二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.265 )
- 日時: 2019/01/30 10:16
- 名前: ガオケレナ (ID: QXFjKdBF)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「頼む……っ!ヌメルゴン!」
香流が次に選んだのは彼が特に愛着の持っているギルガルドやサザンドラではなく、ヌメルゴンであった。
高野が特殊一本のゾロアークを使っているせいだろうか。
「メンドくせぇ……」
「勝つためだからね」
香流は正直に、且つ、たとえどれほど追い詰められようと挫けない強い思いを表した本音のように言ったのだろうが、高野からするとため息の出る思いだった。
彼らしい言葉じゃないからだ。
「お前さ、なんでそんなに頑張れるの?この戦いに仮に勝ったとして、お前に何が残る?讃えられるほどの物はねぇぞ?」
香流という人間は強く勝ち負けに拘らない人間だったはずだ。なのに今回はやけに結果に拘ろうとしている。
普段から遊び感覚でバトルを行っていたはずなのに、今はその遊びの部分が全く見られない。
そんな事を高野は指摘してみる。
「別に、褒められることが目的じゃないし、このバトルによって得られる物のために頑張ってなんていないよ」
「じゃあ何でだ?お前をそこまで頑張らせる原動力は一体何なんだよ!」
心の叫びと共にゾロアークが'ナイトバースト'を放つ。
命令無しに動くゾロアークに最初は戸惑いはしたものの、隙を見せてはいけないと本能が悟ったのか、香流は間髪を容れずにヌメルゴンに'りゅうのはどう'を打つように伝えた。
互いの光線がぶち当たると爆発を発生させ、そこから出た黒煙で二人の視界を奪う。
真っ暗な景色の向こうから微かに声が聞こえてきた。
「原動力?そんなもの、レン以外に何があるんだよ」
高野はまず眉間に皺を寄せた。
最初は聞き間違いかと思ったからだ。
「去年、こっちや高畠、石井に岡田……。その時はまだ会ってはいなかったけど北川や吉川も皆同じ大学に入学した。その中にもレンはいたはずだ」
「それがどうした。話題逸らしてんじゃねーよ」
風が少し強くなった。それは、黒煙を早く飛ばすことに貢献している。段々と見えてきた。香流とヌメルゴンの姿が。
「あの時、いや、今年の夏までかな。皆で色々な事をしたのを覚えている?動物園行ったり、海行ったり、合宿とは名ばかりのただの旅行をしたり、冬の山を登ったり。今思えばアホな事ばっかだったと思うけど、その時レンは笑えた?」
「……」
高野はただ無言を貫いて香流の言葉を聴く。彼が何を言いたいのかいまいち分からないが、それまでの記憶が蘇ってくるのも事実だった。
「こっちが覚える限りでは、レンは常に笑っていたと思う。裏表のない、正直な笑顔を。そこには深部とかジェノサイドとかは関係ない。ただ馬鹿な事やって楽しんでいるただの学生としてのレンがそこにはいたんだ」
「ダラダラと長ぇな。イライラしてくんだが」
トゲのある高野の言葉を無視して、それでも香流は続ける。高野は合間に舌打ちを何度もした。
「そんな学生としてのレンを、こっちや皆、先輩たちが望んでいるんだ。またあの時みたいにバカやって楽しみたいんだ!レンだって、前に此処でそれを望んでいた事を話してくれたじゃないか!!」
「口で簡単に言ってるけどよぉ……、こっちの闇はそう簡単に抜け出せるほど浅くはねぇんだ。俺みたいな人間は一生出れねぇ。お前らが本来ならば手出しできねぇような深い闇なんだよ」
「それでもやれる事は何でもやるんだ!本当だってレンも"こっち"に来たいんでしょ?無理してまで深部なんかに居座りたくないんでしょ?たとえ皆と会う前からレンが深部に居たとしても……深部の過去に何かがあったにしても!!あの時確かに存在していたレンが幻ではなく本物だとしたら、それだけで頑張れる!困ってる友達がいたら助けるのが本当の友達ってもんじゃないのかよ!?」
もしも高野にジェノサイドというメンツがなければその場で感動していたことだろう。
だが、深部の頂点という重すぎる枷がそれを許さない。
「たかが一般人が……。こっちの世界に踏み出してまで何だ?俺を連れ戻す?気持ち悪い事言ってんじゃねぇぇよぉォォ!!」
眉と目がくっつくのではないかと思うくらいに目を見開き、奥歯を噛み締めた後に思い切り叫んだ。
まるで思春期真っ盛りの子供が誰にも言えない不満を誰も居ない場所で思い切り叫んでストレスを解消しているかのように。
その時の景色に似ていた。
高野は、誰にも頼らない生活を続けてきたのだから似ているのも無理はなかった。
「ただでさえ見たくもねぇテメェらをよりにもよって戦場で二回……。二回だ!いや、今回も含めたら三回か。何でよりにもよってテメェらから進んでこっちの世界に入ってくんだよ!」
「たとえどんなに危険でも、それでもレンを助けたい」
その時遂に高野は話では解決しないことを悟った。
彼等に何を言っても最早意味は為さないだろう。どんな罵倒を浴びせてもだ。
だからこそ、強い眼差しでゾロアークを見る。
「分かったよ。だったら本気でかかって来いよ。テメェのくだらねぇ思いを叶えたかったら、このゾロアークを倒してみろよォッ!!」
今度も命令無しにゾロアークは'ナイトバースト'を放つ。煙の晴れた、公園の外灯だけが放つ決して明るくない視界を、今度は赤黒い爆発で埋め尽くされる。
今回は反応が遅れた。
元々身軽でないヌメルゴンは一歩遅れたせいで飲み込まれてしまう。
爆発が消え去ると、倒れたヌメルゴンは目をパチパチさせながらも難なく立ち上がった。
数多の敵を葬り去った'ナイトバースト'でも、流石にヌメルゴンは倒れない。その特殊耐久の前にはビクともしないようだ。
だがもたらした恩恵は小さいものではなかった。
「命中率が……」
「言ったそばから綻び見えてんぞ?どうせもう'りゅうのはどう'しか出せねぇデカいだけのポケモンなんてもう怖かねぇよ。くたばれ」
香流が命令を言おうとしたとき、ヌメルゴンが攻撃しようと動いた瞬間、ゾロアークは走る。
ヌメルゴンにひたすら近づき、相手の動きを封じるように。
使う技は一つ。'ふいうち'だ。
特防がどんなに高くとも、'ナイトバースト'を打ち消せる程の高火力をもつヌメルゴンだとしても、必ず弱点はある。
ただでさえ低い物理防御だ。
物理技を打てばそれなりのダメージにはなる。高野はそう考えた。
技を打つ直前の全てにおいてガラ空きのヌメルゴンに肘を使った'ふいうち'が炸裂する。
ドン、とみぞおちを思い切り殴られたような痛々しい音が聴こえたと思ったら、
ゾロアークが一人でに倒れた。
「な、に……?」
高野はまずこれが幻影かどうかを見極めようとしたが無理だった。流石に使い慣れたゾロアークであってもイリュージョンか否かは分からない時がある。
その力なく倒れた様は戦闘に負けた時と全く同じであった。だからこそ分からない。
ヌメルゴンの攻撃が間に合ったのかとも思ったが何もできなかった間の出来事だったのでその可能性はない。
さらに、ゾロアークの動きが幻影でない事を証明する事実がまた一つ。
それは香流の言葉だった。
「'りゅうのはどう'しか打てない?レン、それは間違ってるよ。もしかして持ち物が"こだわりメガネ"かと思った?」
その通りに、高野は終始ヌメルゴンの持ち物が"こだわりメガネ"かと思っていた。しかし違うとなると、さらにそれがダメージを与えるものとなると導き出される答えがひとつあった。
「"ゴツゴツメット"だよ」
自信満々の香流の言葉に、高野はまた舌打ちをする。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.266 )
- 日時: 2019/01/30 10:29
- 名前: ガオケレナ (ID: 5ySyUGFj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
いくら過去を悔やんでも仕方がないので高野は無言でゾロアークを戻す。
次に選んだボールはゾロアークと同じくダークボールであった。
「ドラゴン対ドラゴンって中々面白そうじゃねぇか?いけ、オンバーン……」
「なんだか遊びの要素があるね?本気で戦ってる?レン」
「本気に決まってんだろ。これで俺が負けたら深部辞めなくちゃいけないんだろ?」
不自然だと思われるそのチョイスに対して問いかけてみても、高野はただ悪戯をしているような笑みしか帰ってこない。
「……'りゅうのはどう'」
「'エアスラッシュ'」
互いの技が打たれるかと思うと押しに押され、ついには打ち消されてしまう。
起こされた爆発に対し、ヌメルゴンはモロに煙を被るが、オンバーンは空に逃げることによって被害から逃れる。
ヌメルゴンや香流からは遥か遠くに位置するオンバーンだったが。
「'エアスラッシュ'」
命中させる難易度、視界の悪さを全く考えない高野の声が無駄に響く。
幾度も爆発音が鳴ってはいても結局はどんな変化も起き得ない。それくらい静かだった。
煙が晴れ、いなくなったオンバーンを探そうと香流も必死にって首を回しているが、そのうちにヒュン、と風を切る鋭くも微かな音を捉えた。
その方向を向くと闇に紛れたオンバーンが再び'エアスラッシュ'を撃ったその瞬間であった。
「そこだ、ヌメルゴン!」
相手の攻撃を受けると言うよりも見つけた事の方に意識が働く。
ヌメルゴンはそんな自身の主の反応を見て'りゅうのはどう'を打った。
口元から発射された光線はあらぬ方向へと飛んでいる幾つかの白い衝撃波にぶち当たり、威力の弱まった光線をオンバーンが受けてしまう。
空中でボン、と物騒な音がすると、真下に向かって垂直にオンバーンが落ちてゆく。
「おい、オンバーン!」
高野の叫びに反応し、意識を取り戻したのか、地面スレスレのところをオンバーンは体を捻って直撃を回避する。
その後はゆっくりと翼を羽ばたかせ、徐々にスピードを緩めて優しく着地した。
「面白くねぇ戦いだな」
高野は誰に対して言っているのか自分でも分からないただの心の不満をぶちまける。
すると、真面目な香流がそれに一々反応するのはよくある光景だ。
「本気のバトルってのはもっと殺伐としているものだよ。それを一番知っているのはレンじゃないの?」
「いや、どうだろうね」
やっぱり香流は一般人だと改めて認識する。これまでに幾度もしたの戦いに突っ込んでは来たが、それでも本質は変わっていないことに高野は態度には表さないが安心する。
「俺は今まで命を狙われる戦いをしてきた。常に追って追われてね。別にマゾを気取る訳じゃないけど、命の危機に陥ると不思議とワクワクしてくんだよ。次はどんな手を使おうかってね。でもこのバトルは殺意というものを感じねぇ。文字通りただの戦い。そんな意味では俺は敵意も殺意もないバトルをやるのはかなり久しぶりかもな」
香流はその時、高野の顔が段々と緩んでくるのが確認できた。緊張感に包まれた雰囲気だったが、それがいつの間にかなくなってきている。
仕舞いには"あの頃の"ような小さい笑顔も見せている。
「じゃあ、このバトル面白くさせてもいいよね?」
フッ、と。
地面に立ったオンバーンの姿が突如消える。
どこに消えたのか、頭の理解が追い付いた時にはヌメルゴンの眼前にそれは迫っていた。
そして、
「'いかりのまえば'」
おどろおどろしい高野の声と共に、オンバーンがヌメルゴンに思い切り噛み付いた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.267 )
- 日時: 2019/01/30 11:39
- 名前: ガオケレナ (ID: 5ySyUGFj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
オンバーンの鋭い牙が、ヌメルゴンの柔らかい体を傷付け、それは今のヌメルゴンの体力を大量に奪う。
ゲームの画面だったら一気に体力ゲージが半分削られていたことだろう。
特殊技で攻めるのが難しいヌメルゴンに対し有効打を打ったことで優位になったと思った高野はオンバーンに距離を取るよう命令する。
恐らく次あたりで'りゅうせいぐん'を決めて勝負に出るつもりだった。
だがその動きに異変があった。
その動きというのはオンバーンがただ羽を羽ばたかせて後ろへ、高野の近くまで飛んで移動するだけの簡単なものだったが。
(動きが……遅い!?)
明らかに呼び出した最初の頃とは違いが丸わかりなくらい遅く見える。よく見ると翼がべとべとしている液体に塗れ、たいへんに重そうだった。
この異変が起きるとするならば'いかりのまえば'を放った時にしか考えられない。この技は接触技であり、オンバーンにあのような効果をもたらすにはヌメルゴンの特性以外考えられない。
「まさか、お前……っ!?」
「この時を待っていたよ!レン!!」
珍しく勝ち誇るような香流の笑みを見た気がした。と、なるとこの後に来るのは反撃か。
「「'りゅうせいぐん'」」
二人が同時に叫ぶ。
香流は、ヌメルゴンから逃げようとするも逃げ切れなかったその瞬間のオンバーンを狙い。
高野は負けじと咄嗟に相手の技を打ち消そうと思い付いたものだ。
両者共に美しくも恐ろしい隕石の群れを地上に落とす。
しかし、ヌメルゴンの特性'ぬめぬめ'によって素早さを下げられたオンバーンが一歩遅れる。
空中で交差した星たちは互いに衝突し、打ち消され、爆発する。
しかし残った隕石がオンバーンめがけて地上へと降り掛かってきた。
「避けろっ!!オンバー……」
高野はそんな風に吠えるも、言っている途中に自分でも気付いてしまう。間に合うわけがないと。
鈍くなり、無理して技を放つオンバーンには、もうそこまでのポテンシャルが残されていない。
天空からの暴力に、オンバーンは避けることができず埋もれてしまった。
確認せずとも自分のポケモンが倒れた事は分かっていた。
高野はボールを取り出すとオンバーンを吸い込ませる。
ボール越しに確認してみるが、やはりオンバーンは戦闘不能だった。
高野は心の中でため息をつく。まさか香流がここまで追い込んで来るとは思わなかったからだ。
高野はまずヌメルゴンと香流を睨むように見つめる。
これまでの猛攻があったからか、ヌメルゴンはかなり疲れているようだった。倒すのには苦労しなさそうだ。
次に香流の顔を伺うも、彼は次はどんなポケモンが来るのだろうかと期待しつつも緊張しているような表情をしているようにも見えた。
「次はロトム?」
香流はこんな事を言ってきた。ゾロアークの変身先がこれだったからか。
「いや、ロトムはどうだろうな。ゲームだったら最後の一体として出さなきゃならないがこの世界では必ずしもそうでなければならないなんてことはない。お前とのこのバトルは手持ち六体のうち三体のルールだからな。手持ち以外のポケモンに化けるのは流石におかしいがロトムは六体のうちに含まれている。だがその中の三体に含まれるとは限らねぇぞ」
「じゃあラティアス?」
その言葉に高野は肩が一瞬震える。
明らかに寒さのせいではなかった。
「あの時の……ゼロットに勝ったラティアスを使ってみてよ。あの人が駄目だったんだ。こっちに対しても……。絶対に負けられない戦いならば、ラティアスを使うべきだ」
どこまで余裕を見せているんだと高野は忌々しい思いに駆られる。
確かに、彼の言う通りゼロットをも翻弄させたラティアスを使えば恐らく香流には勝てるだろう。
だが。
(そう簡単に……決心が着くかよ)
高野はラティアスのモンスターボールを取り出さない。
いや、取り出す事が出来ない。
それを使うに必要な覚悟が大きすぎる。
そこにあるのは、数多の理由と精神的な強がり。
そして、いつしかそんな覚悟はこのように変化していく。
ラティアスを使わずして勝つ。
そう思いながら高野はモンスターボールを取り出す。
オシャボを好む彼がモンスターボールを使うことが逆に珍しいことであった。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.268 )
- 日時: 2019/01/30 11:48
- 名前: ガオケレナ (ID: 5ySyUGFj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
高野が最後の一体のモンスターボールを構えたとき、一層風が強くなった。
冬の冷たい風はその場にいる者を凍えさせる。
二人の戦いを眺めていた高畠と石井は特にそうだった。
高畠は「さむっ」と言いながら鞄から毛布を取り出して自身を包み、石井は近くのベンチに座って体を丸くしつつどこかに電話を始めた。
高畠が誰に対してなのか聞くと、石井は通話の合間に「先輩たち」と言った。恐らく高野の居場所を伝えようとしているのだろう。
そんな二人を視界に映すこともせず、高野は一点を見つめる。
香流とヌメルゴンだ。
「……コイツは俺にとって……。俺の中での最高傑作だ。ド派手な技を打ち出すのとは訳が違うからつまんない戦いになるだろうが俺はそうなっても構わねぇ。俺はコイツで勝負を決める」
そう言ってボールを頭上に掲げると、そのまま上に、遥か上空を目掛けて思い切り投げた。
そして叫ぶ。
「さぁ姿を現せ!ボスゴドラ!!」
その言葉に呼応し、銀の巨体を持つ怪物は腹の底にまで響く振動音と辺りに砂埃を撒き散らして遂に顕現する。
「……ボスゴドラ!?」
香流はそのチョイスの意外性を感じ、ただ驚く。
このタイミングで来るとは思わなかったし、高野がそのポケモンを使うとは思ってもみなかったからだ。
それは二体目の物理主体のポケモンであるという理由も含めて。
ゆっくりと、高野は黒いローブの内ポケットから細く白い杖を取り出す。
その杖は杖と呼ぶには小さく、歩行用としての機能が全く無い代物のように見えた。
だが、その取っ手部分が何かに反応するかのように白く光っている。
また、香流がこの光景を見たのは二度目であった。幕張でのゼロットと戦い、メガラティアスを呼び出した時だ。
ここまでの戦いとは空気が一変し、言葉には表しにくい恐怖感と緊張感が辺りを包む。
香流は恐怖に駆られ、口元を手で隠す。どうやら顔を守りたかったようだがうまく出来ていないようだった。
ボスゴドラの持つメガストーンも杖に反応してか光り始めている。まるでボスゴドラ自身が輝いているようだった。
「行くぜ……メガシンカ……」
杖の先端を天空に向ける。
するとその杖の先からは、からまるで魔法が放たれるかのように、それまで覆っていた光が放出されると、大きな弧を描いてボスゴドラへと集まってゆく。
なお一層強い光に包まれたボスゴドラは強いエネルギーを浴びて少しずつその姿を変えてゆく。
光が消え、その身が自由になった時には。
ゲームにて"メガボスゴドラ"と呼ばれているポケモンがそこにはいた。
ーーー
「もしもし?真姫ちゃん?どうしたの?えっ?」
闇一色の湖に佇み、携帯から聴こえる声に佐野は叫ぶ。
彼は恐らく混雑時での電話を取る機会が多かったのだろう、電話時に叫ぶ癖がついてしまっている。
「うるせーよ……誰も居ねぇだろが」
鬱陶しそうに目を細めたのは同じ場にいる常磐だった。
彼らは、佐野、松本、船越、常磐、吉川の五人は今とある湖にいた。
そこは高野の地元から近く、また彼が過去に頻繁に訪れていた場所だったからだ。
だが、夜中の湖に人がいる訳がない。すぐ近くに高校があるが、そこの高校生もここを出歩くのは昼間だけである。
「レン君いないねー」
湖と公園が繋がっているため、面積もそれなりにある。加えて真っ暗で外灯もないため、自分たち以外の人間を探すのが難しい。
それを理解していながらも、松本は吉川と一緒に公園を見て回るも、結果が見えてこない。
吉川に至っては松本が探す低木のすぐ隣にあるテニスコートを眺めている始末だ。
「……ま!?………………るの?今、……ン君……探……」
遠く離れているはずなのに佐野の声が微かに聴こえる。松本は苦笑いしながら吉川とそんな事で話題を持ち出すも、彼は「そうですね」しか言わない。
「どうかしたの?吉川君」
「いえ、レン見つからないし寒いし暗いしでちょっとやる気になれなくて」
「なんだ、そんな事か。無理しないでいいからな?早くレン君見つけて戻ろうや」
「それなんですけどね、松本先輩」
と言って吉川は寄りかかっていた冊に対して体の力を戻して離れる。よろけること無くピタッと姿勢を正した。
「仮に今日までにレン見つけたらどうするんですか?」
「えっ、」
それは当然レン……高野を深部から救い出すことだろうと言いそうになる。
これまでに彼らはその為だけに高野を追って八王子まで来たのだから。
でも、それからはどうやって?
その場のノリで動いてきた彼らは上手く言葉に言い表すことができない。
それでも、適当な感じで「レンくんたすける」と言うと案の定「どうやってですか?」と言われる。
悩みに悩んだ末に折れた松本は「そもそも発端と言うか一番初めにレン君の深部事情を持ち出したのは吉川君なんだから吉川君言ってみてよ」とすべてを後輩に委ねてしまう。
しかしそこは後輩。
腕組んで「う〜〜〜〜ん」としばらく言ってみるものの、「無理ですね、わっかんねぇ!」としか言わない。
「なんだよそれ!」と松本が吉川の肩を笑いながら叩く。吉川も苦笑いしている。
二人が適当且つ自由にほっつき歩いているその時の事だった。
佐野が、
「レン君を香流君たちが見つけたってーー!!!」
と思い切り叫んだ。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.269 )
- 日時: 2019/01/30 11:57
- 名前: ガオケレナ (ID: 5ySyUGFj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
試しにまず'だいもんじ'を放つ。
逃げられるスピードを進化の過程で失ったメガボスゴドラはその炎をモロに浴びるも、顔色一つ変えずにそこにどっしりと構えるだけだった。
高野が言うに、このボスゴドラの性格は慎重で特防を主に伸ばしているらしい。加えてヌメルゴンの特攻は先程の'りゅうせいぐん'で大幅に弱まっている。まともなダメージにはならなかった。
その後高野は'ステルスロック'と言い、ボスゴドラはヌメルゴンの周囲に小石をばら撒く。ただそれだけの事だったが。
それのすぐ後にボスゴドラが突進してきた。
頭を突き出し光らせて走ってくるにあれは恐らく'アイアンヘッド'だろう。
香流は迎え撃つようにヌメルゴンに再び「'だいもんじ'」と言い、ヌメルゴンはそれを命中させるも、それでボスゴドラの動きは止まらない。何事も無かったかのように突き進んでくる。
「ダメか……っ!?」
尖ったツノを含めてボスゴドラはその頭で頭突きをかます。
'ぬめぬめ'の対象として素早さが下がるも、元々遅いボスゴドラには何の意味もないように見えた。
反動で後ろに倒れたヌメルゴンは立ち上がれない。香流がよく確認すると戦闘不能のようだった。
だが悩む素振りも見せずヌメルゴンをボールを戻すとすぐに次のポケモンを繰り出した。
「ロトムが来ないのなら安全にコイツで戦える!」
香流のその声と、そのポケモンを見た時高野は「失敗した」と思ったことだろう。
それも、ロトムを出さずにボスゴドラで戦ったことではなく、ロトムを見せてしまったことにだ。
香流が最後に出したのはメガシンカの要素が見られない、至って普通のバシャーモだった。
「……勘弁してくれや。ボスゴドラでどうやって立ち向かえってんだよ」
「だからこそ、こっちは安心かつ安全にこれで戦えるんだ」
読み間違えた、と高野は素直に心の中で間違いを認める。しかし今はもう後戻りできない状況だ。
どうにかしてボスゴドラのままバシャーモに勝たなければならない。
だが、必ずしもその読みは間違いではなかったようだ。
ばら蒔かれた小石が突如巨大化し、浮遊し始めるとその石はバシャーモを挟みだす。
突然の攻撃に驚くバシャーモであったが、ヌメルゴンでない別のポケモンが飛び出したことによって'ステルスロック'が反応しただけである。
香流は改めてまず、「'フレアドライブ'」と言うとバシャーモが炎を全身に纏わせて突っ込んできた。
今度は向こうが突進してくる番か、と高野は勝負の最中というにも関わらずどうでもいい事でニヤニヤした。
負けじと高野も'アイアンヘッド'を命令し、互いの体をぶつかり合わせる。
しかしどちらも吹っ飛ばされることもなく、その場で静止しているくらいに見えるほどの拮抗を見せた後に突如として爆発を起こした。
ボスゴドラは少し後ろに引き下げられ、バシャーモは軽々とひとっ飛びのジャンプで香流の元へと戻る。
(普通のバシャーモかよ……メンドくせぇポケモンばっか使いやがって……。まぁあいつらにメガシンカの技術が無いのは当然か)
と、さも余裕のように思える高野だったがバシャーモの動きに不思議なものがあることに気づくのも同じタイミングだった。
まず、自分からダメージを受けている。
そして、段々と速くなっていっていることだった。
(コイツ……まさか'かそく'のバシャーモに"いのちのたま"を持たせているのかよ!?)
そんな恐ろしい事実を見てしまった高野は、再度'フレアドライブ'を受けるもピンピンするボスゴドラに'でんじは'を撃つように指示した。
すぐさま小さくてパチっとした電撃がボスゴドラの手の上で遊んでいるかと思うと、その瞬間にバシャーモの体が痺れ出す。
瞬間の苦しさにバシャーモは、つい片足をついて無防備になった。
そのタイミングを狙い、ボスゴドラが'アイアンヘッド'で華奢なバシャーモを吹っ飛ばす。
高野は、ここから麻痺と怯みの戦法に切り替えたのであった。
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