禁じられた魔弾《超銀河弾 HELL》を内蔵した異星の龍、魔弾がエイリアンのドラゴンと化した《超銀河竜 GILL》だった。
 平たく言えば呪文がクリーチャー化したようなカードだが、呪文と違ってクリーチャーは踏み倒しの手段が豊富、しかも《GILL》はサポートを受けやすいドラゴン。今こうしてここに存在しているのは《バルガライザー》の能力で踏み倒されたからだ。
 その分シールド焼却枚数は、相手クリーチャーの数に関係なく一枚だが、一枚焼ければ十分だった。
「……《GILL》の能力で《サンサン》《菌次郎》《アクロアイト》《ケラサス》《パール》を破壊」
 突如、《GILL》が雄叫びを上げる。その咆哮を引き金に、《GILL》の背負う地獄の魔弾が一斉に発射され、うさみの場にいた小型クリーチャーたちを一瞬で焼き尽くしてしまう。《グローバ・ライズ》がいなくなったので、クリーチャーのパワーが落ち、大量展開した五体のクリーチャーがまとめて破壊されてしまったのだ。
「あ、これって、まさか……」
 クリーチャーが破壊された後、残る一発の弾丸がうさみのシールドを一枚、貫く。
 貫かれたシールドは——《DNA・スパーク》だった。
「そんな……」
 うさみにとって守りの要であった《DNA・スパーク》が焼かれてしまう。もしかしたら、《キンジ》で仕込んだ時に見抜かれていたのかもしれない。
「《バルガライザー》で《キンジ》を攻撃……破壊」
「あ……《キンジ》!」
 次に《バルガライザー》の双刀が《キンジ》を切り裂き、破壊する。
「《メテオライト・リュウセイ》で《グローバル》を攻撃……破壊」
「《グローバル》まで……」
 さらに《グローバル》も破壊し、その次は《インフィニティ》で《ボルバルザーク・エクス》も破壊した。
 うさみは一度クトゥグアのクリーチャーを全滅させたが、返しのターン、たった1ターンで、九体ものクリーチャーをすべて破壊され、仕込んだS・トリガーも潰されてしまった。
 なにもかも、焼き尽くされてしまったのだ。
(これが、【神聖帝国師団】の、四天王……)
 もう、身体が動かない。振るえることすらできない。目の前の少女が発する、静かな爆炎に気圧されてしまい、呻くことすらも出来なかった。
「……《ボルシャック・ギルクロス・NEX》でTブレイク」
 《ボルシャック・ギルクロス・NEX》のTブレイクでうさみの残ったシールドはすべて消し飛んだが、その中の一枚が、光の束となって収束する。
「っ、S・トリガー……《グローバル・ナビゲーション》、です……っ! 《レヴィヤ・ターン》をマナゾーンへ!」
「無駄」
 《レヴィヤ・ターン》がマナゾーンに送られそうになるが、その時《インフィニティ》の能力が発動する。
「山札の一番上を、墓地へ……」
 墓地に落ちたのは《不敗のダイハード・リュウセイ》。ドラゴンなので、《レヴィヤ・ターン》は場を離れない。
「これでお終い……」
 クトゥグアは、静かに告げる。
 凶暴なる龍の雄叫びや、轟々と燃え滾る爆炎を内包する瞳で、うさみをジッと見据え、終わりの宣言を、告げるのだった。

「《守護炎龍レヴィヤ・ターン》で……ダイレクトアタック……」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.538 )
日時: 2014/03/19 18:03
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 ささみが一気に攻め込んでいくところだったこのデュエル。
 ささみのシールドは《魂と記憶の盾》と《パクリオ》によって七枚に増えており、場には《百仙閻魔 マジックマ瀧》《超絶合金 ロビンフッド》《錬金魔砲 ロビン・チャンプ》《サイバー・N・ワールド》《新世界 シューマッハ》《遥か寸前 ヴィブロ・ブレード》《突撃奪取 ファルコン・ボンバー》。
 対するハスターのシールドはゼロ。場には《アクア・サーファー》《パクリオ》《終末の時計 ザ・クロック》。
 ささみが攻勢を整え一気に攻め込み、とどめまであと一歩と言うところで、《終末の時計 ザ・クロック》がトリガーし、その勢いは殺されてしまった。
 だが、だからと言ってささみが圧倒的に不利かというと、そういうわけでもない。
(あたしのシールドは七枚もあるし、相手の場はクリーチャーも少ない。少なくとも、このターンでダイレクトアタックを受けることはないはず)
 いくら凌がれても、バトルゾーンをリセットされたわけではないので、ささみの優勢は変わらない。
「じゃ、ぼくのターンだね。いやぁ、ここまで長かったなぁ……」
「……なんのこと?」
 カードを引きながら、しみじみとそんなことを言うハスター。なにか嫌な予感がする。
「いやね、コンボデッキは基本的にハンデスとかの妨害に弱いんものなんだけど、特にこのデッキはカラーがカラーだから、妨害には滅法弱くてさ。だから相手を妨害しながらビートダウンする君みたいなデッキが相手だと、対応するのに手一杯で、コンボ完成まで時間がかかったよ」
 コンボ完成? 嫌なワードがハスターの口から放たれた。嫌な予感はどんどん大きくなり、焦燥や不安という形でささみの中で膨張する。
「ともあれ、このターンがこのデュエルのファイナルターンね。まあ大丈夫だよ、少なくともこのデュエルで君が死ぬことはないし、コンボの勉強だとでも思いながら見てたら? 特に君の《ロビン・チャンプ》は、色々とコンボのし甲斐がありそうだしね。ぼくも今度なにか考えてみようかな」
 言いながらハスターは手札とマナゾーンを確認。そして、カードを一枚、抜き取った。
「まずはこれだ。《転々のサトリ ラシャ》を召喚。無色以外をすべてタップ」
「《ラシャ》……? 無色クリーチャーなんて、いないじゃない……」
 首を傾げるささみ。《ラシャ》は自身を含む無色でないクリーチャーをすべてタップする。それによりささみのクリーチャーは勿論、ハスターの場のクリーチャーもすべてタップされる。
 本来は攻撃せずに《策士のイザナイ ゾロスター》や《神聖斬 アシッド》の生贄を用意したり、光臨を持つクリーチャーをタップさせるために使われるが、ハスターのデッキにそれらのクリーチャーが投入されているとは思えない。
「タップされたクリーチャーの使い道は、なにも《アシッド》や光臨だけじゃないんだよ。続けて呪文《母なる星域》! 《クロック》をマナゾーンに送って、マナゾーンから進化クリーチャーを呼び出すよ。《ラシャ》を進化!」
「マナゾーンから進化クリーチャー、そして、タップされた《ラシャ》……まさか……!」
 ささみの予感は予想に、そして予想は予測となって、的中という結果を導き出す。
 タップされた《ラシャ》が《母なる星域》に飲み込まれた。《クロック》を糧とし、《ラシャ》は異星の力を取り込んで進化する。

「神秘の力を暴発せよ! 《聖霊王ガガ・ラスト・ミステリカ》!」


聖霊王ガガ・ラスト・ミステリカ 光文明 (9)
進化クリーチャー:エンジェル・コマンド/エイリアン 13000
進化—自分の光のクリーチャー1体の上に置く。
T・ブレイカー
このクリーチャーがアンタップされた時、自分の山札を一番下の2枚を残してすべて引く。その後、「S・トリガー」付き呪文を好きな枚数コストを支払わずに唱え、「S・トリガー」付きクリーチャーを好きな数コストを支払わずに召喚してもよい。


 現れたのは、最後の神秘を内包した異形にして異星の天使《聖霊王ガガ・ラスト・ミステリカ》。
 《緑銅の鎧》でひっそりとマナに仕込まれていた《ガガ・ラスト・ミステリカ》だったが、《母なる星域》の力で唐突に出現する。その異質で強大な威圧感に、ささみは圧倒されていた。
「う……で、でも、《ガガ・ラスト・ミステリカ》の能力はアンタップした時に発動する。次のターンには確実にとどめを——」
「なーに言ってんの。さっき言ったじゃん、このターンがこのデュエルの最後のターンだって。コンボだって公言してて、こんなコンボの塊みたいなクリーチャーが出たのに、そこでターン終了するわけないじゃん。なんのためにぼくがマナを溜めてたと思ってるのさ」
 苦言を呈するように口を尖らせるハスター。
 つまり、まだ彼のターンは終わらない。
「確かに君の言う通り、このターンで決めないとぼくの負けだよ。だからこれが、ぼくの逆転の一手だ。《逆転王女プリン》を召喚!」
 続けて召喚されたのは、文字通り逆転を呼ぶ姫君《逆転王女プリン》だった。彼女の能力は、クリーチャーを一体タップ、またはアンタップすること。そして、タップ状態で進化したクリーチャーは、進化後もタップされた状態なのだ。
 つまり、
「タップされている《ガガ・ラスト・ミステリカ》をアンタップ! そしてこの時、《ガガ・ラスト・ミステリカ》の能力発動!」
 刹那、《ガガ・ラスト・ミステリカ》が眩い光を放つ。しかしその光はどこか昏く、暗澹としたものであった。
 《ガガ・ラスト・ミステリカ》の能力は、自身がアンタップした時に発動する。それは身を削る豪快にして異質な能力だ。
「ぼくの山札の下から二枚を残して、全部を手札に加える!」
 つまり、山札のほとんどを手札にしてしまう大型ドロー、というわけだ。だが、これだけでは終わらない。ただカードを引くだけが《ガガ・ラスト・ミステリカ》ではないのだ。
「そしてその後、手札にあるS・トリガー呪文を好きなだけ唱えて、S・トリガークリーチャーを好きなだけ召喚できる!」
 つまり要約するなら、《ガガ・ラスト・ミステリカ》は山札の中にあるS・トリガーを持つカードをすべて使用することのできる能力だ。加えて自分が手札に握っているS・トリガーも発動させることができる。
 確かにこれはコンボ向きのカードだ。ハスターが嬉々として山札を鷲掴みにしている。
「さあ、ここからが本番だよ。まずはS・トリガーで呪文《緊急再誕》! 《逆転王女プリン》を破壊して、手札からマナゾーンにあるカードの枚数以下のコストのクリーチャーをバトルゾーンに出すよ。さあ、再誕せよ——」
 ハスターのマナは13マナもあるので、大抵のクリーチャーは呼び出せるだろう。加えて《ガガ・ラスト・ミステリカ》の能力で山札のカードをほとんど手札に入れているので、ここで一番出したいクリーチャーを手札に確保しているはずである。
 ささみのその予想は当たっている。そしてこの時、ハスターが呼び出したのは、

「——《サイバー・J・イレブン》!」


サイバー・J・イレブン 水文明 (11)
クリーチャー:サイバー・コマンド 11000
M・ソウル
W・ブレイカー
バトルゾーンに自分の水のクリーチャーが11体以上あれば、自分はゲームに勝利する。


 《緊急再誕》で呼び出されたのは、仲間の力を勝利に繋げるサイバー・コマンド《サイバー・J・イレブン》だった。
 攻撃せずに勝利する特殊勝利、俗に言うエクストラウィンを達成することのできる能力を持った数少ないクリーチャーで、勝利条件はその名の通り水のクリーチャーを十一体並べること。
 しかし普通のクリーチャーを十一体並べるだけでも至難の業だというのに、それが水文明限定となればますます難しくなる。だが、ささみは気付いてしまった。ハスターはこの時点で、クリーチャーを十一体並べる方法を見出していることに。
「言っとくけど、まだ終わらないよ。《ガガ・ラスト・ミステリカ》の能力の続きだ。次はS・トリガー付きクリーチャーをバトルゾーンに!」
「やっぱり、ってことは……!」
 ハスターは山札に眠るS・トリガークリーチャーを一気に呼び出して、十一体の水のクリーチャーを揃えるつもりなのだ。どうりでS・トリガーを持つクリーチャーが多いわけだ、とささみは今更のようにハスターのデッキを理解する。
 だが、理解してももう遅い。手遅れだ。
 次の瞬間、《ガガ・ラスト・ミステリカ》の力で、手札に加えられたS・トリガー獣たちがバトルゾーンへと流れ込む。
「《アクア・サーファー》《猛菌護聖ペル・ペレ》《ミスター・アクア》《ルナ・ヘドウィグ》《光器ノーブル・アデル》《交錯のインガ キルト》《逆転王女プリン》……《ロビンフッド》で戻された《ペイント・フラッペ》もバトルゾーンに!」
 山札から手札に加えられたS・トリガー獣たちが次々とバトルゾーンに現れる。《アクア・サーファー》が二体に《ルナ・ヘドウィグ》《ペイント・フラッペ》《パクリオ》《ミスター・アクア》、《猛菌護聖ペル・ペレ》が二体に《光器ノーブル・アデル》、《交錯のインガ キルト》と《逆転王女プリン》が二体ずつ、そこに《聖霊王ガガ・ラスト・ミステリカ》と《サイバー・J・イレブン》が加わり、元から場にいたクリーチャーも含めて、その数、総勢十五体。その中の水のクリーチャーは九体だ。
「……え? 九体?」
 大量に呼び出されたクリーチャーに戦慄していたささみだが、そのクリーチャーの数を数えて、拍子抜けする。デュエルが長引いた上にマナ加速やドローでデッキが削られ、水のS・トリガークリーチャーがマナに行ってしまったためか、ハスターの水のクリーチャーは十一体には届いていなかった。
「それじゃあ《サイバー・J・イレブン》の勝利条件を満たしていないじゃない……」
「どうだろうね。確かに個々のカードを見るだけじゃあ、そう見えるかもしれないけど……ぼくは十一体の水のクリーチャーを、ちゃんと揃えてるよ」
「なにを言って……あ!」
 また、気付いてしまった。
 ハスターの言葉が真実であることを裏付ける、そのクリーチャーの存在を。


ペイント・フラッペ 水文明 (5)
クリーチャー:スプラッシュ・クイーン 1000
S・トリガー
バトルゾーンにある自分の光のクリーチャーと闇のクリーチャーはすべて、水のクリーチャーでもある。
バトルゾーンにある自分の他の水のクリーチャーすべてのパワーは+1000される。


「《ペイント・フラッペ》……!」
「そ、なにもこいつは《ノーブル・アデル》やブロッカーを組み合わせて足止めするだけじゃないんだよ。S・トリガーだから《ガガ・ラスト・ミステリカ》で出せるし……光のクリーチャーを水文明にするから《サイバー・J・イレブン》の勝利条件も満たしやすくなる。このデッキの隠れた主役さ」
 つまりハスターの場にいる光のクリーチャーも水文明となり、イコール、ハスターのクリーチャーはすべて水文明である、ということになる。
 となると、ハスターの水のクリーチャーの数は十五体。

 《サイバー・J・イレブン》の勝利条件を、満たしている。

「っ、そんな、まさか……!」
「まーそういうわけだから、これで終わりね。ばいばい」
 刹那、数多の仲間と共に《サイバー・J・イレブン》が襲い掛かる。

 その圧倒的かつ理不尽な数の暴力に対して、ささみは為す術もなく飲み込まれるのだった——

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.539 )
日時: 2014/03/24 17:37
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 神話空間が閉じたのは、ほぼ同時だった。ほぼ同時にクトゥグアとハスターは地に降り立ち、ほぼ同時にささみとうさみは地に倒れる。
「ふぅ……さっすがルカ=ネロの側近ってだけあって、そこそこ強かったね」
「でも……所詮は雑魚。私たちの敵じゃない」
 それぞれ軽く息をついてからデッキを収め、地に伏した双子を見下ろす。
「う、うぅ……ささちゃん……」
「これは、ちょっとまずいわね……」
 眼前に立つ二人の存在は、やはり自分たちには大きすぎたようだ。結局、最後はいいようにされてしまった。
「さーてクトゥ、この二人どうしようか?」
「……拘束、連行、処理。それだけ」
 双子が自身の敗北に悔いを感じている間も、二人の間では不穏な会話が繰り広げられていた。
 まずい、たった三文字の言葉だけが、ささみの脳内を駆け巡る。うさみに至っては思考回路が完全にショートしており、混乱している。
 このままではなにをされるか分かったものではない。逃げたくても逃がしてはくれないだろう。戦おうにも自分たちは既に敗北している。
 もうどうしようもないのか。どう思い、諦めかけた、その時だ。

「あれ? ささちゃん、うさちゃん? こんなプレイスでなにしてるの?」

 聞き覚えのある声と口調。ささみはバッと顔を上げ、その発生源を見遣る。
 そこにはやはり、見覚えのある顔があった。いや、見覚えがある、などというレベルではない人物が、そこにはいた。
「ラトリさん……!」
「え……ラトリ、さん……?」
 うさみも顔を上げ、彼女の姿を視認する。そこには呆然としていながらも驚きがあり、そして安堵と安心感があった。
「ダイレクトなミートは久し振りだね。なんかボロボロだけど……あぁ、成程。アンダスタンドしたよ」
 その人物——ラトリは、双子の様子、そして彼女たちの前に立つクトゥグア、ハスターを見て、状況を理解したようだ。
「君たちはジー君とこの、なんとか四天王だっけ? マイフレンドになにをしてくれたのかな?」
 ラトリの表情も口調も、いつも通りのどこかフレンドリーさがあった。だがしかし、その声の裏には、彼女らしからぬ怒りに似た感情も読み取れる。
「ラトリ・ホワイトロック……あー、また厄介というか面倒というか、この人と遭遇しちゃうなんて、ついてないなぁ……どうしよう、クトゥ?」
「…………」
 ラトリの問いを無視して、クトゥグアに意見を仰ぐハスター。クトゥグアはなにか考え込むようにジッと動かないが、やがてゆっくりと口を開いた。
「……私たちの目的は、ロッテちゃんを探すこと。相手が格下なら、雑魚を掃除する感覚で潰せばいいけど……ラトリ・ホワイトロックの実力は、未知の部分が多い」
「ということは?」
 聞くまでもないと分かってはいるが、ハスターは再び問う。それは確認でもあり、同時に自分たちの為すべきことの自覚と宣誓でもあった。
「最優先事項……この場は退去して、ロッテちゃんを探す」

「あぁ、そうしろ」

 突如、クトゥグア、ハスターの背後から、男の声が飛んでくる。
 その声に軽く飛び上がりそうになる二人は、慌てたように振り返る。そしてそこにいたのは、ある意味この状況下で最も会いたくない人物。
 自分たちのボス、【神聖帝国師団】師団長、ジークフリートだった。その後ろには、学生と思しき少年と、異様に巨大な青年がいる。
「し、師団長……!? なんで日本に……」
「あ、えっと……その……」
 驚きを禁じ得ない二人。二人は、ありていに言って失態を犯してしまっている身なので、その失態を隠匿できる状態になるまで、彼には会いたくなかった。いや、合わせる顔がなかった、と言うべきか。
 本来ならジークフリートは日本にいるはずがない。だから二人は、焦りながらもどこかで安心があった。しかしここで、その安心は吹き飛ばされる。
「話は全部聞いたぜ、クトゥグア、ハスター。てめぇら、ロッテのことちゃんと見とけつったろうが。誰があいつの世話係だと思ってんだよ」
「ぼ、ぼくらです……はい……」
「すみません……」
 さっきまで軽薄な笑みを浮かべたり、表情がなかったり、形は違えど余裕を見せていた二人は、一瞬で頭が垂れ、勢いも沈んでいた。
「……まあいい。俺もあんま人のこと言えねえしな。頭下げてる暇があるなら有言実行しろ。さっさとあいつを探しに行け」
「は、はい……」
「分かりました……」
 意気消沈とまでは行かないが、やや沈んだまま二人はそれぞれ別方向へと駆け出す。その時、ジークフリートの背後で侍っていた少年が何気なく嘲笑的な笑みをクトゥグアに向け、クトゥグアも無感動だが睨むようにそちらへと視線を送った。言葉のやり取りはなく、それだけだが。
「……また会ったね、ジー君。しばらく君と会うことはないと思ってたよ」
 クトゥグアとハスターがいなくなると、ラトリはゆっくりと口を開く。その口調はいつもの軽いものではなく、ある意味では普通の口調だった。
 ただし、彼女の性格から考えれば、その口振りは必要以上に重苦しく思える。
「だな。俺も同感だ。俺としては会いたくもなかったがな……つーかその呼び方やめろよ。俺たちは敵どうしだぜ」
「だからなに? 確かに今、私の組織と君の組織はほぼ対立関係だけど、敵対してるからって、それは友達が友達であることとは無関係だよ。ルカ君も、そしてジー君も……私の大事な友達だよ」
「黙れよ、胸糞悪い……いつまで餓鬼のつもりでいやがるんだ。人間がいつまでも同じ関係でいられると、本気で思ってんのか?」
「事実は関係ないね。ただ、私がそうありたいと思ってるだけ。そうありたいから、そうだと考えてるだけだよ」
 どちらもあまり抑揚が感じられない、平坦な声。しかしその言葉の応酬は、言い様もない重みがあった。
「ま、こんなとこでする話でもナッシングだよね。本当なら君とルカ君とで会談でもオープンしたいところなんだけど」
「会談なんざまっぴらごめんだぜ。お前と話すことなんざねえし、ルカの野郎に至っては、顔すら見たくねえ——」
 思い出したくもない男の顔を思い浮かべてしまいながら、ジークフリートが嘆息混じりに呟く、その時。
 咆号の如き雄叫びのような声が、耳をつんざく。

「俺を呼んだか——ジークッ!」

 爆音と共に、男が爆走してくる。その男は一直線にジークフリートへと突っ込んでいった。
「っ、ルカ……誰がてめえなんざ呼ぶか、馬鹿野郎が!」
 叫ぶジークフリート。正面衝突でどちらも大怪我必至だと思われるような突撃を、ジークフリートは両手を使って拒むように止める。その表情は怒りに近いが、どちらかと言うと面倒や憂鬱といった感情が強い。面倒な目に遭わされて憤慨している、といったところか。
「か、界長……」
「かいちょーさん……」
 か細く呟くように彼を呼ぶささみとうさみ。その消え入りそうで聞き逃してしまいそうな声も、ルカ=ネロは聞き逃さなかった。
「ようお前ら。頑張って戦ったみたいだな、よくやった」
 とはいえ彼の関心は完全に目の前のジークフリートにあるようで、どこか軽い印象を受けてしまう。しかしそれもいつものことなので、逆に安心する。
「ちっ……邪魔なんだよ! 失せろ!」
「おっと、毎度のことながらつれねえなぁ」
 ルカを突き飛ばすジークフリート。しかしルカは軽く着地し、辛辣な言葉も受け流す。
「あの、師団長……」
「分かってる。ここでこいつらに構ってる暇はねぇ。俺たちもロッテを探しに行きたいところだが……」
 眼球だけを動かして周りを確認する。目の前にはラトリ・ホワイトロックとルカ=ネロ。その後ろにはささみ、うさみがいるが、この二人は既に満身創痍、戦力としてカウントする必要はないだろう。
「……ねぇ、さっきからずっと気になってたんだけどさ。そこの彼、誰? 空城君……じゃ、ないよね? あの子、今日は巫女服着てるはずだし」
 ジークフリートの背後で控える、空城夕陽の姿をした少年に疑問を感じていたラトリは、ジークフリートとルカの鍔迫り合いが一段落したところでその疑問をぶつける。
「あぁ? こいつか? 誰が教えるかよ、こいつは【師団】の秘密兵器だ。どうしても知りたいなら自分で調べやがれ、調べるのは得意だろ」
 だが、その疑問は一蹴されてしまった。当然と言えば当然だが。
「んなことより、どうすっか……ラトリはお前らでも問題ないだろうが、ルカの馬鹿野郎を相手取れるのは、この世界じゃ俺だけだしな……」
 戦力だけで言えば三対二、ジークフリート側が有利だ。しかしジークフリートとしては、ルカとは戦いたくない。だが後ろの二人では、ルカには敵わないだろう。
 しばし考え込むジークフリートは、気が進まないものの、ベストと思われる判断を下した。
「仕方ねぇ、ルカは俺が止める。その間、お前らはロッテを探せ。最優先事項は《ユピテル》と《ユノ》の保護だ。だからブラックリストに載ってる奴を見つけたら潰しとけ」
「分かりました」
「……御意」
 次の瞬間、少年と大男が違う方向へと駆ける。ラトリもルカも、それを追おうとはしない。
「……ふっ。まさかお前から俺に戦いを挑むとはな。今度こそ決着をつけるぞ!」
「いつも決着ついてるだろうが、お前が俺に勝てたことがあるか? つーか、俺だってお前なんかと戦いたくはねえんだよ。今回は仕方なくだ」
「そんなことよりさ」
 さらに高揚するルカと、対照的に憂鬱そうな息を吐くジークフリートの間に、ラトリが割って入る。
「私のこと忘れてない? もしかして私、戦力としてカウントされてないの?」
「しなくてもいいような気はするがな。だが、お前はお前で放っておくと面倒だ。かと言ってロッテを探す役はあいつらの方が適任だしな。だから……こいつが相手だ」
 言ってジークフリートは、一枚のカードを取り出し、ラトリへと投げつけた。そのカードはラトリに到達する前に、実体となって顕現する。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.540 )
日時: 2014/03/20 01:04
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「《マントラ教皇 バラモン》……!」
 実体を伴い現れたのは、筋骨隆々な神官。内部分裂を起こしたオラクルの、マントラ派をまとめる教皇だ。
「バラモン、そいつの相手はお前に任せた」
「はっ」
 ジークフリートに頭を下げると、バラモンはラトリと、その後ろにいるささみ、うさみの前に立ち塞がる。
「……なんか、ストロングな気配がするなぁ」
「たりめーだ、そいつは量産型の雑魚とは違う。《ユピテル》と《ユノ》が生み出した、数少ない傑作だぜ。果たして、お前が敵うか?」
 ラトリは一度バラモンをジッと見据える。その眼光は、見るからに強者のそれだ。眼だけではない。立ち振る舞いや彼の纏う空気からも、その強さは感じられる。
「マスター」
 唐突に、カードからアテナが飛び出した。一体どうしたのかと問う前に、アテナはラトリにい放つ。
「はっきり言います。マスターのデッキでは、あのクリーチャーには勝てません」
「ワォ、本当にはっきり言われたよ……でも、君が言うならそうなんだろうね」
 バラモンが強いということは、ラトリにも理解できる。だからと言って、逃げるわけにはいかない。後ろには小さな双子がいるのだ。
 かといってバラモンの相手をルカにさせると、今度はラトリがジークフリートの相手をしなければならなくなる。それならまだバラモンの方がマシだが、どちらにせよ敗北の色が濃厚だ。
「せめて君が入ったデッキでプレイできたら、もう少し違ってたんだろうけどね」
「その行為自体は止めません。しかし、そうした場合に発生する可能性のある損失については、責任を負いかねます」
「だよねぇ」
 神話空間を支配しているのはラトリなので、無理やり神話空間に引きずり込まれてデュエル、という状況は起こらない。だが、物理的に逃げることも不可能だ。
 ここでずっと睨めっこしているわけにもいかないので、最後には戦わなくてはならないが、戦っても負ける可能性の方が高い。
「ラトリさん……」
 心配そうに見上げる双子。彼女たちも、今ラトリが抱えているジレンマが理解できないわけではない。かといって自分たちになにかができるわけでもない。これ以上戦えない自分たちは、むしろ足手まといなのだ。
 そんな事実を改めて自覚してしまい、暗くなる。だが同時に、光も見えた。
「……あっ、そうだ、ささちゃん」
「な、なによ」
「あのデッキがあるよっ。この前、かいちょーさんと作った……」 
「あ、あぁ、あのデッキ……確かに、界長も手を加えたデッキだし、もしかしたら……」
 意を決し、二人は立ち上がった。そして、ラトリの白衣の裾を引っ張る。
「ラトリさんっ」
「え? な、なに? ホワット?」
「このデッキを……!」
 二人は、一つのデッキをラトリに手渡す。ラトリはやや困惑したようにそのデッキを受け取り、ざっと眺めた。
「これって……もしかして、ルカ君が作ったデッキ?」
「正確には、界長とあたしたちが組んだデッキです」
「かいちょーさんは、ラトリさんのことを考えて、そのデッキを組んだそうです」
 二人はこのデッキを作っていた時のことを思い出す。ルカが気まぐれを起こしてラトリにも使えそうなデッキを組もうとしたが上手くいかず、そこでささみとうさみが引っ張り込まれたのだ。なので最終的には、ラトリと、ささみ、うさみの三人らしさの詰まったデッキとなった。
「かいちょーさんは、このデッキはいらないって、言ってましたけど……ラトリさんなら、このデッキも使いこなせるはず、なのです……っ!」
「あたしたちも口出ししてるので、あんまり強いデッキじゃないかもしれませんけど……」
 どこか強気になるうさみと、弱気になるささみ。いつもと違う挙動を見せる二人だが、その思いはどちらも同じだった。
 ラトリは少し意外そうに目を見開いていたが、やがて二人の気持ちを汲み取ったように、彼女たちの頭を撫でた。
「……ありがとう、ささちゃん、うさちゃん。このデッキ、使わせてもらうね」
「……はいっ」
「ありがとうございます!」
 二人の顔が明るくなる。そしてラトリも、決意したようにバラモンと相対する。
「……用は済んだか? 今まで待ってやったのだ、ありがたく思え」
「オーケー、ベリーベリーサンクス」
 バラモンの威圧的な声に、ラトリは軽く適当に返した。微塵もありがたく思ってなどいない。
「マスター」
「大丈夫だよ、アテナ。ささちゃんとうさちゃん、それにルカ君の三人が、私のために組んでくれたデッキだもん……負けるはずがないよ」
 どこか自分に言い聞かせるように、ラトリはそのデッキを構える。左右の斜め後ろにはささみ、うさみ。頭上にはアテナがいる。
「……こっちもとっとと始めようや、ジーク!」
「ちっ……気は乗らねえが、仕方ねぇ。相手してやるよ」
 そしてジークフリートとルカも、戦う態勢に入った。
「……アテナ!」
「了解。対戦式局地神話空間、展開します」
 刹那、二つの神話空間が開かれた。
 ラトリ、ささみ、うさみの三人とバラモン、そしてジークフリートとルカが、それらの神話空間の中へと、吸い込まれていく——



 わらわらと湧くクリーチャーたちを速攻で排除していく中、黒村は人影を見た。
 それは見知った顔ではないが、知らない顔でもなかった。実際に見るのは初めてだが、頭の中には入っている顔。有事の際、知っておくべきだと判断したために頭の中に入れている。ブラックリストに載っている人物。
 即ち、それは敵だった。
「ヒャッハァー! まさか、かの『傀儡劇団ティアリカル』と、このような辺境地で会い見えるとはなァ!」
「……シーザー・ジャン・ジャック、か」
 鼓膜が破れるのではというほどの声量と、海賊のような出で立ちの変わった男だ。所長はなんと呼んでいたか、と記憶を探る黒村。顔は覚えているが異名までは覚えていない。そこまで覚える必要性を感じていなかったからだ。
「正直、お前などに構っている暇はない」
「そうかァ。実は私も、今回は人探しをしている身なのでなァ……戦うことが目的ではないのだ。ならば、ここはお互い見て見ぬ振りをして、穏便に——」
「だが、【師団】の隊長クラスをここで見逃す手もないな」
 次の瞬間、黒村を中心とした神話空間が展開される。
 シーザーは問答無用で、その神話空間へと飲み込まれてしまった。



 黒村がシーザーと双う遇した一方、九頭龍も【師団】の隊長と相対していた。
 それも、懐かしの顔だ。
「えーっと、なんて言ったっけ、君……なんとかって名前だったよね。なんとなく僕の名前と似てたから覚えてるよ。えーっと……なんだっけ?」
「全然覚えてねえじゃねえか」
 思わず真面目くさって突っ込む葛葉龍泉。フェイスペイントや奇妙な柄のTシャツなど、どこか狂った印象を与える男だった。
「ま、名前なんてどうでもいいや。で、なんで君はここにいるのかな? 初詣に来たにしては、神頼みをするって柄じゃないよ、君。というか神様に見捨てられてそうだよね」
「お前にだけは言われたくねえなあ、九頭龍希道。なに、心配するな。なにも俺は初詣に来たんじゃねえ」
 人探しだ、と短く答える龍泉。しかしすぐに狂的な笑みを浮かべ、その言葉も信用ならない。
 そして実際、彼は人探しなどどうでもよくなっているようだ。
「ここで会ったが百年目だ、九頭龍希道! 今度こそお前を、俺の《バイオレンス・サンダー》の雷で射殺してやる!」
「……もうあの雷は喰らってるけどね」
 デッキを取り出して臨戦態勢の龍泉。対する九頭龍は、ふぅ、と息をつく。
「別に僕としては君に興味なんてないんだけど……まあしょうがないかな。ちょっとだけ相手してあげるよ」
 ただ、と付け加え、九頭龍は続ける。
「先に言っとくけど、君に勝ち目はほとんどないよ。初見の相手ならいざ知らず、僕だって【ラボ】の人間だからね。二回目の戦闘で、同じデッキを使って勝てるだなんて思わないで欲しいな」
「はんっ、ほざけ。そんな余裕かましてられるのも、今のうちだぜ」
「それは僕の台詞……なんて言うのはやめよう。君みたいな思考回路の人間には、こんな言葉は無意味だからね」
 暗に龍泉を馬鹿だと言っているような九頭龍も、デッキを取り出して構えた。後は二人の意志で、いつでも戦いが開始される。
 次の瞬間、二人は神話空間の中へと入っていく。


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