二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.35 )
- 日時: 2018/12/05 10:40
- 名前: ガオケレナ (ID: .X/NOHWd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
外に出て、辺りを見回す。
当然だが、ヨシキらしき人間は見当たらない。
(ま、白のジャケットに青のデニムだったからなぁ。パッとしない服装だし目立たないからそう簡単に見つかるわけないか)
現状の不満を漏らしつつ、それでも走りながら周りを見る。
ヨシキの基地、ライブハウスには置いておくべき物が無かった。
ヨシキと言う人間が外に出る以上、基地に置いておかなければならない物を、彼は置いていかずにそのまま出ていった。
「つまり、刀剣なんつー物騒な物持ち歩いていたら注目浴びるしちょっとした騒ぎにもなる可能性だってあんだろ!」
楽観的に考え、足を早めていたその同時刻。
ハヤテとケンゾウは十分ほど辺りを探すと、偶然にも駅裏にて再会する。
「ケンゾウ……ヨシキは?」
「いや、ダメだ。お前は?」
ハヤテが首を横に振ると、ケンゾウは頭を抱える。
「あー、ちくしょう!逃げ足だけは本当に早いのな!何なんだあれ。人間の癖してスカーフ巻いているんじゃないのか?」
冗談にしか聞こえない冗談だが、彼の顔は本気だった。
ハヤテはそのギャップに戸惑いつつ、状況の整理を試みる。
「と、とりあえずまずは考えよ?」
二人で歩きながら今まで探した場所を互いに会話で共有する。その足取りはとても落ち着いていた。
「リーダーがナイトバーストぶっ放して基地壊しながら出たのが十分ほど前。その後すぐにケンゾウと自分で別れて駅の周辺を探したけど見つからずに今ここにいる。そうだよね?」
「だが……言っちまえばまだ十分しか経ってないんだからよ、そう遠くにはまだ逃げられてないんじゃないか?」
「うん。それこそスカーフ巻くかポケモン使って逃げる以外に方法はほぼないよ。それにね、見たんだ」
何を見たのか分からないため、ケンゾウが疑問を投げる。
「剣だよ。さっきまでヨシキは剣を振り回してたでしょ?でも、自分達がライブハウスから出る時剣が無かった。当然、こうして追い掛けている途中にも剣は落ちてなかった」
「じゃあ……あいつは剣を持って外出てるって言うのかよ!?」
「うん。でもそんな物騒な物持ち歩いていたら注目浴びるでしょ?自分達の目印にもなり兼ねない。それを解消する方法があるとしたら……」
「方法?」
ケンゾウが必死に頭を捻るが考えが思い付かない。ただ、眼前には青空が広がるだけだ。
「んー……なんつーか俺には分からんなぁ。こうやって空を眺めることしかできん」
「それだよケンゾウ!!」
珍しくいきなり声を上げたハヤテの姿に、ケンゾウは反射的に驚く。
「な、なにが?」
「空だよ。奴はこの短時間で駅周辺から出るとは思えない。それに加え物騒な道具も持っている。それらすべてを解消する方法は鳥ポケモンに乗って空から逃げる事だよ。そうすれば、地上に集中している自分たちの捜査の目も潜れるだろ?」
ハヤテの解説により、初めてその意味にケンゾウは気がつく。
「あっ、そういうことか。てっきり俺には意味がさっぱり分からんもんでな」
「でも厄介だな。そうしたら余計見つけにくくなる。分かりやすいポケモンとかだったら別だけど……」
喋ってる途中に、いきなり言葉を止めるハヤテ。
その目は、青空に映った一つの物体を微かに捉えていたからだ。
そこらの空を飛ぶには大きすぎるくらいの、鳥の影、そのスタイル。
鎧を身に着けた鳥を意識したその姿に、ハヤテは確信する。
「見つけた」
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.36 )
- 日時: 2018/12/05 11:37
- 名前: ガオケレナ (ID: .X/NOHWd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
ポケットから振動が伝わる。
スマホから着信が入っていた。ハヤテからだ。
「リーダー見つけました!敵……ヨシキは駅裏、ライブハウスから見て北側の上空にいます!」
何とも嬉しい報告だ。
思わず零れた笑みを浮かべつつ、一言告げるとすぐに通話を切る。
「行くぞリザードン!」
ボールを真上に投げ、出てきたリザードンに「俺を乗せろ」とジェスチャーをする。
近づき、背を向けたリザードンに乗ったジェノサイドは直ぐに指示を出す。
「駅だ!駅の方へ向かえ!ポケモンを見つけたらそいつに近づくんだ」
主を乗せたリザードンは上へ上へと飛び上がると、普段彼を大学に連れて行く時と比べてスピードを上げて目的地へと移動していく。
ボールに入っていたのに会話を聞き取る能力でもあるのだろうか、とジェノサイドは一度気になるがそれほど大きな問題では無かったのかすぐに頭から離れてしまう。
目的地が見えたからだ。
駅に近づくが、それらしき姿が見えない。
気になったジェノサイドは再度ハヤテに電話を入れることにした。
「もしもし?今駅の真上にいるんだが、ポケモンらしき影が見えんぞ。本当にいたのか?」
すると、ハヤテの慌てた声が聞こえてくる。
「えぇ?えっと……確かにさっきエアームドとそれに乗った人影が見えたんですけど……もしかしたら高架下とか、上からじゃないと分からないところに隠れているかもしれません。こっちも今探しているので何かあったら連絡します。リーダーも、何かあったら連絡下さい。」
「おぅ。分かっ……うぉあああ!!!」
不意に電話越しにジェノサイドの叫び声が聞こえた。耳が痛くなったハヤテだが、その謎の声に不安が過る。
「大丈夫ですか!?リーダー!」
すると、暫く間が空いて、
「あ、あぁ。大丈夫だ。今ちょっと忙しいから切るぞ」
一方的に切られてしまった。
何が何だか分からない彼らは、リーダーを探すため駅の方へ走り出した。
ジェノサイドが叫んだ理由は目の前にいる敵、ヨシキにあった。
電話をしていて丸腰のジェノサイドへ、真後ろからエアームドに乗ったヨシキが迫ってきたのだ。
それに気づいたのは本能に従ったリザードンだった。
敵に気づいたリザードンは尻尾を振り回しつつ、ジェノサイドの意に反していきなりさらに真上へと飛ぶ。
彼はそれに驚いただけだったのだ。
異変に気づき、ヨシキを確認すると、お互いが対峙する格好で空中で静止する。
「あー、びっくりした」
「第一声がそれかよ……」
敵であるヨシキも、最強と謳われたジェノサイドの自由な態度と注意散漫な姿を見てそれまであったイメージが崩れる。
生まれた感情は呆れと、怒り。
「お前みたいな奴でも……未熟な人間の癖に最強なんてもんになれるのかよ……っ!」
ジェノサイドはその言葉で、空気が変わった事には本能的に感じる事ができたが、何故変化したのかまでは分からなかった。
明らかに自分の過失によるものであるのに。
「エアームド、'ドリルくちばし'!」
鋭い嘴がジェノサイドとリザードンを狙う。
当たればそれなりのダメージは入るだろう。
だが、それでもジェノサイドは至って冷静だ。バトルになるとスイッチが入るにも関わらず。
「かわせ、リザードン」
簡単にそれを避ける。
速いことには速いが避けるのに苦労はしないスピードだ。
「そう言えば話が続きだったね」
唐突にヨシキが会話を切り出す。
「人の事は言えないけど、僕や、僕の仲間も皆リーダーが直々に君の元へ来ているよね?何でだと思う?」
「知らねぇな。俺にぶっ殺されたいマゾなんじゃねぇの?」
「んー、惜しい」
わざとらしい笑みが余計に腹立つ。
そんな顔を浮かべながら、ヨシキは人差し指を立てる。
「理由は1つだけ。利益を独占したいからさ」
その言葉に、思わずジェノサイドは首を傾げる。
「利益?俺を殺したとして、どんな利益が出てくるのさ」
「君は本当に分かってないんだね。見事にヤツに踊らされてるね」
「あぁ?」
ジェノサイドの態度を見て落ち着きを取り戻す。彼が知らないと答えたときはつい興奮してしまい、すべてを語りたくなったが、今はそうならずに済みそうだ。
「そうだよね。当事者、いや中心の君には分からないのも無理はないよね。あのね、君はこの世界のトップだ。すべての組織の人間の理想像であり憧れであるんだ。腕が強さを魅せるこの環境だ。しかも目的を果たすためならどんな手を使っても良いと来ている。当然、君を殺してトップになりたいなんて思ってる人も出てくるわけだよ」
「くだらねぇな。つまり俺を殺したという事実がそのままステータスになるってか。そりゃ狙われる訳だな」
「そういうこと。彼等は自分達の組織の存続を賭けて君の命を狙っているんだ。すごい世界だよね?ま、そんな奴らを今回仕向けたのが僕なんだからもっと凄いよね!」
勝手に自分に酔いしれる姿を見て不快感を得た彼は目の前の気持ち悪い男をぶっ潰すために、相手には聞こえない声でリザードンに指示を出す。
'だいもんじ'と。
リザードンの口から炎が放たれたと同時、エアームドが動く。どうやら気付かれていたようだ。炎は虚空に消える。
「読唇術でそんなの分かるんだよ。本当に君は不意打ちが好きだね」
「そうでもしねぇと自分の身が守れねぇんだよ」
言うと直ぐに、今度はリザードンがエアームドへと急接近を始める。
初めはそのスピードに目が追い付かなかったヨシキだったが、ジェノサイドの目的がエアームドの撃破ではなく、直接に自分を狙うことを察知した彼は急降下を指示する。
人が多い地上近くなら遠慮のない攻撃は来ないだろうというヨシキなりの予測だ。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.37 )
- 日時: 2018/12/05 11:53
- 名前: ガオケレナ (ID: .X/NOHWd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「ん?あれだ!おい、あれだぞ!リーダーだ!」
ハヤテよりも足の速いケンゾウが先に自分達のリーダーを見つけたのは駅とは真反対の方角の商業ビル手前の空だった。
上空で戦闘を始めている。
「おい、流石にそれは危ねぇだろリーダー……気ぃつけて下さいよ」
祈るような気持ちで一杯だったが、その気持ちはより強くなる。
エアームドが地上ギリギリまで急降下を始めたからだ。
「おい……まさか……」
その光景を見て、一つの不安が過る。
エアームドを狙う形で、ジェノサイドのリザードンも急降下を始め、同じ軌道で彼等を追いかけ始めたのだ。
「無茶だリーダー!こんな街中でドッグファイトなんて危ないっすよ!!」
ケンゾウの叫びも虚しく、彼らは街を駆ける。
「ハァハァ……やっと追い付いた……ケンゾウ、リーダーは?」
バテながらもハヤテがやっとこちらにやって来た。その様子だとさっきのやり取りは見ていないようだ。
「まだどっか行っちまったよ。リーダーの奴熱くなりすぎて追いかけっこ始めてるよ」
それを聞くや否やハヤテは大きく溜め息をついた。
「またか……ああなるともう手がつかなくなるよ。街に被害出ても困るから他人の振りして眺めてよう」
彼等の間では定番の答えであった。
エアームドが車道ギリギリを通過する。
リザードンはそれを追い、軽自動車と歩道橋の間の隙間を通り抜ける。
強い風を浴びながら目の前の敵を強く捉える。近くまで迫っている車や人はお構い無しといった感じだ。それでもそれらには当たることなく、避けていく。
歩道橋を抜け、ビルの間を通り抜け、広い空へと飛び去ってゆく。
夕焼けの眩しい開けた空の、死角がない地点へと着いた瞬間だった。
エアームドが突如、旋回してこちらへと向かってくる。追い風と今までのスピードに乗ってかなりの速さだった。
避けるには間に合わない。技を打とうにも若干の、1秒にも満たないタイムラグが生まれ結果的に間に合わなくなる状況が生まれる。
(そうか、この状況を作り上げるために逃げていた訳か……)
敗北を悟り、両目を瞑る。
ように見えたその直後、不意にジェノサイドが嗤う。
勝利を確信したヨシキは一瞬にして不審な思いに駆られ出した。
「なぁーんてなぁー……」
ジェノサイドの不気味な声が響いたと思ったその時。彼はいきなり空から落ち始めた。
ヨシキですら何かの見間違いかと思った。だが、本当に彼は落ちている。
よく見るとそれまで彼が乗っていたリザードンが消えている。ボールに戻したようには見えなかったが、彼にはそう思えた。
しかし、そう思った時点で遅かった。自身の上に影が迫ることに気が付かなかった。
それに気づいたのは熱の存在だ。夕日にしては熱すぎる。まるでBBQをしている時の間近に火を浴びている感覚。それに似ていた。
ヨシキがゆっくりと上を見上げるとそこには、目を疑う光景が。
「なっ……!?ゾロアーク……!?」
ゾロアークがこちらへ'かえんほうしゃ'を向けている瞬間だった。
「まさかお前……ゾロアークをリザードンに変身させて今まで……!?有り得ない、ゾロアークの幻影は重さまでは変えられないはず!?……何故、」
言いかけて、そこで気付く。
「途中までは本物のリザードンだったのか?本当に違和感の無いレベルまで忠実にゾロアークが幻影を途中から見せていたのか!?……それとも今までのやり取りすべてが幻?……一体お前の強さは……、」
言っている最中だった。
頭の中が混乱しているヨシキを爆炎が包む。
またもや、勝敗は一瞬で決した。
「うぉおああああーーーっ!!」
空中に投げ出され、下へと落ちる恐怖感から叫び声が辺りに響く。
咄嗟にポケットからボールを取り出すと、今度こそ本物のリザードンを呼び出す。
ジェノサイドはリザードンの背中へと無事着地する。
だが衝撃が強く、体全体に痛みが伝わった。
「ぐっ、……痛てぇ。ゾロアークは無事か?」
空をを見上げると、体を丸めてくるっと回る形で体勢を整えると、ピジョットに変身して地上に向かっていくゾロアークの姿が。
ジェノサイドを乗せたリザードンもそれに続く。
よく見ると、ピジョットの降り立とうとしているところに見知った二人の影があった。
「終わったぞ。ケンゾウ、ハヤテ」
「「お疲れ様です」」
半ば呆れながら二人が同じタイミングで呟く。
「リーダー……、熱くなりすぎです」
「あー、悪ぃ」
「気をつけて下さいよ!リーダーだけでなく周りも危なかったんすよ!?幸い被害は0でしたけど!」
「それなら良くない?」
「「良くない!!」」
ジェノサイドが部下から説教を受けるという珍しいやり取りを見せるものの、目的は何だかんだ達成された。
一通り説教が終わり、二匹のポケモンをボールに戻した時だ。
「えっ、レン……?」
「高野……?」
聞き慣れた声を、ジェノサイドの耳が捉えた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.38 )
- 日時: 2018/12/05 12:08
- 名前: ガオケレナ (ID: .X/NOHWd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
後ろから声がした。
と、言うことは振り向けば、彼らがいる。
ジェノサイドは振り向くことなく、目の前にいる自分の仲間と会話を交わす。
「バレちゃったよ。場所が場所だから大丈夫かなーとは思ってたけどね。知り合いにバレちゃった」
ケンゾウとハヤテは何かピンと来ない顔をしている。
「意味、分からない?」
「……つまり、あの方たちはリーダーの知り合いという事ですか?」
「あぁ」
「大学の、ですよね?」
「あぁ」
「と、言うことはリーダーがジェノサイドだと言うことは今まで知らなかったと言うことですよね?」
「あぁ」
「大丈夫なんですか?それ」
冷や汗をかきながら恐る恐るハヤテが聞く。嫌な予感しかしない。
「ちょっとマズい。どうすりゃいいかな?」
この阿呆が、とこの場で叫びたくなったがその気持ちを我慢しつつさらに近づいて誰にも聞こえない程の小さい声で呟く。
「逃げましょう。これ以上いると面倒なことになります」
「オッケー。じゃあちょっと待ってて」
意味が分からなかった。折角今から逃げるための準備をしようとした所で本人に止められた。
しかも、今彼は振り向いている。
ジェノサイド……ではなく、高野洋平として自らの友達の元へ歩く。
「よぉ。集合って確か19時だったよな?まだ一時間か二時間前だろ?マメだなーお前ら」
いつものノリで話しても返事が中々来ない。彼らの表情も何だか怖い。
「……そう言えば今日はここで遊ぶ予定だったよな?どんな予定だったっけ?」
それでも、返事は来ない。流石にちょっとイライラしたので思いきって聞くことにした。
「そんなに俺がこの服着てるのが珍しいか」
言うまでもないが、今彼はジェノサイドとしての服、黒と赤の色で構成されたローブを着ている。
「何で……?」
弱々しい声がうっすら聞こえた。声の主は自分がサークルに入って以来仲良くしていた同学年の女子、高畠美咲だ。
「どうして、レンがそんな格好して変な行動してるの?」
目の前の事実が信じられない光景なのか、声が震えている。目の焦点も合っていかった。こっちから見ても胸が痛くなりそうだった。
「何で、レンがジェノサイドなの?」
勇気を振り絞って出した言葉だろう。最後まで震えていた。
当然と言えば当然だろうか。昨日まで仲の良かった友達が実は世間ではテロリストだとかで騒がれている連中の人間だったのだから。
「色々と成り行きでな。びっくりした?」
彼女たちの気持ちが分かるからこそ下手な言葉は使わずに、あえて最後までふざける事にした。
我ながらいい加減な人間だろうと自覚して。
後ろの仲間が焦りを見せ始めているようだった。
「リーダー、そろそろ行きましょう。もうこれ以上面倒事は起こさないで下さい」
もう少し友達と話したかったジェノサイドだったが、彼の言う通りこれ以上面倒事が起きるのも嫌ではある。
未練がましそうに、子供みたいな顔をしながらジェノサイドはボールを二つ取り出してケンゾウとハヤテにそれぞれ差し出す。
「空飛べるポケモンだ。さっさと帰るか」
三人がそれぞれポケモンを出し、乗ろうとしている時だった。
リザードンに乗ろうとしているジェノサイドの元に誰かが駆け寄ろうとしている。
よく見ると同じサークルの同年代の友達の吉川祐也だ。
小太りな体格をしているが正義感は人一倍強い男だ。こういう事にはどんな理由であれ関わろうとする人である。
「待てよ、レン」
「ごめん急いでんだ」
「待てよ!!ちゃんと説明しろよ!どういう事だよ、これは!」
無視して飛ぼうとて怒鳴られる。相変わらずの性格だ。
それでも、動じることはなく溜め息をついてから一言呟くと大空へと消えていった。
「何が何だが……訳わかんねーよ……レン」
吉川の脳裏に、彼の言葉が焼き付いて離れない。
『いつか機会があったらね。バイバイ』
「いつかって……どうせそんな機会ありゃしないんだろ」
ーー
「こうなることは予想できたのではないのですか?リーダー」
空を飛んで帰る中での、ハヤテの質問だ。
「だって今日だったんでしょう?あそこでリーダーの友達が来るのって」
「あぁ、そうだよ」
「知っているのなら何故!?」
それでもふざけた口調のジェノサイドに対し疑問が離れない。彼にとってはさほど問題では無いのだろうか。
「そもそも、あんな風になることを想定して今日ここに来たんだ。だってさ、はっきり言えばシザーハンズなんていつでもぶっ叩けるだろ?」
「だったら尚更ですよ。どうしてですか?」
「あいつらと別れたかった」
「……え?」
唐突な発言に一瞬意味が分からなかった。
「俺は、あいつらと会う前からジェノサイドのリーダーやってたけど、何て言うかさ……今回の騒動で大学まで戦場にされた訳だし、今後は今までの大学生活過ごせねぇなと思ってよ。その日常の一部と別れたかった」
「……その日常の象徴が彼らですか?」
「あぁ。深部とは打って変わって本当に平和な世界のな」
言いながらジェノサイドは頷く。
「全く……」
今日起きた事をすべて思い出しつつ、彼の言葉を聞いてすべてを理解すると肩の力が抜けた。気がした。
「本当に面倒な事をするんですね、リーダー」
自分の都合のために仲間、敵まで巻き込み、その敵の金まで取ることに成功した。
つくづくリーダーの考える事は分からない。
だが、それが楽しいと感じるためハヤテとケンゾウはどんなに面倒でも彼について行く事ができるのだ。
三十分程すると、自分たちの見慣れた基地が見えてきた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.39 )
- 日時: 2018/12/05 13:04
- 名前: ガオケレナ (ID: .X/NOHWd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「只今戻りました、バルバロッサさん」
基地に戻ってしばらくしてから、ケンゾウとハヤテは基地に留まっていたバルバロッサに状況報告の為、彼のいる研究室に赴く。
相変わらず巨大な機械に写し鏡が埋め込まれている。
「そうか、今日も任務だったか」
興味が向いていないのか、調子のいい声色でなかった。目の前の解析に夢中になっているのだろう。
「はい。本日は前々から目標にしていたシザーハンズを」
そんな反応を無視して淡々と話を続ける。
「シザーハンズか。そうか、それならお前たちもこれから気が楽になるな。あいつらはコソコソと動いていた連中だっただろう」
ついにこちらに向かなくなった。だが、返事だけはしてくれているところに若干の優しさを感じる。
「でも、あれっすよ。リーダーったら結構面倒な事してくれてたみたいで、友達と縁切るために今日あいつら叩いたみたいなんですよ」
ケンゾウが唐突に切り出した。それを見てハヤテが何やら慌てている様子だ。
「ちょっ、ケンゾウ!それは色々と面倒になるから言わなくても良かっただろ!」
耳元で囁くものの、静かな部屋でやるにしても丸聞こえである。バルバロッサはすべてを聞くと、低く呟く。
「利用したのか」
「えっ?」
「利用したのか。自らの都合のためにシザーハンズを」
「え、えぇ。そういうことになります」
「そうか……」溜め息を一度つくと、低く唸るような声を発した。
「なるほど、あいつらしいやり方だ」
ーー
「なぁ、マズかったか?バルバロッサにあれ言ったの。」
研究室から出て、二人で大広間に向かう途中の廊下。そこでの二人の会話だ。
「いや、別に。ただ説明するのが面倒だっただけだよ」
「そっか……ならいいや」
「ならいいやって……まぁ、反応見れたからいいけどさ」
「反応?」
一つの言葉に引っ掛かる。
「うん。報告に興味は無さそうだったけど、あえて真実を言えばどうな反応するかなって思ってさ」
「試したってことか?」
「まぁ、そうなる。結局よく分かんなかったけどね」
ハヤテがリーダーに若干似てきている……と一種の不安に似た感情に駆られるケンゾウであった。
姿も中身も似てるとどっちがリーダーか分からなくなりそうだ。
「ん、あれ?あれさ、リーダーじゃね?」
そんな事を考えていたケンゾウの視界に、リーダーてあるジェノサイドの姿が見えた。外へ出ようとしているのか、逆の方向へ向かおうとしている。
「本当だ。どこか出掛けるんじゃないかな。一人で行くなんて危険なのに」
だが、よくある事なので止めることなく、二人はただ彼を眺めるだけだった。
ーー
どうも引っ掛かることがある。
「シザーハンズのヨシキはこう言った……。面白い奴がかかったと」
ジェノサイドは今回得た情報を頭の中で纏める。
「そしてバルバロッサは、議会のデータからシザーハンズの場所を俺に教えてくれた……」
二つの点と点がジェノサイドの中で揺れる。
「そして、二つに共通するのは情報源が同じと言う事」
点と点が線で繋がりそうだが繋がらない。
それは、確信が持てない理由があったからだ。
(俺の中ではほぼクロだと思ってはいるが……一連の流れ全体で見れば確信は持てねぇ。だが怪しい事だけは言える。一度思い切って言うべきだろうな……)
元々ジェノサイドは彼を信用してはいたがそれは完全では無かった。
行動の一つ一つにどこか疑いの目を向けてしまう。
それは彼だけに留まらず周囲の人すべてに対してそうだったが、彼に対してはそれが少し強かった。
「仕方ねぇ。今すぐには気が向かねぇから明日あたりにでも聞いてみるか」
一仕事あった後にはどんなに重要でも行動には中々移さない、気分屋のジェノサイドであった。
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