二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/11/28 13:33
名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走カーチェイス>>536-

行間
>>518,>>525,>>535

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.255 )
日時: 2019/01/27 18:06
名前: ガオケレナ (ID: idqv/Y0h)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


彼女ら二人は無事だった。
吉川含む男六人で先を進み、結果的に石井と高畠を置いていってしまったのだが、背後から攻撃できる辺り普段と変わらなそうな様子だ。
遠く離れているが、「やっほー」という石井の声が微かに聴こえる。

だが一番違うだろと思ったのは、

「はっ……'はかいこうせん'んんん!?」

殿堂入りが目的の、ストーリー用のポケモンだったことを思い出す。そう言えば石井という女は未だにポケモンYのゲーム内で殿堂入りしているかどうかも怪しかった。

「ちょっ……おめっ、、は、'はかいこうせん'ってなんだよ!!しかもそれ人に撃つのかよ!!どこのワタルだ!」

素人の吉川が何故'はかいこうせん'だと見破れたのかはついさっき一度見たからであろう。
彼の記憶には、恐怖と驚愕を理由にカイリューが工場の扉を破壊したその瞬間が保管されている。

呆然と突っ立っているケンゾウの横を何の躊躇もなく二人はスタスタと歩く。むしろケンゾウが何されるのかと怯えきった顔をしているのがまたおかしい。

「おまたせっ、吉川。香流とレンは?」

石井は周りを見て二人が居ないことにすぐ気づいたのと同時にまだ高野の元に辿り着けていないことも察した。
それを分かった上であえて言っているようだ。

「香流はこの先にある工場で戦っているよ。レンはまだ見つかっていない」

吉川は何か異変がないか石井の至るところを眺めるも、どこも変なところはなかった。
高畠に至っては「ヘッ、くたばってんじゃん」などと言って足を押さえて座り込んでいる船越に駆け寄っている。

そんな自由な状況に呆れた吉川は、

「お前らホントワケわかんねーなぁ……。てか今までどうしてたん?」

「お前らが早く行っちゃうから、うちらあの人たちに捕まっちゃったよ!とは言ってもどうやってここに来たのかとか、何しに来たとか質問された時に……」

あの人、というのはジェノサイドの構成員たちのことだろう。その程度だったかと一先ず安心するが彼女が喋っている途中で言い淀むので嫌な予感が渦巻く。

「いきなり現れたカイリューに皆吹っ飛ばされちゃった!」

結局吉川はその場で呆れのため息をつく。
と同時に思い知ることになった。

コイツらの強さは自由奔放なところなんだと。


ハッとしてそこへ振り向くと、電撃をまとったカメックスが足をふらつかせていた。
ケンゾウは最初新しい技かと思ったが違うようだ。
なぜなら、佐野と彼のポケモン、トリミアンの隣にしゃがみながらこちらを睨む常磐と彼のライボルトが立っていたからだ。

「お、お前ら……俺は一騎打ちだと……」

「悪ぃな。俺らは弱ぇからこうでもしねぇと勝てないんだわ」

二度目に受けた'10まんボルト'でとうとうカメックスは倒れる。
傍から見ると七人の男女が何百もの人々を倒したかのように見えるのが余計におかしく思わせる。
「オレは不満だ」とでも言いたげな大男はそれの意味を含めたため息をするとカメックスを戻した。

それが合図となり、七人の戦士は吉川が向かってきた方向、つまり工場の方向へと走って行く。

「終わったな……。一般人とか言っておきながらゲリラで対抗するなんてな……負けだ」

倒れた仲間達と一緒になってその場にケンゾウは寝転んだ。一種の諦めである。

ジェノサイドという組織の弱点。
これまで敵に対する侵攻か、リーダーのみが狙われる戦いばかりを繰り広げていた組織の弱みは慣れない防戦とゲリラである。
加えて戦闘員の大半は互いの顔もほとんど知らない、嘗ての深部連合の人間も加えた者達だ。
協力性皆無な彼らはイレギュラーとゲリラの前に散った。

そして、只の一般人であるはずの人達は、そんな度重なる幸運に恵まれたこの世で最も幸せな者達となった事を知らない。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.256 )
日時: 2019/01/27 18:16
名前: ガオケレナ (ID: idqv/Y0h)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


ドリュウズが地面から姿を現す。
ニンフィアとの距離はおよそ7mといったところか。

(そんな遠くからナニするつもりだ……?またこっちに突っ込むだけで終わりとかかぁ?)

ルークは何となく予想を固めていると、とうとうドリュウズが動き出す。
香流の'アイアンヘッド'という叫びと共にとにかく速く走ろうと徐々に速度を上げていく。

遂にドリュウズは体を折りたたむようにしてまるで大きなドリルのような姿と化す。

「さっきの走りは助走かよ……っ!?」

ドリュウズは地面を滑らせて滑らかに、しかし速いスピードを保ったまま先端を硬く尖らせてニンフィアのもとへと突き進む。

「避けろ」

しかし、どんなに速かろうがギミックを変えようがシンプルすぎる事には変わらない。
結局ニンフィアはまたも軽々と躱してしまう。

「ったく、一体どんな手使って来るのかとすこーしヒヤヒヤしたが……こんなもんかよ!やっぱド素人ってのもつまんねーなぁ!」

相変わらず蔑むルークだが、ただ一人この状況がおかしいと思える人がいた。

ミナミだ。
彼女は最初から最後まで"香流のバトル"を見ていたからだ。

(待って……。このままじゃ、ドリュウズは壁に突き当たるわ!!早く何かしないと壁に激突するか破壊するかのどちらかよ!!結局大きな隙をルークに与えちゃう!)

彼女の思った通り、ニンフィアに避けられたドリュウズはそのまま直線を進んでいる。

その先は工場の壁である。
香流が何も指示しないままだとドリュウズは壁に跳ね返されるか突き刺さるか貫くかのどれかである。

「ち、ちょっと!!」

ミナミが叫ぶも、ルークがこちらを振り向いて睨むのみ。彼女の思いは香流には伝わらなかったようだ。

もう間に合わない。ドリュウズの角の先端が壁に当たるか当たらないかのギリギリに差し掛かったとき。
香流はボソッと、しかしドリュウズに聴こえる程の声の大きさで呟いた。

「ジャンプ」

と。

その瞬間目を丸くして即座にドリュウズの方向を眺めるルークと、何かを念じているかのように見つめるミナミは見た。
小さなドリルから、ちょこんと足を突き出して地面を蹴ることにより進路を無理矢理変えたその瞬間を。

この工場はまるで、一般的な学校の体育館の如く丸みを帯びた外見をしている。
そのため室内の壁もそれに沿って天井に近づくにつれ丸くなっていっている。

ドリュウズは進路を変えたことによりその変わった壁に沿っていき、終いにはぐるりと方向転換をして再びニンフィアにその顔を向ける。

まるでドリュウズの進路は放物線を描いたかのように。
綺麗に決められたレールの上を通るかのような理想的な動きを魅せると衰えない速度を保ったままニンフィアへ突き進んでゆく。

今度は反応できなかった。

鋭い一撃が鈍い音を伴わせて、四足歩行である一匹のポケモンを貫き、そして倒れる。


終始香流は無表情であった。
対してルークはにやりと笑うとニンフィアを戻して吠えた。

「素晴らしいなド素人ォ!!どうやら俺はお前を軽く見過ぎていたようだ。100%俺の油断が敗因だろう。ドリュウズをきちんと見ていればこんな結果にはならなかったはずだ。……だが、次もこう行くと思うなよ?」

一瞬、フッとルークの顔から笑みが消える。

同時に豪華そうなボールを持ち、それを投げると中から現れたのはサーナイトだった。

「サーナイト……?ニンフィア以上の決定力を持ったポケモンがそれってことなの?」

「相変わらずうるせェ外野だな。黙って見てろ小娘」

言いながらルークはポケットから小さい黒地の布を取り出すとそれを首に巻き付け始めた。

「?」

不思議そうに眺める香流とミナミだがそれがチョーカーだという事に時間は要さない。しかし何故このタイミングなのか。

「決まってんだろ。ただのチョーカーじゃねぇからな」

その言葉のあとにミナミは、チョーカーにキラキラした何かを散りばめている事を見破った。
それはよく見えなかったが見覚えのありそうな物であったのは確からしい。

「キーストーンだ。即ちこれが俺のデバイスだ」

言った直後。

サーナイトが突如眩い光と凄まじいエネルギーに包まれる。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.257 )
日時: 2019/01/27 18:29
名前: ガオケレナ (ID: idqv/Y0h)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


光が消えたとき、正体不明のエネルギーがどっと周囲に撒き散らされる。
それは強いビル風にも似ていた。
大量の砂塵が舞い、不安定な建物からしてそのまま放置している機材が吹っ飛んでもおかしくないような状況。
そのためか、香流は腕で顔をガードしている。

空気が穏やかになると、香流の前には姿を変えたサーナイトがあった。

「メガサーナイトだ。相性は依然としてこっちに不利だが俺の専門がフェアリーなモンでなぁ……。だがそれも承知の上」

サーナイトは自身の両手を合わせると黒い塊を生成させ、

そしてそれを射出する。

が、香流が対応しようとした時には既にドリュウズに直撃し、黒煙のようなものが表れている。

「そして明らかに不利なポケモン、それを振りかざす野郎を貪るのが非情に快感で仕方ねぇ!!」

黒い塊、'シャドーボール'をわざわざ一つ一つ生み出すのが面倒となったのか、サーナイトは自身の周囲に大量の塊を展開させる。

「これだからタイプ統一パーティを……組織ぐるみでタイプを統一させるのが楽しみでしょうがねぇ!!」

ドドドン……と止まない爆撃音が鳴り響く。ドリュウズという天敵を一切動かさないために、そもそも動く機会を与えない為に足止めとなる'シャドーボール'を連発させる。
この技が直撃した時に発生する黒煙が大量に生み出され、視界が曇り出した時にサーナイトはその手を止めた。

煙がうっすらと晴れてきたとき。

中からドリュウズが吠えながら突撃をする。
その爪を光らせ、サーナイトに対してそれを振るう。
サーナイトは軽やかに避け、隙が生まれたところで軽く蹴りを入れてドリュウズと距離を離した。
ここまでの動きはトレーナーの命令無しに個々のポケモンが勝手に動いたものだ。
ルークからすればごく普通の、よくある光景だがそれに見慣れていない香流からすると新鮮なものがあった。

まるで生き物のように自分で考えて動きを見せているからだ。

つい香流は動物のように動くポケモンを、好奇心を含めた目で見つめていた。

「そんなに珍しいか?ポケモンが命令無しに動く姿が」

ルークのその言葉に目が覚めされたかのように、ふと我に返る。

「いや、別に……。見慣れてないから」

「俺たちの世界に来ればいつでも眺める事ができるぜ?」

口元を歪ませて誘うような手振りをしてみるが、相変わらず香流は無反応だ。
つまらない反応にルークは舌打ちをして、サーナイトを見つめる。

「テメェらただの一般人は、まるでポケモンが命令無しには動けないただの道具だと勘違いしているところがある。現にテメェのようにゲームだけでしか見ていない奴もこの有様だからな」

だがな、と言ってルークはサーナイトを指差す。

「コイツを見ろよ。まず呼吸している。動物と同じく脳もある。自分で判断して動く事もできる。ポケモンによれば、育て方次第では人の言葉も理解できる。ここまで来て何に見える?コイツはゲームデータの具現化じゃねぇ。そこに存在する一匹の動物……即ち生き物だ」

最もらしい、と香流は思ったことだろう。今香流が使うドリュウズも、ステータスも性格もすべてゲームデータを参照しているため、ゲームデータの具現化と言っても間違いではない。しかし、それだけで一括りにするのも何だか違う気がする。

「そもそも俺たち深部が何の為に作られたか知っているか?」

一瞬香流の瞳が大きくなった。
自分には一切関わりのない話。だが、何故かその手の話題になると興味をそそられる。
自身の友達が何故そっちの世界へ入ってしまったのかという謎があるからか。

「一般的には、ポケモンを悪用して罪の無い人間……まぁテメェらみてぇな一般人だよな。テメェみたいなのを一方的に虐殺する輩が増えたもんだからソイツらをシメて治安の安定を図る……なーんて綺麗事呟いているがまァそれは間違っていねぇ。実際俺もそんなクソみてぇな人間を何度も葬ってきた。だがそれ以前に、もっと根本的にして更なる理想があんだよ。何だと思う?」

"議会"は表向きには非営利団体だと見なされ、一種のボランティア活動をしていると表の世界では見られている。実際には違うが。
しかしそれに従えば、深部そのものも本来であればボランティア団体の下っ端となってしまう。

「ポケモンに対する社会的な名誉と社会進出。俺や深部が求めてるのはそれだ。俺たちはポケモンに法的付与を与えられるのを最終目標としている」

なんて綺麗な目標だ、と香流は思ったことだろう。世間的には黒く、恐ろしいと呼ばれている彼らを誤解していた部分があったようだ。
しかし、忘れてはいけない点もある。

「でも……そんなポケモンを一番道具のように使っているのもそっちだよね?」

珍しく敵と会話した。それだけで嬉しさにも似た快感が彼の中に生まれる。

「そうだ。俺たちはこんな綺麗な夢を掲げてはいるものの、実態は俺たちが都合のいい様に使っているに過ぎない。敵が出てくれば秘密裏に殺すことだってある。俺たちは闇に生きる以上、都合良く手段を問わないやり方を好む」

「それは……」

「俺がおかしいと思うか?ならばまずはココで俺に勝ってからほざけ!!」

ルークの命令に従い、サーナイトは赤黒い光線を発射する。
ドリュウズに向け、壁ごと破壊する形で。

「お喋りはもう終わりだ。俺たちは今何をしている?戦いだろ?半端な理由つけて戦いを中断、なんて絶対許されねぇ。男ならば最後まで戦え」

'フェアリースキン'によりフェアリータイプとして更に威力も上がった'はかいこうせん'を受け、ドリュウズは静かに力尽きる。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.258 )
日時: 2019/01/29 14:48
名前: ガオケレナ (ID: g3crbgkk)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


今、目の前に立つメガサーナイトは確かに怖い。
香流はドリュウズを戻しつつ、あのポケモンに立ち向かえる存在があるか必死にポケットを探る。

(今の'はかいこうせん'に耐えられて反撃できる奴……くそっ、居ないかもしれない……)

反動が痛いものの、スキン適用の'ハイパーボイス'を軽々と超える'はかいこうせん'の前にはほとんどのポケモンが倒れるだろう。先ほどのように、相性が悪いドリュウズですら倒してしまう。

(待てよ?もしかしたら、コイツなら……。もしもの為にとレンと戦うのを予想して隠してきたやつだけど……この状況なら仕方ない、のか……?)

香流は顔を曇らせながら静かにモンスターボールを取り出すと、優しく投げる。
出てきたのはファイアローだ。

「ファイアローだぁ?まーた俺からすると相性の悪いポケモン呼び出しやがって……。それがどうしたって話だがな」

'はかいこうせん'の反動で疲れて動けなくなっている隙に、香流はファイアローに'つるぎのまい'を指示する。

勇ましそうに周囲を翔び回ると、再び香流の真上に舞い戻ってきた。

「踊り終わった訳か。ただでさえそのポケモンは冷や汗モンだがさらに恐ろしく化かしやがって……だが」

ルークが言いかけた時だ。
突如、ファイアローが体を真っ直ぐに伸ばしたかと思うと、羽ばたいてもいないのに空中に、その場に留まってしまった。
まるで、フリーズした電子機器のディスプレイのように。

「ファイアロー!?」

エスパータイプのポケモンが使う技で相手を操ることの出来る技といったら一つしか思い浮かばない。サーナイトならば尚更だ。

「'サイコキネシス'だと思った?残念ながらちげぇよ」

空中で悶えるファイアローだったが、突如解放されたかのように身が緩んだのが確認できた。
ホッとする香流だが、さっきのは何だったのかと思ったその矢先。

「'サイコショック'だよ」

キラキラと光る粒子。
のような物体がサーナイトのサイコパワーに乗せられたせいか物凄いスピードでファイアローに迫り、瞬きをする暇すらも与えられない程の速度でそれは激突する。

受けたた衝撃からか、体から白煙が舞うもファイアローはまだ元気そうに羽ばたいていた。
どうやら戦えそうだ。

ルークは不満そうに舌打ちすると、

「まぁそんなモンだろ。念波実体化させてそれを操りながら飛ばしてるだけの技だもんな。ましてやそんなファイアローじゃあ耐えられて当然、か」

その言葉に香流は焦りを感じた。まさかこんなにも早くファイアローの型が見破られていたとは思ってもみなかったからだ。

「……このファイアローの型が……分かるのか?」

「当然だろ!テメェのそのポケモンは耐久型……それも特殊に強いファイアローだろ」

香流は大声上げて笑うルークに益々震えた。

型を見破られたことにではなく、そんな短時間ですべて把握できる"バトル慣れしているキャリア"にだ。

だが、それは同時に覚悟も生む。

(こんな奴が相手だと……長期戦はマズい……。早々と、今すぐにでも決着をつけないとな……)

果たしてこのファイアローに短期決着ができるのかと胸騒ぎがするが、行動してみないと分からない事だ。

(ファイアローって言ったら鉢巻持たせてブレバだろ……?なのに何故アイツは耐久が高くとも何ともないファイアローというチョイスにしたんだ……?どちらにせよアイツの考える事は分かんねぇが……)

スッ、とルークは掌を香流に見せながら合図を送った。

「耐久がショボいファイアローなんざコイツで吹っ飛んじまいな!!」

「!?」

遂にサーナイトが'はかいこうせん'を打つ構えを始める。勝負を決めに来たと頭で予想するよりもまずこちらも迎え撃つという考えが頭の中で優先される。
咄嗟に「'ブレイブバード'」と叫ぶ香流がいた。

翼から発した白い光が徐々に体を包み、ファイアローは羽ばたく。

香流の周囲にファイアローの羽が舞い、彼がその中の一枚を掴んだとき。

既にファイアローはサーナイトの眼前に迫る。
対してサーナイトは迫り来るファイアローに向かって、最後の切り札を放つその直前のように見える。

ファイアローの与えるインパクトがギリギリ発生するかしないかのタイミングで。

赤と黒の禍々しい光が解き放たれた。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.259 )
日時: 2019/01/29 14:56
名前: ガオケレナ (ID: g3crbgkk)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


その異変にまず気づいたのはルークであった。
ファイアローは直線上から迫り来る何ともシンプルな攻撃方法であったため、その方向に技を放てばいいだけの話だった。
'はやてのつばさ'により速さが一歩勝っているファイアローの攻撃に間に合うか間に合わない時の'はかいこうせん'の発射だった。

だが、ルークが見たのは一直線ではなく、サーナイトから見て斜め上に通った軌跡だったのだ。

(どういうことだ!?あの光の跡を見る限り'はかいこうせん'は打つことが出来た。だがその道筋はファイアローが通った空間じゃねぇ……まさか、外したのか!?)

何が起きたのか分からないせいで頭がうまく働かない中導き出したルークの考えだったが、現実はその予想を打ち砕く。

サーナイトが、彼の目の前で力なく倒れたからだ。

「……は?」

まるで信じられないような物を見ている目をしている。それもそのはず、今視界に映るサーナイトは戦えなくなったポケモンそのものと同じ様子でいるからだ。

戦いを眺めていたミナミからしても、それは戦闘不能となったとしか判断できずにいた。

勝った。
サーナイトを、自分のファイアローが貫いた。
香流は、自身が思い描いていたシナリオ通りになったと思えたことが何よりも嬉しく、また、彼を呆然とさせた。

香流は喜びに溢れたものの、それを顔に出すことはしなかった。やたらと感情を出すこと自体あまり得意ではなかったからだ。

「クソッ!やっぱ間に合わなかったかよ……。そうだ、ファイアローだ。ファイアローはどこだ!!」

ルークの言葉に意識が戦いに戻った香流はそう言えばと辺りを、サーナイトの倒れた付近に目を向ける。

しかし、どこにも自分のポケモンの姿は無かった。
一体何が起こったんだと不安に駆られるが、よく耳をすますとルークの立つ位置よりも遥か後方からパタパタと羽ばたく音が聴こえる。

全員がそこへ振り向くと、ボロボロになり、電撃のようなエネルギーがバチバチと体をかけ巡らせて、翔ぶことにも苦しそうにいるファイアローが佇んでいた。

「ファイアロー!!大丈夫か!?」

香流が叫ぶと、ゆっくりではあるものの、ファイアローは必死にばたつかせるように徐々に香流へと近寄っていく。

ルークの横を通り過ぎたとき、彼は確信した。

「なるほどな……コイツ、ゼロ距離から'はかいこうせん'を受けたものの、その時纏っていたブレバの衝撃によって威力を半減したか。結局命中した'ブレイブバード'によってサーナイトは倒れ、その反動で弾道が斜め上に逸れた、と」

面白くなさそうに分析しながら、ルークはサーナイトを戻す。

「だが、勝負はまだ着いてねぇ」

入れ替えるかのようにルークは、今度はエルフーンを香流に見せつけた。
そのポケモンにかつてない戦慄と恐怖を覚えた香流は、弱りきったファイアローをボールに戻し、ギルガルドを戦闘に出す。

「最後の最後まで相性が悪ぃな」

「これは自分が何よりも気に入っているポケモンなんだ。今度こそ、何が何でも決着をつける」

香流の言葉に笑みが零れたルークだったが、その時彼はギルガルドと同時に、工場の入口付近に人影が増えている事にも気付き、その目には彼らも映っていた。


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