二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.170 )
- 日時: 2019/01/21 15:08
- 名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「おっすー、邪魔するぜレイジ」
ジェノサイドが部屋に入ると、そこにはレイジだけがおり珍しく大人しそうに本を読んでいた。
外見だけ見るとすごく絵になる。
「大丈夫ですか、リーダー」
本を閉じて優しく声をかけてきた。大丈夫か、というのはさっきの話と絡めて、対応に追われるジェノサイドを労っての言葉だろう。
「別に。お前こそ平気なのかよ」
適当に置いてある果物を取って暖炉前の椅子にジェノサイドは座る。
レイジは先月、ディズニーシーにて銃撃を受けている。快方には向かっているものの、まだ完全には治っていない。歩いたり座ったりするワンアクションが負担に繋がってしまう。珍しく本を読んでいるのもその影響だろう。
「えぇ。まだまだ迷惑をかけるかもしれませんが、大分いい方向に進んでいますよ」
ジェノサイドはキョロキョロと部屋を見てみる。あってもおかしくない人影がないからだ。
「ミナミは?さっきお前と一緒にこっちに来てたよな?」
「ああ、リーダーでしたらあっちに」
レイジが指を突き立てた先にあるのは洗面所。
「またかよ……」
「まただよ……」
二人で頭を抱えながらコントのような雰囲気をさらけ出す。
「あ、でもお前そんな状態じゃん?ミナミが何か手助けしてくれるんじゃねぇの?」
「そうなんですよ!」
目を少女漫画ばりに輝かせると、ひとりでに語り出した。
「まず、ずっと一緒にいてくれるんですよ!朝起きてからずっとですよ?私が立ち上がったり寝に入ろうとすりときも体を支えてくられてどんなに幸せ……あ、いや助かることか!こんな事ここに来てからなんてものじゃない。『赤い龍』時代にも無かったですよ!?一日中付きっきりなんて事今までに無かったんです、なんて言うかもう……銃に撃たれてバンザイと言いたくなりますね 」
「……いやお前一歩間違えてたら死んでたからね、さすがにバンザイは行き過ぎだろー、あっそういやお前が居なかった頃のあいつはさー」
などと調子に乗ってジェノサイドもレイジが居ない間塞ぎがちになって寝込んでいた事を話した。
あまり内容も内容なので今まで話すのを躊躇っていたがこのテンションなら言えた。
「へぇー、私を想ってそんな事を!元気なあの子には考えられない行動ですよね?いやぁ愛されてるっていいなー!今もこうして付きっきりでいるのもリーダーの寂しがり屋なところを打ち消すのと私を愛する気持ちとでやっている事なんですよね!!これほどにも嬉しいことがあるのかと……」
ジェノサイドがそれに気付き戦慄に怯えた顔をしてレイジにそのことを忠告しても愛に酔って未だにベラベラと喋る彼には気づくわけがない。
ゆっくりと、風呂から上がってきたミナミが後ろから暗殺者ばりに近づいてくる。
「さっきからベラベラ語るな気持ち悪い!!」
使い慣れた枕を思い切り振るって頭あたりを殴ると、椅子の中でレイジはバランスを崩した。
「いっ、痛い!背中、背中が!!」
悶えているうちにズルズルと椅子から滑り落ちていき、ついには床の上でバタバタしている。
勿論ミナミはガン無視だ。
「……」
「アンタもだよ」
「えー、俺もー?」
手で守ろうと突き出しても、何の意味もなかった。
「アンタも余計な事言ってんじゃないわよ」
「あー、あれかー……でもほら、あれだぞ?大学生というのはノリで生きてノリで選択する生き物だぞ?まだ若いんだから少しくらい若さゆえの何とやらにすがっても……って待って!!枕振り上げるのやめて!」
必死に「待て」とサイン送っても効果はない。
痛くて固い枕が飛ぶと思うと動機づけされた恐怖に駆られる。
「なぁ待ってくれ。頼むから話を少し聞いてくれ」
「何?言い残したことがあるなら今のうちに言いなよ」
「もうちょっと柔らかい枕にしてください」
次の瞬間、フルスイングが躊躇なく深部最強にして、外見上はただの大学生の頭を襲う。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.171 )
- 日時: 2019/01/16 20:36
- 名前: ガオケレナ (ID: nj0cflBm)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
12月5日の金曜。
今日も普段通りの授業を受けて普段通りの日々が終わるんだろうと思えるのが普通なのだろうが、高野がこう思う事自体異常な事だった。つい最近にも大きな戦いがあったばかりで、基本的に平和な日常というものが築けていない。
要するに今が異常な時なのである。
たとえ学生という表の世界を生きていても、深部という裏の世界がヤバい時であればその影響は表の世界に及ぶ事だってあるし、そもそもダラダラと生活する余裕すらない。
裏ではゼロットに宣戦布告されるというかなり危険な状態ではあるのに、表ではすごく余裕のある生活を送れていた。
平和ボケしてきたか、それほど慣れてしまったのか。考えれば考えるほど気が重くなってくる。高野は途中で考えるのをやめた。
授業と授業の合間の、教室の移動のための時間中の事だった。
遠くないのもあって時間的に余裕のある中、前方を歩いていた石井が、考えに耽っていたのか渋い顔をした高野に気付き、手を振る。
すると、高野も気づいたのか、顔を上げて考えるのをやめたようだがやはり様子がおかしい。
普通だったら自分を見つけて驚きに満ちた顔なんてしないからだ。
「?」
石井が不思議に思って近づこうとした時、向こうもこちらに向かって走り出した。
「れ、レン?」
いきなりの事に戸惑うも、何故か高野は自分をスルーしてさらに走っていった。
その先には見知った顔。ミナミが居たからだ。
「おいミナミ!何でお前がここに居るんだよ!」
深部の人間にしてはあまりにも普通の人間であるミナミは高野と一緒に表の世界で行動することはこれまでに何度かあった。
それでも、深部の人間である事に変わりはない。
高野が通う大学に深部の人間が現れたということは、普通でない事を意味する。
両肩を掴んで焦るように迫る高野に、ミナミは顔を真っ赤にしてその手をどけるように怒鳴る。
「何でお前がここにいるんだよ!」
「ウチだって来たくて来たわけじゃない!」
何やら微妙な空気だが、石井からしたらやっと会いたかった人が自分から来ている。
ワクワクしながらそれを眺めていると、
「……何かあったのか?それとも、アレか?」
互いにその意味が分かっていた。ミナミは無言で頷く。
「……ゼロットが、ウチらの基地である工場の写真を貼ったネット投稿をしているのを見つけた」
「はぁ!?」
本当だとしたら恐ろしい事だ。
相手方が自分たちの基地の居場所を知っているという事だが、それ以前にその情報が漏れていたという事になる。
「このままだと一方的に攻められるよね……?いつ来てもおかしくないよね」
「俺達は……奴等の居場所を知らない……。戦いは奴等がかなりリードを取っている事になるよな……俺らもすぐに対策しなきゃならねぇ」
「具体的にどうするの?」
「そうだな……まずは……」
高野はふと周りを見てみる。時間にはまだ余裕があるが、授業に出ようか悩むところだ。
いっその事面倒且つつまらない授業を抜け出して帰りたい。
その時にやっと石井を見つけた。
気まずそうな顔をして、彼女の肩を叩く。
「とりあえずこれは俺が対処する問題だからあまり騒がず、慌てないでいてくれ。まだどうにか出来る範囲だ」
「だからどうするのよ……」
答えになっていないことに不満を見せる。知りたいのはそれではない。
「今のジェノサイドはまだ連合の名残がある。追加でジェノサイドに加わった奴や連合で知り合った奴等に片っ端から話を聞いて情報をまとめてくるよ」
ともなれば、今やることはつまらない授業を受けることではなくなる。来た道を振り返り、帰路につく事に意識を移した。
「じゃあ待ってよ!ウチも帰る」
何だか置いてけぼりになりそうだったので急いでついて行こうとした。
「別にいいけど、お前どうやってここまで来た?」
「バスと電車で」
「そっちかー……」
普段ポケモンを使う高野にとっては面倒なパターンだった。
手持ちを見てみるも、二人で乗れそうなポケモンはいない。
ポケモンボックスでも開いてリザードンとオンバーンあたりを出そうとしたときだ。
「あ、別にいいよそんな事しなくて。ウチ寒いの嫌だから」
「じゃあポケモンで移動はしないのか?」
「うん。行きと同じで行くよ」
一瞬たまにはバスも使おうか考えたが、事態が深刻なので、あまり時間は無駄にしたくない。
結局一人でポケモンで帰ることにした。
「あっ、石井じゃん」
振り返ってやっとその存在に声をかけた。
「い、今ミナミちゃんいるんだね」
今まで気づいてもらえなかったのに加えミナミがいるという事で苦笑いしている。相変わらず作り笑いのような目をしていた。
「まぁな。ちょっとこっちの方で色々あるみたいだし。あ、あとさ今日サークル来ないから岡田たちが居たら伝えといて」
走り出そうとするのを石井の目が捉えた。
彼女からしたらミナミを置いていっているように見える。
「ねぇレン、一緒じゃなくていいの?」
「別に。時間は違えど帰る場所は一緒だし。何か話したいことがあったら話してくれば?」
意味がよく分からないまま高野は去っていった。
石井にはついて行こうとしてバスの停留所へと向かおうとするミナミの姿が見える。
「み、ミナミちゃーん。久しぶり」
どこかで聴いたことあるような声がする。ミナミがそちらへ振り向くと、横浜にて一緒だった高野の友達がいた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.172 )
- 日時: 2019/01/16 20:40
- 名前: ガオケレナ (ID: nj0cflBm)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「話は聞いたよ。今戻ってきた」
ガラガラと普段は開いている基地のリビングの扉を開く。閉めているのは寒いからか。
平日の昼前と言うことで人は少ない。
それぞれの用事でここにはいないのだろうと勝手に思ってみる。
「リーダー、わざわざすみませんね。大学放ってまで来てもらって」
ジェノサイドの研究者として常に基地にいるショウヤだ。
白衣を来て此処におり、何か飲み物を飲んでいた辺り休憩時間だったのだろう。
「ゼロットが、我々の基地の居場所を知っているようです」
「それについては聞いたよ。わざわざそれだけを教えるために大学までやって来た熱心な奴がいるらしいからな」
「……では、どのようにお考えで?」
緊張感からか表情が固まっている。しかめ面が多い彼には珍しい現象だ。
ジェノサイドは一度、軽く溜め息をつく。
「そうだな、まずは深部連合の時に一緒だった奴等に話をしてくる。あまりいい情報は得られないとは思うけど……それでも一人くらいは知ってる奴もいるだろう。もしかしたら協力もしてくれるかもしれない」
「それでは、今から行く予定ですか?」
不安そうに言うも、恐らく意味合いとしては「自分は何をすればいいか」というものだろう。ジェノサイドの研究チームにはメガシンカの研究以外何も命令はしていなかった。
それに気づいたジェノサイドは頭を掻きながら告げる。
「あぁ。何事も早い方がいい。いつ攻撃受けるか分からねぇもんな。まぁあいつらが把握してるのはダミーの方の工場のみかもしれないけど。あと、お前らにも頼みたい事がある。ゼロットについて出来る限りでいいから調べてくれ。名前の意味から、組織の目的、規模。些細なことでも何でもいいからさ」
「分かりました!」
ショウヤは駆け足でリビングを出ていった。勿論、カップは置いていって。
「んだよ……それが知りたいだけかよ……」
ジェノサイドは再びため息をついて基地を出た。
目的地は杉山渡という議員を打倒するため深部連合に加わった人たちに会うための、彼らの住処である。
人によっては深部連合解散後にジェノサイドに加わった人もいるがそうでない人もいる。
加わった人でも自分たちの組織のブランドを大切にしたいのか、メンバーとしてはジェノサイドではあるものの、住処としている基地はかつての物を使用している人もいる。
ジェノサイドの基地に入り浸っている連合出身の人に話を聞いても良かったのだが、外にいる人間の方が話を聞いていそうという勝手なイメージの元、ジェノサイド本人は今こうして基地を出ることにしている。
とにかく行動しなければならない。
少ない情報を手掛かりに、元連合の人へと会うために、ジェノサイドはリザードンを呼び出した。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.173 )
- 日時: 2019/01/17 15:23
- 名前: ガオケレナ (ID: i7z/PvOJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「それでそれで?ミナミちゃんは好きな人とかいないの?」
帰りたい……と割と本気で思ったことだろう。
高野がいなくなってすぐの事だった。石井がミナミを一気に捕まえ、「レンから了承得たから」と半分無理矢理にミナミをサークルの部室へと連れていった。
幸い部室には誰もいなかった。
「どうなの?あの時もずっとレンにくっついてたけど、やっぱりレンとか?ふふ……」
あの時、というのは横浜で会った時の事だろう。あの時は仕方なく付いていったという意味合いが強いのでそういう訳ではないのだが……
「あ、あのさ……ウチそろそろ帰っていいかな?さすがにリーダーに怒られそう」
「えー?レンって怒るの?ってか怒られて何されるの」
嫌らしい笑みを常に浮かべている。恋愛に疎いサークルだからこそ、こういう話題が彼女らの中で盛り上がるのも事実だった。
「知らないよ!とにかく今本当にヤバいからそろそろいいでしょ?」
顔を真っ赤にして手を振りまくる辺り何か想像したのだろうか。
石井からしたら何も聞いていないのでこれで帰すのはつまらない。
だから。
「じゃあ……今どんな事が起きてるの?それだけ教えてよ?」
踏み込んではいけない領域に入ってしまう。
ーーー
「ここで合ってんのか?人が……ってか他にも住んでそうな人が居そうなんだけど」
ジェノサイドの前には蔦が絡み合った古くてボロいマンションが建っていた。
最初これを見た時は、絡まってる蔦は外観の一種、デザインかと思っていた。
だがよく目を凝らすとシミが酷く、白い煉瓦がかなり黒ずんでいる。
単純に古い建物であり、安全性が脅かされているようにも思えるがかといって人が住めない程でもない。誰かが住んでいてもおかしくない。ゆえに深部の人間が住んでいるようには見えなかった。
しばらくマンションを眺め、どうするかあぐねていると、
「ジェノサイド?」
声のする方を振り向くと、スーパーの袋のような物を持った男の姿があった。
その男は、年齢は十代後半くらいで、限りなく黒に近い青……濃い青と黒が混ざったような髪色をしたショートな髪型をしており、体型はごく普通の中肉中背、服装もダメージジーンズを穿いている以外は特徴のない、"外見上"は一般人と見分けがつかないほどだ。それが当然なのだがそれが挙がるくらい特徴のない地味な男だ。
「お前は……確かー……」
思い出せない。顔と名前が一致しない。そもそもこのような顔をした人が居たかどうかすらを思い出せない。
ジェノサイドにはよくあることだった。自分にとって飛び抜けるほどの特徴がない限り、人の顔を覚えることが出来ないくらい苦手な事だ。
その中性的な顔立ちを見てもやはり誰だか思い出せない。彼から自分をジェノサイドと言ったので深部の人間である事は分かっている。
「俺?俺っすよ。モルト。爆走組って名前で組織やってた」
「あ、お前かー」
ルーク。彼と仲が良くちょくちょく彼と共に行動していた人が居た事をたった今ジェノサイドは思い出した。
「あっ!ルークと一緒にいた奴か!」
「とりあえず、なにかあるからここまで来たんだろ?袋部屋に置きてぇからとりあえず部屋上がれよ」
目の前にそびえ立つオンボロマンションの方向を歩いたと思ったら、そこの1階部分にある扉を開けたら入っていってしまう。
「本当にここ住んでんのか……」
嫌そうな顔を浮かべつつも、彼について行く事にした。
部屋は綺麗だった。
同じようなマンションに友達が一人暮らししているが、友達と比べると全然綺麗だった。
まず、座れるスペースが確保されている。食器類も片付いており、過しやすい環境であるのは間違いない。
「一人暮らししてんの?」
「んー、一応俺大学生だからね。ここから二駅行ったら大学あるし。カモフラージュが簡単なのもあるしなぁ」
それで何となく分かった。服装といい、雰囲気といい、どこからどこまでも大学生そっくりだからだ。
「それで?今日はここまで来てどうした?」
冷蔵庫を開けてスーパーで買ってきた食材を次々に入れていく。その手つきは慣れていた。
「ゼロットに宣戦布告された」
「知ってるよ。もう深部中で大騒ぎさ」
「ゼロットに俺らの基地の場所も暴かれた」
「それは知らなかったなー……」
「なぁ、お前は何か知らないか?ゼロットについて」
ベッドに座って慎重そうに言うジェノサイドの姿がやけに目についた。
モルトは動かしていた手を止める。
「ゼロットにか?」
「あぁ」
それからしばらく考えるように上の空になってみるが、
「分かんねーな。生憎俺みたいなBランクにはあまり縁の無い話だからな。Sランクだなんて」
お前と仲のいい人は自分と戦ったんだがと、今思い出しても可笑しくなる話を突きつけたくなったが言うほど変な話でもないし爆走組と戦った事も無いことからそれについては黙る。
「じゃあ……Sランクを巡って自分たちが戦うこととかは?」
ジェノサイドは、自分が特に懸念している支持派と非支持派の戦いについて言及することにする。
が、
「それも俺らには関係ないな。そういうのって簡単な言葉で言い換えてしまえば、ファンとアンチの戦いだしさ。俺は常にどこのファンでもないから適当にやり過ごすことにするよ。それともあれか?助けが欲しいか?」
「どっちかってと情報としての助けが欲しいな」
「そうか、そう言やルークは元気?そっちにいるんだろ」
「あっ、ルークは……」
ルークはポケモンの新作発売日まではジェノサイドの基地にいたものの、それから何処か行ったっきり音沙汰はない。
ジェノサイドはその事を告げる。
「へぇ、まだ諦めきれてないのかね。今から組織の再編成は難しいと思うんだけどな」
「そういやお前は?見たところメンバーは居ないようだけど」
「そりゃそうだ。ここは俺の家だよ。基地は他にある。と言ってもメンバーもかなり少なくなっちまったけどな」
連合に参加している辺り察しがついていたが、やはり彼も杉山の犠牲者だった。
ーーー
「悪かったな、情報あげられなくて」
「別に。すべてがすべてSランクの戦いに巻き込まれる訳ではないってことが分かっただけでも収穫はあったよ」
あれから二十分ほど居たが大したものは得られなかったので出ることにする。丁寧にも見送りまで付けて。
「それじゃあな」
「あぁ。また何かあったら連絡してこいよ。気にすんな、一応俺もアンタらジェノサイドの傘下に入っていることにもなりうるからよ」
ジェノサイドは背を向け、そのマンションを後にした。
次に会わなければならない人がいる。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.174 )
- 日時: 2019/01/17 15:41
- 名前: ガオケレナ (ID: i7z/PvOJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
いつになったら帰れるのだろうとソワソワしだしたところだった。
「じゃあ今ミナミちゃんやレンはヤバい奴と戦っているの?」
「んー、戦っていると言うよりこれから戦う、が正しいかな。本当は戦いたくないから今みんなが必死になって止めようとしているよ」
「なんで?」
石井の無邪気で無知な笑顔がやけに輝いて見えた。
やはり、彼女は深部とは一切関係ない一般人だなと強く思い知らされる。
もしも彼も、本当だったら彼女達みたく一般人として大学生活を謳歌していたんだろうかと考えると胸が痛くなる思いだ。
「ウチらも向こうも、あっちの世界を揺るがす程の大きな組織だからだよ。下手したら深部中が戦いに巻き込まれる可能性だってあるし、もしかしたら一般の人にも影響が……」
深部は元々ポケモンが実体化し始めた時期、所謂黎明期すぐに発足したが、その理由は実体化したポケモンを悪用する者達を根絶するためだ。当時はポケモンを持っていない一般人すらも彼らはその毒牙にかけた。
その時がまたやってくるのかもしれない、その事を必死に伝えたつもりだった。
「そうか……これから忙しくなるのになぁ。とりあえず、私たちが今まで通りの生活ができればいいとは思ってるけど、ね」
「リーダーは特にその事を強く思っているよ。あいつはこの世界と向こうの世界をきっちりと区別している人だから。それこそゼロットがこっちにまでやってきたら多分あいつ超キレるよ?」
「キレるレンかー。あまり怖くなさそうだな」
普段からおとなしい奴ほどキレると怖いんだよと言いたくなる気持ちを抑える。聞いたところによると彼女らサークルのメンバーは今年で高野と会って二年、つまり二年間一緒にいるものの、あまり高野の事を知らないようだ。
まるで自分だけが優越していることに多少口元を緩める。
石井も石井でニヤニヤしている。
端から見れば二人の地味な女子が個室でフフフと不気味に笑う光景が広がっており、見る者があれば見なかったフリをするであろう雰囲気なのだが、彼女達は彼女達で楽しんでいるので別に問題はない。
「ミナミちゃんやっぱりレン好きでしょ?」
いきなり言うもんだから笑みがフッと消え、激しく慌てる様を石井はこの目で見れた。
「そ、そんな事ないよ!!あいつとウチは同じ組織の人間!ってだけで!そういうのは全然ない!ただでさえ組織の皆から勘違いされてるってのに……もう勘弁してよー」
顔が真っ赤になり、熱くなったせいか手で扇ぐモーションをするも効果はない。ただでさえ今は冬だ。
「ぜったい嘘。さっきのその顔は好きな人を想ってするときの顔だったよ」
さっきの小さい笑みの事だろうか。鋭すぎる分析をされて目の前の女の恐ろしさを垣間見たミナミだったが、終始ニヤついてる人に言われたくは無い。
俯いて顔を赤くするだけなので石井もこれ以上言うのは可哀想とさすがに思ったからか、話題の方向性を変えてみることにした。
「どう?レンは向こうでも優しいの?」
それに対し、ミナミは黙って頷くと、
「うん。あいつはウチを助けてくれた。ウチにとって大事な人も、皆も。だから今度はウチがあいつを助けたいんだ」
言っているだけで苦しくなりそうだった。
彼にとっての救いとは何か、と。
このまま深部にいる事なのか、そうではないのか。自分のおかげで現況を突破できることなのか、そもそも現況とか深部とかが無い世界のことなのか。つまり、自分と居て幸せか、自分の居ない事の方が幸せか。
複雑な思いだった。
ーーー
どうやらジェノサイドは分からないことがあると山に登る癖があるようだ。
ここに来たのは何度目だろうか。
「私としても興味ありますよ、ゼロットには」
「お前は何か知っていたりするのか?」
「知っているつもりでした」
とは言っても仕方ないだろう。まともに話せるのが彼しかいないと判断したのだから。
標高約1200mの山の山頂に存在する神社の神主……それも、深部の人間限定の神主のいる場所。
武内はわざわざやって来たジェノサイドに茶菓子を持ってきながらそんな事を言っている。
「つい最近怪しい男がこちらにいらしたのですよ。自分をゼロットと名乗っていたのですぐに分かりました。しっかりとキーストーンと引換に情報もいただきました」
「それで?何か分かったか!?」
熱いお茶に苦戦しながら、湯呑みを一度置いてジェノサイドは聞く。熱すぎて湯呑みをひっくり返しそうになった。
「いいえ。いただいた情報はすべてダミーでした。深部のデータを扱ったウェブサイトにも彼の情報はございません。完全にやられましたよ」
かと言って、と言って武内は一旦間を空ける。
彼も茶菓子を嗜みたかったようで、一口かじりながらお茶で流し込むと話を再開させた。
「議会があなたたちSランクの情報を全く持っていないと言うことでもありませんよね?あなたたちは個別に議員に渡していたり、直接議会場という名の一種の役所で届出か何かをする。そのはずですよね?」
「あぁ。俺の場合は塩谷に預けているよ。最近事情が変わったからね」
塩谷とは杉山の一件で密接になった。塩谷は彼らのお陰で出世し、ジェノサイドも彼のお陰で無事でいられている。
もっとも、今はそうはいかなくなったが。
「ですよね。何とか少ない手がかりを頼りに手に入れたものがありました。ゼロットの情報源を」
「マジ?何だったの!?」
急いで和菓子を頬張り、武内の様子を伺う。和菓子とお茶の後味が何とも言えないくらいの心地良さをジェノサイドの全身が包む。
が、
「杉山です。彼がゼロットの情報を保持しておりました」
頭の中でフリーズが発生する感覚に襲われた。それが本当ならば今まで掌で踊らされていたに過ぎないことになる。
「今議会でも杉山の持ち物を整理して混乱しているところでしょう。一部ではあなたたちが暴れた所もあるようですし。とにかく、杉山がいない今ゼロットの情報を完全に把握している者はおりません。これから現れるでしょうが、多分あなたが戦っている頃でしょう」
「ま、待てよ……それじゃあ……」
すべてを理解した今、体の震えが止まらない。言うだけでも恐ろしい程だ。
「ゼロットは……俺と戦いたい大義名分のために杉山と繋がったり、塩谷を利用したって事かよ……?んで、今がその行動の時なのか」
「言いにくいのですが、恐らくそうでしょうね。あなたが不利である事には変わらないでしょう。そして、私もキーストーンを撒きすぎてしまったようです。争いが良くない方向へと向いています」
沈黙が二人を包んだ。
それぞれがお互いの事を考え、どうすべきか悩む。
「俺としては……奴の基地を暴いて牽制しようと考えていたんだが……」
「それは刺激するだけでしょう。と言っても対話を要求しても受け容れられないでしょうが」
「くそっ!じゃあ戦いは避けられねぇってのかよ!!」
「もしかしたらもう手遅れかもしれません。すべて向こうの作戦通りに事が動いています。このままでは、議会も乗り出しますよ。あなたたちに対して」
ジェノサイドは議会が抱いている、彼らに対する思いを知らない。その長が塩谷だからだ。
だが、現実はそうはいかない。
どういうことか、とジェノサイドが尋ねる。
「議会としてはあなたたちジェノサイドは脅威そのものです。考えてみてください。あなたたちは不満を持った深部の人間をかき集め、連合を自称した反乱軍を結成して議会へと殴り込んだ変革者そのものです。それが成功してしまった今、彼らの思いは容易に想像つくと思いませんか?」
「で、でもそのトップは塩谷だろ!?あいつに限ってそんなこと……」
「えぇ。だからこそですよ。今頃彼も苦しんでいますよ。議会からやれ、と言われ、ゼロットからも圧力を受けているのですから。そのストレスも相当なものだと思います」
ジェノサイドは余計に頭を抱える。事態は思った以上に大変な事になっていることに。
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