二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.290 )
- 日時: 2019/02/06 08:05
- 名前: ガオケレナ (ID: zKu0533M)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「はい。あなたが着るのはこれとこれ」
「どんなのかと思って行ってみたら白のワイシャツと黒のスラックスじゃねぇか!それくらい俺の押入れに入ってるっつーの」
二人が次に来たのはよく見る紳士服量販店である。高野は元から来ないこともあってか高価な売り物が並んでいる店はハードルが高く行きにくい印象があったが、メイから手渡されたワイシャツとスラックスに拍子抜けした。
むしろスーツではないのかと。
「むしろここまでシンプルが一番いいのよ。この大会に参加するのは中学・高校生の学生からあなたみたいな大学生、さらには普通に働いている社会人までよ。今挙げた人たちは皆制服やスーツを着るじゃない?特にこれからの季節よ。クールビズじゃあないけど妥当と言えば妥当の選択よ」
「いやまぁそれならまだ分かるんだが……、ってか何でドームシティに紳士服の店まであんだよ……どんだけ揃えてんだ意味わかんねー」
「いいじゃない。無駄に広い土地だったんだし。あらゆる物が揃っていた方が需要も伸びるわよ」
「確定ではないけどな」
そう言って結局高野は手渡された服を持ってレジに向かう。
安いとも高いともいえない金額を求められた高野はそれでも何の躊躇もなく自分も財布からお金を取り出した。
涼しさをも感じる自動ドアの音が耳を刺激する。
二人は支払いを終えるとすぐにその店を出る。案の定店員の挨拶も聴こえてきた。
「安くはなかったはずだけど……抵抗ないのね?」
「まぁな。全部という訳ではないが少しならジェノサイドの時代の金が残ってる。学生の俺にはそれでも充分すぎるくらいだ。それらがある内は不自由なく過ごせる」
「いつまでそんな事言ってられるかなぁ~?」
自慢ともとれる高野の発言に対抗するためなのか、メイが意地悪そうな笑みを浮かべて意地悪そうな口調でわざと視界に映ってきた。
面倒臭そうに高野はその顔を払おうと手を振るい、メイを少しばかり遠ざける。
「ところでよ、さっき気になったんだが」
「ん?私が連れてくる店のセンスがいいとか?」
「逆にその自信過剰な所はどこから湧き上がるのか知りたい。そこじゃねぇよ。さっきの職人みたいな……」
「あぁ、ぎんじおじーちゃんね。お爺ちゃんがどうかしたの?」
二人は紳士服量販店から遠ざかってひたすら歩く。来た道がどちらだったかも分からなかったが見えるのはコンビニのような小さな店が大半だ。一つ一つの店の外観が近代的を思わせるデザインで普段は見慣れなさそうなものばかりである。
特に欧米風なものが多いので恐らく主催者の好みなのだろう。
「そのお爺ちゃんも深部の人間なのか?お前を知っていたし何だかそっちの世界に詳しいように見えたからよ」
「あー。それね」
メイは小さく微笑む。高野の口調が少し情けなさそうだったからだろうか。
「お爺ちゃんは深部の人間ではないわよ。完全に表の人間。ただ、客に私みたいなデバイスの改造を希望する人が多いから雰囲気とか外見から見て'それっぽい人たち'が居ることには気付いているみたい。結構深部の人間って特徴的と言うか変わった人が多いじゃない?世間と同化しないだとかアウトローぶってるのかは知らないけど」
もっとも、これから表の人間でもメガシンカを使う人が増えるけどとメイは最後に付け足す。
要するに考えすぎる必要は無いということだった。
ーーー
「おぅ、待たせたな!出来たぜおめぇさんの眼鏡」
ぐるっと町を見て回った二人は最後に工房へと戻った。タイミング良く高野の眼鏡も完成していたところだった。
高野はテーブルに置いてあった眼鏡を手に取る。
焦げ茶色を基調にしたシンプルなスクエア型である。
右のレンズの近く、蝶番付近がやや広い。手で触れて確認するとそこにキーストーンが埋め込まれていた。
「メガシンカさせたきゃそこに触れりゃいい。ズレた眼鏡を直すのと同じ要領で触っちまえば簡単だろ?」
「すごーい!そこまで考えてたなんて流石お爺ちゃんね!……でも、度は合ってるの?」
「……大丈夫だ」
高野は試しに掛けた眼鏡を外す。目を何度かパチパチさせながら言っているので説得力が微塵もないがどうやらコンタクトの上に眼鏡を掛けていたらしい。
「あらかじめコンタクトの度がどのくらいかを伝えておいた。形に関しては特に診てもらってないから不安だったけど、逆にピッタリな事に驚いている」
「そりゃそうだ。おれァおめぇさんぐらいの顔だったら見るだけでどのくらいかってのがわかっちまうもんでな。念の為に検査なんてしてたら時間の無駄だろ」
「すげぇな……本当に職人って感じだな」
高野は特に不備が見られない完璧な眼鏡をケースに入れると鞄へと仕舞う。
「ありがとうな、お陰で助かったよ」
「おい待てぃ。まだ金払ってねぇだろうが」
強い口調で言われたものの、レジが見当たらない。大貫が手を差し出していることから恐らく手渡しだろうか。
「金、払うんだな」
「ったりめーよ。こちとら商売でやってんだ。5万」
「うわ、高っ。んじゃ5万な」
またしてもなんの躊躇もなく財布から5万円を取り出して大貫の大きい掌の上に乗せた。
それを見た大貫は若干申し訳無さそうな顔をすると、
「冗談だよ馬鹿野郎。2万でいい」
そう言って5万のうち3万を高野に返す。彼は彼で冗談には聞こえなかったからか終始きょとんとした顔で3万を握り締めた。
「ったくおめぇってやつぁ……いつかダマされんぞ」
「騙されてもさらに余裕があるから平気」
店を出た二人を大貫が見送る為に彼も外へと出る。
まず目に映ったのは木々に囲まれた一直線の道だった。
大貫は最後にと忠告をしてみたつもりだが平然と突っぱねられてしまう。
「かーっ!言うねぇ。ま、そんな事言ってるといつ落とし穴にかかってもおかしくはねぇな。気をつけんな」
「ありがとうね、お爺ちゃん」
メイが振り向きざまに笑顔で手を振った。
大貫は右手を左右に小さく振ることでそれに応えた。
「じゃあこんな所かしらね。あなたの準備は」
「案外すぐに終わったな。しっかし、今日の格好をするとなると……今までの俺とは全く違う雰囲気になりそうだな」
「そうね。さっきチラッと見たけど眼鏡のあなたはただの爽やかそうな青年だったわね。爽やか'そうな'だけど」
「あくまでもイメージで、しかも見えるだけかい」
「イメージなんてそんなもんよ」
高野はつまらなそうに舌打ちすると荷物を持ちながら町を下る。バスターミナルを越え、見えた先には行きにも使ったエレベーターだ。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.291 )
- 日時: 2019/02/06 15:04
- 名前: ガオケレナ (ID: My8p4XqK)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「それじゃあ、今日はここまで。色々あったけどどうだった?」
メイと高野、二人は既にドームシティの最寄り駅である聖蹟桜ヶ丘駅に辿り着いていた。
と、言うのもただ坂を下るだけだったのでそれほど時間はかからなかったが。
「せんせー、色々ありすぎて頭が混乱してまーす」
「そう。じゃあおさらいがてらもう一度ドームシティに……」
「俺が悪かった、頼むからもう帰らせてくれ。疲れた」
珍しく自分からふざけたのを若干後悔する高野。メイの瞳が何故だか輝いていたからだろう。よほど高野が苦しむ姿が見たいようだ。
「話は戻して、いい?これからについてよ。これからあなたは、元ジェノサイドとしてではなく、学生としての高野洋平として大会に出てもらうわ。期間中はワイシャツに、黒のスラックスを着用すること。あとこれ、キーストーンを抜き取った杖よ。一応返すけど、何があってもそれを人前で出すことはしないで。常に眼鏡で……メガメガネでメガシンカを行ってちょうだい」
「……そのダサい名前はどうにかならんのか」
高野は、メイからかつてのデバイスの抜け殻である白い杖を受け取る。程よく手にフィットしていたが故にこれを手放すのは少し残念である。
「仕方ないでしょ。一応ポケモンの公式でもメガメガネって名前なんだから。とにかく今後はそれを使うこと。いいね?」
「別にメガグラスでもいいじゃねぇかよ……まぁ名前なんてどうでもいい」
高野は受け取った杖を鞄に仕舞いこむ。長いせいで上手く中に入らなかったが、そこは無理矢理押し込む事でどうにかなった。
「お前はこれからどうするんだ?」
帰ってもおかしくないタイミングになってもメイは何故だかそこを離れようとしなかった。もしかしたら電車を使わないのかもしれない。
「私?そうねぇ……、私はここから電車で向かう方向に住処があるわけじゃないから適当に帰るわ。そういうアナタは?ジェノサイドという最大の住処を失ったあなたの方が気になるんだけど」
「あー、それなら気にすんな。適当に大学のすぐ近くのマンション借りて一人暮らししている。クソ狭くてホント不便だがな」
高野は部屋を想像したのか、ダルそうな目つきで真昼の空を眺める。これから夕暮れ時に迫る丁度境目あたりの時間だった。
「そう。それなら良かった。じゃあ気をつけてね」
メイは一旦彼から離れた後の背を向ける直前に手を振った。
これで暫く彼女と出会う事はない。そう思った瞬間に、高野は思い出したかのように「あ!」と叫んでメイの動きを止める。
「な、なに……?どうかした?」
「お前にさ聞きたいことがあるんだ。いや、厳密にはお前の考えと言ったところか」
今まで忘れていた事自体がおかしいと感じていた。それは自分がもうあの大会に出ると決まったようなものだったからか。
何故この大会が開催されることになったのか。何故主催者……本当にそんな存在の人間がいるかどうかが怪しいが、その人がここまで派手に彩る事を選択したのか。そして何故あの場所で。高野の脳内にはそんな事で一杯になる。
そこで彼は簡潔にするため、
「何故あんな大会が開かれることになったと思うか?」
と聞いてみることにした。
それに対しメイはそれまで別れを感じさせない程の明るい雰囲気を一瞬にして消し、やや上目遣いで彼を見定めつつ声のトーンを低くしてこう応える。
「そうね……あなたはこの半年間深部に居なかったから分からなかったわよね」
そう言うと、メイはいきなり歩き出した。そのペースが早くない事を考えると、その行先は目の前のベンチのようだ。
「あのね、あの会場を作るための工事が始まったのは今から5年前なの」
「それは今日お前から聞いた」
「いいから、これには続きがあるの」
先に座ったメイが、隣に座るように指で合図する。
高野は周りを少し気にしながらそこに腰をかけた。
「ねぇ、おかしいと思わない?」
「何がだ」
「今から5年前と言えば、ポケモンが実体化を始めた直後よ?それなのに議会が組織されて、大会の話もまとまって、工事を始めたなんて時間を考えるとおかしくない?」
「……確かに。最初に5年前と聞いた時は何か引っかかるとは思ったが」
高野は言いながら当時の自分を振り返った。その時はまだ高校に入ったばかりである。
「まぁここはどんなに深く調べても議会の裏事情に当たるからいくら私でも無理よ。問題は大会の開催理由。これを聞けば尚更時系列に無理があるんじゃないかしら?」
「開催目的……?」
高野は、つい昨日自分の友達が話していたそれを思い出してみた。この大会に何故学生が多いのかを。
「近年の中高生に見られるポケモン離れ……これを解消するための大会……?」
「ね?五年前からと考えると少しおかしくない?」
高野は特別な物知りでは無いため、5年前の学生のポケモン事情など知らない。ましてや、ポケモンの人口なんて5年やちょっとじゃ変わらないのかもしれない。
それにしても工事の開始時期と公表されている理由を照らし合わせると、都合が良すぎるようにも思えてしまう。
「簡単な理由よ。それは建前。もっと言えば偽りの理由だからよ」
「偽り……?」
高野ははっとした目でメイを凝視する。そこで彼は初めて冒頭でメイの言った「あなたは半年深部にいなかったから分からなかった」の意味が分かった気がした。
「まさか……今の深部は……」
「えぇ。実を言うとね、今議会は相当焦っているの。あなたを失ったからではなくて、今急激に深部の人口が減り出しているからよ」
「議会が奨励した組織間の抗争……あれに過ちがあったんだな」
高野の言葉にメイは深く頷いた。
「議会の定めたルールには致命的な欠陥があった……。抗争を続ける内に、日本の全国規模でそれが展開されると深部の人間が一気に減少してしまう。それの対策が存在しなかったからよ」
つまり、とメイは隙間を作ることなく続ける。
「今の深部には綻びが見えているの。このままでは深部が深部として成り立たなくなる。ともなれば自分たち議員の収入源がなくなるわ。そうなる事を一番恐れているの」
「ったく、どいつもこいつも結局は保身と金かよ……俺達の命を何とも思っちゃいねぇんだな」
初めて知った最近の深部の裏事情に驚愕しつつ、相変わらずの議会の人間ぶりに高野は苛立ちを募らせる。
「勘のいいアナタならもう分かったんじゃないかしら?このタイミングで大会……」
「つまり、ヤツらはポケモン人口を増やすことではなく深部の人間を増やすためにこの大会の開催をこの時期にしたわけか」
そういう事、と言ってメイはベンチから立ち上がる。しかし、彼女は手を高野に手を差し伸ばしながらこう付け加える。
「これはあなたの質問通り、私個人の考えよ。これがすべてではない。でも深部が綻び始めているのも人口が少なくなっているのも本当よ?」
高野は溜息を吐きつつ、メイの手を無視して自分で立ち上がる。
横目でジロりと彼女を見つめる高野は、
「まさかその真相を確かめる為に俺を利用しようとしている訳じゃねぇよなぁ?」
ほんの少し生まれた敵意にも似たそれを彼女に向ける。
「さぁ~ねぇ~それは今のあなたが追うべき事柄じゃないわ」
わざとらしく、意地悪そうに薄ら笑いを浮かべるメイが、そこにはいた。
「どういう意味だお前、わざと苛立ちを募らせてその様を見続けるのがそんなに楽しいか」
「違うよ。要するにこの大会は楽しめると言いたいのよ」
「あ?」
メイは指を二本立てた。薄ら笑いはもう消えている。
「1つは、あなたがこの大会を一般人として普通に参加し、普通に優勝目指して戦い抜く意味において。2つ目は、深部の謎を追う、本当の意味でのアウトローとしてこの大会の裏側を調べることにおいて、よ。だからお互い楽しみましょう。ね?」
自分はつくづく気味の悪い女と仲良くなってしまったと強く感じた。
果たして高野は、まるで普段から友達を見送るかのように、ただ彼女の去る姿を眺めていたままで良かったのかとそれだけの事で自分の頭を痛くするほど考えた、哀れな姿を晒す結果に終わってしまった事に怒りと呆れが生まれて初めて1日の終わりを感じた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.292 )
- 日時: 2019/02/06 15:24
- 名前: ガオケレナ (ID: My8p4XqK)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
時空の狭間
その天使に出会ったのは、彼が幼い時であった。
天使の正体はただの人間である。だが、その者はただの人間とするのも、ただのクラスメイト、ただの他人と評するのも失礼だと思えるくらい素晴らしく美しい存在だった。
それ故の天使。
さて、彼が天使に出会った時は、今の時代の区分に分けられるのならば中学1年生の頃だろうか。
偶然だった。同学年の人が200人近い中でその者と一緒になれたのは偶然であった。
さらに、彼が弱きゆえ虐めを受けていたのも、その虐めから助けようとしたのも偶然だったのだろう。
そしてその虐めを救おうとした者が、その天使だったのは最早奇跡だっただろう。
厳密には暴力が止み、野蛮な人間が立ち去ったその直後。
ボロボロになってへたり込んでいた所へ声を掛けただけなので救いでも何でも無かったのだが、人に恵まれていなかった彼からしたら救いと同義の事だった。
そんな事が何度も続き、学年も変わり、中学最後の年となったとき。
二人はやっと遊ぶようになった。
何故ここまで時間がかかったか。単に遊ぶ時間が無かったこと、単に家が遠かった事が挙げられるがそれ以上の理由に、彼が上手く会話ができない事にあっただろう。
その影響か、やっと遊ぶ時になっていても二人きりではなく、彼の友達一人と彼女の友達が一人の、計四人で遊んでいる。
遂に彼らは卒業を迎える。
学校が離れ離れになることで会う機会が大幅に減ってしまう。
もうこれまでかと思ったその時、彼は初めて自分が天使に対し好意を抱いていた事に気が付いた。
それと同様に、強い後悔も生まれた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.293 )
- 日時: 2019/02/07 16:25
- 名前: ガオケレナ (ID: FA6b5qPu)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
Ep.2 旧友との再会
2015年5月26日。
大会開催日が6月24日の為1ヶ月を切った。
昼まで授業だった高野は放課後のサークルまで暇であったため、如何にして時間を潰そうかと大学構内を歩いていた時のことだ。
「あれ?岡田か?」
目の前にはバスロータリーがある。
神東大学は主に3つから4つの駅まで繋がっているため、自然とバス停が3つまで設立されることになる。その為校舎からはかなり離れた位置になるものの、バスロータリーが設けられているのだ。
そのロータリーの1箇所のバス停に、高野と同じ学部の友達にして同じサークルの仲間である岡田翔がいた。
彼は最近、毎週火曜日はサークルには来なくなった。授業終わって足早に去っていくのでどうかしたのかと普段から思っていたが、今彼はそこで貧乏揺すりをしながら時計と時刻表を交互に見ている。
「よぉ、岡田。お前どうしたの?」
「あぁ。レンか……。いや俺さーこれからバイトだから」
「だからいつも授業終わったら帰っていたのか。バイトは毎週なのか?」
高野の質問に、岡田は頷くだけだった。それらの態度を見る限りバスが来なくてイライラしているのだろうが、バスが来るのは5分後のようだ。それくらい待てないのかと高野は本人の前では言えないために心の中で呟く。
バスに乗り込み、離れていく岡田を眺めて高野は思いに耽った。
(今日の最後の授業が終わるのは18時。あと3時間近くあるのか……。どうやって時間を潰すか?いっそ家までここから10分なんだし帰ってポケモンの育成をすべきだろうか?)
ロータリーからとぼとぼ歩くとコンビニが見えてくる。普段なら何か軽い物を買って行くところだが昼食を食べて時間があまり経っていないのでスルーしようかと通り過ぎたときだ。
コンビニの自動ドアから見知った人間が出てきた。
「あっ、レンだー」
「ん?」
聞き慣れた声を聞き取りそちらへ振り返ると小さい袋を下げた、岡田と同じくサークル仲間の石井真姫の姿があった。
「なんだお前か」
「なんだとはなんだ」
ところで、今はもう授業開始時間を過ぎている。時間は大丈夫なのかと聞いてみる。
すると、
「ところでレン、1つの授業につき5回まで休めるのは知っているかな?」
「それくらい知っているけど、それがどうし……っ!?」
高野は自分の意思で自分の喋る口を止めると、まさかと言ったような驚愕の表情で石井を見つめた。
「まさかお前……」
「そのまさかでーっす!レポートの為にサボりまーす!」
なんだかこのやり取りを、しかも同じ人とこれまでに何度も行ってきたはずだと違う意味で彼の頭を悩ませた。
「お前なんか時間の使い方間違ってる気がする」
「よく言われる気がする」
終始ふざける彼女に高野は毎度呆れるも、笑っている気がした。逆に何故ここまでふざけられるのかと若干悩ましいが羨ましくもあった。
「……ワニノコのモノマネ」
「……!?わにわにっ!」
高野の言葉を合図に、石井は小さい頃にテレビで写っていたであろうポケモンのアニメに出てきたワニノコの鳴き真似をし出した。最早彼女のネタとなりつつある。
「お前それ意外と似てるよな」
「でしょー!!唯一のモノマネだからね」
女子大生の唯一のモノマネがワニノコとはこれいかにとは思うが、高野はそれによって何かを思い出したのか3DSを取り出して起動中のポケモンを開いた。
「レン?なにしてんの?」
「お前さ、ポケモン持ってるか?だったら渡しておきたいものがあってな」
高野はゲーム内のパソコンを開いて、持っているポケモンをざーっと見ていく。目当てのものがあったようで安心してパソコンを閉じた。
石井は持っているよと言ってカバンからゲーム機を取り出す。
高野はそれを一度受け取ると彼女のポケモンを起動し、すぐさまローカルで繋がっているゲーム内での高野本人に対して交換を申し込む画面にして彼女にゲーム機を返した。
「ん?何してるの?」
「今のモノマネで思い出した。一匹だけ育成途中のワニノコがいてな。と言うのも既にオーダイルを育てた後に気づいたもんだから放置していて。お前だったら受け取っても問題はないだろ」
「ないけどさ、でもどうして私に?ゲームなんてたまーにしかやらなくなったし大会にも出ないよ?」
「いや、だからこその育成途中だ。そいつはもう下準備を終わらせてあとはレベル上げと技構成だけを済ませばいい所までいっている。今や実体化するポケモンがそこらにいる時代だ。お前も1体くらいはそれなりのポケモンは持っておけ」
「実体化したポケモンって今レンの肩に乗っているゾロアとかそういうのでしょ?」
突然ズシッとした重みがした理由が分かった。ゾロアが命令等を無視して勝手にモンスターボールから出たのだ。
頭を軽く叩いてからボールへと戻す。
「例えば今見たくゾロア本体か、ゾロアの入ったボールを私に渡せばそれで交換……と言うか譲渡?それは完了するんじゃないの?」
「それだったら楽でいいんだがな。このポケモンたちはトレーナー、即ち俺らみたいな人間の持つゲームのデータと連動している。ボールを今ここで、はい手渡し、となっても何故か元の主人の手に戻ってしまう。どういう仕組みなのか本当に分からないがな。しかも中身のポケモンだけという嫌らしい仕様でな。つまり、連動している以上元の存在であるデータをゲーム上で交換しないと無理ってことだ」
お互いのゲームの画面を操作し、交換を終えたようだ。石井のゲームに今ワニノコが渡った。
「ふーん。結構面倒なんだね」
「そこは仕方ねぇだろ。でもゲームを介さずにスマホのアプリだけで済ますポケモンボックスなんてのもあるからその内誰かがゲームを介さずに交換できるアプリを開発してくれるだろ」
まるで交換が目的だったと言わんばかりにそれを終えた今、高野は「じゃあ俺一旦帰る」と言うと石井に背を見せてその場からバスロータリーとは真反対の位置にある校門を目指して立ち去ってしまった。
石井は折角なので受け取ったワニノコを見てみる。
技がいくつか遺伝されていただけでなく、丁寧にも隠れ特性の'ちからずく'という個体であった。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.294 )
- 日時: 2019/02/10 16:12
- 名前: ガオケレナ (ID: 0vtjcWjJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
高野洋平が所属しているサークル『traveler』は毎週火曜と木曜、そして金曜の放課後に活動する。
彼は今、そのサークルの活動場所としている教室でポケモンを起動している3DSを机に放置しながら窓の景色を眺めていた。
(やる事ねぇーなぁー……退屈だ)
あれから高野は結局一旦家に帰った。
少し寝た後ポケモンに時間を費やしていたらサークルの活動時間となった訳だ。
時間の使い方を間違えている自覚はあるらしく、他のサークルメンバーがボードゲームに参加している光景を時折眺めながらその視線を真下のゲーム機に移したあと、結局はまだ明るい外を眺めるに至っている。
サークルとは本来大人数で集まってワイワイするものである。それがスポーツになれば何処かの施設を借りてそれに励むのだが、彼の所属するサークルはそう言った類が全く存在しない。
「とにかく皆で集まってゆる~くまったりと何かしようぜ。んで、長期休暇時に旅行行こうぜ」的な雰囲気が漂っている場所なのだ。
そもそも高野が此処に来たきっかけは1年の入学まもない時に知り合った岡田がこのサークルに興味を示し、それの付き添いで来ただけであった。3年となった今、岡田があまり来ないので自分でも何故来たのか気になるものなのだが、今の彼には友達と言えるべき存在がおり、この日常の為に深部を捨てたことになるので深く考えるのは彼自身を否定することに繋がってしまう。
適当に考える事を止めた高野はとりあえず新たにメガシンカが可能となったヤミラミでも育てようかと下準備の為に"そらのはしら"で夢特性のヤミラミを捕獲することから始めた。
「先輩、ババ抜きしないんですか?」
今年入ってきた1年の女の後輩が間隔ごとに声をかけてくる。香流たちがその後輩に「今は話しかけなくていいよ」なんて言っているのが聴こえた。
目だけを動かして彼らをチラッと見てみる。
彼の友達である3年生が5人ほど、後輩にあたる2年生が7人ほど、さらに後輩にあたる1年生が5人いた。
あまりに人数が多いので幾つかのグループに別れているが、やっていることは皆同じだった。
出てきた個体が目当てのものでなかったことにため息しつつ、操作する手をひたすら動かす。
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