二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/11/28 13:33
名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走カーチェイス>>536-

行間
>>518,>>525,>>535

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.45 )
日時: 2018/12/09 13:08
名前: ガオケレナ (ID: Bz8EXaRz)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


基地内に、もう人影はなかった。

それを確認すると、ハヤテは今まで歩いていた道を引き返す。
地上から入れる工場跡から、地下に作られた純粋な基地。
それらすべての箇所を見てきたので絶対の自信を持っていた。

地上へ出ると、ジェノサイドの構成員たちが各々ポケモンを出して今まさに目的の場所へと移動するそんなタイミングだった。

空を眺めると既に飛んでいる者までいる。

「よぉー、やっと来たかハヤテ」

基地の前に広がる森からたくましい体をした男が出てきた。ケンゾウだった。

「お前来るまで待ってたぜー。そろそろ行こうぜ」

「僕が来るまで待ってたの?先に行っても良かったのに」

「いやー、それじゃちよっと……な。行き先知らねぇし」

「何でよ。僕ちゃんと基地内の全体放送で伝えたはずだよ?」

目を細くしてハヤテは尋ねる。なんかもう嫌な予感しかしない。

「いやー、俺地元の地名以外分からなくて」

「だったらそれこそちゃんと聞いててよ!リーダーの命令でもあるんだよ!?」

額に手を当てながら予想通りの流れに半分呆れてしまう。

「いい?場所は神奈川県に広がる丹沢山地の一つ、大山。そこの山頂には神社があるんだけど、恐らくそこにいるって話だ」

「大山か。おし、了解した!そこにリーダーがいるんだな?」

「いや、今リーダーも向かっているところだよ。着いたら連絡が来るはず。あっ!それと……」

話している途中にハヤテは自らのポケットを漁る。
出てきたのは二つのモンスターボールだ。

「君は確か飛行タイプのポケモンを持っていなかったはずだ。僕の使っていいからとりあえずこれで移動して」

言うと、目を輝かせながら勢い良く一つのボールを取り上げる。

「おっ、サンキュー!助かったぜ!」

辺りの人間も皆陸や空から移動しており、人影が少なくなった。二人は一斉にポケモンを出す。

ハヤテは自らのポケモンのウォーグル。
ケンゾウの持つボールからはルチャブルが出てきた。

「・・・・・・」

「どうした?早く乗りなよ。遅れるよ」

ルチャブルの姿を見て固まるケンゾウ。しばらくすると、今にもウォーグルに乗ろうとしているハヤテの方へと顔を向ける。

「あのー……ハヤテきゅん……」

「その言い方気持ち悪いからやめて」

「これさー……。どうやって乗るん?」

準備は出来たのか、ウォーグルが翼を広げた。今にも飛んで行きそうだ。

「君はいつも筋トレをしているよね?」

「それで?」

「だったら、今こそその成果を発揮するべきだよ。レッツ45kmまでの限界チャレンジ!」

言うと、ハヤテは大空へと去っていった。ケンゾウを残して。

「え?っておい!!いくらなんでも長時間ポケモンに掴まって飛ぶのは無理があるっておーーい!!!」

どんなに叫んでも彼には届かなかった。

なお、彼がルチャブルと飛ぶのはそれから10分程経った後だった。

ーーーーー

大山の麓に到着した。
山の近くの為か、一気に凍えたせいでオンバーンもかなり疲弊している。

「ご苦労様」

ジェノサイドはオンバーンをボールに戻すと、スマホをいじり出す。ポケモンボックスを操作してオンバーンを転送し、代わりのポケモンを手元に呼び出す。

辺りを見ても何も無かった。
ある物と言えば、大山おおやま阿夫利あふり神社と呼ばれる下社しもしゃがあるくらいだ。

だが、人影がない。

「やはり山頂か」

地上からの攻撃を避けるため、あえて麓に降り立ったものの、距離を見てみると気が遠くなる。
一時間ほど山登りをしなくてはいけないからだ。

「仕方ねぇ。真実をこの目で見るためだ」
ジェノサイドは、山頂を目指すため、足を踏み出した。

空は明るくとも、暗い道を目指して。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.46 )
日時: 2018/12/09 13:20
名前: ガオケレナ (ID: Bz8EXaRz)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


登山道へと足を向けようとした瞬間。
ポケットの中でスマホが振動した。

「?」

見ると、佐野先輩からだった。彼等から電話から来ること自体珍しい。

「もしもし?先輩?」

ジェノサイドは身なりと状況を忘れて、かつて偽っていた平凡な大学生に戻った雰囲気を反射的に出してしまう。

「おぉ、やっと繋がったよレン君」

繋がった?と言うことは何度も電話を掛けていたのだろうか。空中を速い速度で移動していたためか、繋がりにくくなっていたのだろう。
そんな事を考えながら、電話越しの先輩の声に集中する。

「珍しいっすね。先輩からかけてくるなんて」

「まぁ、ね。今どうしているのか聞きたくなった」

正直此処に着いても連絡しないと決めていた。あまりこちら側の情報を与えたくないのと、今回の事件が全部終わってから彼らの元へと帰る予定だったからだ。

「今どこにいるの?」

先輩からの質問だ。正直に言うか悩んだ。
だが、下手な嘘をついてもバレるのが目に見えている。

「大山です」

「え?」

「大山にある神社です。光の発信源がここだったんです」

神奈川県民でない先輩が大山なんて場所を知っている訳がない。なので細かい説明を省くためあえて光の発信源と表現した。

「山かぁ。そこで今から何をするの?すぐに戻ってこれる?」

嫌な質問がきた。このまま黙って電話を切ろうとしたが、ふと後ろを見るとその後方の空から人影が見えた。

仲間だった。ジェノサイドの構成員だ。

「はやっ……もう来たのか……」

思わずボソッと呟くと、先輩が何やら「え?何?聞こえない!!」なんて言ってたが耳に入らなかった。

構成員たちはジェノサイドを見つけると、近くへと着地し、彼の下へ駆け寄る。

「遅れてすみませんリーダー!只今到着しました!」

流石に名前までは覚えていないが、周りの他の構成員よりかは元気な人だ。
彼らが貴重な戦力であることをジェノサイドはよく知っていた。

続々と人影が集まってきている。
ジェノサイドという巨大組織が一箇所に集結したのだ。

その光景に少し感動したジェノサイドは、先輩の「もしもーし!!」という一際大きい声により、まだ通話中だということに気づく。

ハッとして意識を電話に戻し、どこか吹っ切れたのか正直に話すことを決めた。

「もしもし、先輩。俺は今からこの騒動を鎮める為に今からその発端を叩きに行きます。そいつが今大山にいて、元々俺達の味方だった奴です。だから俺が出向くのにおかしいことなんて無いでしょう?だからまた終わったら電話します。騒動が終わると空の様子も元に戻るかもしれないので分かりやすいとは思いますが」

「違う!そうじゃない!」

激しい声に少し驚いた。優しい先輩が普段は発しない大声だったからだ。

「これは君たちの戦いなんだよね?それはつまり……」

大声の割りに後半は言い渋っている。拍子抜けだ。

「つまり……殺すの?」

物騒な言葉に、ジェノサイドは一瞬固まった。
だが、視界にやっと名前を知っている者が写ったため、意識が再び戻る。

「先輩。俺達の住む世界とそちらの世界は違うんです。俺が誰かを殺すかもしれないし殺されるかもしれない。でもそんな事が日常茶飯事なのでそもそも疑問として上がる事なんて無いんです。だから俺はその質問に答えるつもりはありません。ただ……」

そこで一旦間を空ける。ハヤテがこちらに近づいてきた。

「ただ俺は世間からテロリストだの何だの言われても気にもしませんしそう思われても仕方ないと思っています。俺だって極力殺しはしたくないし、こちら側の犠牲者も出したくない。その気持ちはあります……。今はまだ何とも言えないけど、必ずそっちに戻ります。なので今回は、絶対に無事に戻ってきます」

話がまだまだ長くなりそうなので一方的に切った。

恐らくであるがジェノサイドの構成員全員が集結した。人影がそれ以上増えることがなかったからだ。

「リーダー。ひとまず全員ここに集めました」

ハヤテが隣から声をかけてきた。

「ありがとう。じゃあ集まって早々悪いけど、上に行こう。そこにバルバロッサがいる」

「待ってください」

ジェノサイドが歩こうとしたときに不意に腕を掴まれた。

「まだ話を聞いていません。今何が起こっているのか話してください」

そう言えばそうだった。
ジェノサイドは結局何も話していなかった。
まだ予想の範囲だが、彼は彼の考えをここで述べることを決める。

「そうだな。これはまだすべて分かった訳じゃないけれど……。恐らく山頂にいるのはバルバロッサだ。奴は基地にいなかっただろ?」

その言葉にハヤテは頷く。

「まず、写し鏡なんだが、あれを取ってくるよう俺に頼んだのがあいつだったんだ」

「バルバロッサ自らがですか?」

事情を知らない、構成員の一人の声だった。何処からか聴こえた。

「そうだ。いきなりすぎて訳が分からないが、実際取ってきた。在処が俺の通っている大学というあまりにも都合が良すぎることに疑問だったが、問題はまだあった。俺を狙う奴等が大学内で襲撃を始めたのがその後すぐだったんだ」

襲撃という言葉に一同が不安を見せるが大して気にはしなかった。今もこうして自分はピンピンしているからだ。

「その時、俺はバルバロッサに確かに自分は襲撃されていると伝えた。だがあいつはその事をお前たちには伝えず、しかも俺が知らない情報をあいつ自らが俺に伝えたんだ」

辺りが少しざわつき始めた。ほとんどの人が知らない出来事だったからだ。

高野は話を続ける。

「おかしくないか?敵の事情をバルバロッサが知っていて尚且つ本来であれば一大事であることをお前たちに教えなかったなんて」

「つまり……それを理由に、バルバロッサは裏切ったと?」

構成員の一人が口を出した。その口調からあまり信じきっていない様子だ。

「まぁ、俺はそう捉えている。あいつは俺を殺す気満々だろうと。この件もバルバロッサ主導だとしたらそれもそれでおかしい。俺はこんなこと命令していないからな」

ジェノサイドは構成員の顔を一人一人眺める。
ほとんどが何をしていいのか分からない、といった困惑の表情だ。

「とにかく、真実を知りたければ共に今から山頂に行け。そこに行けば絶対にすべてが分かる」


「……だからいいか。死ぬな」
ジェノサイドのその言葉を合図に、彼を先頭に一斉に走り出した。

真実。
ただ、その為だけに。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.47 )
日時: 2018/12/09 13:35
名前: ガオケレナ (ID: Bz8EXaRz)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「トゲキッス!」

先程の一番乗りを達成した元気のいい構成員が登山道へ向かって走りつつ、叫びながらボールを投げる。
トレーナーに負けず劣らずの元気のいいトゲキッスが現れた。

「エアスラッシュ!」

狭い登山道に向かって技を放つ。命中し、黒煙と爆音が鳴り響くと、異変が起こった。
怒号と、何か羽ばたくような鳥特有の音が聴こえたのだ。

「?」

「敵です。奴等はもう既に待ち伏せをしています」

山の麓にまで彼らは範囲を広げていた。これから一時間も山道を歩くとなると気が遠くなりそうだ。

エアスラッシュが合図となったのか、味方の数名が我先にと敵陣へと突っ込んでいく。

「うわぁ、こりゃ派手な戦いになりそうだなぁ」

「何間抜けな事言ってんですかリーダー!ここは一先ず俺達に任せて、リーダーは早く登っていってください!」

「いや、でもお前……奴等の狙いは俺なんだから全員で固まった方がスムーズに登っていけるだろ」

「リーダー。今回のバトルはまともなバトルじゃありません。彼等の目的はポケモンバトルではなく、リーダーの命です。ここに居ては頂上に着くのも遅くなる。少人数で上がっていった方がやりやすいですよ」

「まともなバトル……」

その言葉に、ジェノサイドは言葉が詰まった。今まで散々バトルの勝敗よりも命を優先して戦ってきた事は何度かあった。バトルの勝利条件に「対戦相手の戦意喪失」も暗黙のルール上含まれていることから、そんな戦いをやってきたし、やられてきた。

だが、敵の大将が大将だからか、自覚がなかった。 
敵は確かに憎い。裏切り者も殺したいくらい嫌いだ。
常にそんな事を言っていても、実際そのような場面に出くわさないとその通りの行動に出れるとは限らない。
そんな意味で、ジェノサイドは苦悩していた。

つい最近までゆるい相手ばかりだったのも苦悩の原因の一つであっただろう。

そんな時だった。丸腰の自分目掛けて敵のゴルバットが'かぜおこし'を放ってくる。

(ッ!?)

反応に遅れた。自分に命中するかと思うばかりだった。しかし。

背中を強く押される。その衝撃で、バランスが崩れる。
技は、自分の横を通り過ぎ、何とか直撃は免れた。

だが。

ドン!
と音と共に、さっきまで元気に会話をしていた構成員が吹っ飛んだ。

彼は、そのまま真後ろに飛び、石と大木があらわになっている地面へと勢いよく激突する。

「……ッッ!!」

血を吐き、伸びてしまった彼の元へジェノサイドは駆ける。

「おい……しっかりしろ!」

幸いにも、呼吸が荒くなっているだけで、彼に息はあった。
その事に安堵した。

「だから……言ったでしょう……?」

弱々しい声で彼の口が開いた。

「奴等にルールなんて通用しないんですよ……。目的さえ、うまくいけば……」

「待て!もう喋るな!すまない、俺が悪かったから……」

「いや、」

彼は今にも悲しそうな顔を浮かべている自らのリーダーに対し、軽く笑顔を見せる。

何だか、状況を忘れて可笑しく見えてしまう。

「リーダーは何も悪くないですよ……他に集中していた……俺の責任です。いいですか、リーダー……ここに居ても問題は解決しま、せん……。俺たちはいいから、リーダーは、早く上へ……」

彼の姿をまじまじと見たジェノサイドは再認識する。そして、スイッチが再び押される。

「わかった……ごめんな、迷惑かけちまって。……なぁ、お前、名前なんて言ったっけ」

唐突に、ジェノサイドはこんな事を聞いてきた。
状況と噛み合わなさすぎて、質問の意図が一瞬分からなくなってくる。

「リョウっすよ……でも、どうしてこんなタイミングで?もしかして弔いとか……」
「ちげぇよ」

途中で遮られた。声色に変化あるのを近くに居たハヤテは聞き逃さなかった。

「この戦いが終わったあといつも通り基地ではしゃぐ。その際にお前をまつり上げてやる。いいか、金が欲しかったら死ぬんじゃないぞ」

そう言ってジェノサイドは背を向けた。1つのダークボールを手にし、思いきり天へ向かって投げる。

「始めるぞ……ゾロアーク……」

ボールからは何者にも化けていないゾロアークが出てくる。
直後に、敵が集中している前面へ'ナイトバースト'を放つ。

「これ以上、コイツらに指一本触れさせねぇぞ……っ!!」

叫ぶと、ゾロアークと共に走り去っていった。
ポケモンもろとも、トレーナーまで吹き飛ばしながら走っていくのが仲間からは確認できた。

「ったく、今ごろお目覚めか……普段は優しいから足元を巣食われるんだよなぁ……」

リョウはそんな彼の姿を眺めながら、ゆっくりと体を起こす。

「それじゃあ、俺もいつまで経っても……、ぶっ倒れる訳にはいかねーなぁ……?」

そして、少し離れたところで技を放っているトゲキッスを身元に呼ぶと、彼は告げる。

「俺だって、……リーダーには指一本触れさせねぇっ……!!」

彼等の戦いの火蓋が、今切られた。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.48 )
日時: 2018/12/09 13:40
名前: ガオケレナ (ID: Bz8EXaRz)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


ジェノサイドは、自らの足で山道を駆けていく。
物陰から敵がポケモンを携えて飛び出してくる。

「くっ、邪魔なんだよ、どけぇ!!」

叫ぶと、命令なしにゾロアークが'ナイトバースト'を放つ。ゾロアーク自身も自分の主と同じ考えだった事が伺える。
後ろを振り向くと、少数だが味方が共について来ている。勢いとはいえ、さすがに一人で行くのは心細かったがそんなことはなく、ひと安心だった。

「リーダー、何かおかしくありません?」

「ん?」

ついて来ているうちの一人、ハヤテが声をかけてきた。
登りを走りながらの会話はかなりしんどい。

「おかしいって何が?」

「急に風が強くなったと思いません?」

「風?」

ここは山だぞ、と言いたくなった。通常の時間であれば今はもう20時近くだし、今いる地点もあってか、普段なら風が強く吹いていてもおかしくない。

「何だか……急に吹いてきましたよね。それに、何か痛くありませんか?」

「痛い?」

走る速度を緩めて確認する。
確かに空を飛んでいるときと変わらないスピードの風が吹いている。例えではあるが痛みを伴いそうな、これまた普通では中々ない風だ。

「確かに……言われてみれば……だな。近くにポケモンがいるのか、それとも……」

言いながら、ジェノサイドは空を見上げる。

「この空みたく、天候を操ってるのかもな」

気がつけば、足を止めているジェノサイド達のもとへ、新たな影が忍び寄っていた。

動物的な本能で誰よりもそれを察知したゾロアークが大きく吠える。
それに肩を震わせて全員が一斉に前を向いた直後、赤と黒の閃光を放つ。

その衝撃は、敵を巻き込む形で山道をも変形させる。

木が折れ、石が吹き飛び、地面を抉る。
一瞬にして、その地は狭い山道から広い荒れ地へと変貌する。

「相変わらず凄いですね、リーダーのゾロアーク」

ジェノサイドの隣に立ち、ボソッとハヤテが呟くと、彼よりも先に駆け出して行った。


辺りに爆音が鳴り響く。
その音が耳をつんざく度に眉間に皺が寄ってくる。
ケンゾウは麓近くの山道でリョウと共に戦っていた。

「あーもうチマチマチマチマ面倒くせぇな!あいつら一体何人いるんだ!」

自身のポケモンのカイリキーを駆使しながら、迫る敵を蹴散らしつつ前に少しずつ進む。
だが、敵も中々減らない以上、迂闊に前には進めなかった。

「仕方ないっすよ!方々に人員割いてるもんですから中々思う通りにはいかないですって!」

リョウのトゲキッスが'だいもんじ'を吹き、その様を眺めて辺りを見渡しながら自分の上司の愚痴に答える。

「それよりどーしたんすか!ケンゾウさん!あなた来るのちょっと遅かったじゃないですか!」

「あぁ!?」

爆音に紛れ、中々声が聞き取れずに威圧的に反応する。だが、彼の声は聞こえていた。

「俺はよぉ、飛行タイプ持ってねーからハヤテの奴から貸してもらったんだよ!そしたら何が来たと思う?ルチャブルだぞルチャブル!そんなのでまともに飛んでここまで来れる訳ねーだろ!!」

「ルチャブル!?」

予想外の言葉に、リョウは吹き出す。

「いや、ルチャブルって……あ、でもケンゾウさん筋トレしてたから余裕だったんじゃ……」

「だーーもう!!あいつと同じ事言うなや!!」

まさか見せかけの筋肉?という嫌な言葉と共に、彼の自慢の大声は爆発音に掻き消されていった。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.49 )
日時: 2018/12/09 13:56
名前: ガオケレナ (ID: Bz8EXaRz)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


相変わらず空に変化は無かった。

「レン君何してんかなー」

窓を開けて空を見つめながら佐野が呟く。

「レンから何か連絡はありましたか?」

振り向くと、自分の後輩、つまり高野と同年代で彼とも仲が良かった香流が珍しく声をかけてきていた。

彼はサークルのメンバーの中では大人しく、自分からは話題をあまり振らない人だ。ただ、共通の話題があれば話を進めてくれる人だが。

佐野は自身の後輩に質問され、さっきのやり取りを言おうとしたが、何と説明すればいいのか分からなかったので、「いや、何も」と言うと窓を閉める。

佐野が高野と仲が良いのと同じく、彼は香流とも仲が良かった。

彼ら三人に共通するのは当然ポケモンだった。
特に香流の実力は突出するものがあり、恐らくこのサークルメンバーで一番強いのではないかと言われているのが彼だ。

ゲームではレートに積極的に参加するなど、ガチなパーティとも渡り合え、先輩にも引けを取らない。
ただ、実体化した状態でのバトルはしたことが無いので、高野と彼のどちらが強いのかは分からないが。

佐野は空を眺めながら高野と初めて出会った日の事を思い出す。


ーーーーー
彼が高野と出会ったのは去年の春だった。

その時佐野は自身のサークルの宣伝のため、他サークルと同様に宣伝期間中に新入生を対象として必死になって新たな部員となる人を探し求めていた。
彼は、おそらく新入生であろう二人組が大学敷地内にてサークルの紹介誌を眺めながら何やら話をしている光景を捉えた。

すぐに彼らに近づき、話を始めたが、その二人が後にサークルに入ることになる高野と岡田だったのだ。

高野はかなり早い段階から岡田と一緒だった。話を聞くと、どうやら同じ授業を受けているらしかった。

思ったほか彼らの反応が良かったので恐らく来るだろう。それを確信してサークルの日時を教えるとその場を去った。

その時佐野が思った彼らの第一印象は共に対照的だった。

岡田は真剣に話を聞いており、サークルにも興味を示していた。特に会話をしてくれたのも彼だった。

高野は常に寂しそうな目とオーラを発しており、「関わらないでくれ」とまるで無言で言っているかのような雰囲気であった。
サークルに興味があったかどうかは不明だったがとりあえず話は聞いている感じようには見える。

岡田はともかく高野も来るかは佐野はやや微妙に思っていたが、実際彼らは来てくれた。

同時期にその教室にいた高畠や香流とも打ち解け、仲良さそうにしていたのでとりあえず不安は消えた。


またある日、佐野は誰とも遊ばず、一人でゲームをしている高野に気が付いた。他の人は先輩を交えてボードゲームをしているが彼は参加しようとはせずただ一人で遊んでいたのだ。

少し気になって彼に近づくと、遊んでいるゲームがポケモンであることに気づく。時期的にポケモンXYが発売される前だ。

「ん?レン君ポケモンやってるんだ」

かなり早い段階で高野はレンと呼ばれていたがそれは彼が自己紹介の時にそう呼ぶよう皆に公言したことに由来する。

その時、つまり最初の日からだろうか。

「こいつ普通じゃねぇ」と皆から思われるようになってしまったのだ。そのせいで少し孤立気味になってしまった彼。

普段は近寄りがたいオーラを発しているけれど、実は皆と仲良くなりたいのではないか。そう察した佐野は香流と同じく共通の話題を使うことにした。

「はい。エメラルドの頃から始めたんです」

「エメラルドか~、懐かしいな。ねぇ、僕と対戦しようよ」

ーーーーー

それからだった。
二人は仲良くなった気がしたのは。あの時の嬉しさで満ち溢れている顔を未だに覚えていた。

だからこそ、彼がジェノサイドだという事実を受け止めることができない。彼が、普通じゃない環境で生きている事も同様に。

「別に、レン君を責めているわけじゃない。どうしてそんなことになってしまったのか、教えてほしいんだ。だから……」

窓に手を当てる。高野が飛んでいった方向へ強い視線を向けた。

「だから、それまで……無事でいてくれよ……絶対に」

彼らは、ただ異様な景色を黙って眺めることしかできない。
それが堪らなく悔しかった。


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