二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.396 )
日時: 2014/02/15 08:33
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 箱の中に入っていたのは、カードだった。
 大量のカードが、いくつかのデッキケースに分けて入っている。
 だが夕陽が着目したのは、それらのカードではなかった。
「これは——」
 唯一デッキケースには入らず、単独でそこにある。彼女も、夕陽も、幾度となく手にしてきたカード。
「——《アポロン》」
 真っ先、そのカードを手に取る。懐かしい手触り、そして温かな感覚が伝わってくる。
 だが同時に、あの時の悲嘆が蘇る。
「先輩……なんで、いなくなってしまったんですか……!」
 あの時、ジークフリートと戦ったのは、彼女だ。
 しかし自分が戦うこともできたはずだ。そんな、今更変えようもない運命を考えてしまった夕陽。
 もし自分が、勇気を振り絞って戦っていれば、こんな気持ちにはならなかった。そして、彼女も。
「あの時、僕が戦っていれば、先輩はここにいた……僕の、弱さのせいなのか……」
 取り戻しつつある夕陽の心中。しかし無の侵食が再び始まろうかという、その時だった。

「そんなことはない!」

「っ!?」
 どこからか、少年のような声が響き渡る。
「だ、誰……!?」
 周りを見渡すが、しかしそれらしい人影は見えない。だが、
「ここだ、こっちだ!」
「え……?」
 声は何度も響く。その音源をたどっていく夕陽。そして、一つのものへとその視線が向いた。
「《アポロン》……?」
「そうだ!」
 刹那。

 《太陽神話 サンライズ・アポロン》から、小さな影が飛び出した。

「うわ……っ!?」
 あまりに突然だったため、尻餅をついてしまう。
 手に持っていた《アポロン》のカードもない。さっきの拍子に落としてしまったのかと思い、近くの地面を探るが、カードは見当たらなかった。
 代わりに、
「こっちだ、こっち!」
 また、少年の声が聞こえた。その声の主へと、目を向ける。
「……アポロン?」
「そうだ。こうして会うのは初めてだな、夕陽!」
 目の前にいるのは、幾度と召喚し、共に戦ってきた《アポロン》のカードに描かれたクリーチャーと、よく似た少年。
 見た目はほとんど《アポロン》なのだが、しかし妙に幼く見えるというか、そもそも頭身がおかしい。手足は短く、二頭身程度しかないように見る。
 妖精、もしくはデフォルメされた《アポロン》とでも言うべき存在が、そこに浮いていた。
「君は……アポロン、なのか……?」
「そうだって言ってるだろ。オイラはアポロン、十二神話の太陽神だ」
 そう言って、くるくると夕陽の周りを旋回するアポロン。
 しかし、まったくイメージが違う。今まで召喚してきたアポロンは、もっと凛々しかったはず。こんな少年ではなかった。
 というか、
「なんで実体化してるんだよ……! しかもデフォルメで!」
「でふぉ……? よく分かんねえけど、オイラがこの姿なのは、単純に力が足りないからだ。クリーチャーがこの世界で実体を保つには、でっかいパワーは必要なんだ。だけど、ひまりからオイラたちに与えられた力は十二体分に分割されてるから、コンセンテス・ディー・ゼロの状態でしか実体化できない」
「はぁ……?」
 正直、よく分からない説明だった。しかし、デフォルメの理由はこの際どうでもよかった。後から問いただせばいい。
 しかし、実体化の方の理由は、是が非でも聞き出さなければならない。
「アポロン。お前、今、ひまり先輩から力を与えられたって言わなかったか……?」
「……そうだ」
 アポロンは、やや沈んだように、静かな声で語り始めた。
「十二神話に、それぞれの力が備わっているのは知ってるよな。カードの状態でも、所有者がいればオイラたちはその力を使うことができる。いや、今まではそうしないと使えなかった。この世界で、実体化するほどの力がないオイラたちは、神話空間以外じゃカードの姿でいるしかなかった」
 でも、とアポロンは続ける。
「ひまりは、オイラの力を使って、オイラたちに力をくれた。お陰でオイラたちは、こうして実体化することもできるようになった。だけど代わりに、ひまりはオイラの力の代償を払うことになったんだ」
「アポロンの力の代償……?」
 『神話カード』に、それぞれ特別な力が備わっているのは知っている。姫乃の《慈愛神話》には振り回されたし、ラトリの《守護神話》には助けられた。
 ならば、《太陽神話》は? この、アポロンの備える力とは、一体なんなのか。
「オイラの力は、簡単に言うと、奇跡を起こす力だ。人間やクリーチャーじゃあ到底辿り着くことのできない奇跡を発動することができる。要するに、なんでもできるんだ」
「え、なんだよそれ、凄いじゃん……」
 思考を同調させたり、神話空間を展開したりするものとは格が違う、ように思えた。
 なんでもできる。その言葉が本当なら、ひまりも——などと考えてしまう夕陽だったが、アポロンの話は終わらない。
「でも、タダじゃねえぞ。オイラの力を行使するには、その奇跡の大きさに見合った命を削る必要がある。ものよっちゃあ、力を使った瞬間に死ぬことだってあるんだ」
「死……」
 それが、さっきアポロンが言っていた代償なのだろう。
 そして夕陽は、あることに気づく。
「あれ……ってことは、ひまり先輩は……」
「……ああ、そうだ。オイラの力を使って、オイラたちに力をくれて、そのまま戦って、それで——命が、底を尽きたんだ」
 定め、代償——彼女の言葉は、このことを意味していた。
 そしてその代償で彼女が消えたとするのなら、そう思った夕陽は、再びアポロンを見据える。
「ひまりは、オイラが殺したようなものだ……夕陽、オイラが憎いなら、それでもいい。今すぐカードに戻って、それを破ってもいい。そうすれば、オイラは消えるはずだ」
「…………」
 一瞬、アポロンに掴み掛りそうになった。しかし、思い留まる。そして考える。
(最後に先輩は、アポロンに言っていた。みんなを——僕たちを助けてくれって)
 その意味も、理解する。それもこのことを指していたのだろう。
 ひまりはアポロンの力を使い、自らの命を削ってまで、彼らに力を与えた。なぜそこまでしようとしたのかは謎だが、しかしそれが、ひまりの選択なのだ。
(あの人がなにを考えてこんなことをしたのかは分からない。けど、先輩が、自分の命を投げ打ってまでしたことだ。なにか、大きな意味があるはず)
 その意味を知る術は、今ここにはない。しかし、ここで立ち止まっていては、どうにもならないことも、また事実だ。
(それに、これは先輩の遺してくれたもの……あの人がいなくなったなんて、受け入れたくはない。受け入れられないし、まだ頭の中はぐちゃぐちゃだけど)
 彼女の遺志を継ぎたいと思った。そもそもその遺志がなんなのかすら分からないが、しかし、彼女遺したものを、引き継ぎたいと、夕陽は思う。
(あの人は完全にいなくなったわけじゃない。まだ、ここに、先輩は生きてる……!)
 夕陽はゆっくりと手を伸ばし、アポロンに触れる。温かい。もっと熱いかと思っていたが、人肌に近い温もりがある。
「アポロン……お前、先輩になにか言われなかったか?」
「……言われた。自分の命を差し出す代わりに、夕陽を——みんなを助けてくれって」
「そうか」
 ならその思いも、汲み取らなければならないだろう。
 そう思った夕陽は、次の言葉を紡ぎだす。

「アポロン……もう一度、僕と一緒に戦ってくれないか?」

 一度はこの手を離れた力。彼女の手に戻った力。
 しかし彼女亡き今、その力はどこへ行く。
 決まっている。彼女の力を、遺志を継いだ、自分の手だ。
「……もちろん!」
 アポロンも、威勢よくその申し出に応える。
 《太陽神話 サンライズ・アポロン》は、空城夕陽という、新しい所有者の手へと渡る。

 この日、《太陽神話》が、空城夕陽へと継承されたのだった。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.397 )
日時: 2014/02/15 09:42
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「——『昇天太陽サンセット』」
 夕陽とアポロンが再び共戦の盟約を交わした、その時だった。
「師団長の話を聞く限りでは、ほとんど再起不能、そうでないにしてもしばらく動けなさそうな感じだと思ったのですけど……意外とお早い復活で」
 木々の間から、人影がゆらりと現れる。
 モノクロチェックのコート羽織った、長身の女。長い銀髪は流麗かつ美麗だが、意外と童顔で幼さの残る顔つきをしている。
 どこあで見たことのある風貌。類似した人物ならすぐに思い出したが、微妙に差異があるような気がする。
「お前……ニャルラトホテプ、か……?」
「おや? 分かりますか……って、そうでしたそうでした、今は昨日あなたと戦った“身体”の妹さんでした。そりゃあ似てるわけですよね」
 少し首を傾げたが、ニャルラトホテプはすぐに納得したように手を打った。言葉の意味は、夕陽には微塵も理解できない。
「っていうか、なんかキャラ変わってないか……?」
 どころか、声も少し高くなっているような気がする。
 昨日戦ったニャルラトホテプも、たまに軽口を叩いてはいたが、ここまで能天気でお気楽ではなかった。まるで別人になったかのような変化に戸惑う夕陽だが、今はそれ以上に、気になる点がある。
「……お前、なんでここに」
「ん? 別に大した理由はありませんよ。昨日の一件で、ラトリ・ホワイトロックが神話空間を展開していましたが、町を丸々一つ完全に掌握できるかどうか、ちょっと疑問なんですよね。ですから念のためにその事後処理をしていたんです。それでやっとこさ終わったと思ったら、あなたが全力疾走している姿が見えたので、気になって後を追ってみました。いやー、やはり若い男の子は元気ですね。流石にこの身体じゃあ登山は厳しかったですよ」
 つまり、ここに居合わせたのは偶然だった、ということらしい。
「でも、無理して山を登った甲斐はありましたね。師団長も少し言ってましたけど、『神話カード』が本当に実体を持つとは……それに、まさかこんなところに《太陽神話》が埋まっていたなんて、驚きです」
 師団長が聞いたらまた激怒しますね、などと言いながらくすくす笑うニャルラトホテプ。
 だが、笑ってばかりではない。夕陽は、彼女の手の動きを見逃さなかった。
「せっかくですし、ここで仕留めさせていただきます。昨日の身体より幾分マシという程度の性能ですけど、デッキはそれなりにガチのを持ってきましたし、たぶん大丈夫でしょう」
 彼女の手には、デッキが握られている。神話空間に入ったら自動で展開されるとはいえ、それは今から戦うことを示す合図であった。
「……いいよ。昨日と同じように、返り討ちに——」
 と言って腰に手を伸ばす夕陽だが、その手は空振った。
「あ……」
 いつもならそこにあるはずのものがない。いつも腰につけているはずのデッキケースは、そこにはなかった。
(そういえば、なにも考えずにすぐに家を飛び出したから、なにも持ってきてなかった……)
 デッキも、家に置いてきたままだ。
 しかし、
「夕陽!」
「アポロン……?」
 夕陽の目の前に、アポロンがやって来る。
「オイラを使うんだ。さっき約束したばっかりだろ、一緒に戦うって!」
「……そうだったね。じゃあ、頼むよ」
「合点だ!」
 威勢のよい返事と共に、アポロンはカードの姿へと変化する。
「《太陽神話》……確かにそのカードを使われるのは厄介ですが、如何に強力な『神話カード』でも、戦いに置いては単体じゃ紙切れみたいなものですよ?」
「どうだろうね。それに、カードは《アポロン》だけじゃない」
 夕陽は、先ほど発掘したばかりの箱から、適当なデッキケースを一つ、掴み取る。中身は確認していないが、しかし四十枚にはギリギリ足りないと、直感的に理解する。
「先輩、早速あなたの遺した力、使わせてもらいます……!」
 ひまりが残したもの。その力の一部を、今ここで、解放する。
「行くぞ《アポロン》!」
「おうよ!」
 三十九枚のカードの束に、カードとなった《太陽神話》を組み込み、二人は、神話空間へと誘われた。



 夕陽とニャルラトホテプのデュエル。
 互いにシールドは五枚。
 夕陽の場には《コッコ・ルピア》が一体。
 ニャルラトホテプの場には《青銅の鎧》《ヤミノザビグライド》《躍動するジオ・ホーン》。
「おいおい夕陽! クリーチャーの数で押されてるぞ! 大丈夫か?」
「大丈夫。相手は小型ばっかりだし、まだなんとかなる。っていうかデッキから出て来るなよ」
 実体化できるようになってフリーダムになったアポロンを押さえ、夕陽は次の手を考える。
 どうやらこのデッキは、火と自然のステロイド。ひまりが夕陽たちとのデュエルでよく使用していたデッキとよく似ている。癖があまりなく、夕陽も似たタイプのデッキを使用していたことがあるので、動かすことに苦はない。
(奴は前のターンに《ジオ・ホーン》で《次元流の豪力》を手札に入れてる……いくら小型ばかりといっても、このまま数で押されるのもまずい。こっちも展開力で勝負するか)
 方針を決め、夕陽は手札のカードを一枚抜き取る。
「《ボルシャック・NEX》を召喚! 効果で山札から《コッコ・ルピア》をバトルゾーンに!」
 これでドラゴンの召喚コストは4下がる。次のターンから一気にドラゴンを展開し、数と打点で押し切るのだ。
 しかし、
「ふっふっふ……あなたの手の内なんて見え透いているんですよ。私のターン《希望の親衛隊ファンク》を召喚!」


希望の親衛隊ファンク 闇文明 (5)
クリーチャー:ダークロード/ハンター/エイリアン 5000
バトルゾーンにある相手のサイキック・クリーチャーすべてのパワーは−5000される。
バトルゾーンにある相手のサイキック以外のクリーチャーすべてのパワーは−1000される。


「な……っ!?」
「あなたのクリーチャーのパワーはすべてマイナス1000! 二体の《コッコ・ルピア》は破壊です!」
 《ファンク》の発する瘴気で、夕陽の場の《コッコ・ルピア》は全滅してしまう。
「ドラゴンの召喚コストを下げる《コッコ・ルピア》は優秀ですけど、この手の全体除去に弱いのがネックですよね。ターンエンドです」
 ドラゴンを大量展開するつもりが、その出鼻をくじかれてしまった。
 しかしこの程度では、夕陽は止まらない。
「まだだ……《エコ・アイニー》を召喚! 追加したマナをドラゴンだから、もう一枚加速!」
 これで7マナ、コスト軽減に頼らずとも、普通にドラゴンを召喚できる圏内だ。
「さらに《NEX》で攻撃、Wブレイクだ!」
「その攻撃は《ヤミノザビグライド》でブロックです。そして《ヤミノザビグライド》が破壊されたので、あなたの手札を一枚捨ててもらいましょうか」
 軽量ブロッカーで、破壊されれば相手の手札を一枚捨てさせる《ヤミノザビグライド》。速攻相手でも、そして手札補充が苦手な今の夕陽のデッキにも、有効に作用する。
 ——例外を除いては、だが。
「残念だったな! 手札から捨てるのは《永遠のリュウセイ・カイザー》だ! 《リュウセイ・カイザー》は手札から捨てられる代わりにバトルゾーンへ!」
 手札を減らすつもりが、夕陽のアタッカーを増やしてしまったニャルラトホテプ。しかも《リュウセイ・カイザー》の能力で、《エコ・アイニー》もスピードアタッカーだ。
「行け! 《リュウセイ・カイザー》でWブレイク!」
 《リュウセイ・カイザー》の振りかざす炎の剣が、ニャルラトホテプのシールドを二枚、まとめて切り裂いた。
 だが、そのシールドが光の束となって収束する。
「S・トリガー発動です! 《地獄門デス・ゲート》で、《エコ・アイニー》を破壊!」
 《エコ・アイニー》は地獄の門から伸びる魔手に捕えられ、引きずり込まれる。そしてその命を糧にし、死者が呼び戻された。
「墓地から《ヤミノザビグライド》をバトルゾーンに出しますよ。さらにもう一枚S・トリガーです。《死海秘宝ザビ・デモナ》を召喚! 効果で《ザビ・デモナ》自身を破壊し、開け、超次元の門! 《時空のジキル ザビ・ガンマン》をバトルゾーンに!」
「ブロッカーを並べてきたか……」
 S・トリガー発動で場に並べられたのは、どちらもブロッカーだ。そのせいで攻め難くなってしまう。
「私のターン。さらに《凶星王ザビ・ヒドラ》を召喚!」


凶星王ザビ・ヒドラ 闇文明 (6)
クリーチャー:ダークロード/エイリアン 6000
自分の他のエイリアンをバトルゾーンに出した時、《凶星王ザビ・ヒドラ》以外のエイリアンを1体、自分の墓地から手札に戻してもよい。
W・ブレイカー


「《ザビ・ヒドラ》……また厄介な奴を……!」
 現れたのは、エイリアンに取り込まれた《凶星王ダーク・ヒドラ》、その名も《ザビ・ヒドラ》。
 《ダーク・ヒドラ》は強力すぎるゆえに力の解放を禁じられてしまったが、《ザビ・ヒドラ》は弱体化した代わりにその制約が消えている。
 このまま押し切ることも出来そうになく、苦しい展開になりそうだが、
「……いや、まだだ。まだやれる……!」
 自身を鼓舞し、ゆっくりと、彼女のデッキに手を置いた。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.398 )
日時: 2014/02/15 13:57
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 夕陽とニャルラトホテプのデュエル。
 夕陽のシールドは五枚。場には《ボルシャック・NEX》と《永遠のリュウセイ・カイザー》。
 ニャルラトホテプのシールドは三枚。場には《青銅の鎧》《躍動するジオ・ホーン》《希望の親衛隊ファンク》《ヤミノザビグライド》《時空のジキル ザビ・ガンマン》《凶星王ザビ・ヒドラ》。
「僕のターン! 《セルリアン・ダガー・ドラゴン》を召喚して三枚ドロー! そして《ボルシャック・ENX》でWブレイク!」
「その攻撃は《ザビ・ガンマン》でブロックします。その時、山札の上から二枚を墓地へ置き、ループ覚醒! 《時空のハイド ジオ・マッチョ》!」
「でも《NEX》のパワーも上がってる! 墓地にクリーチャーを溜めたところで、そいつのパワーじゃ《NEX》には勝てないよ! 続けて《リュウセイ・カイザー》でも攻撃!」
「それも《ヤミノザビグライド》でブロックです!」
 《ヤミノザビグライド》の破壊された時の効果でまた手札を捨てさせられる。今度はマッドネスはいない。そう都合よく手札にいるものでもないのだ。
「三度目の正直だ! 《セルリアン・ダガー》でWブレイク!」
 これでニャルラトホテプのシールドは残り一枚。だが、ニャルラトホテプの場には《ザビ・ヒドラ》がいる。
「私のターンですね。まずは《炎獄スマッシュ》で《リュウセイ・カイザー》を破壊!」
「くっ、《リュウセイ・カイザー》が……!」
 夕陽の攻撃速度を上げながら、ニャルラトホテプの動きを鈍化させる《リュウセイ・カイザー》も破壊されてしまった。さらに、
「《次元流の豪力》を召喚! 効果でコスト6以下の、光、火、自然いずれかのサイキックを出しますよ。開け、超次元の門! 《舞姫の覚醒者ユリア・マティーナ》をバトルゾーンに!」
 またしても厄介なブロッカーを並べられる。しかも、これだけでは終わらない。
「まだまだ行きますよ? エイリアンがバトルゾーンに出たので、《ザビ・ヒドラ》の能力発動! 墓地から《死海秘宝ザビ・デモナ》を回収します。そして最後に《ザビ・ヒドラ》で《ボルシャック・NEX》を攻撃!」
 《ザビ・ヒドラ》も《ボルシャック・NEX》もパワーは6000。しかしニャルラトホテプの場には《希望の親衛隊ファンク》がおり、夕陽のクリーチャーのパワーはすべて1000下げられている。
 そのため、《NEX》が一方的に破壊されてしまった。
「《NEX》まで……!」
 これで残ったのは《セルリアン・ダガー・ドラゴン》のみに。大量にクリーチャーを展開するニャルラトホテプに、こちらも展開力で対抗するつもりが、クリーチャーは次々と破壊される始末。
「くそっ《メンデルスゾーン》発動! マナを追加し、さらに《爆竜トルネードシヴァXX》を召喚して、《セルリアン・ダガー》で攻撃」
「《ユリア・マティーナ》でブロック、効果でシールドを追加しますよ?」
 攻撃を防ぐだけでなく、ブロックするたびに《ユリア・マティーナ》はシールドを増やす。その分パワーは低いが、時間を稼がれるとターンが経過するたびに夕陽が不利になっていく。
「ターン終了だ……」
 しかも、手札もあまりよくない。序盤に《ヤミノザビグライド》で手札を削られたことが響いてきているようだ。
「では、私のターンです。ふふっ、楽しみですねぇ?」
 口元で笑いながら、ニャルラトホテプはマナにカードを落とす。そして、
「まずは《ザビ・デモナ》を召喚です。効果で《ザビ・デモナ》自身を破壊し、開け、超次元の門! 《ザビ・ガンマン》をバトルゾーンへ! さらに《ザビ・ヒドラ》の効果で墓地から《ヤミノザビグライド》を回収し、そのまま召喚! さらにさらに、エイリアンがバトルゾーンに出たので再び《ザビ・ヒドラ》の能力で《ザビ・デモナ》を回収! またまた《ザビ・デモナ》を召喚! 《次元流の豪力》を破壊し、二体目の《ザビ・ガンマン》をバトルゾーンへ! 《ザビ・ヒドラ》の能力で《次元流の豪力》を回収です!」
 《ザビ・ヒドラ》と、破壊されやすい軽量エイリアンや自壊効果を組み合わせ、ニャルラトホテプは墓地のエイリアンを回収しつつクリーチャーを並べていく。
「おい夕陽、なんかすげぇ勢いでクリーチャーが増えてるぞ? 大丈夫か?」
「正直きつい……でも、突破口がないわけじゃない」
 このターン《トルネードシヴァ》が除去されたなかったのが幸いだった。
「しかも、ここでこいつを引けた……行ける。《爆竜 GENJI・XX》を召喚! そして《トルネードシヴァ》で攻撃、能力発動!」
 《トルネードシヴァ》は、攻撃する時に場のクリーチャー二体を選んでバトルさせる能力がある。つまり、
「《ザビ・ガンマン》二体を選んでバトルだ!」
「やはり相打ちで破壊されましたねぇ……では、どうせ破壊されるのですし《ヤミノザビグライド》でブロックです。手札を捨ててください」
「だからどうした! 《セルリアン・ダガー》でWブレイク! そして《GENJI》でダイレクト——」
「ストップ、そこまでです」
 ニャルラトホテプからストップをかけられ、夕陽の攻撃は止められる。
「今日はついてますね、S・トリガー発動です。《地獄門デス・ゲート》で《GENJI》を破壊し、《ヤミノザビグライド》を復活! もう一枚S・トリガーです。《デビル・ハンド》で《トルネードシヴァ》も破壊! ついでに山札の上三枚を墓地へ」
「くぅ……でも、選ばれたから《トルネードシヴァ》の効果で山札から《GENJI》を手札に加えるよ」
 連続で繰り出されるS・トリガーにより、場を削られてしまった夕陽。しかもニャルラトホテプのブロッカーがまた出て来た。
「ではでは、私のターンです。《次元流の豪力》を召喚して《ユリア・マティーナ》をバトルゾーンに。《ザビ・ヒドラ》の能力で《ヤミノザビグライド》を回収し、そのまま召喚。再び墓地の《ヤミノザビグライド》を回収して召喚。さらに再び、四体目の《ヤミノザビグライド》を回収して召喚、今度は《ザビ・デモナ》を回収します」
「ブロッカーが四体も増えやがった……!」
 場に出ていた一体目の《ヤミノザビグライド》も合わせれば五体。いくら破壊しても《ザビ・ヒドラ》で回収されてしまうため、感覚的にはこちらの手札ばかりが破壊されている気分だ。
「《ザビ・ヒドラ》で《セルリアン・ダガー》を攻撃です!」
 最後には《セルリアン・ダガー》も殴り返されてしまう。これで本当に、夕陽の場は全滅だ。
「僕のターン。とりあえず《メンデルスゾーン》を発動して、《GENJI》も召喚。そして攻撃、《ユリア・マティーナ》を破壊!」
「《ヤミノザビグライド》でブロック」
 やはり夕陽の攻撃は止められる。手札も削られる。
 そして遂に、ニャルラトホテプが動き出す。
「私のターンですね! まずは《ザビ・デモナ》を召喚して自壊! 《ザビ・ガンマン》をバトルゾーンへ! そして墓地の《ザビ・ミラ》を回収!」
「《ザビ・ミラ》……? ……!」
 クリーチャーの使い回しと場の戦力差でつい見落としてしまっていたが、前のターンの《デビル・ハンド》で既にそのカードは墓地へと落ちていた。
 ニャルラトホテプが回収したカードを見た瞬間、夕陽に戦慄が走る。

「死海の龍の儀式が始まる、汝の祈祷よ異星に届け。邪神の如く復活せよ——《復活の祈祷師ザビ・ミラ》!」


復活の祈祷師ザビ・ミラ 闇文明 (8)
クリーチャー:デーモン・コマンド/エイリアン 9000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の他のクリーチャーを好きな数破壊してもよい。こうして破壊したクリーチャー1体につき、コスト6以下のサイキック・クリーチャーを1体、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー


 現れたのは、異星の祈祷師。他の命を捧げることで行われるその祈祷は、異世界へと通じる門を開く力がある。即ち、自身のクリーチャーを破壊した数だけ、コスト6以下のサイキック・クリーチャーをバトルゾーンに出せるのだ。
 《ザビ・ミラ》を召喚したニャルラトホテプは、自身のクリーチャーを一体ずつ選んでいく。
「破壊するのは《青銅の鎧》《躍動するジオ・ホーン》《次元流の豪力》《死海秘宝ザビ・デモナ》と《ヤミノザビグライド》をそれぞれ二体の合計七体です!」
 《ザビ・ミラ》の祈祷で、選ばれた七体のクリーチャーが消滅する。しかしその命は無為には終わらない。それらの命が消えた時、その数の超次元へ繋がる門が、開かれる。
「さあ出て来てください、《舞姫の覚醒者ユリア・マティーナ》二体と《時空のジキル ザビ・ガンマン》《時空の喧嘩屋キル》そして——」
 呼び出されるのは異星の龍の欠片。三つの異形なる手足が、悪魔の祈祷により、現れる——

「——《ガロウズ・セブ・カイザー》《ハイドラ・ギル・ザウルス》《竜骨なる者ザビ・リゲル》! これらをバトルゾーンへ!」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.399 )
日時: 2014/02/15 19:09
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

ガロウズ・セブ・カイザー ≡V≡ 水文明 (6)
サイキック・クリーチャー:サイバー・コマンド/エイリアン 6000
相手のクリーチャーが攻撃する時、カードを1枚引いてもよい。
W・ブレイカー


ハイドラ・ギルザウルス 火文明 (5)
サイキック・クリーチャー:ロック・ビースト/エイリアン 5000
相手がコストを支払わずにクリーチャーを召喚した時または呪文を唱えた時、相手はカードを1枚、自身のマナゾーンから選んで墓地に置く。


竜骨なる者ザビ・リゲル 闇文明 (4)
サイキック・クリーチャー:リビング・デッド/エイリアン 3000
自分のエイリアンが相手の呪文によって破壊された場合、相手は自身のクリーチャーを1体選び、破壊する。
自分のエイリアンのパワーが相手の呪文によって0以下に減らされた場合、相手は自身のクリーチャーを1体選び、破壊する。
覚醒リンク—自分のターンのはじめに、バトルゾーンに自分の《ガロウズ・セブ・カイザー》と《ハイドラ・ギルザウルス》があれば、そのクリーチャーとこのクリーチャーをすべて裏返しリンクさせる。


 《ザビ・ミラ》の能力で展開されたサイキック・クリーチャーの内の三体《ガロウズ・セブ・カイザー》《ハイドラ・ギル・ザウルス》《竜骨なる者ザビ・リゲル》。
 これらは単体でもそれなりに有能ではあるが、それでもそこまでの脅威ではない。だが、三体揃ってしまえば、焦燥を加速せずにはいられない。
(《死海竜》のサイキック・セルが一気に三体揃うかよ……!)
 単独では大きな力はなく、三体の効果を組み合わせることもできないが、しかしこの三体は、《死海竜》のサイキック・セル。次のターンに除去できなければ、夕陽はニャルラトホテプに覚醒リンクを許してしまうこととなる。
「それ以前に、この戦力差も十分やばいけどな……」
 ニャルラトホテプの場には二体の《ユリア・マティーナ》《ザビ・ガンマン》に加え、《ザビ・ヒドラ》《ファンク》《ヤミノザビグライド》《キル》そして《死海竜》のサイキック・セル三体。
 覚醒リンクしなくとも、その数のクリーチャーが一気に攻めて来たら相当まずい。
「とりあえず、一応エイリアンが場に出たので、墓地の《ヤミノザビグライド》《ザビ・デモナ》二体と《次元流の豪力》を回収して、ターンエンドです。ささ、あなたのターンですよ?」
 何気に墓地のクリーチャーを回収しつつ、ターンを終えるニャルラトホテプ。一挙一動が癪に障る。
「……せめて、サイキック・セルだけでも破壊できればな」
 しかし、手札に除去カードはない。そもそも手札自体、持っていない。
 度重なる《ヤミノザビグライド》によるハンデスのせいで、夕陽は手札がないのだ。ダメ押しのように《ザビ・ミラ》でも《ヤミノザビグライド》を破壊し、手札を削っていた。
「とにかくドロー……これに賭けるしかないか」
 もはやなりふり構っていられない。今引いたばかりのカードを、すぐさま行使する。
「マナ進化GV! 《超天星バルガライゾウ》を召喚!」
 マナゾーンのドラゴン三体を進化元に現れたのは、巨大な東洋龍《バルガライゾウ》。
 自然文明だが、《バルガ》の名を持つように、ドラゴンを踏み倒す能力がある。
「まずは《GENJI》で攻撃! 効果で《ザビ・ガンマン》を破壊!」
「《ユリア・マティーナ》でブロック、シールドを追加します」
 まず、ループ覚醒してパワー負けする恐れのある《ザビ・ガンマン》殻破壊。シールドは増やされてしまったが、今更だ。一枚程度ならそこまで気にすることもないだろう。
「続けて《バルガライゾウ》で攻撃、メテオバーン発動!」
 進化元となった三体のドラゴンを墓地へと送り込み、山札の上から三枚を捲る。
「……よし来た! 捲れたのは《王龍ショパン》《インフィニティ・ドラゴン》と《不敗のダイハード・リュウセイ》だ! この二体をバトルゾーンに!」
 《ショパン》の能力で《ファンク》を破壊しつつ、これで強力なドラゴンが並ぶ。
「《バルガライゾウ》で攻撃!」
「《ユリア・マティーナ》でブロック」
 そしてシールド追加。
 山札からシールドゾーンにカードを置きつつ、ニャルラトホテプは言う。
「喜ぶのは結構ですけど、そんなに嬉しい状況でもないんじゃないんですか? なにせ、このターンに私の《死海竜》のパーツを一体も破壊できなかったんですから。喜んでいる場合ではないというか、そんな立場ではないですよねぇ」
「…………」
 これはニャルラトホテプの言う通りだ。確かに夕陽の場には強力なドラゴンが並んだが、結局はアタッカーをほとんど減らせていない。覚醒リンクも止められなかった。
「ではでは? 私のターンでよろしいですよね」
 その時。
「《竜骨なる者ザビ・リゲル》の覚醒リンク発動!」
 ニャルラトホテプの場で佇む、三体のクリーチャーが光に包まれる。そして——

「覚醒せよ、そしてリンクせよ! 」

 ——三体の死海の星は、一体となった。


死海竜ガロウズ・デビルドラゴン ≡V≡ 水/闇/火文明 (24)
サイキック・スーパー・クリーチャー:デビル・コマンド・ドラゴン/エイリアン 12000
相手プレイヤーはコストを支払わずにクリーチャーを召喚したり呪文を唱えたりできない。
このクリーチャーが攻撃する時、バトルゾーンにあるクリーチャーを2体まで選び、持ち主の手札に戻してもよい。
T・ブレイカー
リンク解除
覚醒リンク前《ガロウズ・セブ・カイザー》(上)《竜骨なる者ザビ・リゲル》(中)《ハイドラ・ギルザウルス》(下)


「来たか……!」
 《死海竜ガロウズ・デビルドラゴン》。ハンターを撃滅すべく生み出された異星の覚醒リンク。かの龍の発する瘴気は悪夢の如き束縛をもたらすのだ。
「さあ、《死海竜》が出ましたよ。これであなたはS・トリガーに頼ることもできません。このターンでとどめを刺して、私の勝ち——」
「勝ち誇るのは、まだ早いだろ」
 ニャルラトホテプの言葉を遮って、夕陽は言葉を飛ばす。
「……なんですか?」
「僕の場をよく見ろよ」
 夕陽に指差され、場を確認するニャルラトホテプ。夕陽の場にいるのは《超天星バルガライゾウ》《インフィニティ・ドラゴン》《不敗のダイハード・リュウセイ》の三体。
「僕の場には《ダイハード・リュウセイ》がいる。僕がこのターンダイレクトアタックを決められそうになっても、こいつを破壊すれば僕はこのターン負けない。《死海竜》の能力でバウンスされても、《インフィニティ》で守れる」
 夕陽が前のターンに喜んだのは、なにもドラゴンが捲れたからだけではない。次のターンに生き残る見込みができたからだ。
 だがその見込みも、ニャルラトホテプは一生に付す。
「ふっ、はははっ! なにを言うかと思えば。確かに《死海竜》でバウンスしようにも《インフィニティ》が邪魔ですが、それはあなたも同じでしょう?」
 《インフィニティ》を指差しつつ、ニャルラトホテプは嘲るように言う。
「《ダイハード・リュウセイ》で負けないようにするためには、《ダイハード・リュウセイ》を破壊させなければなりません。しかし自身の能力で破壊しようにも、その破壊も《インフィニティ》で邪魔されますよ」
 これも、彼女の言う通りだ。
 《インフィニティ》の能力は強制なので、《ダイハード・リュウセイ》の破壊まで邪魔してしまう。もし《ダイハード・リュウセイ》が破壊されなければ、このターン夕陽は負けてしまうのだ。
「……ドラゴンかファイアー・バードが捲れなければ、破壊されるけどね」
「そのデッキのそれらのカードの割合から考えて、その可能性は限りなく低いでしょうけどね。現に唯一の呪文に見える《メンデルスゾーン》は二枚が墓地に、一枚はマナゾーンにありますし、残り一枚がそう都合よく出るものですか?」
 もっと言えば、バウンスの際にその《メンデルスゾーン》が捲れれば、目も当てられない事態となる。
 完全な賭け、それも分の悪すぎるギャンブル。
 しかし夕陽は、そのギャンブルに賭けるしかない。
「御託はいいよ。早く攻撃そてきたらどうだ? まさかこのターンに仕留められない可能性が怖いとかいうなよ」
「……まさか」
 夕陽の挑発に乗ったわけではないだろうが、ニャルラトホテプは本当に、本格的に、攻めを見せる。
「私のバトルゾーンにはパワー6000以上のクリーチャーがいるので《時空の喧嘩屋キル》は《巨人の覚醒者セツダン》へと覚醒。そして《超次元バイス・ホール》! あなたの手札はないので、サイキックを出すだけですけどね。《時空のジキル ザビ・ガンマン》と《時空の踊り子マティーニ》をバトルゾーンに! 続けて《次元流の豪力》を召喚して、《ユリア・マティーナ》をバトルゾーンに、《ジオ・ホーン》を回収! さらにコスト4以上のブロッカーが出たので、《マティーニ》の覚醒条件クリア! 《舞姫の覚醒者ユリア・マティーナ》に覚醒!」
 とはいえ夕陽に生き残る可能性があるのだから、守りのことも考え、ブロッカーを並べるニャルラトホテプ。
 そして遂に——《死海竜》が、無数の牙を剥く。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.400 )
日時: 2014/02/15 19:40
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

どうも、最近デッキ作りの調子が悪いタクです。スーパーデッキの改造が滞っており、どれがベストなのか分かりづらい状態です。
ついでに、今度出るスターターの値段が500円程になったのは、デュエマのカードが累計発行枚数50億枚突破した記念だからみたいです。
さて、それは置いておいて本編の話に戻りますが、夕陽に新たな(?)相棒となったデフォルメアポロン。モノクロさんの今までの作品には、喋る人外系の相棒ポジションにあたるキャラがいなかったので、新鮮でした。
というか、ひまりはジークフリートに倒されたことによって死んだのかと思いましたが、アポロンの能力の代償だったんですね。
さて、ニャルラホテプとの再戦ですが、いきなり《ガロウズ》は結構厳しいですね。場の状態的に《ザビ・ミラ》がいるのも追い討ちをかけています。まあ、ここからどう逆転できるか、というのもデュエマの醍醐味ですが。

デュエルの続きを楽しみにしています。それでは、また。


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