二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.175 )
- 日時: 2019/01/19 16:26
- 名前: ガオケレナ (ID: gfxukZ12)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
もうどうすればいいのか分からない。と、言うのは組織のトップとしては無責任すぎるだろう。
様々な思いを乗せながら如何にして現状を打破できるか考えてみるものの、やはり無理なものは無理だった。
(すべてが……上手く行き過ぎている……今から足掻いても無駄って訳かよ)
もういっその事全面的に戦う姿勢を見せて返り討ちにしようかとも思った程だ。
自分たちの基地の居場所が分かる以上、迫り来る敵をすべて倒してしまえばいい。
そんな風に投げやりになっているときだ。
何故か自分が大学に来ていることに気が付いた。
今の時刻は夜の7時。大山を降りて帰ろうとしたときについ無意識にここまで来てしまったようだ。
今のこの事を誰かに相談したい。皆に会いたい。話がしたい。
そんな思いが無意識の内に取り込まれ、ここまで来てしまったのだ。
「……何やってんだかなー俺。時間も時間だし寄り道がてら行くか」
結局高野は本来は行かない予定だったサークルへと足を向ける。
相変わらず集まっているのはいつものメンバーだった。
どうせ何もしないのにいつも来るとはどんだけ暇なんだと言いたくもなるがそれは彼にも言える。
「よう」
力がこもっていない声を上げながら教室の扉を開ける。
今日は来ないはずだと知らされていた彼らは何だか少し驚いている様子だ。
「れ、レン君?今日来ないんじゃなかったっけ?」
3DSを持ちながら意外そうに彼を見ているのは、高野の先輩である佐野剛だ。
彼が居ると周りの人もそれにつられるのはムードメーカー故の宿命か。
「そうなんですけど、近くまで来てたんで来ちゃいました。暇ですし」
「嘘ばっか」
一瞬、高野の体が固まる。いきなり聞こえたその不気味な声の主が誰だかすぐには分からなかったが、まるで何かを知っていそうな雰囲気を感じ取る。
「……えっ?」
「気にしなくていいよレン君。とりあえず座りなよ」
佐野にそう言われたので、彼は大人しく近くの椅子に座ることにした。
そこで高野はいつもとは違う、おかしな雰囲気をやっと察した。
「なんか……静かですね。みんないるのに。どうかしたんすか!?」
と、半ば無理をして笑顔を見せるも効果はない。と、言うのも彼が来た途端静かになったのだから。
「あのね、レン君。非常に言いにくいんだけど……」
勝負がついたのか佐野がゲーム機を閉じて高野の方向へと椅子を向ける。
対戦相手であったであろう松本先輩が軽くガッツポーズしているのがチラッと見えた。
「レン君。また最近何かやらかしたようだね?それも、ちょっとシャレにならないくらいの」
ゾッとした。何故だか知らないが一般人である彼らに知られている。
シャレにならない、というのは恐らく杉山の一件のことだ。事情を知っているのなら何故こうもダイレクトに言うのだろうか。
「知っているんですか?俺達のこっちの動きも」
「今日石井ちゃんから聞いたんだ。何でも、大暴れしたんだって?」
「っ!?」
鬼の形相で石井に振り向き、睨む。彼女はやや怯えながら、「ごめん……ミナミちゃんから聞いたんだ……」とか言っている。
あいつの仕業かあの野郎と何度も頭の中で唱える。怒りと悲しみで感情のコントロールがきかない。
だが、このままでは彼らは勘違いしたままだ。ただでさえ無差別に狙うテロリストと勘違いされているのに、議員とかいう偉そうな人を殺しましただなんて思われたらたまったものではない。
「少し事情があるんです。深部の世界には議会があって……」
「それも全部聞いたよ。ここにいる人は皆事情を知ってるから大丈夫」
全然大丈夫ではないのだが、説明の手間が省けた。それでも気持ちの整理はつかないが。
「それでレン君。今それのせいで凄いのと戦うんだって?」
ゼロットの事についてもお見通しだ。一体あいつはどこまで話したのか気になる。
「えぇ。やりますよ。もうアイツら全員ぶち殺します」
「それならいいんだけどさ、どうも石井ちゃんが言うには、僕らにも被害が及びそうとかなんとか……」
つまりは深部の争いに一般人までもが巻き込まれることについて不安を感じているのだろう。本心としては相談したかった高野にとっては「頼むから関わりたくない」と冷たく突き放されているように感じ取られて一気に気持ちが冷めていく。
もっとも、普通の人間からしたらそう考えるのが普通であり、高野もそれを理解しているが。
「別に。俺を誰だと思ってるんすか?まー、一般人には分かりにくいでしょうが、俺はこう見えて深部で一番の実力と影響力持ってるんすよ。そんな、どこからか湧いてきた奴らに遅れを取るわけがない」
自分でも無理して言っている事はわかっていた。もしかしたら表情に表れたかもしれない。
それでも、高野は彼らのために最後まで無理をする。
傷ついてほしくない。ただ、その一心で。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.176 )
- 日時: 2019/01/19 16:34
- 名前: ガオケレナ (ID: gfxukZ12)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
気まずいままサークルでの時間は過ぎてゆき、相変わらず先輩たちは金稼ぎのために途中でサークルを抜ける。
気まずくなった彼らは我慢出来ず、解散時間よりもやや早く教室から撤退することになった。
このまま皆各自解散してお別れ。そうなるはずだった。
だが、高野としてはそれだけは避けたい。誰でもいい。せめて相談だけでもしたかった。
「な、なぁ香流。ちょっといいか」
自分の手が友達である香流慎司の腕を掴んでいた。
彼は彼でびっくりしている。
「な、なに?」
「なぁお前時間あるだろ。少し付き合ってほしいんだけどさ」
その言葉に、香流だけでなく二年全員が反応した。多分皆ろくな事を考えていない。
「別にいいけど……何すんの?」
「少し話がしたい。この近くに公園あるからちょっとそっちに行こうぜ」
と言って香流を半分無理矢理な形でポケモンに乗せ、彼のお気に入りの場所まで案内される。
その公園は、この地域にしては珍しく、赤いレンガで作られた西洋風の橋が建っていた。
その下には農業用の水が流れており、その水源は同じく農業用に作られた溜池だ。
ここはジェノサイドが初めてメガストーンを手に入れ、また初めてレイジやミナミと出会った土地、長池公園だ。
大学の最寄りの駅から一駅越えたところにある、比較的近い場所だ。
「どうしたの?急に」
12月に水場のあるところは少し冷える。香流は時折肩を震わせた。
「ごめんな、急に。どうしても誰かに話したくて」
そこには先程まで強気だったジェノサイドの面影はなかった。あるのは友達としての高野洋平である。
「俺……どうしたらいいのか分かんなくてさ……」
頭を抱えながらその場にへたりこむ。地面が石なので冷たい。
「え?えっと、どのように?」
事情が全く分かっていないようだ。当然と言えば当然だが。
高野は決心したかのようなため息を一度つくと、友人・高野として正直に事情を話すことを決めた。すべて理解されるとは思っていないが。
香流からしたら珍しい光景だった事だろう。
悪事を働き深部でトップの人間で常に恐ろしい言動を放ちつつも、どんな強敵とも渡り歩いた彼が、今ここで弱音を吐いているのだから。
「戦いの優先権は全部向こうが握っている。俺も負けじと色々情報を集めようとしているけれど必ずどこかで止まるんだ……。何故止まるのかそれを調べても、行き着くのは向こうが持つ膨大なネットワークの広さと、以前戦った奴の名前が挙がるのみ……要するにもう詰んじまった。このままじゃ仲間も居場所も全部なくなっちまうよ」
「こ、こっちは深部じゃないからよく分からないけどさ……」
香流も香流で焦っているようだ。いきなり機密情報を喋られたら誰だって驚く。
「まずレンはどうしたいの?そこから考えてみたら?」
「……どうするって、どういう事だよ」
「んー、言葉にしにくいんだけどさ」
彼が日常世界でよく言う言い訳みたいなものだ。それに反して的確である事がよくあるのがお約束だ。
「レンはどうしたいの?戦うの?逃げるの?まずはそこからじゃないかな」
「お前は俺に何を伝えたいのさ」
香流は何だが戸惑っている様子だ。あまり言いたくないことでもあるのだろうか、それに気づいた高野は構わず言えと言ってみる。
「あのね、ぶっちゃけて言うと……自分やサークルの皆からするとさ、レンのやっている事の意味が分からないんだよ。今までは普通の大学の友達とかだったのに、レンには裏があると言うか……自分たちからしたら深部の事が意味分からなすぎるんだ」
「つまりどういうことだ?深部から手を引けって言いたいのかよ」
「うん。レンには深部をやめてほしい。皆そう思っているんだ」
高野からしたら衝撃の事実を突き付けられたようなものだった。
と言うのも、高野もこの現況を考えると何度も思った。
自分がもしも深部とは関係なく、普通の人間だったらと。
もしも普通の人間だったら、どれほどまでにこの大学生活が美しかったかと。
だが。
「無理だよ」
ジェノサイドとしてトップに立っているからこそ言える。
自分が深部から抜けるのは不可能だと。
「俺はもう深部で一番の人間になっちまった。自分がいるだけで世界が二つに分かれてしまうような存在になってしまった以上、俺が今更メンバーも名誉も世界をも捨てて普通の生活をするなんざもう無理な話なんだよ……」
この世界は底なし沼だと高野はよく考える。
入るのは簡単。だが、一度足を入れると、もがけばもがくほどどんどん深くへと沈んでしまう。
二度と戻ることはできないのだ。
ジェノサイドとしての本音を彼に見せてよかったのか、高野は悩んだ。根本的な解決へは向かわなかった。
でも、それでもいい。話を聞いてくれたから、悩みを吐き出せたから。
「ありがとう、香流」
ジェノサイドは立ち上がる。自分の中で決心はついた。
「話聞いてくれてありがとう。お陰で楽になったよ」
このテンションが続けば、この気持ちに揺らぎが無ければいける。
打倒ゼロットを今、この胸に誓う。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.177 )
- 日時: 2019/01/19 16:55
- 名前: ガオケレナ (ID: gfxukZ12)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
寄り道をしなければ7時には基地に着いていただろう。
だが、実際に着いたのは9時過ぎだった。
リビングの扉を開けた時、待ってましたとばかりにショウヤが飛び上がる。
「遅いですよリーダー!何をしてたんですか、ただでさえ不安なこの時期にフラフラ出歩くのはやめて欲しいと言ったのはリーダーだったじゃないですか……」
「悪い、ちょっと寄り道してたんだ。それでさ……」
「ゼロットについてなんですけどー」
ジェノサイドとショウヤの言葉が被る。
お互い「あっ、」と言ってしばらく譲り合うが結局はショウヤから話すことになった。
「ゼロットについてなんですけど、申し訳ありせん。彼らの居場所や規模まではどんなに調べても分かりませんでした……。組織としての目的なんですが、これについては分かりました。興味深いことに、無いのです」
「は?」
言っている意味が分からなかった。唐突に「無い」と言っているので「興味深いことに無い」、つまり「興味が無い」のか、「分かったのに無い」、つまり「分からない」なのか。とにかく目の前の男の日本語がおかしいのかと思い、どんなに思考を巡らせても答えは出ない。
「あ、いえいえ、そうではなくてですね……彼らの目的が文字通り無いのです」
「だったら初めからそう言えよ……」
深く考えた時間が無駄だった。それだけでなく単純に考えられなかった自分が馬鹿みたいだ。
だが、目的が無いとはどういうことか。
本来、深部の組織には目的をそれぞれ持っている。その目的の達成のために組織は設立されるからだ。
言い換えれば、目的が無ければ深部組織として認められない。つまり設立できないのだ。
それが無いということ、それは。
「非公認の組織の線は有り得ませんね。議会の見解としては非公認の組織=排除の対象ですので。真っ先に消される的ですよ。なので考えられるとしたら……議会の命令で作られた組織かと……」
「そんな事があるのかよ!?だとしたら新しい組織って事か?それはない。俺の記憶が正しければ、ゼロットとかいう組織の名前だけなら俺達の組織設立間もない時にチラッとだが見たことあるぞ」
「だとするならば……」
ジェノサイドの記憶はアテにならない。まともに人の顔も覚えられないのに、四年も前の事を覚えてるとは考えにくいからだ。だからといって無視はできないが。
「恐らくゼロットは、議会が何の目的も持たせないで、テストとして作った組織が前身の可能性がありますね。その名残として今でも目的がないのかも」
「でもそれは何か問題なのか?大したことはないと思うんだが」
「いえ、目的が無いのなら、どんなに悪どい事でも彼等にとっては正当化できてしまうんですよ。今回の私達に対する宣戦布告も、彼等だからこそ出来たことなのではないでしょうか」
確証は無いにも関わらず、彼が言うと何だが説得力があるように思える。
自分がどんなに苦労して集めようとしても集められなかったゼロットの情報を手に入れたからか。
「次に、ゼロットという名称ですが、これはイエス・キリストが生きていた時代に古代パレスチナで実在していたユダヤ教の宗教的な集団、"熱心党"の別称のようです。いかなる時にも暴力を持って制しようとした、今で言う過激派の連中ですね。何故この名前を付けたのか定かではありませんが、これまでの行動を見ていくと、名前の通り活動しているとも読み取ることができます」
「別に名前はどうでもいいだろ……参考にはなるかもしれないけどよ」
とにかく、イメージだがどんな奴等なのかは何となくだが想像はできた。
あとは基地の居場所を特定出来ればいい話なのだが……。
「報告は以上です。今後も調査を続けていきます」
「分かった、俺も出来ることはやってみるよ」
と、いうことで振り向いた先に、ミナミがいた。
そう言えば、彼女には説教をしたかったはずだ。
「あっ、そーだ思い出した、ミナミ!!」
つかつかと足音をわざと鳴らしていそうな歩き方をして彼女達へと近づく。
「お前あいつらに俺の事話しやがっただろ、なんで話すんだよお前ー」
「ご、ごめん……思った以上に強引だったから……」
石井の事だろう。そうだろうとは思った。こういう時あの女はしつこくなるからだ。餌食にされたか……と思いつつも決して同情はしない。
「それでもお前は話しすぎだ!あいつらほぼ全員もうこの事すべてを知ってるぞ!もしこれからあいつらに変な影響が出たらどうすんだよ」
「で、でもそう簡単に何か起きるわけじゃ……」
「違うんだよそれが」
ミナミは彼らの事を知らなさすぎた。それに加えて話しすぎた。この事が間違いであったとやっと気づいたであろうか。
だが、ピンと来ない様子だ。
「あいつらは本当にアホなんだよ……いや、勉強とかはできるから馬鹿ではないんだけどアホなんだよ。何ていうか……あいつらは自分達が若いと思っているからタイミングさえあればどんな無茶でもするんだよ。若さゆえの~とかに一番あやかっているのがあいつらなんだよ!一般の人ならアホだろと思うことをあいつらは平気でやって退ける。最悪深部の戦いにも……」
言いかけたところでジェノサイドも言うのを止める。
実際にそれを想像したからか、それともあまりにもスケールが大きすぎるからか。
「とにかく、」
怒りも自然と収まったのでミナミに背を向けつつジェノサイドは続ける。
「今後俺らの事を話すのは禁止!あいつらとは、どんなに仲が良くても、仲が良いからこそ喋るなよ。これだけは絶対守れよ」
後半わざとらしく恐怖感を煽るようにトーンを下げて威嚇してみたが効果はあっただろうか。
確認をする間もなく部屋へと戻ったのでそれは分からない。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.178 )
- 日時: 2019/01/19 16:54
- 名前: ガオケレナ (ID: gfxukZ12)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
あれからよく眠れない日々が続いた。何故自分がここまで寝れないのか、何が原因なのかそれが分からない。いや、もしかしたら本当は分かっているのに分からないフリをしているのか。後者な気がしてくる。
夜に寝ようとしてもうまく寝れずに、結局明るくなってから寝てしまうので授業に遅れる日々が続く。
今日もそんな日だった。
戦うことを誓ったあの日から一週間以上経っている。にも関わらず、何ら変わったことはなかった。
日常生活にも支障はなし、深部での生活も、相変わらずゼロットに関する情報が見つからない事に一々腹を立てる事以外は何も起きなかった。
12月15日月曜日。
起きた時間が授業開始時刻だったので早速大学に行くことは諦める。
その次の授業には間に合わせる気でいた。
「ジェノサイド、お前学校は?」
今リビングに誰がいるか確認したら、チラホラ顔見知りのある構成員がいたものの、声をかけてきたのは見覚えのない男だった。
恐らく深部連合解散後にジェノサイドに流れてきた他の組織出身の者だろう。
鬱陶しそうにジェノサイドは言う。
「……あるよ、もう始まってるけどな」
「寝坊か。最近多いよな、お前」
他の組織からやってきた人は自分に対する言葉遣いが何となく違うので、それが顔の覚えるのが苦手なジェノサイドにとっての見分け方だった。
最初からジェノサイドにいる人間は自分に尊敬を込めてか敬語混じりの明るい話し方をする。
まるで、距離感がほとんど無い先輩と後輩のような関係だ。
「少し休んだら行くわ」
「オイオイ、そんなんでいいのかよお前。ゼロットに宣戦布告されてからもう二週間、俺達が逆に宣戦布告したのも先週の事だろ?お前が居ない時に攻撃でも食らったらどうすんだよ」
「別に心配ねぇよ。大学からここまで近いし。全員が逃げられるまでの時間稼ぎがちゃんと出来ればそれでいい」
「天下のジェノサイドが……逃げんのかよ」
どうやらこの男は戦略的撤退という言葉を知らないらしい。
深部で言う戦争とは、組織間の争いである。その勝敗の決め方は相手方の人間の殲滅または相手方の首長による降伏若しくはその撃破で決まる。
戦争は何も一日で決まるものではない。降伏宣言をしないで逃げている間も戦争期間としてカウントされる。
そしてその期間内に一ヶ月間、お互いに接触が無い状況が続けば深部公式に戦争が終戦とされ、今後一切の衝突を禁止とされる。
ジェノサイドは戦う意思を見せたものの、自分達が有利な立場に置かれるまでは逃げの戦いをすることを考えていた。
「勝手に言ってろ。俺もお前も死にたくない思いは一緒だろーが」
水を一杯だけ飲むとその場から離れた。やる気が起きないが大学へと行くことにする。
ーーー
「月曜か……めんどくさい」
図書館の椅子に座って時間稼ぎを目論んでみる高野だが、思ってる以上につまらない。
折角図書館にいるのだから雑誌でも何か眺めようかと席を移動する。
時間のためか、人はあまり居なかった。昼過ぎの授業中ともなると帰る人が出てくる為だ。
(どうすっかな……これから)
ポケモンの情報のためにアニメ関連の雑誌を手に取ってみる。アニメや流行が知らないため、読んでも意味が分からないので普段は絶対に読まない物だ。
(新しいメガストーンも探さなきゃだし、ゲームも進めないとだな。ったく、やる事成す事面倒事ばかりで嫌になる)
どんどんページを捲っていくも、目当ての物は見当たらない。
不満気になってその雑誌をやや乱暴に元あった場所に置くと、図書館を出た。
時間を見ると、自分が今サボっている授業がそろそろ終わる頃だった。今から次の授業の教室に行ってしまえば何の問題もなくなる。
教室内はやはり、と言うか当然にも誰もいなかった。
高野は一人ガラガラの教室にも関わらず後ろの方へ座る。
終了時間を告げるチャイムが鳴り出した頃から続々と生徒が入ってきて、各々座り始めると少しずつ教室が埋められていく。
空きはいくつかあるものの、時期とこの時間を考えると人は多いほうだった。それはつまり、楽な授業を意味する。
授業開始のチャイムが鳴るも、教授はまだ来ない。いつもこの授業は遅れて始まる事を思い出す。
10分後に教授が来るも、まだ寝足りない高野はこの時間も寝てしまった。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.179 )
- 日時: 2019/01/19 17:03
- 名前: ガオケレナ (ID: gfxukZ12)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
本来であれば今日のスケジュールだと授業は三つあった。
昼前に一つと、昼食後に一つ、夕方に一つだ。
高野は最初のコマを休んだために今日受けた授業は二つ。それも、寝ずにしっかりと受けた授業は最後のコマだけだった。
空はもう暗くなりつつあった。
冬になると暗くなるのも早い。もうそんな風に思わせる時期である事を悟る。
「やっぱりこの時期になると寒いな……たまには電車とバスで帰るのもいいかもな」
他の生徒に混じってバスの停留所まで久々に歩く。相変わらず授業終了間際というのもあり、かなり混んでいたが、さほど問題になる程でもない。
今日もこれで終わり。そんな事を考えるとただ虚しくなるだけだった。
こんな生活でいいのかと。ただただ授業受けるだけの毎日。それも、それらはまともに受けていないものばかりだ。
ただそれだけで一日を過ごしていて、果たしてそれが良いと言えるのだろうか。
「んな訳ねぇだろ」
自分でもそう思っている。それほどまでにこの日常は普通でいてつまらない。
だが。
それは自分が深部にいて分かった事だ。つまらない日常ほど過ごしやすくてかけがけのないものは他にはない。
それを言い換えたのが平穏、だろうか。少なくとも高野はそう考えていた。
(かと言って……深部を辞めるほどでもねぇな。それこそこの世界、この人生は酷くつまらなくなっちまう)
香流はああは言っていたが気に留める程のものでもなかった。なのに、繰り返し自分の中であの時のやり取りが蘇るのは何故だろうか。
適当にバスに揺られ、電車での比較的空いている一番奥の車両にて立っては座り、その結果いつもの倍以上に基地に着くまでに時間がかかった。
どちらにせよ完璧に楽な移動手段がないと言うことか。基地の場所で失敗したか、車というまた別の選択肢を取るかのどちらかを考えれば済みそうな話ではあるが。
「たっだいまー」
力の抜けたほぼ棒読みに近いリーダーの声を聴いて、リビングにいたハヤテが駆けてくる。
「今日は大丈夫でしたか!?」
「見りゃ分かるだろ。何ともねーよ」
無駄に心配する彼をよそに、ジェノサイドは呆れながら自室へと向かう。
部屋に入り、適当に鞄を放り投げてベッドで横になった瞬間、ノックも無しにミナミが入って来た。
「おかえり」
「あぁ」
今から寝たい、鬱陶しいという本音を隠したまま何も言葉を交わそうとせず瞼を閉じる。
「あ、あのさ……ウチね」
ミナミが言おうとした時だった。
ジェノサイドはふとした事で目を覚ます。
ミナミも同様に振り返った事だろう。
上の階のリビングから、クラシックを彷彿とさせる音楽が聴こえてきたからだ。
「なに?これ……」
音源の下の階にいるジェノサイド達にもよく聴こえた。特にミナミは此処では初めて聴くので珍しい光景ではある。
「これは此処の電話が鳴ってる音だな……」
だが珍しいのはただ鳴るだけではない。
この基地に電話が掛かる事が珍しいのだ。
本来だったらスマホを持たない構成員の為や組織全員への連絡として使う物であるが、今このタイミングで鳴る事がよく分からない。
音源のリビングへと行くと全員が電話器の近くで固まっていて、全員がそれを眺めている。
「おい、どーした。皆でそこに集まりやがって……誰かしら出ろよ」
と言いつつ、ジェノサイドが人混みを割って受話器を取った。
念の為にスピーカーモードにして全員に聞こえるようにしてみる。
「もしもし?」
すると。
『もしもしぃ〜?ジェノサイドの基地で合っているかなぁ?』
やや高い男の声が聴こえた。
そこにいた全員の様子を伺うと、その全員が目を丸くしている。
誰もその反応ということに気づくことは一つ。誰も知らない声の主であるということ。
それを察知したジェノサイドは、近くに置いてあるメモ用紙とペンを取って、
「黙ってきいてて!!」と、大きく書いてみせる。
「誰だテメェは。知らない声だぞ?」
『へぇ?最近増えた人間一人ひとりの声も全部聞き慣れているとは、さすがだねぇ〜。天下のジェノサイドさんよ』
相変わらずテンション高めの調子のいい声がするのみだ。誰だか知らない分余計に腹が立つ。
『それが気に食わねぇんだよ』
人の恐怖を煽る声だ。それだけで一気に様変わりする。
『テメェが天下ってのが全っ然気に食わねぇんだよ!!』
受話器から、スピーカーから怒号が聴こえる。
「り、リーダー……これ誰でしょうか?」
と、か弱そうな構成員がそんな事を聞いてくるも、「知るか」とジェスチャーしてみる。
『あー、何?自己紹介?そういや電話でのマナーだったな?んー、じゃあゼロットって言えばいいかな?ヘヘッ……』
恐らく、そこに居た全員が固まった事だろう。
遠くの方で何かしらの機材を落としたようなガチャンとした音が微かに聴こえた。
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