二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/11/28 13:33
名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走カーチェイス>>536-

行間
>>518,>>525,>>535

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.355 )
日時: 2019/04/20 18:02
名前: ガオケレナ (ID: 1kYzvH1K)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


医務室のある校舎が見えてきた。
高野は少しばかり早歩きをして先を進む。
それにメイとルークが続き、香流を乗せたチルタリスが静かに浮かぶように飛ぶ。

そんな、普通でない光景を周囲に見せてしまったせいだろう。
当然ながら注目も浴びてしまう。

「ちょっとちょっと〜!大学構内はポケモン禁止ですよ〜。そこの人たち止まって!」

明らかに自分らよりも年上の人の声だった。
その甲高い声色から見るに、女性のものだろう。
だが、高野はその声に若干の聞き覚えがあった。

ゆっくりと、そちらに振り向く。

「伊藤……先生!?」

伊藤莉佳子。

神東大学の講師の1人だ。
見た目30代前半といったところだろうか。
その外見は若々しさや可愛げが名残のように残っているその女性は、男が多い学科では人気の講師である。現に高野もこの人の講義を受けた事はあった。

だが、それはどうでもいい問題だ。

彼女は、深部そのものを知っている節があるのだからだ。

「あら?……あなたは……」

伊藤の目に映ったのはこの大学の生徒としての高野洋平と、嘗て覗き見てしまったジェノサイドとしての彼の姿。
それが重なり、ポケモンが顕現しているのも相まって徐々に顔が暗くなっていく。

「お前ら、先に行け」

高野は医務室の方向を指した。

「ここの生徒でないお前らでも、流石に医務室の場所位は分かると思う。ここ入ってすぐ右だ」

高野の指の先には校舎の自動ドア。
よく見ると、ドアの先の壁にも医務室の方向が描かれた矢印が示されている。

「それはいいけれど……あなたは行かないの?ってかその人誰?」

「それは後で話す。とにかく面倒事になる前に早く行け」

高野はメイの言葉をほぼ無理矢理無視するかのように指示をして彼らを先に行かせる。

呼吸を整えて、高野は改めて伊藤をその目に収めた。
彼女も何か話したい事があったようで、一連の流れが終わるまで待っていてくれたようだ。

「すみません、お騒がせしてしまって」

「また何かやらかしたの?」

意外だった。
彼女の声と表情は、やけににこやかだった。そこに怯えや恐怖はない。

「話は聞いていますかね?先生ほどの人だったら、何かしら情報が行ってると思ったんですけど」

「知っているよ。ジェノサイドはもう居ないんだってね」

やはり知られていた。
彼女がどういう人間なのか、講義を受けていただけの高野にはそれがまだ分かっていない。

「やっぱり……ご存知でしたか」

「どんなやり取りがあったかまでは知らない。あなたにどんな心境の変化があったのか、どんな環境にいたのかも。でも勘違いしないでね。それであなたの過去は赦されたわけじゃないからね?」

「それは分かっています。ところで……さっきのは、」

「ポケモンを呼び出すなって何度も注意されているはずよ?いい加減守ってもらわないと処罰の対象になるのだけれど」

「あれは、俺のせいなんです」

高野はこの時ばかりは正直に話そうと思っていた。
それで何かが変わるかは分からないし、そこまで望んでもいない。
ただ、深部の事情を少しでも知っている人が聞けばどんな反応をするのか。それを知りたかった。

「なるほどね……深部とは何の関係も無い、ただあなたの友達ってだけで狙われた……と」

「えぇ。何処かで俺をジェノサイドだと見破った奴がいて、そこから辿ってあいつに行き着いたんでしょう。……あいつが大怪我をしなくて良かったけれど……、俺がジェノサイドだったせいで周りに被害が及んでしまった」

「そんなの、今に始まった事じゃないよねぇ?」

胸に刺さる言葉だった。
高野は、もしかしたらこれ以前に、誰かが自分のせいで傷付いたかもしれない。いや、確実にあったであろうそれを思い出させられて苦悶の表情を一瞬浮かべる。

「先生は……何者なんですか?」

高野は黒目だけを上げて彼女を見た。
伊藤はその言葉に一切動じないようだった。

「先生は……"こっちの"世界の人間のはずだ……。なのに、何でそれを知っているんですか?何で俺の存在や……あの日、写し鏡の事も知る事が出来ていたんですか?」

高野は、それでも表情に一切の変化がない伊藤に対して叫ぶ。

「あなたは一体何者なんですか!?」

それを聞いた伊藤はくすっと笑う。
まるで、傍から見れば小さな事で叫んでいる子供を、色々知ってしまった大人が宥めるかのように。

「私の専門は刑法よ。つまり、どういう意味かわかる?」

「どういう……って?」

「私だけじゃない。少なくともこの大学の……いや、日本全国の法学の教授、講師、先生はあなたたちの存在を知っているわ。日本の法律を追えば必ず何処かでぶつかる存在だもの」

「それだけ……?たったそれだけですか?」

「えぇ。識者ならば絶対、にね。関わるか否かはその人次第だけれど」

これまでに深部の存在が公にされなかった理由。
それが偶然によるものだと初めて知った。
これまでにも存在を匂わせる出来事は何度も見てきたしやって来た。

だが、大きな勢力がこの国の背後にあるためか思った通りのことにはならない。
そのせいか、いつしか高野も"あらゆる国民は自分たちの存在を知らないものだ"と、思い始めていた。

実際は違った。

知っていたどころか、自分たちの動きもすべて把握されている。

「でも、安心して。私たちはあなたに対してはもう何もしないわよ」

と、なると平気で規則を破っている生徒を確認出来るようになるのだが、それでも伊藤はそう言う。

「何故ですか?」

「知った所で私たちには何も出来ないからよ。下手に動いたとしても別の勢力にやられかねないもの」

「別の……勢力?」

「余計な事言っちゃったかも……ごめんね、忘れて。ほら、あなたのお友達が戻ってきたわよ」

伊藤が笑って顔を向けている方向を見ると、メイとルークに挟まれながら、松葉杖を借りてきた香流がこちらにやって来たところだった。

どうやら、医務室での診断を終えたようだ。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.356 )
日時: 2019/04/22 18:02
名前: ガオケレナ (ID: ghfUqmwe)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「香流、お前もう大丈夫なのか?」

「あぁ。打ち身で済んでいたって。しばらくこうなるけれど、こっちは大丈夫」

2人でやり取りをしている内に、伊藤の姿が無い事に気が付くも、それはもはやどうでもいい事だった。
高野は、香流が講義の為に教室へ移動するまで荷物を持つなどして彼について行く。

「おい、俺らはどうしろと?」

置いてけぼりにされそうになったところを、ルークが叫んで高野の動きを止めた。
高野はチラリと彼とメイを見る。

「あ、あぁ……。さっきはありがとう。お陰でこいつもどうにかなりそうだ。こっちの件は大丈夫だから、先にお前らはドームシティに戻っててくれ。俺はコイツが会場に行くまで一緒にいる」

「ったく……自分の出番よりもそっちの方が大事か」

「違うそうじゃない。お前達との会話にあったような、香流が深部の連中から狙われているという話を想定のもと動く。アイツが1人でいるのと、俺が共にいるのとでは敵の動きにも変化があるかもしれないだろ」

「はいはい、友達を大切にするのはいいが1つ忘れるな。お前はもう深部の人間じゃない」

ルークの言葉がやけに高野の胸に突き刺さった。
特に最後の言葉だ。

「どれだけ今まで深部で我が物顔でやっていたとしても、それは過去の話だ。今の深部事情に深部でない者が首突っ込んだら面倒な事になるのはお前でも少し考えれば想像出来るはずだ」

「じゃあ……俺にどうしろと?」

汗を流して不安そうな表情が見える。
本当にこれがジェノサイドだった奴なのかと思わずその顔を2度見したルークだったが、

「知るかよ。今以上に最悪な結果にならない事を祈る事だな」

と、言うとメイと共にポケモンに乗ると空の彼方へと飛んでいってしまった。

「レン?」

聞いていたのかそうでいなかったのか、中途半端な距離を離して歩いていた香流が、高野が後ろを歩いていないことに気がついてこちらに振り向く。

「どうした?大丈夫?何ならこっちはもう平気だから先に……」

「いや、なんでもねぇ。ほら行くぞ」

高野は香流の背を押しながら彼の目当ての教室がある建物へと歩いていく。

(深部の人間でない……か。やっぱり違和感があるなぁ)

そんな事を考えながら高野は歩く。
無理もなかった。本来ならば、彼が深部の世界に入って今年で5年目になるのだから。
そう簡単に長年培ってきた感覚を失うのは難しいものがあった。

「なぁ、香流」

「うん?」

「今朝、ポケモンがお前を狙ってきたんだよな?やっぱり、あいつらの仕業だと思うか?」

唐突な会話だ。
現にまだ高野はここまでの流れで香流本人の考えを聞いてはいなかったから気になっただけである。

「うーん……。それ以外に理由が思い浮かばないからね。大会も始まってまだ1ヶ月。予選の途中だしこっちたちが目立っているとは到底思えないんだよね。だから……」

素人にしては冷静な判断である。
高野は率直にそう思った。

明らかにあの戦い以降、香流も考え方や戦い、そしてこの世に対する感覚に変化が起きている。

「やっぱり、俺と関わったせいか……」

「だからレンは悪くないって!こっちと会う前からジェノサイドだった訳だし、こっちと戦わなければレンもジェノサイドのままだったんだ。どっちが悪いとか、もうそう言うのは無いと思うんだよ」

建物に入ると、エレベーターに乗り、教室のある5階のボタンを押す。
2人以外に人がいなかったお陰で話も続けられている。

「だと有難いな……。よし、俺も協力しよう」

「協力?」

高野は少しでも罪悪感という物を少しでも消すため、そしてこれ以上の仲間へ向けられる危険を排除するため、誓う。

「今回の襲撃の首謀者を特定してブッ叩く。お前やお前らの平和を俺が守る。それで俺が逆に狙われるもんなら返り討ちにしてやる」

「待って、それじゃレンが危険だ!もう深部の人間じゃないのに……」

「だったら大丈夫だ。幸い俺の大会メンバーの2人は深部の人間だからそこは何とかなる。お前も嫌だろ?通学の度に自転車から放り投げられるのなんて」

高野は極僅かに恐れを抱いた。

香流の考え方、戦いに関する感覚、そしてそれらに付いて回るような危機管理能力。

それらは、その考え方は深部の人間に近しい何かを感じたからだ。

最悪な結末を辿る訳にはいかない。
だからこその、誓いであった。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.357 )
日時: 2019/04/28 15:51
名前: ガオケレナ (ID: tOQn8xnp)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

講義の終了を告げるチャイムが鳴り響く。
肩をびくつかせて顔を上げた高野は、今自分が食堂の席を2人分取った状態で、何も頼まずに1時間半耐え忍んでいた結果寝ていた事に気が付いた。

スマホを見て時間とLINEを確認する。
時刻は12時。香流の講義の1つが終わったところだ。
そしてLINEはゼロ。
どうやらこの間バトルは無かったようだ。

ここのところ対戦が頻繁に続いている気がした。
しかしそれは気のせいではなく、勝ち進んだ結果参加者が減っていったが為に当然に起きる事だった。
それは自分たちだけではない。
香流たちもそうだし、他の参加者も同様である。

チャイムが鳴ってから20分後。
香流が食堂にやって来た。

「よう、大丈夫か」

「大丈夫だって!来るのに時間が掛かるだけさ」

香流が座るのを確認すると高野は食券を買いに席から立ち上がる。その時香流の分も買ってこようか聞いてみたが断られた。それ位自分で出来るとの事だった。

「どんな講義受けてたの?」

高野はカルビクッパを、香流はうどんを席まで運ぶと食べ始める。
その時の高野の質問だった。

「さっき?さっきのは……絵画とかから隠されたメッセージじゃないけれど、真意?それを理解するって内容の授業だよ。象徴学みたいなものだよ」

「絵画に隠されたメッセージって……それって本当にあるのかよ?解釈次第ではなんとでも出来そうな気がする」

「場合によりけり、ってやつだよ」

石井にしろ山背にしろ彼にしろ、自分には到底追いつけない分野をよくここまで学べるものだなとその精神性を疑う。
少なくともその考えは高野本人を中心としているので間違いではあるのだが。

「講義中連絡はあったか?」

「いや、何も。こっちが講義にいる間は豊川と山背君が会場に居てくれてるし心配ないな」

「この後はどうするんだ?」

「この後にもう1つ講義あるし、それ受けたら会場行こうかな。ここまで残った人達の戦いを見ておきたいし、そろそろトレーニングもしたいしね」

ここまでは予定通りであったが、それ以降の事を言うと香流は少し考えながら、

「まぁ、あんな事があったからね。山背君には悪いけど2、3日お世話になろうかなって思ってる」

「その方がいいよ。俺としてもやりやすい」

「やりやすい?何が?」

「何でもねぇよ」

お腹を空かせていた事もあって即行で食べ終えた高野は飲み物を買うついでに席を立ち、LINEを開いた。
相手はメイである。

ーーー

「何よ……急に……」

メイは会場に着いてから少し観戦をした後、軽食のためにいつもの喫茶店で休憩していたところである。
その時の高野からのLINEであった。

「んん?『前に会った高校生を憶えているか?』一体どういう事よ……」

メイは思った通りの事を返信してみる。
すると、高野からの返事は早いものだった。

前に自分に接触してきた高校生たちが深部であったこと、だが彼らが何処の学校の人間かは分からないこと、即ち見たであろう制服から場所が特定出来るだろうかという内容であった。

『分かるわけないでしょ』

メイからのメッセージもシンプル且つ質素なものであった。
当然ながら、それに既読が付くともうメッセージは来なくなった。

ーーー

「だと思った。少しばかり分かるかなーとは思ったんだけどなぁ」

「さっきからどうしたの?様子がおかしくないか?レン」

彼に続いて昼食を終えた香流が杖を付きながらゆっくりと高野に近付く。
あえて何も言わない高野に、香流は妙な胸騒ぎを覚える。
嫌な予感がしてたまらない。

歩行速度が著しく下がった香流に追いつくことは出来ない。
高野は彼を置いてさっさと歩いて行ってしまった。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.358 )
日時: 2019/05/01 04:35
名前: ガオケレナ (ID: OJjBESOk)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「だから、違うって言ってるだろ〜!」

トレーニングルームに響く怒号。
しかし、その声には普段の穏やかさと優しさが少しばかり残っているかのような色を含んでいた。

「あらぁー。苦労しているみたいねぇ。吉岡」

騒ぎを聞き付けて、同じ高校生グループの相沢と東堂がやって来る。
声の主は吉岡桔梗。彼は一通りの基礎ポイントを振り終えたゾロアに対し、現実世界における性格の矯正を行おうとコミュニケーションを取っていたところだったのだが、

「コイツ全然言うこときかねぇよ〜。勝手に僕に変身したりするし!」

と、必死ながらも意味の分からない事を言う吉岡なので、2人はじっとゾロアを見てみる。

すると、
しゅん、と空中で一回転したゾロアが吉岡桔梗その人の姿へと変化した。

吉岡と化したゾロアは広いフロアを走り回り、それに対して顔を真っ赤にして本物の吉岡が追いかける。

そんなおかしな光景に相沢と東堂の2人は腹を抱えて爆笑しだした。

「笑い事じゃないって〜!」

「悪ぃ吉岡、お前とゾロアのやり取りがおかしすぎて……くっ、ははは……」

「同じ顔が2つもあると気持ちが悪いというかおかしいと言うか……でも片方は人間の格好しながら4足なんだもん笑うしかないって!!んふふっ……あはははっ!!」

「だからそんな悠長でいいのかよって……これじゃあ最強のゾロアークなんて出来るのかよ〜」

「我慢するんだ男子。初めはそんなもんさ」

読みが当たっていた。
一連の流れを見ていて彼はそう思いながらまだまだ幼い彼らにアドバイスを投げる。

高野洋平の声だった。

「あっ、あなたは〜……」

「ジェノサイ……高野、さん?」

「久しぶりだな。まさかな、とは思っていたけどゾロアを育てていたなんて。いいのか?今の環境ではかなり使いにくいぞ」

「ゲームでも現実世界こっちでも、使いこなせてみせますよ!……ところで、突然どうかしたのですか?」

「あぁ。ちょっと相談がしたくてな」

香流と別れて1時間ほど経った後、高野は大会会場であるドームシティへと移動し、彼等がいるだろうと踏んでバトルタワー内のトレーニングルームを覗きに来ていた。
ここに来れたという事は自分らの出番はまだ無かったということだ。

「厄介な敵に目をつけられたんだ。俺一人じゃ少し難しくてな」

「"あの"ジェノサイドに厄介とかあるんすか?」

ニヤニヤしながら東堂が横槍を入れてくるが、それに対し高野は横目で流す。

「厄介なのは、敵の居所が分からないって事なんだ
。それと、明確な対象も分からない」

話を聞いた3人はどんな顔をしていいのか分からないといった表情をしていた。
何をもって敵としているのか、高野が何を伝えたいのか全くもって分からないからだ。

「すいません……何が言いたいのか分からないと言うか〜……」

「悪い説明足らずだった。実は俺の友達が突然襲われたんだ。当然そいつは深部とは無関係なんだが、俺の交友関係を調べ尽くした気持ち悪い奴が俺じゃなく友達を攻撃した。そいつは無事だけどな……。でも友達は他にもいるし、これ以上犠牲者を出したくない。だから、少し協力してくれないか?」

「別に構いませんが、どうしてあたしたちを?友達居ないんですか?」

「さっき居るって言ったじゃん!いや、あの、深部絡みとなると頼める人が居なくなるだけなんだ」

自分の友達の少なさを少しばかり呪った瞬間だった。
決して知り合いや友人は少なくはないのだが、高野の、他者との交流を疎かにしてしまう性格がここで裏目に出てしまった。
本来であればジェノサイドの面々や、高校時代共に深部にて行動を共にしていた人達を集めることも出来たはずだったからだ。

「勿論タダでとは言わない。金は出すし機会があれば議会の人間とも接触させる。何ならゾロアーク育成の手助けをしてもいい。だからここは1つ助けてくれないか?」

「いいけれど……俺たちはいつ動けと?大会期間中はまともに会場から出れないのにか?」

「キー君……あんたパンフレット見てないのね……。29日から1週間大会はお休みになるのよ」

「「えっ、マジか!!」」

東堂の叫びと同じタイミングで高野も同じ台詞を吐き出した。
その後すぐに高野は東堂と顔を合わせ、互いに「なんでだよ……」みたいな表情を見せると気まずさからか黙ってしまう。

終始唖然としていた相沢は、高野がそもそも何を思って相談しに来たのか、どのような段取りでいるつもりだったのか全く理解出来ずにいる。そんなギャグみたいな空気の中、誰もがこう思った事だろう。

奇跡ってあるんだな、と。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.359 )
日時: 2019/05/06 17:24
名前: ガオケレナ (ID: M0NJoEak)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


13時から14時半の講義を終えた香流は、大学からのバスを経由してドームシティに到着していた。

事前に来ることを知らせていた山背と豊川がターミナルで待ってくれていたようで、彼がバスから降り立つと同時に2人が駆け寄ってきた。

「大丈夫かお前!?派手にやられた、って聞いたけど……」

「うん、大丈夫大丈夫。ほら、こうやって歩けるし本当だったらこの松葉杖もいらないんだけどね」

「でも何で香流が狙われるんだ?理由がよく分からないよ!」

2人には『ポケモンに襲われた。多分深部絡み』程度しか教えていなかったので、山背からしたら香流が狙われる理由が分かっていなかった。真相を完全には知らない豊川も同様ではあったが、彼はまだ何となく察する事が出来ていたようで彼ほど驚いてはいないようだ。

「それよりも大会の方は?何か動きとか、こっちが見落としていて実は試合があったとか、そういうのない?」

「お前が居ない間に試合していたかって事か?それは大丈夫だ。俺も山背君もずっと此処に居ただけで何も変化はない」

「そうか……なら良かった」

バス停から離れた香流は杖で地面をカンカン鳴らしながらゆっくりと歩き始める。
当然ながら2人もそれにつられて歩く。

「前から気になってたんだ。今からバトルタワーに行ってトレーニングしてもいいかな?」

「別に構わんが……お前にトレーニングなんて必要なのかよ?」

「必要だよー……皆はこっちの事を強い強い言うけど、こっちではそう思わないし、やっぱり実戦では慣れない事ばかりだし。ゲームとリアルの動きはやっぱり違うよ」

「思ったんだけど、香流ってそんなに強いの?まだ対戦したことないから分からないんだけれど?」

山背の発言だった。
彼は6月23日にサークルに参加しだして約1ヶ月経った今でも香流との対戦はまだ未経験であった。
そのため、彼の強さが分かっていないのだ。

「一応それはさっきの話とも少し繋がるんだ?」

「さっきの話?どれくらい前の?」

「丁度2人にも相談したい事があったんだ。続きを話すね」


ーーー

「いい?29日から1週間空くって事は何を意味するのか」

「……いつもの実況者というか……解説とかしてるDJが疲れたから」

高野のふざけた答えにメイは「違う」と言う代わりにぺしっ、と軽く彼の頭を叩いた。

「予定では、今日と明日……もし少し予定とズレたら29日の前半までにすべての予選が終わるからよ!つまり予選から本選までの運営側の準備の為の1週間よ!」

「そんなんで終わるのか!?もっと掛かるイメージだと思ったんだが」

「まぁ、ゆうてここまでに何十回とバトルしたからなぁ?20回くらいは勝ってきたんじゃないか?」

ルークはそう言ってきたが高野にそこまでの記憶は無かった。
何回戦って何回勝ったかなんていちいち覚えていられないからだ。

「んで?お前は何が言いたかったの?」

高野は逸れた話を戻すためにメイに戻させるよう仕向ける。
メイは「なんだったっけなぁ……」と小さく呟いてから何かを思い出したかのような顔をすると、

「そうだ!1週間の予定は!?」

「は?」

「だから、あなたの明後日以降の1週間の予定よ。何をするつもりだったの?」

「俺か?俺はひとまず香流を襲った奴らを探すよ。また同じような事が起きても嫌だしな」

「お前のとこの大学はいつまでやってんだ?もう夏休みだろ」

「神東大学は8月の14日からだ。そっから2ヶ月近く休み」

「そう言えば今日、変なLINE送ってきたわよね?あの高校生たちに何か用でもあったの?」

高野は、あぁ、それかとわざと改めて作ったようなノーリアクションで反応すると、隠しもせずと言った様子でこう言い放つ。

「アイツらと一緒にこの1週間行動する。だからアイツらがどこの高校の人間か知りたかった」

「……あの子たちよりも私達と行動した方がいいと思うけれど?見たところあの子たち初心者よ」

「いや、いいんだ。俺にも考えがある。その為のチョイスだ」

「あぁそう。ならいいけど」

ーーー

「レンの様子がおかしい?」

豊川はバトルタワー内のトレーニングルームにて派手に技を繰り出している香流のバシャーモを横目に、香流の話にそのように言い返した。

「いや、まぁ……誰だって友達がヤバい奴らに襲われたらビビるだろうが」

「そうじゃなくてさ……こう、敵を徹底的に探し出してぶちのめすみたいなように見えて仕方がないんだ」

「つまり、お前はこう言いたいのか?」

豊川は隣に山背が居るにも関わらず、いや、居るからこそ敢えて言ってやるといった口調で、

「レンが深部に戻るかもしれない。そう思ってんだろ?」

「そこまで極端じゃないよ……ただ、相手が深部絡みとなると不安ってだけで」

「ちょっといい?レンが深部に戻る事ってそんなにヤバいの?」

山背の声だ。
あれからまだ何も聞かされていない者の言葉にそれは等しい。

「色々と問題があるんだ。そもそも、レンがジェノサイドでなくなった1番の理由って知ってるか?」

「いや、僕にはサッパリ……」

「コイツに、香流に負けたからだ。コイツ、レンの為だけに深部組織同士の戦いに混ざって最終的に勝っちゃったんだぜ!?深部最強のアイツに」

「そんな事……でも、そんな……君にそんな事が……?」

山背は顔を真っ白にすると理解できるまで何度も豊川の声を頭の中でリピートさせた。
情報量が突然多くなって戸惑う。

ジェノサイドが終わった理由が、まさか今まさにその目の前にあるなどとどんなに想像力を膨らませても決して到達しないものだからだ。

「待って……それじゃあ、まさか、香流が襲われた1番の理由って……」

しかし、そこは山背恒平という男である。
理解さえ出来てしまえば背景や本質と言ったものをすぐに表すことができる。

「そういう事なんだ。こっちが、今1番心配なのは"そこ"なんだよ」

香流の声が、余計に響いた。


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