二次創作小説(新・総合)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.50 )
- 日時: 2018/12/09 14:22
- 名前: ガオケレナ (ID: Bz8EXaRz)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
ーーーーー
「初めまして。高野洋平と言います。名前は至って普通ですが……」
高野は初めてサークルに顔を出した日、教室の教卓の前に立って自己紹介を始めた。
その時既に香流と岡田は自己紹介を済ませていたので自然と自分の番になっていたのだ。
「僕は皆から『レン』って呼ばれています。……何故名前と関係ないこのあだ名で呼ばれているかというと……」
言いながら黒板に白いチョークで四角を四つ書く。
「中学の時のテストの問題で、『EUの正式名称を漢字四文字で答えなさい』という問題があり、それを『EUを設立した人物の名前を書きなさい』と勘違いした僕はこう書いてしまいました」
そして、白い四角の中が「レーーン」という四文字で埋まる。
「これをテスト返却の際に先生から暴露されて僕はこれ以降『レン』と呼ばれるようになりました」
ーーーーー
突然、過去の出来事が蘇った。
うっすらと、だがはっきりと記憶に残った内容だった。
ーーーーー
「ねぇ、ごめん。隣いいかな?」
一人で講義を受けていた高野は突然鞄などの荷物を置いた座席に座りたがっていた男に声を掛けられた。
この日は大学生活が始まって以来最初の一週間。
つまり、高野が初めて受ける講義での出来事だった。
この日は多くの受講生で教室が埋まっている。
理由は単純で、楽に単位が取れる講義を求める生徒達が確認の為に受けていたからだ。
最初の一回目の講義は出席に含まれない。
この決まりも相まって。
「……」
無言で高野は自身の荷物を下げ、床に落とす。
彼は一言「ありがとう」と言うと、隣に座った。
「君、もしかして一年生?学部は?」
「……経済」
よく喋る人だ、と高野は面倒臭そうに聞かれた言葉だけに適当に返事する。
つもりだった。
「えっ、マジ!?奇遇だね!俺も経済なんだ!」
その人は嬉しそうにすると手を握ってきた。握手のつもりだったようだ。
「俺、岡田翔って言うんだ。君は?」
ーーーーー
再び過去の記憶が蘇った。
それは確か高野が岡田と初めて会った日の事だった。
(何で……今更こんな事思い出すんだろうな……)
不思議に思った高野だったが、直後にその理由を知る。
狭い山道の真ん中でジェノサイドは倒れていたからだ。
山道を自分と仲間六人で歩いてかなりの時間が経った。
これまでにどれほどの黒い衝撃波を飛ばし、樹木を、大地を、人を吹き飛ばしたことだろう。
だが、限界だった。
息も絶え絶えで、走っている者など一人もいなかった。ジェノサイドもその内の一人だった。
唯一やや離れた場所で未だに元気に走り回っているゾロアークがいた。
後ろに跳ねた衝撃波で吹き飛ばされたせいで彼は倒れていた。
ここを敵に攻撃されなかった理由は周囲に敵など存在しなかったからだ。
「大丈夫……ですか?リーダー……」
喘ぎながら、時折咳を交えてハヤテが心配そうに声をかけてきた。彼の長はすぐ隣にいる。
「大丈夫だ」
瞳すら動かすことなく彼は返答する。それほどゴールというものを望んでいるんだろう。
ジェノサイドはゆっくりと起き上がる。
「少し疲れたけど、問題はねぇ。早く頂上に行くぞ」
「その心配はありません」
不意に、彼とハヤテの後ろを歩いていた構成員が割り込む。
そして、こちらに振り向いた。
「登山道はここまでです。頂上はすくそこです。着きましたよ……!」
よく見ると、前方の道が光で強まっていたせいでよく見えないでいる。
それはつまり、光の中心点に近い地点にいるということ。即ち、ゴールだ。
「着いた……!?」
その事実に、顔から疲れが消えた。
それは全員が共通だった。
全員が一斉に走り出した直後、突然目の前に一つの影が現れる。
それが人影だと瞬時に判断したジェノサイドは。
「ゾロアーク!!」
自らのポケモンの名を呼び、命令を飛ばす。
いや、実際には命令を下すまでも無かった。
自分と同じ性格、思考をしている獣は名前を呼ばれた事が命令代わりだった。
すぐに、腕を中心に赤黒い衝撃が出現する。
それを前にいる影を目掛けて空間もろとも吹き飛ばす。
しかし。
「おいおい、やめてくれよなぁ」
軽いノリと共に、その特殊技は影に当たると思ったら、こちらに飛び跳ねるかのように戻ってきた。
「!?」
そこにいた全員が命の危機を感じ、各々散らばる形で衝撃から逃げる。
幸い、ジェノサイドを含め全員はその場に留まれた。
後ろへ飛んだ衝撃がガラガラとまるで土砂崩れのような恐ろしい音を立てながら下っていく。
ジェノサイドが避ける瞬間、その服に衝撃が掠めたが、感触がいつもと違う事に意識が気付いた。
(何だ……?普段の、こちらから打ち込んだ'ナイトバースト'とは何かが違う……?まさか威力が!?)
若干の違和感から、その異変に気づく。
そして、技が跳ね返るその効果と言えば。
「てめぇ……'ミラーコート'か」
ど真ん中に立ち、彼らの障害となる影に向かって言い放つ。
対してその影は一度鼻で笑うと、辺りを見回したあと、ジェノサイドを睨んだ。
「困るなぁ。此処は此処で神聖な場所なんだ。何も知らない人間が無闇やたらに壊すなよ」
「そこをどけ。俺はバルバロッサに用がある」
影の声を無視してジリジリと近づく。よく見ると外見が見えてきた。
前髪が尖っており、首元には十字架のアクセサリーが付いている。日本人には珍しい、褐色肌だ。
勝手すぎるイメージだが、そいつがかなりチャラそうな男に見える。
「通さないよ。俺が何故このタイミングでここに来たのか、お前に分かるか?」
その男も後ろに下がり、両腕を真横に広げる。
「父さんはこれから大事な儀式を始めるんだ。例え騙されたお前とて通すわけにはいかない」
「だから、これからその裏切り者をブン殴る為にそこへ行くんだよ!」
走って無理矢理突破しようとしたら、木陰から一匹のポケモンが飛び出す。
'ミラーコート'の犯人であったグレイシアだった。
突飛すぎるタイミングでついジェノサイドはポケモンの前で足を止める。
グレイシアがこちらに向かって口を開き、冷気を発しようとする。
それを察知したゾロアークがジェノサイドの真横から'かえんほうしゃ'を放つ。
お互いの技が炸裂した。
白煙が舞い、その隙にジェノサイドは元の立ち位置へと戻る。
「チッ、最後の最後で足止めかよ」
舌打ちをしながら睨むと、彼の後ろから声と、背を押す感触がした。
「えっ」
振り向こうとした瞬間、ジェノサイドは瞬間移動をする。
グレイシアを携えた男の後ろ。つまり、頂上一歩手前まで。
「リーダー、先に行ってください。こいつは僕達が相手します」
「待て、ハヤテ!お前たち全員でここに留まる気か!」
ハヤテ達のいる方向に向くと、ハヤテがフーディンを出していた。'テレポート'の仕掛けが分かった。
「えぇ。リーダーをこんなところでこんな奴の為に時間を割くなんて勿体無さすぎます。ここは僕達に任せて先に……!」
褐色の男がこちらに振り向いた。グレイシアもこちらに振り向き、今にも攻撃しようとしている。
ハヤテから見て敵が背を向けている。まさに隙だらけだ。
構成員の一人が手持ちのボールからグラエナが飛び出す。
ハヤテのフーディンと共にグレイシアと、そのトレーナーに飛び付く。
「なっ、てめぇら……!?」
「そういうことだよ」
ハヤテが男を睨み返した。
「リーダーを逃がして僕達だけでここに居座る。それはこの大人数で確実に君を突破するためだよ」
5対1なんて卑怯の極みだが、彼らに常識は通用しない。ましてや、組織間の争いなんてこんなものだ。
褐色の男の味方はこれまでジェノサイドが物理的に撃破したため、一人で迎えるのも仕方ないと言えば仕方なかったがあまりにもそれは無謀だったのだ。
「くそっ、てめぇ、ジェノサイド!!」
褐色の男が振り向くと、止めるべき男の影が無かった。
そこにいるのは、その男に忠誠を誓い、彼に従う仲間のみだった。
彼らに突破されるのも、最早時間の問題だった。
ーーーーー
「見つけた……」
広い荒野と化した頂上で、一人の男をその目が捉える。
金の空が余計眩しく見えた。
遠く離れた所に社があった。あれが本殿なのだろうか。その真上と、バルバロッサの真上に広がる形で光が集合していた。
大学の窓から見えた「光の中心点」がそれだった。
「今まで散々やってくれたよなぁ。その借りを返しに来たぜ」
言うと。
どこかの民族衣装らしき派手な服装に身を包み、長く白い髭を生やした老人は笑った目を見せながらこちらへと振り向く。
彼のちょうど後ろに、写し鏡が置かれていた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.51 )
- 日時: 2018/12/09 18:52
- 名前: ガオケレナ (ID: Bz8EXaRz)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「予想よりも早かったな。お前さんがここまで来る事が」
その眼差しは優しかった。
敵意が一切見られないその姿勢が逆に怪しく感じる程だ。
ジェノサイドはそれらすべてを無視して本題へ入る。
「これは何だ」
バルバロッサが軽く笑った。
「全く……少しくらい立ち話をしてもいいじゃないか」
「答えろ。これは何だ」
最早何を言っても通用しないことを悟ると、バルバロッサは写し鏡を拾い上げてそれを見せつける。
「見ての通り、儀式さ。神の降臨のね」
言っている事の意味が分からなかった。会話に乗らなかったせいか、ふざけた言動なのかもしれない。
「はぁ?お前長い間高い所に居すぎたせいで感覚どころか思考も麻痺してんのか?そういうふざけたノリいいから真剣に答えろ。これは……」
「だから真剣に答えているじゃないか。神の降臨と」
ジェノサイドの思考が止まった。
どれだけ挑発しても降臨とか神とか訳の分からない言葉を並べるだけだ。
もしかしたら服装も相まってそっち系の人なのかもしれない。
だが。
「この空を見て、何かおかしいと思っただろう?これは私がポケモンの力を使って無理矢理いじくったものだ。何を意味するかお前には分かるか?……分からないだろう。これは私が私の心の中で勝手に描いている“天国のイメージ”だからな」
やっぱり言っている事の意味が分からない。新興宗教の教祖サマに憧れているクチだと思ったがその言葉に違和感を覚える。
ポケモンの力で無理矢理?
何故?
そして、この世の常識を破るほどの力を持つポケモンなどいるのだろうか?
「風が痛いと思わないか?これは、私が外敵を排除するために発動したものだよ。この空と同じく無理矢理いじくっている」
その言葉にハッとした。そう言えば、歩いている途中にハヤテがその事に気づいていたはずだ。
「そして」
バルバロッサが口を開いた直後だった。
砂利だらけの荒れた大地が、一瞬にして色とりどりの花で覆い尽くされた。
「!?」
「これも、私が思い浮かんでいる天国のイメージだ。空と風と同じくポケモンの力を借りているよ」
本物の花だった。
足で軽く踏むと太い茎の感触が伝わる。
物によっては香りも発していた。
「何なんだよ……これ」
目の前の物が信じられなかった。
まるで日頃誰かに見せていた幻影に自らが惑わされているような感覚に逆に陥ってしまう。
「何度言わせるんだね。これが神の力だよ」
「違う!そんなんじゃねぇ!!こんなふざけた力を使えるポケモンが居る訳ねぇだろ!」
ジェノサイドは叫んだ。焦りと混乱でまともな思考ができない今、叫べばどうにかなるんじゃないかと甘すぎる考えに至っている。
だが。
バルバロッサの言葉がそんな幻想を破壊していく。
「いや、いるさ。ちゃんとね」
持っている写し鏡を掲げた。光の影と重なって神秘的なオーラを発しているかのように見えた。
「何ならゲームを起動して全国図鑑を見ればいい。そこまでせずとも、ゲームでこの道具はどのように使うのか思い出してみるといい」
そんな事を言われ、ある事に気づく。
そう言えば。
今バルバロッサが持っている写し鏡と、ゲーム上の同名のアイテムの外見が全く同じだということに。
と、言うことはその効果はただ1つ。
「まさか……伝説のポケモンの……!?」
「やっと話に追い付いてきたな。そう。その通りさ。こいつは伝説のポケモンのトルネロス、ボルトロス、ランドロスの三体のポケモンの姿を変えるための道具だ。そして、そのポケモンを利用してこの空間を作り上げた」
益々言っていることが信じられない。
これが本当ならばポケモンに持たせるアイテム以外の道具が、この世界でも使えることになってしまう。
果たしてこの世界は今どうなっているのか。それすらも分からなくなってきてしまう。
それでも。
「お前は……」
痛い風を全身に浴びていながらも、臆することなく老人を睨む。
「ここまでして何をしたい」
「私か?何度も言うように神の降臨の……」
「違う。それじゃない。そこから先だ」
バルバロッサは低く笑った。
この状況を理解してきている事につい笑みが溢れてしまったのだ。
「お前は、神と言う存在を信じるか?」
「お前なんかと一緒にするな」
質問に答えずに舌打ちする彼に対し、またもや笑みが出る。彼といると常に笑えて面白い。
「そうだよな。お前さんは昔からそうだったもんなぁ。それが悪い事ではないがね」
ジェノサイドは無視した。これ以上話してもどんどん話題が逸れて質問そのものが無かったことにされてしまう。
黙っていると、向こうから切り出して来た。
「私はね、この世界が嫌いなんだ。どんなに心優しい人間として生きていても、愚かな人間に利用されるだけだ。むしろそんな人間が多すぎるせいでまともな行動をしていても間違っている事にされてしまう。遂には立場すら危うくなる。こんな世界が私は嫌いなんだ」
自身の昔話でもしているのだろうか。
中々ピンと来ないジェノサイドは真剣に聴くことはせずにただ聞こえてくる音だけを聞いている感覚に近かった。
「生きるために必要な立場を無くし、助けてくれると思っていた人に裏切られ、金も失った。生きる術も無くしいつ死んでもおかしくない地獄のような日々を過ごしていた時。その時、私はすべて救われたんだ」
持っていた写し鏡を元々置いてあった石の台座に置く。
また、彼の説明に戻る。
「あの素晴らしい世界、神秘的で神の元ならすべてが許される自由。私がこれまで生きた世界とは全く違う、光に溢れていた素晴らしい世界。私はそんな所で生きていたかった。もっと、素晴らしい世界で生きていたかった。だが、それは叶わない。何故か分かるか?神の存在を今の人々が、科学が証明出来ていないからだ。神は存在する。神が織り成す世界も存在する。それを私が証明する。今回、神の世界、私はこれを"神世界"と呼んでいるが、この神世界を作るため、この世界から上書きして作り変える事を決めた。そのために私は三体の伝説のポケモンを操り、その為の写し鏡を用意させ、その為に私はジェノサイド。お前の下に居座っていた」
要するに、彼がジェノサイドと過ごした四年間とは。
「長かった……本当に長かった。ここまで来るのに何年の月日が流れた事だろうか。ポケモンが実体化し、データと連動する世界になっただけでもう四年も過ぎた。つまり、お前たちジェノサイドの結成からもう四年も経っていたと言うことだ。時間というものは本当に短く早い。いや、人類が短くしているのだろうが……」
バルバロッサは一呼吸置いた。
時折見せる笑顔に一体何の意味があるのだろうか。
真実を聞いても尚ジェノサイドはすべてを汲み取れずにいる。
「そして今日。私はこの世界を終わらせ、ポケモンと神だけが存在する理想郷を作り上げるのだ!この夢のために絶対に邪魔などさせんぞ!」
その言葉を合図に、写し鏡が勝手に、何の力を加えていないにも関わらず、動き出した。
浮遊したその鏡は光の集合点の上に留まる。
そして、光を浴びた鏡の中から伝説のポケモン、ランドロスがその姿を現した。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.52 )
- 日時: 2018/12/10 16:21
- 名前: ガオケレナ (ID: 40Xm5sOX)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
ジェノサイドには許せない事が一つあった。
それは、バルバロッサが味方のフリして四年もの間共に行動していた事でも、自身の野望の為本気で神を信じ、世界を破壊しようとする事でもない。
ただ、裏切られた。その事実だけが何より許せなかった。
「俺はテメェの事情も夢も世界観にも何も興味はねぇけどよぉ……」
少しずつ、彼に近づく。
「テメェは、俺を裏切ったのか?お前のその下らなくブッ飛んだ野望の為、俺を利用したのか」
「逆におかしいと思わなかったのか」
ジェノサイドの怒りをよそに、バルバロッサは不敵な笑みを浮かべる。
「あ?何がだ」
「都合さ。何もかも都合が良すぎると思わなかったのか。例えばだな」
バルバロッサが空を眺める。真上に霊獣の姿となったランドロスがいる。
「例えば、何故写し鏡を持つ人間がお前の通う大学にいたんだ、とか」
まさか、とジェノサイドは思った。
確かに今まで都合が良すぎた事柄が多くあったと思う。写し鏡が何故か大学の職員が持っており、すんなり渡されたり、そこからその大学が自分を狙った戦場になったりなど。
そして、ジェノサイドが此処に来れた一番の理由が写し鏡の所有者だった者の発言がきっかけだったり。
「すべて私が考えた事だ。大学に相応の身分を持つ知り合いを置かせ、その男に写し鏡を持たせた。その人から別の教員にその鏡を持たせ、お前が来たらすぐに渡せと言わせ、私の頼み通りお前はジェノサイドとしてあの大学に侵入し、見事に奪ってきてくれた。すべてが思い通りで気持ち悪いくらいだよ」
すべて、そしてやっと確信に至った。
今までの出来事すべてが繋がっていた。その事に今更気づけた事が恥ずかしいくらいだ。
恐らく、ジェノサイドに鏡を奪わせたのには理由があるのだろう。
それは、テロリストとして悪名高いジェノサイドに鏡を奪わせることでわざわざ自分から出向く手間が省けたこと。
そして、もう一つは。
「標的のすり替え……と言ったところかな。本来であれば写し鏡を私が持っている訳だから一番狙われるのは私のはずなんだ。……だが、そうはいかなかった。何故だか分かるか?情報を意図的に錯綜させてお前さんが狙われるよう仕組んだのさ。'写し鏡は未だ神東大学にある'、'写し鏡はジェノサイドが持っている'……などとな。それが議会の情報を元に作り出した包囲網の正体さ」
怒りに満ちてくる。行き過ぎな感情のせいで自分で自分を抑えられない。
裏切られた、利用されたということが一番、何より許せなかった。
「バァルバロッサァァァーー!!!!」
叫び、ボールを一つ握りながら彼の元へ駆けてゆく。
本気の殺意を覚えたのは、ジェノサイドとしては久々だった。
「ぶっ潰せ、ファイアロー!!」
走りながら、ジェノサイドはボールを投げる。
中からは、ファイアローが出てきた。
「ブッ殺す……俺を裏切ったことを……利用したことも……その目的がそんな下らない理由で……その為だけに世界を、すべてを奪おうとするテメェを、俺は絶対許すことなんてできねぇ」
戦いが、始まろうとしていた。
世界と、写し鏡を巡った、最後の戦いが。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.53 )
- 日時: 2018/12/10 16:27
- 名前: ガオケレナ (ID: 40Xm5sOX)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
ジェノサイドは、自分が誰かに利用されるのを嫌う。それは、高野洋平の名前で活動していても変わらなかった。
たとえその時に気づいていなくとも、「とにかく利用される」のが嫌なので、常に周りを疑いながら行動をする。
ジェノサイドは、他人を信用することができない人間だ。
だからこそ、いざ自分を利用する人間が現れたら徹底的に嫌い、叩き潰す。彼が敵という存在を極端に嫌うのはこれが原因だった。
だから、今。
目の前にいる老人が嫌いで嫌いでしょうがない。
「伝説のポケモンなんざ知ったこっちゃねぇぇんだよぉぉぉ!!!!」
ファイアローが'ブレイブバード'を放ちながらランドロスに接近する。特性'はやてのつばさ'により、相手の攻撃を許すことなく安全にこの技を決めることができる。
だが。
「神に戦いを挑むと言うのか……。無駄だ、ジェノサイド」
ランドロスが光の塊……輪とでも言うのだろうか。とにかく、その輪の中に入ると一瞬で姿を変えて再び姿を現した。
いや、正確にはポケモンを変えて、だ。
「!?」
光の輪の正体は空中にいきなり漂いだした写し鏡だった。
ランドロスが鏡に吸い込まれたと思ったら、次の瞬間にはボルトロスに変化している。
'ブレイブバード'はボルトロスに直撃した。だが、大したダメージは与えられていないようだ。煙が少し舞うだけで、表情の変化すらない。
技を決めようとしたその瞬間、ポケモンが入れ替わる。
その意味がジェノサイドには分からなかった。
(なんだ、今のは。交換でいいのか……?それにしては、タイミングがおかしすぎる。まるで、こちらの技が分かった瞬間に入れ替わるなんて……)
そんな風に思慮を巡らす最中に、
「入れ替えの類いとでも思っただろう?実はちょっと違う」
向こう側で、バルバロッサが冷笑していた。
「仮にも、お前さんは今神と戦おうとしているんだ。完全なる存在を前に、死角があるはずがないだろう?……本当に愚かな事だ」
「じゃあなんだよ。こちらの動き次第でお前とそのポケモンは都合良く動けるってか?」
「まぁ、そんな感じだ」
はっきりと答えなかったため、ジェノサイドはあえてそれからは何も言わず、ただ睨むだけだった。
だが、それが本当なら非常に厄介だ。常に相手が有利な局面を作っていることになるのだから。
あれは、交代とは少し違う性質のものだった。
仮にこちらが神なるポケモンより速かったとしても、恐らく解析され、あらゆるデータを揃えた写し鏡が事前に自分のポケモンの行動パターンを予測、回避してしまう。のだろう。
なので、通常の交代よりも速いスピードでポケモンを入れ替えることができ、非常に安全だ。
以上の事を踏まえると、今ジェノサイドの前に立ちはだかる神と呼ばれしポケモンは、非常に極端な表現の仕方だが、絶対に勝てる動きができる、ということなのだ。
果たして、ジェノサイドが今これを理解できても、勝つことはできるのだろうか。
それは誰にも分からないことだった。
神を除いて。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.54 )
- 日時: 2018/12/10 16:35
- 名前: ガオケレナ (ID: 40Xm5sOX)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「'10まんボルト'」
静かな声で、冷静に狙いを定めたボルトロスにバルバロッサは指示を出す。
ファイアローは'ブレイブバード'を撃った反動で隙を見せていた。狙うとしたら今だろう。
ランドロスと同じく霊獣と化したボルトロスの、'10まんボルト'が反応に遅れたファイアローに直撃する。
辺りに閃光と電撃が走った。
「くそっ、逃げ遅れたか……ファイアロー!」
ジェノサイドは叫ぶが、意味も無く喉を潰すだけだった。
ファイアローは、真っ逆さまに地上へと堕ちる。
一撃だった。
一撃で、ジェノサイドは貴重な手持ち1体を失った。
苛立ちが募る。戦闘不能となったファイアローをボールへと戻したが、その顔は憤りに満ちていた。
「そんな顔で自分のポケモンを見るのか。お前さんには労いというものを知らないのかね」
バルバロッサの声が、怒りに変換されてしまう声が余計に頭に響く。それが嫌でたまらない。
「俺がムカついてんのはファイアローに対してじゃねぇよ……」
次のポケモンのボールをゆっくりポケットから取り出し、強く握り締める。
「俺は、俺とお前にムカついてんだよ!!」
真上に、投げた。
ストレスをぶち撒けたかったのか、いつもよりもボールが遠くへ飛ぶ。
ボールからポケモンが出る前に、ジェノサイドは叫んだ。
「次はお前だ、ゲッコウガ!!」
金の空に照らされ、細身のシルエットが浮かぶ。
「なるほど、ゲッコウガか」
バルバロッサは目を大きく開いてその姿を目に焼き付ける。
そして、一度フッと笑う。
「面白い」
ゲッコウガは着地する前に、主の命令を聞き、その通りに動く。
「'ハイドロポンプ'!」
口から大量の、砲弾と化した水が一直線に放射される。
ボルトロスに直撃するその時だった。
「'10まんボルト'」
電撃と水が交差する。
水は電撃により散った。
ゲッコウガとジェノサイドは予め読んでいたのか、水が散った瞬間に避ける。
「'れいとうビーム'!」
今度は氷の光線が放たれる。
だが、これもまた'10まんボルト'により相殺されてしまう。
爆発が起き、視界が奪われる。
それは、神とて例外でなかった。
(奴は……ジェノサイドは何を考えている?真正面から打っても無駄打ちに終わるだけだ……)
白い煙に覆われた空間を眺めながら、バルバロッサは考える。
だが、すぐに嫌な予感が全身を駆け巡った。
そう言えば。
今まで四年間。彼はどんな戦法で敵を葬ってきたか?
「奴は、'イリュージョン'を駆使し……今見ているこの世界のどれが本物か幻影か分からなくする……すべてを化かすのが奴の戦い方だったはず……と、言うことは!」
煙が晴れかかる時にうっすらと見えたのは、ボルトロスの眼前に迫っているゲッコウガだった。
「やはりお前は……!?」
ジェノサイドの作戦。それは、とりあえずどんな方法でもいい。
ボルトロスに近付くことさえ出来れば良かったのだ。
「ゲッコウガ、'くさむすび'!」
勝ち誇りの笑みを見せつつ、ゲッコウガに命令する。
すると瞬時に、ボルトロスの真下の大地から、太いツルが出現した。
そのツルはボルトロスを包み、飛行中のバランスを崩す。
ボルトロスは、勢いよく体を大地に叩きつけられた。
一瞬でも動けなくなった今がチャンス。
「行け!ゲッコウガ!」
「とにかく奴より先に放つんだボルトロス!'めざめるパワー'だ!」
動けないものの、遠距離を狙う特殊攻撃を放つなら大した事ではない。
それに対し、再び距離を離してゲッコウガは'れいとうビーム'を撃つ。
お互いの技が放たれた。
交差はするが互いの技が直撃、相殺することは無かった。
それぞれ'れいとうビーム'は直線を、'めざめるパワー'は放物線を描いてそれぞれ迫る。
爆音を響かせ、両者の技が、お互いに命中する。
勝敗の結果は、砂煙により掻き消されてしまった。
'めざめるパワー'が先か、'れいとうビーム'が先か。
ジェノサイドもバルバロッサも、固唾を飲んで見守る。
神を操りし者とそれに叛する者。
それぞれの置かれた状況を忘れて。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107