二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.541 )
日時: 2014/03/20 08:07
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「しっかし数が多いなぁ……というか、なんか増えてないか? なぁ、リュウ?」
「ナガレだ。確かに、時間の経過と共に数が増えていっているようだな……」
 流と零佑はわらわらと湧き出て来るクリーチャーたちを次々と薙ぎ倒していたが、そのあまりの数にそろそろ気が滅入って来た。
 最初の頃と比べて確実にクリーチャーの数は増えている。どこかでクリーチャーを放っている者がいるのだろうが、その者が放つペースを上げたのだろうか。
「いっそ移動しながらの方がよかったかもな。恐らく、俺たちが一点に集まって動かないでいるせいで、集中的に狙われている」
「マジかよ……」
 あくまで憶測だが、あながち間違ってはいなかった。事実、流と零佑のいつこの場所には、特に多くのクリーチャーが集まっていた。
「しかし、クリーチャーの殲滅が目的ならば、むしろ向こうからやって来る方が効率がいい。クリーチャーの発生源を叩くのは空城夕陽たちに任せ、俺たちは囮になっているのが適任だ」
「適任つーか、もうそうなっちまってんだけどな? まあ、俺としてもただ雑魚を狩ってる方が楽だし、それはそれで構わねえけど」
「そうだな。人なのかクリーチャーなのかは知らないが、探しものは得意ではない。そこは適材適所、役割分担だ。俺たちがこのクリーチャーたちを引きつけ、その間にあいつらが大元を叩けばいい」
 つまり、自分たちのすべきことはなにも変わらない。
「んじゃ、休憩終了だ。大事な後輩のためにも、もう一頑張りするとすっか」
「ああ、そうだな」
 休憩がてら雑談に興じていた流と零佑は、自分たちを取り囲むように集まっているクリーチャーたちを見遣り、デッキを構えた。
 と、その時だ。

「こんなところに集まっているとは……烏合の衆だな。本当に目的もなく動いているのか」

 クリーチャーを掻き分けて、一つの人影が姿を現す。
 いや、その影もクリーチャーだった。
「っ、《ゾロスター》……!」
 羽のように左右に広がった特徴的な赤髪。片手に錫杖を構えたその姿は、《策士のイザナイ ゾロスター》だった。
 いつかの文化祭で流が戦ったイザナイの一人。あの時は流が勝利し、確かにカードに戻したはずだ。しかし今、こうして目の間に存在している。
「お前、生きていたのか……?」
 思わずそんな言葉が漏れる流。しかし、ゾロスターの反応は流の創造するそれとは異なるものだった。
「? なんの話だ。私は貴様のことなど知らんぞ」
 疑問符を浮かべているゾロスター。その言葉に少し戸惑う流だったが、すぐにピンと来た。
(あの時のゾロスターとは別固体ということか……? 考えてみれば当然か。あの時のゾロスターはカードに戻し、俺が回収したはずだからな)
 なので【師団】がまた新しい《ゾロスター》のカードを実体化させたと考えるのが普通だろう。
 そんな風に考える流に対し、ゾロスターはまたも不可解なことを言う。
「それに、正確には私はゾロスターではない。今は確かに、ゾロスターだがな」
「……? どういう意味だ」
「深い意味はない。そもそも、私はただの偵察だしな」
 ゆえに貴様たちの相手をするつもりもない、と告げるゾロスター。
 しかし流としては、ここでゾロスターを野放しにしておくつもりもなかった。ゾロスターがこのクリーチャーたちを放っているとは思わないが、ゾロスターだってイザナイのクリーチャーだ。新しいクリーチャーを呼び出すことができるはず。
「……零佑」
「分かってんよ。そいつはお前に任せた。俺はちまちま雑魚を狩ってる」
「すまないな……ネプトゥーヌス」
「分かっている」
 ネプトゥーヌスを引き連れて流は歩を進め、ゾロスターの前に立つ。
「……やる気か?」
「ああ」
「私は確かに偵察だが……戦うな、とは言われていない。いいだろう、相手になってやる。だが、負けてから後悔しても遅いぞ?」
「ああ。勝てば問題ないな」
 ジッとゾロスターを見据える流。ゾロスターも静かな闘志を表し、錫杖を強く握る。
 次の瞬間、流とゾロスターは、神話空間へと突入した。



「…………」
 適当にクリーチャーを蹴散らしながらクリーチャーの発生源を探していた希野は、巨人と遭遇した。
 いや、巨人と言うには些か大げさだが、人類としてはかなり大柄な男だ。
 そして“ゲーム”の世界においても、かなりの大物であった。
「『夢海星辰クトゥルー』……!」
 染めているような青い髪を不揃いにたらした大男、【神聖帝国師団】帝国四天王が一人、クトゥルー。
 その男は押し黙ったまま、希野を見下ろしていた。
「…………」
 普段から口数の少ないクトゥルーは、この時も口を開かない。ただジッと、希野を見下ろしている。
 とりあえずこのままではなにも進まないので、希野は言葉を投げかけた。
「【師団】の四天王が、あたしのような一介の研究員になんの用かしら」
「…………」
「もしかしたら【師団】が噛んでいるかもとは思っていたけど、まさか四天王までもが動員されているなんてね。なにが目的?」
「…………」
「確か、『夢海星辰クトゥルー』と言えば四天王のリーダー格よね。他にも四天王はいるのかしら? 隊長クラスもいたり、もしかしたら師団長も?」
「…………」
 まったく反応がない、カマをかけてもなにも言わない、不動明王の如く動かない。石像だと言っても通じるほどに不動だった。
「やりにくい……」
 “ゲーム”の世界では、参加者同士の敵対心が強すぎてコミュニケーションができないことが多々あるが、それでもなにかしらの言葉は交わされるので、少なくとも相手の考えていることはなんとなく読み取れるもの。
 しかしクトゥルーはまったく言葉を発さず、表情すらも変化が見られないので、なにも分からない。やりにくことこの上なかった。
 しばらくクトゥルーに見下ろされていた希野は、やがてクトゥルーがローブの中に手を突っ込むのを見た。そしてその手が出て来たとき、握られていたのは、
「デッキ……?」
 再びクトゥルーを見る希野。やはり表情は変わらない。
 だが、向こうに戦う気があるということだけは理解できた。
「四天王のリーダーが相手なんて……あたしも【師団】内では評価されてるってことかしらね。光栄だわ」
 自分で言ってそうではないと思うものの、それでも希野は【ラボ】の中ではそれなりの実力者だ。【師団】がマークしていたとしても、おかしい人物ではない。
「……このまま睨み合っていても時間の無駄だし、お相手するわ」
 希野もデッキを取り出し、戦う意思を見せる。
 正直、希野は目の前の男に勝てるとは思っていなかった。確かに希野も決して弱いわけではないが、相手は【師団】の四天王、それもリーダー格であるクトゥルーだ。あまり前線には出ないので情報が少なく、どのようなデッキを使用するかもよく分かっていない。
 だが、相当な強者であることだけは分かる。それは彼の戦果だけでなく、こうして向かい合っている中で感じる空気からも読み取れた。
 しかし、希野は退かない。それは退けそうにないからではない。相手が如何に強かろうとも、撤退できる状況であっても、希野は戦う。
(情報の少ない【師団】の四天王……その情報を持ち帰るだけでも、【ラボ】にとってはプラスになる。さらに、その四天王を倒せれば——)
 ——所長も、もっと自分を評価してくれるかもしれない。
 そんなことを考える希野。自分でも過ぎた向上心、もはや慢心とも言えるような思考だと思うが、彼女も彼女で必死だった。
 嫌悪する双子の兄はかなり問題のある人物だが、なんだかんだ言っても優秀な研究者。性格に問題がありすぎて単純比較されることはなかったが、しかしどうしたって比べられてしまう。
 その評価がすぐに覆されるとは思っていない。だが、彼を知っているがゆえに湧き上がる劣等感は如何ともしがたかった。
 そんな様々な思いが混ざり合い、希野はデッキを構える。
 刹那、二人は神話空間の歪みに、飲み込まれていった。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.542 )
日時: 2014/03/21 03:16
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 汐とルシエルのデュエルは、まだどちらも準備段階だった。
「私のターン……《神門の精霊エールフリート》を召喚。山札の上から三枚を捲り、呪文の《コアクアンのおつかい》を手札に加え、ターンエンド」
 ルシエルのシールドは五枚。場には《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》《先導の精霊ヨサコイ》そして先ほど召喚した《神門の精霊エールフリート》の三体。《エナジー・ライト》で手札を増やしつつ、《ボーンおどり・チャージャー》でマナも伸ばしている。
「私のターンです。《コアクアンのおつかい》を発動し、山札の上から三枚を捲るですよ……《貴星虫ヤタイズナ》《猛菌恐皇ビューティシャン》《希望の親衛隊ファンク》を手札に加え、そのまま《ファンク》を召喚です」
 汐のシールドも五枚。場には《猛菌恐皇ビューティシャン》と、今しがた召喚した《希望の親衛隊ファンク》。こちらも《コアクアンのおつかい》で手札を、《ボーンおどり・チャージャー》でマナと墓地を増やしている。
 どちらも大型種族をメインとしたデッキなので、準備に時間がかかるのだ。果たして、どちらが先に切り札を呼び出すのか。
「前のターンに《エールフリート》で手に入れた《コアクアンのおつかい》を発動。山札の上三枚を捲り……《先導の精霊ヨサコイ》《乾杯の堕天カリイサビラ》《結杯の堕天カチャマサングン》を手札に。そして残った4マナで二体目の《ヨサコイ》を召喚」
 これで《ヨサコイ》が二体となり、次のターンにはルシエルの切り札である《ウェディング》を召喚されてしまう。
「手札にないことを祈りたいですが、《ウェディング》でなくとも大型アンノウンくらいは覚悟する必要がありそうですね……」
 ルシエルのマナは7マナあるので、最大で12マナのゼニス、アンノウンでも10マナまでは届く。《ウェディング・ゲート》に頼らず闇のエンジェル・コマンドを繰り出してくる可能性も十分に考えられた。
「手札も多いですし、危険な気配を感じるですが……ここは勝負です。《貴星虫ヤタイズナ》と《猛菌恐皇ビューティシャン》召喚し、ターン終了です」
 次のターン、切り札級の大型クリーチャーを出される可能性もあるが、汐も先に切り札を出せれば流れを引き寄せられる。今回は、その可能性に賭けた。
 しかし、切り札を先に出す、という点においては、残念ながらルシエルの勝利だった。
「ふふふ……愚かな悪魔の小娘。やはりどう足掻いても、あなたはここで裁かれる定めなのよ……!」
 ルシエルがニィッと口の端を釣り上げて微笑む。しかし瞳の奥は真っ暗で、そこだけは笑っていない。
 だが次に出されるクリーチャーを見れば、そんな不気味さなどに構ってはいられなくなる。
「私の場には《ヨサコイ》が二体……ゼニスの召喚コストは2ずつ下がり、合計で4下がる。つまり、6マナでこのクリーチャーを呼び出すわ……!」
 狂的な笑みを浮かべ、ルシエルは天頂の存在を呼び出す。

「《「俺」の頂 ライオネル》!」


「俺」の頂 ライオネル ≡V≡ 無色 (10)
クリーチャー:アンノウン/ゼニス 13000
ブロッカー
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から1枚目を裏向きのまま、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに加える。その後、自分のシールドをひとつ、相手に選ばせる。そのシールドを自分の手札に加えてもよい。
自分の手札に加えるシールドカードはすべて「S・トリガー」を得る。
T・ブレイカー
エターナル・Ω


 現れたのは、直立した純白の獅子の如きゼニス。あらゆるクリーチャーの「自分こそが一番」という思いが募り、集合体となった存在。即ち「俺」という自我の頂点。それが《「俺」の頂 ライオネル》だ。
「《ライオネル》の能力発動! 《ライオネル》を召喚して呼び出した時、山札からシールドを一枚追加し、その後、相手に私のシールドを選ばせて手札に加える……そしてこのシールドは、S・トリガーを使うことができる」
 しかも《ライオネル》自身の能力で、ルシエルが手札に加えるシールドはすべてS・トリガーを得ている。どのカードを選ぼうが、トリガーで飛びこと必至だ。
「さあ、選びなさい。如何なる裁きを受けるのか、あなたに選択の余地を与えるわ……!」
「……なら、《ライオネル》で追加したシールドを選ぶですよ」
 不気味に笑うルシエルはなるべく見ないようにして、汐は追加されたばかりのシールドを選ぶ。ルシエルはシールドにカードを仕込んでいないのでどれを選んでも同じだが。
 しかし、どれを選んでも同じというのは、中身が分からないのだから最善の結果を故意に選択できないという意味であり、場合によっては最悪の結果を招くことになる。
 そしてこの時、汐は最悪に近いカードを選んでしまった。
「……ふふっ。やはり神は、あなたを許さないと仰っているわ……S・トリガー!」
 《ライオネル》の能力でS・トリガーとなったカードが発動する。そしてそれは、《ライオネル》に続く天頂の存在。それも、最後の《ライオネル》だった。

「《「獅子」の頂 ライオネル・フィナーレ》!」


「獅子」の頂 ライオネル・フィナーレ 無色 (10)
クリーチャー:エンジェル・コマンド/アンノウン/ゼニス 12000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、自分のシールドを好きな数、手札に加えてもよい。その後、自分の手札を5枚まで、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに裏向きにして加える。
T・ブレイカー
エターナル・Ω


「っ、ここで《ライオネル・フィナーレ》ですか……」
 運が悪い。よりによってそのカードを引いてしまったか、と汐は嘆くが、嘆いてばかりもいられない。
 S・トリガーで出たクリーチャーは、コストを踏み倒してはいるが召喚扱いになる。つまり、ゼニスの召喚した時の能力が発動するのだ。
「《ライオネル・フィナーレ》の能力発動! 私のシールド五枚をすべて手札に加え、私の手札を五枚シールドへ!」
 この時、手札に加えられたシールドのS・トリガーも使うことができる。そして《ライオネル》の効果ですべてのシールドはS・トリガーを得ているので、
「五枚のシールドすべてがS・トリガーですか……」
 運頼りとはいえ、大型クリーチャーが大量に並ぶ可能性すらあり得る。凶悪な闇のエンジェル・コマンドが三体も四体も並ぶとなると、かなりまずい。
 だがこの時に現れるのは、より強大な、天頂の存在であった。
「S・トリガー! 《偽りの星夜 エンゲージ・リングXX》《超次元ドラヴィタ・ホール》《龍聖霊ウルフェウス》——」
 そして、

「——《「十尾」の頂 バック・トゥ・ザ・オレ》! 《「祝」の頂 ウェディング》!」


「十尾」の頂 バック・トゥ・ザ・オレ  無色 (10)
クリーチャー:エンジェル・コマンド/ゼニス 11000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、自分の山札を見る。その中からコスト6以下の呪文を2枚選び、相手に見せてもよい。その後、山札をシャッフルする。選んだ呪文のうち1枚を相手に選ばせて墓地に置く。もう1枚をコストを支払わずに唱える。
このクリーチャーが攻撃する時、コスト6以下の呪文を1枚、自分の墓地からコストを支払わずに唱えてもよい。その後、その呪文を自分の山札の一番下に置く。
W・ブレイカー
エターナル・Ω


 大型エンジェル・コマンドに加え、サイキック、そしてさらに二体のゼニスまでもが現れてしまう。
 そして何度も言うようだが、S・トリガーで出たクリーチャーは召喚だ。なので、正規召喚時の能力が発動するのだ。
「まずは《ドラヴィタ・ホール》で《エナジー・ライト》を回収し、開け、超次元の門。《時空の霊魔シュヴァル》をバトルゾーンに。そして!」
 《ライオネル・フィナーレ》でシールドに埋めてしまったのか、《ウルフェウス》の能力は不発だったようで、次に二体のゼニスの能力が発動する。
「《バック・トゥ・ザ・オレ》の能力発動! 召喚時に山札からコスト6以下の呪文を二枚選択……私が持ってくるのは《ウェディング・ゲート》二枚よ……!」
 どちらも《ウェディング・ゲート》。選んだ呪文のうち片方をタダで唱えられる《バック・トゥ・ザ・オレ》の能力は強力だが、選ぶ呪文は相手が選ぶのがネックだ。しかしこの選ぶカードを両方同じにすれば、確実に選んだ呪文を唱えられる。
 形式だけとはいえ、ルシエルは汐が片方の《ウェディング・ゲート》を選ぶ前に、さっさと祝福の門を開いてしまう。
「呪文《ウェディング・ゲート》! 手札から《結杯の堕天カチャマサングン》二体をバトルゾーンに! そして最後に《ウェディング》の能力発動! さあ、四枚のカードをシールドに埋めなさい!」
「……手札四枚をシールドにするですよ」
 ごっそりと手札を削られてしまった汐。とはいえ汐は手札が豊富なので、まだ一枚残っている。だがそれでも、ルシエルの場には大型クリーチャーが多く存在し、そのうち四体もがゼニスだ。
 圧倒的かつ絶望的状況。ルシエルが狂気的な高笑いを上げているほどだ。
 しかし対照的に汐は静かだった。だが、それは意気消沈しているからではない。

 勝利を確信しているからだ。

「……この程度ですか。ならば、私の勝ちですね」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.543 )
日時: 2014/03/20 21:40
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「……この程度ですか。ならば、私の勝ちですね」
「はぁ?」
 小さい汐の呟きを、ルシエルは聞き逃さなかった。そして、どこか彼女を嘲るような声を上げる。
「妄言ですね、この状況が分からないのですか? 四体のゼニスに加え、この数のエンジェル・コマンドが揃っているのですよ? ……あぁ、成程。あまりの神聖な気配にあてられてしまったのね。同情するつもりなんて微塵もないけれど、むしろそのまま浄化されて灰になればいいのに……」
 後ろの言葉はともかく、ルシエルの言っていることは間違ってはいない。
 彼女の場には《「俺」の頂 ライオネル》《「獅子」の頂 ライオネル・フィナーレ》《「十尾」の頂 バック・トゥ・ザ・オレ》《「祝」の頂 ウェディング》の四体のゼニスを初めとして、《偽りの星夜 エンゲージ・リングXX》《時空の霊魔シュヴァル》《龍聖霊ウルフェウス》《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》《神門の精霊エールフリート》、《先導の精霊ヨサコイ》《結杯の堕天カチャマサングン》が二体ずつと、相当数のクリーチャーを並べている。
 対する汐は、《ウェディング》の能力で手札四枚がシールドとなり、シールドは九枚あるが、場には《猛菌恐皇ビューティシャン》が二体と《希望の親衛隊ファンク》《貴星虫ヤタイズナ》の四体のみ。これらのクリーチャーで、ゼニス四体を擁するルシエルのクリーチャー軍と戦うのは厳しいだろう。
 この四体では、の話だが。
「このターンに《ヤタイズナ》を除去できなかった時点で、あなたの敗北はほとんど確定しているのですよ。私のターンです」
 《ライオネル》と《ライオネル・フィナーレ》のコンボからS・トリガーでクリーチャーを大量展開したルシエルだが、このターンに攻撃はできず、ターン終了。汐のターンが訪れる。
「ふふっ、各ターンの初め、私の場にコスト6以上のエンジェル・コマンドが二体以上存在しているため《シュヴァル》が覚醒——」
「の前に、です」
 汐がルシエルの言葉を遮る。確かにこのターンの最初に《シュヴァル》は覚醒するが、それよりも前に、発動する効果があるのだ。
「《ヤタイズナ》の能力発動です。私の墓地の進化クリーチャーをバトルゾーンに出すですよ」
「……今更、進化クリーチャーの一体や二体が出て来ても、この圧倒的状況は変わらない。いく足掻こうとも、悪魔に神の救いはないのだから、さっさと諦めて消えなさい!」
 苛立ち叫ぶルシエル。対する汐は、静かに言葉を返す。
「実を言うと、私はあまり神様というものを信じてはいないのです。なのでこの格好も、あまり乗り気ではなかったのですよ」
 汐は身に纏っている巫女服を少しつまんで、そんなことを言う。
「なので神の救いなんて、最初から期待はしていないですよ……ですが、神話の力になら、救われるかもしれないです」
 刹那、汐の墓地が暗く輝いた。《ヤタイズナ》の能力で、進化クリーチャーが蘇るのだ。
 この時、漆黒の渦に飲み込まれたのは《ヤタイズナ》《ファンク》《ビューティシャン》の三体。つまり、

「蘇りし月影の力、禁断の魔術と共に闇夜の空を射抜け。神々よ、調和せよ。進化MV——《月影神話 ミッドナイト・アルテミス》」

 『神話カード』が、降臨する。
「っ、《月影神話》……!?」
 現れた《アルテミス》に目を見開くルシエル。完全に汐と自分の場しか見ておらず、この展開は予想していなかったようだ。
『やっと出て来れたわ……汐、今回はあの女を射抜けばいいのかしら?』
「そうですね。ですが、今回は射殺す前に斬り殺してもらうですよ」
 さらりと恐ろしいことをのたまう汐。そもそも《アルテミス》は射“殺す”とまでは言っていない。
 《ヤタイズナ》の能力解決後、《シュヴァル》が覚醒する。


霊魔の覚醒者シューヴェルト 光/闇文明 (12)
サイキック・クリーチャー:エンジェル・コマンド/デーモン・コマンド 6500
H・ソウル
E・ソウル
相手がクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から1枚目を裏向きにし、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに加えてもよい。
相手が呪文を唱えた時、このクリーチャーは相手のシールドを1枚ブレイクする。
W・ブレイカー


 《シュヴァル》が《シューヴェルト》へと覚醒。しかし、汐にとってはそんなことなど些末な問題だ。
「まずは《アルテミス》の登場時能力発動です。手札から闇の呪文をコストを支払わずに唱えるですよ。呪文《英知と追撃の宝剣》」
 次の瞬間、虚空の巨大な剣が出現する。《アルテミス》は自身の弓を一度収めると、その剣を手に取った。
『斬り殺すって……そういうこと。こういうのは《マルス》とかが得意なのよね。私なんて、剣を握ったこともないのに』
 だが握ったことがなくとも、それが呪文による創造物である限り、彼女に扱えないということはない。
「《英知と追撃の宝剣》で選択するのは、《ライオネル》と《バック・トゥ・ザ・オレ》です。片方をバウンス、片方を破壊です」
「っ、くぅ……《バック・トゥ・ザ・オレ》を手札に戻して《ライオネル》を破壊! でも、エターナル・Ωで《ライオネル》も手札に戻る!」
 だが、どちらにせよ除去されることに変わりはない。
『はぁっ!』
 《アルテミス》は《英知と追撃の宝剣》を構えて疾駆する。宝剣を振るい、まずは《バック・トゥ・ザ・オレ》を袈裟懸けに切り裂いた。
『せいっ!』
 続けて《ライオネル》を横薙ぎで切り裂く。エターナル・Ωで両方とも手札へと戻ったが、宝剣を振るった余波でルシエルのマナも吹き飛ばされる。
「ゼニスが二体も……しかし、呪文を唱えたわね……! 《シューヴェルト》の能力で、あなたのシールドをブレイク!」
 呪文を唱えたことで《シューヴェルト》の能力が誘発し、汐のシールドがブレイクされる。だが《ウェディング》でシールドが九枚になっている汐にとっては、むしろ手札補充感覚でそのシールドを手に入れられた。
「このカードですか……なら、続けて呪文《スーパー・チェイン・スラッシュ》。《カチャマサングン》を破壊です」


スーパー・チェイン・スラッシュ 闇文明 (5)
呪文
相手のクリーチャーを1体破壊し、そのクリーチャーと同じ名前を持つ相手のクリーチャーをすべて破壊する。

 二体のうち一体の《カチャマサングン》が破壊され、連鎖的にもう片方の《カチャマサングン》も破壊される。
 呪文を唱えたので、また《シューヴェルト》の能力で汐のシールドがブレイクされるが、まだ七枚だ。
「ですが、やはり少し鬱陶しいですね。呪文《スパイラル・ゲート》で《シューヴェルト》をバウンス」
 《シューヴェルト》は解除を持っていないので、バウンスでも破壊でも除去されれば一発で超次元ゾーンに戻ってしまう。だが、最後の最後でその能力は発動した。
「ぐぅ……最後に《シューヴェルト》の能力でシールドをブレイク!」
 《シューヴェルト》の能力は呪文を唱えた時に発動するので、除去呪文でやられても、除去される前に効果が発動できる。超次元ゾーンへと戻される直前に、《シューヴェルト》は最後の力で汐のシールドをブレイクしたが、
「強制効果なので仕方ないことですが、あまり迂闊にシールドを割り続けない方がいいですよ。S・トリガー発動《地獄門デス・ゲート》……《ウルフェウス》を破壊し、墓地から《邪眼銃士ダーク・ルシファー》をバトルゾーンに」
 汐の呪文連打で、ルシエルのクリーチャーはあっという間に半分にまで減らされてしまった。
 しかし、まだこの呪文乱射は止まらない。
「さあ、いよいよ攻撃しに行くですよ。《アルテミス》で攻撃、その時《アルテミス》の能力発動です。CD12で、墓地からコスト合計12以下になるよう呪文を唱えるですよ」
 あらかじめ墓地を肥やしておかなければ、《アルテミス》はその力を存分に発揮できない。だが、汐はこのターンに呪文を何度も使用している。なにも事前の墓地肥やしをしなくとも、一度使用した呪文を再利用する感覚でも《アルテミス》の能力は発動できるのだ。
「墓地から唱えるのは、このターンに唱えた《英知と追撃の宝剣》と《スーパー・チェイン・スラッシュ》です。まずは《英知と追撃の宝剣》で《ライオネル・フィナーレ》と《ウェディング》を選択です」
 ゼニスにはエターナル・Ωの能力があるのでどちらも手札に戻るが、四体も展開したルシエルのゼニスが、一瞬で消え去ってしまう。
 再び《英知と追撃の宝剣》を携えた《アルテミス》はゼニスへと突っ込み、宝剣を振るう。
『ふっ!』
 一撃目は下から上に向けて振り上げるように宝剣を振るい《ライオネル・フィナーレ》を切り裂く。
『はっ!』
 二撃目は宝剣を投擲する。《英知と追撃の宝剣》の切っ先が、《ウェディング》を貫いた。
「あ、く、ぐぅ……《ウェディング》までも……!」
 歯噛みするルシエル。あれだけ上手くはまって展開できたゼニスが一瞬ですべて消えてしまったのだ。そして相手は汐。相当悔しいだろう。
 だが、悔しがっている場合でもない。まだ《アルテミス》の能力は終わっていないのだ。
「続けて《スーパー・チェイン・スラッシュ》です。《ヨサコイ》を破壊です」
『やっと弓が使えるわ、剣ってどうも手に馴染まないのよね……だから、加減はなしよ』
 《アルテミス》は背負っていた漆黒の弓を掴み取り、素早く構えた。放つ矢は力を失った魔術。そこに新しい力を注ぎ込み、再び術式を発動させる。
『——っ』
 呼気と共に、弓から魔術の矢が解き放たれる。その矢は一直線に《ヨサコイ》を射抜くと、軌道を曲げ、続けてその隣にいたもう一体の《ヨサコイ》も貫いた。
「これで呪文はお終いです。なので」
『Tブレイクよ!』
 次は荒々しく弓を番え、射出する《アルテミス》。荒々しい動きで放たれた矢は、荒々しくルシエルのシールドを三枚まとめて吹き飛ばす。
「っ、ぐぅ……! まだ、まだよ……ゼニスは手札にいるし、また展開し直せば、今度こそ——」
「そんなこと、させると思っているのですか」
 ルシエルの言葉を遮る汐の声は、鋭く彼女に突き刺さった。
「なんのために《アルテミス》に苦手な剣を握らせたと思っているのですか。あなたの場には《ヨサコイ》もいない、なによりマナゾーンのカードがほとんどないのですよ」
「ぐっ、この……!」
 一発だけでも大量のアドバンテージを叩き出す《英知と追撃の宝剣》。それを《アルテミス》の能力と合わせて二発放ったのだ。バトルゾーンだけでなく、ルシエルはマナゾーンもボロボロになっている。
「私のターン! 《ボーンおどり・チャージャー》を発動し、《エンゲージ・リングXX》でWブレイク!」
 残り少ないマナで、必死に足掻くルシエル。《エンゲージ・リングXX》で汐のシールドを割るが、まだ四枚も残っている。《ウェディング》の能力が裏目に出てしまっていた。
「手札を増やしておいてよかったですね……私のターン」
『このターンの初めに、山札をシャッフルするわ。そして山札の上三枚を墓地へ!』
 一見すると、直接的なアドバンテージが取れず、微妙な能力に見えるが、この能力があるからこそ《アルテミス》で墓地から唱えた呪文をまた墓地に落としやすくなり、ついでに他の呪文も墓地に落とせる。
 そして汐にとっては幸運にも、ルシエルにとっては不運にも、墓地に落ちた三枚の中には《英知と追撃の宝剣》があった。
 さらに、
「マナがなくて手札が使いきれないようですね。そんなに手札が多くては持ちきれないでしょう。お節介だとは思うですが、私が取り払って差し上げるですよ。呪文《ロスト・ソウル》」
 相手の手札を根こそぎ叩き落とす呪文《ロスト・ソウル》。この呪文で、ルシエルはさらに目を見開く。もはや絶望なのか憤慨なのか分からない、おぞましい表情を見せていた。
 ともかく《ロスト・ソウル》でルシエルの手札に戻ったゼニス諸共、他のカードがすべて墓地へと落とされる。
「さらに《アルテミス》で攻撃、墓地から呪文《英知と追撃の宝剣》《インフェルノ・サイン》を唱えるですよ。《エールフリート》と《ブラッディ・シャドウ》を選択し、墓地から《邪眼皇ロマノフⅠ世》をバトルゾーンに」
『そろそろこの剣の扱いにも慣れて来たわ。消えなさい!』
 今度は唐竹割のように縦に剣を振り下ろし、ルシエルのブロッカーを一掃する。マナゾーンカードもついでに吹き飛ばし、もはやシノビすら出せない状態だ。
「そして、残りのシールドをブレイクです」
『せいっ!』
 《アルテミス》は振り下ろした剣を、向きをそのままに突き出し、ルシエルの残るシールド二枚を吹き飛ばした。
 割ったシールドのうち一枚が、光の束となって収束する。《ウェディング・ゲート》、祝福の門が開かれるが、手札をすべて叩き落されたルシエルに、呼び出せる堕天使はいない。
 もはや、彼女は無力だった。
「くっ、ぐぅ、この、悪魔があぁぁぁぁぁ!」
 ルシエルの狂気の叫びも、もはや虚しく木霊するだけだ。悪魔ならざる悪魔の使者を操る汐は、最後に命令を下す。
 堕ちた天使と狂気の信者を斃す命令を。

「《邪眼銃士ダーク・ルシファー》で、ダイレクトアタックです——」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.544 )
日時: 2014/03/21 09:11
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「俺のターン《禍々しき取引 パルサー》召喚。俺は手札がないので、カードを捨てずに2ドローだ」


禍々しき取引(トランス・サクション) パルサー 火文明 (3)
クリーチャー:アウトレイジ 2000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の手札をすべて捨て、その後、カードを2枚引く。


 黒村とシーザーのデュエルは、現状では黒村優勢だった。
 黒村のシールドは四枚。場には今召喚した《禍々しき取引 パルサー》に《斬斬人形コダマンマ》《死神術士デスマーチ》。
 対するシーザーのシールドは二枚で、《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》を三体並べ、なんとか凌いでいる。
「さらに墓地の《サビ・クロー》を進化元に墓地進化《デスマーチ》を召喚。《デスマーチ》でシールドブレイク」
「ぬぅ、《デスマーチ》相手では《ブラッディ・シャドウ》でも太刀打ちできない……ここはブロックしない!」
 二体の《デスマーチ》がシーザーのシールドを叩き割る。そのうち一枚が、光の束となって収束していった。
「S・トリガー発動《プライマル・スクリーム》! 山札の上四枚を墓地へ送り、墓地から《魔光蟲ヴィルジニア卿》を回収ゥ!」
 シーザーの墓地に視線を送る黒村。次のターン、シーザーが何をする気なのかは分かる。だが、それを止める術は黒村にはない。
 なら、今はできることをするだけだ。
「……《斬斬人形コダマンマ》でダイレクトアタック」
「《ブラッディ・シャドウ》でブロックッ!」
 とどめの一撃は当然のようにブロックされ、《コダマンマ》と《ブラッディ・シャドウ》は共に破壊される。
「さァ私のターンだッ! 流石『傀儡劇団ティアリカル』、よくぞこの私をここまで追い詰めた、その功績は称えよう。だがァ! それもここまでだァ! 《ヴィルジニア卿》を召喚ッ! 墓地の《グレイテスト・シーザー》を回収し、そのまま進化ァ!」
 序盤から《エマージェンシー・タイフーン》を連打して墓地にカードを送り込んでいたシーザーの墓地には、早くも切り札が眠っていた。《ヴィルジニア卿》がその眠りを覚まし、《ブラッディ・シャドウ》と共に進化する。
「暗黒の海原を統べる大皇帝、そして我が名を冠する絶対龍! 現れろ! 《暗黒皇グレイテスト・シーザー》!」
 シーザーの切り札にして彼の力そのものとも言える暗黒騎士の暗黒龍。この早い順目で、出て来てしまった。
 だがこれだけでは打点が足りない。なので彼は、墓地からこの状況をひっくり返す呪文を詠唱する。
「《グレイテスト・シーザー》で攻撃ィ! その時、能力発動ゥ! 墓地から呪文ッ! 《憎悪と怒りの獄門》!」


憎悪と怒りの獄門(エターナル・ゲート) 闇/火文明 (6)
呪文
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
相手のシールドが自分より多ければ、この呪文を唱えることができる。
自分のシールドと同じ数のシールドを、相手は自身のシールドゾーンから選ぶ。相手は残りのシールドを手札に加える。


 煉獄へと繋がる門扉が開かれる。その瞬間、黒村のシールドはすべて、獄門から伸びる数多の鎖に貫かれてしまった。
 《憎悪と怒りの獄門》、その能力を端的に言うのであれば、相手のシールドを自分と同じ枚数にする呪文だ。
 自分よりも相手のシールドが多いときにしか使えないので、自分のシールドが少なければ少ないほど、そして相手のシールドが多ければ多いほど、その効力は増す。そして今、シーザーのシールドはゼロ。
 なので黒村は、一瞬で四枚のシールドがなくなってしまったのだ。
「ハーハッハハァ! 悪いがこのまま決めさせてもらうぞォ! 《グレイテスト・シーザー》で、ダイレクトアタックだァ!」
 シールドを失った黒村に、《グレイテスト・シーザー》が襲い掛かる——はずだった。

「……S・トリガー発動《阿弥陀ハンド》。《グレイテスト・シーザー》を破壊」


阿弥陀ハンド 闇文明 (3)
呪文
S・トリガー
自分のシールドをひとつ墓地に置く。
相手のクリーチャーを1体破壊する。


 忘れてはならないのが、《憎悪と怒りの獄門》は名前こそ禍々しいものの、シールド焼却と言うわけではない。手札に加えられたシールドにS・トリガーがあれば、それは使用することができるのだ。
 シールドから飛び出した《阿弥陀ハンド》は襲い掛かってくる《グレイテスト・シーザー》の頭を掴み、握り潰す。
 《グレイテスト・シーザー》の攻撃は、通らなかった。
「な……ッ!?」
「惜しかったな。だが、これで終わりだ」
 はっきり言って黒村がここで助かったのは、運が良かったからだ。だが、運が良かろうが悪かろうが、それは勝利に到達するまでの道程でしかない。
「俺のターン。《パワフル・ビーム》を発動し、《ブラッディ・シャドウ》を破壊」
 残った最後のブロッカーを破壊し、これでシーザーの場のクリーチャーはいなくなる。シールドもゼロ。
 死の操り人形が、シーザーに襲い掛かる。
「《死神術士デスマーチ》で、ダイレクトアタックだ」



「呪文《爆進イントゥ・ザ・ワイルド》で3マナ加速! さらに《熱湯グレンニャー》を召喚して一枚ドロー!」
 九頭龍と龍泉のデュエルは、互いに大量のマナを加速させている。
 どちらもシールドは五枚あり、九頭龍の場には《コッコ・ルピア》と《エコ・アイニー》。序盤から《メンデルスゾーン》も合わせて、いつも以上にマナを加速させている。
 対する龍泉の場には、今召喚した《熱湯グレンニャー》と《腐敗無頼トリプルマウス》、そしてクロスギアの《インビンジブル・スーツ》。
「僕のターン。ドローして……こいつか。なら、今引いた《仰天無双 鬼セブン「勝」》を召喚するよ」


仰天無双 鬼セブン「勝」 火文明 (6)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター/エイリアン 6000
自分の手札に加える、コスト7以上のクリーチャーであるシールドカードはすべて、「S・トリガー」を得る。
このクリーチャーが攻撃する時、自分のシールドをひとつ相手に選ばせてもよい。そのシールドを自分の手札に加える。
W・ブレイカー


 九頭龍はマナブーストのために手札をかなり消費しており、そこに《トリプルマウス》のハンデスも加わって、手札がない状態だ。マナは十分なので、そのまま引いた《鬼セブン「勝」》を召喚してターンを終える。
「俺のターン……ギャハハハ!」
 龍泉のターンが回ってきた直後、龍泉は急に高笑いを上げた。九頭龍は、なんとなく次に彼が起こす行動が読めた気がする。
「最高のドローだ……まずは《インビンジブル・スーツ》を《グレンニャー》にクロス! そして《緑銅の鎧》を召喚! 山札から《バイオレンス・サンダー》をマナゾーンへ!」
「来たかぁ……ってことは」
 龍泉は最後の手札を使い、切り札を呼び出す。
「呪文《母なる星域》! 《緑銅の鎧》をマナゾーンへ送り、マナゾーンから進化クリーチャーをバトルゾーンに! 《グレンニャー》進化! 《極仙龍バイオレンス・サンダー》!」
 《母なる星域》の力を借り、《グレンニャー》は《バイオレンス・サンダー》へと進化する。そして、
「今度こそ極仙の雷で消し飛ばしてやるよ! 《バイオレンス・サンダー》でTブレイク!」
 《バイオレンス・サンダー》の雷光が九頭龍のシールドを三枚吹き飛ばす。同時に、稲妻がクリーチャーたちにも襲い掛かった。
「相手プレイヤーへの《バイオレンス・サンダー》の攻撃がブロックされなかったので、能力発動! お魔のパワー6000以下の雑魚はすべて破壊だ!」
 《コッコ・ルピア》や《エコ・アイニー》は勿論、召喚したばかりの《鬼セブン「勝」》までもが破壊されてしまった。
「さらに三枚ドロー。お前に手札はねえから、ハンデスはできねえか……まあいい、ターン終了だ」
 先んじて大型クリーチャーを呼び出されてしまった九頭龍。クリーチャーも一掃され、相手は追撃の準備まで整えている。
 だが、まったく問題はなかった。
「戦う前にも言ったけど、僕も一応【ラボ】の研究員だからね。一度戦った相手に負けるなんてことはありえない」
 言いながらカードを引き、九頭龍はマナゾーンのドラゴン三体を重ねる。
「《ベートーベン》《ビバ・ラ・レボリューション》《ヴァルトシュタイン》の三体を重ね——マナ進化GV! 《超天星バルガライゾウ》!」
「っ、《バルガライゾウ》だと…!」
 大型ドラゴンの登場に戦慄する龍泉。九頭龍がそうであるように、彼も九頭龍と戦っているため、彼のデッキがどういうものかは理解している。だからこそ、次に起こるであろう事態を想像し、戦くのだ。
「僕のデッキはとにかく大きいドラゴンを積んでるからね、普通にそいつらを連打するだけで、普通に勝てちゃうのさ。というわけで《バルガライゾウ》で《バイオレンス・サンダー》に攻撃、メテオバーン発動!」
 《バルガライゾウ》の咆哮で九頭龍の山札の上から三枚が捲られる。そしてその三枚は、
「三枚ともドラゴンだね。《偽りの王 フォルテッシモ》《偽りの王 カンタービレ》《偽りの王 ルードヴィヒ》」


偽りの王 フォルテッシモ 闇/火文明 (8)
クリーチャー:キング・コマンド・ドラゴン/アンノウン 8000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
バトルゾーンにある自分のドラゴンはすべて、「スピードアタッカー」と「スレイヤー」を得る。
W・ブレイカー


偽りの王 ルードヴィヒ ≡V≡ 火文明 (14)
クリーチャー:キング・コマンド・ドラゴン/アンノウン 12000
このクリーチャーを召喚する時、自分のマナゾーンにあるドラゴンを好きな数選び、そのマナの数字を1のかわりに2にしてもよい。
スピードアタッカー
このクリーチャーが攻撃する時、相手のパワー7000以下のクリーチャーを1体破壊する。
T・ブレイカー


 まず《バルガライゾウ》が《バイオレンス・サンダー》を破壊し、墓地に叩き込んだ。
 次に揃って現れた三体のキング・コマンド・ドラゴンが、それぞれ出撃する。
「《ルードヴィヒ》で攻撃! その時パワー7000以下の《トリプルマウス》を破壊して、Tブレイク!」
 龍泉のシールドが一瞬で三枚消し飛んだ。《バイオレンス・サンダー》同様にTブレイクだが、破壊できるのは7000以下を一体だけ。手札補充もハンデスもできない。
 しかし代わりに、後から次々とドラゴンが襲い掛かってくる。
「《カンタービレ》でWブレイク!」
「ぐ……!」
 S・トリガーも出ず、たった1ターンで龍泉のシールドはなくなってしまう。そしてクリーチャーもシールドもゼロとなった龍泉に、偽りの力を得たキング・コマンド・ドラゴンが襲い掛かる。
「《偽りの王 フォルテッシモ》で、ダイレクトアタック」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.545 )
日時: 2014/03/23 01:31
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 流とゾロスターのデュエル。流はシールド三枚、ゾロスターは五枚。
 流の場には《キング・ケーレ》が一体、《キング・シャルンホルスト》《飛散する斧 プロメテウス》が二体ずつ。
 ゾロスターの場には《浮魂 ターメリック》《闇噛のファミリア ミョウガ》《マントラのイザナイ カリーナ》《神託の守護者 胡椒》《提督のマントラ ヴォスラディッシュ》《策士のイザナイ ゾロスター》《神聖麒 シューゲイザー》。
 手札破壊で妨害し、《カリーナ》の光臨などで次々とクリーチャーを展開する《ゾロスター》。流石の流もこの物量に押され、苦しい状態にあった。
『私のターン。《ヴォスラディッシュ》を召喚!』


提督のマントラ ヴォスラディッシュ 闇文明 (6)
クリーチャー:オラクル/ドラゴン・ゾンビ 5000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から3枚をすべてのプレイヤーに見せる。このようにして見せたオラクルをすべて、自分の手札に加えてもよい。残りを好きな順序で山札の一番下に戻す。


 《ゾロスター》は追加の《ヴォスラディッシュ》を召喚し、手札を補充する。捲れた三枚は《神淵のカノン 愛染》《慈愛のマントラ フリル》《神聖騎 オルタナティブ》。この中の《愛染》と《フリル》が手札に入った。
『そして《シューゲイザー》で攻撃! 《シューゲイザー》の能力で、手札から《フリル》をバトルゾーンに!』
「《キング・シャルンホルスト》でブロック!」
 互いにパワーは7000。なので相打ちとなって共に破壊されるが、《ゾロスター》の攻撃は止まらない。
『さらに《カリーナ》で攻撃! 《ヴォスラディッシュ》《ミョウガ》も行け!』
「《カリーナ》は《キング・ケーレ》、《ヴォスラディッシュ》は《キング・シャルンホルスト》でブロック……!」
 なんとか《ゾロスター》の場数を減らしながら攻撃を防ぐが、最後の《ミョウガ》の攻撃は喰らってしまう。これでシールドは二枚だが、それ以上に《ミョウガ》がタップされてしまうことが重要だった。
『ターン終了。その時、私の能力で《ミョウガ》を生贄に捧げ、山札からコスト7以下の無色クリーチャーを呼び出す。出でよ《神聖騎 オルタナティブ》!』
 山札から現れたのは《オルタナティブ》。登場時能力で流のクリーチャーのパワーが6000下げられるが、今の相手の場には《ゾロスター》がいる。
 なので、
『私がバトルゾーンにいる時に《オルタナティブ》が現れれば、相手クリーチャーを一体破壊する! 《キング・シャルンホルスト》を破壊だ!』
 パワー低下が確定除去へと変更され、本来破壊されるはずのなかった《キング・シャルンホルスト》がやられてしまう。
「こいつ、以前よりも強い……!」
 別固体のクリーチャーのようだが、それでも以前戦った《ゾロスター》と比較すれば、こちらの方が強いように感じる。
「シールドは残り二枚、ブロッカーも《キング・ケーレ》のみ。相手の場にはアタッカーは四体、うち一体はWブレイカーか……」
 正直、相当厳しい。今の手札では、この状況は打開できない。
「なら、とにかく今は時間を稼ぐ。《アクア・スーパーエメラル》を召喚。手札とシールドを入れ替る。さらにシールドから手に入った《斬隠テンサイ・ジャニット》を召喚、《フリル》をバウンス」
『ふん、無駄なことを』
 流のプレイングを鼻で笑う《ゾロスター》。だが、確かに流の行動はその場凌ぎでしかない。防げるのは1ターン程度だろう。
 だが、その1ターンすらも、凌ぎ切れないかもしれない。
『……ふっ、ここでこれか』
 ドローしたカードを見るや否や、ふっと微笑む《ゾロスター》。同時に、流の背に悪寒が走り抜ける。
「流、なにか来るぞ」
「ああ……分かっている」
 ネプトゥーヌスが呼びかける。分かってはいるが、今の流にはどうしようもない。ただ、このターンの流れに身を委ねるしかないのだ。
『貴様のすべてを無にしてやろう。これで終わりだ! 《策士のイザナイ ゾロスター》を進化!』
 次の瞬間、バトルゾーンの《ゾロスター》だけでなく、カードを操る《ゾロスター》までもが光に包まれた。そして、不可解なおぞましい存在が降臨する——

『——《破獄のマントラ ゾロ・ア・スター》!』


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