二次創作小説(新・総合)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.395 )
- 日時: 2019/10/12 18:54
- 名前: ガオケレナ (ID: nj0cflBm)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「名無しさんと接触出来ている?」
「あぁ。狭いコミュニティが幸運だったよ。疑われる事無く雑談を交えて連絡を取れていてさ」
日付が変わって7月31日金曜日。
高野洋平は、再び稜爛高校の3人と会いに来ていた。
ちなみに今居るのは池袋のサンシャインシティである。
「この掲示板が1人のユーザーに対してIDが固定だったのが良かったよ。お陰で名無しでもある程度の特定が出来る」
「……それで〜、この後はどうする予定で?」
「俺としてはLINEでもTwitterでもいいから別で繋がりたいかな。んで、掲示板では話せなかった事を聞く。俺からも話す。最終的にはオフ会と称して会いたいかも」
「大丈夫なんすか?友人を襲ったヤツと会うなんて危ないというか……」
「それは向こうも同じだろ。敵対意識を共にする奴が実はジェノサイドだったらビビるだろう」
「でもでも、」
相沢優梨香が男だけの会話に入ってきた。
変な抵抗が無いのは男2人女1人というコミュニティで既に慣れたのだろうか。
「会うとなるとある程度の情報をこちらから差し上げないと無駄に疑われますよね?どうする予定なんですか?」
「そこなんだけどさ……」
高野はチラッと相沢を見つめては何度か唸り、ため息を吐く。
「ちょっとさ……写真に写ってくれないか?」
「え?」
言われているのが自分だと相沢は理解していた。
高野はこちらを一点に見つめているからだ。
「それってつまり……」
「相手に渡す証明写真の代わりとして肖像権を貸してほしい」
「ちょっ〜……なに言ってんですか!高野センパイ!!」
突然声を荒らげたのは吉岡だった。
当然、彼の気持ちを理解している高野にとってはこれも予想通りである。
「相沢の顔写真使うのだけは絶対やめて下さい!!危険だし、たとえ2人だけのやり取りだったとしてもネットで拡散されたら終わりですよ〜!?まだコイツは現役のJKだし、深部の中で顔が割れたらそれこそ危険だっ!!」
「いや、お前も現役の高校生だろ。それ言ったら」
普段の光景が逆になったように見えた。
熱くなっている吉岡に対し、静かにツッコミしたのが東堂だったのだから。
「だよなぁ……こうなったら適当にTwitterから知らない人の写真拾うしかないかぁ」
「俺の使っていいっすよ」
意外にも東堂が話に乗ってきた。
本来であれば釣りやすいという理由で女子の顔写真を求めていた高野だったが、ある意味彼らの顔を使うのも悪くない。そう思い始めた。
「いや、キー君は駄目でしょ」
「えー?なんで?」
「キー君バカだしそれこそ身バレしたら対処出来なさそうじゃん?」
「あ〜……。分かった分かった。僕の顔使って下さい!ってか、逆に使っても問題ないですよね?」
「いいのか?本当に使ってもいいか!?」
助け舟に拾われた思いで高野はこのチャンスを逃すまいと必死に頼み込む。
幾らか歳が上の人間に強く頼まれると反応に困る高校1年生だったが、これまで共に行動し、そしてこれからも手伝ってくれるとの事なのである種の覚悟を持った上で彼は了承した。
ついでに、彼らは高野が例の名無しさんと掲示板内にていくつか会話を交わした後、LINEへの誘導に成功した瞬間も確認した。
「ありがとう……お陰でかなり助かったよ。これで大分先に進む事が出来た」
「いえ、礼には及びませんよ〜。あっ、でも〜……1つだけお願い良いですか?」
しかし、そこで終わる訳にはいかない。
吉岡は高野に交換条件を申し込む。
「なんだ?お前ならもう何でも聞くぞ」
「この後ってどうするんですか?実際に会うつもりなんですよね〜?」
「あぁ。なんとか理由を付けて会うつもりだよ。それがどうかしたか?」
「その時僕達も同行してもいいですか〜?犯人を捕まえるまで協力させて下さい!」
意外だった。
高野はてっきり、普段は言えない無理難題を言ってくるのかと思ったがその予想は大きく裏切られた。
本来であればこれ以上迷惑をかける訳にはいかないと名無しさんと接触する際は自分1人だけで動くつもりでいたが、写真を使って会う以上その人間が居なければその瞬間すべてがバレる。
仕留めるその瞬間まで信頼を得るには吉岡本人にもいて欲しいというのが本心であった。
なので、彼からの要望は何よりも嬉しいものだった。
当然、彼は二つ返事でOKした。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.396 )
- 日時: 2019/10/14 09:44
- 名前: ガオケレナ (ID: eOcocrd4)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
趣味が共通している友人と遊びに行くというのは実に気楽なことである。
高野洋平は、自分が池袋のサンシャインシティに居ることでつくづくそう思った。
青春真っ只中の3人の高校生はポケモンセンターメガトウキョーに入るやいなや、グッズ漁りや、店内放送やモニターで流れている新しいニュースで盛り上がったり、お互いに対戦するなどして大いにその時というものを楽しんでいる。
その光景に若干の微笑ましさを覚えながらも、高野は一切参加しようとしない。
ただひたすらに、スマホの画面を睨んでは文字を打つのを繰り返すのみだ。
「吉岡は何買うの?」
「僕?僕はとりあえずシャーペンとマグカップかな?相沢はどうすんの〜?」
「あたし?あたしはとりあえずクリアファイルかな。丁度新しいのが欲しいと思ってたの」
「高野パイセンー?買い物とかしないんすか?」
何処かで似たような光景見たぞとデジャブを感じつつ、今大事なところだからと東堂を適当にあしらう。
高野は今、今後の行動を左右する局面に辿り着いていた事を肌で感じていた。
画面に写る文字列を見続ける。
(いける……)
写し出されるはLINEのトーク画面。
あたかも嘘を真実であるかのような事しか言っていないにも関わらず相手は食いついて来ている。
その純粋さと言うか正直さには一種の嫌悪感が芽生えるも、ここで引く訳にはいかなかった。
(俺も相手と同じジェノサイドに財産を奪われた人を演じる事で同情を誘う……。意見と思想を一致させる事でより信頼感を得させ、最後の最後で自分の写真をupさせる。その後でジェノサイド打倒の為、『会いませんか』と提案する事で行動させる。そして今……)
高野は何度も瞬きして相手からの返信を確認した。
自分はその以前に、
『オフ会しませんか?』
と言ったはずである。
そしてその返事が、
『いいですよ。いつ会います?私はいつでもOKです』
ここまでスンナリいけるとは思ってもみなかった。
もしかしたら、相手も相手で罠を仕掛けているかもしれないが、それはお互い様である。
(俺がそうであるように、相手が実はジェノサイド打倒を目論む人を釣るような奴だったとしても、そこまで行けばほぼ100%深部の人間だろう……。そうなれば、現役深部組織の人間のあの3人に任せてしまえばいいし、本当にコイツが香流を狙った人間ならばこのままいけばいいし……。どちらにせよ進むしかねぇな)
高野は日時指定について、「いつでもいいが大会再開までには会いたい。大会に紛れて始末したいからその為の話し合いをしたい」と言ってみる。
本来であれば、本人にとって1番キツいシチュエーションである。
それを惜しげも無く言うところに彼の大胆さが垣間見得た。
大会再開まであと4日。
高野の勝手な予想で相手の名無しさんは都内在住と見ているが、だとしても会える可能性は限りなく低いものだろう。
ここばかりは彼の都合と言うかワガママが押し出されてしまう。
だが、今度ばかりも相手の気前の良さに予想を裏切られてしまう。
高野は目を丸くさせたまま、ポケモン部の3人を呼び出した。
「みんな、聞いてくれ。名無しさんと会う事になった。日曜だ」
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.397 )
- 日時: 2019/10/14 18:38
- 名前: ガオケレナ (ID: eOcocrd4)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
『いやぁ〜やっぱり高幡不動と言ったら団子ですよねぇ〜。もう甘くてなめらかで最高です!』
普段は全くと言っていいほど聴く機会のないラジオ。
これも恐らくジェノサイド……改め高野洋平が置いていった物の1つなのだろう、と思いながらミナミは何棟ものある広い団地の敷地内に置かれた錆びれたベンチに小さな丸テーブルを用意し、そこにラジオを置いて聴いていた。
すると、何処からか最早聞き慣れたロータリーサウンドが聞こえてくる。
音の方向からして、敷地内の駐車場からだ。
「ったく、リーダー様ってのも気楽でいいよなぁ?部下に命令下しといて自分は優雅にコーヒーブレイクときている」
「組織の長が自由気ままに動いていたらそれはそれで危ないからねぇ。優雅でのんびりしていると見るか、動けない自由の女神と見るか、それはあなた次第よ」
「てめっ……言い方が段々とジェノサイドに似てきていやがるな。気持ち悪い」
そう言いつつ、雨宮は車から降りてずっと手に持っていた数枚のコピー用紙をテーブルへと放り投げ、彼女の隣へと座る。
ミナミはと言うと、雨宮の置いた1枚目の用紙に視線を落とすも、大した興味も見せずに引き続き飲んでいたアイスコーヒーとラジオに意識を向けた。
「んで、オマエは何聴いてる訳だ?」
「ん?ラジオのこと?"FM田無"っていうローカル局だよ。ほら、大会DJのリッキーが出ているラジオ局」
「あー、通りで聞いたことがある調子のいい声だなと」
番組を聞く限りだと、リッキーは今高幡不動にいるようだ。
東京都田無市(現在でいう西東京市)を拠点に、都内の色々なスポットを回り、そこにあるものや場所の実況をするというのが彼の仕事らしかった。
「珍しい試みよね。ウチは西東京市ってお年寄りばかりが住んでるイメージだと思っていたけれど、若者向けの番組を作るなんてねぇ。意外だわ」
「……西東京市がどうとか俺はよく分かんねーがラジオがそもそもお年寄り向けのツールなんじゃねェの?」
「Twitterと連動してるんだよ。呟きとかをDJが読んでくれるの」
「……ヘェー」
それには全く興味がありませんと声色で伝える雨宮だったが、いつまで経ってもミナミが用紙を手に取ろうとしないので若干キレ気味に、
「ってかよォ……この俺が折角ソレ持ってきたってのにテメェは一切興味がねェってか!?あれをやれこれをやれ言う割にはそれはねェんじゃねェの?」
と言ってはみるも、
「でも、それに重要な事は書かれていなさそうかも」
「オマエは全然コイツのスゴさを分かってない。いいから読んでいけ」
強く催促される事でしぶしぶページを捲るミナミだったが、異変はすぐに目に付いた。
「議事録……?ねぇ、これってもしかして……」
「議会の資料だ。お前らにも馴染み深い立川議会場からかっぱらって来た」
「盗んで来たって言うの!?バレたらどうなるか分かってるわよねぇ!?」
「ンなモンバレなきゃいいんだよ。その為にもさっさと折り曲げてあるページを早く捲れ」
別に今から急いだところで何も変わる訳がないのだが、不思議とミナミの手が早まる。
そして、例のページへと辿り着くと、
「デッドラインの……協力……者?」
「そうだ。そこにあるのは議会の連中しか知り得ないモノ……決して外には出てはいけないモノだ。よく見て頭に叩き込んでおけ」
ミナミは、自分の声が震えているのが分かった。
声を発し、遅れて脳がその声1つひとつを理解しようとするため、総合すると若干のタイムラグがあったが。
そのせいか、内容が中々頭に入ってこない。
ゆっくりと、呼吸を整えながら文字を追っていく。
「もういいか?」
「……えぇ」
ページを捲った事で読み終えたことを確認すると、雨宮はその用紙の束を取り上げるとポケットからライターを取り出し、燃やし始めた。
「ちょっ……何するのよ!?」
「いつまでも持っていたら危険極まりねェ。内容は頭に入ってンだ。ならばもう、コイツは不要だ」
赤い炎は揺らめきながら静かに束を燃やし、その灰を風に運ばせる。
最後に、雨宮が持っていた紙片のみが残る。
彼はそれさえも迷いをみせずに投げ捨てた。
「デッドラインには協力者……と言うか設立の為に働いた者が居た」
「でも……その名前が本当なら、存在する意味が分からないわ……。デッドラインの真の正体が分からない限り何も」
「そういう事だ。デッドラインの鍵と呼ばれたヤツの存在も丸々無意味なものにも見えてくるが……どうする?捜査は続けるか?ここで止めるか?」
うーん、とミナミは唸りながら悩んだ。
状況と最新情報を整理しなければ次の行動に移せない。
もっとも、その作業にそれなりの時間が掛かりそうではあるのだが。
「塩谷利章……。杉山を排除して自ら下院議長となって、これまでに色々とウチらを助けて来た彼が……デッドライン設立の協力者ですって?」
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.398 )
- 日時: 2019/10/18 12:44
- 名前: ガオケレナ (ID: ix3k25.E)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
日付をまたいで8月2日。
街ゆく人は相変わらずだと思うほどに暑く輝く真夏の日差し。
照らされて焼石となった砂利の上を、
「イエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエイ!!!!!!!」
と、叫んで水の中へと飛び込む者が1人。
「やべー、すっっげぇ気持ちいい!!」
「んじゃあ俺もー!」
と、大きな体と大きなしぶきを上げてそれは水の中へと沈んでいく。
彼ら、神東大学の旅行サークル"traveler"の面々は、大会会場のすぐ近くの多摩川河川敷でバーベキューに励んでいた。
その中で、いてもたってもいられなかった北川と吉川が川へと飛び込む。
食材を焼いている香流と高畠が元気の良さそうな子供に対して見ているような眼差しで2人のじゃれ合いを見つめていた。
「元気ねー、あいつら」
「ね。暑いから気持ちは分からんでもないけどねー」
木曜の話し合いの結果、"今季のお疲れ様会"と称したついでに、"香流チームとレンチーム予選突破おめでとう会"と称した打ち上げ紛いの集まりを行う事になったのだ。
そのためか、普段サークルにあまり来ていない後輩の子達や北川や岡田と言った珍しい人らもやって来ている。
「さて、私はポケモンをやってないからよく分からないけれどー?……予選突破おめでとう!香流、豊川!そして山背くん!お気持ちの方はどう?」
既に焼きあがった肉を皿に盛り付けたかと思うと一目散にベンチへと座ると高畠はそんな事を尋ねながら食べ始めた。
相変わらず食い意地だけはスゲェなと思っても言えない言葉を頭の中に思い浮かべてはすぐに消すと香流は、
「うーん……どうって言われてもねぇ……」
と、だけしか言えずにいると今度は豊川も乱入してきた。
「これからだからな。俺らは」
「でも僕2人の足を引っ張っていないかずっとヒヤヒヤしっ放しだったよ!……大丈夫?僕、やれてる?」
申し訳なさそうに言う山背をよそに、そんな事は全然無いという意味も含めて2人は大丈夫だと言う。
声色でそれははっきりと分かった。
「結局レンの奴来なかったな……」
高畠に代わり、岡田が野菜を焼き始めながらそんな事を言った。
「薄々感じてはいたけど来なかったねぇ。この前なんかこっちのウチにも来たし」
「は!?」
と、驚く素振りを見せたのは岡田でも吉川でもなく、石井だった。
「それっていつの話?」
「えっと……29日の……水曜日」
「今週のだよね?それって何で!?」
「何でって言われてもなぁ……理由はアレしかないよ」
香流は明確には言わない。
だが、それだけで互いに理解出来るものがあるからだ。
「来たのはレンだけじゃなかった。見た感じ高校生くらいの男子も一緒だったよ。話を聞く感じ先輩と後輩というか仲間同士って雰囲気だった」
「へぇ……そ、そうなんだ」
高校生というワードに違和感が残るものの、今の高野がまたよくない連中とつるんでいるらしい事はこの瞬間石井の中で確定した。
もっとも、メイやルークといった人たちもいたが彼らはあくまでも大会限定での交流というイメージだったのだ。
「ねぇ……レンってさ」
石井は特定の誰かに尋ねるような言い方ではなく、とりあえず今の気持ちを吐き出すかのような淡々とした雰囲気をあらわにした。
それにまず最初に反応したのは香流だった。
「香流との……前のバトルで約束したはずなんだよね?もう二度と……深部とは関わらないって。そのはずだよね?」
「勿論そうだよ!……そう、だと……信じたいけれど……」
だが、今回のような場合は?
仮に自分が、高野洋平という男が真面目にも香流との約束を守って深部とは一切の関わりを持たない状況において一方的にあちら側から仕掛けてきた場合は?
香流にも答えは分かりきってきた。
同じような悲劇を繰り返さない為にも、その道のプロに協力、依頼するはずだ。
それは、自分の仲間を守る以外の意味はない。
香流は、嬉しさ反面複雑な気分で満たされる。
焼きすぎた肉の焦げ付いた臭いが鼻を刺激した。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.399 )
- 日時: 2019/10/18 14:37
- 名前: ガオケレナ (ID: ix3k25.E)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「こ、こんちは〜……」
「……あっ、こんにちは」
吉岡桔梗はただひたすらに緊張していた。
まさか本当に高野の友人を狙った犯人とオフ会する事になってしまって、今目の前にその人本人がいるという普通に考えれば普通でない事態に陥っているせいで。
一応の作戦は頭の中に入ってはいる。
その為にわざわざ金曜に皆で池袋に集合したからだ。
(あとは自然な流れでこの人を例の袋小路まで誘導しないと……でも、出来るのか!?僕に〜……)
「えっと〜……なんて呼べばいいですかねぇ?ハハハ……」
「そ、そうですね。じゃあヨシキって呼んでください。それか名無しさんで」
「わ〜かりました!では、ヨシキさんでっ!」
怪しまれないようにと元気そうな声で振る舞うも、いざ2人で歩こうとなると途端にこれでもかと言うほど周囲をキョロキョロ見だす。
相手を罠に誘うことばかり考えていたせいでオフ会そのものはノープランだった。
だから彼は緊張していたのだった。
「どんだけ口下手なのよ吉岡ァァァ!!……」
そんな2人の光景を建物の壁から顔をひょっこり出してはじーっと見つめ、思わずひそひそ声のまま叫んだ相沢は共に隠れて覗いている東堂に同意を求めた。
「つーかどうすんだアレ……まともに話そうともしないから相手ぜってぇ警戒してるぞ」
「吉岡じゃあダメだったのかな……」
2人からそれなりに離れているにも関わらず小さく話すとはこれ如何に。
しかし、最早ツッコミ要因が居ないため2人は引き続き出来の悪い漫才を続けていく。
「あの〜……ヨシキさんはジェノサイドに対してどんな作戦を……」
吉岡が言いかけた時、男は不自然に彼を睨んだ。
まるで、自分を騙そうとしているんじゃないかと思われる人に対面した時のような顔だ。
「えっ……!?あっ、えっと〜……」
吉岡が混乱して何を言えばいいのか上手く回らない頭を無理矢理回転させようとするも言葉が出てこない。
「静かに暗殺。これが1番やりやすいと思ってはいます」
「そ、そうですか〜」
作り笑いを浮かべながら吉岡はとりあえずペースだけは作ろうと彼より一足先に歩き始める。
今彼が居るのは池袋駅周辺。
周りの地理は金曜に来た時にある程度は確認済み。
作戦通り事を上手く運ばせるしかない。
「や、やっぱり試合を観戦している時にサックリやるのが良いんですかねぇ〜!?目立ちそうで案外目立たなさそうですね!?」
「いや、1人で歩いている所を狙います。ドームシティは広いです。ジェノサイドは深部の世界から離れて危機感が無くなっていると思われるので人気の無い所をやります」
「へ、へぇ〜……」
「と、言うかこの事も前にLINEで話し合いましたよね?忘れちゃいましたか?」
瞬間。
その言葉に吉岡の呼吸が止まった。
暑いのも相まって大量の汗が顔を覆うほどに流れ続ける。
街は騒がしいのに自分の心臓の鼓動が相手にも聴こえているのではないかと思うほど高らかに鳴り響く。
「わ……」
それでも、吉岡は言わなければならない。
ここで疑われて作戦が終いになるわけにはいかない。
とにかく、真実であるかのような嘘を言うしかない。
「忘れちゃいました〜あははっ!すいません〜……。僕、部活のLINEが毎日鳴りっぱなしになるから他の人のメッセージを放置したり内容をごっちゃにしちゃう時あるんですよ〜……いやぁホントすいません」
「大丈夫です」
冷ややかな眼差しは相変わらずだが口調が少し穏やかに聞こえた気がしたのは吉岡の希望的観測だったかもしれないが、とりあえずその場しのぎとしての誤魔化しは出来たようだった。
「あれっ、」
吉岡は突然前を歩く足を止めた。
男も不思議そうにどうかしたか尋ねてくる。
「あれぇ〜……おかしいな〜。サンシャインまでの近道こっちで合ってたはずなのにちょっと道間違えたかもしれないです」
周りに目をやると商業施設から少し離れた場所なのだろう。
人の影が明らかに少なかった。
「あの……ホントすいませんね〜……。グダグダなオフ会で……確かこっちだったはずだ!」
「大丈夫です。お気になさらずに」
吉岡の示した道を、ヨシキと名乗った男はついて行くように歩く。
傍から見ても吉岡の混乱ぶりは誰の目から見ても明らかだった。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107