二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/11/28 13:33
名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走カーチェイス>>536-

行間
>>518,>>525,>>535

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.340 )
日時: 2019/03/17 10:17
名前: ガオケレナ (ID: 0hhGOV4O)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「このあとってどーなるんだ?何も無ければ大学に行きたいのだが」

ある程度満足のいった食事を済ませた高野、メイ、ルークはドームシティ内を行先もなくフラフラと歩きながら雑談を交わす。

高野はと言うと、開会式と予選を一戦ほどしたら今日はもう自分の番は終わりだと思っていたばかりに、『今日は講義と被っていないから大丈夫』とは言っていたものの、いつまでも此処に居座っていてはそれが嘘になってしまう。

これから講義があるのだ。

「そうねぇ……。予選のシステムはというと、ひとつのグループが一定数勝ち抜くと本線に出場出来る仕組みになっているのよ。例えば私たちのチームが予選を10試合行ってそれに全部勝てば見事本線出場、という風に。まぁ本当ならばもっと回数はあるでしょうけど。つまり……」

と、言ってメイは一呼吸おく。
少し早口になってしまったからだ。

「一定数勝つだけでいいから待つ必要は無いのよ。試合の組み合わせは、運営側がランダムでチームをピックアップするから日によっては2回以上戦う時もあれば1回も試合がない日だってあるの。つまりこれから予選試合がハッキリと無いとは言えないのよ」

「トーナメントとかでよくある、組み合わせ順ごとに戦う訳ではないのな。それってかなり面倒じゃね?」

「仕方ないわよ。大会の参加者は7005人言われているわ。それだけの数を捌くにはこれが手っ取り早いのだから」

とは言われたものの、肝心の解決策には至らない。
本当にどうするべきか改めて2人に問う。

「とりあえず、私とルークで出るわ。さっきのように2連勝しておけば3人用意する必要は無いのだし」

「でも大丈夫なのか?もし途中で誰かが負けたら……」

「オマエさ、俺を誰だと思ってる?」

静かに冷たく言い放ったのはルークだ。
鋭い目で高野を睨み続ける。

「そういう事。問題はないわ。と、言うことで早くあなたは大学にいってらっしゃーい」

と、メイは若干戸惑いを見せている高野の背中を押す。
一応連絡だけはしてくれ、とだけ言うと彼も聖蹟桜ヶ丘行きのバスが停まっているターミナルへと歩いていった。

「さて、と」

見送りを済ませ、今やれる事を終えたメイはルークに顔を向ける。
何をしようか提案するために。

「私たちは何をしましょうかね?やっぱり観戦?」

「いや、その前に聞いておきたい事がある」

ルークは2歩ほど歩いてメイに寄る。
だが、それは対話しようとする姿勢ではない。

一回り背の低い彼女の隣に立って口元を耳に近づけるだけの動作。

そして彼はこう言った。

「オマエは何者だ?それだけを今言え」

一旦深呼吸したメイは、いつか聞かれた事であろうそれに、事前に自分の中だけで用意していた模範解答を述べるため、にっこりと笑ってから体をくるっと左に回り自ら対話するんだという態度を見せつける。

ルークが不信感を抱いていたのは目を見て明らかだった。
暗く大きな陰謀を見つめているような何とも言えない目だ。

「いいわ、あなたになら話してあげる」

高野洋平という男がいなくなった今、そして、もう1人のチームメイトという存在ならば出来る事。

語り部、メイによる物語が始まろうとしていた。

「塩谷利章という人物はご存知かしら?」

開幕早々告げられた人名にルークの瞼が寄る。
知る知らない以前にこれまでの自分の経歴にとって強く関わりのある人物だからだ。

「忘れる訳がねぇよ。アイツが居たから杉山をぶっ殺せたようなモンだ」

「そう。なら話は早いわね。私は彼の元行動しているわ」

単刀直入。
それはルークが一々1つの単語に反応する事で会話が伸びることを防ぐやり方でメイは淡々と告げてゆく。

「主に2つの頼まれ事の為に私は動いていると言ってもいいわ。まず1つが……」

「ちょっと待て。その前にこれだけには答えろ」

ルークは無理矢理彼女の言葉を遮る。
ズボンのポケットに手を入れ、それを掴む。

「オマエは俺にとっての敵か?味方か?答え次第ではここでジジイの計画とやらを摘み取る事に成り得るぞ?」

モンスターボール。
それをチラリと彼女に見せる事で己の感情を見せつける。

どうやらメイにとってもここまで敵意を持たれていたとは思っていなかったようで、少し焦りながら、その証拠にやや早口になって止められた会話を再開する。

「ま、待って?あなたにとっての塩谷の位置を知ればそれは分かることよ?」

「……杉山が死んだから塩谷がヤツと同じポジションに着いた。そうだろ?」

「それは、利害の一致よ。確かに塩谷は元々杉山の使いパシリだったけれど、彼の行動には理解出来ない部分が多々あった。だからあなたたちに接触して杉山を排除出来たのよ」

「……その後のジェノサイドの運命についても同じ事が言えるのか?」

「それは彼がしくじっただけ。確かにジェノサイドが議会の人間を排除したってのはかなり大きなニュースよ。それによって明日は我が身と考えた人は相当のものだった。でも、その話とジェノサイド解散は別問題よ。バルバロッサと議会は何の関係もない」

その言葉にルークが黙った事を確認したメイは脱線した話を戻してゆく。

「1つ目。塩谷直々に"デッドラインを追え"というもの」

メイは右手の5本の指のうち人差し指以外を曲げながら続ける。

「塩谷にとってもあの存在は分からないものなの。巷でよく噂されている"次期ジェノサイド候補"というワードも誰が言いふらしたのか分からないし、自分たちが撒いたものかもしれない。その割には戦績も不透明。おかしな点だらけなの。だから議会としてでもハッキリさせたい。だから塩谷にこれを頼まれた」

「2つって言ったよな?もう1つは何だ」

「2つ目」

メイは今度曲げたはずの中指を立たせてピースサインを作る。相変わらず表情はにこやかだ。

「高野洋平。彼を可能な限り監視し、常について回る事で彼を護衛する事」

「なんだそりゃ」

一見前者と後者で相反するワードに疑念を抱きながら、ルークは彼女の解説を待つ。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.341 )
日時: 2019/07/21 13:30
名前: ガオケレナ (ID: aOtFj/Nx)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


拍子抜け。

彼が抱いた"感想"はこの一言で片付いてしまう。

今までに費やした準備に実戦が合わさっていない。
本当にこれは"試合"なのだろうか?と。

「無理もないよ」

不満そうな顔をしながら友達が待つ観客席に戻ろうと移動していた豊川に対し、山背がこれまでの戦いを見てきてとりあえず分かったことを解説混じりに宥めようとしていた。

「この大会は学生主体だと謳っているんだ。全国から多くの人が集まったとして、そのほとんどが初心者だと思うんだよ」

「だからと言ってもナメすぎだろー?大会を何だと思ってんだよって感じ」

「……」

その様子を後ろから黙って見守る香流。
彼は豊川のように新参を低く見るような姿勢は無いものの、"本当にこれで良いのだろうか?"と今後の大会への進み具合についてしばし考える。

「まぁまぁ。それも今だけだよ。その内僕達みたいに強い奴だけになるんだからさ」

「それもそうだけどよぉ……」

観客席には石井と高畠、そして彼女らと合流を果たせた岡田がいた。
皆3人に対し手を振っている。

「観てたよー。皆の戦い。余裕だったね?」

「と言うより勝てて当然だよ。何なんだよ野生個体のドンメルって!おかしいだろ」

「むしろ野生個体って当てる方がおかしいわ」

石井らしいツッコミだった。
彼女のポケモン事情はストーリー未クリアで止まっている。

「なんかどれを見ても同じような試合だね?」

早速ポケモンにあまり詳しくない高畠が退屈になってきたようで、スマホを取り出そうとしている。

「そうだけどね。でも、この間に僕達はその中から明らかに強い人をピックアップして対策する!それが最後まで勝ち抜く為に課せられた使命さ!」

と、言って山背は席に座ると早速バトルフィールドを凝視し始める。
今彼らの眼前に行われている試合も学生同士のバトルだ。

「そう言えばレンは?見た?」

香流が思い出したかのようにこの中には居ないサークルメンバーを思い浮かべる。
すると、顔に帽子を被せて寝ていたであろう岡田が帽子を取り除けて、

「1回試合に出たみたいだけどそれからは知らね。多分帰っただろ」

「……岡田、寝てたの?起きてたの?」

高畠に突っ込まれるのを込みでその光景を眺めた香流は何か連絡が来ているかスマホを開くも、高野からのLINEはゼロだ。

歓声が上がる。
例の学生同士のバトルが終わったようだった。

「山背君どうだった?どっちが実力者か観ていて分かった?」

高畠が若干ニヤニヤしながら隣に座る山背に尋ねる。
当の本人は時折頷きながら、

「うん、ダメだ!分からない!」

無駄に元気良く答えた。

試合が終わった事への移動のタイミングと、昼の休憩が重なったせいか、人の波が一際大きく揺れる。
大会自体にも昼食の為の昼休憩があるようだった。
まるで運動会である。

「それじゃあウチらも帰ろっか」

高畠が立ち上がり波と一体化しようとするも香流たち参加者グループの3人が動こうとしない。

「どうしたの?帰らないの?」

「いやー……出来ることならそろそろ大学戻りたいけれど……」

「次の試合がいつやるのか分からないんだよねぇ。そもそもやるのかどうかすらも分からないし」

山背たちも高野と同様の悩みに立たされた。
しかも彼のグループの2名と違って待機する人を常にこの場に残すのも難しい。

「じゃあ、どうするの?」

「とりあえず俺は残るわ」

サボり癖のある豊川らしい発言だった。
この後仮に講義があっても気にしないらしい。

「講義終わったらまた来るよ」

「はいよー」

香流に対して豊川が適当に返事すると1番近い出口から豊川も外へと出て行く。

この大会は1日あたり19時まで行うとパンフレットには書いてある。
この時刻まで一体何をしようかと頭を抱えながら一先ず豊川は喫煙所へと向かった。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.342 )
日時: 2019/03/21 16:54
名前: ガオケレナ (ID: 3CTEqyYl)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


ドームシティから離れて約2時間。
高野洋平は1時間半の講義を終えて大学構内を歩き回りながら試合会場に戻ろうか考えていたところであった。

現在時刻は15時。今日の分の大会スケジュール終了まであと4時間もある。

「俺たちの試合に関しては2人に任せればいいのだけれど……」

高野はスマホの画面を眺める。
大会運営事務局からの、試合を告げるメッセージ画面が写っているも、そこには先程戦った初戦以外の連絡以外無い。

つまり、高野が離れた2時間の間チーム番号412番の試合は一切なかった、という事だ。

「待てよ?折角空き時間がこんなにあるんだから新しいポケモンの厳選すりゃいいじゃん!」

1つ閃いた高野は1人で静かにゲームが出来る場所として最適な、サークルの部室のある方向へ歩き出した。
本当だったら家に帰りたかったところだが、1時間半後にまた講義があることと、万が一2人から連絡があった場合を考えて構内からは出ない事にしている。

やる気になった高野は鍵のかかっていない部室の扉を開けると早速ゲームを起動し始めた。


ーーー

ルークはしばしの間何とも言えない感覚に五感が包まれていた。
彼は今、ドームシティ敷地内にある誰もが利用できる休憩場"公共ラウンジ"でポケモンを起動しながら1人の少女を思い浮かべていた。

(奇妙だ……あの、メイとかいう女……)

およそ1時間半前あたりに言われた彼女の告白が頭から離れられない。
彼女に目的があるとして、その目的とやらに大会そのものをも巻き込んで今此処に在るのかと思うと多少の危機感というものを覚えてしまう。

(アイツは言った……元ジェノサイドの奴を守ると。やはり奴がアレに関係しているとしか言えないのか……?)

ルークの、フェアリータイプのポケモンばかりが並んでいるバトルパーティに手が加えられていく。
それまで拘っていたタイプ縛りを捨て、勝つ為だけのポケモンで彩られていく。
しかし、相棒と呼んで愛用するポケモンは別として。

("ジェノサイド"……"デッドライン"……そして"塩谷"、か)

ルークの頭の中で様々なワードが交錯するも、それらは必ずしも1つの線で繋がることはない。
その時点で、自分は渦中の人物にはなれないと悟った瞬間でもあった。

ーーー

ゲームを始めて2、30分は経った頃だろうか。
部室の扉がひとりでに開いた。

「「あれっ?」」

それは同時に、同じタイミングで発せられる。

「レン……こんな時間に此処にどうして?」

「いつまで経っても理想個体が出ないと思ったら……親の特性おかしいじゃん!!」

扉を開けた吉川裕也はこの時間この場所に、大会に参加しているであろう人物が1人でゲームに盛り上がっている姿が不思議でならなかった。

ふくよかな体格と優しそうな声色から一部では『カビゴン』とあだ名をつけられている彼は、1つの講義を終えた今、バイトが始まるまでの空き時間が暇すぎて此処に来た次第であった。

「あれ?吉川か?講義終わった系か?」

「講義終わったところだけど……お前大会は平気なのか?」

「平気に決まってるだろ。講義の空き時間に一々会場に行くなんて面倒だしキツい。どうせあと2人そっちに残してるんだから俺は此処で次の講義までポケモンやってるよ」

「お前が大丈夫ならいいのだが……」

吉川はそう言うと高野のゲーム画面を覗き込む。
すっかり見慣れた、タマゴを孵しているシーンだ。

「今度は何の厳選してんの?」

「とりあえず夢サメハダーかな。俺メガシンカが好きだから結局メガシンカさせちゃうんだけどね」

「余ったら俺にもくれないか?」

「別に構わねぇよ。ただ、厳選終わってからでいいよな?」

高野のその言葉を最後に沈黙が支配する。
部室のある建物がサッカーのコートに近いせいか時折スポーツ実技の講義に燃えている盛んな声が聴こえる。

「なぁ、レン」

「なんだー?」

「此処に来るとビックリするぐらい大会の話題聞かないよな」

吉川は今日1日で感じたギャップを彼に伝える。
どんなに大会が盛り上がっても、どんなに世間がポケグラに注目していようと、その世界から少し離れれば全く話題にならない。

「そりゃあね。ここの大学生全員がポケモンユーザーで、大会の参加者とか観客って訳でもねーからな。世間と言うかメディアが少し過剰になってるだけで少し離れた位置から見れば全く話題にならないもんさ」

まるでかつて自分が過ごした深部の生活そのもののようだ、と高野は少し思い出すかのように思った。

巷ではどんなに大きな噂になろうとも、どんなに大きな騒ぎを自分が起こしても違った世界から見ればなんの関係もない。
これは彼がジェノサイドとして大学内で騒ぎを起こした時や、嘗てその世界に入ったばかりの自分が経験した、昨日までクラスメイトだった人間と戦った翌日、その高校内では何の騒ぎにもならなかった事と同じであった。

そんな事を思い出しすぎて遂にゲームを進めている手が止まった高野は、吉川の「なんつーか……暇だな」という呟きによって我に返った。

「そうだな……。でも、俺はこれが欲しかったのかもしれない」

「へっ?」

「いや、何でもねぇ」

親を取り替えた瞬間理想個体のポケモンがポンポンと出てくる。
予想よりも早く厳選が終わり、本当に余りも出てしまった高野は吉川に交換を勧めるも、「今日ポケモン持ってきてねぇ」と言われ、自分から求めてきた交換も半ば無かったことになってしまう。

時計を眺めながら高野は引き続き作業を進めていく。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.343 )
日時: 2019/03/26 19:45
名前: ガオケレナ (ID: A7M9EupD)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


都内の学校に通う高校1年生の吉岡よしおか 桔梗ききょうはホッとため息をつくと友達らと顔を合わせた。

「作戦通り上手くいったね!どうだった?感想として」

「相手のポケモンの見極めが重要になってくるからなぁ〜。この作戦はいつまで続けるの?」

と問われて同じ学校に通う彼の友人の1人、相沢あいざわ 優梨香ゆりかは答える。作戦立案者は彼女だ。

「ある程度予選が進んだらかな?負けちゃったらどうしようもないけどねー」

「そんな俺は初戦早々負けちまったけどな!ははっ!」

そんな2人の会話に割り込んできたのは彼等とは同様の高校に通い、そして常に行動も共にしている友人、東堂とうどう きらだ。

「いやね、いけると思ったら相手のが上だったわー。ちょっとばかし準備が足りなかったなぁー」

「あたしは"少し育てた野生個体"を使えって言ったじゃん?でもキー君のは"ただの野生個体"だったよね?違いわかる?」

「へいへーい。サーセンしたっ!」

「勝てたからいいけどさ……その調子だとこれからも不安だよ〜僕は」

三人に課せられた作戦。
それは、簡単に言えばカモフラージュであった。

比較的勝つのが楽な予選の前半戦はこの為だけに用意した野生のポケモンで勝ち進み、予選を進む事で本領を発揮していく。
稀に現れる強い相手には初っ端から、育成させたポケモンで対抗する。
その育成済みのポケモンは手持ち6体の内3体。

その作戦の目的は自分たちの正体を見抜かれないため。

即ち彼らは深部の人間なのだ。

「なんだかんだでもう少ししたらお昼休憩終わっちゃうし今の内に何か食べに行く?」

「行こーぜ行こーぜ!俺ハンバーガー食いてぇ!」

「はぁ〜……。まぁ2人に任せるよ」

相変わらず、どんな時でもテンションが高い東堂に吉岡は若干疲れていた。
とは言っても彼との交流はもう2年以上経っている。
そのため既に見慣れた光景ではあったが、今がたまたまその"疲れる"時のようだった。
年がら年中彼に対してそう思っている訳ではない事は自分でも分かっているのだ。

「それにしてもさ、あの噂本当なのかな?」

「ん〜?相沢、それって何のこと?」

「"ジェノサイド"がこの大会に出場しているっていうやつ」

「ジェノサイド、か……」

3人はいつかどこかで聴いたことのある単語の意味を改めて理解しようとするも、縁の無さすぎることだった。
何も浮かんでこない。

「さぁ?だとしても僕らには関係ないんじゃないかな〜?」

「今までがそうだった」

相沢は吉岡と東堂に挟まれる形で真ん中を歩きながらドームから外に出る。

「でも、今となっては別よ。だってみんなが此処に集結しているじゃない?あたしらにも接触できるチャンスはあるって事よ!」

「でも、接触したからと言って何か起きるのか?だってジェノサイドはもう解散しているんだろ?今更何かがあるってわけでも無さそうだけどな〜」

「そこは会ってみないと分からないわね。暇を見つけてジェノサイドを探すのも有りかもね!」

「おい!とりあえずあそこのバーガー屋でいいよな!俺腹減った!!」

全く話を聞いていなかったであろう東堂がここから80mほどの距離にある飲食店が立ち並ぶエリアの中に紛れているその店の方向を指しながら目を輝かせて2人の会話に再び割り込む。

相沢はくすっ、と笑うと

「いいよ。そこにしよう!」

と東堂について行き、吉岡も、

「絶対さっきの話聞いてなかったよな〜……」

とボソッと呟きながら2人の後を歩く。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.344 )
日時: 2019/03/27 10:36
名前: ガオケレナ (ID: pkc9E6uP)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


16時半を過ぎた。
それを意味するのは、高野洋平という1人の大学生の、今日の講義がすべて終わったことだった。

「やーーっと終わった……結局あれから一度も通知来なかったな?薄々思ったけど向こうに意識し過ぎたりするのもあまり意味ないのかもな」

行われるかどうかも分からないのに他の都合を犠牲にしてまで会場に居座ったり、通知が来ないか一々時間を気にするのも馬鹿馬鹿しいと思っていた頃だった。
高野は、最終試合時間の19時までもうすぐ2時間というこのタイミングでなんとなくだが時間配分に対する掴み方を段々と分かってきたような気がしていた。

「と言ってもあれから4時間近くあいつら待たせてた訳だしなぁ。今日はもう予定無いから会場戻るかなぁ。これから試合をやるとは思えないけど」

7000人超えの人間を一気に捌くとどうなるか、というのを少し理解した高野。
そう簡単に自分の出番が来るわけがない。
少なくとも、参加者がまだ多い今は。

「でもそう考えると……会場内にある宿泊施設を利用するとなると大分便利だよな……?しかも金掛からないんだろ?」

高野はいつかのメイとの会話を思い出す。
深部へのスカウトに必死な議会がお金を惜しまずに水道代、光熱費、賃料が掛からないという貧乏学生からしたら進んで入りたい部屋だが、あの時自分は拒否したはずだった。

「議会に利用されるから嫌、ね。今の状況考えるともう訳わかんねーがな」

相変わらず1人で呟き、終いにフッと軽く笑う。

流石に怠くなって来た高野は朝の時とは変わってポケモンでの空の旅を過ごす。
そちらの方が楽で速いからだ。

会場まではポケモンでは行けないので、バスが出ている聖蹟桜ヶ丘まで移動する。
そこからドームシティのバスターミナルまでのバスに乗れば仲間とはすぐに会える。

高野は、駅を歩く中周りに異様な数の学生らが居ることに若干不思議な眼差しを向けた。
大会の存在と、今の時間帯が帰宅時間だからだろうか。
それが重なった結果自分の周りは自分よりも若い子たちで溢れ返っている。

「こんな事している内に大学も3年目かぁ……」

神東大学に入学したのがつい最近だったはずなのに何故か高野は今"ビジネスマナー"とかいう名前の講義を受けている始末だ。
いつの間にかそんな所まで来ていたのかと認めたくないものの時間の流れ、即ち老いを実感する。

そんな下らない事を考えていた間にバスが到着し、特に意識せずにそれに乗り込み、適当に空いていた窓際の席に座って外を眺める。

相変わらず自分の周りだけ時間の流れおかしくないかと思うほどそれは早かった。

会場に降り立った高野はメイに何処にいるかを伝える。
返信は早かった。
ルークと2人で公共ラウンジにいるとのことだ。
どの辺りにあるのか高野は分かっていた。
これまでに必ず視界に映っていたからだ。

周りの制服集団と比べると目立つ2人の姿はすぐに目に止まる。

「よう、お待たせー」

「……なんか遅くねぇか?そんなモン?」

「講義2つあったからな。空き時間が1つあったもんだから余計に時間かかっちまった」

「まぁまぁいいじゃない。通知見てれば分かると思うけれど、あれから私らの出番は無かったわよ。この調子だともう無さそうねー。また明日かしら」

高野は、メイとルークの2人の会話が少し気になるところだったが、変な深追いは止めることにした。

とてつもなく嫌な予感がするからだ。

「お前らは4時間近くの間何してたんだ?」

「色々よ。観戦したり少しお茶したり厳選したり……あとはお爺ちゃんのところ行ったりね」

「そこそこ楽しんでんだな」

高野は少し安心した。
自分が居ないことでただひたすらに時間を潰すだけの物凄く退屈そうに過ごしているのではないかと思っていた節があったからだ。

「と、言うことでこれからどうする?」

「俺は少し観戦したいかな。思えば今日自分以外の戦いを見ていない気がする」

と、言うとルークは退屈そうに重いため息を吐く。

「あぁ、ほら……彼にとっては面白くない試合ばっかりだったから……」

「俺、もう帰っていいか?」

ルークはバスターミナルのある方角を向いて2人に訊く。

「えっ?別に構わないけれど……花火観ていかないの?最終試合時間が過ぎたら上がる予定だけれど」

「そんなモンの為だけに居座りたくねぇよ俺は」

と言うとルークは去ってしまった。
彼にとってはどうやら退屈な時間だったようだ。

「それも今だけよ。予選なんて突破したら今ほど暇な時間は無いはずだから」

「だと良いけどな」

高野はメイと共にドームへと向かう。
少しでもライバルとなる人達の戦いを観るために。


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