二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/11/28 13:33
名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走カーチェイス>>536-

行間
>>518,>>525,>>535

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.400 )
日時: 2019/10/18 17:13
名前: ガオケレナ (ID: ix3k25.E)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「あ〜、やっぱりそうだ!こっちだこっちの道!ごめんなさいヨシキさん〜。僕、田舎者のせいで池袋とか慣れていなくて……」

「大丈夫です。お互い様ですよ」

目的地までの道順を思い出した吉岡は、記憶を頼りに見た事のある建物や地形を辿って前へと進む。
所々隠れた名店を思わせるような珍しい飲食店が目に付くも、2人はそれを華麗にスルーしていった。

「え〜っと……ヨシキさんでしたっけ?あの〜……ヨシキさんはサンシャインシティとか行ったことはありますか?」

突然、吉岡は後ろへ振り向いて彼に尋ねてみた。
何故か、先へは進もうとしない。

「え、えぇ。来た事は……ありますよ。それが何か?」

「実は〜……申し訳ない話また道をド忘れしてしまいまして……ここ曲がったら近道だということまでは覚えているんだけれど、そこから先がどうしても思い出せないんです〜……。なので、」

「道案内してくれってことですか?いいですよ」

と、ヨシキはペコペコと頭を下げる吉岡を横目に一歩前へ進んだ。

壁で遮られていたその先の道が見える。
数歩歩いて体の向きを変えたとき、異変は起こった。

「ん?」

ヨシキの目の前には、暗い石の壁が立っているのみだった。
つまりは、行き止まりだろうか。
ヨシキは少し気になりながらも、後ろに控えている吉岡へ質問をする。

「あの、本当に此処で合っているんでしょうか?行き止まりしか……」

そこで声が詰まった。

背後には誰も居なかったからだ。

「えっ?」

何が起きたのか再び壁のある方へ視界を戻したその直後、体が文字通り硬直してしまう。

「……うわっっ!!!?」

その原因は驚きにあった。
自分の目と鼻の先に鋭い眼をしたゾロアークが立っていたのだから。
まるで初見でビックリ系ホラーのFlashを見てしまった感覚。

身体から魂が抜けたような、一切の命令を効かないその一瞬をゾロアークは見逃さなかった。

ヨシキの意識と判断能力が戻った時には既にゾロアークに羽交い締めされたその時だった。

何が起きているのか分からない。
どうしてこうなった。

尚も頭が混乱している中、向かいから喜びでも表すかのような歓声が聞こえた。

「やったあぁぁ!!上手くいったかも!!」

「うおお!吉岡のヤツやるじゃねぇか!」

目の前には見知らぬ男女が2人。
1人はポケモンとは無縁そうな女子と、もう1人はこれまたポケモンなぞ知らんと言っていそうな、むしろスポーツでもやっていそうな男子。

そして、その後ろからは本物の詐欺師が現れる。

「まさか……騙したのか?俺を」

「こうでもしなきゃ……ダメかな〜と思って」

「ふっざけんなよ……」

力を緩んでくれないゾロアークのせいで身動きの取れないヨシキは本来であればガックリと項垂れたような表情を見せた。

「待てよ……?」

ヨシキの中で"嫌な予感"が駆け巡る。
何故自分を騙したのか。
ここに至るまで自分はどんな話をしたのかを。

「まさかお前ら……ジェノサイドのグルか……?言動の怪しい奴を片っ端から探し出して見つけ出してこうやって1人ひとり不穏分子を処理していくってか!?」

人間としてのジェノサイドは消えても威厳まではすぐには消えない。
昔の言論統制を行う国家のように、不満を言う国民を人づてに捕まえる。
そのやり口がヨシキの頭の中で駆け巡った。

と、なるとここまでする目的は何なのだろうか。
ジェノサイドがまだ存在しているという意味なのか。

しかし。

「半分正解だが半分間違いだ」

いつの日か、聴いた声をその耳が捉える。
かつて対峙した人物の声だ。

「ヨシキって聞いてまさかとは思ったが……お前だったとはなぁ?」

「じぇっ……ジェノサイド……!?」

拘束されたヨシキの眼前。
3人の高校生の影を縫って現れるは、ついこの前まで最強だった人間、ジェノサイド。
姿格好や雰囲気が大分違ってはいたが、本人に変わりはなかった。

「お前の仕業かっ!!」

「"元"シザーハンズのヨシキ……。いつの日か戦ったよなぁ?去年だったよな。お前も懲りねぇよな」

「何が目的だ!!お前はもう深部にはいらない存在……またお前はあの世界を滅茶苦茶にする気かよ!」

「じぇんじぇん違う。さっきよか正解から離れたぞー?。……俺はな、追っていただけだ」

高野の言葉にヨシキの体がぴくりと動く。
それを察知したゾロアークは、持ち手を変えるとヨシキをアスファルトに叩きつけた。

ご丁寧に顔と両手を縛り、全体重を乗せて殊更に身動きを封じる。

「ぐっ……がっ……」

「正直に答えろ。お前、両国で何をした」

「ぐっ……いだっ……痛てぇ……」

「お前に協力した人間は誰だ」

ヨシキは小さく呻くだけで何も喋らない。いや、喋れなかった。
それを半分分かった上で高野は続ける。

「お前の背後に……誰が居る?」

それでもヨシキは答えない。
目の前の憎い人間の存在に加え、自分の純粋な心を弄んで誑かした事に。それも、自分より歳下の高校生を使われた事に。

「答えろっ!!テメェの犯行動機と……仲間を言えっ!!」

高野はついに激昴した。
わずかに視認できたヨシキの服の襟を掴むと胸倉を掴む感覚で引っ張る。
しかし、それでも彼は答えない。

そろそろ相沢にゾロアークに対して命令しろとアイコンタクトを送ろうと真後ろへ目をやった。

その刹那。

高野の手から、ヨシキが離れた。
いや、無理矢理剥がされたといった方が正しかった。

反射的に高野はヨシキへ目をやる。
すると、何かしらの攻撃を受けたヨシキが後方、つまり壁のある方角へと体が飛び、その攻撃を察知した相沢のゾロアークはそれを受ける前に真上へと飛んだ。

彼が見たのはその瞬間の光景。

攻撃の正体は鋭い針のようだった。
目で確認できないスピードで打たれたそれは、ヨシキの掌と体へ突き刺さる。

(まさか……口封じ……!?)

高野にとって最悪の結末が頭を過ぎった。
せめて攻撃の主が誰なのか見ておきたい。
高野は改めて相沢や吉岡の立っている方へ首を動かす。

だが。

「そこまでだ。説明は私がしようか」

「お前は……?」

常に余裕を浮かべているかのようなあの声。
当然ながら聞き覚えがあった。

片平光曜。

そこには、紛れもなくスラッとしたスーツを着た議会の人間が、常にデッドラインの鍵と共に行動していた男が、自身のポケモンであるスピアーを連れて確かにそこに、彼の前に立っていた。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.401 )
日時: 2019/10/20 16:00
名前: ガオケレナ (ID: ovjUY/sA)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


その存在が、その登場が高野洋平にとってはあまり歓迎出来ないものだった。

むしろ、今1番会いたくない人間である。
そんな男が、何故今この場所で元ジェノサイドと元シザーハンズが接触していたのかを分かっているのか、理解が追い付かない。

「私が説明する。君たち全員私と一緒に来てくれ」

「いや、それは出来ねぇ」

否定したのは高野だった。

「お前について行くのだけはダメだ……。よりにもよって、デッドラインの鍵とずっと居るような奴なんか……」

「それも含めてすべて話すと言っているんだ」

片平は聞くのも無駄だと察してか彼の言葉を途中で遮る。

「コイツをどうにかしなきゃならねぇ……」

高野も同様に意思を変えまいと別の話題、ヨシキの元へ歩こうとした。

「"それ"は、もう少ししたら私の部下が回収にやってくる。"それ"と"それに関する疑念"には心配しなくていい」

「だとしても……っっ、お前だけは信用ならねぇ!」

「それは私も同じ事だ。だが……」

「そうよー?レン。ここは彼を……私たちを信じて」

何よりも耳を疑ったのは片平の言葉を遮ってまで聴こえてきた女の声。
飽きるほど聞き慣れた声だ。

そして、自分にとってとても密接な関係の人でしか呼ばない"レン"というあだ名。

「お前……メイ、なのか……?」

「向こうに車を用意しているわ。さぁ、行きましょう?」

ーーー

ご丁寧にも、8人乗りの車が駅のロータリーに用意されていた。
車のロゴを見るに、それは日産の車らしかった。

「乗ってくれ。話は道中でする。それから……君たち」

と、片平は3人の高校生に対して呼びかける。
これから一体何が起きるのかと若干怯えているようにも見えた。

「君たちも来てくれ。あまり関係ない話ではあるのかもしれないが……まぁ折角だ」

高野と片平、ポケモン部の3人に加え、メイを含むFirst Civilizationの人間が2人、そして車の運転手を合わせて8人。丁度であった。

疑いを向ける眼差しを向けながら乗っていく高野に片平は、

「大丈夫。乗った瞬間に爆発などしないさ」

と言うと、偶然聴いていた最後列に座っていた相沢と東堂が吹き出す。

助手席に片平が乗り、全員が乗った事を確認すると運転手へ合図を送ると車は走り出した。
2人の受け答えを聞く限り恐らく上司と部下のような関係だと高野は勝手に想像する。

何の変哲もないミニバンは都会の喧騒に揉まれながら徐々に徐々に、ゆっくりと摩天楼を抜けていく。

「これから何処へ向かうんだ?」

「別に変わった所じゃない。大会会場さ」

片平の答えに、高野は腑に落ちないようだった。
それをミラーに反射した彼の顔を見て片平は少しにやけながら言う。

「電車の方が楽だろって?普通はそうだろうね。まぁ、こうした方が議員としての立場を考えると1番楽なんだ。……それに、ここなら聞かれると困る会話も出来る」

「イマイチ分からないんだよな。何で池袋から辺鄙へんぴな会場まで行くのかが」

「それは君の勝手だろう?私たちの拠点が東京西部なだけで君が今日あそこに居ただけの話さ」

「んで?話ってなんだ?」

このままでは話は先に進まない。
高野は心の中では不満が残ったまま次へと移す。

「そうだな……どこから話せばいいかなぁ……」

片平は胸ポケットを探りながらそう言った。
中には煙草が入っているのだろう。
だが、状況が状況なのでポケットを弄ぶだけに留めた。

「あの場所に君が居た事を教えてくれたのは彼女たちだ」

片平は虚空を見つめた。
後ろの3人には理解できないことだったが、高野はすぐに意味を察した。
真隣にメイが居るからだ。

「そうだよ……何でお前がアイツと共に居たんだよ……」

「あはは〜……ごめん最後の最後まで隠してて。実は〜……」

「思えばお前は最っ初からおかしかったよなぁ?突然俺たちの前に現れたりいついかなる時も俺について来ていたり。やっぱりお前はアレか?自分の組織を潰した存在が憎くて復讐しようと機を伺ってた訳か?」

「違うわ、レン。その話は少し繋がってて……」

「言い訳は聞きたくねぇ。"はい"か"いいえ"だけで答えろ」

「静かにするんだ元ジェノサイド。此処に君の命を狙う輩は居ない。ならば急かされる必要も無い。子供じゃないんだ。黙って私の話を聴くだけでいい」

「続けろ」

小馬鹿にされた事で高野は小さく舌打ちした。

「彼女と彼女の仲間……名前は確か……」

「オサムっす」

「そうか、オサム君だ。とりあえず、元First Civilizationの2人が例の事故を独自に調査してくれていてね?」

「事故?……まさか香流のアレか」

「そうだ。今だから言えるが、私もアレには正直驚いた。こんなにも早い段階で来るなんてね。だが、君のいる手前じゃあ真実はまだ話せなかった。そこで、君に近しい人を用意して、出来るだけ君が深部の世界に入り込まないように独自に調べてくれていたんだが……」

「あなたも同様に事件を追っていた。しかも、犯人をネット上で捕まえてオフ会までするっていうとても回りくどい方法でね」

「そんな事が……いや、お前なら有り得そうだが……ん?ちょっと待てお前ら。今……」

「あなたは片平光曜を敵だと思っていたでしょ?でも、実は逆よ。どちらかと言うと仲間の部類」

「本人の前で言われても、私も少し照れるのだがな……」

いい歳したオッサンの照れるところなどに興味が沸かない高野は、意外には思うも顔には出さない。
ジェノサイドがそう簡単に本音を出してはならないからだ。

「あの事故にも……一応の意味はあったんだ」

「最強を倒した存在を自分が倒して最強になるってヤツだろ?深部ではよくある事だ」

「いや、違う。そんな単純なものじゃない。それに、最強という部分に拘わればそれは君の周囲でのみよくある事だ」

確かに、単純なものであればそもそも協力者など不要なものだ。
高野はそれに薄々気付いてはいたものの、詳細が分からない以上軽視していた。

「アレにはまた別の意味が含まれていた……。それは、大会にも関係する事なんだ」

「大会?それに香流がどう関係するってんだよ」

「あの大会を、開催する理由……目的があるって事さ」

目的。
高野は以前、メイと話したことを朧気ながらも思い出す。
表向きの目的とは違うものがあると。

「あの大会は確か……深部での人材確保ってところだろ?」

隣で聞いたメイはふふっと笑った。
自分との思い出を覚えていたことに。

「それも理由のひとつだが……。まだあるんだ。真の目的というのが」

「真の目的?」

「君だ」

「?」

「"元"ジェノサイドの高野洋平と彼を倒した香流慎司。この2人を深部の世界に招き入れる事。この2つの大きな戦力を、深部が、我々議会の管理下に置くこと。これに尽きるのさ」

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.402 )
日時: 2019/10/22 14:32
名前: ガオケレナ (ID: 13XN7dsw)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「次に例の事故の協力者についてだが……」

高野には分からなかった。
自分は恐らくなにかとんでもない事を聞いたはずなのだが、こちらには目もくれずに淡々と説明をこの男は続けようとしている。

「ちょっ、ちょっと待てよ!俺と香流が……?深部に必要?何を言っているのか分からねぇよ」

「黙って聞いていろと言ったはずだぞ?確かに混乱するかもしれないが今の君は話を聞くとするならば静かにしているべきだ」

「……ッ!」

「次に、協力者についてだが……その前に君たちの頭の中に入れておきたい補足情報がある。デッドラインの鍵についてだ」

膝の上に肘を乗せ、両手を口元に持っていって丸くなった姿勢の高野の体がピクリと起き上がった。

一瞬、隣のメイの顔を見つめたが何故か大きな変化はみられないようだった。

「デッドラインの鍵……彼女は」

「本名湯浅ちえみ。神奈川県の高校に通うポケモンとは無縁の女子高生。だろ?」

「へぇ……」

感心するかのような声を発したのは喋っていたのを遮られた片平だった。
口元をわずかに緩ませて、今までは全員に対してだったものを高野に限定させて話を続ける。

「どこでその情報を知ったんだい?今まさにそれら全部を言おうと思っていたのに」

「仲間が教えてくれたのさ。まだ強固なネットワークが備わっている」

「あぁ。ジェノサイドね」

"その手があったか"ばりにメイが意外に満ちた、面白い機械を見つけたかのような無邪気そうな声が伝わった。
彼女の抱く興味とか好奇心にはどこか裏がありそうで近付けたくない。そう思っていた高野は自分の発言が裏目に出てしまったことを後悔する。

「ジェノサイドは今でも強力だと言うことは今は置いといて……。彼女は確かにポケモンとは無縁だった。ゆえに、私たち議会との絡みなどあるはずもなかった。では、何故彼女はデッドラインの鍵となり得たか?……分かるか?」

「分からねぇな。わざわざ普通の子を選ぶ理由がな……。それともあれか?話題性のためか?」

「間違っちゃいない。だが、こう考えてみるとどうだ?仮に君が組織ジェノサイドを追っていた人間だとしよう。そのジェノサイドが滅び、無くなった。と思っていたらジェノサイドを継ぐなどと言っている組織が誕生した。名前はデッドライン。君なら多分追うだろ?」

「理由が理由ならな。そうなると……」

気付いた高野はそこで自分の言葉を止める。

「デッドラインの鍵などと呼ばれた少女がのこのこ歩いていたら……君もついて来るだろう?」

「デッドラインに関する情報が何もない環境で……そう呼ばれた人が居たら絶対にその罠に嵌る……っ!まさか……アイツは……湯浅は、何の根拠も無い噂話に乗せられて"デッドラインの鍵"なんて地位に乗せられたと言うのか!?」

想像するのも恐ろしかった。
ジェノサイドも深部もおろか、ポケモンそのものになんの関わりのない少女が、濡れ衣に近い形で今の立場が作られたとしたら。

高野は背筋が凍る思いだった。
だが、その凍えは瞬時にして溶けてゆく。

「いや、違う。彼女にデマや噂話が先行してあのポジションに着いたかと言えば違う。もっと別の理由だ」

「その理由は!?」

「君のその発言にヒントがあったが……まぁいい。デッドラインを追う者を捕らえる言わば餌としての要因だ。それに気付いた1人の議員が居た」

「エサだと!?だったら尚更……」

「そうだ。尚更ちえみである必要性がない。では、何故ちえみが選ばれたか?これも、偶然だったんだ」

「偶然?どんな?」

「1人の議員がたまたま見掛けたのがちえみだった。言い換えるぞ。つまりは、"誰でもよかった"。そして、"外見が目に付いた。即ち好みだったから"。これだけだ」

「じゃあ何だよ……」

高野は声が震えていた。
そこに、香流の話を後回しにされた事は最早頭に無かった。

「その、議員の勝手とワガママにのせいで1人の女子高生が深部の世界に堕とされたって言うのかよ!!」

「そうだ。それが事実だ。そして、その事実を知っていながら私は止められなかった」

「その議員とは……誰かしら?」

「倉敷敦也。私と同期にして同じ事務所で働いている男だ」

高野は顔を若干俯かせる。
それを振り返って片平は直に見つめると、

「それだけじゃない。話を戻すぞ。こいつは……こいつが深部の人間に肩入れし、君の友達を狙った。つまりは、例の事故の犯人にして協力者がこの議員だ」

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.403 )
日時: 2019/10/27 11:49
名前: ガオケレナ (ID: hajkbKEb)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


池袋を出たのは昼下がりであったが、街の景色を望もうと外へ出たら空は群青色に染まりつつあった時刻であった。

「時間が過ぎるのもあっという間だな……」

高野は7人の人間が同じ屋根の下にいるにも関わらず狭さを感じない建物から出ると、外で煙草を吸っている片平の背中が見えたのでまずはそちらへ向かった。

「あのー……ありがとな……」

若干照れ臭そうに高野は片平の隣まで歩いた。
それを聞いた片平は小さく「うん?」と言ったあと少しばかり考える。
感謝された意味を。

「俺はずっと勘違いしていた。アンタを敵だと思っていたよ」

「……まぁ議会の人間は疑われ敵視されがデフォルトだからねぇ。ましてや君だ。そう思われても仕方がない」

「あの場所から俺だけじゃなく、アイツらまで此処に連れて来てくれたのは助ける為……保護する為だろ?」

あの後、車で向かった先は大会会場。
その敷地内にして会場付近にある、参加者が大会期間中生活するための住宅地……所謂"選手村"と呼ばれていた区画にある片平の家だった。
3人の高校生も休みながら他愛も無い雑談を交わしている。

「背後に倉敷がいる以上、何されるか分からないからね。議会で渦巻いている派閥争いも君たちを利用する形で表立つこともある。それを防いだのさ」

「派閥争い……。今でもあるのか?」

「あるさ。上院議長と下院議長……即ち塩谷議長の確執もそうだし、倉敷の奴も何かやりたそうにしているからね。あの事故に関しては何がしたかったのか、本人に聞かなければ分からないが。あっ、そうだ。君たちや君の友達はしばらく安全だよ。……私が居る内は」

「……アンタは、そんなに凄いのか……?」

高野の脳裏によぎったのは、嘗ての権力者、杉山だった。
力もあり、深部組織を簡単に使いこなす議員と聞くと彼の影がチラついてしまう。

「いや、凄くもないし強くもない。ただ、私は塩谷議長サイドだから言い換えれば議長が君たちについているって事さ。よっぽど過激で馬鹿な人間じゃない限り心配事は起こさないだろう」

片平の吐き出した煙草の白い煙が揺らめく。
高野はそれに嫌悪感は抱くも顔には出さなかった。

「問題は、これから君はどうするのかって事だ。大会の意義もそうだし、倉敷は健在。深部の人間ではなくなった君がどこまで動くかだ」

「俺は……とにかく倉敷って奴と会う。あいつと話さない限りあんな事故を起こした理由が分からないからな。それとも……それ以上を望むとかか?」

「それ以上……とは?」

「あんたの話を聞く限り……倉敷って奴が邪魔者らしい」

「一応同期の議員なんだがね」

「でも現に、そいつは勝手に動いている」

「議員同士の揉め事に、また君のような子たちを使うと言うのか……それもどうかと私は思うけどねぇ」

「この大会に俺や香流が関わってくるのだとしたら、それについて考えるのは後だ。ほっておくのは正直怖いが、今の俺にはどうも出来ないしな。ならば、やれる事をやるのみだ」

「倉敷が香流君を狙っていたとしても、傷を負わせた理由はよく分からないからねぇ。まぁ、私は倉敷と実行犯との間のコミュニケーション不足か、実行犯が目的とはズレた行動を起こしたって気もするけれど」

会場の建っている方向から話し声が聞こえ始めた。
練習か特訓から帰ってきた大会参加者が選手村へと戻ってきた道中らしく、その会話の内容もポケモンバトルに関するものだった。

「さて。そろそろ戻るか。希望があるならば、今日1日部屋を貸すが……どうする?」

「俺はいい。代わりにあの3人を保護してくれ。俺のせいで巻き込まれたようなものだ」

「その通りにしよう」

煙草を吸い終えた片平は、吸殻を携帯灰皿の中へとしまうと、大きな家に向かって歩きだそうとしたが、高野がついてこない。
不思議に思い振り返ると、彼は街の景色を眺めていた。

「大学から眺めてても思ったけど、綺麗だよなこの街」

「だろう?私はこの街が好きなんだ。もし良かったら一度散歩してみるといい。綺麗に整備された街路樹から差してくる木漏れ日を浴びながら通りを歩くだけでも気分が良くなる」

「そうしてみる」

街から目を離し、ふと鳴り出したスマホを見てみるとLINEが来ていた。
サークルのグループLINEからで、今日のバーベキューに関する書き込みだったり、写真が貼られたアルバムなどが続けざまに投稿されていく。

高野はそれを開き、何枚かの写真を見て小さく微笑むとスマホをポケットにしまった。

高野も帰る前にひとまず片平の家に寄ろうと彼について行く。
3人の高校生に感謝と別れを告げるために。

大会再開まで残り3日。
大きな荷物を降ろしたような達成感と解放感に包まれながら、大きな1日が過ぎていく。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.404 )
日時: 2019/11/04 10:27
名前: ガオケレナ (ID: joMfcOas)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


突然目を覚ました。

自分以外の誰もが居ない静かな部屋で、高野洋平は大切な用事を思い出したかのようにハッとして目を開けた。

首を右に動かし、スマホを叩く。
時刻は朝の6時になろうとしている時だった。

「なんで……急に起きるんだろう……」

時間を確認した時日付もその目に映った。
8月4日。
インターバル最終日である。
本来ならば二度寝する時間であるにも関わらず、どういうわけか、布団から起き上がり、朝食としてパンを軽く焼く。
その間に着替えを済ませ、焼きあがったトーストを頬張ると外へと繰り出した。

スマホの時間割アプリと大学のサイトを交互にチェックする。
月曜と火曜の講義は既に終了していた。
つまり、本来であれば今日は大学は休みのようなものである。

「昨日の記憶が曖昧だが……多分ずっと寝ていたんだと思う……」

一昨日。
すべての用事を済ませ、片平の家で今日までお世話になった相沢と吉岡と東堂に別れを告げて真っ直ぐ大学の近くにある自分の家に帰ったはずだったが、その日はそのまま寝たはずだ。
翌日は起きるやいなや1日中ゲームをしていた。その証拠に、今でもゲームを開けば手持ちのポケモンはファイアローとタマゴが5個という厳選真っ只中の状況にあるからだ。

理想は、月曜はずっとバトルタワーで特訓をと思っていたがそれは結局叶わなかった。
なので、折角たまたま早起きした今、そこへ向かおうという訳なのである。

時間は6時40分を過ぎた頃だった。
いくら何でも早すぎると思い直した高野は、いつかの片平の言葉がふと蘇る。

ーーー

『もし良かったら一度散歩してみるといい。綺麗に整備された街路樹から差してくる木漏れ日を浴びながら通りを歩くだけでも気分が良くなる』

ーーー

「散歩……ねぇ」

自分の家と大学周辺はほぼ毎日歩いて来たせいで景色も見飽きた。
しかし、大会会場周辺はまだ回れずにいる。
もしかしたら新たな発見があるかもしれないと、淡い期待が実り始めた高野は、普段の聖蹟桜ヶ丘駅から一直線に向かう
道のりで行くのをやめ、会場の真裏から、つまり、駅を通らない道のりで行こうと決め、全く知らなければ慣れもしない世界に足を踏み始めた。

ーーー

言うほどではなかった。
やはり山道は山道だと、無駄に疲れた気がした高野は期待外れだと言いたそうな顔をしながら山の面影の残るドームシティを登り続けていた。

「相変わらず無駄に疲れるけれど……発見はゼロじゃなかったな」

高野はこれまで歩いて来た道を振り返る。

道路の舗装、整備が追いついておらず、土や砂利が剥き出しになっていた。
これは、普段利用する表の道路とは真逆の扱いだ。

「人目につかないから適当にしているな……?確かに利用者は少なそうだけれど……」

そしてもう1つ。

駅から連なる表の道路は、地面を均したり柵を設けたりしてある程度の危険性は排除しているはずなのだが、こちらに至ってはそんなものはひとつもない。
街のある平地が望めるものの、一歩踏み出せば真っ逆さまだ。
安全面の保障がない。

「まるで登山道じゃねぇか……」

特に真下はかつての緑地の名残があるせいで木々が生い茂っている。
落下しても生きるか死ぬかギリギリのレベルだろうがだからといって落ちたいとは思わないだろう。

最終的に「しっかり仕事しろ議会」という感想を得た高野は、じきに会場に到達するという地点で2つほど異変に気付いた。

1つは、朝靄。

「珍しいな……こんな時期にこんな所で……」

支障をきたすレベルではないが、周囲を見る上では鬱陶しく思うレベル。
薄い靄が高野のいる丘周辺に渦巻いていた。

そして、もう1つは、

「お前……は……?」

何故この時間帯なのか。
何故此処なのか。
ここで何をしているのか。

全くもって理解が及ばないことだが、確かにそこに居た。

「何で、ここにいるんだよ……?」

その声に、佇んでいた女性が反応した。
それは、高野もよく知る人だった。

「湯浅……ちえみ……?」

それまでデッドラインの鍵と呼ばれていた女性は、どうしてその名を知っているんだばりに顔を硬直させ、瞳を大きくさせてこちらに振り向き、そして互いにしばしの間固まった。


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