二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.435 )
- 日時: 2019/12/14 17:58
- 名前: ガオケレナ (ID: mG18gZ2U)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「いいかい……?これで準備は整った」
リッキーはひどく息切れしながら呟く。
特に走った訳でもない。
これから起こす事と、その後のことを考えただけでも心が押し潰されそうだったからだ。
「今これで……ドームとタワー……。そしてこのドームシティ全域のスピーカーの出力を最大にした……。今から、放送しているラジオの音量が突然大きくなるけれど心配しないで」
「あのポケモン達に聴こえるようにするためですよね?」
ミナミは最後の最後に確認を取る。
リッキーもこれまでに2、3度聞かれた事なので頷くだけの反応だった。
「はっきり言わせてもらうと……これで成功するとは僕は思えない……。本当にやるんだね?残り時間すべてを費やしてでも……やるんだね?」
リッキーは全員の顔を見た。
ミナミもレイジも香流も山背も吉岡も相沢も東堂も、理解を示し、覚悟を決めた凛々しい顔をしている。
「僕は今から田無のスタジオに行く。場所は当然、西東京市にある駅近くだ。そこまで今から移動する……。酷い混雑が無ければ2時間で着けると思う」
「その間あなたたち3人は此処で避難している事。ウチとレイジは此処に居ながら状況を見て動く。それからー……あなたたちについてだけど……」
リッキーに続いてミナミも今後の作戦の確認のための解説を行う。
今悩んだせいで言葉が詰まった。
香流と山背についてだ。
「こっちは何処へでも……。リッキーさんと共に動けと言われたら行くし、戦ってもいい。豊川が居なくなったからそっちを探しに行ってもいいしレンと連絡するのも、やれと言われたら……やるよ?」
「うーーーん……」
「リーダー、これはどうでしょうか?」
レイジが横から割り込んだ。
「少なくともリッキーさんのお供が必要です。2人ほどは。私が仲間の助けに参ります。アナタは此処で待機を。それからー……」
「待って!?アナタだけが仲間の応援に行くつもり!?」
「ですが、状況的に厳しいらしく。1人でも多く行くべきです」
と、言ってレイジは若干後悔した。
香流と山背までもが、「じゃあこっちも……」などと言い出したからだ。
「あぁもう!!待ってくれ!このままじゃ時間だけが無駄に過ぎてゆく!!もう僕が決めるよ!君と君は僕と来なさい!君はジェノ……高野君と合流もしくは連絡係!これでいいね!」
リッキーは自分の付き添いとしてミナミと香流を選んだ。
残った山背が高野との連絡。
あとはミナミの案に乗るとのことだ。
「待ってください!リーダーを外へお連れするつもりで!?」
「そうだ。ある意味1番安全……。そう思ってね」
「なるほど……」
「よし、決まったね!?さぁLet's Go!!!!」
リッキーが合図を放つ。
同時に行動を開始した。
レイジはアルマゲドンと戦う為に街へと下り、山背はバトルタワーへ。
ポケモン部の3人の高校生はドーム内で待機&リッキーたちへの報告。
そして香流とミナミとリッキーはドームの裏を抜けてスタッフ専用通路を抜けると表れた、リッキーがロケでよく使う車に急いで乗り出した。
「あの、リッキーさん!」
「なんだい?香流君」
「ミナミを選んだ理由はいいとして……何故こっちを選んだのですか?」
「君を選んだ理由かい?」
リッキーは答えながらセルを回す。
乗り心地が売りの軽自動車は見た目に反してパワフルな排気音を鳴らせた。
「君は……面白いからさ。そして強い」
「えっ……?別にこっちは……強くは無いですよ」
「いいや、そんなことは無いさ」
リッキーは思い切りアクセルを踏む。
法定速度など知るもんかと決められたスピードを超え、更に許容内の20kmをも無視して山の名残を残しているドームシティ周辺の道を走ってゆく。
「君は僕に対してジャックすると言ってみせた……。この僕だぞ?FM田無と言えばリッキーと言うほどのイメージと知名度のある僕に対して畏れを抱かずして言ってみせたんだ。その豪胆さに惚れたんだ」
「は、はぁ……」
「君は見たところ……深部とは関わりが無いように見えるね……?なのにその強さは一体何処から来るんだい?」
ーーー
単純な攻撃を避けるのは簡単である。
たとえそれが、大きな存在であっても。
2つの光線は高野洋平に命中した。
しかし、神でも騙される時は騙されるようだ。
何も無い虚空から、ゾロアークにシャツを引っ張られた高野が突然出現した。
つまり、幻相手に'はかいこうせん'を撃ったのだった。
「なんだ?もしかしてこの程度……だったら」
「倒せるかも。なんて思ったの?」
今度はパルキアが'あくうせつだん'を、ディアルガは身を守らんと'まもる'をそれぞれ放った。
高野は刃が当たる前に逃げ回る事でそれを回避する。
「ってか……此処はポケモンが使えるのか……?」
電波が拡がっている範囲よりも上に居るようだった。
むしろ逆に、頂上から地上に向かって放たなくていいのかと思ったが、今はそれによって救われている。
「ゾロアークっっ!'ナイトバースト'だ!」
着地したゾロアークは禍々しい光を放つ。
対象はディアルガでもパルキアでもない。
「……!?」
レミだ。
驚き満ちた彼女だったが、逃げる事はしない。
間に合わないというのもあったが。
だが、光はレミの目の前で曲がる。
まるで、見えない透明の壁に守られたかのように。
「……やっぱりお前のポケモンか」
カクレオン。
自身の姿を透明にして彼女を守ったのだ。
「別にアナタの真似じゃないわ?優秀な特性に擬態する能力。コレよ」
「だが今ので分かったぞ。お前はディアルガとパルキアを扱えていない」
その言葉にレミはギクっとした。
体が瞬間火照ったのを感じた。
「まずお前は2体のポケモンに命令していないよな?技構成ぐらい把握出来ると思うのだが……何故かそういうのが無い。パルキアは俺に攻撃したのにディアルガは何故か守ったぞ?勝手に動いたのか?俺のゾロアークは別として……恐らく俺の他のポケモンでも勝手に攻撃するんだがなぁ?」
膨大なデータ量故に1個人が操るスロットが無かったのだ。
そして、今顕現しているディアルガとパルキアは入力し終えて間もない。
謂わば生まれたばかりの存在なのだ。
AI自らが考え行動するという力が弱かった。
「凄いのね?よくそんな所まで分かったわね?」
「良くも悪くも勘が鋭くてな。お陰でモテない」
「そういう所よ」
ディアルガが少しばかり浮いた。
と、思うと天に向かって吠え出す。
何事かと思いきや、
「なっ……なんか落ちて来たっ……!?」
無数の星が隕石となって決して広いとは言えない空間を、屋上を包む。
'りゅうせいぐん'だ。
あくまでも狙ったのは高野のみ。
レミはディアルガの真下で白い煙が昇るのを眺めているのみだった。
星が堕ちた音が、耳が破壊されても可笑しくない音が暫く響く。
逃げ場はない。
そんな状況で、
「居ない……?もしかして死んだの?」
煙が晴れた頃。
高野の姿がヘリポートから消えていた。
アスファルトは割れ始め、バキバキになってはいたが人体が原型を留めていない程の威力ではないのは確かだ。
レミは辺りを何度も何度も見た。
そしてふと、後ろを振り返る。
そこには、
タワーを半周して戻ってきたリザードン。
と、その足を掴んでいた高野洋平が彼女に蹴りを放った、その瞬間だった。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.436 )
- 日時: 2019/12/19 17:56
- 名前: ガオケレナ (ID: l2ywbLxw)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
レミは体を3度か4度回転して止まった。
その後すぐに、カクレオンに体を支えられながら立ち上がる。
「容赦ないのね……?17歳の女の子なんですけどー……」
「世界ぶっ壊そうとしてる奴の年齢なんて関係あるかよっっ!」
とは言ったものの、レミは鼻血を出し、手で鼻の周りをおさえている。
我ながら少しやりすぎたかと罪悪感が芽生える。
と、そんな風に余計な事を考えていると、彼女のカクレオンが拳に力を溜めながらこちらへと走ってくるのが目に映った。
'グロウパンチ'だ。
「お前馬鹿か!?目の前にいるポケモンが何なのか分かってんだろうなぁ!?」
リザードンはボールに戻した。
今、高野の前には'カウンター'で迎え撃たんとするゾロアークの姿が。
しかし。
突如として背後の空気が震える。
「……はっ?」
ディアルガがゾロアークに向かって後ろから'ときのほうこう'を放ったのだ。
高野はただ、目を真ん丸にして放心することしか出来なかった。
砲撃にも思える大きな音と衝撃が全身を打つ。
「うっ……ぐあぁぁっっ!!」
高野は、この衝撃だけで屋上から吹っ飛び、真っ逆さまに落ちるのではないかと勘違いしたことにより、うつ伏せに倒れようと両手を突き出した。
(いや……ダメだ!)
背中から攻撃してきたのはディアルガ"のみ"だ。
つまり、パルキアが追撃してくる可能性が突如として過ぎる。
高野は無防備にはならんと倒れる寸前で体のバランスを保ち、そのまま回れ右をする。
案の定、パルキアが腕を振りあげようとしたその瞬間だった。
「この戦い……コイツらにも注意しなくちゃいけないのかよ!?」
バトルの対象がレミとカクレオンだけだったらどれほど楽な戦いだっただろうか。
だが、今は"世界の崩壊を防ぐ"という目的意識を持つ以上伝説のポケモンには敵意を注がねばならなくなる。
敵が3方向から向かってくるのは必然的であり確定的だった。
その意味では、高野洋平はここに立つに足る意識を持ち合わせていなかったことになる。
「ふっざけんな……俺はただ証拠を押さえようと此処に来ただけってのによぉ……」
パルキアの'あくうせつだん'が放たれる。
高野は転がってそれを避け、ゾロアークも高く翔んで躱した。
同時にカクレオンからも距離を離す。
だが、高野はと言うと。
「てめーらの理不尽バトルには付き合ってられるかってーの!!ふははははは!!!」
むしろお前が悪役だと言わんばかりの高笑いをしながら屋上の手すりを掴み。
そのまま飛び降りた。
「えっ……?ちょっ、ええっ!?」
誰よりも驚いたのは敵であるはずのレミだった。
それまで戦う気満々だった男が捨て台詞の1つを吐いて落ちて行ったのだから驚くのも無理は無い。
しかし、無策で飛んだ高野ではない。
「ふんっ!」
重力に逆らってボールを真上に投げた。
それだけでもとてつもなく重く感じてしまう。
出てきたのはリザードンだ。
リザードンは視界に映った、地上へと落下している主人を何とか守らねばと早々に白いワイシャツをその手で掴んでは思い切り羽ばたく。
下手をすれば死へと一直線のそんな状況で、
「もしもし?香流か!?」
リザードンに助けられた身でありながら、彼は呑気に電話していた。
呆れたリザードンが主を真上へと放り投げる。
「あぁぁぁあアアア!!!!やめろリザーァァァドォォォォン!!!」
ーーー
「レン……?」
香流は硬直した。
突然高野から電話が掛かってきたと思ったら断末魔の絶叫が彼の鼓膜を直撃したからだ。
「れ、レン……大丈夫?何があったんだ!?」
「ちょ……あまり騒がないでくれ、ラジオが聴こえないっっ!!」
リッキーの軽自動車で尚も移動中の香流だったが、当の本人にそのように注意されるものの意識がそちらに向くことはなかった。
『もしもし……悪い、心配させて……』
「レン!?無事か!?」
『大丈夫ダイジョーブ……』
電話越しの呼吸は整いつつあった。
放り投げられた高野は、そのままリザードンにキャッチされてタワー外周をぐるぐると回っているのだから。
『いや今さ……何してるのかなーと思って』
「丁度よかった!今の状況を伝えたいと思っていたんだよ。ずっとね!!」
香流はとにかく喋り続けた。
今までに何があったのかを。
今、たった今何をしているのかを。
ーーー
「えっと……確かレンはこの辺りに居るんだったよな……!?」
山背恒平は走り続けた。
高野が居るとされているバトルタワーに向かって。
その入口手前に差し掛かろうとしていた頃だった。
「あら?あなたは……」
「あれっ!?レンと一緒だったはずじゃ……」
山背は地上に舞い戻ったメイと鉢合わせした。
「どうしてレンの大学の友達が此処に?」
「そういうあなたこそ!僕はレンが何をしているのか……今の状況を説明にと思って此処へ……」
「あのねぇ……今の時代スマホがあるのよ?それくらい連絡で済ませなさいよー」
「それだけじゃ足りないから来たんだよっ!!レンは何処だ!?」
あまりの迫力にメイは若干圧された。
そして一瞬迷った。
この人は一般人のはずだろう?と。
自分を深部の人間と知っているはずだろう?と。
相手が誰であれ引かない彼の強さにメイは思わず引いてしまったのだ。
だが、あくまでも一瞬。
すぐに我に返る。
「ダメよ、やめなさい」
グイッと、メイは山背の半袖のシャツを掴んでは引っ張った。
「ちょっ!!何するんですか!」
「やめなさいと言っているの。レンは今この建物の屋上。そこでディアルガとパルキア2体のポケモンを相手取って戦っているのよ」
「なっ……、何でそんなことを!?」
自分が聞いていた話と大分違う。
大きく戸惑いながら山背は、そこで足を止めた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.437 )
- 日時: 2019/12/27 18:38
- 名前: ガオケレナ (ID: iTYEVpoy)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「な……何をしているのですか……?」
息を切らして戦地へと到着したレイジは戦慄した。
そこには見慣れた、しかし今このタイミングで見るには不自然すぎる人間が居たのだから。
「何故……あなたが此処に居るのですか!?」
「うるせぇぇ!突っ立ってる暇あったら戦え!!」
そこには、誰よりも深部の人間らしく戦う豊川の姿が。
メガシンカを果たしたヘラクロスがツノをぶん回しては人間ごとポケモンを弾き飛ばしている。
「コイツ……勝手に来て勝手に戦ってやがってよォ……どうなってんだ?」
「私に聞かれましてもねぇ……?とりあえずは……」
レイジは、既にバテており血まみれのルークを見つめつつ更にその奥にいる敵を見据える。
ボールを投げ、ゲンガーをメガシンカさせては'シャドーボール'を放つ。
「ここを平定させて宜しいので?」
「勝手にやれ。ついでにアレも連れ戻せよ」
ルークの尖った言葉に反してその表情は柔らかかった。
一時は死を覚悟した。
しかしその実、味方が来てくれると有難いのが正直なところだ。
いつの間にか、彼は恐れを抱かなくなった。
ーーー
「そういう事か……わかった。ありがとう」
リザードンに乗って急降下しながら高野は1から10までの話を聞くと通話をやめてはスマホをしまった。
「良かった……状況は俺の予想に反して良い方向に向かっている……!」
あまりに傾きすぎて本来の自分の目的が根こそぎ意味を失ったものとなったが、それはこれから直していけばいい話だ。
高野はリザードンに再び登るように指示する。
「もう一度屋上に向かってくれ。作戦を変更する」
高野は突風を体に受けながらこれまでに起こったこと、これから行うこと、そして自分自身に課せた使命を思い出しては決して引かずに進み続ける。
「このまま降りて仲間と合流するなり、作戦の練り直しをしても良かったが……それだけじゃダメだ。またあのポケモンたちによって地上が攻撃される……っ!!俺がどうにかして時間稼ぎするんだ」
ディアルガとパルキアは悪意を察知して、そちらへ攻撃を行う。
それは、天空から遥か彼方の地上であってもだ。
しかし、高野は身を持って気付いたのだ。
自分が屋上にいる間、自身がレミと戦っていた間は2柱のポケモンは地上への攻撃をしなくなった。
理由は簡単で、目の前に自分という名の明確な敵が居たからだ。
「アイツらが局に到着するまでの間!時間にして1時間か2時間するかしないかだが……その間世界を守ってやるよ……。俺は、世界最強と呼ばれたジェノサイド様なんだからよォ!!」
無謀なのは分かっていた。
ひとたび気を緩めば簡単に命が散ってしまう戦いである事も知っていた。
だが、ここで引いては駄目なのだ。
地上で逃げ惑っている力の無い罪無き人々を守る事。
そんな強い想いが己を鼓舞する。
しかし、それだけでは無かった。
世界の崩壊。
それは、彼にとってはもう1つの意味があった。
(俺は"あの日"決めたんだ……。殲滅者に込めた意味を……。必ず、守り抜くと決めたはずだ)
その瞼の裏に映るのは、1人の少女。
これまでの人生で、そして、この世界で誰よりも愛した1人の少女。
「"アイツ"の世界を守り続ける!!だからこそ、下らねぇ理由でこの世を壊される訳にはいかねぇぇんだよぉぉぉ!!!!」
高野は叫びながらリザードンから飛び降りる。
屋上に到達するだけでは飽き足らず、更にその上を飛び続けようとしていたからだ。
ドン、と硬い物にぶつかった音が響く。
高野がヘリポートの真上に着地した音だ。
足から体の頂点にかけて痺れが伝う。
股間がやけに痛み出した。
その間高野は少しだけ時を戻したい衝動に駆られる。
翔ぶ距離が高すぎたと。
「あら?理不尽なバトルはしないはずじゃあ?」
「事情が変わったんだよ……。俺は今から本気でテメェに勝ちに行く!!」
ポケットの中で1つのボールを握り締めながら高野は堂々と宣言した。
彼女の背後で睨むディアルガとパルキアに臆すること無く。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.438 )
- 日時: 2019/12/28 18:09
- 名前: ガオケレナ (ID: Rzqqc.Qm)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「えーーっとぉ……待ってね……?」
リッキーは強く念じた。
運転に集中しろと。
香流の話は聞くなと。軽く流せと。
その内容が衝撃的だった。
そのせいで集中力が乱れる。フロントを見つめる視界がぼやけるほどに。
「つまり君が……ジェノサイド、じゃなかった。高野君がジェノサイドでなくなった原因なのね?」
「原因って……まぁ、そうですけど」
知らなかった。
まさか高野洋平ともあろう者が普通のトレーナーに負けたことで深部を去った事を。突然失踪したとしか聞かされていなかった話の裏にまさか彼が関わっていたなどと。
だが、その結果リッキーは理解した。
放送局をジャックすると突然言い出す気の強さ。
その根本的なキッカケはこれを含めた彼の深部との関わり。その戦いにあった事を。
「で、でもあれなのよ?あの時は本当に厳しい状況で……」
「分かってる」
ミナミはフォローのつもりだった。
当時のジェノサイドが敵対組織と議会全体から追われていた、正に詰み状態であった事を伝えようと。
しかし、それは外から見ても公表されている言わば周知の事実。
「あの頃の彼等が八方塞がりだったのは知っていたよ。世界のパワーバランスを破壊したSランク組織ゼロット、その戦いの結果もう1つのSランクアルマゲドンからも狙われ、そのような混乱の結果議会が見捨てた。流石のジェノサイドでもどうしようも無かったはずだ」
戦いの果てに。
彼は、高野洋平は仲間に何と指示したか。
その間自分は何をしていたのか。
「僕はね……今の話を聞いて正直ゾッとしたよ」
「香流君の正体に?それとも、意外な事実に?」
「それもそうだが。ちょっと違う」
リッキーはもう後ろを見なかった。
前方の車の速度が下がってきたからだ。
「あまりにも都合が良すぎる。そう思わないか?」
「都合?ウチはてっきりあの人の考えた事だと思っていたけど……」
「あんな状況で君たちが来るなんて予想もしていなかったはずだ。なのに君たちは本当に深部とは関係ないのに戦いに混ざり、散々翻弄された挙句にジェノサイドに辿り着いた。ここだけでも奇跡に近いよ。……なぁ、香流君。君は本当にジェノサイドと……簡単な口約束を交わしただけで戦ったのかい?」
リッキーの重い口ぶりからの質問。
それに対し、
香流はすぐに返事した。
あの日。
2014年12月18日。
長池公園という煉瓦の橋と森しかないごく普通の自然公園で。
2人は確かに交わした。
「はい。こっちとレンは……。レンは自分が負けたら深部を辞めると宣言してこっちと戦いました」
「その時の彼は……本気だったかな?」
遂にリッキーの車は前の車に追い付いた。
法定速度よりも20㎞スピードを落としてノロノロと走る。
「えっ?」
「僕はね、こう思えて仕方ないんだ。"このチャンスを逃してはなるものか"ってね」
リッキーの抱いた思い。
それは、高野洋平が"わざと"戦いに負けるよう仕向けたのではないかと。
「そう言えば……レンはラティアスを使って来なかった!」
あの時、実は香流は煽ったはずだった。
ゼロットを完膚無きまでに叩き潰し、正に力の差を見せつけたポケモンを。
準伝説とは言えど、普通のポケモンとは全く別物だとすべての傍観者に見せつけたあのバトル。
それを再現しろと。
「でもレンは……何故か拒否した。何か強く躊躇うような感じだったけれど……確かにレンは使えば絶対有利だったポケモンを使わなかった!」
「……な、何で君たちは、そうやってぶっ飛んでるのかなぁ!?準伝説のポケモンなんて我々には使えないはずなんだよ!?今回の騒動といいジェノサイドといい……何で彼らには特別なポケモンが使えるんだい!?」
それを聞かれても困ると言いたげな顔を香流とミナミは同時に示した。
理由があるとしても分かるわけがないのだ。
「だが……これでハッキリしたね?ジェノサイドは状況を変えるためにわざと負けた。君達を利用する形で。それが成功したか否かは君たちが1番知っているはずだ」
車内はシンと静まり返る。
香流は香流で色々な目に遭ってきたし、ミナミはミナミで上手く立ち回ることが出来たからだ。
「おっと、ダメだ。ここまでだな」
そして、リッキーも残念そうに呟く。
車は完全に停まってしまった。
渋滞である。
「あと1時間から半で着く予定だったのに……此処で停まっちゃあ2時間は掛かるな」
「2時間ですって!?」
ミナミが突如として叫ぶ。
「異変が起きて2時間経とうとしているのよ!?このままじゃあ間に合わないわよ!!」
場所はドームシティと西東京市の中間地点を通り過ぎて暫くした辺りだ。
幅の広い都道の真ん中らしかった。
「どうするのよ!?大体あなたがもう少し速く運転していれば……」
「こんな日にスピード出したって大した変化などある訳がない!……と言うかこの為に君たちを用意したんじゃないか!」
リッキーはギアをパーキングにしてサイドブレーキを掛けると足を離して後部座席の方へと振り向いた。
「香流くん、ミナミさん。どちらか空を飛べるポケモンは持っているかい?」
瞬間に察する。
1人を置いて残りの2人で空を移動するのだと。
そしてその役目は自分なのだと。
香流は人2人を乗せて速く飛べるポケモンなど持っていないからだ。
「ウチがカイリュー持ってるけど……」
「ナイス!じゃあ説明はいらないね?香流くん。車を任せた。今から僕と彼女で直接ラジオ局行ってくるからさ!」
「ええっ!?ちょ、こっちは運転したことなんて……」
香流の言葉を無視してリッキーはドアを蹴破ったかのように勢い良く開けると外へと飛び出し、ミナミの元へ走る。
「早く!さっさと行くぞ!間に合わせるんだ!」
ミナミは取り残される香流を心配しつつ相当に動揺しながらボールを取り出しては窓を開けて外へと放つ。
「ゴメン……ウチ……」
「こっちは何とかするよ……」
その場を任せるかのように、しかし仲間を見捨てる素振りにも見えるようにしてカイリューはリッキーとミナミを背に乗せると上空へと羽ばたくと。
突如として疾風の如く飛び去った。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.439 )
- 日時: 2020/01/02 19:40
- 名前: ガオケレナ (ID: 8ZwPSH9J)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「僕はどうすればいいですか?」
「何も出来ないわ。あなたも私も。素直に戻った方がいいかも」
山背とメイは時折バトルタワーを眺めた。
これより上に登ってはみたいと言う思いがあることはあるものの、屋上までの通路は途中で破壊されたために行くことは不可能。
ポケモンの力で飛ぼうとしても電波の力に遮られるのでこちらもまた不可能だ。
山背はメイと共に避難所に戻る他はなかった。
「別に悔しがる必要はないわ?あなたはあなたのやれる事は最大限果たせた」
「でも、レンとは接触出来なかった……」
「逆に考えるべきよ。今のこの状況でレンに会えたとしても、目の前にはディアルガとパルキア。あなたには戦える覚悟と逃げられる勇気があるかしら?あるのならばいいけれど」
あるはずが無かった。
山背は幾ら知識で深部の事を多少知っていたにしても、ただ知っただけに過ぎない。
それを活かす行動が出来るかと問われたら恐らく彼には出来ないだろう。
決してメイも山背を責めたわけでも煽ったわけでもない。
言葉はキツいかもしれないが、そうでないと若さ故の狂気というものは抑えられない。
特に、彼を含む高野の友人は深部の戦いに少なからず影響を与えているのだ。
それなりに釘を刺さないといけないのは時折聞いた高野の話と彼の記憶で教わった。
「さぁ、戻りましょう?平穏な世界へ」
ーーー
ゲッコウガの'ハイドロポンプ'が天を貫く勢いであるかのようだった。
それはディアルガの顎部分に突き刺さると水流に圧されて体がぐらついた。
バランスが崩れ、片足が浮く。
しかし、倒れるにいたらない。
「クソっ、駄目か!?」
「まさか本気で倒す気でいるの?とうとう狂っちゃったかしら?」
上空から攻撃したゲッコウガが着地したその地点をあらかじめ狙っていたと言わんばかりに、'グロウパンチ'を纏っていたカクレオンが迫る。
'へんげんじざい'でタイプは変化しているため相手から抜群を取られることは無いのだが、
「うっぜえええぇぇぇーー!!」
高野が叫び、ゾロアークが間に割り込む。
カクレオンに打つのは'ふいうち'だ。
細く黒く長い肘がカクレオンの喉元へと刺さる。
カクレオンはえずきながら、モロに直撃した部分を手で抑えながら手足をばたつかせて悶える。
敵の技は不発した。
しかし直後にディアルガの'はかいこうせん'がやって来る。
その光線は仰向けになっているカクレオンの鼻先を掠め、ゾロアークはひゅんと姿を消すようにしてそれを躱し、高野も真横に走ってそれから逃れる。
「メンドくせぇぇぇ!!なんで全員の相手しなきゃならねぇんだ!」
と、いう高野の本音はパルキアの敵意を生む。
パルキアは体全体の力を拳に込めると、1つの球を生み出し、打ち出した。
'はどうだん'だ。
必ず直撃する技。
どんなに回避を重ねても、波動を込めたエネルギー弾はどこまでも追尾してくるのだ。
高野の危機を案じたゲッコウガが先に動く。
'ハイドロポンプ'を打ち込み、'はどうだん'と相殺、爆発し霧散させる。
「'はどうだん'そのものに自我が無くて良かったぜ。でなければ、ゲッコウガの技すらも避けて俺に向かってくるだろうからなぁ?」
一応皮肉のつもりだった。
それまで生き物か機械かという論争を繰り広げていた自分自身やそんな世界そのものに、終止符を打った現実そのものに対する。
「だが変だなぁ?神ともあろうポケモンが、ほんの少しばかりの工夫も凝らせないのか?俺がこの前戦った杉山とかいう奴のルカリオは、打ち出した'はどうだん'を操作出来ていたぞ?それすらも出来ないのか?」
「ルカリオにはルカリオの……この子たちにはこの子たちの特徴ってものがあるのよ!その気になれば、時間そのものを操って……」
「やれよ。出来るものならな」
高野洋平はこれでもかと挑発する。
レミもそれを理解していながら、歯痒く感じていた。
「アナタ……知っているのね?……この子たちの特徴を……」
「まぁな。そしてそれは、もう少しすればやって来る。俺を此処で嬲り殺しにしても構わないが、果たしてそれだけでお前らにとって勝利となるのか……よーく考えた方がいいぞ」
ゾッとする違和感の塊のようだった。
何処で、どのように彼がディアルガとパルキアの特徴及び弱点を見出したのか。そして何故分かったのか。
レミは、それが不思議でならなかった。
「やはりアナタとは……今此処で決着を付けるべきなのね」
「まぁ……それは俺も同じだ。俺だってバルバロッサの世話になった人間の1人なんだからな?」
ゾロアークは真正面に向かって'かえんほうしゃ'を吐き、カクレオンは回転しながらジャンプしてそれを躱す。
そのまま飛び膝蹴りの要領でカクレオンは突っ立っているだけのゾロアーク目掛けて飛び掛った。
身体中から力が溢れているようだった。
それが'おんがえし'だと気付くのに時間が掛かったが、
「それが来るのを待っていたぜ!」
高野は叫び、ゾロアークに命令した。
迎え撃つように。
「ノーマルタイプに変化したアイツにぶっぱなしてやれ!'ナイトバースト'ォォ!!」
ゾロアークの腕から、口から、全身から大量のオーラが溢れ出ると押されることなくカクレオンを呑み込んでいった。
「'へんげんじざい'のカクレオン……。確かに厄介なポケモンだがタイミングさえ計れば負けない相手じゃない……。俺がゲッコウガをよく使う人間だと知っておくべきだったな?」
誇らしげに語る高野の声を聞きながらレミは墜落し倒れたカクレオンをボールに戻す。
「随分と余裕ね?何か見出したから?でもそんな事これからも言っていられるかしら?」
レミは再び構える。
手にモンスターボールを握りながら。
「アナタのゾロアークなんか……この子の前では怖くも何ともないわ!」
出てきたポケモンとは。
最強最悪と言わざるを得ないものだった。
「出てきてちょうだい……ガルーラ!」
その刹那、首から下げていたロケットから眩い光が灯る。
「メガシンカ……それも、メガガルーラだと?」
高野は確かに感じ取っていた。
今から起きるバトルはこれまで以上に、沼にはまるような深いものになる事に。
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