二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.240 )
- 日時: 2019/01/26 18:08
- 名前: ガオケレナ (ID: UMqw536o)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
ミナミはレミとまだ会話をしている最中の事だった。
夜空が突如爆音に包まれる。
花火大会が終わったあとのような真っ白な淀んでいる空に、一際明るい星でも花火でもない一種の"芸術"が輝いていたのだ。
「'りゅうせいぐん'、ね。どこかで戦っているのかしら」
一目見ればそれが'りゅうせいぐん'だと分かる。特に対戦に通じている者ならば尚更だ。
本来ならばそう思うだろう。敵地に進む彼女からすれば、このタイミングこの場所で見られる'りゅうせいぐん'というのはバトルの時でしかない。
しかし、そこにまた一つ影が。
「やっと……やっと見つけましたよリーダー!」
息切れしながら聞き慣れた声が基地のある方角からやってくる。
「レイジか……もうバトルなら終わっ、」
呑気に敵と目の前で会話という隙しか見せていない彼女だったが、それを無理矢理レイジが封じる。
走ってきたレイジはそのまま止まることなく走り続け、ミナミの細い腕を掴むとそのまま林の奥へと連れ去ろうとする。
「リーダー早く!時間がありません!」
「ちょっ、痛い!やめて離して!!いきなり何なのよもう……」
負けじと思い切り叩き、掴んでいたレイジの手をはらった。
「すいません、しかし……この状況ですので」
「だから何よ。とにかく落ち着いて」
チラッとレイジはミナミの後ろに佇むレミを睨む。
彼女はもうバトルに負けた身なのでミナミを攻撃する手段といえばナイフ程度しか無いがそれをレイジは知らない。
彼からすればいつ攻撃してくるのか分からないからだ。
「リーダーから退却命令が出ました」
反射的にミナミの瞳が大きくなった。どんな意味なのだろうか。妙な不安に駆られる。
「先ほどその合図が出されました。とにかく急ぎましょう。リーダーはまだ無事です」
レイジのその情報にレミは軽く舌打ちし、それに気づいた二人が振り向く。
「な、何よぉ……。アタシはジェノサイドの命を狙いに来たのよ?そんないらない情報貰えばウンザリもするわよ……もういいからほら!!早くアナタ達は行きなさい!アタシはもうアナタを追ったりしないわよ。負けた人間は諦めるのが常なのだから」
最後まで怪しみながらレイジはミナミの手を引いてその場を後にする。
二人の走る姿が暗闇によりすぐ消えた。
「はぁ……またふりだしかぁ。ジェノサイドもやられていない、アタシは負けた、しかも逃げようとしている……。間に合わないわね。これじゃあ」
ーーー
暗い林を駆けながらミナミは叫ぶ。
「ねぇ!!どうして退却命令とか言いながら基地とは別の方向に走ってるのよ!」
ミナミはレイジについて行く形をとっているが、その彼の行動がおかしい。
明らかに何も無い林の奥へと進んでいる。
「ここでいいのです。この先に、リーダーが用意したものがあります!」
言ってすぐのことだった。
少し景色が広くなったと思うそこには、何の変哲もないリグレーがポツーンと突っ立っているだけだ。
「え?なにこれ?」
「リーダーが用意したリグレーです。ほらどうぞ」
レイジにエスコートされてミナミはリグレーの前に立つ。
するとすぐの事だった。
「……えっ?なに?これ……」
ミナミはいきなり周りを何度も見回してみるが背景には何も変化がない。ただ老いた木々が茂っているだけだ。
「テレパシーですよ。耳ではなく脳内に響いていますよね?声が」
なんとか聞き取れたレイジの言葉ですべて理解した。
今ミナミの脳内にはリグレーが発したテレパシーが流れ込んでいる。人の言葉で彼女にも聞き取れるものだった。
(なに……?このテレパシーに答えればテレポートで移動できる……?そんな事まで用意していたの!?)
(では、あなたがジェノサイドの味方かどうかを判断する質問を致します……)
来る。変に緊張したせいで肩に力が入る。
これから始まる、と思ったその矢先、パキッと音がしたかと思うと、草むらから葉を掻き分けた男達の姿が現れ、彼らは一斉にレイジやミナミに掴みかかった。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.241 )
- 日時: 2019/01/26 18:14
- 名前: ガオケレナ (ID: UMqw536o)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
テレパシーを受けているミナミは、はっとして振り返る。
その腕に強い力がかかっているからだ。
一人ではない。パッと見ただけで四人。
四人の男が両腕に力を込めてミナミを押さえ出した。
「やっと……やっと見つけたぞ……」
一人は血走った目をしている。ここに来るまでに相当走ったのだろうか。
「そのポケモンを見て、レンがテレポートを使って移動することは読めたんだ……悪いけどレンを追うためだ」
それぞれの男は"レン"という単語を使っている。
と、言うことは今日ここに紛れ込んだサークルの仲間と言うことになる。
「な、なにをするの……?離して!」
意識を佐野たちに向けてもテレパシーが途切れることは無い。
脳内に響くので聞き逃すということもなかった。
ついに質問が始まった。が、その内容と彼らの行動に困惑する。
「ミナミさんごめん!こうでもしなきゃ自分たちは一緒に移動ができないんだ!」
声のする方向へ振り向く。
すると、レイジに掴みかかっていた香流が自分に対して必死にメッセージを送る姿が映る。
さらによく見るとレイジに必死になってしがみついているのが香流、吉川、高畠、石井の四人である。そのほとんどを横浜で見たことのある人達であることに衝撃だ。
一瞬何でアイツらがこっち来ないんだとも思ったが。
そんなくだらない事を考えていると質問が終わった。
内容的には絶対に分からないものだった。
(えっ……?ちょっと待って、一体何を思って"リーダー"はこんな質問をウチらに……?)
もしかしたらどこかで真剣に聴かなかったから質問の意図が分からなくなったのかもしれない。なのでミナミは再度同じ質問をするよう強く声には出さず求めたが、
ひゅん。
と一瞬でミナミ(とそのオマケ)の景色が変化する。
今まで木々の生い茂る林の中にいたはずだ。
だが今。
彼女と高野の先輩四人は車の中にいた。
正確には装甲車の中。
ミナミは一度これに乗ったことがあるので気づいた時にはすぐに分かった。
「え?え?まさかテレポートしたの?うそ、今ので!?」
気持ちが落ち着かないミナミは限られたスペースを見回し、触ってみるが紛れもなく装甲車の中だ。
「どうにか成功したようだな」
「みたい、だね。でもこれ車の中?って事はこれからどこか行くのかな?」
常磐は相変わらず一言も発さずにその場にあぐらをかいて座っているが、船越と佐野が今の状況について語り合っている。松本は不自然に広い空間に疑問を隠せずにいるようだ。
「ねぇ、こういう車ってこんな広かったっけ?動画とかで見たことあるけどもっとゴチャゴチャしてるよね?」
彼の言葉にミナミも思い出すものがあった。
やけに広い。
いや、まだ乗れるのだろうか。
「ねぇねぇそこの子。僕達の他にまださっきの林の中にいたの覚えてる?」
少し時が経って船越が自分に対して話しかけていることに気づいた。
だが、面識が無いのでどう返せばいいのか分からない。
「えっと……ウチらの他に……?」
まとまらない脳内で必死になって頭を働かせてみるが状況のせいで普段の思考回路が築けない。
まるで脳が狭まっているようだ。
だが単純に考えれば分かる。レイジだ。
見ていて分かりにくかったがあの状況にならばレイジもテレパシーを受けていたはずだ。同じ時間、同じタイミングで。
「いたけど……という言うことは……?」
どすん、とレイジと彼にしがみついていた四人の大学生が今まさにミナミ達のいる装甲車の車内に突如何の前触れもなく現れる。
「うわあああ!!」
「やっぱりリーダーだ!よかった~同じ場所で」
「そういう問題じゃないでしょびっくりする!!あと……」
仲間が来たことによりやっと平静を取り戻す。状況の整理が追いついてきた。
「こいつら何?」
特にミナミの視線は自分を強い力で締め付けていた佐野と船越に向けられる。
やっと座れるとついさっき思っていた石井は何かを感じ取り、彼女の方へと歩む。
「待ってミナミちゃん。この人たちはうちらの先輩なの」
「……先輩?」
見知った石井ではあるがその意図が読めない。何故ここに彼女や先輩たちがいるのか。
そんな事を思っていた矢先だった。
突如運転席の近くに備え付けられていたカーナビが光る。
『どうやら皆揃ったようだな』
「これ……!?」
真っ先にジェノサイドの声だと分かった。
「レン君……?」
「ね、レンの声だね」
などと先輩たちが話を続けていても尚、ジェノサイドの命令は続く。
『いいか、これらの事はすべて俺が把握している。それぞれのリグレーの地点から誰が移動したのかもな。それらを見た結果、ジェノサイドの人間全員が今それぞれの装甲車に避難した事が確認できた。と、いう訳でだ。今からお前達にはそのままその車で移動してもらう』
「移動……?」
若干不安を感じたミナミはレイジを見る。が、彼は自分が見られていることに気づくことなく光る画面に集中している。
「移動ってどこにだよ」と無意味に画面に向かって話す人もいたが少しするとジェノサイドの声がまた続いた。
『今から行くところは……まぁ別荘みたいなものだ。別荘と言っても綺麗なモンじゃない。この組織設立してすぐに念の為にととりあえず作り上げて以来全く立ち寄っていないし寂れている。しかも此処と同じく工場と来ている』
何故また工場なのかよく分からない。
松本も、「レン君工場好きだね~」などとこれまた無意味に画面に向かって喋っている。
『工場のある場所は"南平"。聞き覚えのない地名だが京王線使っている奴なら分かるかもな。八王子からはそう遠くないし駅からも離れていない。パッと見駅の近くにあるいかにもいつも使っていそうな工場だ。そこでお前達は待機していろ。随時連絡する』
と言い終わると画面はブツッと切れ、さらにカーナビ自体も消えてしまった。
まるで物体が砂になったと思ったらその砂が風によって吹き散らされるように。
「イリュージョン……?って事……?」
いち早くミナミが気づくと、佐野も「凝ってるなぁレン君」なんて言っている。
彼のその言葉に彼女はハッと思い出したかのように彼らに言いたい言葉が蘇ってきた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.242 )
- 日時: 2019/01/26 18:20
- 名前: ガオケレナ (ID: UMqw536o)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
ただっ広い車庫からぞろぞろと装甲車が出ていく。
すべての装甲車にはジェノサイドの構成員が乗り、すべての者がイリュージョンで作られたリーダーからのメッセージに応じる形で南平にある"別荘"へと向かう。
「それじゃあ俺らも行くとするか」
唯一装甲車には乗らず自分の車に乗り込んだのは雨宮だ。隣にはルークもいる。
「丁寧に俺の車にまでリーダーサマはカーナビを付けてくれた。つまり俺達もそこへ行けと言うことだろう。それにお前にとっても行くべきだと思うぜ?やりたい事あんだろ」
シートベルトを付けてエンジンをかける。
特にいじったりはしていないものの、スポーツカー特有の雄々しい排気音が響く。
だが一方でルークは車に乗らずにドアの前で佇むだけだ。
「どうした?乗れよ。俺の運転が怖いのか?」
「違うそうじゃねぇ」
ルークはチラッと後ろを振り向く。
その方向は燃え尽きた基地と未だアルマゲドンの者達が彷徨っている林が広がっている。
「ヤツらはあのままでいいのか」
「んー、さぁ知らね?リーダーサマは撹乱か何かをしたいんじゃないかなー。だからいきなり何の前触れもなく避難しろと来た。俺なんてそんな事知らなかったからあの後すぐに此処に戻ってみたわけだけど」
雨宮はルークが乗るまでギアを触らない。パーキングになったままであり、時折彼も何度もそれを見る。
「いいから乗れよ。今頃ヤツらも自分たちのリーダーがボッコボコにされてパニックになってる頃だろうさ。行った先に"何かが"あるんだろ」
ルークはその時見せた雨宮の鋭い目と、にやりとした口元で何か察するものがあった。
結局彼も無言で隣へと座る。
彼の車が爆進したのは最後の装甲車が発進してからそれほど時は過ぎてはいなかった。
ーーー
「なるほど、最初はなんとなーくなノリだったけど段々と可能性に懸けてみて遂にはここまで来た、って事ね」
ミナミは険しい顔をしながら彼らの話を聞いていた。
ジェノサイド本人からは絶対に聞けない、本音を垣間見えた気がしている。
「始めはレン君が香流君に言ったことだったんだ。レン君も自分のやり方に疑問を持っていてそれを相談したんだってさ」
佐野が香流たち本人に聞いた事をさぞ自分も当事者であった風に、しかしどこか頼りげのない雰囲気を醸し出しながら言う。
香流もそれに小さく頷く。
「知ってるよ。それはもう既にゼロットと戦った時に仲間やアンタたちから直接聞いた」
ミナミは平然と幕張で起こった出来事について、特に変わった感情を抱かないまま言ってみたがその瞬間香流や吉川の顔が緊張に満ちだした。
彼の先輩達、即ち佐野や船越らはゼロットについても、香流たちが自ら深部の戦いに乗り込んだ事を知らない。
「ゼロット……?それは何?そっちの業界用語?」
と、とぼける佐野の横で、
「深部最強と言われている"もう一つ"のSランクだ。そういや近々ゼロットとジェノサイドが戦うかもなんてどこかで聞いた気がしたがあれどうなったんだろうな」
鬱陶しそうに常磐が呟くが、そこには聞き取って欲しいという配慮がないため早口かつ滑舌が悪く聞き取りにくい。
だが、自分で言って気づく。
「ん?おい、ちょっと待てよ。ゼロットと戦った時だぁ?どういう事だよ説明しろよ」
ひどく威圧的で鋭い言葉をミナミに突き刺す。彼女も似た感覚を覚えた。
「待ってください先輩。こっちで説明します」
自分の事を「こっち」と表現するのは香流しかいない。
常磐は目だけを動かした。
無駄に広い車内は、ちょっとした暴露大会の会場へと変化していく。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.243 )
- 日時: 2019/01/26 18:25
- 名前: ガオケレナ (ID: UMqw536o)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「なるほど、僕達が関与する前から香流君たちは深部の戦いに加わっていたんだ」
重く息を吐いて佐野はフロントガラス越しに外を眺める。
が、真っ暗で何も見えない。
八王子から南平まで駅で換算すると4駅ある。
今は2駅目を過ぎたところなので到着するのはそんなに掛からないだろう。
「すいません……今まで黙っていて。ただ話したらどうなるかとか……」
「いや、それは別にいいんだ。ただ俺が聞きてぇのは一つ。ジェノサイドとゼロット。勝ったのはどっちだ?」
ニヤニヤしながら常磐が話に割り込んできた。
ここまで来るとどうなったかは察しがつくのにあえて言うあたり悪意満載である。
「勝ったのはウチのリーダーよ。ご丁寧にメガラティアスまで用意してね」
そんな状況を見抜いてか、ミナミが緊張と不安に塗られた顔をした彼らに変わって話をする。
常磐はつまんなそうにそっぽを向くだけだった。
「ラティアス……?レン君、ストーリー進むのはサークルの人達の中でも一番遅かったのに……もうそんなとこまで進んでたのか」
「リーダーのそれはハッタリみたいよ?なんでウチらに対して言うのか意味が分からなすぎるけど、ウチらが思っている以上に遅くは無いってことよ」
本当は、あえてストーリーを遅くゆっくりと進めるのが彼の願望なのだが流石にそこまで理解することはできなかったようだ。
すべての情報を共有した彼らの空間が沈黙に包まれる。
ただでさえ深部の連中と共にし、殴り込みに行っているようなものなので自然と口数は減ってしまう。
しかし、
「こんなことを……敵にして一般人のアンタたちに言うのもあれだけどさ」
ボソッとミナミが呟き始める。
「アンタたちはさっき、リーダーを止めるために……倒すために今ここにいるいるって言ったよね?」
「あぁ言った。ここまで来たら引き下がれない。後輩共はそう言ってるぜ」
「そう……」
常磐の苛つかせる言葉が刺さっているのか、彼女に元気はない。
しばらく無言状態が続くが、何かを決心したのか、顔を上げた。
「ウチは深部の人間として、一人の他人として言うね」
周りを見る。
今ミナミを見てくれているのは香流、高畠、石井、吉川、佐野、松本だ。
相変わらず常磐はそっぽを向き、船越は考え事をしているのか俯いている。
「ウチは今日、アンタたちが来たと知った時にこう思ったの。"リーダーを救えるかもしれない"って」
「ちょっとリーダーァァ!?何を仰ってるのですか!!」
案の定レイジが咆哮に似た声を上げながらミナミを捉える。
「あなた一体何をいっ……言ってるのですか!?今こうして我々が深部にいられるのも、ジェノサイドの一員となれたのも全部ジェノサイドさんのお陰でしょう!?それなのに……今の発言はまるで……」
「ウチだって分かってるよそんなこと!!」
レイジの言葉を無理矢理遮ってミナミは叫ぶ。
「ウチだって分かってる……あの時アンタが居てくれたから……アイツが言葉とは裏腹に助けてくれる人だったからこうして何不自由なく過ごしてるウチがいるってこと……でもね、レイジ。アンタ見ていて悲しくならない?」
ミナミの肩が震え出す。感情の起伏が激しく、まるで自分の意に反して涙が出てくる。そんな事を思わせる顔をしている。
「アイツは……強がっている度にウチらを守ってくれている。でも、守る毎にどんどん大事な物を失っているように見えて仕方がないの……」
「その失っているものが、本来ならば送れたはずの大学生としての日常とでも?」
レイジは一般人である彼等を見て何となく思ったことを口にする。ミナミはそれに頷いた。
「リーダーには、普通の大学生として日常を送ってほしい。それによってウチの日常もなくなってしまうけど、でもあんな人が深部にいる事が間違ってる!」
涙声によって震えたその声には誰も口出ししなかった。
ただあるのは静寂のみ。
そんな暗く静かな雰囲気を持った装甲車はとうとう止まる。
「……着いたようですね」
外を一瞬確認したレイジが呟いた瞬間、一般人であるはずの彼らが立ち上がる。
「行くぞ、あそこにレンがいんだろ?とっ捕まえてバトルして勝てばそれでいいんだろ」
その言葉は、彼らは走り去って車から出て行ってしまったため微かに聞こえた程度だった。
すぐに彼らの姿は闇に消える。
車に取り残されたミナミの肩をレイジがポン、と叩く。
「あなたならそう言うと……普段からそう思ってるだろうと何度思ったことか……」
「……?」
「行きましょう。本当の意味で、リーダーを守りに」
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.244 )
- 日時: 2019/01/27 16:12
- 名前: ガオケレナ (ID: idqv/Y0h)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
車が停められていたのは工場の門を車道で挟んだ反対側だった。
ゾロゾロと停まっている装甲車から次々と出てくるジェノサイドの構成員の間を縫いながら常磐を先頭にして彼らは走る。
「先輩!」
「あぁ!?なんだ吉川。お前もうくたばってんのかよ!!」
「いいえ!何人かついてこれていない人がいます!」
常磐が振り返ると、後ろを走るのは佐野、船越、松本、香流、吉川だけだ。
即ち女子二人の高畠と石井が来ていない。
「ほっとけ!あいつらどうせロクなポケモン持ってねぇし足でまといだからこの間に俺達だけで行く。不安ならテメー残れ!」
吐き捨てる様に叫ぶとさらに走る速度を上げていく。
吉川はここでギブアップした。
体格の問題と日頃から吸っているタバコがここにきて走る事へのストップを強制させられてしまう。
「あっ……くそっ……」
両手を膝についてぜーはーぜーはー言って先に行く先輩たちを眺める事しかできない。
しかし、そこで彼は気づけた。
気分的に楽になりふと後ろを眺めた時だ。
先程までは呑気に駐車場辺りをふらついていたジェノサイドの構成員が一斉に、ポケモンを構えてこちらに向かって走り出しているのが確認できたのだ。
「え……。は?……なにあれ」
その危機的状況に頭が追いつかない。
その数およそ二百から三百。
大群となって押し寄せる人の波は徐々に恐怖の魔の手を吉川に、先を行く先輩たちに伸ばしている。
「な、んでここに来て奴らが俺を狙いに来るんだよ!!!」
咄嗟にボールを取り出し、どこを狙っているのか分からない空中にそれを放つ。
「頼む、来いドードリオ!」
頼まなくても出てくるドードリオは状況を確認するとすぐ、主の命令通りに吉川を自身の体に乗せ、広い敷地を駆け抜け、工場の建物を目標に疾走していった。
彼が走るよりも断然速い。初めからこうするべきだったと吉川は一人地面の振動に耐えながら後悔する。
状況は少し遡る。
常磐らサークルの人間が真っ先に車から飛び出し、走り去った直後。
これからどうするのか全く分からない構成員たちは互いにそれに関する議論を始めていたところだった。
その途中、異変は起きる。
『無事着いたようだな、お前ら。早速だが仕事だ』
どこからともなくジェノサイドの声が響く。
そこにいた人間が不思議に思い、周辺の草木や車の中を見てみても、どこにもジェノサイドの姿はない。
外が変に騒いでいる事に気づいたミナミとレイジはとりあえず車から出てみた。
そこで初めて異変に遭遇した。
「レイジ!!これ!」
ミナミが指を差す方向、車のメーターの付近の何もないスペース。
そこに、
「カーナビ……!?まさかリーダー……イリュージョンを!?」
基地から出る瞬間に出現したカーナビと全く同じ型のカーナビがそこに置いてあったのだ。
声はそこから発信されていた。
『いいか、今お前達は南平の別荘の真ん前……即ち入口付近ににいることだろう。こっちからでも確認できる。だがタイミングが悪いことにお前達の乗っていた車に一組、部外者がいたようだ。そいつは今別荘に向かって必死に走っている頃だろう』
「それって……!?」
ミナミはひどく恐ろしげに震えてレイジと顔を合わせる。
「えぇ……リーダーも気づいていたのでしょうね……彼の友人たちが居たことに……」
冷や汗をかいたレイジは次の言葉を待った。
普段以上に胸が高鳴っている。
『そいつらを追ってブッ倒せ。奴等の目的は別荘内にいる俺だ。恐らくな』
その冷徹な言葉に二人は戦慄した。
これからどうなってしまうのか、自分達に責任があるのか。
それらを考えるだけでも逃げ出したくなってしまう思いだった。
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