二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.356 )
日時: 2014/01/20 01:11
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「祝」の頂 ウェディング 無色 (11)
クリーチャー:アンノウン/ゼニス 13000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、相手はバトルゾーンの自分のクリーチャーまたは自身の手札から合計4枚選び、新しいシールドとして裏向きにし、自身のシールドゾーンに加える。
このクリーチャーがシールドをブレイクする時、相手はそのシールドを自身の手札に加えるかわりに墓地に置く。
T・ブレイカー
エターナル・Ω


 現れたのは、闇のエンジェル・コマンドを束ねる天頂の存在——《「祝」の頂 ウェディング》。
 《ウェディング》が召喚してバトルゾーンに出た時、相手はバトルゾーンと手札のカードを四枚選び、シールドに埋めなくてはならない。
 パッと見ると、シールドが最大で四枚増え、しかもタイミングが合えば手札のS・トリガーもシールドに仕込めるのだから、悪いことばかりではないように思える。
 しかし、それは大きな間違いだ。シールドにカードを封じられることは、カードの封印としてはかなり強力な部類に位置する。シールドに埋められてしまえば、回収が難しくなるのだ。シールドからカードを回収するカードはデッキを選ぶうえに、数も多いとは言えない。山札や墓地以上に回収が困難なゾーンだ。シールドをブレイクされれば手札に入るが相手依存になるためそう都合よくシールドを割ってはくれない。
 加えて《ウェディング》はブレイクしたシールドをそのまま墓地へ送ってしまう能力も持つ。つまり、S・トリガーを仕込んでもそのまま焼き払われてしまうのだ。
 祝福だと思ったら、それは大きな絶望だった。そしてその絶望こそが祝福——それが《「祝」の頂 ウェディング》だ。
「貴女の場にいるクリーチャーは三体、手札のカードは一枚。さあ、すべてのカードをシールドに送りなさい!」
「…………」
 汐は口を閉じたまま、自分の三体のクリーチャー、そして手札のカードを一枚、シールドゾーンに置く。シールドこそ五枚にまで回復したが、これで汐は、バトルゾーンも手札も空になってしまった。
「さらに《ブラック・オブ・ライオネル》でWブレイク!」
 そしてすぐさま《ブラック・オブ・ライオネル》による攻撃が放たれる。ブレイクされたシールドは、《ガル・ヴォルフ》と汐が手札からシールドに置いたカードだ。どちらもS・トリガーではない。
 汐のデッキはマナ加速からの大型デーモン・コマンド召喚に重点を置いているため、S・トリガーはあまり多くない。あるとしても《フェアリー・ライフ》や《デーモン・ハンド》が精々だ。
 《フェアリー・ライフ》はともかく、《デーモン・ハンド》なら前のターンに使用して、ルシエルのブロッカーを除去していただろう。それをしなかったということは、少なくともS・トリガーではない。クリーチャーなら、デメリット持ちでない限り頭数を増やすために召喚するはずなので、呪文だと考えられる。マナがあるにも関わらず使用しなかったところを見ると、マナを加速させるような、この場面では役に立たない呪文なのだろう。
 以上のような推測から、現状で最も能力が生かしにくい《ガル・ヴォルフ》と、使い道のなさそうなカードをブレイクしたルシエル。恐らく、次のターンに残った三枚のシールドを《ウェディング》で焼き払い、《ブラック・オブ・ライオネル》でとどめを刺すつもりなのだろう。
「私のターンは終了。さあ、貴女の最後のターンです、精々足掻けるだけ足掻きなさい」
「……そうですね」
 確かに、これが最後のターンになる。

 ——このデュエルにおける。

「……これで、終わりです」
 ゆっくりとカードを引いた汐。残り二枚の手札で、汐は最後の行動を起こす。
「《霞み妖精ジャスミン》を召喚です」
「《ジャスミン》? なにをシールドに埋めたのかと思えば、そんなクリーチャーですか」
 嘲笑するようなルシエルの声。しかし彼女は、ここで気付くべきだ。前のターン、なぜ汐が《ジャスミン》を召喚しなかったのかを。
 破壊せずに場に残せば、アタッカーとして運用できる《ジャスミン》。この局面で、わざわざ手札に温存する必要はなかったはずだ。
 しかしそれを手札にキープしていたのは、れっきとした理由がある。
「……《スター・イン・ザ・ラブ》を警戒しての行動だったのですが、出て来たのが《ウェディング》とは、少し驚きでした。しかしあなたがのこクリーチャーのシールドを割ってくれたお陰で、このターンに終わらせることができそうです」
「はぁ?」
 なに言ってんだこいつ、とでも言いたげな視線を、ルシエルは汐へと向ける。だがその答えは、すぐに明らかとなる。
「確かに私のデッキは、高速で《ドルバロム》などの重量級デーモン・コマンドを呼び出す構築です。しかし、本当の、本来の、本命はこちらなのですよ」
 最後に残った一枚。残りのマナを全て使い切り、今しがた引いたばかりのそのカードを、曝け出す。

「——《「謎」の頂 Ζ—ファイル》」


「謎」の頂 Ζ—ファイル 無色 (10)
クリーチャー:アンノウン/ゼニス 13000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、自分の他のクリーチャーをすべて破壊してもよい。そうした場合、デーモン・コマンドをすべて、自分の墓地からバトルゾーンに出す。
T・ブレイカー
エターナル・Ω


 顕現するのは、またしても天頂の存在。かの《「呪」の頂 サスペンス》の盟友、闇のデーモン・コマンドを率いるゼニス——《「謎」の頂 Ζ—ファイル》だ。
「《Ζ—ファイル》……!? まさか、こんな局面で……!」
 驚きを隠しきれないルシエルは、一歩後ろへと後ずさる。
 汐が手札に《ジャスミン》をキープしていてのは、この《Ζ—ファイル》のためだ。《Ζ—ファイル》は召喚時に凄まじい能力を発動するが、その条件として、自分の他のクリーチャーをすべて破壊しなければならない。破壊できなければ効果が発動しないので、場のクリーチャーを一掃される可能性を鑑みて、汐は手札に《ジャスミン》を温存していた。
「《Ζ—ファイル》の能力発動。私の《ジャスミン》を破壊です。そして——」
 直後、生贄となった《ジャスミン》の魂が、墓地の悪魔たちに新たな生命を吹き込み、最後に《Ζ—ファイル》が咆号する。
「私の墓地のデーモン・コマンドをすべてバトルゾーンへ」
 新たな命を得た悪魔たちは、次々と墓地から這い出てくる。序盤から墓地も同時に増やしていた汐の墓地には大量のデーモン・コマンドが眠っている。それがすべて、呼び覚まされたのだ。
 《「謎」の頂 Ζ—ファイル》は、闇のデーモン・コマンドを統率するゼニス。《Ζ—ファイル》の前には悪魔しか存在することが許されず、また悪魔には死すらも許さない。死んだ悪魔を、他の死んだ魂を呼び水にして、再び戦場へと舞い戻らせるのだ。
「墓地より復活です。《死神の邪険デスライオス》《凶刻の刃狼ガル・ヴォルフ》《魔刻の斬将オルゼキア》——」
 おびただしい数の悪魔たちが舞い戻ってくる。そして最後には、
「《デスライオス》進化《悪魔神ドルバロム》。《オルゼキア》進化《死神明王ガブリエル・XENOM》。そして《ブラックルシファー》進化《暗黒の悪魔神ヴァーズ・ロマノフ》」
 呼び戻されるのは、ただの悪魔だけではない。悪魔神——進化デーモン・コマンドをも呼び戻すのだ。
「《ドルバロム》で互いのバトルゾーンとマナゾーンにある、闇以外のカードをすべて墓地へ。《ヴァーズ・ロマノフ》の能力で、生き残った《ブラッディ・シャドウ》を破壊」
 蘇った《デスライオス》や《オルゼキア》でボロボロになったところに、さらなる追い打ちをかける。マナを潰し、辛うじて生き残った《ブラッディ・シャドウ》も《ヴァーズ・ロマノフ》によって破壊される。
 これでルシエルのバトルゾーンは全滅。マナはそれなりに残っているが、手札はほとんどない状態。シールドもゼロ。そして立ちはだかるのは、三体の悪魔神。
「なっ、ば、馬鹿な……こんなことが……!」
 ルシエルが顔を歪め、狂気と憤怒の込められた眼差しで、射殺すように汐を睨みつける。
「この、神の供物にしかならないような、愚物の文才でぇぇぇ!」
「……私が供物か愚物かはこの際でうでもいいですが、とにかく、これで終わりです」
 発狂したように叫ぶルシエルも、汐は軽くあしらう。平静を失った人間ほど、弱いものはなく、恐れるものはない。
 守る術を完全に失ったルシエルに、汐の悪魔神が魔手を伸ばす。

「《暗黒の悪魔神ヴァーズ・ロマノフ》で、ダイレクトアタックです」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.357 )
日時: 2014/01/20 19:40
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 姫乃とクトゥグアのデュエル。
 姫乃の場には《ハッチャキ》が一体。対するクトゥグアの場にはなにもないが、《フェアリー・ライフ》や《再誕の社》などのマナ加速を連打し、早くも7マナも溜めている。
(マナゾーンを見る限り、自然とゼロ文明のデッキ……高速マナ加速からゼニスとかを出すデッキかな……?)
 だとすれば、まだクトゥグアのマナは7マナ、あと1、2ターンぐらいは余裕がありそうだ。
「わたしのターン。《コアクアンのおつかい》を発動」
 姫乃は山札から三枚のカードを捲る。捲られたのは《知識の精霊ロードリエス》《蒼狼の始祖アマテラス》《光器パーフェクト・マドンナ》。
「水の《アマテラス》は墓地に置いて、残り二枚は手札に加えるよ。そして《ハッチャキ》で攻撃、その時《ハッチャキ》の効果で手札から《知識の精霊ロードリエス》をバトルゾーンに! 《ロードリエス》の効果で一枚引いて、シールドブレイク!」
 クトゥグアの手札は残り少ないので、ここで手札を与えるのは抵抗があるが、まだマナが溜まっていないので、このターンくらいならなんとかなるだろう。
「……私のターン。《ニヤリー》を召喚」
 したり顔で現れたのは、三角錐の頭を持つ小人のようなクリーチャー《ニヤリー》だ。
「《ニヤリー》の効果で山札の上から三枚を見て、その中の無色カードをすべて手札に……手札に加えるのは、《戦慄のプレリュード》と《黄泉秘伝トリプル・ZERO》の二枚」
 ゼニスはなかったが、代わりに《戦慄のプレリュード》を手に入れられてしまった。これで手札にゼニスがいるか、次のターンにゼニスを引かれれば、そのまま召喚されてしまう。
「さらに呪文《ピクシー・ライフ》。マナを一枚追加し、マナゾーンの《破界秘伝ナッシング・ゼロ》を手札に。最後に《空腹の超人》を召喚。ターンエンド」
 まだ大きな動きを見せないクトゥグアの手札は三枚。そのどれもが、《ニヤリー》と《ピクシー・ライフ》で手に入れたカードなので、ゼニスではない。
(手札にゼニスはない……マナゾーンにもいないし、これならまだ攻められるかな……?)
 姫乃のデッキは打点が低いため、序盤に多少シールドを削っておいた方が後々楽になる場合が多い。今のクトゥグアに手札を与えるのは危険だが、逆に言えばゼニスさえ引かれなければ問題はないはず。シールドブレイクで手札に入ってしまうこともあるだろうが、こちらが準備している間にゼニスを引かれてはたまったものではない。
「だったらここは攻撃かな……とりあえず《純潔の信者 パーフェクト・リリィ》を召喚して、《ハッチャキ》で攻撃! 手札から《光器パーフェクト・マドンナ》をバトルゾーンに!」
 場数を増やしつつ、シールドをブレイクする姫乃。クトゥグアの二枚目のシールドがブレイクされたが、
「S・トリガー発動」
「あぅ……っ」
 運悪くS・トリガーを踏んでしまった。しかし、
「《フェアリー・ライフ》。マナを一枚追加」
 それは《フェアリー・ライフ》だった。マナを追加されるだけなら、そこまで大きな問題はない。
(でも、これで9マナか……次のターンには最大で12マナのゼニスまで出て来ちゃう……《サスペンス》とか《ウェディング》とかかな)
 どちらも姫乃にとっては辛いゼニスだ。シールドを直接墓地に送られたり、逆に手札や場のクリーチャーをシールドに埋めさせられたりと、一体出て来るだけで損害は大きい。
(でも、相手の手札とマナにゼニスはないはずだから、まだ大丈夫)
 確かに、ゼニスが出て来る可能性はそこまで高くない。しかし姫乃は、もっと注意深くクトゥグアのカードを見るべきだった。
 特に、今のS・トリガーでマナに置かれたカードを。
「ターン終了だよ」
「なら……私のターン」
 静かにカードを引くクトゥグア。その瞬間、彼女の口元がほんの少しだけ緩んだ。
「やっぱり余裕。このまますべて焼き尽くす」
「え……?」
 嫌な予感がする。悪寒が背筋を走り抜け、姫乃に戦慄と焦燥を覚えさせる。
「呪文《戦慄のプレリュード》。このターン、次に召喚する無色クリーチャーのコストは5軽くなる。さらに《空腹の超人》の効果発動」


空腹の超人ハングリー・ジャイアント 自然文明 (4)
クリーチャー:ジャイアント/アンノイズ 4000
無色クリーチャーを自分のマナゾーンから召喚してもよい。


 マナゾーンから無色クリーチャーを召喚できるようになる、《空腹の超人》の能力は単純明快だ。しかし、それゆえに強力である。
「《空腹の超人》の効果で私のマナゾーンから、《戦慄のプレリュード》の効果で4マナ払い、無色クリーチャーを召喚」
 《戦慄のプレリュード》が奏でる旋律と《空腹の超人》の雄叫びにより、マナゾーンから禁じられた龍の姿を為した、偽りの神が舞い上がる。

「新たなる時代を焼き払え、そして飛翔する——《神青輝 P・サファイア》」


神青輝 P(プログレ)・サファイア 無色 (9)
クリーチャー:オラクリオン 9000+
スピードアタッカー
パワーアタッカー+3000
T・ブレイカー
このクリーチャーが相手のシールドをブレイクする時、相手はそのシールドを手札に加えるかわりに見せる。相手はその中から、「S・トリガー」を持つカードをすべて自身の手札に加え、その後、残りを墓地に置く。(相手はその「S・トリガー」を使ってもよい)
T・ブレイカー


 遥か上空より大地に降り立ったのは、プレミアム殿堂となった禁じられた龍《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》がオラクリオンとなった姿——《神青輝 P・サファイア》だった。
「《P・サファイア》……ゼニスじゃない……?」
 完全に思い違えていた。ゼニスだと思っていたら、出て来たのは重量級オラクリオン。ゆえに、マナに落ちた《P・サファイア》の存在を見落としてしまっていた。
「うぅ……確かに《P・サファイア》は強い。でも、わたしの場にはブロッカーがいるし、守りながら攻めて行けばなんとかなるよね……?」
「ならない」
 姫乃の言葉を、クトゥグアはばっさりと切って捨てる。
「《P・サファイア》の能力はシールドをブレイクする時に発動する。ブロッカー対策も、怠ってない」
「……? で、でも《パーフェクト・マドンナ》は簡単には除去できないよ。パワーを下げられちゃったら破壊されちゃうけど、自然とゼロ文明じゃそれはできないはず……」
「パワー低下だけが、《マドンナ》の対策じゃない」
 言って《クトゥグア》は、手札からカードを一枚抜き取る。
「呪文《がっつりガッツマン》」


がっつりガッツマン 自然文明 (2)
呪文
このターン、バトルゾーンにある自分のクリーチャー1体のパワーは+4000され、そのクリーチャーよりパワーが小さいクリーチャーにブロックされない。


「ア、アンブロッカブル……!?」
 予想外のカードに、驚きを隠せない姫乃。
 アンブロッカブル、つまりブロックされないようにする能力は、基本的に水文明の得意分野、稀に光文明でもこの能力を持つものがいる。しかし自然文明でも、あるパワー以下のクリーチャーや、攻撃クリーチャーよりパワーの低いクリーチャーなど、条件がつけばこの能力を得ることもあるのだ。
「呪文の対象は当然《P・サファイア》。これで《P・サファイア》のパワーは13000、そしてパワー13000未満のクリーチャーにはブロックされない」
 当然だが、姫乃の場にパワー13000以上のクリーチャーなどいない。どうしても、このターン《P・サファイア》の攻撃を止めることはできないのだ。
 低い唸りを上げる偽りの神を前にして、姫乃は不安を掻き立てられる。
「あ、ぅ……ちょっと、危ないかも……」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.358 )
日時: 2014/01/21 19:59
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「さあ、すべてを焼き払って。《P・サファイア》で攻撃」
 《がっつりガッツマン》の効果を受け、ブロックされなくなった《神青輝 P・サファイア》。しかしよくよく考えてみれば、それもそこまで脅威ではないと、姫乃は思い直す。
 《P・サファイア》は本家《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》といくつか相違点があり、その相違は欠点も利点もある。
 欠点としては、やはりブレイクしたシールドすべてが墓地に送られるのではなく、S・トリガーが発動してしまう点だろう。後はドラゴンでないので、ドラゴンのサポートを受けられなくなったことなどか。
 とはいえその欠点も、考えようによってはそこまで酷いものでもない。デュエル・マスターズの逆転要素と言えばS・トリガーだが、実をいうとS・トリガーは相手の攻撃を止める、その場凌ぎにしかならないことも多い。発動するだけで場面をひっくり返すようなS・トリガーというのは、ほとんど見られない。
 それよりも重要なのが、シールドブレイクによって手札に入るカード。要するに手札だ。コントロール系のデッキが最後にまとめてシールドをブレイクしてとどめを刺すように、シールドブレイクは相手に手札を与え、選択肢を広めてしまう。そうすれば、円滑に場を進めることもできなくなってしまうのだ。
 だが《P・サファイア》は、それを封じる。その場はS・トリガーで凌げても、手札が増えないのであれば、そこからの逆転も難しい。確かに《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》と比べると見劣りするが、そもそもプレミアム殿堂と比べて強い弱いと言う方がナンセンス、と考えるべきだろう。
 ここで話を戻すが、《P・サファイア》には《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》にはない利点もある。それが、

「アタック・チャンス発動……《破界秘伝ナッシング・ゼロ》」


破界秘伝ナッシング・ゼロ 無色 (7)
呪文
アタック・チャンス—無色クリーチャー
自分の山札の上から3枚をすべてのプレイヤーに見せる。こうして見せた無色カード1枚につき、このターン、バトルゾーンにある自分のクリーチャー1体はシールドをさらに1枚ブレイクする。見せたカードはすべて、好きな順序で山札の上か下のどちらかに戻す。


「アタック・チャンス呪文……!」
 オラクリオンとなり、ゼロ文明のクリーチャーとなったことで、《P・サファイア》はアタック・チャンスの恩恵を受けることができるようになったのだ。
「ついでに《黄泉秘伝トリプル・ZERO》も使用。まずは《ナッシング・ゼロ》の能力を発動」
 《ナッシング・ゼロ》で、最大三枚ブレイク数を増やすことができる。ここで二枚以上無色カードが捲れれば、姫乃のシールドはまとめて吹き飛ぶことになる。
 そうなると、ブロッカーを並べても押し切られてしまう可能性が高い。
「効果の対象は《P・サファイア》。山札の上から三枚を捲る」
 捲られたのは《墓地の守護者メガギョロン》《リーフストーム・トラップ》《戦慄のプレリュード》。
「無色カードは二枚。だから、このターン《P・サファイア》はシールドを五枚ブレイクする。《P・サファイア》でシールドブレイク」
 《P・サファイア》は飛翔し、上空から白き灼熱の光線を放つ。
「う、あっ、うぁ……っ!」
 次々と焼き払われていくシールド。《光器パーフェクト・マドンナ》《勝利の女神ジャンヌ・ダルク》《魂と記憶の盾》《純潔の信者 パーフェクト・リリィ》《コアクアンのおつかい》……逆転に繋がりそうなカードはすべて焼き尽くされ、墓地へと落ちて行った。
 これで姫乃のシールドはゼロ。しかも、手札は一枚たりとも増えていない。
「続いて《トリプル・ZERO》でシールド、手札、マナを一枚ずつ追加。ターンエンド」
 守りまで固められ、一気に苦しくなってしまった姫乃。
 ブロッカーを並べて攻撃を防ぎつつ、ちまちまと殴っていく手もあるが、それも厳しい。こちらのブロッカーの数を上回るアタッカーを出されたら押し切られてしまうし、二枚目の《がっつりガッツマン》を引かれても、その前に《P・サファイア》を除去しなければやはり負ける。
「とりあえず、今は逆転手を探しつつブロッカーを並べないと……二体目の《ロードリエス》を召喚して、二体分の効果が発動するから二枚ドロー。さらに《ハッチャキ》で攻撃して、手札から《王機聖者ミル・アーマ》をバトルゾーンに。ブロッカーが出たから、もう一回二枚ドローするよ」
 そしてクトゥグアのシールドがブレイクされる。
「続けて《パーフェクト・リリィ》でも攻撃、その時《パーフェクト・リリィ》の効果で《ニヤリー》をタップするよ」
 《パーフェクト・マドンナ》オラクルとなり、防御の力を失った《パーフェクト・リリィ》だが、代わりに攻撃時に相手クリーチャーをタップする能力を得た。バトルゾーンを離れない能力もあり、相手クリーチャーの動きを封じながら単騎で切り込んで行ける点が強みだ。
「最後に《ロードリエス》で《ニヤリー》を攻撃して破壊! ターン終了」
 姫乃が選んだ選択は、守りを固めながら地道に攻めていくことだ。幸いなことに、バトルゾーンにいるアタッカーは攻撃するたびにブロッカーを増やせる《ハッチャキ》と、パワーがゼロにならない限り場を離れない《パーフェクト・リリィ》の二体だ。手札さえあれば攻撃しながら防御を固めることは容易で、除去を受けずに攻め続けることもできる。
 なので問題は、クトゥグアにキーカードを引かれてしまうことだが、
「……私のターン。呪文《セブンス・タワー》。メタモーフで3マナ追加。さらに《ニヤリー》を召喚」
 捲られた三枚は《墓地の守護者メガギョロン》《黄泉秘伝トリプル・ZERO》《破界秘伝ナッシング・ゼロ》。すべて無色なので、三枚とも手札に入る。
「続けて呪文《グローバル・ナビゲーション》。アンタップ状態の《ロードリエス》をマナゾーンに送り、マナゾーンの《ニヤリー》を回収」
 クトゥグアもブロッカーを除去しつつ、着実に場数を並べていく。
「《P・サファイア》で攻撃、アタック・チャンス発動。《黄泉秘伝トリプル・ZERO》を二枚、及び《破界秘伝ナッシング・ZERO》」
「え……?」
 ここで《P・サファイア》が攻撃すること自体はおかしくはない。手札に《トリプル・ZERO》を握っているのだから、使わない手はないだろう。
 だが《ナッシング・ゼロ》をここで発動する意味はないはずだ。姫乃のシールドはもうゼロ、今更ブレイク数を増やしても無意味。それならマナチャージでもなんでもすればいい。
 しかし、すぐに姫乃は、クトゥグアの魂胆を知ることになる。
「まずは《トリプル・ZERO》の効果でシールド、手札、マナをそれぞれ二枚追加」
 これでクトゥグアのシールドは四枚。また攻めるのが難しくなってしまった。
「次に《ナッシング・ゼロ》の効果発動」
 残り少ない山札の、上から三枚が公開される。表向きになったのは《ピクシー・ライフ》《リーフストーム・トラップ》《がっつりガッツマン》の三枚。ゼロ文明のカードはないため、ブレイク数の増加はない。
 しかし、
「そして、この三枚を好きな順序で山札の上に置く」
「っ……!」
 ここで姫乃はクトゥグアの行動の真意に気づく。
 意外と見落としがちだが、《ナッシング・ゼロ》で捲った三枚は、“好きな順序で山札の上か下”に置けるのだ。そのため、疑似的なサーチカードとして運用することも可能なカードなのである。
 ほぼ確実に、クトゥグアは《がっつりガッツマン》をデッキトップに積み込んでいるはず。
 つまり、次の姫乃のターンでなんとかしなければ、次に訪れるクトゥグアのターンで、アンブロッカブルと化した《P・サファイア》がとどめを刺しに来る。
「《P・サファイア》でダイレクトアタック」
「あ……《パーフェクト・マドンナ》でブロック!」
 アタック・チャンスに気を取られて忘れていたが、今は《P・サファイア》の攻撃中だ。姫乃は慌てて《パーフェクト・マドンナ》でその攻撃をブロックする。
「……ターンエンド」
 それ以上の攻撃はせず、クトゥグアは静かにターンを終えた。
 そして、姫乃はこれが最後になるかもしれない、自分のターンを迎える。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.359 )
日時: 2014/01/23 19:14
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 クトゥグアとのデュエルで、絶体絶命の危機に瀕している姫乃。
 シールドはゼロ、《ハッチャキ》《純潔の信者 パーフェクト・リリィ》《知識の精霊ロードリエス》《光器パーフェクト・マドンナ》の四体。
 対するクトゥグアの場には《神青輝 P・サファイア》に《空腹の超人》と《ニヤリー》の三体。シールドは《黄泉秘伝トリプル・ZERO》で四枚まで回復している。
 なにより危険なのが、《破界秘伝ナッシング・ゼロ》で山札に積み込んだカードだ。クトゥグアのデッキトップにあるのは、自分のクリーチャー一体のパワーを4000増強し、そのクリーチャーのパワー以下のクリーチャーにはブロックされない能力を付加する《がっつりガッツマン》。
 このターンで決めるか、なにかしらの対策を施さない限り、次のクトゥグアのターンでとどめを刺されてしまう。
「…………」
 姫乃は引いてきたカードを見つめ、思案する。生き残るための道を考え抜く。
 そして、
「……呪文《スパイラル・ゲート》。《P・サファイア》を手札に戻すよ」
 まず《スパイラル・ゲート》で《P・サファイア》をバウンスする。だが、これではほとんど対策にはならない。
「《P・サファイア》はスピードアタッカー。私のマナは10マナ。それは無意味」
 次のターンにマナチャージすれば、クトゥグアは11マナ。9マナの《P・サファイア》を召喚しつつ、2マナの《がっつりガッツマン》を発動させることは可能だ。
 勿論、そんなことは姫乃も分かっている。分かっているうえで、分かっているからこそのプレイだ。
「無意味かどうかは、このカードを見てからだよ。続けて呪文《ヘブンズ・ゲート》!」
 残ったマナをすべて使い切り、姫乃は天国の門を開く。
「出て来て! 《光器ユリアーナ》! 《閃光の神官 ヴェルベット》!」
 天門より降り立ったのは、光の女神と、閃光の神官だった。
「《ヴェルベット》……」
 眉根を寄せるクトゥグア。この状況で、そのカードは厄介だ。
 《P・サファイア》は今クトゥグアの手札にある。普通、スピードアタッカーをバウンスしても、すぐに攻撃されてしまうため、効果は薄いのだが、しかし《ヴェルベット》がいるのであれば話は別だ。
 ここで次のターンに《P・サファイア》を召喚しても、タップされてバトルゾーンに出るため、すぐに攻撃できない。どころか、返しのターンに殴り返されるだけだ。
「《ハッチャキ》で攻撃! 手札から二体目の《ユリアーナ》を出してシールドブレイク! 《パーフェクト・リリィ》でも攻撃! 《ニヤリー》をタップしてシールドをブレイク!」
 S・トリガーも来ないクトゥグア。除去カードが来れば、《ヴェルベット》を除去できるのだが。
「…………」
 姫乃のターンが終わり、クトゥグアのターン。このターンに引いてくるのは、《ナッシング・ゼロ》で積み込んだ《がっつりガッツマン》だ。
 幸いなことに、その次にセットしているのが《リーフストーム・トラップ》なので、このターンが凌げれば、まだなんとなるかもしれない。
「……《墓地の守護者メガギョロン》召喚。墓地の《戦慄のプレリュード》を回収し、二体目の《メガギョロン》を召喚。今度は《トリプル・ZERO》を回収」
 クトゥグアはとにかくブロッカーを並べ、手札に《プレリュード》と《トリプル・ZERO》を握り込む。このターンさえ凌げれば、次のターンには《P・サファイア》でとどめを刺せるのだ。とにかく今は守りに徹する。
 しかし、姫乃もしっかりと攻めの体勢を整えていたのだった。
「わたしのターン! 《束縛の守護者ユッパール》を召喚して、《メガギョロン》をフリーズ!」
 まず最初に《ユッパール》が出され、《メガギョロン》一体がタップされてしまう。
 これならまだ、S・トリガーが出れば凌ぐことも可能だが、これだけでは終わらない。
「《パーフェクト・マドンナ》と《ユリアーナ》《ユッパール》を進化元に、進化MV!」
 刹那、《パーフェクト・マドンナ》とその周囲を取り囲む《ユリアーナ》《ユッパール》が、眩い光に包まれる。
「《慈愛神話 テンプル・ヴィーナス》!」
 そして現れた、《慈愛神話 テンプル・ヴィーナス》。これでアタッカーが四体。しかも《ヴィーナス》には強力な破壊耐性がついている。
「このターンで終わらせるよ……《パーフェクト・リリィ》で攻撃、《メガギョロン》をタップしてシールドブレイク!」
 《パーフェクト・リリィ》の能力でもう一体の《メガギョロン》もタップされてしまった。もはやクトゥグアを守るクリーチャーはいないが、
「……S・トリガー発動。《逆転王女プリン》」
 割られたシールドが光の束となって収束し、クリーチャーとなってバトルゾーンに降り立った。
 出て来たのは、バトルゾーンのクリーチャーを一体タップ、またはアンタップする《逆転王女プリン》だ。
「でも……《ヴィーナス》の能力で相手クリーチャーをタップしても無意味……《メガギョロン》をアンタップ」
 《ユッパール》にフリーズさせられた《メガギョロン》をアンタップし、再び防御の構えを取るクトゥグアだが、
「《ハッチャキ》で攻撃! 手札から《パーフェクト・マドンナ》をバトルゾーンに! シールドをブレイク!」
「く……っ」
 最後のシールドがブレイクされるクトゥグア。しかし、S・トリガーは出なかった。
 クトゥグアにはまだ一体《メガギョロン》がいるが、姫乃の場には《ヴェルベット》と《ヴィーナス》、二体の大型クリーチャーが残っている。
「《ヴィーナス》で攻撃!」
「……《メガギョロン》でブロック」
 無駄なことではあるが、《ヴィーナス》の攻撃を《メガギョロン》で防いだ。
 そして最後に残った閃光の神官が、金色の錫杖を、クトゥグアへと向ける。

「《閃光の神官 ヴェルベット》で、ダイレクトアタック——!」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.360 )
日時: 2014/01/25 09:39
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 流とハスターのデュエルは、かなり停滞していた。
 というのも、流だけでなくハスターも起動が遅いデッキのようで、まだお互いにマナチャージとマナ加速しかしていない。
 流の場にはなにもなし。《ガチンコ・ルーレット》でマナを増やし始めている。
 ハスターの場には《緑銅の鎧》が一体。《フェアリー・ライフ》も合わせてマナを加速させている。
「俺のターン。呪文《ガチンコ・ルーレット》」
 前のターンに回収した《ガチンコ・ルーレット》を再び使用する流。マナを一枚増やし、ガチンコ・ジャッジを行う。
 流はコスト10《「武」の頂 マキシマム・ザ・マックス》、ハスターはコスト4《パーロック》。
「ガチンコ・ジャッジに勝利したので、《ガチンコ・ルーレット》は手札に戻る。そしてもう一度、《ガチンコ・ルーレット》」
 再三行われるガチンコ・ジャッジ。流はコスト7《真実の名 アカデミアン》、ハスターもコスト7《神聖祈 パーロック》。
 ガチンコ・ジャッジに連続で勝利し、手札を減らさないまま7マナも溜めてしまった流。マナの数ではリードしているが、それでも鋭い視線をハスターのデッキに向けていた。
「……《神聖祈 パーロック》のデッキか」
「あ、ばれた? って言っても、マナゾーンとさっき捲ったカードを見れば一目瞭然だよね。このデッキはコンボパーツでデッキの中身が分かっちゃうのがネックなんだよねー。まったく、師団長はなんでぼくにばっかこんなデッキ渡すんだろうね? ま、ニャルやクトゥじゃ使えないだろうけどさ、こんなのは。そう考えればこれはぼくに向けた、ぼくにとってはおあつらえ向きのデッキとも言えるかも——」
「ターン終了だ」
 長々とお喋りを始めたハスターの言葉を遮り、ターン終了を宣言する流。
「……みんな冷たいなぁ。まあいっか、ぼくのターン」
 わざとらしく肩を竦めるハスター。口で言うように、言葉を遮られてもそこまで気にしているようには見えない。
「呪文《ダンシング・フィーバー》。山札の上から六枚を見て、そのうちの三枚をマナゾーンに置くよ」
 一気に3マナも加速され、流を追い抜かしてしまう。置かれたマナはタップ状態になるので、このターンはこれ以上なにもできないが。
「…………」
 普通、コンボを軸としたデッキは十分なマナが必要だ。コンボを完成させるために必要なだけのマナを溜めなくてはいけない。
 《神聖祈 パーロック》はかなり癖が強く、コンボ向きのカードだ。これでハスターのマナは9マナになったため、そろそろ警戒が必要だろう。
「……これで行くか」
 流はとりあえず、ハスターのコンボを止めるために、妨害することにした。コンボデッキは基本的に妨害に弱いので、まずハスターの戦略を瓦解させて、なにもできないような状態にしてから仕留めるのだ。
「呪文《戦慄のプレリュード》」
 これで次の召喚する無色クリーチャーのコストが5軽くなる。その後、流は残った5マナをすべてタップし、手札のカードを一枚抜き取った。
 《プレリュード》で5マナ軽くなり、5マナ払ったということは、召喚されるのは10マナのクリーチャー。そして、10マナということは、

「すべての知識を奪い尽くせ——《「智」の頂 レディオ・ローゼス》!」

 やはり、ゼニス。
 《「智」の頂 レディオ・ローゼス》は、その名の通り、すべての知識のう頂点に立つ存在だ。味方にはあらゆる知識を授けるが、《レディオ・ローゼス》と相対することになれば、そのものはすべての知識を吸い尽くされてしまうことだろう。
「《レディオ・ローゼス》の召喚時の能力発動。俺はカードを五枚引き、お前は手札を五枚捨てろ」
 直後、《レディオ・ローゼス》の背後にある四つの砲門がすべて開かれ、そこから白く輝く光線が発射された。そのうちの一発は流のデッキに直撃し、五枚のカードを吹き飛ばす。流は舞い上がるそれらのカードを全て掴み取った。次に残った三つの光線は、すべてハスターの手札に直撃し、こちらも吹き飛ばす。しかし吹き飛んだ先は墓地だ。
 召喚時に自分は五枚もの手札を補充し、相手には五枚もの手札を捨てさせる能力を持つ《レディオ・ローゼス》。場に出せれば、最大で十枚ものアドバンテージを得られる、まさに天頂と言えるような存在。
 このデッキに大切なのはマナだけではなく、コンボのためのパーツ、即ち手札も重要だ。そのため、手札破壊は特にコンボデッキが相手だと、いつも以上の効果が発揮されることがある。
「うわ、手札全部捨てさせられたし」
 だが、手札を一気に削り取られたというのに、ハスターはあまり悔しそうな表情はしていなかった。どころか、この状況を嘲笑うかのような笑みを浮かべている。
「……ターン終了だ」
 その笑みに不気味さを感じながら、流はターンを終える。
「じゃあぼくのターン……って言っても、手札がないとやっぱり辛いねぇ」
 だから、と引いてきたカードを表向きにしながらハスターは続ける。
「ちょっと手札補充しようかな。呪文《クローン・ファクトリー》でマナゾーンのカードを二枚回収するよ。回収するのは《クリスタル・メモリー》と《キリモミ・スラッシュ》。そして回収した《クリスタル・メモリー》を発動。山札から好きなカードを手札に加えて、ターンエンドだ」
 《クリスタル・メモリー》はクリーチャーでも呪文でも、クロスギアでも城でもなんでもサーチできるため、相手に見せる必要がない。コンボデッキだと情報も重要なアドバンテージ、逆に言えば手の内が透けてしまえば大きなディスアドバンテージになってしまう。
「…………」
 手札のカードを見つめる流。《レディオ・ローゼス》で大量の手札が増えたが、これらはまだ手の内に持っておきたい。
「ならば……《宿命のディスティニー・リュウセイ》を召喚。山札から《超絶奇跡 鬼羅丸》をサーチ」
 ハンデスのお陰でハスターの動きは鈍っている。いまのうちに攻め、コンボが発動する前に倒すのが得策だ。マナゾーンを見る限り、ハスターのデッキに除去系のS・トリガーはほとんどなさそうなので、攻めるのは簡単だ。
「《レディオ・ローゼス》でTブレイク!」
 一気の三枚のシールドを吹き飛ばす《レディオ・ローゼス》。しかし、割ったシールドのうち一枚が、光の束となって収束していった。
「S・トリガー発動《ディメンジョン・ゲート》! 山札から《黒神龍エンド・オブ・ザ・ワールド》を手札に加えるよ」
「……くっ」
 少し勝負を焦ったかもしれないと、流は反省する。《エンド・オブ・ザ・ワールド》、その能力を考えれば、明らかにハスターのデッキにおける重要なコンボパーツだろう。偶然S・トリガーで出たとはいえ、それを与えてしまった。
「さ、僕のターンだ。君がプレゼントしてくれた《黒神龍エンド・オブ・ザ・ワールド》を召喚!」


黒神龍エンド・オブ・ザ・ワールド 闇文明 (7)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ 7000
E・ソウル
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札を見る。その中から3枚選び、残りをすべて墓地に置き、その後、選んだ3枚を好きな順序で山札に戻す。
W・ブレイカー


 世界を終わらせる黒き龍が召喚された。


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