二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.220 )
- 日時: 2019/01/25 13:08
- 名前: ガオケレナ (ID: I4LRt51s)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「八王子?」
行き慣れない地名を出され、戸惑う香流。
ちなみに、松本が香流に聞いた質問とは、「八王子周辺に詳しい?」だった。
都心に住んでいる香流にとって、東京の西側は大学周辺を除くとほとんど知らない未知の領域なのだ。
「そうかぁ、香流くんも知らないときたか……。参ったなぁー」
「どうかしたのですか?八王子に何かあるとか?」
松本がふと一瞬目をやると船越と佐野が対戦を始めていた。おかしい、最初は自分とやる約束だったはずなのに。
目線を香流に戻す。
「いやね、勝手な想像なんだけどレン君のチームの基地が八王子周辺にあるんじゃないかなー……って。ほら、前に横浜行った時レン君そっちの方から来たじゃん?」
人が少なかったせいでやけに響いたその声に教室にいた全員が反応した。
高畠は今さっき来た石井と一緒にお菓子を食べながら彼らを眺め、船越と佐野はゲームの音量を0にして話を聞こうとしている。
「レンの……基地が?」
「あぁ。香流君なら何か分かるかなぁと思ったんだけれど、やっぱり何も知らないのか。皆で行くのもいいかなーって思ったんだけどさ」
「松本馬鹿じゃないの?」
席を立って佐野が松本に近寄ってきた。
「変な事に二年生巻き込んでんじゃねぇよ」
違うそうじゃない、と比較的マトモな人達は思った事だろう。だが、幸いにもここにマトモな人はいなかった。
「え、じゃあ佐野来る?」
だからそうじゃない、と今度は一連の話を聞いていた一年生たち下級生らがやっとそんな風に思ってきた。
だが誰もそんな事を言わない。単に言うのが気まずいからだ。
「行って何するのさ」
「見るんだよ!レンくんがあっちではどんな事してるのか」
「さらっと見学感覚で言ってんじゃねぇよ!!」
相手は自分たちの後輩であり、普段は真面目な好青年だが、深部の世界で見たら凶悪な反逆者。
あまりにも差が激しすぎて彼らも想像ができないのだろう。そこから生まれるミステリアスなイメージが好奇心へと変わる。
「どうする?行く?多分僕らだったら知ってる人なんだし変なことはしないと思うけど」
「来てる時点で変だろそれは」
船越と変な茶番のようなやり取りを見ている内に吉川と先輩である常磐が教室に入る。
「なんか騒がしいね」
「いつもの事だよ。先輩たちがレンの基地に行こうかどうかで盛り上がってる。まだ場所すらも分かってないのに」
「レンの基地!?」
その手の内容に敏感な吉川が先輩たちのやり取りに介入するとは当の先輩たちが思ってもいなかった。
吉川の「八王子なら詳しいっすよ」の一言で本当に二年も来る事になるとは予想だにしなかったに違いない。
「もしも行くなら来る?自己責任だよ」
「行きますよ。それには慣れてます。なっ、香流」
しまった……と顔を覆いながら弱々しく「うん……」と答える。
ーーー
基地に降り立った時、本当に此処が普段踏み慣れている土地なのかと錯覚した。
基地が燃えていた。
工場と、一部の林を含めて広範囲に火の手が上がっていた。
暗い正体は単なる黒煙。
連絡無し、燃えている状況から工場だけでなく基地も燃えているのではないかと嫌な思いが駆け巡る。
目の前の突き付けられた事実を理解するのに時間がかかり、突っ立っていたその時。
後方からだったのか、背中に何かの感触がした。
ゾッとして振り返る。
「よかった……リーダーは無事だ!!」
常日頃から監視を任せていた構成員が背中に抱きついていただけだった。
一緒嫌な顔をするジェノサイドだったが、話を聞けるいい機会だ。
何が起こったのかと問いかけてみる。
「アルマゲドンです。彼等がアンチジェノサイドの他の組織を連れて此処に襲撃に……っ」
「他は。仲間達は無事か?」
「はい。事前にガレージの真下に地下シェルターを作っておいたのでそこに居ます。あまり広いとは言えませんし、本当に居座るだけの空間ですから生活環境は良いとは言えませんけど……」
「よくやった!!じゃあ皆そこにいるんだな?今すぐ奴等に知らせてくれ。俺がいると」
「これから皆迎撃しようと準備していたところです。今すぐ伝えておきます!」
と、言うと構成員はまるで喜びでも表しているかのように走り去っていった。
(だから連絡がつかなかった……)
すぐに地下に移動したため、そして電話が繋がらない環境だったから連絡が来なかった。
(シェルターを作るというのは俺の命令じゃなかった……)
地下シェルターなんて大層なものは短時間で作れるわけがない。恐らく何年も何年も本当に危険な時を想定してリーダーではない彼等が本気で取り組んでいたのだろう。それだけでジェノサイドは嬉しかった。
自分をよりも遥かな危機管理能力を持った彼等が仲間を救ってくれたことに。
だから、ジェノサイドは足を向けることができる。ボールを強く握ることができる。
彼の眼前には、戦うべき者がいる。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.221 )
- 日時: 2019/01/25 13:38
- 名前: ガオケレナ (ID: I4LRt51s)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
大学近くのバス停には八王子駅行きのバスがあった。
やや離れた場所ではあるが比較的大きな駅へはここからでも通じるようだ。
「まーたアホやらかす時が来たのか……」
先輩である船越がその集まった面々を見て思わず呟いた。ポケモンをやっている香流はいいとして、持っているだけの吉川や石井、終いには持っていないはずの高畠までついて来ている。
彼等が今日行く事になった理由。
それは、八王子に詳しい吉川をはじめ、「ある程度なら聞いたことがある」と喋り始めた常磐に、挙句の果てに何処からか持ち出したであろうジェノサイドの基地の写真を渋々ながら香流が皆に見せた事でお祭りモードに発展。急遽今日行くことになったのだ。
香流は途中、
「何処でそんな写真見つけてきたんだ?」
と、佐野辺りに言われたが、「ま、まぁ……たまたま……」
という風に濁すだけである。
香流は決して言えない。自分らがつい先日ゼロットと協力し、深部の戦いに首を突っ込んだことを。
キーシュから写真を譲り受けたことを。
今まで彼等は闇鍋から始まる闇シリーズや「見てみたい」という理由で樹海に潜り込んだり、「流れ星見たい」だけで山へ行って野宿と一般人が聞くと「お前アホだろ」と言われるようなことは散々やってきた。
それもノリの一種であることに変わりはないが今度はテロ組織の基地へ突撃ときている。
最早留まることを知らないのか。
良識を持つ者が居たとしたら必ず止めた者がいただろう。
それが居なかったという事を意味するのはただ一つ。
時間を見るとバスが来るのはまだまだ先のようだ。
寒空の下彼等は呑気にもバスを待つ。
ーーー
「来いよ」
仲間は全員シェルター内にいる。と言うことは今外にいるのは自分と敵のみという事か。
現に今ジェノサイドは三十人ほどの人間に囲まれている。
今だからこそ周りを考えずに戦える。
両手にボールを六つ抱えるとそのまま真下に落とす。
衝撃でポケモンが飛び出て、ボールは跳ね返る反動で掌へと吸い込まれた。
「コイツらが俺の手持ちだ。テメェらもかかってこいよ」
敵のひとりがボールのスイッチを押して拡大させたその時に、主と性格が"全く同じ"なゾロアークが唯一命令無しに動く。
その人のボールを弾き飛ばしてそもそもポケモンを使わせない戦法だ。
「ただし、どんな手を使われても俺に勝ってみせることだな」
ジェノサイドの前にゲッコウガ、ゾロアーク、ボスゴドラ、ロトム、ゴウカザル、ガブリアスの闘争心に燃えるポケモンの姿が見えてくる。
「来いよ」
絶対に負けない自信を持って再び殲滅者は告げる。
ーーー
「リーダーが来ました」
「ほんとに!?」
一切連絡ができない状況下でどうなる事かと軽く絶望した彼等だが、その心配はなくなった。
ミナミは特に喜んだ事だろう。彼女は特にジェノサイドに会いたい理由があったからだ。
「ですが、今も危険です。リーダーが一人で外で戦っています」
もしも組織のリーダーが戦いで死ぬことがあれば、それは敗北を意味する。
だから組織全体でその長を守らなければならないが、今では組織のメンバーが守られて長が戦うという逆の現象が起きている。
「早く行かないと」
拳を握って立った女は今すぐにとシェルター出口へと向かい、入口を守っていた男を無理矢理に押し退けて外へと出ていく。
「マズい!我が愛しのリーダーが!!」
こんな時にもおフザケなのかマジなのか分からないレイジが彼女に続き、それを見た面々が……と延々と続いてゆく。
遂にシェルター内はもぬけの殻となる。
ジェノサイドの人間全員が外へと抜け、自ら戦場を歩く運命を選択した。
たった今始まった。
組織の命運を賭けた最後の戦争が。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.222 )
- 日時: 2019/01/25 14:58
- 名前: ガオケレナ (ID: 1T0V/L.3)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
八王子駅に着いたのは19時だった。
サークルが始まった事を考えるとすぐに大学を出た事になる。
「この近くに林なんてあるの?」
「あぁ。ちょっと遠いけどな。駅からは少し離れてるけど、土地所有者が不明な結果放置されて林になった広い土地がある。写真みた限りだとそこに奴がいるな」
と、言うことはジェノサイドは人の土地を乗っ取り、そこに住んでいるということになる。今の彼らにそんな事は知る由もないが。
「とにかく行ってみよう。レンが何してるか皆も気になるでしょ」
完全という訳ではないが、この中では一番詳しいであろう吉川が先頭に立って歩く。
「八王子、かぁ」
佐野は一人駅の外観を眺めながら呟いた。
大きな駅ではあるがそこらのものとは変わらない、ごく普通の駅だ。
「嫌な予感がするんだよな……。ただ不安なだけか」
先を歩く香流の「なにしてるんすかー」の声によって初めて自分が置いてかれそうになる事に気づいた。
ーーー
「こんなもんかよ」
目の前には一瞬にして倒れた敵の姿が。
ここまで来るとランク付けの意味がないようにも思える。それほどまでの一方的な戦いだった。
「これがSランクかよ……?ちょっと工夫して戦っただけだぞ?」
ゴウカザルは火を吹くと見せかけて殴りに行き、ロトムは電撃を放ちながら縦横無尽に走り回り、ゾロアークは何かに化けたはずなのにそのままの姿で斬りつけ、ボスゴドラはただ主を守り、ガブリアスは木々ごと敵を吹き飛ばす。
それだけだったはずなのに。
「使い捨てのザコなのに求めすぎなんだよ。ちったぁ考えろっての」
自分以外の声がした。
外には敵しかいない。基地の周りを考えるとさらにいるはずなのに、ジェノサイドの前に現れたのは一人の男だけだった。
「よぉ。テメェと会ったのは三度目だな。前に会ったのはテメェの大学で、その前は大山だったかな」
大山、と言われてあの時の戦いの記憶が嫌でも蘇る。
そう言えば、とジェノサイドはその人を見て、褐色肌で尚且つやけに尖った髪型をした、グレイシアを使っていた男がいたと微かな人影が脳内に再現される。
「あぁ、俺の仲間たちに袋叩きにされてたザコか。お前に用はないよ。バルバロッサ出せ」
「トモダチはどうした?見た感じテメェしか居ないようだが。それと、父さんは此処にはいないよ。悔しかったら探してみることだな……」
言っている途中だった。
逆鱗状態となったガブリアスが腕を振るって叩き潰そうと二人の間に割って入る。
「じゃあ尚更お前に用はねぇ。消えろ」
'げきりん'が人に当たるとどうなるか。
答えは"思い切り吹き飛ばされる"だ。
目の前の男が飛ぶそのイメージが強く思い浮かんだその時。
「安心しろ。私ならいるぞ。此処にな」
空であるはずの頭上からゾッとするような声が無駄に響いた。
何処からか大量の炎が蒔かれ、それは暴れるガブリアス一直線へと突き進み、結果として動きが止められる。
「だが私の可愛い子供たちを傷つけようとするのは許せないなぁ」
邪悪な笑みを浮かべて、老人はその色黒の男を抱きかかえて空に浮かぶ。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.223 )
- 日時: 2019/01/25 15:26
- 名前: ガオケレナ (ID: 1T0V/L.3)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
バルバロッサはその少年を抱えてカイリューの上に座ると、何か命令を発したのか林の奥へと消えていく。
「ぐっ、なんだ……!?」
衝撃で強風が巻き起こり、ジェノサイドはその場で両手をついて倒れ込む。
「何で奴は基地から離れるんだ……?俺から離れるためか……?」
疑問に思い、逃げた方向である林をつい見てしまう。
その隙にと、武装した敵とサワムラーがジェノサイドの後方から飛び掛ってきた。
「やべ、しかも武器持ちかよ……っっ!!」
相手の持つ小銃に注目し、逃げるタイミングが更に遅れる。
方々に散ったジェノサイドのポケモンが集まるも間に合わず。
サワムラーの'とびひざげり'と銃口が彼を捉えーー
突然現れたカイリキーによりサワムラーとその男は叩き落とされた。
呻き声を上げ、立つことの出来ない主をよそに、サワムラーが起き上がるも、カイリキーの'ばくれつパンチ'を受けて主同様その場に伸びてしまう。
「大丈夫っすか?ったく、何やってるんすかリーダーは」
「ケンゾウ、お前か……助かった」
「しっかし、やりすぎっすね」
ケンゾウは念の為足でその男の腕を踏みつけて小銃を奪う。
「まさか相手が武器をも使うとはな……容赦しないみたいっすね、こいつら」
「基地燃やしてる時点で容赦もクソもねーよ」
敵への威嚇のためか、小銃を構えてそこから動かないケンゾウ。彼の前に敵がいるかどうかは確認出来ないが、
「やめとけ。真っ先に狙われるぞ」
その小銃が相手の物だとしたら他にも武装している人はいるだろう。
それ以上の武器があってもおかしくない。
「皆はどうしてる」
「シェルターから出てきてるっす。これから戦場になるっすよ、ここが」
「戦場……ねぇ」
ジェノサイドは、まるで鋭い牙を見せる動物のように歯をキラリと見せてニヤッとする。
「俺がいるトコすべてが戦場だっての!!」
ケンタロスに乗った敵が全面から突撃してくる。
が、ゴウカザルが炎を撒き散らしながらジェノサイドの前へと颯爽と舞い降りる。
そして、
「'インファイト'」
無数の弾丸とも言える拳の乱打は一つ一つ正確にケンタロスにぶち当てていく。
ケンタロスの突進がゴウカザルの身に接触するよりも先、インパクトの直前までにひたすら乱打し、遂には三つ目の打撃で騎乗している人間もろともケンタロスを弾き飛ばした。
ケンタロスと共に地面に叩きつけられて倒れた雑兵を二人は眺める。
「うわ〜ケンタロスごととかすげぇ……」
「お、オイ!ボヤボヤしてんじゃねぇ。今奴らはバラバラに動いてる。規則性も何も無い動きだろうが惑わされんじゃねぇぞ。戦いながらバルバロッサを見つけ出せ。いいな」
ーーー
まだ火の手が上がっていない林の奥でバルバロッサは着地した。
「ここならまだ安心だ。戦況を見つつジェノサイドを葬ることが出来る」
「アイツは……まだアイツの姿が見えない」
アイツ、と聞いてバルバロッサはすぐに誰の事を言っているのか理解した。
笑うと優しく頭を撫でる。
「テル……お前は本当にあの娘が好きんだなぁ」
「別に。こんな所で一人だけいないと不安になる。それに妹みたいなモンだしな」
テルという名の褐色の男は撫でていた手を叩くと目を細くしてバルバロッサと距離を空ける。
「八王子にあんのに……工場の跡だってのに綺麗な林なんだな。自然がそのまま残ってる感じだ」
「元々ここは山だったからなぁ。それを崩して造られたニュータウンだから坂も多い。手つかずの土地は未だに自然が残っていてまだ綺麗ではあるんだ」
バルバロッサは足元に落ちていた葉っぱを拾ってそれを眺めてみる。淡い緑色をつけていたその葉は何とも言えない落ち着きを与えてくれそうだ。
「作戦通りでいいんだよな」
テルは背を見せ歩きだそうとした。
「しばらくしたら、父さんは此処を離れる。戦うのは俺達だけになる。その合図は?」
「いらんよ。頃合を見たら此処を出るつもりさ」
「その間にジェノサイドを殺してもいいのか」
「構わんよ。最終目標がそれだもの」
了承を受け取ったと解釈して、テルはバルバロッサのもとを離れた。
テルはジェノサイドに勝てるとは思ってもいない。だからこそ先程は彼から逃げた。
今テルに出来ることはやれるだけジェノサイドの仲間を倒すこと。間接的にジェノサイドの守りを薄くするうえで他の仲間に討たせる。
「今度こそ終わりだぜ……ジェノサイド……」
その瞳は勝利と殺意で塗り潰される。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.224 )
- 日時: 2019/01/25 15:17
- 名前: ガオケレナ (ID: 1T0V/L.3)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「ここ……でいいのか?」
高野のサークル仲間の集団は大通りから外れた閑静な狭い道を歩き、遂に草木に覆われた不気味な土地へと足を踏み入れる。
「多分、な。ここくらいしか近くでは見当たらねぇ」
「多分って……吉川くん結局分からないのかよ~」
スマホの地図アプリを開いて本物の景色と画面を交互に何度もにらめっこする。途中佐野が何か言ってきたが返す余裕は無い。
「よし、ここだ。行こうぜ皆」
確信を持てないまま吉川がまず最初に突き進んでいく。後ろからは「本当に行くのかよ……」なんて弱気全開の言葉がしたが、じゃあ何故ここまで来たと言いたくなる。
結局一人が歩くとそれに皆がしぶしぶついて行く。行動の発端となる人が欲しかっただけのようだ。
だがその異変にはすぐに気づいた。
「ねぇ、何か焦げ臭くない?」
声のトーンから女子だったが、その声色からして恐らく石井だろう。と言っても女子は高畠と石井しかいないが。
「えっ、そうかな?」
鼻がつまっている香流にはよく分からなかったが、彼女の一言により鼻を行使しだした皆は揃って「本当だ」と言っている。
「焚き火ではないよな、これ……」
「うん。葉っぱを燃やしている臭いじゃないね」
先頭を歩く吉川は松本と話して一気に不安が襲ってくる。そして不安は、嫌な予感へと変換される。
「待てよ……?」
ふと吉川は「都合が悪くなった」と唐突に言い出したと思ったらアルマゲドンなる組織の説明を始め出したあの時の会話が過ぎった。
話によれば、ゼロットとアルマゲドンが組んでおり、そのアルマゲドンがジェノサイドと対立し……
「マズい!!このままじゃあレンが危ねぇ!!」
吉川が一言発すると皆を置いて駆け出した。鼻に敏感な吉川は今ここで何らかの建物が燃えているとしか思えなかったのだ。
「待って吉川君どうしたの!?」
佐野が吉川の腕を掴もうとしたが空かしてしまうも、その言葉で吉川の動きが止まった。
「多分今これヤバいっすよ……。もしかしたらレンは今ここで戦っているのかもしれない……」
一人高野の奪還を考えていた香流はその言葉を聞いて反射的に瞳を大きくさせる。
「戦っている!?それ今がすごく危険って事じゃん!ヤバイよ今行くの止めた方がいいって絶対」
「違います先輩。今レンは別の組織に狙われているんです。そしてここはあいつの基地……って事を考えると追い詰められているっていう事ですよ?このままじゃ、レンが危ない……」
「だからこそ危険だ!僕達はレン君に会うためにここに来たんだ。戦うためじゃない。今すぐ戻るぞ」
「できません」
先輩の言葉を否定したのは吉川でなく、普段は大人しめで自分からは一人でないと動かないはずだった香流だ。
「か、香流くん!?」
「こっちはレンに会うためだけじゃなくて、出来たらいいなレベルですけど、レンを奪還できたらなって思って……」
「そんな半端なレベルで行ったらダメだ!下手したら死ぬぞ!?」
死ぬ。普段から会話で聞き慣れていたり、ネット上の画面から見慣れているその言葉がこの状況のせいでひどく現実的に捉えられてしまう。
何かが爆発するような音も聴こえた。
「いいんじゃねぇの?面白そうじゃん」
背後から若干風邪気味のような声がした。
その声だけで誰だか分かる。普段聞く分には何とも思わないが、人によっては不快感を与えるかもしれないその声が。
「常磐先輩……」
常磐将大。佐野や松本、船越と同じ大学四年生の先輩にして彼らと同じくポケモンユーザーである。
あまり目立とうとしない性格から、高野ら二年とは絡まなかったり、行事にも顔を出すことは少なかったが偶然サークルに顔を出したら佐野たち多くの人が八王子に行くと言うのでついて行った次第だ。
香流が常磐を恐れたのは自分たちの言い分を否定したことではない。
彼らはまだサークル内では、実体化したポケモンと戦うということは校則により実現できていなかったので、この世界での実力はまだ未知数だ。
それでも彼が、この先輩が恐ろしいことに変わりはない。常磐は普段のゲームでのポケモンの強さから"影の実力者"と言われ、香流にも負けず劣らずの強さを持っているためだ。
そんな彼が佐野らと意見を合わすことなく「戦ってみれば」と言っている。即ち自分も戦う気なのだろう。
「普段からチョーシ乗ってるレンが、まさかジェノサイドで……、しかもそのジェノサイドが死ぬ寸前とかいうピンチに陥ってるとか面白すぎだろ。そこに俺達が割って入ってきたらアイツどんな顔するかな?」
既に常磐はボールを握っている。普段はポケモン対戦以外で絡まない若干怖い先輩が、今ここでは凄く頼もしい味方となっていた事に香流は何よりも心が踊った。
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