二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.145 )
- 日時: 2019/01/09 13:58
- 名前: ガオケレナ (ID: /JJVWoad)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
杉山が腕を振るうのを合図に、漆黒の壁が猛然と突っ込んできた。
しかも、よく見ると部下一人ひとりに武器らしき道具を携えているのが分かる。
刀剣、銃、ナックル、斧など、一人につき全員が違う物を。
「くそっ、このまんまじゃ死ぬぞ。今回は割とマジで!!」
叫ぶのに集中してボールを投げるタイミングが普段よりやや遅れたがジェノサイドは対抗すべくポケモンを呼び出すことにした。
「オンバーン、早く出て暴れろ!」
漆黒の壁に向かって一つのダークボールを投げる。
壁に同化しそうな黒いドラゴンが現れ、同時に'りゅうのはどう'を放つ。
人間の視覚ではそれは認知出来ない。だが、その技の残留エネルギーが目で見える。
白とも青とも見れるオーラのようなものが地を這いずっているようだった。
それが迫り来る部下に炸裂すると、まず先頭を走っていた全員が吹っ飛んだ。
「……と言うか、何で杉山はウチらをあんなにしつこく追いかけてくるのよ!!普通ここまでする!?」
「相手を普通の人間と考えるのがそもそもの間違いだ!頭がおかしい!……だが、冷静に考えると、奴が俺達を狙うのはお前達を解散させたら手に入ったであろう財産を狙っているのと、単に気に食わない俺を殺す為だろうな」
だが、損失を埋めるかのように、第二波がすぐにやってくる。
ジェノサイドは技を連発するよう指示するが、いつか間に合わなくなるのが目に見えていた。
(くそっ、このままじゃ……いつか追いつかれる……)
悩み、悶えたその時、ジェノサイドの前にレイジが身を庇うかのごとくまるで包み込むかのように立った。
「レイジ!あまり前に立つな!危ねぇぞ!」
「行きなさい、サーナイト」
以前ジェノサイドのアシストをしてくれたキルリアの進化であろうサーナイトが宙を舞いながら地に立った。
「'サイコキネシス'」
距離の問題もあり、先頭の者だけが範囲だったが、彼らを宙に浮かせ、一瞬だが波の動きを止める。
「おい!何してんだ早く動け!」
「ダメだ!'サイコキネシス'だ、動けねぇ」
怒号がチラホラ聞こえるようになってきた。どう足掻いても動けないのだから吠えたところで無意味だが。
「飛ばしなさい、後方に」
命令の後、浮かされた人間がサイコパワーにより運動エネルギーを書き換えられ、膨大なエネルギーを持った砲弾と化していった。
将棋倒しのように次々と杉山の部下が倒れていく。
ジェノサイドらの空きの空間がさらに五m程余裕が生まれたくらいか。
「普段のバトルで使うやり方を少し応用してみました」
「その手があったか……」
涼しい顔でトンデモ理論を見せびらかすその姿に、ジェノサイドは少し感心しつつ引き気味になる。
ミナミ絡みで問題起こしたら笑顔で殺してきそうな、そんな感じの人間だとここで初めて理解したからだ。
「さぁ、この調子で全滅でも試みてみますかねぇ!」
「待て、距離が出来つつある。少しずつ逃げながらさらに距離を離そう」
「メガストーンはどうするんですか?」
「そんなもん今はどうでもいいだろうが!!生命の危機が最優先事項だっつーの!!」
オンバーンの'りゅうのはどう'で幾人かを飛ばしつつ、サーナイトの'サイコキネシス'でさらに被害を増やす。
「調子はいいみたいだけど……」
このまま安心安全に逃げれるのかが不安だった。今回は規模が違いすぎるからだ。
そんなミナミを見かねてレイジが振り返る。
「大丈夫ですよ、私が最優先に守るのはリーダー、あなたですし」
「じゃあうちの前に立ってよ!何だかうちよりジェノサイドの方が大事みたいじゃん!」
「当たり前でしょうが!ジェノサイドさんが亡くなった場合、組織は組織として成り立たなくなる。つまり解散ですよ!この時に追い出されたらどうなるか……想像に難くないでしょう?」
とか言いつつ、二人を少し包むように少し左に寄った。
これだけではミナミは満足しないだろうが、言ってる事とやってる事を少しでも合わせる為の行為だった。
それが間違いだった。
業を煮やした一人の部下が標準を確認せず怒りに身を任せて銃を構え、撃った時と同じタイミングだったからだ。
当然、レイジに命中する形で。
パン、と久々に聴いた音が耳をつんざく。
こんな状況で何騒いでんだ、と軽く微笑んでいたジェノサイドは状況が分からず、そのままの表情で固まってしまう。
一気に全身に痛みが走った。
自分ですら状況が掴めず、レイジは無言でその場に倒れてしまう。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.146 )
- 日時: 2019/01/09 14:11
- 名前: ガオケレナ (ID: /JJVWoad)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
膝から崩れ、ゆっくりと倒れていく光景がスローモーションに見え、嫌でも脳裏にでも残ってしまいそうだった。
「レイ……ジ……?」
命令も途絶えてしまったのでサーナイトも技を打てずにいる。その隙を狙ったかのように杉山の部下が一斉に走り出した。
「おい!レイジ!起きろって!こんなとこで伸びてんじゃねぇ!!早く!」
「行きなさ……い」
力の入ってない声で震えながらジェノサイドを見た。彼に抱えられようとしたが、それをレイジが拒んだ。
「私の、サーナイトの'テレポート'を使って……今すぐここから逃げなさい」
会話をしている間にも、部下が近づいてくる。
ジェノサイドは'りゅうのはどう'から'かえんほうしゃ'に技を変更させるが、その炎を恐れずに彼らは突っ込んでくる。
時間はもう無かった。
「だったら、お前を抱えてでも走る」
「ダメです……私はこの時点で荷物と化してしまいました……。あなたたち二人で私を抱えても、却って時間のロスになります。本来ならば逃げ切れる時間が……相手の銃の射程圏内になって……しまう、時間へと豹変するの……ですよ?」
レイジは力の抜けつつある腕でジェノサイドの手を払おうとした。本当にここに残るつもりらしい。
「深部にいるうちはこうなることも予想はしていた。俺は構わねぇ」
「そうだよ!!リーダーの言う通りだよ!ウチも大丈夫だから、皆で逃げよう……?」
ミナミも声が弱まってきた。どういうことか見てみると涙声だった。
だが、
「それは……私が許せません……ジェノサイドさんには生きていてもらわないと困ります……リーダーも……、あなたにも生きていてもらわないと、ね?……私にとって、誰よりも……一番大切な人なのだから……」
ミナミが泣き出した。
その言葉によるものか、自分がレイジを救えないと悟ったからか。恐らくは両方なのだろう。
「行きなさい、ジェノサイド……もしも、リーダーの身に何があったら……化けて出てきますからね……」
最後までニッコリと笑っていた。
レイジはジェノサイドの手を握り、何かをその手に移すように渡した。
何の事か確認してみると、
「メガストーン……?どうして……?」
「これで揃ったと思います。さぁ後は帰るだけですよ……ほら……」
レイジのサーナイトが二人に近づく。
そして指示を出す。
「サーナイト……二人に対して……'テレポート'です……」
その瞬間、ジェノサイドはレイジの腕を掴んだ。ギリギリで'テレポート'の範囲内に入れ、全員で帰ろうと思っての行動だった。
だが遅かった。
部下に追いつかれてしまった。
そして力負けもしてしまう。
レイジの腕を掴んだまでは良かった。
だが、二人の部下が片方の腕と体を掴んだことにより、ジェノサイドから引き剥がされてしまった。
「、!?」
テレポートが発動する直前であったにも関わらず、一瞬にしてレイジは黒い集団に紛れて見えなくなってしまった。
「レイッ……!?」
彼の名を叫ぶこともできずに、ジェノサイド、ミナミ、サーナイトの姿がその場から消えた。
気づいた時には、彼らは舞浜駅に居た。
ここまで遠くまで飛ばせることに意外性を感じたが、問題はそこでは無かった。
ジェノサイドの腕には、レイジから受け取ったメガストーンと、オンバーンが入ったダークボール。
レイジを救い出すことは出来なかった。
ミナミが手で目を辺りを押さえながら再びディズニーシーへ行こうと走ろうとしていた。
「おい待てミナミ!」
ジェノサイドは咄嗟に彼女の腕を掴む。
「やめて離して!レイジを……レイジを助けないと……」
とは言ったものの、無理を悟ったのか、その場でへたりこんでしまった。
「どうして……どうしてレイジが……」
グズッと鼻声を出しつつ悲痛な叫びを上げる。その後、自身の無力を責めるかの如く声を上げて泣いた。
「ああぁっ……あぁ、ああああああああぁぁぁ!!!!!」
ジェノサイドは、ミナミの肩に手を置く。
「この世界では……こんなこともよくある事だ。だからと言って仕方の無いことだと言って締めることもできない。助け出せなかった俺の責任だ。じゃあ今の俺達に出来ることはなんだと思う?」
弱々しく「どうしたら、いいのよ……」と言ってジェノサイドに振り向く。その顔は涙でしわくちゃになっていた。
「ここから逃げることだ」
腕に触れ、彼女を立たせる。
肩を持つ形でミナミの歩きを支えた。
「ここにいつまで居ても危険だ。奴らは絶対に俺達がここにいる事を知っている。だから今すぐ逃げよう」
楽しく終わるはずの最後のメガストーン探しがこんな形で終わるだなんて、誰も予想出来なかっただろう。
全員が全員「甘かった」と痛感することで、終えるなどと。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.147 )
- 日時: 2019/01/09 14:49
- 名前: ガオケレナ (ID: /JJVWoad)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
基地には安全に帰ることができた。
何事もなく、そして何も会話を発することもなく。
無言でいきなりリビングにジェノサイドが姿を見せたのでそこに居た全員が驚いたことだろう。
「うわっ!リーダーちょっと待ってくださいよぉ……びっくりしたじゃないですか」
「悪い、何も言わずに」
ジェノサイドの声色がいつもと違った。低く、ただ言葉を吐き出しているだけのような感じは、いつもの彼じゃない。
「何かあったのですか……?もしかして、メガストーンが見つからなかったとか」
「いや、ちゃんと見つかった」
と、言ってライボルトナイトとカイロスナイトを放り出す。
誰も受け取れなかった、というより手を差し出しても間に合わなかったので、そこらに転がってしまった。
「……」
おかしい、とここにいる誰もが思ったことだろう。雰囲気もおかしいし、物の扱いにしても、まるで八つ当たりしているかのような行動だった。普段ジェノサイドはこんなことをしない。
「あの、何かあったのですか……その、いつものリーダーらしくありませんよ?」
名前も覚えていない構成員がそんな事を言い出した。自分は覚えていないのに、向こうはほぼ自分の事を知っていた。そんなギャップを感じつつ、
「あぁ、それについては悪かった。実は今日、レイジが死んだんだ」
ざわ、とリビングが騒ぎ出したものの、すぐにそれは沈黙へと変貌した。
「レイジって……あの、赤い龍のレイジさん、ですよね?」
「あぁ。ディズニーにいたら来やがったんだよ。杉山が」
説明を初めた途端、ジェノサイドの目が怒りに染まりだす。
あの時の事を思い出すと、杉山という最も忌み嫌う存在と自らの無力さが蘇ってしまう。
今回の事件については、仲間にとっても衝撃的だったようだ。
杉山という一人の議員が数千万も払ってディズニーシーを貸し切り状態にし、数百人の部下を従えて侵攻してくるなどと予想もしないだろう。
その上で、彼らの反応を伺った上で、ジェノサイドは訴える。
「なぁ、みんな。俺達で本格的に杉山を潰しにかからないか」
いきなりの発言にすべての者が顔を上げた。
「このままじゃ深部の世界のバランスが壊れかねない。議員の人間によって組織が破壊されて金も人も一気に居なくなる事が何度も行われると今ある平衡状態が崩れてしまう。それだけじゃない」
一息置いて、ジェノサイドは辺りを見る。この部屋に居た全員が自分を見ていた。
「レイジのような犠牲者が、これからも増えてしまう」
その言葉に、仲間たちの目が変わった。ような気がした。雰囲気が一変する空気を肌で感じる。
「一人の下らない議員の下らない考えの下に、悲劇を繰り返したくないんだ」
誰ひとりとして、反対する者は居なかった。
ーーー
「ようミナミ。あいつら全員も理解してくれたよ」
ミナミは床に敷いた布団にくるまっていた。
荷物置き場として使っている部屋を使わなかった理由はおそらくだが、ここよりも寒いからだろう。
「俺達は、全員で杉山を潰しに行く」
彼女のすぐ隣に寄り、その場に座った。顔こそは見えなかったものの、声だけは聞き取れた。
「でも……そんな事しても……レイジは戻ってこない」
「確かにな。俺達がどう頑張ってもレイジはもう……。でもな、」
布団を少し捲り、彼女の手を少し冷えた手で握る。
「あいつは、杉山はこれまでに似たようなことを繰り返していたんだ。そして、これからも止まらないだろうな。だから俺達でこの悲劇を終わらせる。あいつのような犠牲者をもう生み出さない。その為に動くんだ。それがあいつにしてやれる俺なりの慰めでもあるんだ」
ミナミは顔を上げた。泣いてはいなかったが、その瞳はいつ泣き出してもおかしくない、脆さを表していた。
「強制はしない。戦い奴だけ戦えばいい。お前は、しばらく休め。休んだ後にどうするかその考えを俺に教えてくれないか」
「うん……」
その後、すぐにミナミは寝てしまったが、ジェノサイドは彼女が眠るまでその手を離せなかった。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.148 )
- 日時: 2019/01/09 14:58
- 名前: ガオケレナ (ID: /JJVWoad)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
月曜日。本来ならば大学のある日だが、高野は珍しく講義をすべて休んだ。
その代わりは彼は今、三度目となる大山に向かっている。
昨夜、仲間とこれからどうするかについて作戦会議をした際、
「まずは同じ考えを持った仲間を集めましょう。ジェノサイドという組織だけでも200人弱のメンバーがいますが、議会が相手となると数が足りません。それこそ……」
「深部中のすべての人間を集めるくらいは必要ってか。ったく、革命でも起こす気かっつーの」
「それくらいはしないと、って事ですよ」
と、規模が大きすぎる会話をハヤテと行った果てに、話の通じる人にこの事を伝えるのが必須条件と言われたので、高野としては唯一そう言った話が出来そうな(逆に味方の人間以外で話が通じる人間がいないことも意味する)人がいる大山へと足を運んだのだ。
向こうの反応は珍しいものだった。
「また近いうちに会えるものと思っておりました」
「どういう事だよ。俺としてはもう二度と来ないつもりだったんだが」
前回と同様に本社の中へと案内されたる。
だが、通された部屋が違った。
関係者専用のような扉を抜け、入った先は、客間だった。
「……?」
高野はキーストーンの無い部屋であった事に気付き、辺りを見るが特に変化は見られない。
奥から、普段通りの白い礼服を来た武内がお茶を持ってやってくる。
「最近どうですか」
「どうもこうもねーよ。ストーカーに追われたり殺されそうになったり仲間が死んだりとウンザリしてたとこだ」
全部特定の人間による事だという事を暗に示す。彼に伝わったかどうかは不明に思えたが、
「色々とご苦労なさっておりますのね。私としても少々問題が浮上したところです。杉山渡。彼の蛮行が目立ちすぎています」
どうやら伝わったようだ。
「なるほどなぁ……」
高野は湯呑みを木製のテーブルに置く。
「じゃあお互い知ってるようだから結論から言うな」
深呼吸をする。その間に昨日の出来事が何度もフラッシュバックされた。
「俺は、俺達ジェノサイドは杉山を攻撃することで意見が一致した」
「その為に、相談を仰いできた、と。そういう事でしょう?」
見抜かれていた。と、言うよりか武内としても予想の範囲内だったのだろうか。その意味あっての「近いうちに会える」だったのだろう。
その洞察力にジェノサイドはギョッとしてみせた。
「確かに、あなたの周りだと味方以外で話せる人なんて居ないに等しいものです。だからといってジェノサイドだけで杉山を攻撃しても返り討ちに合うのが目に見えています。そんなジレンマに駆られた結果が、こちらにいらした、という事でございましょうか」
「大正解」
再び湯呑みを取る。
「ま、かと言ってあんたに話せても上手くいく事柄じゃねぇもんな。無茶な事持ち出して悪かったな」
「いえ、確かに無茶かもしれませんが……」
待ってましたとばかりに、どこからか笏を取り出した。何やら人の名前や住所が書かれている。
それも、一枚だけではなかった。
テーブルに、平安時代の貴族が持ってそうな笏を並べられるシュールな光景を見て、つい言葉が詰まる。
「お前……しゃくをメモ帳代わりにしてんのかよ……」
「当時の人々はこの様に使われていたようですよ?」
その中の一枚を高野の眼前に持ってきた。
「さて、先ほどの答えですが……無茶ではありますが解決策はあります。その策も無茶と言えば無茶ですが」
反射的にその笏を手にしてみる。
肌触りはあまり良くない木の板の上に文字を書いているような代物だった。
「要は、あなたと同じ、悲劇を迎えてしまった者と結託すればよいのですよ。幸い彼らの居場所はキーストーンを与える際に入手しております」
「お前……いつか個人情報売りそうだよな……」
絶対にコイツにだけは教えないようにしようと心に誓った時だった。
今手に持っている物に、人物名や組織の名前が書かれてない事に気づく。
「おい、これただ住所しか書いてねぇじゃんかよ。どういうことだ?」
「それは私なりの配慮にございます」
個人情報の保護だろうか、と思ったが違うようだ。そもそも、住所がある時点で守る気は0だ。
「あなたに一つ注意事項をと思いまして」
「注意事項?」
今更そんな物が必要なのかと気になったが、勘が鋭い彼の事なので黙っておくことにする。
「えぇ。ジェノサイド。あなたの使命は、あなたに共感する仲間を集めて、杉山を排除することにあります」
遂に大山の神主による公式の排除の願いが出された。
どの組織にも思いを寄せない、そういう意味で中立を保っていた武内からそんな言葉が出るのは意外だ。
「その間に、あなたはかつての敵であった者とお話をする事も十分に考えられます。なので、一つ注意すること。それは、冷静になることです」
それさえ守って相手を説得出来れば、きっと成功すると強く言われたまま、高野は大山を後にした。
「冷静を保ち、相手を説得する……その相手がかつての敵かもしれない?難易度高すぎじゃねぇかバカヤロー」
愚痴を零す感覚で笏に書かれた住所へと向かう。
そこは地域の公会堂のような場所であった。鍵もなく、木製の引き戸の扉を開ける。
中には、五人程の人間しかいなかった。
が、
「なるほど、かつての敵ねぇ。こうなる事を初めから狙ってたんじゃねぇのか?あの野郎」
その者の顔を見て、ジェノサイドは薄く笑った。
「お前に会うだなんて俺は全く予想してなかったがなぁ。まさかこんなところで再開するとはな」
嫌でも覚えている。そいつは、いつか自分にとっては身近な場所で、身勝手にもジェノサイドを殺そうとした人間だったのだから。
その者はきょとんとした顔で、ただジェノサイドを見つめるだけだった。
「フェアリーテイル、ルーク……。ちょいと俺の話に付き合ってくんねぇか」
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.149 )
- 日時: 2019/01/09 16:07
- 名前: ガオケレナ (ID: WHyGh.XN)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
そこにいたのは、かつてバルバロッサの依頼の下、包囲網を形成してジェノサイドを捕まえようとした深部の人間、要するに敵だった。
「ジェノサイド……?」
ルークと名のある男はその姿と言葉に、小さく笑った。
「何の用だよ。テメェを殺そうとして失敗した敗者に用も何もねぇだろ」
「まぁまぁ。同じ者同士話を、と思ってね」
「同じ者……?」
一瞬にして、ルークの顔が変わった。
怒りと憎しみに満ちたその顔は、ジェノサイドを見据える。
「成功者にして勝者のテメェが……俺らと同じ……?侮辱すんのも大概にしろクソがあああアアア!!!」
拳を握り、敵のもとへと駆ける。
仲間の制止する声が聞こえた気がしたが、そんなものに一々反応してはいられない。
目の前まで迫った。今ここで振るえば相手は絶対に避けれないし、受け止めることもできない。
何もしてこないことが逆に意外だったが、この勝者気取りの綺麗な顔に一度でも殴ることが出来ればそれだけで満足だ。
ルークは、拳を振るい、顔面へと放つ。
絶対に当たる。そう思ったはずなのに。
ジェノサイドは、平然とこの拳を自身の手で掴む。
それは、人間が動かせる腕の力ではなかった。
「!?」
その顔は、まるで獣が、エサとなる獲物を見つけた時のような、薄く裂けた笑みが広がっている。
「お前は俺をイメージで捉えすぎている」
扉の奥から、本物の声がした。
今までジェノサイドだと思って殴ろうとしたジェノサイドは、化けたゾロアークだった。
現にその正体を表している。
「"神主"から話は聞いた。お前は意味、わかるか?」
神主、とは大山にいる武内の事だ。彼も深部の人間にして、同じ人間にキーストーンやアドバイスを与える役目を持っているため、こう呼ばれている。
「俺は、ここ最近アホの杉山に狙われてな」
杉山、という言葉にルークの仲間が反応した。
当のルークは、背を見せて元々座っていた椅子へと戻っている。
「俺はこの二週間の間、メガストーンをずっと探していた。お前達の間でこの二週間のうちにあったことは?」
「俺が言えと?」
ルークは舌打ちする。ここに来る時点で知っているんだろとでも言いたげに。
「この間、深部の世界では杉山という無能が動き始めた。まぁ、実際動いていたのはもっと前だと思うがそっちはどうでもいい。なぁルーク。お前はこの二週間、杉山による組織の解散令を出されてそれをずっと無視していた。その結果、基地の場所を暴かれ、仲間のほとんどが殺され、財産も丸ごと奪われた。そうだろ?」
「ジェノサイド……ッ!!てめぇ黙ってろ!!」
生き残りと思われるルークの仲間がそんな事を言った。だが、今度はルーク本人が手を差し出してそれを制止させる。
「ルーク……さん?」
「その通りだジェノサイド。お前もよく情報を集めることができたな。お爺ちゃんが居ないと言うのに」
ジェノサイドはその挑発を真顔で受けとめる。自分もそれなりの挑発をしたと思っているからだ。
「ま、財産を丸ごとって言い方は語弊があるな。俺やこいつらも、しっかりと自分のポケモンは死守している。何なら今ここでテメェを殺すことだってできるぜ?深部の頂点が、名も無き一般人に倒されたら、その時はどうなんだろうな?財産は?仲間は?考えただけでもちょっと楽しくなってきたぜ?」
一触即発の空気に思えたのだろう。ルークの仲間が二人の間に割って入る。まるで、戦いを止めさせるように。
「ルークさん!やめてください!俺達はもう戦わないって決めたじゃないっすか!」
「ジェノサイドも何でこんなとこに来たんだよ!何しに来たんだ!」
厄介だ、とジェノサイドは思ったことだろう。かつての敵にしてすべてを失った人間と話をするのは、気まずいし面倒くさい。
もう結論から言うことにした。
「何しに……。なぁ、ルーク。俺と一緒に戦わねぇか」
一瞬意味が分からなかっただろう。その証拠にその顔はキョトンとしている。
「一時的に、ジェノサイドに組み込む形で、杉山をブッ潰すために共に戦わないか?」
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