二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.1 )
日時: 2013/06/30 15:32
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: http://dm.takaratomy.co.jp/card/search/

 デュエル・マスターズ。
 それは、この世界で最も栄えているトレーディング・カードゲームだ。
 四十枚のカードで構成されたデッキを持ち寄り、二人で戦う。相手を攻撃するための味方、クリーチャー。相手の行動を妨害したり自分の行動をサポートする、呪文。クリーチャーに装備することで強化する、クロスギア。要塞として場にとどまることでフィールドに影響を及ぼす、城。これらのカードを駆使し、先に相手の五枚のシールドを破壊してダイレクトアタックを決めたプレイヤーが勝利する。
 それが、デュエル・マスターズ、略してデュエマ。
 世界的にかなり浸透しているデュエマ。そしてここにも、クリーチャーを召喚し、戦う少年少女の姿があった——



「あたしのターン! 3マナで《青銅の鎧》を召喚! 効果でデッキの一番上から一枚目をマナゾーンに置いて、さらに2マナ! 《無頼勇騎タイガ》!」
 小柄な体躯に幼い顔立ち、明るい髪を低い位置で二つに括っている少女は、続け様に手札からクリーチャーを召喚していく。
 場に出ている《無頼勇騎ゴンタ》にもう一体の《青銅の鎧》と合わせ、これで少女のクリーチャーは四体となった。
「相変わらず速いな……」
 次々と召喚されるクリーチャーに、少女の向かいにいる少年は苦笑いを浮かべる。こちらの場は、シールドが一枚減っており、ドラゴンのコストを下げる《コッコ・ギルピア》《コッコ・ルピア》《ルピア・ラピア》と、ファイアー・バードが目白押しだ。
「さーて、一気に攻めるよー! まずは《ゴンタ》でシールドをブレイク!」
 少女は《無頼勇騎ゴンタ》のカードを指で押さえ、横向きにしてタップする。それを見た少年もは、シールドゾーンにあるカードを一枚、自分にだけ見えるようにめくる。
 そして、微笑んだ。
「来た来た、いいところに来た。最初に《ゴンタ》で殴ったのは失敗だったな。火文明のデッキに、このカードが入ってることを忘れたか?」
 と言って、少年は今しがためくったカードを表にした。呪文のカードだ。
「S・トリガー! 《スーパー炎獄スクラッパー》!」
 S・トリガーとは、デュエマの面白さの理由の一つでもある、逆転要素だ。
 シールドを五枚割られ、ダイレクトアタックを決められたら勝利するデュエマ。そのシールドは、破壊されたらプレイヤーの手札に行くのだが、その時そのカードがS・トリガーつきのカードだったなら、マナコストを支払わずにプレイできるのだ。
 そして少年が発動したS・トリガー呪文《スーパー炎獄スクラッパー》の効果は、相手のクリーチャーのパワー合計が5000以下になるように選び、破壊する。つまり、
「うぁ、《青銅の鎧》と《タイガ》が……」
 《青銅の鎧》のパワーは1000、《無頼勇騎タイガ》のパワーは2000、《青銅の鎧》が二体いたとしても、合計パワーは4000なので、まとめて《スーパー炎獄スクラッパー》で除去される。
「ちぇ、しょうがないや。ターンエンド」
「よし、なんとか凌げた……僕のターン」
 唇を尖らせて不満そうに溜息を吐く少女と、被害がシールド一枚で済み安堵する少年。今度は少年のターンだ。
 少年はデッキからカードを一枚引き、思案する。
(とりあえず軽量獣は一掃できたけど、《ゴンタ》が厄介だな……)
特殊な能力こそないが、《無頼勇騎ゴンタ》のパワーは4000。サポートに回ることの多いファイアー・バードで、とても太刀打ちできない。
 しかし、
「ここでこいつを引けたのはラッキーだったな。召喚、《フレイムバーン・ドラゴン》!」


フレイムバーン・ドラゴン 火文明 (6)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン 5000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のパワー4000以下のクリーチャーを1体、破壊してもよい。


「うそっ?」
 少女の顔が少しだけ引きつる。
 《フレイムバーン・ドラゴン》は、召喚と同時に相手のパワー4000以下のクリーチャーを破壊する。そして《無頼勇騎ゴンタ》のパワーはちょうど4000。《フレイムバーン・ドラゴン》の射程範囲内だ。
 少女はがっかりしたように《無頼勇騎ゴンタ》を墓地に置く。だが、まだ少年のターンは終わっていない。
「マナも余ってるし、ついでに《スピア・ルピア》を召喚。どうせ殴り返せるようなクリーチャーもいないし、ここは総攻撃しとくか。《コッコ・ギルピア》《コッコ・ルピア》《ルピア・ラピア》の三体でシールドをブレイク!」
 少年は名前を呼んだクリーチャーを一体ずつタップし、少女もそのたびにシールドをめくり、手札に加えていく。S・トリガーない……が、
「S・バック発動! 手札から《無頼勇騎ゴンタ》を捨てて……《天真妖精オチャッピィ》召喚!」


天真妖精オチャッピィ 自然文明 (3)
クリーチャー:スノーフェアリー 1000
S・バック—自然(自然のカードを自分のシールドゾーンから手札に加える時、そのカードを捨ててもよい。そうした場合、コストを支払わずにこのクリーチャーを召喚する)
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、カードを1枚、自分の墓地からマナゾーンに置いてもよい。


「ここでS・バックかよ……」
 少年が呻く。
 S・バックもまた、S・トリガーほどではないがデュエマで重要な逆転要素の一つだ。
「《オチャッピィ》の効果で墓地の《タイガ》をマナに置くよ。さ、どーする?」
「……ターン終了」
 ターンが交代し、また少女の顔に明るい笑みが戻ってくる。同じように少年にも、意気消沈したような表情が帰ってきた。
 とはいえ、この状況は少年が優勢だ。確かにマナの数を比べれば、《青銅の鎧》や《天真妖精オチャッピィ》でブーストした少女の方が圧倒的に多いが、場のクリーチャーは少年が五体に対し、少女はゼロ。シールドもたったの二枚だ。次に総攻撃を喰らえば、まず間違いなく敗北する。
 が、しかし、
「さーて、ここであたしの切り札登場! 《天真妖精オチャッピィ》進化! 《機神勇者スーパー・ダッシュ・バスター》!」


機神勇者スーパー・ダッシュ・バスター 火/自然文明 (6)
進化クリーチャー:ヒューマノイド/ビーストフォーク/ハンター 8000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
進化—自分の火または自然のクリーチャー1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手の、コスト5以下のクリーチャーを2体選び、持ち主のマナゾーンに置く。
W・ブレイカー


 声高らかに叫び、少女は《天真妖精オチャッピィ》の上に《機神勇者スーパー・ダッシュ・バスター》を重ねる。
 指定されたカードの上に、さらにカードを重ねて行う進化。このようにして進化したカードは、通常のカードよりも強力な効力を発揮する。
「《スーパー・ダッシュ・バスター》の効果で《スピア・ルピア》と《ルピア・ラピア》をマナゾーンに! さらに残ったマナで《無頼勇騎タイガ》を召喚! 《スーパー・ダッシュ・バスター》で《コッコ・ルピア》を、《タイガ》で《コッコ・ギルピア》を攻撃!」
「うっ!」
 一気にクリーチャーを展開され、少年のクリーチャーが殲滅される。残ったのは《フレイムバーン・ドラゴン》のみ。
「ターンエンドだよ」
 少女のターンが終了し、少年のターンに回る。
(やばいぞ、このターンでなんとかしないと……)
 幸い、少年のマナは《スーパー・ダッシュ・バスター》の効果で無駄に蓄えられた。ここでキーカードを引ければ、逆転に繋がるかもしれない。
(僕の手札にはもう一枚《スピア・ルピア》がいる。ここであれを引ければ……)
 願うように、祈るように、少年はデッキの一番上にあるカードを指先で掴み、持ち上げる。目を瞑ってそのカードを顔の前まで持っていき、開眼した。
「来た! 《スピア・ルピア》を召喚!」
 少年は元々あった手札から、勢いよく《スピア・ルピア》を召喚する。だが、これだけでは少女に対抗することなどできない。
 だからもう一枚、先ほど引いて来たカードを使う。
「《スピア・ルピア》進化! 《火之鳥ガルダン》!」


火之鳥ガルダン 火文明 (4)
進化クリーチャー:ファイアー・バード 4000+
進化—自分のファイアー・バード1体の上に置く。
パワーアタッカー+4000
W・ブレイカー


「《ガルダン》……てことは」
 少女は少年の思惑を察したようだ。
 繰り返すが、デュエル・マスターズの基本的な勝利条件は、相手のシールドを全て割り、プレイヤーに直接攻撃すること。つまり相手にどんな大型クリーチャーが存在していようと、直接攻撃されてしまえば終わりなのだ。
 少女のシールドは二枚。対して少年の場には、クリーチャーが二体。一見すればあと一歩で届かないように見えるが、《火之鳥ガルダン》はW・ブレイカーを持つ。
 つまり、一度に相手のシールドを二枚、ブレイクすることできるのだ。
「《ガルダン》でシールドをW・ブレイク!」
 《火之鳥ガルダン》はタップされ、少女の残る二枚のシールドを全て破壊した。後は《フレイムバーン・ドラゴン》でダイレクトアタックを決めれば、少年の勝ちだ——が、

「S・トリガー発動、《ナチュラル・トラップ》!」

 ブレイクされた少女の最後のシールドが、場に公開された。一度は少年のピンチを救った者と同じ、S・トリガーだ。
 しかし、効果はまるで違う。
「《フレイムバーン・ドラゴン》をマナゾーンへ!」
 《ナチュラル・トラップ》は自然文明を代表する除去系S・トリガー呪文。効果は、相手のクリーチャーを一体、問答無用でマナゾーンへ送ること。
 つまりその一枚で、少女にとどめを刺すはずだった《フレイムバーン・ドラゴン》はマナへ行き、少年はこれ以上の攻撃ができなくなってしまった。
「さ、あたしのターンだよ」
 少女は嬉々としてデッキからカードを引き、マナをチャージし、そのマナをタップする。
「3マナ《誕生の祈》。そんで6マナ、《誕生の祈》進化!」
 少女は場に出た《誕生の祈》の上に、さらなるカードを重ねる。
「《大勇者「ふたつ牙」》!」


大勇者「ふたつデュアル・ファング」 自然文明 (6)
進化クリーチャー:ビーストフォーク 8000
進化—自分のビーストフォーク1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、 自分の山札の上から2枚を、自分のマナゾーンに置く。
W・ブレイカー


「おいおい、嘘だろ……!」
 冷や汗をかく少年。これで少女の場にはクリーチャーが三体、しかもうち二体がW・ブレイカーという状態に。
「さっきと同じ失敗をしちゃいけないし、まずは《タイガ》でブレイク!」
 《無頼勇騎タイガ》が少年のシールドを割る。
「続けて《大勇者「ふたつ牙」》でW・ブレイク!」
 さらに《大勇者「ふたつ牙」》がシールドを二枚破壊する。S・トリガーはあったが、さっきと同じ《スーパー炎獄スクラッパー》だ。これでは《スーパー・ダッシュ・バスター》を倒せない。
 最後の攻撃を防ぐ術が、ない。それは、つまり——少年の敗北を意味していた。
 少女は明るい笑顔で、手元のカードをタップする。

「《機神勇者スーパー・ダッシュ・バスター》で、とどめだぁー!」 

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.2 )
日時: 2013/06/29 01:49
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: http://dm.takaratomy.co.jp/card/search/

「——というわけで、今回のデュエルはこのみ先輩の勝ちですね」
「いぇーい!」
 淡々とした無感動な声と明朗軽快な声が続けて耳に届く。少年——空城夕陽はその声を聞きつつ、広げたカードを片付ける。
「にしても、やっぱり速いよな、このみは……同じビートダウンデッキでも、こうも違うか」
「まーねー。て言っても、今回はちょっと冷や冷やしたよ。けっこー危なかったし」
 今しがた勝利を喜んでいた少女——春永このみも、同じようにカードをかき集め、デッキケースに戻した。
 ここはデュエル・マスターズ専門のカードショップ『御舟屋』。小さな店なのだが、最新のカードパックや構築済みデッキを数日早く店頭に並べたり、今はもう絶版になっているはずのカードを置いていたりと、デュエマ好きにとっては泣いて喜ぶような謎多きカードショップだ。
「では、この新発売の最後の1パックはこのみ先輩のものということでいいですね」
「うん、まあ約束だしね……」
「わーい! ゆーくん、汐ちゃん、ありがとー!」
 さっきまでのデュエルは、この1パックを巡ってのものだった。それを手にすることができたこのみは、ほくほく顔でそれを開封している。
「はぁ……参ったなぁ。発売が遅れた上に買えないなんて……」
「ごめんなさい、先輩。発売日に関しては本来今日が正しいですが、こっちの発注ミスのせいで在庫が全然なくて」
 無表情な瞳で夕陽を見上げ、無感動な声で謝罪するのは、このみと張り合えるくらい小柄で華奢な少女。細く跳ねるようにして飛び出たサイドテールが童顔と相まって幼さを強調しているが、雰囲気はどこか大人びており、ミステリアスでクールな空気を醸し出している。
 御舟汐。それが彼女の名前であった。苗字からも分かるように、このショップのオーナーとは血縁関係にある。
「別にいいよ。来週にはまた入荷してるんでしょ? その時にでも買いに来るさ」
「そうですか……では、少なくとも一箱分の在庫を残しておくですよ」
「それはやり過ぎな気も……いや、一箱ぐらいなら普通なのか? ……まあなんでもいいか。とにかくありがとう」
「はいです」
「汐ちゃーん! 今即興でカード入れ替えたから、デュエマしよー!」
 夕陽とシオの間に、このみが割り込んで来る。この喜びっぷりを見るからに、彼女のデッキに合うレアカードでも手に入ったのだろう。
 空城夕陽、春永このみ、御舟汐。
 デュエル・マスターズが好きな、ごくごく普通の学生たち。
 しかし彼らの物語が歪み始めるのは、そう遠くない未来であった——



「はぁ……結局、今日は一度もこのみに勝てなかったな……」
 夕暮れの太陽が昇る頃、夕陽は一人帰路についていた。
 いつもテンションの高いこのみだが、今日はパックを賭けた最初の一戦からさらに気分がうなぎ上りで、フルブースト状態だったのだ。マナもバトルゾーンもフルブーストで、今日のこのみは夕陽も汐も、手も足も出なかった。
 やや沈んだ気分で歩くうちに、家に辿り着く。ごくごく普通な一戸建ての家。門扉を潜り、ついでに郵便受けをチェックする。
 ここまではいつも通りの、日常の些細なひとかけらだが、一つだけ日常から外れたものがあった。
「ん……? なんだ、これ?」
 スーパーや塾や宗教やらのチラシに混じって、一つだけ——いや、一枚というべきか——違和感を感じるものが入っていた。
 いつもならそれを見たからと言って、そこまで反応は示さないだろう。いやいや、ある意味では喰いつくところかもしれないが、それ自体は夕陽が日常的に見て、触れているものだ。しかしこの時、この場、郵便受けに入っているという現象は、かなりの違和感と不可解を与える。
 夕陽はチラシを左手でまとめて引っこ抜き、最後に残ったそれを、右手でゆっくりと引き寄せる。
「カード……?」
 そう、それはまさしく、デュエル・マスターズカードだった。
「なんでこんなものが……なにか懸賞に応募したっけ? 見たことないカードだし……でも懸賞にしたって、裸のままカードを放り込むか、普通?」
 多くの疑念は残るものの、とりあえず夕陽は、暫定的に『なにかの懸賞で当たったカード』と認識することにした。

 当たり前のことであり、当然のことだが、夕陽はこの時まだ知らなかった。
 そのカード——『神話メソロギィカード』の重要性を。そのカードが及ぼす、自身への影響を。
 そして、そこから始まる、残酷非道なゲームの実態を——



 翌日。
 夕陽は普通に学校に登校していた。変なカードが送られた程度では、学生の生活パターンは崩れたりしないのだ。
 昨晩、夕食の席で夕陽は妹にもカードのことを聞いてみたが、知らないと返答された。その後、インターネットでそのカードについても調べてみたが、それらしい情報は一切なかった。
(うーん、結局あのカードはなんなんだ……謎すぎる。今度、御舟にでも訊いてみようかな)
 謎が深まる未知のカード。これがカードではなく別のものだったらゴミ収集車のお世話になっていたかもしれないが、いくら謎めいていても夕陽が手にしたのはデュエル・マスターズカードなのだ。
 強力だと感じたカードを使いたくなるのは、デュエリストの性。つまり、
(カードについては分からなかったけど、昨日は張り切り過ぎた……夜中にデッキなんて作るもんじゃないな。眠い……)
 大きく欠伸をしながら、机に突っ伏す。
 昨日、というより日付的には今日の夜中、四時を回るほどの時間をかけて、夕陽は謎のカードを切り札に据えたデッキを作ってしまったのだ。
 ここまで来ると、もはや性分。デュエマ好きの衝動だ。
「——ということで、年々雇用情勢は悪化しつつあるのですが、その理由を……えぇと、今日は……光ヶ丘さん、お願いします……」
 教壇では新任教師が現代社会の授業をしていた。まだ若い男の教師で、影が薄く前髪で顔も隠れがち、さらにぼそぼそと喋るのでかなり陰気な感じの教師だが、意外とイケメン(このみ談)らしく、女子受けは良い。
(とか、そんなことはどうでもいいんだよな……この声、聞いてるだけで眠くなる……)
 大声で授業をされたら眠気など吹き飛ぶのだが、こんな囁くような声を聞いていたら睡眠欲求が現れるのは当然。さらに新任教師という立場からなのか、彼の態度は自信なさ気で、他にも多数いるであろう居眠りしている生徒を叱咤するようなことはしない。事実、夕陽の視界に映っているこのみは爆睡していた。
(僕も、そろそろ限界か……)
 そして、夕陽もまた、眠りの世界に誘われるのであった。



「——つまり、《アポロン》は別の奴の手に渡ったと?」
『そういうことになるね。ま、あれほど戦うことを嫌っていたのだから、いずれ誰かに譲渡するだろうことは、なんとなく読めてはいたさ。ただ、譲渡した相手との繋がりが見えないんだけどね……まさか見も知らぬ男に押し付けるほど、非常識だとは思えないし』
「どうだか。肉体的にも精神的にもかなり追い詰められていたようだからな、非常識な行動の一つや二つ、あってもおかしくないだろ。戦場で数々の死を経験し、恐怖した兵士は、奇行に走ることもある。だからあたしとしてはむしろ、その辺に捨てなかっただけでも僥倖と言えるよ」
『それはあれじゃない? その辺に捨てたら、こっちでも見つけられないから、拷問とかされるとでも思ったんじゃない? そこまで考えられる思考力が残っていたかは、甚だ疑問だけど?』
「とにかく、次の標的はその男ってことだな。どこにいる、どんな奴だ?」
『ちょっとは待ちなよ、すぐに調べるからさ……て言っても、実はもうほとんど情報が集まってるんだけどね』
「そうか。ならさっさと教えろ」
『だからそう急かすなってば』
「戦場では一分一秒が惜しいものだ。それはこの情報社会でも同じこと。そして、あたしたちが参加している、この“ゲーム”においてもな」
『……まあね。でも良かったじゃん、今回の相手は前のと違って狩りやすそうだよ?』
「油断は禁物だがな。それと、お前は無駄に賢しい奴だから一応、釘を刺しておく。《アポロン》はあたしの標的だ、横から掻っ攫うような真似をしたら、焼くぞ」
『何を?』
「お前とお前のカードとお前の持ち物とお前の存在に直結するもの全てだ」
『それ、もういっそお前の存在をこの世からなかったことにしてやるー、とか言った方が良くない? どっちでもいいけどさ。まあいいよ、僕は《アポロン》に興味はないし。あーゆー暑苦しいの、苦手なんだよね』
「それはあたしに対する侮辱か? 嫌味か? 悪態か?」
『君自身は別にいいんだけどね……それより大丈夫なの? 前の奴もそうだったけど、《アポロン》って相当強いんでしょ? 百パー勝てる見込みとかあるの?』
「強いと言えば、『神話メソロギィカード』は全てそうだろう。それに、絶対に勝てる戦などは存在しない」
『えー? それって、だいじょ——』
「だが、あたしは負けるつもりはない。確実に敵を仕留めてみせる。この——」
 そして彼女は、一枚のカードを掲げた。

「——全てを焦土と化す、絶対的な軍神の力を持ってな」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.3 )
日時: 2013/06/29 09:59
名前: シグレ (ID: FAqUo8YJ)

もしかして、ポケモン小説を書いている白黒さんですか?
人違いだったら、すみません。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.4 )
日時: 2013/06/29 14:08
名前: タク ◆COeo3uVOjE (ID: 39RfU1Y2)

こんにちは、タクです。テストで早帰りだったため、早速コメントしました。新スレ立てたんですね。2話読ませていただきましたが、今作はだいぶシリアスな感じのストーリーですね。夕陽の手に入れたカード・・・・・・一体、何でしょうか。《アポロン》も恐らく自分が知っている中に、思い当たるカードが1枚ありますが、違いますよね、多分。『神話メソロギィカード』が今作で重要な要素だと思いますが、今後の展開がますます気になるばかりです。そして、”ゲーム”とは?続きが気になって仕方がありません。それでは、ここで。


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