二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.180 )
- 日時: 2019/01/19 17:20
- 名前: ガオケレナ (ID: gfxukZ12)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
どのようにしてこの基地の居場所はおろか電話番号を知ったのだろうか。
その旨をジェノサイドは告げる。
『ん〜?あぁ、あの写真とこの番号か……別に?単に頑張って探しただけだぜ?根気よくな。まぁ一番参考になったのはテメェが前に組んだ深部連合だっけか?あそこで動いていた奴を適当に捕まえて適当に吐かせた』
と、言うことはその深部連合出身の人間は自分達を裏切ったということか。てっきり被害者ばかりを集めたチームだと思っていたが間違えたようだ。ジェノサイドはそんな野蛮な人間を信じすぎてしまった。
「へぇ……じゃあソイツも後でシメとかねぇとな」
受話器を強く握る。かなり小さくミシッと音がしたが恐らく問題はないだろう。
『いやぁ、それは無理かもね?テメェがコッチの居場所を特定した時はソイツもう居ないかもね』
「あっそう。それじゃ手間が省けてイイや。コッチもコッチで忙しいんだ。無駄に俺ら煽っても無駄だからな?切るぞー」
『別にいいぜ。どうぞご勝手にな』
ゼロットが折角そう言ってくれたので受話器を耳から離した。
その時、スピーカーからは続けて声が聞こえる。
『テメェの大学のおともだちがどうなってもいいならな』
想像もできないくらいのスピードで受話器を耳に戻した。一体奴は何を言っているのだろうか。
「テメェ……何を言ってんだ……?」
声が少し震える。ジェノサイドの近くにいる者は、動きが活発だった彼の心臓がさらにバクバクしていることに気づく。
声だけではわかりにくいが、その顔は怒りに満ちている。
『ん〜?ちゃんと言わなきゃ駄目か?じゃあ簡単に言うとだな……』
間隔を空けられた。不安な時に無駄に空白の時間が流れると余計に気が立ってくる。我慢できないくらいだ。
『人質?っつーの?まぁとにかく、何人かこっちで身柄押さえてますわー』
嘘だと思いたい。どうせ奴の事だ。ハッタリを言っているに違いない。そう言い聞かせてるときだ。
『えーと?メガネの似合う香流君にー、長髪のスレンダーな石井ちゃん?それからー、ストーリーが進んでないせいかポケモンの腕は弱っちいけどやけに強いピカチュウ?を使う……えーと君は……?吉川くん?ありがとー。だそうです。聞いたかー?ジェノサイド』
思考が止まった。受話器を持ったまま背を向き、走り出そうとしたが、逆に受話器に繋がる紐に引っ張られた。反動で電話器がズレる。
『早く来ないとどうなっちゃうかなー?頑張っておともだち助け出してみせなよ?あ、でもここの居場所分からないかー……まぁせいぜい日本全国彷徨いまくって見つけ出し……』
言っている途中で思い切り受話器を叩くように置く。
「リーダー……これは……」
震えたハヤテがジェノサイドを見つめる。電話が終わった途端全員が一斉に電話器から離れた。
「恐らく本当だ。電話越しだが、奴らは……俺の友達はそこにいる……」
「なぜ、このような事に……?」
「知るかよ!ゼロットの奴が何かしらの方法と情報で接触したに決まってる!!」
叫んでいると、今度は自分のスマホがポケットの中で振動する。
こんか面倒な時になんなんだ、と思った彼だったが着信元を見てその気は失せた。
「……香流?」
間髪入れずに通話ボタンを押す。
普段通りの、彼の元気そうな声が聴こえた。
『もしもし?レン?ごめんね、びっくりしたよね?』
「香流!!お前今何処で何してんだよ!無事か!?」
『こっちは無事だよ。皆も大丈夫』
何が何でも信じたい言葉だった。
電話ゆえ向こうの状態が確認出来ないのが悔しい所だが不安は少し和らいだ。
『今、皆で千葉にいるんだ。幕張……。千葉県にある海浜幕張ってところに』
「地名くらいは俺でも知っている。問題はそこの何処に居るって事だ」
『分からない……大きな建物には居るんだけど……。え?名前?なに?吉川……』
電話中に香流の声が遠のく。スマホから耳を離して向こうで会話でもしているのだろう。
『もしもし?ごめんね、レン。今はワールドビジネスガーデンって所にいるんだ。そこに皆居るから、その……なんと言うのか……』
香流の言葉が詰まっていく。
表現が難しいのだろう。
『もしも、可能ならば、助けに来て欲しい』
当たり前だ、とジェノサイドならば言った事だろう。
だが、あえて無言で通話を切る。
彼はすぐさま駆け出した。
「待ってください!我々はどうすればいいんですか!?」
走り去ろうとするジェノサイドを止めるためにハヤテが大声で叫ぶ。
舌打ちをして足を止めるとジェノサイドは、
「来たい奴だけ来い。何人かはここに残れ」
それだけ言うと姿を消してしまった。
残された者は。
しばらく考えた後、まるでパニックに陥った集団のようにあちこちに飛び散るように一斉に走り出す。
外までバタバタと走る音が聴こえた。
近くに敵が居たら住処すらもバレるんじゃないかと思うくらいに。
冬着を着込んだミナミは、カイリューを呼び出して乗ろうとしていた時だ。
「リーダーも行くのですか?」
外は寒いのに服を変えていないレイジが見送りに来ていた。と言うことは彼は行かないらしい。
しかも、その服には未だに乾いた血がついたままだ。どうやらもう取れないらしい。
「まぁね。ウチも少し責任感じちゃってるし、それに……」
ミナミは、偶然見る事のできた、受話器を離してすぐに走ろうとしたジェノサイドの顔を思い出す。
「絶対によくない状態だよあれ……何するか分からないし、周りが見えてないかもしれない状況だから些細なミスが命取りになるかも……それが怖いの」
少し乗るのに苦労しつつもミナミは完全にカイリューに乗る。
「ごめんね、レイジ。心配かけて。ウチ行くね」
「いってらっしゃい。お気をつけて」
誰よりも早く飛んだジェノサイドを追い掛けるように、彼女も空へと消えてゆく。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.181 )
- 日時: 2019/01/20 11:18
- 名前: ガオケレナ (ID: 9hHg7HA5)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
出る時間と到着する時間を確認していなかったので、移動にどれほどの時間が経ったかは分からなかった。
だが、感覚的にもそうだが、普段電車でここまで来るのに二時間近く掛かったので多分それくらいはしただろう。
彼の体は冷えきっている。体は震え、顔も真っ青を通り越して真っ白になっている。
海浜幕張駅にジェノサイドは居た。時間は20時。人はまだ多く行き交っている時間帯だ。
本来ならば派手にはやりたくない彼だが、知り合いを人質にされている時点で行動を抑えるほどの事はしたくない。とにかく何が何でも成功させたいからだ。
通話でしか場所を教えて貰っていないので、細かい居場所を彼は知らない。ジェノサイドは特に詳細を聞かなかったのでここから先の行き先が分からない。
早く来たのにすべて無駄になってしまった。仕方ないので自販機で温かい飲み物を買ってその場で飲む。
仲間が来るのを待っている間に、ジェノサイドは飲みつつ手持ちの整理をした。
状況と相手が問題なので念入りに行わなくてはならない。だが、結局はゾロアークを使って終わりなのだが。
今回も使う予定だ。
そんな事をしている内に少しずつ仲間がやって来た。
見た感じ百人ほどか。
「遅い」
「先に勝手に行っちゃうからですよ……でもちゃんとした居場所を教えていませんでしたね」
ウォーグルから降りたハヤテが一点を見つめる。
「向こうです。行きましょう」
周辺の地理に詳しいハヤテが先頭を歩く。
百人ほどを連れて歩くだけでも異様な光景なのに、ただでさえ人が多いのでペースが遅い。
イライラしながらジェノサイドがハヤテの隣へと走る。
「おい、遅ぇよ。走れよお前」
カッカして周りが見えていないジェノサイドをものともせず、普段と変わらない静かな調子でハヤテは答える。
「少し落ち着いて下さいリーダー。今のあなたは向こうの挑発に乗せられています。焦らず、ゆっくりと冷静さを取り戻しつつ、これからについて少し考えて……」
「今のこの状況で落ち着いていられっかよ!!」
ジェノサイドは怒鳴った。一度胸倉を掴もうとして、手を伸ばしたが、結局止めてしまう。
彼に怒りをぶつけても意味が無いからだ。
舌打ちをしてハヤテと同じペースで歩く。
「俺の友達が人質にされてんだぞ」
「仮にそうだとしても、手荒な真似はしていないと思いますよ。場所が場所ですし。彼等が最も恐れているのは何だと思いますか?報復ですよ」
答えようとしたら間髪入れずにハヤテが答えたので何の為に質問口調だったんだよと心の中でツッコミを入れる。
「我々深部が展開するポケモンバトルにルールはありません。少し極端な言い方ですが、我々はポケモンの腕だけで高みを目指しています。結局は、ポケモンが強い組織の長が頂点に立つ世界です。と、言うことは言い換えれば相手の長を倒してしまえばいいのです。では、その相手をどう頑張ってもポケモンで倒せない場合はどうするか。不意打ちで殺すしかない。それを考えると、組織間のポケモンバトルと言うのはとてつもない覚悟が必要な行いなんですよ」
「それがどうしたんだよ。そんな事とっくに知ってんぞ」
「では、不意打ちを受けないためにはどうしたらいいでしょうか?」
「えっ、どうしたらって……」
今度は間を空けられた。考える時間が生まれたが、ジェノサイドが考えるのは「不意打ちを受けないくらいの、相手と同じ位弱ければいい」とか、「化かせばいい」といったひねくれたものしか出てこない。
「仲間を固める、不意打ちを受け付けないくらい相手の仲間を全滅させる、当事者のみで戦うといった様々な方法がありますが……」
少し経ってもジェノサイドは喋らなかったので結局ハヤテが言う。
ジェノサイドに期待していたのか、勢いがない。
「こいつと真剣にポケモンバトルをしたい、という"思い"です。結局は深部の人間は皆ポケモンをやり込んでいる人間です。ポケモンが好きな人です。正々堂々とした戦いを望む人間が、不意打ちという手で邪魔されたらどうでしょうか?」
甘えだ、とジェノサイドは聞きながら思った。深部の人間全員がそんなに善人な訳がないからだ。
それに、ジェノサイドが経験してきた事だが、基本的に不意打ちをする人間は大体が自分よりも弱い人間がする傾向がある。
金の為、名誉の為に無謀な戦いをする人間がほとんどだ。
なので、今日に限ってはそういった不意打ちがあるかどうか。それはよく分からない。
「着きましたよ」
幕張メッセの方向に歩いていき、最終的にはそこに向かう途中の歩道で足が止まる。
「ここです。ゼロットはここ、ワールドビジネスガーデンに居ます」
目の前には、二棟からなるツインタワーがあった。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.182 )
- 日時: 2019/01/20 13:15
- 名前: ガオケレナ (ID: GTyVogOk)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
普段は見慣れない超高層ビルが眼前に佇んでいる。
その圧倒的な迫力に、思わずジェノサイドは息を呑む。
ここにゼロットが、友達がいる。
どちらの棟に居るのかは分からないが、迷わずにはいられない。手前側から行くと決めた。
迷わず、サザンドラを呼び出し、飛び乗る。
「ちょっ、何をするのですか!?リーダー!」
地上でハヤテが叫ぶも、彼の耳には届かない。
適当な高さまで飛ぶと、一旦その場で静止した。
今から容赦をしない。絶対に友達を救い出す。ゼロットも倒す。
瞑った目を開け、目の前に広がる窓ガラスに右手を向け、そして命令する。
「サザンドラ、'あくのはどう'を撃て。ここ一帯をお前のその力でなぎ払え!!」
躊躇せず、黒い光線が放たれた。
まず一点に直撃し、バリィッッ!!と強く破れる音を立てながら穴が空いていく。
そのまま、左へと横一線に窓ガラスが砕け散っていき、ぽっかりとした大穴が、人一人なら余裕で侵入出来る程度の大きさの穴が作られていく。
ドドド……という不穏な轟音を響かせながらジェノサイドはビルを破壊する。
地上に向かって大量の砂塵と細かいガラスが降り注ぎ、平和な世界は一瞬にして戦場へと様変わりしていくようにも見えていくようだ。
「うわあぁぁっ!」
どこからか叫び声が聴こえる。それが地上からかビル内からなのかは分からない。
とにかくやるべきは一つ。
ゼロットを倒す。
'あくのはどう'によって一瞬にして荒れてボロボロとなったオフィスらしき階へと、ビル内部へと降り立つ。
人はいないのか、それともさっきの衝撃で吹き飛んでしまったか。
だとしても、ジェノサイドは叫ぶ。
「ゼロットはどこだ」
反応はない。動きもない。
ここはもしかしたらゼロットと関係ない階だったかもしれない。
そもそも高層ビルに深部の人間がいること事態おかしい。
ジェノサイドと似たように、高層ビル全体を使っているのではなく、一部を使って姿を晦ましているだけなのか。
後ろで着地した音がするので振り返ると、仲間が続々と破壊された窓から入って来た。
「あの、リーダー。やりすぎです。しかも彼等が居ないなんてオチですし……もし全く関係無いところだったらどうするんですか!?」
「だったら、この責任を負いすべてをあの野郎に押し付ける」
外からまだ出していないサザンドラが建物内に入ってきた。
ハヤテは、一体リーダーは何を言っているのかと思った直後、悪寒が走った。
「シャンデラ、ポリゴンZ!」
モンスターボールとダークボールを抱えてそう叫ぶと、思い切り投げる。
出てきたのは名前通りシャンデラとポリゴンZだ。
「り、リーダー?あんたまさか……」
普段はあまり使わないポケモンを、それも超火力を持ったポケモンをここであえて出すとはどういう事か。
震えながらケンゾウが聞くも、それを無視してジェノサイドは命令する。
「サザンドラ、'あくのはどう'。シャンデラ、'だいもんじ'。ポリゴンZ、'はかいこうせん'」
ジェノサイドは不自然にも床を指差す。
「やれ、お前ら。この建物を破壊しつつゼロットを探せ」
一瞬この人は狂ったのではないかと誰もが思ったことだろう。
「ば、馬鹿野郎!!」
一瞬に遅れてケンゾウがこちらに走る。
やめろと顔で言っているかのようだ。
だがポケモンは止まらない。
閃光と共に心を震わせるかのような恐ろしい音がしたと思うと。
あらゆる物を破滅せんと三つの光が床を、建物を、すべてを壊し尽くした。
窓をぶち破った時とは比べ物にならない轟音が響く。
大きな地震が起きたのかと思うくらいの振動が鳴り、下へ下へと巨大な底無しの穴を無理矢理作る形でこれまで綺麗だった平和、日常、モノを一瞬に恐怖へと叩きつける。
下の階を突き破る毎に、ドン!ドン!と一際大きい騒音を立たせながら深部の象徴である恐怖、不幸を作り上げていく。
暫らくすると音が鳴らなくなった。もしかしたら、最下層まで届いたのかもしれない。
またもや躊躇せずに、ジェノサイドは底の見えない、暗く深い穴へと一人飛び込む。
ポリゴンZとサザンドラ、シャンデラをボールへと戻して。
残されたジェノサイドのメンバーはその場で立ち尽くす。
今自分たちのリーダーのしている事が限度を超えすぎていて理解出来ないでいるからだ。
「あいつ……何やってんだよ……」
「リーダー……いくらなんでもこれは……」
「……」
何階突き破っているのかは分からないが、この建物が傾いたり崩れたりしていないのが不思議だった。
恐らく芯となる柱を避けたのだろう。だとしてもやりすぎである。
だが、かと言って立ち止まる訳にもいかない。
各々階段や、作られた大穴を通って下へと進む。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.183 )
- 日時: 2019/01/20 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: GTyVogOk)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「何やら騒がしいな」
先程どこからか響く轟音に目をしかめつつ、キーシュは深く玉座に座る。
「何が起こってる」
近くにいた仲間にそう言うと、その仲間は平伏してこう告げた。
「はいっ!どうやら何者かがこの建物を外部から攻撃、破壊している模様です!」
「なるほど……来たかジェノサイド……」
頬に手を当ててニヤリと笑みを浮かべる。
「それじゃあ作戦通りに頼むぜ。ちょっと奴が来るには速すぎるが、まぁいい」
ジェノサイドがすぐ近くにいると言うのに、静かすぎるその様は玉座と周りの雰囲気もあって、冷酷な王にも見える。
キーシュ。ゼロットの王のいる部屋は奥底が見えない広い大広間だ。全体的に暗く、蝋燭の灯りしかない。
そのため、不気味な雰囲気が常に漂っている。玉座の後ろの壁に取り付けられている円柱の柱のモニュメントと、どこからか流れている悲しげな賛美歌のようなメロディから、ある種の教会のように見えなくもないが、やはり不気味なのでまるで悪魔でも称えていそうな光景だ。
「イイ……それでイイ。このまま来い。ジェノサイド」
八重歯を見せ、その嘲るような顔の先には、見知った顔があった。
ーーー
流石に生身で着地するのは危険だったのでオンバーンをクッションにして着地した。
それからすぐに、ポケモンボックスを操作して手持ちを入れ替える。
今ジェノサイドが居る階は地下一階のようだ。
と、言うよりもこの建物は地下一階までなのでここに到達するのは当然と言えば当然だった。
だが。
「おかしい。灯りという灯りが点いてねぇ。どういうことだ?」
普段ならまだ誰かしらが利用している建物だ。夜8時だとしても誰かがいてもおかしくない。なので灯りが点いているのが普通である。
どういう訳かゆっくりめに初めの一歩を踏み出そうとしたとき。
ボッ、と突然壁にかけてあった蝋燭に灯りが点いた。
ジェノサイドもそれにびっくりし、それからやや離れる。
「んだよ……蝋燭か……。蝋燭!?」
何故この時代に蝋燭が使われるのかが分からない。どういう訳か考え出した時だ。
ボボボッ!!と、途切れることなく蝋燭の火が灯った。まるで道標のように、彼を案内しているかのように。
(どうなってんだよ……)
薄暗い雰囲気も相まって不気味そうに感じると、後ろから砂利を踏むような何者かの足音がする。
彼の仲間だった。それから続々と降りてくるも、誰もがこの様相に声をあげるばかりだ。
「なんですか?これ」
「俺に聞くな」
ジェノサイドに聞かれた気がしたので突き放すように答える。
後ろで「ちぇっ」とか言っている無礼な人間だったので声の主は恐らく連合出身の奴だろうか。
黙ってジェノサイドがやや離れて進む。
後ろに仲間が集まっているのでガヤガヤと騒がしい。それに少しイライラしていた時だ。
ジェノサイドがピタリと不意に止まる。
それに釣られて仲間達も止まるも、相変わらず耳障りだ。
「黙れ、お前ら」
「えっ?」
「いいから……」
珍しく威圧的でない反応に、つい仲間達は黙った。
彼らは知っているからだ。戦いの途中でジェノサイドが怒りに身を任せたような時に表れる威圧的な態度でなく、状況を省みないような優しさを含んだ言動。
その時は、何かを察知したとき。
つまり、敵が潜んでいる証拠だ。
ジェノサイドは通路のド真ん中に無防備に立っている。
それを理解したケンゾウが走り出す。
それと同時にジェノサイドの前方一直線上から、目以外を布で覆った正体不明の人間が二人迫ってきた。
手にはクナイのような刃物を持っている。
「リーダーあぶねぇっ!!」
ケンゾウが叫ぶも、届かない。
代わりに、何も無いはずの壁から同じような格好をした人が出てくる。
ケンゾウのほぼ隣に位置する地点から。
「っ!?」
「貴様の相手は俺だ」
クナイを振り上げられる。武器なんてないケンゾウは咄嗟にモンスターボールでクナイを受け止める。
ガキィッッッ!と金属が擦れる嫌な音がしばらく続いたあと、刃に反応して中に入っていたポケモンが飛び出る。
出てきたのはゴロンダだ。
いきなり出てきたポケモンにその敵が立ちすくんでいる瞬間を狙い、思い切り殴る。
ゴロンダのとてつもない馬力を人間の体で受け止めたその男は呻きながらゴロゴロと床を転がり、そのまま力が抜けたように地面と一体化するように倒れた。
「お前、格闘タイプ本当に好きだな」
「とか言ってる場合じゃないっすよ!!」
ジェノサイドの前には、二人の敵が迫っている。
だが、ジェノサイドは何もしない。後ろを振り向き、ニヤッと少し笑うだけだ。
「あの馬鹿野郎っ!!」
ケンゾウは思わず、走り出すも、遅い。
二つのクナイがジェノサイドに突き刺さる。
ケンゾウは立ち止まり、思わず目を瞑った。
だが、何故か後ろから「あっ!」と声がするので反射的に目を開けると、何故か二人の敵が倒れている。
不審そうに近づいてみると、ジェノサイドの姿が変わり、それと同時に、虚空から本物のジェノサイドが現れる。
「敵欺くにはまず味方からってな」
「ゾロアークかよ……」
ゾロアークのイリュージョンは突然音もなく始まるくらい見分けがつかない。
味方としている分は強力だが、仮にもしも敵が使ってきたら……と考えるとひどく恐ろしい。
そして心臓にも悪い。
ケンゾウとしてはあまり使って欲しくない代物だと思いながらゾロアークを見つめた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.184 )
- 日時: 2019/01/20 13:41
- 名前: ガオケレナ (ID: GTyVogOk)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
敵を払い、すっかりと静かになった通路を再びジェノサイドたちは歩く。
五分ほど道無き道を歩いた頃だろうか。先頭を歩くジェノサイドが再び止まった。
理由は明白で、目の前に二つの分かれ道があるからだ。
「ったく、迷路かよここは。ってか何で高層ビルの地下がこんなにもダンジョンになってんだ」
「おそらく、ゼロットの支配領域なんでしょう。本来あるこの階を、ゼロットが改造したとしか……」
ハヤテが隣に立つ。
「あまり……声を大にして言いたくはありませんが……リーダーが先程破壊した上の階……あれはもしかしたら……」
「言うな。俺もやっと落ち着いてきたところなんだ。あまり考えたくない」
嫌な汗をかきながらハヤテから目を逸らす。来た時と比べて大分落ち着いてきたからか、今まで行った自分の行動を深く恥じている……つもりのようだ。
「それはいくら何でも無責任すぎませんか?もうちょっとやっちゃった事を深く考えた方が……」
「だーかーら反省してるって言ってんだろ!だからもうこの話終わり!ってかここに構えてるゼロットが悪い!以上!」
「責任転嫁してる時点で全然反省してないじゃないですか!いくらなんでも組織のトップとしては無責任すぎる発言ですよ!」
と、二人で場所も考えず二人でギャーギャー騒ぎ出す。
他の仲間は入る余地がなく、黙って眺めることしかできない。
「何でここであいつら喧嘩してんの……?」
「俺に聞くなよ……」
特にミナミとケンゾウが冷たい目をしながら二人を見つめる。
「これで敵来たらどうするつもりなのよ……」
「いやだから俺に聞くなよ……」
などと言っていると、分かれ道の先からはゼロットの軍勢が。
今度はれっきとした構成員だからか、各々がモンスターボールを持っている。
「ほら言わんこっちゃねぇっ!!」
左右両方向から軍勢が迫る。交差する地点でジェノサイドとハヤテ二人が立っているため、このままでは挟まれる。
ケンゾウとミナミがまず走り出し、二人に続く形で仲間達も走り始めた。
だが、その時点で二人はもう囲まれている。挟まれる寸前だ。
(クソッ、間に合わねぇ……!?)
走っても無駄な事を悟り、ケンゾウが足を緩めたその時だった。
左右それぞれの人混みを割るように何かが弾けた。
ジェノサイドの立つ左側はゾロアークの'ナイトバースト'が、ハヤテの立つ右側は彼が持つポケモン、バッフロンの'アフロブレイク'で無理矢理突破する形で穴が空く。
「お前はそっち行け。俺はこっから叩く」
「全く、相変わらず無茶しますね」
二人共フッ、と軽く笑うと、その空いた穴を縫う様に駆け、軍勢を抜けようと走る。
突然の光景で反応が遅れ、ゼロットの人たちはハヤテとジェノサイドを逃してしまう。
「てめっ、待ちやがれ!!」
誰かがジェノサイドに向かって怒鳴るも、時既に遅し。
ジェノサイドが走った方向から微かに「あとは任せた〜」などとふざけた声が聴こえるのみだ。
「……じゃあ何?要するに……」
ミナミは怒号と混乱で乱れたゼロットの軍勢に近寄る。
「ウチらはザコの処理しろって言いたいのかアイツはーっ!!」
呼び出したエルレイドの'サイコカッター'が軍勢をを吹き飛ばしていく。
ーーー
「よしっ、何とか巻けたな。後はこのまま突っ走ればいいだけかなー……」
ジェノサイドが分かれ道を抜けて割とすぐだった。
ケンゾウからの連絡だ。
「もしもしリーダー。ミナミさんと他の奴らの活躍で大体は潰せましたよ」
「マジかよはっえぇ。俺が逃げてからまだ二分くらいしか経ってねぇぞ」
時計を見ると本当にその通りだった。彼女も大分強くなっている。
「まぁそこはいいんですけど……リーダー申し訳ありやせん!!俺らとの衝突の隙を突いて奴らの何人かがそっちに向かってしまいました!」
「えぇー……」
だとしたら自分のすぐ後ろにはゼロットの人間が来ている事になる。ゆったりと走ることができなくなってしまった。
「あと気をつけてください。何故だか分からないんですけど……さっきピカチュウが……」
「えっ?」
明らかに言っている途中だったのに切られた。
「おいケンゾウ?もしもし?もしもーし?」
何度名前を呼んでも出ない。
ピカチュウが何とかとしか聞き取れなかったのが何か不安である。
「何だってんだよ……」
ふと後ろを振り向くと、既に追っ手が迫っていた。
ーーー
「なにすんだよ……」
ケンゾウは通話の終わった携帯を呆然と眺める。
「余計な事は言わないで。あいつ混乱するよ」
通話ボタンがあった箇所を触っているのはミナミだ。
どうやら、強制的に電話を終了させたのはミナミらしい。
「とりあえず、ウチらも行くよ。もう何がどうなってんのか分かんないんだもん」
「あ、あぁ……ホント、訳分かんねぇよ……」
二人は、ジェノサイドの進んだ方向へと足を進める。
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