二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.30 )
日時: 2013/07/11 01:46
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: http://www27.atwiki.jp/duel_masters/pages/1.html

賢愚神話 シュライン・ヘルメス 水文明 (7)
進化クリーチャー:メソロギィ/サイバーロード/リキッド・ピープル 14000
進化MV—自分のサイバーロード一体と、水のクリーチャー二体を重ねた上に置く。
コンセンテス・ディー(このクリーチャーの下にある、このクリーチャーと同じ文明のすべてのクリーチャーのコストの合計を数える。その後、その数字以下の次のCD能力を得る)
CD4:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにあるクリーチャーを一体選び、持ち主の手札、または山札の一番上か一番下に戻してもよい。
CD9:自分のターンに相手がクリーチャーをバトルゾーンに出した時、または呪文を唱えた時、それを無効にし持ち主の墓地に置いてもよい。この効果はそれぞれ一回ずつ使うことができる。
CD12:相手のターンに相手がクリーチャーをバトルゾーンに出した時、または呪文を唱えた時、それを無効にし持ち主の墓地に置いてもよい。このこうかはそれぞれ一回ずつ使うことができる。
Tブレイカー


 現れたのは若い男の風貌のしたクリーチャー。
 全身に輝く氷を鎧の如く纏い、飛沫を散らす水の外套を羽織っている。頭部にある帽子のような装飾と具足からは凍てつく羽が生え、両手にはそれぞれ湾曲した液状の剣と水流の巻きついた杖を携えていた。
 そのクリーチャー、《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》は、記と同じように軽薄で邪悪な笑みを浮かべ、汐とそのクリーチャーを嘲笑うかのように見下ろしている。
「どうだい? これが僕の『神話メソロギィカード』、《ヘルメス》だ。こいつの力は、他の『神話メソロギィカード』とは一線を画す……と言っても、僕も全部のカードを知ってるわけじゃないけどね——僕が知ってる十二神は、ファイアー・バード、ヒューマノイド、スノーフェアリー、サイバーロード、ダークロード、ゴースト、メカ・デル・ソル、ガーディアンの八体だ——それでも《ヘルメス》の力は、十二の神々の中じゃあ最強クラスに匹敵するんじゃないかな?」
 また冗長に語る記。だが汐は、それを咎めることはしなかった。
(この感じ……間違いないですね。これがさっきの悪寒の正体ですか……)
 ずっと感じていた不吉な気配。それは間違いなく、目の前に鎮座する《シュライン・ヘルメス》が発しているものだ。
「さ、て、と。お喋りはこれくらいにして……いや、たぶん無理だけど、とにかくデュエマを進めようか。まずは《ヘルメス》のコンセンテス・ディー能力、CD4! 《狼虎サンダー・ブレード》をデッキボトムへ!」
 《ヘルメス》が杖を振るう。すると次の瞬間、杖に巻きついていた水流が《サンダー・ブレード》を取り囲み、山札の底へと誘う。
「っ、《サンダー・ブレード》が……」
「さらに、《魂と記憶の盾》! 《死神の邪蹄ベル・ヘル・デ・ガウル》をシールドに!」
「《ベル・ヘル・デ・ガウル》まで……」
 一気に大型クリーチャーを消されてしまった汐。しかも記のターンはまだ終わらない。
「いよいよアタックステップだよ。まずは《ホルルン》で《炎獄の剛魔ビルギアス》を攻撃!」
「《ブラッディ・イヤリング》でブロックです」
「まだ終わらないよ。続いて《予言者コロン》でも攻撃だ」
 《コロン》の雷と《ビルギアス》の炎がぶつかり合い、双方共に消滅する。記の場はこれで《ヘルメス》だけになったが、汐の場も《ブラッディ・イヤリング》と《コロン》でタップさせられた《電脳封魔マクスヴァル》しかいない。
「《ヘルメス》でT・ブレイク!」
「《ブラッディ・イヤリング》でブロックです」
 《ヘルメス》が湾曲した水の剣を振るい、《ブラッディ・イヤリング》は切り裂かれる。
 これで、汐の場には《マクスヴァル》だけとなる。
「まずいことになってしまったようですね……なんとかしないと」
 デッキからカードを引く汐。とりあえず、《ヘルメス》さえ除去できれば態勢は立て直せるはずだ。そして幸いなことに、ちょうどそのカードを引くことができた。
「呪文、《デーモン・ハンド》を発動です。効果で《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》を——」
 と、その時、汐の言葉が途切れる。
 理由は一つ。カードから黒い悪魔のような手が飛び出した、それ自体は別段なんとも思わない。流石にもう慣れた。だがその手が《ヘルメス》に襲い掛かろうとした瞬間——氷結したのだ。
「え……」
「ふふ、無駄だよ。そういうのは、《ヘルメス》には効かないんだ」
 ボロボロと崩れていく、凍りついた悪魔の手。同時に《デーモン・ハンド》のカードは墓地へ送られる。
「呪文の発動を禁じる効果、ですか……ならば守りを固めるまでです。《マクスヴァル》を召喚——」
 また汐の言葉が途切れた。理由は簡単だ、召喚した《マクスヴァル》が凍りつき、その場で崩れ落ちたからだ。
「な……っ」
 唖然とする汐。その光景を見て、記は堪え切れなくなったかのように噴き出した。
「ははは! いやー、何度見てもこういう光景は面白いね。だから無駄なんだよ、そういう時間稼ぎみたいなのはさ。《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》の効果は、お互いのターン中に一回だけ、相手のクリーチャーの召喚と呪文の詠唱を無効化できるんだ」
 つまり、相手ターンに召喚と呪文を一回ずつ無効にし、自分のターンでもそれらを一回ずつ無効化できる能力。
 それを聞き、汐は無感動な瞳を見開く。
「そんな……そんなの、おかしいですよ……」
 明らかにパワーバランスを無視している、強力すぎる能力。その事実は、汐を愕然とさせた。
 デュエル・マスターズの基本はクリーチャーの召喚と呪文の詠唱。これはデュエル・マスターズというカードゲームが生まれた当初から存在するカードであり、戦術だ。それを根本から、両方を封じてしまうようなカードは、本来なら制作すらされないだろう。
 だが、それを肯定した上で記は言う。
「いやまあ、確かに強いんだけど、進化元のコスト合計が12以上じゃないと発動しないからね。軽いサイバーロードにとってはなかなか骨だよ」
 そう、《ヘルメス》の能力が以下に強力でも、その力を全て発揮しようとするなら、三体の進化元となるクリーチャーのコストがそれなりに重くなければならない。だから記は《エンペラー・ベッシークーン》で進化元を入れ替え、最終的に《ヘルメス》の下に置かれるクリーチャーのコスト合計を調整していたのだ。
 なにはともあれ、《デーモン・ハンド》と《マクスヴァル》の召喚は無効にされた。勿論、支払ったマナは戻ってこない。汐の手札には、残った僅かなマナで呼び出せるクリーチャーは存在しないため、これでターン終了となる。
「僕のターン……じゃ、一気に決めちゃうかな」
 と言って、記は手札から二枚のカードを抜き出す。
「まずは《斬隠テンサイ・ジャニット》を召喚! 《マクスヴァル》をバウンス! そして進化《エンペラー・マルコ》!」
 バウンスから進化、そして手札補充。流れるようなプレイングだ。
 その流れに酔いしれるように調子の上がってきた記は、嘲るような笑みを露わにする。
「さあ、そろそろゲームセットだよ。愚行の賢者の力、たっぷり味わっていってね」
 立ち塞がる賢愚の神が、知識の化身と共に汐に襲い掛かる——

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.31 )
日時: 2013/07/11 13:02
名前: リュウセイ ◆HhAjGMi2j6 (ID: MWXPcv1P)

 どうも。こちらからコメントさせていただくのははじめてですね。リュウセイです。
 随分前からコメントをしようと思っていたのですができず、今回《ヘルメス》のチート過ぎる能力を見て、突き動かされるように参りました。
 オリジナルカードを軸にした独特のストーリー展開が面白いです。しかし、かといってオリカを乱発するわけでもなく、あくまでキーカードとしてのみ登場させているところに好感が持てます。ヂュエルも丁寧な説明が添えられながら進んでいくので、複雑な展開になっても混乱せずに読めました。
 ただし、やはり前述の通り《ヘルメス》が殿堂入り候補筆頭な気が……。せめてメテオバーンでもよかったんじゃないでしょうか。実際にも似たようなのがいるんですけど知ってますかね。不死鳥編のフェニックスで相手の呪文を打ち消す効果を持ったやつなんですが(すみません、名前飛んじゃいました)。そいつもメテオバーンですし。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.32 )
日時: 2013/07/11 23:20
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: http://www27.atwiki.jp/duel_masters/pages/1.html

リュウセイさん


 こちらもこの名前では初めまして、モノクロです。
 《ヘルメス》のチートっぷりは自分でも重々承知しております。
 デュエマの小説は初めて書いたのでいまいち勝手が分からず手探り状態だったのですが、そう言っていた札けると嬉しいです。オリカに関しては、本作品を書き始めた当初はまだ最近のカードが本当に分からなかったというのと、以前から書いてみたかったストーリーの流れとしてオリジナルのカードがあった方が盛り上がると思い導入しました。
 やっぱりそうですよね。モノクロ自身も《ヘルメス》の能力はやり過ぎと感じています。
 実は《ヘルメス》に限らず、多くの『神話メソロギィカード』はモデルとなったクリーチャーがおり、《ヘルメス》のモデルとなったのが正にそいつなのです。詳しくは作中で言及するのですが……
 まあ、《ヘルメス》の能力は確かに強すぎるほど強いのですが、モノクロは《ヘルメス》自体はそんなに好きじゃなかったりするので、作中での出番はあまりないと思います。まだ未定ですが。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.33 )
日時: 2013/08/01 19:21
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: http://www27.atwiki.jp/duel_masters/pages/1.html

 各ターンに一回ずつクリーチャーの召喚と呪文の発動を無効化する『神話メソロギィカード』——《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》。
 このクリーチャーの厄介な点は、S・トリガーが用をなさないということだ。
 S・トリガーだけではない。S・バックもニンジャス・トライクも無力化される。《ヘルメス》は単体での打撃力も高いため、フィニッシャーとしてはこの上なく強力だ。
 だがそんな《ヘルメス》にも、弱点がないわけではない。
「《マルコ》でW・ブレイク!」
 《マルコ》の触手のようなコードが伸長し、汐のシールドを二枚破壊する。同時にまた汐の体を電流が突き抜けた。
「っ、く、ぅ……」
 割られたシールドは汐の手元へとやって来る。それは、
(《デーモン・ハンド》に《アクア・サーファー》ですか……)
 幸運にも二枚のS・トリガーが出て来た。
 しかし今ここでそれらのカードを使用しても、全て《ヘルメス》の効果で無効化されてしまうのが関の山だ。だからと言って手札に加えても同じこと。
 その時、汐はふと手札にあるカードに視線を落とした。
(……私のシールドは残り三枚。うち一枚は《ガウル》ですから、可能性に賭けるとしたらこの二枚ですか……)
 こういう時、自分の先輩はどうするのか、どうしたのかを考える汐。
 一瞬の長考を終えると、《マルコ》に割られた二枚のシールドが光り、汐はそれをかざす。
「S・トリガー発動です。《デーモン・ハンド》《アクア・サーファー》」
「無駄だって言ってるじゃん。呪文と召喚、どっちも《ヘルメス》の効果で無効だよ!」
 悪魔の手とサーファーは同時に凍結し、砕け散る。
「運良く二枚もトリガーを引けたみたいだけど、もう終わりだよ。《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》でT・ブレイク!」
 《ヘルメス》が剣を振るう。大波の如き衝撃波が寒波と共に放たれ、汐のシールドが三枚、粉砕された。
「っ、ぅ……」
 激痛が汐の身体を突き抜けるが、次の刹那には膨大な冷気が襲い掛かり、その痛みは一瞬で麻痺する。
 全身に不快感を感じながら、汐は割られたシールドを一枚ずつ。確認する。一枚目は言わずもがな《死神の邪蹄ベル・ヘル・デ・ガウル》。そして二枚目は、
「——S・トリガー、《ソンビ・カーニバル》発動です」
 《ソンビ・カーニバル》。指定した種族のクリーチャーを三体まで手札に戻す呪文だ。
「《ヘルメス》の効果は各ターンに一度ずつしか発動できないですよ。ブレインジャッカーを指定です……《ブラッディ・イヤリング》を三体回収です」
「ふぅん? また時間稼ぎ? 《ヘルメス》の効果の穴を突いたのは褒めてあげるけど、でもそんなの無駄——」
「もう一枚、S。トリガー発動です」
 記も言葉を遮って、汐はもう一枚のS。トリガーをかざす。
「呪文《インフェルノ・サイン》で墓地の《凶刻の刃狼ガル・ヴォルフ》をバトルゾーンに呼ぶですよ」
「へぇ? ブロッカーとか《オルゼキア》とかが来ると思ったけど……こっちには《ソルハバキ》もいるし、何か手札に握ってるのかな?」
「どうでしょうね……《ガル・ヴォルフ》の効果で選ぶのはサイバーロードです」
「ちぇ、勘が良いね」
 公開した記の手札にあるサイバーロードは、《斬隠オロチ》が一体だけ。もしもの時の保険として握っていたのだろう。
 《オロチ》を捨て、記のシールドが一枚破壊される。だがこれでも、まだシールドは六枚もある。
「君はまだ手札に何か隠しているようだし、ここはとどめを刺さずにターンエンドだ。次のターンで確実に決めてあげるよ」
 これで記のターンは終了。しかし場には《ヘルメス》と《マルコ》《ソルハバキ》が残っている。《マルコ》や《ソルハバキ》は《ガル・ヴォルフ》で対処できるが、《ヘルメス》は自身の能力もあって除去するのは難しいだろう。
 ——だからこそ汐は、《デーモン・ハンド》と《アクア・サーファー》を無駄撃ちして、勝利の可能性を見出したのだが。
「私の、ターンです」
 あとは賭けるだけだ。癪な話ではあるが、この戦いのうちで理解した記の人間性に賭けるしかない。
 汐は手札から一枚のカードを抜き取り、マナを三枚、タップする。
「《電脳封魔マクスヴァル》を召喚です」
 召喚するのは、先ほど手札に戻された《マクスヴァル》。ブロッカーであり、闇文明のクリーチャーの召喚コストを1下げる、優秀なクリーチャーだ。
 《マクスヴァル》がバトルゾーンに置かれ、実体化される。その時だった。
「《ヘルメス》の効果で《マクスヴァル》の召喚を無効!」
 《マクスヴァル》が凍りつき、崩壊する。

 同時に——汐の勝利の階段が、完成した。

「賭けには、勝ったようですね」
「え? なに?」
「なんでもないですよ。ただ、あなたに地獄を見せようと思っただけです。実体化するということは、本当に本物の地獄絵図が見られる、ということでしょうし」
「……なんのこと?」
 しきりに首を傾げる記。言うよりも、実際に行動した方が手っ取り早いと判断し、汐はマナをタップする。
 1、2、3、4、5、6、7、8、9……そして、10。
 計10マナ。
「え……?」
 記の顔が引きつる。そんなことはお構いなしで、汐は手札から一枚のカードを抜き取った。《ヘルメス》とは違うベクトルで、非常に禍々しく邪悪な気配を持ったカードを。
「あなたが《マクスヴァル》を破壊してくれて助かったですよ。もし破壊してくれなければ、このカードの召喚が無効になっていたでしょうし。もしそうなれば、私が勝つ見込みはなくなっていたです」
 言葉を紡ぎつつ、場に出た《ガル・ヴォルフ》の上に、そのカードを重ねる。そして、そのカードとは、

「《凶刻の刃狼ガル・ヴォルフ》進化——《悪魔神ドルバロム》」


悪魔神ドルバロム 闇文明 (10)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド 13000
進化—自分のデーモン・コマンド1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、闇以外のクリーチャーをすべて破壊する。その後、各プレイヤーは闇以外のカードをすべて、自身のマナゾーンから持ち主の墓地に置く。
T・ブレイカー


 《ガル・ヴォルフ》を一つの魔方陣が覆う。魔方陣から放たれる暗い光は刃狼の姿を少しずつ溶かしていき、新たな神を呼び覚ます糧とする。
 《ガル・ヴォルフ》の姿が完全に消えると、、魔方陣がひときわ強く、そして暗く、光り輝いた。
 刹那——フィールドが全て吹き飛んだ。
「ぐぁ……!」
 正確に言うのならば、互いの闇文明以外のマナ、記のバトルゾーンの《エンペラー・マルコ》《黙示聖者ソルハバキ》——そして《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》が、瞬く間に消滅した。
 《悪魔神ドルバロム》。かの凶悪な悪魔の神《悪魔神バロム》が転生し、より強大な存在となった姿。その力は、あらゆる生命と、その根源を断絶する。闇以外の存在を許さない、絶対王政にして絶対神政を敷く、悪魔神の頂点——それが《ドルバロム》だ。
「な……え、う、嘘だろ、こんなのって……!」
 突然の事態に狼狽える記。闇文明を一切使用していない彼のマナは完全に全滅しており、何をすることもできない。何もできない、無力な愚者と化す。
「では……《ドルバロム》でT・ブレイクです」
 記のシールドが三枚吹き飛ぶ。事前に仕込んだS・トリガー《反撃のサイレント・スパーク》が出て来たが、クリーチャーもマナもいない状況で、どう反撃しろというのか。
「あ、あ、う……」
 記のターン。しかし彼は、何もできない。愚者は何もできず、さらにシールドが吹き飛ぶ。これで彼のシールドはなくなった。
「く、う、うぅ……《予言者フィスタ》を召喚……」
 やっと引けたブロッカー。悪魔神の攻撃でも、防ぐことはできるが、
「《地獄門デス・ゲート》発動です」
 次の瞬間には地獄へと連行されている。もう記になす術は残されていない。
 愚かな賢者に悪魔の罰を。巨大な悪魔神が、記に迫る。

「それでは……《悪魔神ドルバロム》で、とどめです——」



 その後、ボロボロになった記は、勝者の定めと言って、《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》を汐に渡した。
 そしてもう一つ、なぜか連絡先の書かれたメモも置き、別れ文句を関係ない雑談を交えて冗長に述べてから、『御舟屋』を後にした。
 その間際に、
「……一応、忠告するよ。僕らの戦いっていうのは、冗談抜きでやばいから、できればあんまり関わんない方がいいかも……って言っても、君らのカード目当てで襲ってくる連中はいくらでもいるだろうけどね。この街にも何人かいるしね……それじゃ、気をつけて」
 と、言い残していった。
「ふぅ、なんだかとても大変なことに巻き込まれてしまったようですね……」
 そして汐は、これからの未来に対し、そんなため息を吐くのだった。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.34 )
日時: 2014/03/13 03:33
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

空城 夕陽 —ソラシロ ユウヒ— >>149
本作の主人公。ある時を境に“ゲーム”の中心人物となってしまう。


春永 このみ —ハルナガ コノミ— >>150
夕陽の親友。テンションがいつも高めで、夕陽たちのムードメーカー的存在。家は喫茶店を営んでいる。


御舟 汐 —ミフネ シオ— >>151
夕陽たちより一つ年下の後輩。感情を表情や声に出さず、クールな振る舞いを見せる。家は『御舟屋』というカードショップ。


光ヶ丘 姫乃 —ヒカリガオカ ヒメノ— >>178
夕陽のクラスメイト。両親が宗教に傾倒していたこともあり、家は貧しい。やや天然だがしっかりもの。


水瀬 流 —ミナセ ナガレ— >>179
二学期から雀宮高校に転校してきた、夕陽たちより一学年上の先輩。いつも名前を「リュウ」と間違われ、その都度訂正している。


朝比奈 ひまり —アサヒナ ヒマリ— >>390
雀宮高校の二年生で、夕陽たちの先輩。元《アポロン》の所有者で『太陽一閃サンシャイン』の異名を取る。


霊崎 クロ —レイザキ クロ— (オリ)>>37
夕陽たちのクラスメイト。ほとんど表情を出さないが、それなりの気遣いはできる。カード集めが趣味らしい。


武者小路 仄 —ムシャノコウジ ホノ— (オリ)>>47
夕陽たちのクラスメイト。気が強く男勝りなところもあるが、根は優しい。


潮原 零佑 —シオハラ レイスケ— (オリ)>>46
夕陽たちより学年が一つ上の先輩。“ゲーム”には関係ないが『荒波の零佑』の異名で知られている。


向田 葵 —ムカイダ アオイ— (オリ)>>197
夕陽たちのクラスメイト。一般人のようだが、『神話カード』について知っているらしい。


御舟 澪 —ミフネ レイ—
汐の実兄でカードショップ『御舟屋』の店長。常時ポーカーフェイスで表情が読み取れない。夕陽のことを主人公と呼ぶ。


春永 木葉 —ハルナガ コノハ—
このみの実姉で、カフェ『popple』の店長。澪とは高校時代からの付き合い。


野田 ひづき —ノダ ヒヅキ—
夕陽たちのクラスメイトで学級委員長。家は神社。自称「ゆーちゃんのファン」。


金守 深 —カネモリ シン—
【慈愛光神教】の教祖。《慈愛神話》の力で信者たちをコントロールしていた。


ルカ=ネロ >>450
【神格社界】界長にしてその創始者の一人。現在の“ゲーム”の世界では二番目に強い。とにかく楽しむことにしか興味のない戦闘狂。


ささみ —ササミ— >>448
【神格社界】秘書官。ルカが行わない【神格社界】の事務をこなしている。うさみとは双子で、強気だからかよく間違われるが、こちらが妹。


うさみ —ウサミ— >>449
【神格社界】秘書官。ルカの身の回りの世話を主に行っている。ささみとは双子で、気弱だからかよく間違われるが、こちらが姉。


火野 亜実 —ヒノ アミ— >>442
【神格社界】に属する厳格な女。『炎上孤軍アーミーズ』という異名を取ることから、“ゲーム”参加者の中ではそれなりに有名。


青崎 記 —アオザキ シルス—
【神格社界】に属する軽薄な青年。『機略知将ノウレッジ』の異名を持ち、情報屋のような活動もしている。


和登 栗須 —ワト クリス— (オリ)>>43
【神格社界】に属する男。『深謀探偵シャーロキアン』の異名を取り、その異名通りシャーロック・ホームズを敬愛している。


ラトリ・ホワイトロック >>392
【ミス・ラボラトリ】の所長。『神話カード』を持ってはいるが、実力はそこまで高くない。お気楽な性格だが、たまに雰囲気が豹変する。


黒村 形人 —クロムラ ナリト— >>391
普段は雀宮高校の現代社会の教師だが、真の姿は【ミス・ラボラトリ】の研究員にして夕陽たちの観察者。


九頭龍 希道 —クズリュウ キドウ— (オリ)>>119
【ミス・ラボラトリ】の研究者。他人を不快にさせる言葉を投げかけることから【ラボ】でも嫌われ者だが、実力はトップクラス。


九頭龍 希野 —クズリュウ キノ— (オリ)>>510
【ミス・ラボラトリ】の研究者。九頭龍希道の双子の妹だが、兄と比べて性格は至ってまとも。どころか兄を嫌っている。


ジークフリート・フォン・パステルヴィッツ
【神聖帝国師団】師団長。“ゲーム”の世界にいて現時点では無敗、また歴代“ゲーム”参加者の中でも最強と謳われるほどの力を持つ。愛称はジーク。


シャルロッテ・フォン・パステルヴィッツ
【神聖帝国師団】師団長補佐。非常に幼いが、底知れぬなにかを感じさせる。愛称はロッテ。


『夢海星辰』 —クトゥルー—
【神聖帝国師団】の帝国四天王の一人。極端に口数が少ないが、帝国四天王のリーダー。


『無貌混沌』 —ニャルラトホテプ—
【神聖帝国師団】の帝国四天王の一人。


『火精火滅』 —クトゥグア—
【神聖帝国師団】の帝国四天王の一人。物静かで感情が読み取りにくいが、ニャルラトホテプとは非常に険悪。


『黄衣之天』 —ハスター—
【神聖帝国師団】の帝国四天王の一人。少年らしくノリが軽く、どこか相手を小馬鹿にしたような態度を取る。


ドグマ・アルヒャイ (オリ)>>233
【神聖帝国師団】の第一小隊長。とあるテログループの中枢にいた。自力で今の地位までのし上がってきた実力派。


シーザー・ジャン・ジャック (オリ)>>232
【神聖帝国師団】の第二小隊長。海賊のような風貌と凄まじい声量と甲高い笑い声が特徴。


葛葉 龍泉 —クズハ リュウセン— (オリ)>>225
【神聖帝国師団】の第三小隊長。容姿、性格共に奇天烈な男。


ジュリア=チェッカーズ (オリ)>>250
【神聖帝国師団】の第四小隊長。容姿、性格ともに気品のある淑女。


村崎 陽花 —ムラサキ ハルカ— (オリ)>>228
【神聖帝国師団】の第七小隊長。並外れた運動神経の持ち主だが、頭は弱い。葵とはなにか関係がある模様。


ルシエル・フォーリンジェル (オリ)>>229
【神聖帝国師団】の第八小隊長。不気味な笑みを浮かべたり、精神が安定しなかったりするが、【師団】への信仰心が異常に強い。


マカ=チャルルカ (オリ)>>238
【神聖帝国師団】の第九小隊長。有力貴族チャルルカ一族の末裔で、個への執着心が薄く、天然かつマイペースな性格。


ミウ・ノアリク
【神聖帝国師団】の第六小隊副隊長に属する少女。『白虹転変シーレーン』の異名を持ち、会話文が途切れ途切れになる口調で話す。


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