二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.371 )
日時: 2014/02/02 00:09
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「ひまり先輩……」
「ごめんね、夕陽君。ちょっと遅くなっちゃった」
 軽い調子で謝るひまり。ウインクまでする軽さだが、嫌にはならない。
 むしろその軽さと明るさが、夕陽に平静の心を取り戻させる。
 ひまりは夕陽に目を向けた後、今度は鋭い視線を、ジークフリートへと移す。
「……で、私の後輩になんの用だったの? 流石に温厚な私でも、後輩を虐められたら怒るよ」
「別に虐めてねえし、まだなにもしてねえよ。んでもってお前の後輩に用もなくなった。今現在において用があるのは……お前だぜ、『太陽一閃サンシャイン』」
 夕陽に向けたものと変わらない笑みを浮かべるジークフリート。しかしその視線は、夕陽に向けた時よりも熱が入っている。
「んー……まあ話には聞いていたが、やっぱ普通だな。ま、普通の女も悪くはない。特に日本人は俺好みな感じだ——」
 と、そこまで言ったところで、ジークフリートは視線を落とした。その視線の先には、彼のコートの裾を引っ張っている膨れっ面のシャルロッテ。
「ダーメー! うわきはダメ! ダメなの!」
 ぐいぐいとシャルロッテは裾を引っ張る。ジークフリートはそんな彼女の頭をくしゃくしゃと撫で、
「分かってるっての。一番はお前だ、ロッテ。単純に俺の好みを暴露しただけだから気にすんな」
「むー……ほんとう、ジーク?」
「本当だ。俺がお前に嘘を言ったことあるか?」
「あるけど……わかったよ、しんじる」
「そりゃよかった」
 そして、またひまりと向き合うジークフリート。年齢で言えば、シャルロッテはまだ小学校に上がっているかいないかくらいだろう、ジークフリートは確実に成人はしている。二人の間には十歳以上の年齢差があるはずだが、ジークフリートのシャルロッテに対する接し方は、子供をなだめるようなそれではない。本当に、男と女の関係が現れているように見える。
(いや、まさかな……)
 夕陽はあらぬ想像をしてしまったが、それを振り払う。今はそんなことを考えている場合ではないのだ。
「……特徴のない見た目してるのは私自身が一番よく知ってるよ。そんなことよりも、なんの用なの?」
「ああ? なんの用もへったくれもねえよ。お前、まさかとは思うが、自分がどういう存在か分かってないわけないよな?」
「……まあね」
 朝比奈ひまり。『太陽一閃サンシャイン』。
 《太陽神話 サンライズ・アポロン》の所有者。
 そのプロフィールだけで、十二分に【師団】から狙われる理由にはなる。
「あんまりお前が見つからねえものだから、お前の後輩とやらを餌につるつもりだったが、そっちから出向いてくれるとはな。お陰で手間が省けたぜ。日本人ってのは気が利くな」
「あなたに気を利かせるつもりで来たんじゃないよ。ただ、用事が終わったから後輩たちの様子を見に来ただけ」
 素っ気ないひまりの返しに、しかしジークフリートは愉快そうに口元を緩める。
「つれねえなあ……ま、なんでもいい。あんまりぐだぐだしてっと、あの女に邪魔されかねねーし、さっさと始めるか。……ロッテ」
 ひまりに視線を向けながら、シャルロッテの名を呼ぶジークフリート。しかし、当のシャルロッテからの反応はない。
「……あ? おい、ロッテ?」
「むー」
 シャルロッテは、分かりやすく頬を膨らませて、ジークフリートを睨んでいた。
「どうした? 早くお前のカード渡せよ、戦えねーだろ」
「やだ。ロッテがたたかうもん」
「はぁ? なに言ってんだお前」
「こーいうとき、いっつもジークばっかりたたかうなんてずるい。ロッテももっとあそびたい」
「遊びじゃねーし……ったく、参ったぜ……」
 ジークフリートは、本当に困ったような表情で顔を覆う。
「あー……じゃあこうすっか。あのな、今回は今までの戦争の中でも特に重要なんだ」
「しらないもん。そんなのジークのつごーじゃん」
「最後まで聞け。だから、お前に任せるわけにはいかねえんだ。ここは俺に譲れ。そしたら今度、お前の好きな相手と好きなように好きなことを好きにさせてやる」
 些か意味不明な発言だったが、その言葉でシャルロッテは目を輝かせる。
「ほんとっ?」
「本当だ。俺が今までお前に嘘を言ったことあるか?」
「あるけど……だったら、わかった。やくそくだよ」
「ああ、だから早くカードを渡してくれ」
「うん……はい」
 シャルロッテはブラウスの胸ポケットから一枚のカードを取り出し、ジークフリートに手渡す。
「待たせたな。こっちは準備万端だぜ」
「……とてもあの厳格な【師団】の長とは思えないなぁ」
 夕陽も同意見だ。
「ま、でも人は見かけで判断しちゃいけないか。特にデュエマと“ゲーム”は、ね」
「先輩……」
 一歩前に出るひまり。どうやら、彼女も彼女で、戦う気のようだ。
 だが、夕陽としては今すぐひまりを連れて逃げたい。戦ってこそいないが、戦わなくても分かるほどにジークフリートは強い。しかもただ単純に強いのではなく、言葉では言い表せないが、こちらとは存在している次元が違うかのような、ルールの根底から噛み合わないような、そんな異質さを感じる。
 ひまりが負けるとは、夕陽も思っていない。しかしジークフリートとだけは、戦ってほしくない。それが夕陽の考えだった。
 しかし、
「大丈夫だよ、夕陽君」
 そんな夕陽の心中を見透かしたように、ひまりは背を向けたまま言葉を紡ぐ。
「私が自分の用事を済ませてる間、みんなに任せっきりで、随分と迷惑かけちゃったみたいだし、ボス戦くらいは私が請け負うよ」
 だからさ、と彼女は続け、
「私に任せて」
 短い言葉で、締め括った。
「……はい」
 夕陽は頷くことしかできない。正直、不安に思うところはいくらでもある。だが、ここで戦いに出るひまりの行動を否定することは、夕陽にはできなかった。
 広場の中央で、ひまりとジークフリートが向かい合う。
「俺は女には優しいつもりだが、万が一って事態もありうる。なにか言い残すことはないか?」
「ないよ。そういうのは全部、終わったから」
 刹那。

 二人を飲み込む神話空間への扉が、開かれた——

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.372 )
日時: 2014/02/02 13:03
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「ゆーくん!」
「空城君っ」
「先輩」
 ひまりとジークフリートが神話空間に飲み込まれてすぐのことだ。
 夕陽が連絡を入れると、このみ、姫乃、汐の三人はすぐに広場に駆けつけた。
「とりあえず連絡を受けたので来たのですが……これはどういう状況ですか」
「ひまり先輩は見つかったんだよね? とりあえず、そこはよかったよ……」
「それよりさ、あの子は誰? なんか、しだんちょーがどーとかこーとか言ってたけど」
「まとめて言うなよ。僕だって混乱してるんだ」
 師団長の登場、ひまりの登場、そしてその二人の対戦——その一部始終を見ていた夕陽だが、いまだに頭はついて来ない。
「まだいまいち飲み込めないけど……【師団】の師団長が来たんだよ。あの子は師団長補佐とか言ってたけど……それで、そこにひまり先輩も来て、師団長は先輩を狙ってたから、その流れで二人が……」
 自分でも要領の悪い説明だと思いつつ、なんとか状況を理解してもらおうとする。
 だがやはり、それ以上に気がかりだ。
(先輩……)

 ひまりとジークフリートの戦いが——



 ひまりとジークフリートのデュエル。
 シールドはお互い五枚。
 ひまりのバトルゾーンには《コッコ・ルピア》。
 ジークフリートのバトルゾーンには《ニヤリー》。
「さて、じゃあこっちから先に仕掛けさせてもらうぜ。呪文《戦慄のプレリュード》!」
 ジークフリートは、前のターンに《ニヤリー》で手に入れていた《戦慄のプレリュード》を唱える。
 これでこのターン、コスト6までの無色クリーチャーなら召喚できる。そして《ニヤリー》で手に入れていたのは、《プレリュード》だけではない。
「《妖精左神パールジャム》を召喚!」
 現れたのは、神の左腕たる《パールジャム》。その能力で、マナを一枚加速させる。
 先んじて大型クリーチャーを召喚されてしまったひまり。しかし、
「私のターン。《爆竜 GENJI・XX》を召喚!」
 こちらもドラゴンを繰り出し、
「《GENJI》で攻撃! Wブレイク!」
 そのままジークフリートのシールドを二枚、叩き割る。
「先手は貰ったよ」
 先んじてシールドをブレイクしたひまり。得意気という風でもないが、先に大型クリーチャーを呼び出したジークフリートに言い返す。
「……はっ、やるじゃねえか」
 そしてジークフリートも、そんなひまりのプレイングに口元を綻ばせた。
「プレイとしてはともかく、その意気込みは買うぜ。俺のターンだ。《戦攻右神マッシヴ・アタック》を召喚!」
 続いて今度は右のゴッド・ノヴァ《マッシヴ・アタック》を召喚するジークフリート。流れるようにして一対のゴッド・ノヴァが揃ってしまった。
「《パールジャム》と《マッシヴ・アタック》をG・リンク! 《マッシヴ・アタック》の召喚時、及びリンク時能力でカードを二枚ドロー。《パールジャム》リンク時能力でマナを追加!」
 《パールジャム》はマナを、《マッシヴ・アタック》は手札を増やすゴッド・ノヴァ。この二体はデュエル・マスターズにおける重要なアドバンテージを堅実に稼いでくれるため、序盤から繰り出せば有用に作用する。
 そして、一体となった神の一撃が放たれる。
「《パールジャム&マッシヴ・アタック》で《GENJI》を攻撃! 破壊だ!」
 神の右腕が細身の剣を振るう。《GENJI》も十字の刀を両手に構えてその斬撃を捌いていくが、左神の飛ばした剣が《GENJI》の身体を真っ二つに切り裂く。
「リンクすればゴッドのパワーは上がる。殴り返される可能性は考えなかったのか?」
「どうだろうね」
 《ニヤリー》では攻撃せずにターンを終えるジークフリート。そして、ひまりのターン。
「……《神託の王 ゴスペル》を召喚。登場時能力で、お互いの山札の一番上を捲るよ」
 捲られたカードは、ひまりが《コッコ・ルピア》。ジークフリートが《大地と永遠の神門》。
「ビンゴ! あなたのデッキから捲られたのは呪文だから、《ゴスペル》の能力でコストを支払わずに唱えさせてもらうよ。《大地と永遠の神門》を発動、マナゾーンからコスト7以下のゴッドをバトルゾーンに! 出て来て《龍神ヘヴィ》!」
 ひまりがマナゾーンから呼び出すのは《龍神ヘヴィ》。まずは《ゴスペル》の能力を解決させ、一枚ドロー。そして次に、《ヘヴィ》の能力で自身を破壊。
「そしてあなたも、クリーチャーを一体破壊して」
「ならば《ニヤリー》を破壊だ」
 登場すれば、互いに一体ずつクリーチャーを破壊する《龍神ヘヴィ》。最後にひまりは、カードをもう一枚ドロー。
「まさかお前のデッキにもゴッドがいるとはな……盲点だったぜ。俺のデッキのキーカードを使われるなんざ、なかなか粋なことするじゃねえか」
 自分が本来使うはずのカードを利用されたにも関わらず、ジークフリートは笑みを見せた。
「だが、このターンでゴッドを破壊できなかったのが残念だったな。今の俺の場にいるゴッドのパワーも、《ゴスペル》のパワーも同じだが、こっちは破壊されても片方は生き残る。お前とは除去耐性が違うんだ」
 ジークフリートの言う通りだ。ゴッドはリンクする手間がかかる、というのがデメリットだが、リンクした後はかなり強力なクリーチャーとなる。純粋にパワーが上がり、リンク時の能力が発動し、さらに破壊されても片方は生き残る。リンク先がフリーなゴッド・ノヴァだと特にそうだが、生き残った片方に再びリンクさせやすい。
「つーわけで、とりあえず《夢幻左神スクエア・プッシャー》を召喚。山札の上二枚を墓地に送り、《パールジャム&マッシヴ・アタック》で攻撃」
 そして、
「アタック・チャンス発動! 《黄泉秘伝トリプル・ZERO》!」
 バトルゾーンにはコスト6以上の無色クリーチャーがいるので、山札の上から一枚をシールドにした後、手札、マナもそれぞれ追加する。
「そんでTブレイク!」
「っ……!」
 先手を取ったはずのひまり。しかしシールドの枚数というアドバンテージも、あっさりと突き崩されてしまった。
「……いや、まだだよ。《偽りの名 ヤバスギル・スキル》を召喚!」


偽りの名(コードネーム) ヤバスギル・スキル 闇文明 (8)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ/アンノウン 8000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、またはこのクリーチャーが攻撃する時、ドラゴン・ゾンビまたはコスト7以上のクリーチャーを1体、自分の墓地から手札に戻してもよい。そうした場合、相手のコスト6以下のクリーチャーを1体破壊する。
W・ブレイカー


「《ヤバスギル・スキル》の効果で墓地の《ヘヴィ》を回収して、《スクエア・プッシャー》を破壊!」
「やるなぁ……だが、その程度じゃあリンクしたゴッドは潰せないぜ?」
「だったら直接殴る! 《ゴスペル》でリンクしたゴッドに攻撃!」
 《ゴスペル》のパワーとリンクした《パールジャム&マッシヴ・アタック》のパワーは同じ。相打ちになるが、ゴッドは破壊されても片方が生き残る。このままでは《ゴスペル》が一方的に破壊されるようなものだ。
 しかし、逆に言えば、ゴッドは破壊されたら片方だけが残るのだ。
「《ゴスペル》の効果発動! 互いの山札の一番上を捲る!」
 捲られたのは、ひまりが《ヤバスギル・ラップ》。ジークフリートが《双魔左神ディーヴォ》。


ヤバスギル・ラップ 闇文明 (4)
呪文
バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。相手はそのクリーチャーを破壊してもよい。相手が破壊しなかった場合、自分はクリーチャーを1体、自分の手札または墓地からバトルゾーンに出してもよい。


「……運のいい奴だな」
 《ヤバスギル・ラップ》は二つの強力な効果がある。どちらの効果が発動するかは相手が決めるものの、どちらを選んでも得られるものは大きい。
「選択するのはリンクしたゴッド。さあ、破壊する? しない?」
 破壊すれば《ゴスペル》にやられるが、破壊せずともクリーチャーが飛び出す。ひまりは最低でも《ヘヴィ》を握っているので、どちらを選んでもリンクしたゴッドは二体とも破壊される。
「どうすっか。《ヘヴィ》を無駄撃ちさせたいが、そうすると《ヤバスギル・スキル》の弾が補填されんだよなぁ……ちっ、ままよ。ゴッドは破壊しないぜ」
「なら手札から《ヘヴィ》をバトルゾーンに出して即破壊。そっちもクリーチャーを一体選んで破壊して」
 とはいえ、破壊するクリーチャーはゴッドしかいない。ジークフリートは《パールジャム》を残したが、そちらも《ゴスペル》に破壊される。たった1ターンで三体ものゴッドを破壊されてしまった。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.373 )
日時: 2014/02/02 15:25
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 ひまりとジークフリートのデュエル。
 ひまりのシールドは二枚。バトルゾーンには《コッコ・ルピア》《神託の王 ゴスペル》《偽りの名 ヤバスギル・スキル》。
 ジークフリートのシールドは四枚。バトルゾーンにはなにもない。
 《ゴスペル》のアタックトリガーによって唱えられた《ヤバスギル・ラップ》。その能力で出て来た《ヘヴィ》の効果も合わせてリンクしたゴッドが一度に排除されてしまったのだ。
「ったく、面倒だぜ……俺のターン」
 ジークフリートは気だるげににカードを引く。しかしそれは、無気力でやる気のないこととは違う。
 先ほどはままよ、などと言ったが、実際のところジークフリートはそれなりに先を見据えてゴッドを破壊しなかった……より正確に言うなら、《ヘヴィ》を無駄撃ちさせたのだった。
「《戦慄のプレリュード》を発動。そしてコストを5軽くし《精霊左神ジャスティス》召喚! その能力で山札の上から五枚を捲り、呪文発動! 《大地と永遠の神門》で、墓地から《爆裂右神ストロークス》をバトルゾーンに!」
 一気にリンクしたゴッドを除去したひまりだが、ジークフリートも1ターンで左右の神をリンクさせる。
「G・リンク! 《ストロークス》の能力で《コッコ・ルピア》を破壊!」
 ドラゴンの召喚をサポートする《コッコ・ルピア》がやられる。さらにこのリンクしたゴッドは、さっき破壊したゴッドとは違う点がある。
「この《ジャスティス&ストロークス》のパワーは15000。余裕で《ゴスペル》を破壊できる。つーわけで《ゴスペル》に攻撃だ!」
 《ジャスティス》の放つ光弾と《ストロークス》の放つ業火。左右の腕から繰り出される攻撃を受け、《ゴスペル》は墓地へと沈んでいく。
「俺のターンはこれで終わりだ。さあどうする? 仮に返しのターンでこの《ジャスティス&ストロークス》を除去できたとしても、俺は《ジャスティス》を残す。《ジャスティス》はコスト7だから《ヤバスギル・スキル》の効果じゃ破壊できねーし、殴り返そうにも相打ちが精々だ」
 だが下手に相打ちで場数を減らしてしまうと、次のジークフリートのターン、また連続でゴッドを呼び出されでもした時の対処が遅れてしまう。ここは慎重になるべきだ。
「うーん、参ったな……」
 《ヘヴィ》を無駄撃ちさせたのは、除去される可能性をできる限り取り除こうとしたからだろう。《ヤバスギル・スキル》の能力は召喚時と攻撃時にしか発動しないので、墓地の《ヘヴィ》を回収しようと思えば一度攻撃する必要がある。かといって攻撃してからでは回収した《ヘヴィ》でゴッドを除去することができない。
「……引いてきたのはこれか。まあ、そうなるよね、仕方ない」
 言って、ひまりはマナゾーンのカードをタップする。
「《コッコ・ルピア》を召喚! 続けて《黒神龍アバヨ・シャバヨ》を召喚!」
 《黒神龍アバヨ・シャバヨ》。4コストとドラゴンの中では軽いクリーチャーで、召喚時に自分クリーチャーを破壊すれば、相手自身もクリーチャーを破壊しなければならない。つまり、コストが軽くなった分ドロー効果のない《ヘヴィ》だ。
「私が破壊するのは《アバヨ・シャバヨ》自身だよ」
「また破壊か……リンク解除、《ストロークス》を破壊し、《ジャスティス》を残す」
 やはりジークフリートは《ジャスティス》を残してきた。ここで《ストロークス》を残そうとするものならなにか裏があると踏んで手を変えるつもりだったが、そうではない。
 ジークフリートの手は、強力ではあるが単純だ。ならば対処することも、難しくはない。
「《ヤバスギル・スキル》で《ジャスティス》を攻撃! 効果で墓地の《ヘヴィ》を回収するよ」
 クリーチャーは破壊できないが、墓地の《ヘヴィ》を再装填できただけで十分だ。そもそもこのデッキにおける《ヤバスギル・スキル》とは、そういう役割を持っている。
「相打ちかよ。そんなにG・リンクされるのが怖いか?」
「勿論。当然でしょ」
 ジークフリートの軽い挑発にも、事もなげに返すひまり。その様子に、ジークフリートの頬はますます緩む。
「……はっ。素直な奴だな。だが、確かに左右のゴッドがやられるときついぜ……」
 無色のゴッド・ノヴァは、ほぼすべてが6マナ以上の大型クリーチャー。そのため、一度に何体も召喚できるものではないのだ。コスト軽減や踏み倒しを活用すればその限りではないが、というかそもそもジークフリートのデッキはそういう構成になっているのだが、そう立て続けに連続召喚できるような手は来ない。
「ま、まともなクリーチャーがいないのは向こうも同じなわけだし、焦らず行くか。《邪眼右神ニューオーダー》を召喚し、ターンエンドだ」
 言葉通り、いくらゴッドを破壊されようとも、ジークフリートはまったく焦りを見せない。平然と次なるゴッドを呼び出してくる。
 しかし焦りを見せないのはジークフリートだけではないし、次々とクリーチャーを呼び出すのも彼の専売特許と言うわけではない。
「私のターン。《偽りの名 バルガ・ラゴン》《龍神ヘヴィ》を召喚! 《ヘヴィ》の能力で《ヘヴィ》自身を破壊!」
「《ニューオーダー》を破壊だ」
 召喚された傍から破壊された《ニューオーダー》。さっきは焦りを見せない、などと述べたが、焦らずともジークフリートは不愉快そうに舌を鳴らす。
「ちっ、出した瞬間に破壊しやがって、つまんねえぜ……もっと面白いこと出来ねえのかよ」
「面白いことするつもりで、こんなことやってるつもりはないからね。ターン終了だよ」
 ジークフリートに取り合うこともなく、ターンを終えるひまり。
 このターン、ゴッドの破壊に目が行きがちだが、ひまりも隙を見つけては攻めの姿勢を見せている。次のターンから《バルガ・ラゴン》で攻撃し、ドラゴンを展開していくつもりなのだ。
 しかしジークフリートも、やられっぱなしではない。
「お、これを引いたか。なら賭けてみるか……《霊騎右神ニルヴァーナ》を召喚。効果で《コッコ・ルピア》をタップ。さらにG・ゼロ、呪文《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》」
 このターン引いてきた《ニヤリー・ゲット》でカードを探す。ジークフリートは、捲られた三枚のうち二枚を掴み取った。
「大当たりだ。《戦慄のプレリュード》と《イズモ》を手札に。そして呪文《戦慄のプレリュード》! からの《イズモ》を召喚! 《ニルヴァーナ》とG・リンク!」
 今度は左右のゴッドではなく、中央とその右腕となるG・リンクだ。
「《ニルヴァーナ》のリンク時能力で《バルガ・ラゴン》をタップ! そんでそのまま、二体神《イズモ》で《バルガ・ゴン》を攻撃!」
 タップされた《バルガ・ラゴン》は、一度も攻撃できないまま右神とリンクした《イズモ》に殴り返され破壊される。
「破壊されちゃった……どうしよっかな」
 ゴッドと同じく、ドラゴンも軽いクリーチャーではない。《コッコ・ルピア》がいるとはいえ、そうポンポン召喚できるものではないのだ。特に、今のひまりのデッキなら。
 ゆえにコスト踏み倒し手段の一つである《バルガ・ラゴン》が破壊された損失は大きい。
「んー……《緑神龍バルガザルムス》と《ガンリキ・インディゴ・カイザー》を召喚」


ガンリキ・インディゴ・カイザー 水文明 (7)
クリーチャー:ブルー・コマンド・ドラゴン/ハンター 7000
相手がクリーチャーを召喚した時または呪文を唱えた時、このターン、相手のクリーチャーは、攻撃またはブロックできない。
W・ブレイカー


「うぜぇのが出たなぁ……」
 ひまりの召喚したクリーチャーを見て、ジークフリートはうんざりしたように息を吐く。
 ジークフリートのデッキは、展開力はそれほど高くないため、ゴッドが破壊された時のことを考えて、毎ターンゴッドをバトルゾーンに出す傾向にある。だがそうした場合《ガンリキ・インディゴ・カイザー》の能力で攻撃が止められてしまう。
 攻撃を止めてしまうと、今度は相手からの反撃を喰らいかねない。そうするとせっかく出したゴッドがまたやられ、そのゴッドを補填するとまた攻撃できず、反撃を受け……といった具合に、堂々巡りとなってしまう。
「お前のシールド残り二枚だからな、このまま殴り切ってもいいが……」
 そこでジークフリートは、『太陽一閃サンシャイン』、朝比奈ひまりという人物についての報告を思い出す。
 今こうして向き合っている限りでは、そこまでの異常さは感じない。当然だ、彼女はそういう存在なのだから。“ゲーム”参加者としては異常なほど異常さがない、普通の存在。特殊なんてものはありえない。
 しかしそこから生じる結果は、彼女の普遍性からは考えられないほど異常だ。彼女の行動、性質が、結果、結末と合致しない。手なりに進めているデュエルでも、どこから曲がるか分かったものではない。
「なんかあっても困るしな……俺の性分じゃねえんだが、しゃーねぇ、安全策だ。《光姫左神ブラッディ・バレンタイン》を召喚し、《イズモ》とG・リンク!」
 右腕には《ニルヴァーナ》、左腕には《ブラッディ・バレンタイン》と、両腕を得た《イズモ》。《インディゴ・カイザー》の能力で攻撃はできないが、《ブラッディ・バレンタイン》はブロッカーなので、スピードアタッカーでとどめを刺されることもないだろう。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.374 )
日時: 2014/02/02 17:07
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 ひまりとジークフリートのデュエル。
 ひまりのシールドは二枚。バトルゾーンには《コッコ・ルピア》《緑神龍バルガザルムス》《ガンリキ・インディゴ・カイザー》。
 ジークフリートのシールドは四枚。バトルゾーンには《霊騎右神ニルヴァーナ》《光姫左神ブラッディ・バレンタイン》とリンクした《イズモ》。
 互いにクリーチャーの除去合戦や、《インディゴ。カイザー》による攻撃ロックなどで牽制し合っており、なかなか場が進まない。
 しかしひまりのターン、彼女は攻めに出た。
「《ブラッディ・バレンタイン》……ブロッカーで、しかも三体でリンクしたゴッド。除去するのは難しいけど、結局は一体しかいないわけだし、無理やり突破できなくもないよね」
 そんなひまりの言葉に、妙な感覚を覚えるジークフリート。彼としてはそのような認識はないが、人はそれを、悪寒と呼ぶのだ。
「呪文《運命》!」
 どこからか、重い旋律が響き渡る。
 ひまりが唱えるのは、《運命》。《「戦慄」の頂 ベートーベン》の専用アタック・チャンス呪文だが、ドラゴンの比率が高いひまりのデッキなら、普通に唱えても十二分に効果を発揮する。
「つーか、そんなカードを連ドラで手打ちする方がおかしいだがな……」
 ぼやくように言いながら、ジークフリートは空気を震撼させる旋律を聞く。
「山札からカードを五枚ドロー。そして……さあ、あなたの運命。あなたが決めて」
 ひまりの手札は、裏向きのままジークフリートの目の前へと移動。そこから選んだ三枚が、ジークフリートの行く末を決める。
「……はんっ、運命な。んなもん、とっくの昔に確定してるっつーの」
 乱暴に三枚のカードを掴み取ると、その三枚をひまりへと投げ飛ばす。残ったカードはひまりの手札へと戻った。
「ほら、さっさと選んだカードを見せな」
「……いいよ。じゃあ、公開ね」
 裏向きになっている三枚のカードが反転し、表向きとなる。
「《吠えろ魂!鬼ビルダー「轟」》《暗黒GUY・ゼロ・ロマノフ》《光神龍ダイヤモンド・グロリアス》の三体をバトルゾーンへ!」


暗黒GUY(ガイ)・ゼロ・ロマノフ 闇文明 (7)
クリーチャー:ダークロード/ドラゴン・ゾンビ/ハンター 8000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札を見る。その中から闇のカードを1枚選び、自分の墓地に置いてもよい。その後、山札をシャッフルする。
このクリーチャーが攻撃する時、コスト6以下の闇の呪文を1枚、自分の墓地からコストを支払わずに唱えてもよい。その後、その呪文を自分の山札の一番下に置く。
W・ブレイカー


光神龍ダイヤモンド・グロリアス 光文明 (8)
クリーチャー:アポロニア・ドラゴン 7000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、そのターン、自分の他のクリーチャーが相手プレイヤーを攻撃することができない効果はすべて無効になる。(召喚酔いや、「このクリーチャーは攻撃することができない」または「このクリーチャーは相手プレイヤーを攻撃できない」などの効果が無効になる)
W・ブレイカー


 選ばれたのは、三枚ともドラゴン。しかも、最悪とまでは言わないが、ジークフリートにとってはかなり厄介な三体だ。
「まずは《鬼ビルダー「轟」》の能力で、ブロッカーを破壊して」
 登場時に、相手に自身のブロッカーを三体選ばせ破壊する《鬼ビルダー「轟」》。リンクしたゴッドは一体のクリーチャーとして扱われるので、破壊できるのは一体だけ。だがブロッカーでない《イズモ》や《ニルヴァーナ》も、ブロッカー能力を得ていることになり、破壊対象となりえる。
「……《ニルヴァーナ》を破壊だ」
 《イズモ》は自身の右腕を切り落とす。《鬼ビルダー「轟」》の咆哮により、切り離された《ニルヴァーナ》は消滅した。
「続けて《ゼロ・ロマノフ》の能力で、山札から《黒神龍グールジェネレイド》を墓地へ。さらに《ダイヤモンド・グロリアス》の能力で、このターン《ダイヤモンド・グロリアス》以外の私のクリーチャーの召喚酔いはなくなるよ」
 つまり、《ダイヤモンド・グロリアス》を除いて、ひまりのクリーチャーはすべて攻撃可能になったということだ。ジークフリートは《イズモ》の片腕も破壊され、ブロッカーは一体のみ。ご丁寧に《ゼロ・ロマノフ》で《グールジェネレイド》まで落としている。シールドが四枚あるとはいえ、かなり危ない。
「まずは《ゼロ・ロマノフ》で攻撃、《バルガザルムス》の能力で山札を捲って、ドラゴンだから手札に。そして効果発動! 墓地の《ヤバスギル・ラップ》を発動させるよ!」
 《ゼロ・ロマノフ》は、種族こそ差異があるが、基本的に《邪眼皇ロマノフⅠ世》と同じ性能だ。かのクリーチャーと同じように、一度撃った呪文を再び放つことができる。
 そしてジークフリートはまた、苦渋の決断を強いられることとなった。
「ゴッドを破壊するか、次のドラゴンが出てくるかのどっちかだよな……今度こそ、マジでどうすっか。どっちを選ぼうがブロッカーは残るが、《インディゴ・カイザー》がいるせいで、攻撃を通してS・トリガーが出ればブロックはできなくなる。ニンジャ・ストライクも無意味だしなぁ……」
 後続のドラゴンが出て来るのは嫌だが、ここで《イズモ》を失いたくもない。しかしそうして《ゼロ・ロマノフ》をブロックしても、墓地から《グールジェネレイド》が復活する。
「……畜生が、鬱陶しいと思ってたが、ちっとは楽しくなってきたじゃねえか。いいぜ、ゴッドは破壊しない」
「だったら墓地から《GENJI》をバトルゾーンに出すよ。《ゼロ・ロマノフ》でWブレイク!」
 狩人の魔銃を構える《ゼロ・ロマノフ》。だがその前に、片腕の神が立ち塞がる。
「通さねえよ。その攻撃はブロックだ!」
「それなら《ゼロ・ロマノフ》破壊されて、墓地から《グール》をバトルゾーンに!」
 ひまりの墓地にはもう闇の呪文がないので、《ゼロ・ロマノフ》を生かしておく必要はないのだが、《インディゴ・カイザー》がいるせいで先にブロックしておかなければ、もしS・トリガーが発動した時に困る。
「《GENJI》で攻撃、Wブレイク!」
 続けて《GENJI》の刃が、ジークフリートのシールドを二枚、切り裂いた。
「っ、やっぱ来るよな。S・トリガー発動《地獄門デス・ゲート》! 《インディゴ・カイザー》を破壊し、墓地の《ニルヴァーナ》をバトルゾーンに! 《イズモ》とリンクし《鬼ビルダー「轟」》と《ダイヤモンド・グロリアス》をタップだ!」
 斬られたシールドのうち一枚は光の束となって収束する。その光はやばて闇へと変換され、地獄へと繋ぐ門を形成。門の内より悪魔の腕が伸び、《インディゴ・カイザー》を引きずり込む。
 そして《インディゴ・カイザー》の命と引き換えに呼び出されたのは、先ほど破壊されたばかりの《ニルヴァーナ》。その能力で《鬼ビルダー「轟」》《ダイヤモンド・グロリアス》をタップして止める。
「あー……攻めきれないか。だったら《バルガザルムス》と《コッコ・ルピア》でもシールドブレイク!」
 立て続けにシールドを割られ、ジークフリートのシールドはゼロ。かなり追い詰められてしまった。
 しかし、
「いいぜ、なかなか面白くなってきたじゃねえか。やっぱ最高だ、『太陽一閃サンシャイン』。俺の目に狂いはなかった……!」
 そんな状況下でも、いや、そんな状況下だからこそ、ジークフリートは笑っていた。酷く好戦的な眼差しを、ひまりに向けていた。
「こんなに強いなら、もっと早くにこっち来ればよかったな。失敗したぜ」
「……なに? もしかしてあなたって、戦闘狂ってやつなのかな? あの【神聖帝国師団】のトップが。意外だね」
 高揚しているジークフリートに対して、ひまりは素直な感想を述べたが、本人には否定された。
「馬鹿か、そんもんと同じにすんな。俺の目的はあくまで『神話カード』、戦うこと自体じゃねえ。俺は【神格社界ソサエティ】の馬鹿野郎じゃねえんだよ」
「じゃあ、なんなの?」
 純然たる興味から尋ねるひまり。ジークフリートはその問いに対して、あっさりと答える。
「そんな難しい話じゃねえよ。無力な奴から『神話カード』を奪ってもつまらねえだろ。事務的に、機械的に『神話カード』を集めても虚しいだけだ。それなりに張り合いのある相手から手に入れてこそ、充足感もあるってものだ。だから俺は、【師団】内の『神話カード』は最も安全な手元に置かず、手に入れた団員に一任している。もしそいつがやられて他の奴の手に渡れば、その野郎はそいつよりも強いってことになる」
 その結果が悲惨なんだがな、と言って締め括る。要するに、やりがいの問題、ということだろうか。
「お前みたいな強い奴から《太陽神話》を蒐集できると思えば、多少ハイにもなる。ま、そういうわけだ、『太陽一閃サンシャイン』。お前の『神話カード』、奪わせてもらうぜ」
「……そう上手く行くかな」
 初めて、《太陽神話》略奪を宣言したジークフリート。対してひまりは、どこか遠くを見つめるような表情で、呟いた。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.375 )
日時: 2014/02/02 20:46
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「なんだ、このデュエルは……」
 ひまりとジークフリートが戦う様を見て、夕陽は——いや、夕陽だけでなく、このみも姫乃も汐も、吃驚していた。
「まりりんせんぱい、すごい……」
「凄いって言うか、ひまり先輩、いつもと違うよ……」
「ですね……」
 ひまりの様子、雰囲気もどこか違うが、目に見える範囲——デッキの内容という観点から見ても、ひまりは変だ。
「いつものひまり先輩のデッキは火と自然、オーソドックスなステロイドの連ドラに、タッチで闇を加えた三色」
「なのに今使ってるデッキは、それに光と水、ゼロ文明も加えたオールカラーのデッキ、だよね」
「ドラゴンばっかりのデッキだけど、あんなデッキ、まともに動かせるの?」
 傍から見て、ひまりのデッキはかなり異色だ。これまで見たカードだけでも、このみがデッキの回転を気にするほど滅茶苦茶な構成になっている。
 だがそんな構成でも十全に戦っている、彼女のプレイングの凄まじさも同時に理解する。今まで何度も彼女と戦ってきたが、その時々によって勝ったり負けたりと、結果は様々だった。確かに強いが、こんな異常な腕はしていなかった。
 それが今は、違う。いつものひまりとは、明らかにかけ離れている。
「……先輩」
 そんなひまりを見つめる夕陽は、言葉を漏らす。意味はない、いや、ある意味では多重の意味を込めた呟きだ。その中の意味には、ひまりに向けたものもある。
 しかし、その呟きがひまりに届くことは、ないのだけれど。



 ひまりとジークフリートのデュエル。
 ひまりのシールドは二枚。バトルゾーンには《コッコ・ルピア》《緑神龍バルガザルムス》《吠えろ魂!鬼ビルダー「轟」》《光神龍ダイヤモンド・グロリアス》《爆竜GENJI・XX》《黒神龍グールジェネレイド》。
 ジークフリートのシールドはゼロ。バトルゾーンには《光姫左神ブラッディ・バレンタイン》《霊騎右神ニルヴァーナ》とリンクした《イズモ》。
 《運命》からのドラゴン大量展開でジークフリートを追い詰めたひまりだったが、対するジークフリートは敗北の色をまったく見せない。
「……ちっとばかしお喋りが過ぎたか。俺のターンだ」
 先ほどまで意気揚々と熱を入れて語っていたジークフリートは、急に冷めたようにカードを引く。
 しかしそれでも、彼の熱は引き切っていないように見えるが。
「このまま攻めてもいいんだが、やっぱS・トリガーが出た場合も想定しとかねえとな……クリーチャーは潰せるだけ潰しとかねえと後が面倒だ。まずは《インフェルノ・サイン》で墓地の《双天右神クラフト・ヴェルク》を復活。さらに《戦慄のプレリュード》でコストを5下げ《紫電左神ヴィタリック》を召喚」
 ジークフリートは、またしても一気に二体のゴッドを呼び出す。そして次の瞬間、パキンッとなにかが割れるような音が響いた。
「リンク解除。《イズモ》から《ニルヴァーナ》のリンクを外すし、《クラフト・ヴェルク》と《ヴィタリック》はG・リンク」
 中央G・リンクを持つ《イズモ》の能力、リンク解除によってできた布陣は、《ブラッディ・バレンタイン》とリンクした《イズモ》、《ヴィタリック&クラフト・ヴェルク》、《ニルヴァーナ》の三体だ。
 要するに、《ニルヴァーナ》のリンクを外しただけなのだが、勿論このリンク解除には意味がある。
「アタッカーを増やして私のクリーチャーを殲滅するつもり……?」
「正解だ。んじゃ、まずは二体神《イズモ》で《GENJI》を攻撃、破壊だ!」
 《イズモ》と《ブラッディ・バレンタイン》の光線により、《GENJI》は破壊された。
 リンク解除は、基本的にゴッド・ノヴァのリンク時能力を使い回したり、ゴッドのパワーを調整したり、より強力な腕に付け替えるためにある。
 しかし、付けるばかりがG・リンクではない。ゴッドはリンクしてしまえば一体のクリーチャーとなり、最終的な打点、攻撃回数が落ちてしまうこともある。だがリンク解除を用いれば、必要なところでそのリンクを外し、攻撃回数を増やすことができるのだ。
「《ヴィタリック&クラフト・ヴェルク》で《鬼ビルダー「轟」》を攻撃! その時《ヴィタリック》の能力でアンタップ、《クラフト・ヴェルク》の能力で一枚ドローし、手札を一枚シールドへ!」
 攻撃と同時にアンタップした《ヴィタリック&クラフト・ヴェルク》。《鬼ビルダー「轟」》を破壊しつつ、シールドも増やす。
「再び《ヴィタリック&クラフト・ヴェルク》で《ダイヤモンド・グロリアス》を攻撃、《クラフト・ヴェルク》の能力でカードをドローしつつシールド追加! 《グロリアス》を破壊!」
 弓矢で射抜かれ刀で切り裂かれた《ダイヤモンド・グロリアス》も破壊され、シールドは二枚まで回復する。
「《ニルヴァーナ》で《コッコ・ルピア》を攻撃!」
 最後に《ニルヴァーナ》の突風が《コッコ・ルピア》を吹き飛ばし、これも破壊。ひまりの場に残ったのは《バルガザルムス》と《グールジェネレイド》だけだ。
「これで攻撃は終了だ。ターンの終わりに《ブラッディ・バレンタイン》の能力でリンクした《イズモ》をアンタップ」
 防御に抜かりはない。シールドを追加しただけでなく、ブロッカーを起こして守りを固める。パワーもそれなりに高い上、次のターンにはまた新しくリンクされてしまうので、今の戦力では強引な攻めも難しい。
「この手札じゃ突破は厳しいな……とりあえず《竜のフレア・エッグ》と《光神龍シャイニング・エッジ》を召喚!」


竜のフレア・エッグ 火文明 (3)
クリーチャー:エッグ 1000
自分のターンのはじめに、自分の山札の上から1枚目を墓地に置く。そのカードが進化ではないドラゴンであれば、このクリーチャーを破壊してもよい。そうした場合、そのドラゴンをバトルゾーンに出す。
このクリーチャーは攻撃することができない。


光神龍シャイニング・エッジ 光文明 (7)
クリーチャー:アポロニア・ドラゴン 6500
相手のクリーチャーが攻撃する時、相手はバトルゾーンにある自身のタップされていないクリーチャーを1体選び、タップする。
W・ブレイカー


「攻撃は……しないでおこう。ターン終了」
「なんだ、急に弱気になったな? さっきまでの威勢はどうしたんだ? もっとガンガン来いよ」
「こっちにもいろいろ考えってものがあるんだよ」
 好戦的になっていくジークフリートとは逆に、どこか冷めたような態度で平静を維持し続けるひまり。やはりひまりの様子は、いつもとどこか違う。
「ちっ、まあいい。だったらその考えとやらに期待しとくぜ」
 舌打ちつつカードを引き、目を細めるジークフリート。彼の視線は、自らのデッキに向いている。
「……まあ、まだなんとなるか。《真滅右神ブラー》を召喚。《イズモ》のリンク解除発動」
 また、パキンッとなにかが分断するような音が響く。
「まずは《ヴィタリック》と《ニルヴァーナ》をリンク。《シャイニング・エッジ》をタップだ。続けて《ブラッディ・バレンタイン》と《ブラー》をリンク、《イズモ》と《クラフト・ヴェルク》をリンク」
 出来上がったのは、《ヴィタリック&ニルヴァーナ》《ブラッディ・バレンタイン&ブラー》そして《クラフト・ヴェルク》とリンクした《イズモ》の三体。
 アタックトリガーを連発できる《ヴィタリック》と《クラフト・ヴェルク》のリンクを外したのは、山札がなくなることを危惧してのことだろう。ジークフリートのデッキは、マナ加速、手札補充、墓地肥やし、シールド追加などでかなり削られており、残り少ない。《クラフト・ヴェルク》の能力は強制なので、連続で使用したくはないのだろう。
「つっても、このターンで終わらせるつもりだけどな。まずは《ヴィタリック&ニルヴァーナ》で《シャイニング・エッジ》を攻撃だ」
「っ、なら《シャイニング・エッジ》の能力発動! そっちのクリーチャーを一体タップして!」
 攻撃と同時に《ヴィタリック&ニルヴァーナ》がアンタップし、さらに《シャイニング・エッジ》の光の鎖が放たれる。その鎖の行先を決めるのはジークフリート。
「《ブラッディ・バレンタイン&ブラー》をタップ。《シャイニング・エッジ》を破壊!」
 《ヴィタリック》の刃に切り裂かれた《シャイニング・エッジ》も破壊される。相手が攻撃するたびにタップさせるので、ジークフリートの攻撃を止めようと思ったのだが、早々に潰されてしまった。
「これで邪魔なクリーチャーはいねえ。覚悟しな」
 《ニルヴァーナ》とリンクした《ヴィタリック》の刃、そして《イズモ》を主人とする《クラフト・ヴェルク》の弓が、ひまりへと向けられる。彼女を斬り、射抜くべく。
 神の腕が、彼女に牙を剥く。


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