二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/11/28 13:33
名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走カーチェイス>>536-

行間
>>518,>>525,>>535

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.160 )
日時: 2019/01/11 19:34
名前: ガオケレナ (ID: cFBA8MLZ)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


ここを抜ければ武道館に入ることができる。
即ち、そこに杉山がいる。

しかし、

「おいルーク……これ一体何人いるんだ」

「知るかよ。数えるのも億劫になるっての。少なくとも俺らの倍はいるな」

丁寧にも、その黒スーツ軍団たちはポケモンをそれぞれ繰り出していた。強襲性に優れたクロバットやグラエナ、レパルダスなどが多く、他には格闘タイプのポケモンも見える。

「これ、どうするんですか。リーダー……」

怯えきった様子でひょっこりとハヤテは顔だけをこちらに向ける。

「どうするってもな……」

後ろを振り返れば今日集めた仲間がいる。多いことには多いが、前を見ればその差は歴然だった。

(ヤベェな……マジで倍くらいいるぞこれ……。このままじゃ全滅って可能性も……)

最悪な状況が頭に浮かんだ瞬間、ジェノサイドの頭の中で何かが吹っ切れた。

「このまま行くぞ」

「えっ」

「はぁっ!?おま、何言ってんだよ」

反応は予想通りだった。彼らは目を丸めている。が、考えは変わらない。

「ここまで来て、もうすぐゴールだってのに引き下がる訳にはいかねぇ。この中の誰か一人でもいい。中に入って杉山を一発下すだけでいい。後はここで時間稼ぎだ。行くぞ!!」

誰もうんともすんとも言わない中、一人で先頭を駆けた。

それに刺激されたすべての者も走る。

「うおおぉぉああぁぁ!!!」

迫る黒スーツとポケモンの猛攻を避け、ポケモンの相手は自分のに任せ、ジェノサイドは杉山の部下を狙って拳を放つ。

力づくで突破する気のようだ。

「ジェノサイドォォ!!!」

ルークが吠えた。

「んだよ、ルーク!」

「テメェはホント馬鹿だよなぁ!無茶な行動ばっかりやりやがって、散々オレら巻き込ませてよぉ!!」

「悪ぃな!こんな事予想してなかったもんでよ」

「ホントだよ糞野郎が!!でもな、」

ゾロアークの'ナイトバースト'と、フレフワンの'ムーンフォース'で自分を中心とすると、その周りすべてが吹き飛ぶ。
空いた空間で、ジェノサイドとルークは互いに背中を合わせた。

「今日限定だ。今この時間、オレらは仲間だ。互いにソイツに命掛ける気でいろよジェノサイド」

「最初からその気だ」

ルークは軽く笑った。

休む暇はない。どんなに撃退しても、彼らは迫ってくる。

「どんだけドMなんだテメーら……どんだけ来ても俺らに倒されるだけだっての!!」

腕に力を込め、自分のフレフワンに命令しようとしたその時だった。

建物の天辺に立つ一つの影が蠢く。

その影は何やらポケモンを出しているようだった。

「行きなさい、ゲンガー」

その不穏な動きに、一度だけ黒スーツ軍団の動きが止まり、全員が一点を見つめていることにジェノサイドは異変を感じた。

(なんだ……?急に……)

ジェノサイドもその方向を見ると、長身の人間が腕を光らせながら武道館の屋根の上にバランス良く立ち上がってゲンガーと佇んでいるみたいだった。

特に目に映るのは、長髪の白い髪で……。

「まっ、まさか……!?」

白装束のその服装の割には、血が固まったような赤黒い斑点によって不気味に彩られている。その服も所々破けており、余計に不気味さを放っていた。

ジェノサイドがそれに呆気に取られていた時。迫る部下がその隙を狙うべく技を放った。

(やべっ、避けれ……)

「てめっ、ジェノサイドぉ!!」

ルークが叫ぶが時遅し。ズルズキンの膝蹴りが当たろうとするまさにその時。

不意に、ズルズキンの動きがピタッと止まった。

「……え?」

手で顔を守ろうと無駄な努力をしたジェノサイドにとっては予想外だった。

それだけではない。周りの黒スーツたちのポケモンはおろか、その黒スーツ本人も動きを止められている。
止まっているよりかは、無理矢理見えない力で抑えられている感じか。

「なんだ、これ……」

「何が、起きてるんですか?」

もしやと思い、不気味な影にまた目をやると、ゲンガーだったポケモンはメガゲンガーへと姿を変えていた。

止められた動きの正体はメガゲンガーの特性'かげふみ'のようだった。
それだけで終わるものかと思っていたジェノサイドの頭上からゾッとするような一言が響く。

「'ほろびのうた'」

直後、頭が割れるかのような、想像を絶する不協和音がすべての者に降り注ぐ。

「うわあっ!!」

「ぐああっ!」

「うわああ!!やめろ……やめろ……っっ!!」

敵味方関係なくすべてが対象の技であるため仕方のないことだが、果たしてその影は誰を狙い、何が目的なのか全くもって不明に見える。

だが、その悩みはすぐに消え去った。

その影はひとっ飛びで地上に降り立つと、ジェノサイド達に顔を合わせることなく、呟く。

「範囲が限られています。すぐさまポケモンをボールに戻し、あちらへ」

その影が、男が指差した方向には無防備な武道館への入口がある。

この苦しみから逃れようと大勢の群れが一斉に走り出すも、杉山の部下らは動けずにいた。
自分らの仲間が全員建物内部へ走り去ったあと、その場に残ったジェノサイドはその男に向けてこれだけ言うと会場内へと入っていった。

「生きていたんだな、レイジ」

「仲間なのか?ジェノサイド」

「あぁ。俺にとって大事な、ね。それよりも行くぞ、ルーク」

話したいことは沢山あったが、今はやるべき事がある。今のこの状況を少し呪いつつも、喜びに包まれていた自分がいた。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.161 )
日時: 2019/01/12 20:18
名前: ガオケレナ (ID: Tm1lqrhS)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「さて、と」

一人外に残ったレイジは冷たい目を黒スーツの部下たちに向ける。

「あなたたちは私に銃を向けましたね。未熟な私はつい撃たれてしまいました」

痛みが残る中無理して体を動かしたため、顔に出していない以上に苦しい。
その箇所を撫でることで少しでも和らげようとする。

「今度はあなたたちが苦しむ番です。死にはしないでしょうが、しばらくそこで寝ていなさい」

一人の男が無理矢理銃を動かし、彼に向けた時だった。

カウントが0になる。

逃げることができない者達とそのポケモンすべてがその場に倒れる。
六百もの人間とそのポケモンがたった一撃の技の前に敗れた。それも、ジェノサイドの前で死んだはずだった人間によって、だ。

死んだと思われた人間に救われた事が、ジェノサイドにとっての最大の皮肉であったのは言うまでもない。


ーーー

日本武道館の内部、アリーナには座席付近にやはり杉山の仲間が彷徨いていたが、なす術なく深部連合の前に倒れる。
杉山はアリーナの中心に一人でいた。

「な、何をっ!!やめろ!!!」

子供のように叫ぶも、逃げられる場所などない。
まず、モルトが思い切り殴った。

へたり込む杉山を取り囲むように、深部連合三百数名が一人の人間に敵意を放つその光景は滑稽であった。

「どんな気分だ?今まで高い地位を保ってのーんびりと椅子に座りながら自分よりも下の、俺達深部を殺すのを楽しんできた人間が、こうして今その下の人間に殺されようとしているこのザマは」

「あ、あぁ……」

「どんな気分だ?絶対不可能だと言われていた議会を、俺らが蹂躙してしまったこの状況を、この現実を捉えてどんな気分だ!?」

ルークは嫌でも思い出してしまう記憶を吐き出すかのように思い出してしまいながら続ける。

「どんな気分だァ!?今から死にゆくこの時間を、嫌でも死ぬことが決まった今この瞬間を過ごすのはよぉ!?」

ルークは、これまで誰かを殺すことに躊躇しない人間だったものの、今回の件で大事な仲間を杉山に殺されて以来その考えが変わりつつあった。

でなければかつての敵であるジェノサイドに対して友好的な立場を築くことなど出来るはずがない。
ルークは今日初めて善人となれたのだ。

だからこそ、目の前の人間が嫌で、殺したくて、怒りが沸いて仕方がない。

「この……クソ野郎がああぁぁぁっっ!!!」

モルトに殴られて頬を押さえていた杉山に向かって走りだし、自分の拳にも力を込める。

「くっ、来るなああっっ!!」

杉山は反射的にボールを投げる。
ルカリオとプテラだ。
意識せずともルークの足が止まった。

「チッ、」

ルークはクチートのボールを放り投げる。

「まさか俺もこれを使う時が来るとはな……」

クチートに向け、ポケットに入っていた布を向けた。それを首に巻く姿を見て初めてキーストーンが装着されている事を知ることが出来た。

メガチョーカーとも言える代物か。
突如、クチートが光に包まれる。
メガシンカの模様の幻影を写し、メガクチートが降臨する。

「待て、ルーク」

杉山と対峙する形で佇む彼の肩を叩きながらジェノサイドが隣に立つ。

「お前がメガシンカを扱えたとしても二体相手にするのは分が悪いだろ。片方は俺が相手する」

「そうかい。じゃあどっちが先に杉山を殺せるか勝負ってわけだな」

ジェノサイドは無言で頷き、杉山は余計に顔色を悪くし出す。

「さぁ、行け!オンバーン!」

ダークボールから出てきたそれは、ボールの外見にはピッタリな具合の真っ黒な姿を見せる。

この状況を目にしたルークは小さく笑う。
数を持ってすれば周囲から迫るであろう脅威は怖くない。
つまり、今は目の前の杉山という男にだけ集中できる。

メガクチートとオンバーン。
互いが同時に動き出した。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.162 )
日時: 2019/01/13 16:37
名前: ガオケレナ (ID: ovjUY/sA)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no



「二人一組なんて……卑怯だぞ!!」

杉山が子供のように叫ぶも、誰も反応しない。むしろ、殺意が芽生えるだけだ。
オンバーンは一直線にプテラを、メガクチートも一直線上にいるメガルカリオを狙い、駆ける。

「'エアスラッシュ'!」

「'じゃれつく'だ!」

それぞれ自分のポケモンに指示を出すも、すべてが思い通りに運ぶわけがない。

プテラはふわっ、と翼を軽くはたくように羽ばたくだけで、さぞ余裕そうに技を避ける。

メガルカリオは技が来る前に動き、逆にまず'しんそく'を放つ。

「チッ」

メガクチートに高速技が当たるも、大したダメージは無いようだ。あくまで、回避の為に使った動きに、オマケ程度に威力がついたくらいか。
バトルの優先権はまだ杉山に少しあるように見えたが。

プテラが避けたと思った'エアスラッシュ'が、メガルカリオに命中した。

「!?」

予想外の技に、ついメガルカリオと、それを眺めていた杉山はよろけてしまう。

「なーに俺の相手がプテラだけだと思ってんだよ。隙見せんなよ?今日は二人が相手だからな?」

「くそぅ……」

杉山は悔しそうに歯ぎしりをした。


ーーー

「大した事ないのですね、議会なんて」

一撃にして無力化された大量の屍を眺めて一言。
かつて自分を痛みつけた存在がこれほどまで弱くて愚かだったものと考えると、自分に対しても彼らに対しても怒りが沸いてくる。
'ほろびのうた'で倒すだけでは甘いのではないか。そんな念に駆られるところだった。

「レイジ!!」

建物の方向から聞き慣れた声がする。
振り向くと、自分が誰よりも大事にしていた仲間が、ほぼ家族のような存在の女の子が一人。

「ミナミ……。リーダー……?」

ミナミが走り出し、抱きつく。
互いが互いに思ったことだろう。

"ここで会えてよかった"、と。

「本当にレイジなの……?」

レイジの服に顔を埋めて涙声で聞いてくる。

「えぇ。何も連絡を寄越さずに申し訳ありませんでした。化けて出てきていない、本物のレイジでございます」

そのいつもの調子の声で納得できた。

ミナミは場所を考えずに声を上げて泣いた。
今度は、嬉しい意味で。

「ところで、リーダー」

そろそろもういいだろと、レイジはミナミを離そうとするが彼女はピッタリとくっついて一切動かない。

「あの、ちょっ、リーダー……そろそろいいですか。今の状況をですね……」

どれほど揺すっても動かなかった。ミナミはただ胸の中で泣くのみ。
これ以上何かするのも無駄だと悟ったか、レイジも何かするのをやめ、彼女を強く抱きしめる。

「ただいま、リーダー」


ーーー

「邪魔なんだよジェノサイドォ!どけぇ!!」

'アイアンヘッド'の射程距離にたまたまオンバーンがいたことから、オンバーンごと吹っ飛ばしてプテラの元へ迫る。

「てめっ、何すんだよ!!」

「黙れ、テメェが邪魔なのが悪ぃんだよ」

その光景に見とれていた杉山は指示を出すのにワンテンポ遅れ、何も出来ずにプテラは'アイアンヘッド'を真正面から受けてしまう。

吹っ飛ばされたオンバーンといえば。

その反動を利用してメガルカリオへと一気に近づいた。

「なにっ!?そんなやり方アリかよぉ!?」

ふざけた本音を零す杉山だがそんなモン知るかと言った具合にオンバーンは突き進んでゆく。

「チマチマ戦うのも面倒だしなぁ、一発決めろ、'いかりのまえば'!」

当たれば相手の体力を半分に減らせる技だ。これが決まれば戦局が有利に傾く。
今度はさっきのようにはいかない。

目と鼻の先に迫った時。

「は、'はどうだん'!!」

オンバーンの目の前でそれは出現、そして撃たれる。

「避けろ!」

避けても当たる必中の技だと言うことは知っている。だが、それよりも前にこちらの技を先に当てねばならない。

「オンバーンの速さを……なめんな」

オンバーンが避けると、波動の塊の弾道は後ろへ行った後、旋回して再びこちらにやって来る。
迫るオンバーンをメガルカリオは時間稼ぎ感覚で後ろに徐々に徐々に逃げていくも、距離を詰めるのに時間はいらない。

そして、とうとう噛み付くことができた。

旋回した塊を受けたのも同時だった。
痛みでよろけ、オンバーンが一時的に倒れる。

その奥に見えるは……

「よくやった、ジェノサイド」

構えたメガクチート。

「ルカリオは俺に任せろ」

準備を終えたメガクチートは走り出す。

「'じゃれつく'!」

ここぞと言わんばかりに叫んだ。それに呼応してクチートも速度を上げた。
オンバーンを飛び越え、そのすぐ先にルカリオがいる。

「くそっ、何だかんだでコンビネーションイイじゃねぇか……おかしいだろ!」

メガルカリオは避けようとして、足を動かそうとするが、何故か動けない。

その理由は単純だった。

オンバーンの腕が、メガルカリオの足を掴んでいる。そのせいで動けずにいるからだ。

「な、なにをするんだ!!やめろ!その手を離すんだ!」

ほぼパニックに陥る杉山を嗤う調子で、

「おいおい、俺らを何だと思ってんだよ。ルールなんて持ち合わせていないただの深部の組織の人間だよ」

ルカリオを守ろうとプテラも動くが遅い。

果たしてじゃれついていると言えるのか疑問である程の恐ろしい威力を含めた暴力がルカリオを巻き込んだ。
砂煙が晴れると、キズだらけのルカリオが力無く倒れる。

「う、嘘だ……」

今だと言わんばかりに倒れたオンバーンが立ち上がり、プテラを睨む。

そして、

「'りゅうせいぐん'」

とっておきを今、放つ。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.163 )
日時: 2019/01/13 16:48
名前: ガオケレナ (ID: ovjUY/sA)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


世間では広いと言われているこのアリーナを、竜星群が一色に染める。
赤い尾を引きながら、一直線に対象に落ちていくその様は、暴力的でありながらとても美しく見えた。
耐久に絶対の自信があるとはいえないのに加え、アイアンヘッドを受けて万全の状態でないプテラに撃てばどうなるか。

予想は現実となる。

明日の表彰の為に整えた床を荒らし、数の暴力の前にプテラは成す術無く巻き込まれ、煙で姿が見えなくなった。

「くそっ!」

杉山は駆け寄るも、プテラは戦えるほどの気力が残っていない。
手当り次第に体に触れるも、期待していたほどの反応はなかった。

「おい……動け、動けって……お前が動かなきゃ負けちまうんだよ俺は!!」

半狂乱になって叫ぶも、効果はない。むしろ、生むのは深部連合たちの怒りだった。

ルークが一発思い切り杉山を殴る。
反動で彼は床にへたりこむ。

「う、ぐっ……」

「言え」

冷たい視線を浴びせ、低い声で唸った。ついでに、手の指を鳴らしている。

「何の目的でテメェは下院議長なんぞと名乗り、これほどまでに好き勝手暴れたか、言えよ」

「えっ……?」

殴られた頬を押さえ、ヨロヨロとした足取りで立つも、キョトンとしている。
杉山の精神状態の影響により質問の意図が理解出来ていないのだろうか、キョロキョロとしつつ沈黙を続けていると、

「そうだ杉山くん。君には説明責任というものがある。ここですべて話してもらわないとね」

陽の光が射す入口から、二名ほどの深部連合の者に保護されながら塩谷が出てきた。

「君が好き勝手やったせいで彼らも、そして議会も問題の対処に追われているんだ」


「あっ、そっそれは……」

フラフラとした足取りでふらつくと、再びその場にへたりこんでしまった。

「わ、私は……この国を変えたかった……」

何ともまあスケールの大きい話である。
そこにいたすべての人間が呆れた事だろう。

「世界地図を見てみろ。日本って国は……ふざけた国に囲まれているじゃないかぁ……」

その場に座り込んで涙ぐむその光景はいつかの山頂の決戦と酷似していた。

嫌でも思い出してしまうので、ジェノサイドは目を背けた。

「バカみたいな奴がトップに立ち、意味不明な言動はおろか意味を成さない核実験ばかりをする国……常にミサイルをこの国に向け、国土がバカみたいに広い癖に侵略を好む政府も国民性も国自体も野蛮な国家……そして挙げ句の果てには……。これまで幾度と無く経済的な援助をしてきたというのに何だ、向こうは反日を貫いて日々その活動によって国内外問わず味方を送り込んで我が国を貶めようとしている!反日活動を一番している国がどこだか知っているか?……この国日本なんだぞ!?あんなのが居なけりゃ……あんな野蛮な国家たちに囲まれてなければ、この国がいかに素晴らしかったか……考えたことはあるか!?もう嫌なんだ、終わらせたいんだよ私としても!その為にまだ世界的に武力と認識されていないポケモンを、それを扱える奴等を集めることができれば……」

「なるほど、」

早口かつ下らない演説会とも言えない演説に聴くフリをしていたルークはそこですべて理解した。

「要は周辺国をぶっ潰したいが為に今までの武力によらない、言わば新しい武力"ポケモン"を使って日本を動かしたかった訳か」

必死になって頭が揺れるほど頷いては呻く。見ているこっちが頭の痛くなりそうな光景だ。

「じゃあ何で将来、軍として使えそうな深部の組織を解散させたんだ。言え」

「そ、それは、確かに人は多い方がいい。だが、自分に扱いやすくなくてはダメだ。だから……不要なヤツは解散として……」

と言った時、ルークが一歩歩んで拳を握ったので反射的に自ら遮ってしまう。

「なるほどなぁ……」

と、下らない物でも見ている調子で塩谷も小さく呟いた。

無能な人間が議会に立ってしまったせいで彼らは犠牲となってしまったのだ。

「今の発言から察するに」

塩谷の声が響く。
塩谷と杉山の距離は遠くとも、人が少なくざわめきもないので、よく声が聴こえる。

「君は議会を独占したかったのかな?下院と上院をぶつけた上で徐々に下院に対する信頼感をなくさせ、終いには下院は廃止、いつしか自分が上院のトップにでもなるつもりだったか」

「なるほど、」

ジェノサイドも何となく理解出来た。

完璧な答えは見つからないものの、杉山の思惑がこれで分かった気がした。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.164 )
日時: 2019/01/13 17:01
名前: ガオケレナ (ID: ovjUY/sA)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「結局俺らは……」

ルークは自分のチームが襲撃されたあの惨劇を、今はいない仲間たちのことをふと思い出す。

「あいつらは……」

今度もルークは拳を握る。今度は、殴る拳ではなく、殺す拳だ。

「テメェのくだらねぇモノのために……ネトウヨじみたクソみてぇな計画のために死んでいったのかよ!!」

今までよりも強く、速く、走る。

鋭い眼光は杉山だけを捉え、もう溢れる怒りを抑えることができなくなっているようだった。

「ひっ!?」

怯え、狂った杉山はそれから逃げようとする。
が、杉山らが立っているのはアリーナの中心の壇上である。当然逃げ場などない。

「あ、あぁ……っ」

逃げられない事を悟り、恐怖を浮かべた顔で振り向くと、悪鬼がただ迫るのみ。

このままでは自分は死ぬ。それだけは嫌だ。

最後の最後に、命の危機があれば使おうと思っていた物をスーツの胸ポケットから取り出す。

「くっ、来るなぁ!!」

それを見たルークは目を見開き、つい足を止めてしまう。

その手には、手榴弾が握られていたからだ。

「それ以上来るな!!さもなくばこれを投げるぞ!」

野球のピッチャーのような素振りをし始めた。どうやら本当にそれを投げる気のようである。

「おい、マジかよ……ってか何でテメェがそんなん持ってんだよ!」

誰かがそんな事を叫んだ。当然杉山にもその声は届く。

「ふ、ふふっ……私を何だと思ってんだよクソガキ共……私は不可能を可能にする議員だぞ……?その気になれば、この国を救い、立ち上がらせ、世界すらをも導くことだってできるんだ……私は……最強の議員にして最高の男なんだぁぁ!!!」

ルークらは後ろに下がったにも関わらず、杉山は手榴弾のピンを外し、こちらに向かって振りかぶり、そして遂に。

思い切り転けるように倒れた。

恐らくここに居た誰もが恐怖を感じ、背を向け、逃げようとしたことだろう。
眼前に爆発物が投げられたら誰だってそうするはずである。

しかし彼は最大にして最悪の間違いを犯してしまった。

目の前の惨状に強く意識しすぎてしまったせいで振りかぶり、上げていた片足を強く踏み締める。
そのせいでバランスを崩し、転倒してしまった。


「あっ!!!??」

勝利の笑みと恐怖が混ざりあったおかしな顔をした杉山の顔の前で、手榴弾が真っ直ぐに落ちてゆく。

ドン、と強すぎるくらいの衝撃が床に伝わり、そしてそのまま世界は静止してしまったかのような静寂をしばしの間齎すと。

ボンと漫画みたいな爆音を轟かせ、黒煙を撒き散らして、彼を中心として爆発した。

最期に浮かべた顔を思うと、どれほど哀れであっただろうか。

特に、自滅という形で脅威が消え去ったとなるならば。


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