二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/11/28 13:33
名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走カーチェイス>>536-

行間
>>518,>>525,>>535

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.190 )
日時: 2019/01/21 12:09
名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


バンギラスとジャローダ。
相性を考えるとジェノサイドの分が悪い。
だがジェノサイドはそれに関し特に気にすることもなく、内ポケットから白く細い杖を取り出し、掲げる。

「行くぞ!」

ポケモンをメガシンカさせるためのデバイス。メガワンド。
よく見ると杖の取っ手部分にキーストーンが埋め込まれている。今も光を放っていた。
つまりジェノサイドは杖の先端部分を握っている。傍から見れば杖の使い方を間違っている。

キーシュがほくそ笑むのも束の間、バンギラスは強い光とエネルギーの渦に包まれ、一瞬にしてメガバンギラスへと姿を変えた。
満ちるエネルギーで体中に力がみなぎり、バンギラスは吼える。
どこからかともなく砂嵐が吹き荒れる。

「ぶわっ、スゲェな……室内だってのに砂嵐が舞ってやがるよ。誰が掃除すんだコレ」

キーシュは思わず長い袖で顔を覆う。珍しく意味を殆ど成さなかった奇抜な格好がここで役に立った。

「なるほど……。相性が不利でもメガシンカでその穴を埋めると来たか。どんな相手でも上に立とうとするか……だがな」

キーシュはジャローダに命令する。'リーフストーム'と。
鋭く、肌をも裂きそうな尖った大量の葉が嵐を伴って突っ込んで来た。

「'あくのはどう'」

バンギラスは全身から黒いオーラを飛ばし、'リーフストーム'と相打ちに持ち込む。
ドン、と白煙が発生し、'リーフストーム'を打ち消した。
バンギラスは後ろに下がり、距離を取る。

「そんな事したって無駄だって」

キーシュは再び'リーフストーム'を指示する。

再び嵐が巻き起こる。

「バンギラス、もう一度'あくのはどう'だ」

こちらも再び黒いオーラを発し、相打ちを狙う。

だが。

鋭い嵐は留まることなく、黒いオーラにぶつかりあっても、それを徐々に押しのけている。
'あくのはどう'では止めることが出来なくなっていた。

「威力が……高くなっている……!?」

このままでは貫かれてダメージを負ってしまう。

「くそっ、攻撃はいい。躱せ!」

バンギラスはそれに呼応し、黒いオーラを打つのを止めると、横に跳ぶことで辛くも避けることができた。

「やっと気づいたか。遅ぇよ」

キーシュは勝負をついていないというのに、勝ち誇ったような笑みを浮かべている。

「こいつの特性は'あまのじゃく'。'リーフストーム'を打つ度に本来下がる特攻が上がっていくのさ」

「お、おい待てよ。まだあまのじゃくジャローダは世に出回っていないはず。お前はどうやって手に入れたって言うんだ!」

「お前本当に深部の王かよ……その実力と名前をうまく扱えていないらしいな」

キーシュはジャローダが入ったボールを見つめたあと、ジャローダ近づき、顔を撫でる。

「こいつはこれから配信されるポケモンだ。来年1月9日からお前も使えるようになるぜ?こいつを使えるようになるためのシリアルコードは今月の28日に公開……約二週間後ってところかな。んで、俺が何で使えるかって?簡単に言えば深部と議会のツテ……かな」

二人はここに違いが現れていると見てもいい。

ゼロットは人を集め利用するカリスマ性を秘め、深部の頂点という肩書きを利用して多くの富を得ている。

対してジェノサイドは、人を集めようとしても、敵が多すぎる故に中々集まりにくい。そのせいで情報もモノも集めにくく、カリスマ性を発揮しにくい。

両者の違いがはっきり見られるその例であろう。
それを察し、ジェノサイドは歯噛みした。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.191 )
日時: 2019/01/21 13:33
名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「ハハッ!悔しそうな顔してるねぇジェノサイド」

両者の違いを思い知らされたのを察知され、そんな事を言ってはジェノサイドを挑発するキーシュ。
だが、既にジェノサイドは彼に対し怒りを抱いていたのでそれはほぼ無意味だった。

怒りによって冷静さを欠き、多少なるプレイングのミスを生み出してしまう事以外は。

「'かえんほうしゃ'」

バンギラスの口から炎が吹き出る。

「おぉっ?」

タイミングがズレたことにより、反応が遅れる。素早い身のこなしで避けてみるも、ジャローダは尻尾に直撃してしまう。
見た感じ、幸いにも火傷にはなっていないみたいだ。

「特殊型のバンギか。正統派を名乗る割には面白いモン使ってんじゃねぇか」

「'おにび'が席巻してる今日この頃だ。どいつもこいつも物理一本って訳にはいかねぇよ」

「……にしても'かえんほうしゃ'ときたか。ただでさえ威力下がってんのに'だいもんじ'ではなく'かえんほうしゃ'とはね。そんなに安定重視なのか?そんな手抜き加減じゃ俺に勝とうだなんて思わないでもらいたいね!」

地を這っている割には速すぎるその動きに若干気持ち悪さを覚えつつも、ジャローダは迫る。
例外を除き、ほとんどの場合、特殊技は銃器に例えられることもある。
特にジェノサイドの、バンギラスが特殊技を放つ時は一瞬だがスキが生まれる。
ジャローダが近距離から攻撃することによってそれらの技を牽制する意味合いがあるのだ。

「ほらほら!テメェのバンギぜんっぜん攻撃できてねぇぜぇ!?」

尻尾をビュンビュン振り回し、一切の攻撃を寄せ付けないジャローダ。
後ろへと徐々に徐々に下がりながら尻尾を避けるバンギラス。

(くそっ、埒があかねぇ……)

ジェノサイドがストレスを募らせた時だった。
それまでしつこかったジャローダの攻撃がいきなり、ピタッと嘘のように止まる。

「……?」

ジェノサイドが不思議に思い、バンギラスもそれに反応して立ち止まった瞬間。

「'へびにらみ'」

その邪眼にまるで体が固まりそうなくらいに恐ろしい眼を向けられ、直後に体が痺れだす。

「なっ、クソッ……!?」

読みを完全に外してしまった。バンギラスは体の痺れにより片膝をついて小刻みに体を震わしてしまう。

「古代の人々が一番恐れた呪いって何だと思う?まさに悪魔が対象を殺すために魅せる眼……邪眼だよ」

キーシュがOKのサインの要領でそれを自分の右目に持っていく。
まるで、力無き他部族を嘲るように。

バンギラスの目と鼻の先にはジャローダがいる。
最早守る手立てはなかった。

「そんじゃ、今度こそブチ込みますかね。ジャローダ、'リーフストーム'」

至近距離でさらに威力の上がった大技が放たれるその瞬間。

本来ならば敗北を悟るその瞬間にも、彼は諦めることはなく。
ニヤッと一瞬口元に笑みを浮かべると。

バチッ!
と、ジャローダが何かの力により吹っ飛ばされた。

「なにっ!?何だ今の力は……麻痺状態の……そもそもバンギラスなんかが持てるポテンシャルじゃねぇぞ!」

キーシュが慌てふためき、ジャローダの態勢が崩れる。
それにより一気に二匹の距離が開いた。

たとえ麻痺であっても技の一つは打てる余裕が生まれる。

「今しかねぇっ!!バンギラス!'かえんほうしゃ'ァ!!」

隙が生まれ、瞬時に立て直そうとしたその一瞬を突く。

今度こそ、ジャローダに炎が直撃した。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.192 )
日時: 2019/01/21 13:38
名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


圧倒的不利。
誰もがそう思った事だろう。

バンギラスとジャローダの相性でさえ悪かったのにそれに加えて麻痺状態である。

まともに戦える状態じゃない。
本来ならば敗北を察して死に出しへと扱いを変えるために作戦もすべて一から考え直す事もあったかもしれない。

それが"本当に"バンギラスであれば。

ジャローダは倒れた。
キーシュはまるで感情を失ったかのような顔をすると無言でボールをジャローダに向け、戻す。

仮にもジェノサイドは深部最強を名乗り、そう評価されている。たとえ怒りが制御できなくとも、それを留めた上で戦うための頭の使い分けくらいは出来る器用さは持ち合わせている。安い挑発や煽りに一々反応してはその命が危うくなってしまうからだ。

「面白ぇ。やっぱ面白ぇよジェノサイド。テメェは。そうでなければ深部最強にふさわしき者達の戦いとは言えねぇからよ。何となくテメェが深部最強と言われる意味が分かってきたよ。だが」

キーシュは言いながらしばらくポケットを漁ってから一個のモンスターボールを取り出す。他のボールとは見分けがつかないからこそ探すのに時間がかかったのだろうか。

「あくまでも意味が分かっただけだ。俺は断じてテメェが最強だとか深部一だとかは認めねぇぞォ!!」
ボールは投げずに天に向かって掲げた。

すると、ボーマンダがゆっくりと、凛々しい姿を魅せながら降りるように現れる。

「神の最高傑作がベヒモスならば、俺の最高傑作はコイツだ。テメェ如きが立ち向かえる存在なんかじゃねぇ」

キーシュは座っていた玉座に置きっぱなしだった分厚く、古い西洋風のような外観をした本を手に取ると、適当にページを捲る。

「いいか、メガシンカを使えるのはテメェやテメェが導いた深部連合のザコだけとは限らねぇんだぜ?」

手で押さえたページには、一見読めなさそうな文字の下部に、キーストーンが嵌っている。よく見ると、数ページ分を重ねて分厚いページを作っていた。

「開け、メガタナハ……」

本から怪しい光が察せられ、それに呼応するかのようにボーマンダも光と自然のエネルギーに包まれる。
まさに、先程のバンギラスと同じ光景だ。

ドン!!とエネルギーの衝撃音を響かせ、まるで三日月のような巨大で鋭い翼へと変化させたメガボーマンダの姿がそこにはあった。

「見せてみろよジェノサイド。テメェの足掻きと限界をよ」


ーーー

突如電話が鳴った。音を完全に消していたため、マナーモードとなったそのスマホが強く振動することによって初めて電話が来ている事に気づく。

「もしもし?ミナミさんですか?はい。ハヤテです」

ハヤテの前には闘争心剥き出しの香流がいる。バトルは始まっているものの、ギルガルドとウォーグルの戦いは拮抗していた。

「はい……はい。了解しました。リーダーが無理矢理突破した穴?分かりました。ではこちらは……」

ハヤテは香流をチラッと見る。
それからすぐに通話を続けた。

「私も向かいます。ただ、そちらへ行くのは面倒なのでどうにかして行きますよ。はい、ではまた」

電話を切るとため息を軽くついてから自分のポケモンをボールへと戻した。

「えっ、ちょっ……まだ戦いは終わってないです」

「戦う理由がなくなりました」

いきなりの行動に焦る香流をよそに、ハヤテはきっぱりと言い放つ。

「私の所のリーダーとあなたが協力しているリーダーとの戦いが始まっているみたいです。つまり、私たちがここで争っていても無駄なだけですよ」

ハヤテは自分なりにしっかりと説明したはずだが、意味が分からないのかいつまで経ってもギルガルドを戻さない。

「私たちが戦っていても、リーダー同士で戦い、勝敗が決着してしまえばどんなにあなたが私を打ちのめしても意味はないということです。多くの人間があなたの友達を狙うのはそういう事なんですよ」

「……それでは、どうしろと言うのですか?」

「案内してください」

不安そうな顔をして何をすべきか分からないとでも言いたげな香流を、感情の籠らない声で導かせる。それから、彼が意思の弱い男だとハヤテは察することができた。

うまく扱えるかもしれないと読んだうえで。

「案内してください。ここから先は行き止まりなんでしょう?ゼロットのリーダーがいる部屋まで案内してくださいよ。裏口か何かがあるんでしょう?」

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.193 )
日時: 2019/01/21 13:46
名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


ミナミとケンゾウは吉川と共にあれからジェノサイドの走っていった方向へと歩いていた。
途中で待ち伏せしてたのか、石井とも合流する。

「あと一人は……ハヤテのとこだったっけか」

ついさっきミナミがハヤテに連絡したはずなのにケンゾウがこんなとぼけた事を言ってくる。
知っているはずなのでミナミは無視をした。

「はぁ。結局あんたたちもリーダーと戦うために来てた訳かぁ。ただでさえゼロットの相手で忙しいのにこんな形で手間を増やされるなんて……」

「俺たちはあいつを止めにきたんだ。元はと言えばあいつがこんな事をしなければここまで大きくなる事はなかったのに……」

吉川の発言である。

やり取りを続けているうちに、どうやら彼等は自分たちは間違った事をしているのかもしれない。だが悪い事をしているつもりはない、というスタンスのようだという事が分かってきた。
悪い事と言うのは恐らくだがジェノサイドと比較しての言葉だろう。確かに悪い事は一切していない彼等だが、ジェノサイドからしたらいい迷惑である。

(少なからずリーダーに影響されてるクチね……これ)

つくづく彼が、高野洋平という男は人を動かす原動力だと思わされる。

「でも、よくもまぁ深部同士の、しかもSランク同士の戦いに参加しようと思ったよね?ウチが最初に色々喋ったせいもあるけど。それでもよく来ようと思ったよね?」

「だってわざわざ部室にあの人来たんだし、前々からレンの考えや行動がおかしいって皆思ってたことだし」

「あんたたちってアホだよね」

「あ、やっぱりー?」

緊張感漂う空気だと言うのに、ミナミと会話していた石井は馬鹿笑いしてみせた。
あまりにもこれらのギャップによりイラッとするも、やはり可笑しくて笑ってしまうミナミの姿もあった。

人と人のコミュニティとは不思議なものである。
今の彼等のように少人数で作られたコミュニティの場合、何かワンアクションあると、それが全員に何故か伝染してしまう。

今の彼等は笑っていた。
まるで今がゼロットと戦っているだなんて微塵も思えないくらい。
まるで自分たちが深部とは関係ない、百パーセント一般人の、そこらに居そうな学生達のように。

「何で俺達戦ってんだろうな」

終いには深部の人間であるケンゾウがこんな事を言う始末である。
普段ならば鬼の顔をして叱責するであろう発言だが。

「それはあんたが深部の人間だから」

特に気にすることもなく平然とミナミも調子に乗ってみせる。

そんな異様な空気を発しながら彼等は、ジェノサイドが空けた大穴の付近へと到着する。

「ここに……この階の下に、奴がいる」

「この下?この穴を見た感じ物理的に突破したみたいだけど」

言いながらミナミは周りをぐるっと見てみる。冷たそうな石の壁が広がるだけだ。

「そしたらあんたたちはどっから来たのか分からなくなるんだけど」

「俺達は……」

吉川が左右の壁を特に集中して眺める。時には触れて何かを確認しているようだ。

「ここには無いな」

「あー、隠し扉ね」

その初心者のような行動を見て一発で分かった。
扉のある所とない所の違いを理解していないようにも見える。違いがあってはその時点でダメであるが。

「多分もう二人は戦ってるよ。早く行こう」

四人はぽっかりと空いた大穴へと吸い込まれるように落ちていく。


ーーー

ギギ……と、錆びた金属が擦れる音がした。
重い扉を開けると、目の前には讃美歌が流れているお洒落なスピーカーと、ステージが。
ハヤテはその広すぎる部屋に足を入れる。

「すごいですね。僕達の基地も人数のせいでかなり広くしていますが、こっちの方が広いかも」

それに、と続け様に振り向く。

「隠し扉と来ましたか。全く見分けがつかなかったのでかなり上手く作られていますね。敵ながらさすがとしか」

「ここから……どうするんです?」

香流は心配そうに遠くの状況とハヤテを交互に見る。
気になってハヤテもそちらを見てみると、

キーシュとジェノサイドが既に戦いを始めていた。
ジェノサイドはメガバンギラスを使用しているようで、その相手は……。

「ボーマンダ……?あれって、メガボーマンダじゃないですか!!」

時間的にオメガルビー、アルファサファイアのシナリオをプレイしていてもおかしくない時期である。
それとは逆に、ジェノサイドのリーダーはまだ殿堂入りをしていないのだから。

だが、今ここでメガボーマンダを使っていると言うことは。

「シナリオを終わらせ、ボーマンダを育成し、こっちの世界でボーマンダのメガストーンを発見したという事じゃないですか!!」

その早い行動力には感心する部分があり、
同時に、未知数なポケモンを相手にするという点では不安が過ぎる。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.194 )
日時: 2019/01/21 13:55
名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「うわあぁぁ!」

「うわっ、なんじゃこりゃっ!!」

間抜けな四人は真っ逆さまに落ちていく。
足場をよく見ると破壊した跡なのかコンクリートの残骸が無数に転がっている。

あまり深くない穴だと思ってたのが間違いだった。
体感だが穴の深さは二階部分に相当する。落ちながらミナミはそう考えた。

ふと隣を見ると、カチャカチャと物音を立てながらモンスターボールを取り出していた石井の姿が。
モンスターボール同士擦れる音だったかと思っていると、この状況にも関わらず冷静を装って二つほどボールを投げた。

出てきて床に着地したのはカビゴンとチルタリスだ。要は「クッションにしろ」とでも言うのだろうか。
ミナミと石井はカビゴンに、吉川はチルタリスに向かって落ちていくのが確認できた。

「お、俺はぁぁ!?」

何も用意されていないためにこのままでは大怪我必至のケンゾウは叫ぶように助けを求める。

「あんたはどうにかしなさい!」

微かにミナミのそんな声が聴こえ、不満を怒鳴り散らすも、このままではただ墜落するだけだ。

「くっそ……もうどうにでもなれ!!」

適当に指に触れたポケットの中のボールをすぐに取り出し、床に向かって思い切り投げる。

「……!?ハリテヤマかっ!!」

ひとまず安心できそうなポケモンだった。
あとはハリテヤマがキャッチするのを祈るだけ。

あとの三人は先にポケモンに着地することで無傷でいられた。
三人ともポケモンに着地する瞬間に、ぼすっと柔らかい何かに突っ込むようなおかしな音がする。
それでも痛いことには変わりないが。

「いっ……たぁー!もう、何でこんなにも深いのよ」

カビゴンの腹の上に全身を打ったミナミが起き上がる。
隣には突っ伏している石井の姿もあった。

「ちょ、ちょっと大丈夫!?まさか死んでなんかいないよね?」

びっくりして体を揺さぶるが反応はない。
その変わりに、フフフ……と不気味な笑い声が聴こえた。

「生きてるんかい」

呆れて放っていたら自分から起き上がった。やはり怪我はないようだ。

「あんたはいいよねぇ。チルタリスを独り占めだなんて」

横を見ると吉川がチルタリスの羽の上でゴロゴロ転がりながら「やべぇぇ!やわらけぇ!」なんて言ってる始末だ。
あまりにも状況を考えていない二人にミナミはため息を零す。気楽だなと思いながら。

一方ケンゾウについては、ハリテヤマが二mを越す巨体を受け止める事ができるはずがなく、一緒になって崩れて地面へと叩きつけられてしまう。一応クッション自体にはなったようだが。
ハリテヤマからしては当然苦しい。お返しと言わんばかりにパンチを思い切り受けて吹っ飛んでいく彼の姿が。

「なにやってんのあいつら……」

それらをジェノサイド達の真っ隣で行われたのだから一旦バトルを中断せざるを得ない。

「面白いお友だちだな?ジェノサイド」

軽く馬鹿にされるも、一般人を連れてきたのはキーシュの方である。
もうどっちもどっちとしか言えない。

三人はポケモンから降りると、ジェノサイドら二人を見つめる。

「レン……」

「もう戦っていたんだな、レン……」

吉川と石井は目的を思い出したのか、その瞬間には目の座り方が変わる。
もしかしたら邪魔をされるかもしれない。そう思いながらも、冷静に、友達として高野は一声かけた。

「とりあえずそこどいてくんね?邪魔だからさ」

そこは素人三人。普通に「お、おう……」と言うと香流やハヤテのいる後方へと走っていった。

「いやそこは不意打ちしろよ」

思わずジェノサイドも本音が出る。

「慣れていない一般人にそんな事期待しても無駄だって。そういや、不意打ちで思い出したが……」

それまで後ろを見ていたジェノサイドはキーシュとメガボーマンダへと視線を戻した。合図はないが再開される。肌でそんな空気を感じ取った。

「さっきバンギラスがやってた、変な動き……アレ'ふいうち'だろ」

ジェノサイドはその言葉にドキッとする。早いその動きをキーシュが捉えていたことについてだ。

「ほ、ほら……バンギラスだって'ふいうち'覚えるぞ……?」

「覚えねーよアホが。まぁいい。それだとしたらまた見せてもらおうかなぁ〜……」

緊張感漂う光景だが、ジェノサイドの中では勝利を確信した瞬間でもあった。

(メガボーマンダ……性能が恐ろしいことは知っている……奴のスカイスキンはノーマル技が飛行技へとなり、なおかつ威力も上がる。あれの一番怖いのは飛行技と化した'すてみタックル'……。そしてその技は物理。威力が倍になった技を受け切るわけがない……'カウンター'で跳ね返せる!!)

目の前の相棒を見つめ、深く念を送る。ボーマンダの物理技を受けるだけでいい。それだけで勝つのだからと。

(最後に一仕事頼むぜ……ゾロアーク!!)

対しキーシュはニヤリと八重歯を見せるとボーマンダに指示する。相手がどう来るか分かっていても指示せざるを得ないのだから。

「'ハイパーボイス'」

「えっ……?」

低く嗤うかのようなその声に、聞き取りにくかったのもあったが、ジェノサイドは一瞬きょとんとして見せる。

その直後。

飛行機のエンジン音のようなけたたましい爆音がバンギラスを、ジェノサイドを文字通り吹っ飛ばした。


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