二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/11/28 13:33
名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走カーチェイス>>536-

行間
>>518,>>525,>>535

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.475 )
日時: 2020/03/20 10:40
名前: ガオケレナ (ID: 0vtjcWjJ)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


情報が届いた。
オマーンのバット遺跡に送った部隊が全滅したという報せだ。

それを知り、ルラ=アルバスは悔しさのあまり唇を噛んだ。

戦略を間違えた。
予想を裏切られた。

完全だと思っていたこちらの追跡網を悉くくぐり抜け、嘲笑う。
それほどまでにキーシュとギラティナという組み合わせは強敵だったのだ。

「まさか……予言者の道を後回しにしてバット遺跡に向かったなんてね……。回顧録を集める上では完全に余計な地点。やられたわ」

部隊がどのように全滅したのかまでは知られていない。生存者が存在しないからだ。
だが、短時間で遂行されたとなればキーシュ直々に手を下したとしか思えない。

それぞれの機体から続け様に連絡が届く。
デッドラインがゼロットの人間と戦闘を始めた事、イクナートンとミナミのグループも敵の拠点にて戦い始めた事。だが、それらの中に最重要項目が見当たらない。

自身を含め共通する報告はひとつ。
キーシュの姿が無い。

以上の事から、彼がバット遺跡に赴いた可能性が濃厚となった。

ルラ=アルバスは『予言者の回顧録』の一部を手に持っている商人が活動している市内のバザールにて、誰一人として仲間はおろか敵すらも現れない中、行き交う人々の群れへと紛れてゆく。

ーーー

墓標らしきものが見当たらない。
聖塔自体地上階しか存在しなかったため、それがただの高い建物のオブジェでしかなかった。

「ジッグラトみてぇだから階層だとか……最上階に有るのかと思っていたが……」

キーシュは期待外れもいいとこだという表情をしながら塔を出る。
だが、その外見には少しばかりの変化があった。

「何処にも墓らしきものはねぇなぁ?まさかシャッダード王は普通の者共に混じってこのネクロポリスの何処かに蜂の巣のような墓を立てて眠っているのか?」

彼の頭に何かが載っている。
装飾品の類に見えなくもないが、それにしてはみすぼらしい。

「実際は違った。"悟られないようにして"墓を作ったんだ。あの聖塔の地上階の床……その真下にな」

王冠。
およそ1500年前の代物である。かつての栄光は既に消え、面影は辛うじて保たれた形と茶色く濁った錆色でしか残っていない。

「俺様やこれまで参ってきた人は無意識のうちにシャッダード王を踏んづけていた訳だ。何でそんな風に埋めたのやら……結局は分からなかったがな」

その床下を掘って出てきた出土品。
最後まで誰のものか断定出来なかった墓を、誰の物かも分からない冠を盗んで被った自称救世主の男。
"調べたけど分からなかった"ほどの虚しさは無い。
しかし、それを如何にも悟らせんと彼は無表情を貫く。

「……そろそろ戻るか。あの薄い壁はとっくに突破されているかもしれん」

キーシュは意識を何も無い空間に向ける。
すると、1つの小さい裂け目が生まれ、その中からギョロりとした目が向けられた。
ギラティナがこちらを見ている。

「俺様だ。さっきまで俺様が居た所まで頼む」

告げた途端、まるで瞬間移動の如くその姿は裂け目と共に消える。

ーーー

高野洋平は顔に砂がかかった事でその目を覚ました。
よく見ると、自分は柔らかい砂の上に寝ており、自分の代わりにレイジが1人で戦っていた。
ゼロットの人間が追撃して来ないという事は以前の暗闇に紛れた'ナイトバースト'と'サイコキネシス'と'りゅうせいぐん'によって全滅したからか。
相手方も戦っているのは山背1人のみだ。

「いや、1人じゃ……ねぇ」

高野は見た。
山背と共にお互い背を向けつつ代わり代わりに攻撃を仕掛けている新手の姿を。

モデルのように細身で背の高い一見、大人しめで気品さも持ち合わせた美女を。

即ち、石井真姫を。

「大丈夫?まだ戦える?」

「僕は平気だけど……仲間はどうした!?レンのオンバーンも気になる!」

「ゼロットの連中はやられたみたい。元々捨て駒としか見られてなかったんだろーね。私らと比べてもポケモンを持っている人も居ないしレンが来てから逃げた奴も居るよ……。あの建物には今は誰も居ない。それから、オンバーンは安心して!私のオーダイルがもう倒したから」

石井と山背は互いの死角を補いながら情報伝達を行う。
そんな2人の姿を恋人同士と見ても違和感は無さそうである。

高野は自分がオーダイルに殴られたこと、そのオーダイルが砂上で滑った事で溢れた砂が顔にかかって意識を取り戻した事を、すべて思い出す。

高野が立ち上がった事に気が付いたレイジはエーフィと共にテレポートして彼の隣に立つ。

「大丈夫ですか?目を覚まされましたか?」

「……どの位寝てた?俺」

「2分ほどですよ」

確かに頭を殴られたとはいえ、普段頭をぶつける感覚に近かったというのもあった。そのぶつかった対象が普段のものよりも少し固かったというだけで。
言い換えれば、当たり所が悪くなかったのだ。
痛みと連日の疲れで倒れたに過ぎないと知ってホッとした高野は、改めて2人を睨み付けた。

「丁度いい……2人居るんなら此処で捕まえて日本に戻っちまうかな?もうすべてが面倒だ」

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.476 )
日時: 2020/03/23 18:42
名前: ガオケレナ (ID: yrys6jLW)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


高野洋平は倒れた際にズレた眼鏡を直そうと手で押さえる。
それでも目元とピントが合わない。どうやら曲がってしまったようだ。

「また……壊しちまったか」

帰国した後のやる事がひとつ増えてしまった。
また説教されるのかと頑固親父の顔を思い浮かべながらうんざりした顔をして高野は改めて新しく姿を現した人物に意識を向ける。

「よう。大会以来だな?元気にしてたか?」

まるで友達に対して掛けるような声。
実際、相手は友達である事に変わりはないのだが、

「呑気だね……?こっちは必死なんだよ!?」

その言葉と共にオーダイルが眼前に迫る。
やはりと言うか付き合ってはくれないようだ。

オーダイルの'れいとうパンチ'を予想して'カウンター'で迎え撃つ。
しかし、背後から特殊技で固めたメガジュカインがゾロアークを狙う。

オーダイルの技が炸裂する前に既に分かりきっていたことだったので、高野は'カウンター'は打たずにあえて避ける事に集中するよう命令した。

(くっそ……埒があかねぇ……。タイミングさえ計れば物理一本のオーダイルはゾロアークの'カウンター'で倒せる……。だがその隙に山背のジュカインがやって来るのは明白だ。山背はレイジとエーフィに任せるか?いや、倒しきれるとも限らねぇ……)

高野は思考を巡らす。
敵は山背と石井の2人のみと至ってシンプルなものだが、いつ新手が迫ろうともおかしくは無い。
特に、突然現れる事の出来るキーシュだ。
砂に隠れたゼロットの面々が武装して襲いかかって来る事も十分に考えられる。

そこをレイジに任せるのも負担が大きすぎる。

「ところでよぉ……山背ォ……。お前、大学はどーすんの?」

突然の雑談。
あまりの唐突さに山背もピタリと動きを止めてしまう。

「……なに?」

「だからァ……、大学はどうすんだって聞いてんだよ。これからもお前ら……まさかずっとゼロットの人間として生きていくわけじゃ……

「辞めるよ」

空気が、風が止まる。

目の前の男の一言。
それに、強い意識を感じざるを得ない。

「え、じゃ……じゃあさ……」

「辞めるよ。何もかも。大学も、サークルもバイトも……全部。僕は、彼女と……真姫と共に此処で生きると決めたんだ」

そう言って、山背は石井と強く手を握る。
互いが互いの精神的支柱と化した今。

それを破るのは容易いものでは無いことを実感する。

「石井、それはお前の意思なのか?山背やキーシュに無理やり連れて来られ……

「これは私が決めたこと。私が選択した道だから。あんたなんかが口を挟まないで」

3年間共に過ごした"友人"の言葉では無かった。
最早、彼女にとって高野は敵としか映っていないようである。

ここで高野は確信した。
やはり、2人は自分たちの強い決意を持って此処に居る事に。自分たちが進んでこの世界に踏み入ってしまったことを。

「そう……かよ……」

高野は俯いた。
悲しそうに呟きながらゾロアークをボールに戻す。

脳裏に過ぎってしまった。
この如何ともし難い状況において、ラティアスを、伝説のポケモンを使うべきかを。

高野洋平は伝説のポケモンを扱える。
少なくとも、禁止級を除く準伝説のポケモンを。

果たして、今此処で使ってしまっていいのだろうか?
使えば勝つ事は出来るが、それによって新たな悲劇がもたらされないか。

そこが1番怖い。

「くっ、くくっ……」

高野は、自分で自分を嗤った。
一体自分は何に対して恐れているのかと。

「らしくねぇなぁ?ジェノサイドさんよぉ……?」

足元の砂粒に視線を落としながら、自身に対しそう言って自分を鼓舞する。

結局、自分を救えるのは自分だけだ。
これまでの孤独だった過去を振り返りながら、高野洋平は新たなボールを掴んで構えた。

ーーー

『いつまでも……ずっと一緒にいようね!』

遠い過去の、嘗ての友人の言葉。
その優しさから天使にたとえた人。ずっとずっと好きだった女性ひと

だが、その優しさを、友情を破壊したのは誰であろう己だった。

『何かあったら必ず叫べよ?俺たち仲間だもんな!』

遠い過去の、嘗ての仲間の言葉。
時にはぶつかり、時には励まし合った友人という枠を超えた、お互いの背中を、命を助け合う人。

だが、その命を守り切る事は出来なかった。救えずに居たのは誰であろう己だった。

高野洋平は、決して孤独だった訳ではなかった。

これまで自分が起こしてきた軽はずみな言動や失敗で、儚くも消えていったそれまでの人間関係や命そのものを失うのがいつの日か怖くなってしまったのだ。

だから、必要以上に干渉するのを止めた。
いつしか、"何考えているのか分からない"とまで言われるようになっても。

再び彼は、そんな恐ろしさに駆られて……

ーーー

一瞬だった。

一瞬にして、相手の2体のポケモンは倒れた。

高野の眼鏡からは、メガシンカの共鳴を果たしたせいかほんのりと薄く白い煙が出ているようであった。

オーダイルとジュカインは倒れた。

高野洋平の、メガメタグロスによって。

まず、通常の姿で現れたメタグロスは即座にメガシンカ。
大幅に向上した素早さを持ってジュカインの元へ迫ると'れいとうパンチ'を放って一撃で沈め、翻ってオーダイルに'しねんのずつき'を撃つもそれだけでは倒れず、見かねたレイジが即座に対応、エーフィの'サイコキネシス'で遂にその壁は崩れるに至った。

「山背……石井……」

戦闘を終え、ポケモンという名の武装を解いた高野はそれでも2人に歩み寄る。
そこにはある種の無防備さえも魅せながら。
だが、それが逆に2人に対して信頼性をチラつかせる事をも意味していて。

「帰ろう。元の……世界に。いつまでも、此処には居るべきじゃない。もしも……直せないものがあるってんなら俺も手伝うから……」

そう言って手を差し出す。
最早彼からは敵意といったものが感じられない。

後に引けなくなった山背は、反射的に手を伸ばそうとして、

『やはり俺様の思った通りだな?……無様に敗北を喫していやがる……』

何も無い空間。
そこには居ないはずの声が聴こえる。

「この声は……キーシュ、お前か!?」

『その通り。そして俺様はこの通り、此処に居るぞ』

その宣言通り、キーシュは空間を引き裂いてその姿を見せつける。
男の割には長く、真っ茶色の髪、純白のトガ。頭に被った錆びた王冠。
そして、背後で睨むギラティナ。

正真正銘の、過激派組織の長にして大量破壊兵器を所持する危険人物。

「あれだけ威勢よく主張していた割には当たり前のように負けたなぁ?ヤマシロォ……」

「す、すいません……。あと1歩のところで、ジェノサイドに一矢報いる事が……」

「どんな御託を並べようと負けは負けだ。さっさと来い。族長命令だ」

そう言ってキーシュはギラティナの作り出した"やぶれたせかい"への入口の方へ向き、足を1歩踏み出す。

「待て!!山背と……石井は此処に置いていってもらうぞ……」

決してチャンスを逃さない。
高野は叫んで再びメタグロスを繰り出す。

今ここで対話を呼びかけて2人を思い留まらせる。
その上で日本へ連れて帰る。

その一心で突き進む。

だが。

「ジェノサイド……貴様も少し考えろ?貴様が誰と何をしているのかをなぁ?」

「……何が言いたい?」

ニヤニヤと笑いながらキーシュは答える。
どのように行動していいのか困惑している山背と石井をよそに。

「貴様のその行動が……新たな火種を生み出しかねないと言いたいのさ。そもそも、何故貴様が此処にいる?貴様は関係ないだろう?」

「関係?あるに決まってんだろ。そこの2人の救出だ」

「コイツらは自分たちの意思で此処に、俺様の元に来たんだがな。初めは俺様も拒否したんだがー……どうしてもって言うからよぉ?」

「そいつらとは話をする!!だから置いて行け……

「この2人を抜きにしてもテメェは関係ねぇだろって言ってんだよォォ!!!!」

突如、キーシュは怒りに震えて叫び出す。
威圧を込めたものだけでない事は確かだ。

「テメェの背後に居る奴ら!!エシュロンなんざ組織は存在しねぇ!テメェと共に居るのはアメリカのスパイ組織……NSAだ!何でテメェがヤツらと共に居る!?何を目的に……戦争の火種が欲しくて此処に来たってか!?ハッキリしろ!!」

高野はキーシュの言っている言葉の一切が分からなかった。
ひとつひとつの言葉の意味を理解しようと固まっていると、

「NSA……ですって!?」

隣のレイジが絶句する。

「それじゃあ……まさか、彼らはそれらを駆使してあなた達の居場所を特定して……」

レイジの言葉は途中で途切れる。
莫大な砂嵐を巻き起こしてキーシュが、山背が、石井がやぶれたせかいに飛び込んで瞬間移動を始めたからだ。

高野洋平は再び失った。
彼らの足取りを、嘗ての友人たちの友情を。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.477 )
日時: 2020/03/28 19:49
名前: ガオケレナ (ID: vLvQIl5U)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


予言者の回顧録

ムフタールという男は粋な人であった。
よほど顔が広いのだろう。
これから出発する、という段階で馬車を用意してくれていた。

『私はこう見えてもこの町では有名なのだよ。求めるものはすぐに集められる』

『誠にありがたい。駱駝で行くよりも、こうして馬2頭を繋げて走れば早く着く事が出来る』

そんな話をしたのを覚えている。
私は、ムフタールと共にアル・ムカッラーを出た。

どの位が経っただろうか。
アル・ムカッラーで見た時とは違う景色の海が見えてきた。

『ここはどこなんだ?』

『ハドラマウトだ』

『それは知っている。ハドラマウトの何処かを聞いているんだ』

『そんなの分かる訳がないだろう?私は私の町しか知らないのだぞ』

ムフタールという男はいい加減だった。
案内すると言ったはものの、いざ移動をしたらこれなのだから。

だが、いつまでも何処に居るのか分からない不安が付き纏うのは気分が悪い。盗賊に狙われる可能性もある。

どうしたらいいのだろうか。
そんな時。見ればバダウィーのテントがそこにあったのだ。

救いを求める思いでそこへ走った。
中を覗くが誰も居ない。
もしかしたら持主が目印の為に置いていったのだろうか。
"صلالة"とだけ書かれた羊皮紙が置いてある以外は何も無かった。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.478 )
日時: 2020/03/29 10:08
名前: ガオケレナ (ID: 0zrQTctf)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


第四の道、哀しき真実

現代語に訳していく中で気になる箇所がひとつだけ出てきた。
とある地名が前後とは違い、コプト語ではなく何故かアラビア語で表現されていたのだ。

「これは……どういう事だろうな?予言者フードは見たものそのままを写した、ということなのだろうか?ベドウィンの残した羊皮紙にアラビア語が書かれていた、と解するべきか……」

考えながら、キーシュは筆を進める。
たとえ言語が変わっても解読に支障はない。

「次に降りた街は……サラーラか……。イエメンの海沿いをひたすら走り続けて今のオマーンに辿り着いたのか。と、なるとやはりゴールはウバールか」

サラーラからウバールの遺跡は近い。
仮にフードがウバールの地に着いたとしたならば、初めから此処を重点的に調べていけばよかったかもしれないが、

「ウバールがアードの遺跡というのはよく知られた話だ。確定的ではないにせよな?……となると敵方も此処に陣を張っている可能性もあるって事だ。早かれ遅かれ違いはそんな無いって訳だな」

キーシュは訳し終えたノートをパタンと閉じる。
長いため息を吐いて目を閉じ、ゆっくりと開けながら今度は別のものに意識を、視線を向ける。

「なぁ、お前は嘗めていないか?この深部の活動……そのものを」

キーシュの部屋には申し訳なさそうな顔をした山背と、彼に着いて来た石井がいる。

「お前は威勢よく啖呵を切っていたよな?ジェノサイドを必ず倒すと。それはどうした?まさか口だけか?意識だけ高いって人間か?お前は」

「も、申し訳……ありません」

「いい。いい。謝るな。謝る暇があるならやれる事をやれ。だが状況も無視出来なくてなぁ……?いちいち時間を割いてもいられねぇのよ?」

「で、でも……っ!私と山背に任された砦にポケモンを使える人は他に居なかったわよ!?かと言って銃器もまともに扱えていなかったし……。初めから私たちを貶めるつもりで……

「口には気を付けろ?お嬢さん」

キーシュは睨みながら頭に被った王冠を優しくゆっくりと手で持つと机の前に置く。

「俺様は、お前たちが自分を強いと宣伝していたからお前たちにあの砦を任せたに過ぎない。俺様の組織の全員が全員戦える人だと思うなよ?戦えない非戦闘員も居るって事を忘れるな。比率が傾いただけだ」

「で、でもっ……!ロクに協力も出来ずに結局私たち2人でジェノサイドの相手をしたのよ!?少しはそこを加味してもいいでしょう!?」

「だから、嘗めてるって言ってんだよ……」

その一言に、山背も石井もピシャリと黙る。
キーシュの背後に渦が巻き始めたというのもあったが。

「いいか?これは戦いだ。戦争だ。己が己の正義を掲げて戦っている……。100%正しい答えなんてものはねぇんだぞ?勝った者が正しいんだ。そこをまず理解してもらわねぇとな……。そして、そんな世界にお前たちは自ら入ってきたという訳だ。楽に簡単に大金が手に入る世界だと思ったか?それはあるかもしれないが非常にリスキーだって事を1番初めの段階で理解すべきだったな?」

キーシュは立ち上がり、拳を握ると棒立ちしている山背を1発、殴り飛ばした。

「や、山背くん!?」

「次はこうはいかねぇ……。次ヘマしたらお前たちに残された道は死だけだと思え」

そう言ってキーシュは小部屋を出る。
残された山背と石井は、

「真姫……ごめん、俺のせいで……」

「ねぇ、大丈夫?怪我は……」

「いい……大丈夫だから、」

殴られた頬を手で押さえながら山背は呻きながら言う。

「帰りたい。……僕、帰りたいよ……」

次第に呻き声は啜り泣く声へと変わり始めた。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.479 )
日時: 2020/04/03 15:02
名前: ガオケレナ (ID: CWUfn4LZ)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


戦闘が始まった。
ミナミは、ブルカを被る都合上顔の周りに充満する熱に鬱陶しさを感じながらボールを、エルレイドを繰り出した。

真隣の草むらからズルッグが飛び出す。
それを見ての選択だった。

「もう、邪魔っっ!エルレイド、'インファイト'!」

殴打の連撃が打たれる。
ズルッグは弾き飛ばされ、視界から消えた。

「もー少し穏やかに行こうぜぃ?お嬢さん」

砦の方向から、向かって来た人影から声が発せられる。
麻布で出来たフードを被った青年風の男のようだ。
彼は、ポケモンのズルズキンを出しつつ叫ぶ。

「俺はゼロットが構成員、テウダ!族長の命令により此処を死守する。行けぇ者どもぉぉ!!」

その号令と共に。
無数の、優に100を超える歓声が上がった。

「えっ、ちょっ、多くない!?」

ミナミとイクナートンの目の前に、テウダを含めておよそ100人の武装した兵士が立つ。
彼らが持つ武器は小銃から弓、剣と様々だ。

このままでは勝ち目がないと悟ったミナミはまたひとつボールを出す。
そこから出てきたのはエンブオーだ。

「おい、何をする気だ?」

イクナートンが訝しげに尋ねる。
ミナミは何の迷いも無いかのようにスラスラと、そして早口で答えた。

「いい!?ウチは今から目の前のトレーナーと戦う!その間エンブオーでその周りを薙ぎ倒して行くから、アンタも武器のひとつやふたつで応戦してっ!」

「はぁ?お前誰に向かって命令なぞ……」

間髪を入れずにミナミはカイリューに乗って縦横無尽に宙を飛び回る。
少しでも武器の餌食にならない為の措置だ。

ガラ空きとなったイクナートンに、先頭に立つ小銃を持った兵士の標準が定まる。

「クソがっ!あとでルラ=アルバスに文句言ってやる!」

イクナートンは懐から自動式拳銃を取り出すと引き金を引き、撃つ。
1人の兵士が倒れた。
次なる標的にならぬよう、イクナートンは逃げ回りつつ姿を隠せそうな岩や木の裏に回る事で身を守る。
イクナートンが隠れている内にミナミのエンブオーが炎を体に纏った大技、'フレアドライブ'を回転しつつ止まることなく放ち続ける。
1度の接触で5人から10人は吹き飛んだ。

その間ミナミは空中で辺りを見ながらエルレイドに指示を飛ばす。

「エルレイド、'インファイト'よ!」

「舐めんなぁ!'みがわり'」

ズルズキンは分身を作り出すと姿を消した。
そこにあるのはまるでぬいぐるみの類にしか見えない"みがわり"だ。

エルレイドの打撃を身代わりが受ける。
その結果、ぬいぐるみは消えてしまい、本体が再び姿を現すが結果としてエルレイドの防御と特防が下がっただけとなる。

「そう簡単には終わらせねぇぞぉ?こちら側にも部族のメンツってモンがあるんだからよぉ?」

「部族?それってアードの民の事!?」

武装集団が徐々にだが消えてゆく。
いつしか、イクナートンも隠れながら狙撃するのを止め、走り回りながら銃を乱射している。

ミナミは速度は落としつつも空を飛び回る中、辛くもテウダのその声を聞いた。

「……へぇ?お前のような異国の人間でも分かるのか?」

「すべては分からないわ!人から聞いた程度だもん!……でも、アンタたちが何をするのかは知っている」

「ハッハ!!面白ぇ事言うんだなお前。お前なんかに分かってたまるかよッ!!」

テウダはズルズキンに命令する。
身代わり状態を利用した、'きあいパンチ'を。

「!?」

「何もいたずらにズルッグを蒔いたり、'みがわり'を連発していた訳じゃねぇ……'インファイト'で疲れた所をブチ抜けば倒れるモンも倒れるだろぉがよぉ!?」

先手を打たれた。
その為、エルレイドが技を放って身代わりを消したとしても、本体にはノーダメージな以上'きあいパンチ'の発動を許してしまう。
たとえ効果は今ひとつであり、攻撃能力もずば抜けて高いとは言えないズルズキンの技だが3度ほど防御面が薄くなればその不安は拭えない。

戦闘不能にはならなくとも、確実に2体目のポケモンで倒されるのは必定だ。

ならば、やれる事は1つしかない。

「仕方ない、か。エルレイド!メガシンカよ!!」

ブルカで隠れた、頭に差したかんざしから光が灯る。
それに応じるかのように、エルレイドも光に包まれた。


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