二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/11/28 13:33
名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走カーチェイス>>536-

行間
>>518,>>525,>>535

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.20 )
日時: 2018/11/08 16:15
名前: ガオケレナ (ID: qHa4Gub8)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

双方の視界が遮られる。

煙が晴れるまで決して動かないジェノサイドと、ある程度距離を離すエレクトロニクス。

そうこうしている内に煙が消えていく。
先がぼやけてきたのを合図に互いのポケモンが動く。

ジバコイルはジェノサイドの背後へ。
そして、オンバーンは……。

その姿が何処にも見当たらない。

「……!?」

後ろを振り返っても頭上を見上げてもジェノサイドのポケモンは居なかった。

不安は残ったがチャンスでもある。
男はジバコイルに命令した。

「殺れ」と。

'ラスターカノン'が無防備なジェノサイドの体にぶち当てられる。
その細い体はあらぬ方向に吹っ飛んでゆき、男はこうも簡単に勝てるものかと勝利を実感できないままそれを眺めていた。

だからこそ、狂いも無くその後も見れてゆく。

吹っ飛んだジェノサイドの周辺の空間が歪み、そして鋭い爪、長い手足、特徴的な尾が次々と生えていく。
いや、現れるといった方が正しいか。

その異形な生き物は直撃した技の衝撃を利用して近くの建物の壁に着地する。
そこで正体が判明した。

「クソっ、またしてもイリュージョンか……」

男は悔しそうに舌打ちする。

すると今度は、ゾロアークが壁を強く蹴って宙に漂うスカイバイクへと突進してきた。
直接男を狩るために。

「なんだコイツは!?命令無しにここまで出来るとはな!……だが、」

男はスカイバイクのレバーを引く。
バイクがゾロアークをギリギリ避けるかのように左へスライドした。

ゾロアークの爪が虚空を裂く。
その真横に男が佇む。その顔には薄ら笑いが浮かんでいた。

あとは落ちていくだけのゾロアークに追い討ちを掛けるため、ジバコイルを呼ぼうとした時だった。

落下していく事に恐怖も戸惑いも見せない様子で男に向かって'ナイトバースト'を放ってきたのだ。

「指示無しにここまですると言うのか!?地面に落ちるのが怖くないというのか!」

ジバコイルでは到底追いつけない。
赤黒い光線は空気を切り裂き、スカイバイクを包み込むとそれはあっという間だった。

巻き込まれたバイクが爆発を起こす。
男は意識が朦朧とし、ゆっくりと落下していく中、ゾロアークが着地した建物の窓を見た。
偶然か否か、ジェノサイドがこちらを眺めている。

落ちていったはずのゾロアークはオニドリルに変身して空を悠々と舞っていた。

そこで悟った。
無謀な戦いだったと。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.21 )
日時: 2018/11/14 17:55
名前: ガオケレナ (ID: 4rycECWu)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「ざっとこんなモンだろ」

階段を降り、外に出たジェノサイドはゾロアークを付近に呼び出す。
ゾロアークは変身を解くとスタッと足元付近に着地した。

バルバロッサの情報では包囲網が、即ち敵がまだまだいるという話だ。
大きな騒ぎになる前に一捻りしようかと軽く考えた瞬間。

明らかに空気が変化した。

これまでとは違う圧迫感、嫌悪感。
それらがひしひしと身体に伝わってくる。

それが嗅覚を刺激した'匂い'という事に気が付くのに少し時間を要した。

つまりそれは、

「やるねぇ~。イリュージョンで敵を翻弄させつつ首を獲る。それがあんたの強さだろ?ジェノサイド」

またもスカイバイクに乗った男が現れた。
先程の男と違ったのは、中肉中背の短髪と外見が正反対だった事。
そして、連れているポケモンがフレフワンだと言うことだった。

「……これで何人目だ?新手か?」

「じゃなかったら何だ?仲間か?違うな」

男はゆっくりとバイクでジェノサイドへと、地上へと近付いていく。

「あらかじめ自己紹介しとくわ。Aランク'フェアリーテイル'のリーダーのルークだ。宜しくな、Sランクさん?」

戦闘前の自己紹介。
決められたことでは無いが、ある種の宣戦布告とも受け取る事も出来るからと、この世界では暗黙の了解と解する人間も少なくはなかった。ジェノサイドもその1人だった。

「ネットワークの情報を元に人集めてみたんだが流石に二人倒した後のオレじゃあまだまだ疲れないみたいだな?」

ルークの言葉に、ジェノサイドは引っ掛かる思いが過ぎる。

情報?人を集めた?

「と、言う事はこの包囲網とやらはお前が仕組んだ事か」

「当ったり~。時間が時間だったらあまり良いのは集められなかったけどどうだった?オレの作戦ナイスだった?」

「雑魚相手に時間取らせるなよな。余計に苛立つ」

「ゴメンゴメン、それは謝るよ。だからこうしてオレが相手して……」
「テメェも含めて言ってンだよクソが」

ほぼ不意打ち狙いでゾロアークのナイトバーストが放たれる。
バイクから降り、着地しているルークを以前と同様爆発に巻き込ませる予定だった。

しかし、直前にルークがスカイバイクを前面に思い切り蹴り出し、距離を離す。
それでも爆発は発生した。
衝撃だけなら直撃していることは明白だ。

ジェノサイドもそう思ってはいた。
しかし、

「無傷……か。そこのフレフワンだな」

「またまた大当たり。'ひかりのかべ'っていう技は凄いね。衝撃がほとんど無かったよ」

特殊技の半減によりゾロアークの突破は困難である事を実感させられる。
そもそも、フェアリータイプ相手に挑もうと言うのが無茶であるが。

状況に反しジェノサイドは笑う。
強いかもしれない敵に出会えた事に。

「いいねぇ。雑魚の相手は無駄に疲れるばかりだが、それよりも強い奴相手に疲れた方がまだ達成感があるってもんだ」

'ジェノサイド'を冠する男は足を進める。
自らの名を証明する為に。
目の前の敵を殲滅する為に。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.22 )
日時: 2018/11/18 13:26
名前: ガオケレナ (ID: G.M/JC7u)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


包囲されている。
その現実を思い直す度に逃げたくなる。
だが不思議な事に、こうして堂々とジェノサイドが敵と対峙しているまさに今、多方面から攻撃を受ける事が無い。

他に敵が見当たらない。
果たしてそれは隠れているのか、機を伺っているのか、それともほぼ有り得ないがここの学生に倒されたか。

考えれば考えるほど彼らの動き、仕組みか分からない。
だからこそ単純な動きしかしない。

それは、

「ゾロアークは戻れ。代わりに行け、マリルリ!」

同時に二つのボールを操り場のポケモンを入れ替える。
やる事はただ一つ。

「マリルリ、'じゃれつく'」

目の前の、茶髪にして短髪の、深緑のジャケットを着た男を倒すだけだ。

「'ムーンフォース'」

対してルークは迫るマリルリを足止めする為に遠距離から攻撃しつつダメージを与える。

「簡単には入り込めねぇか。クソっ、面倒だ」

「今の内に'トリックルーム'」

瞬間、フレフワンとその周辺の空間が歪み出す。
そこに空間が構成されているのかそれすらも分からなくなるんじゃないかと錯覚する程の歪み。
徐々にそれはマリルリを包み、ジェノサイドも包むと二人か立つフィールド全体に及んだ。

トリックルーム。
それは一定時間遅いポケモンから先に動けるようになる特殊な技だ。
普段は鈍足だが火力が大きいポケモンを使う時に補助としてよく使われる技だがそもそもこれとフレフワンは相性が良かった。
フレフワン自体が鈍足なのもあるが、

「固有特性のアロマベールか……」

「へぇ意外。マイナーだから知られてないのかと思ってたよ」

'ちょうはつ'、'アンコール'、'かなしばり'等の俗に言う'メンタル攻撃'という実践的な技を無効化する非常に有用な特性をこのポケモンが持っているのだ。
トリックルーム始動役ならば喉から手が出るほど欲しくなるポテンシャルだろう。
非常に優秀に思える反面、ジェノサイドは不穏な空気を感じ取る。

フレフワンはあくまでも始動役なのだ。

(真打でも用意しているのかコイツは……)

トリックルーム展開の中、物流主体のマリルリは思うように動けない。
技の都合上接近しないと攻撃出来ないのに対し、フレフワンは遠距離から特殊技を放ってくる。
仮に特殊技を備えていても光の壁の前では無力だ。

このまま歪んだ空間が消えるのを待つしかないが、その前にマリルリが倒されてしまう。

ならばどうすればいいか。

「ソイツに対応出来ねぇ技を叩き込んじまえばイイじゃねぇかよ!」
マリルリは突如全身に水を纏う。

そしてジェノサイドの言葉を合図に突進していった。

「'アクアジェット'」

文字通り噴射していくように飛んで行ったマリルリは、トリックルームを無視し、フレフワンが動く前の絶妙なタイミングに割り込んでいく。

そして、特性の力も相まった絶大火力がフレフワンに叩きつけられた。

しかし、ちからもち込みとは言え一撃ではフレフワンは倒れない。
若干フラフラするとすぐに体勢を立て直した。
対してマリルリはあらぬ方向に吹っ飛び、またも距離を開けてしまう。

「例えゲームのデータを引き継いでいるとはいえ、バトルの形式がゲームと同じとは思うなよ。此処ではゲームでは表現出来ない動きも可能だ。その分戦術も広がる……どちらかと言うとポケモンのアニメの世界だと思いな」

「アニメの世界、ねぇ。そんな事とっくの前に知っていた事だけどお前の割には面白いこと言うじゃないかジェノサイド。ところでだ、お前は一体何の為にここまで戦っているんだ?」

バトルとは関係ない事を突然持ち出すルーク。
その不自然さにジェノサイドは眉を細める。

「何のために、とは逆にどういう意味だ。俺はジェノサイドだから戦っているだけだ」

「だからその、何でわざわざジェノサイドと名乗ってまで戦う必要があるのかと聞いているんだ!ジェノサイドという名を振りかざしてでもやらなきゃいけない事があるというのか?」

ジェノサイドという名を使う。恐らく彼が言いたいのはもっと根本的なものなのだろう。
何故ジェノサイドがジェノサイドと名乗り、1つの組織として動いているか。それは、突き詰めれば彼らの掲げる目的に辿り着くのだが。

「俺や俺たちはポケモンを守るために、その命を保護するために活動してるだけだ。それが何なんだ?」

「それだよ、ジェノサイド」

ルークが不敵に笑いながら指をさす。

「お前はポケモンの為と言って今まで行動してきた。どんなことをしてきたか、なんて事は俺らは全部知っている。けどお前たちが動けば動くほど世間は脅えた。テロリストがまた暴れたってね。ジェノサイド、お前は組織としては珍しく世間に認知されている組織だよ。本来ならば存在すらを悟らせてはならないものなのに。けど、お前たちにそれは無理だった。活動内容の内容だけになぁ?」

「それが何だくだらねぇ。ってか今更か?俺は反社会的なテロリスト集団だぞ?名前からして察しろっつーの」
「いや、それが間違いだよ。ジェノサイド」


元から鋭い目付きが更に鋭く見え、反射的に鼓動が一瞬早くなるのを感じる。

コイツは何かを知っている、と肌で感じたジェノサイドはその異様な緊張感に自身が包まれている事に今気が付いた。

「お前たちはテロ組織なんかじゃない。」

その一言に、ジェノサイドは多少の驚きと多少の喜びを見出す。
やはり彼は、ルークは知っていた。

「お前たちはテロ行為なんて一切していない。そうだろジェノサイド。そもそもお前たちの掲げる目的、これはもっと別にして単純な意味がある。ポケモンの保護とそれに伴う不正利用者の殲滅。お前これ、改造やチートを意味してるだろ」

「へぇ。それに気づいたのはお前が初めてだよ。最も、それしか意味がないと思ってたけどな俺は」

「それで。」

ジェノサイドの言葉を無視しながらルークは一方的に続ける。

「お前たちがメディアから無差別な襲撃と言われ続けてきた行為の正体は組織の人間だろうが表の人間だろうが関係ない。改造に手を染めた人間だけを狙った行為。そうだろ?まぁ、誰もそんなのに知る由もないから無差別襲撃なんてブッソーな言葉で一括りにされちゃってさ」

一応これに気づいた一部の人からは支持されている事もあるのだが、それは黙っておいた。どうせ今喋っても無視される。


「んで、ここからが本題なんだけど」

ルークの薄笑いが止まる。その顔は、真正面の彼の顔を捉えていた。


「ここまで多くの人から悪者扱いされて肩身の狭い思いしながら、さらに多くの組織から狙われて、それでも活動を続ける意味ってなんなの?」

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.23 )
日時: 2018/11/23 14:57
名前: ガオケレナ (ID: W5lCT/7j)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「意味……ねぇ」

静かに佇むジェノサイドが寂しそうにポツリと呟く。

「企業秘密って言葉が何で存在すると思う?」

少し考えてジェノサイドは答えとしては曖昧すぎるものを言い放つ。
マリルリに再びアクアジェットを指示しようとしたところで異変が起きた。

フレフワンが突如、勝手にボールへと戻って行ったのだ。
ルークが手にボールを持っていなかった為に文字通りポケットへと吸い込まれていく。

感覚としては'バトンタッチ'に似ていた。

そしてルークは別のポケモンが入ったボールを握りしめる。
出番だ、と小さく呟いた声に呼応して現れたのは特徴的なリボンのような装飾を身に付けたポケモン、ニンフィアだった。

ジェノサイドは舌打ちをする。

「フレフワンに脱出ボタンを持たせていやがったな……このタイミングで嫌なポケモンを出しやがる」

「まぁそう言うな。コイツはコイツで凄いんだからさ」

トリックルームの効果はまだ続いている。
すべてを考えた上でここまで準備していたのかとつくづく思わされてしまう。

「今のお前のポケモン一撃で倒せる位にな」

ルークがニヤリと笑うのを見た時には遅かった。
ジェノサイドの'アクアジェット'という命令より先に彼が動く。

「'ハイパーボイス'!!」

姿かたちの無い衝撃波が突如飛んできた。
そのあまりの五月蝿さに聴覚が奪われ、ジェノサイドは反射的に目を瞑ってしまう。

その直前だった。
飛ばされるマリルリの姿が辛うじて見えていた。
映ったのが一瞬すぎたので見間違いかと思うほどだった。

静寂はすぐにやってきた。
ジェノサイドがゆっくりと目を開けると、それはやはり間違いでは無かったことに気付かされた。

マリルリは倒れていた。
戦闘不能。もう戦える力は残っていない。

無言でボールに戻すと、ジェノサイドはしばらくそのまま固まってしまった。

やられた。ジェノサイドのポケモンが真正面から突破された。

ルークはそんな固まっているジェノサイドの姿とニンフィアを交互に見る事しか出来ない。

戦闘放棄か考え事か。
彼から見ても明らかに後者と分かった。
だが、天下のジェノサイドと言われた人間がたかが1匹のポケモンを倒されたくらいで暫く考え込んでしまうものなのか。甚だ疑問だった。

ここでどんなに時間が消費されてもバトルには入らないので光の壁やトリックルームが消える事は無いので問題ないのだが、何もしてこないと言うのはそれはそれで不気味である。

「オイ、遅延行為とかどうでもいいから早く次のポケモン出せよ。それとも万策尽きたか?格下の相手如きによぉ」

ルークが挑発するも、ジェノサイドの表情に変化はない。むしろちゃんと聴いているのかも分からなかった。

だが、その心配をよそに次のポケモンを繰り出す。
光の壁を意識してか物理主体のポケモンである。

ヒヒダルマだった。

「ヒヒダルマだと……」

ルークは内心驚く。
その声色とは裏腹に。

(何故このタイミングでヒヒダルマだ?炎物理だから相手からすると相性は良いのだろうが……コイツまだトリックルームの効果が続いているという事を忘れているんじゃねぇだろうな?)

不可解に遭遇すると人間というものは頭が普段よりも回転するものだ。
それはルークも同じだった。

(それとも気合いの襷でも持たせているのだろうか?そうすれば奴は必ず反撃に転じる事は可能だ。だが……)

ヒヒダルマのメインウエポンもとい、イメージと言えば'フレアドライブ'だ。

(普通ヒヒダルマに襷は持たせねぇ……'フレアドライブ'とは相性が悪いからな。と、なると何でこのタイミングでコイツなのか益々分からねぇ……奴は、ジェノサイドは何を考えていやがるんだ!!)

その答えは、本人以外誰にも分かるものではなかった。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.24 )
日時: 2018/12/02 14:35
名前: ガオケレナ (ID: lSjkm3fN)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

ルークは悩む。
しかし、どれほど考えても出てくる答えは「分からない」だった。

それに、あまり考えられる時間はない。
その分だけ相手に攻撃を許してしまう隙を生んでしまうからだ。

防御面が脆いフレフワンとニンフィアにとっては正に天敵。本来は相性が良いポケモンと取り換えたい所だが手持ちの問題でそうはいかない。
ならばと、ここで摘む以外に方法はない。

「仕方ねぇ。相手が攻撃出来ない遠距離から撃つんだ。'シャドーボール'!」

マリルリ戦と同じく物理主体のポケモンがこちらに迫ってこないよう、遠くから技を放つ。

本来は'ハイパーボイス'を撃ちたかったが、ニンフィアの特性フェアリースキンの効果でヒヒダルマ相手には半減されてしまう。
なので、ニンフィアの高い特攻が活かせて尚補正の掛からない'シャドーボール'なのだ。

(避けられるなら避けてみろ……。ヒヒダルマにこの局面は突破出来るかな!?)

そう思いながら状況をじっくりと観察していたルークははっきりと見た。

ジェノサイドが黒い塊が迫る中、何か命令するのを。

てっきりルークは、ヒヒダルマが'フレアドライブ'を使いながら'シャドーボール'を避け、こちらに迫り来るのかと思っていた。

が、実際は違う。

ヒヒダルマの口から赤い炎が、'かえんほうしゃ'が放たれた。

「っ……!?なんだとっ!?」

物理一本では有り得ない技のチョイス。
その炎は黒い球とぶつかり合うと爆発、霧散する。

「'かえんほうしゃ'!?一体……奴は何を……。まさか!?」

有り得ないのは本来のヒヒダルマ。
そう、本来ならば。

だとすると、考えられるのは一つしかない。

「特殊技を使うヒヒダルマ……まさかそのヒヒダルマ、夢特性のダルマモードなのか!?」

ダルマモード。
超火力を有するヒヒダルマのもう一つの特性。

特定の条件下で攻撃が大幅に下がり、代わりに特攻が大幅に上昇する。
簡単に言えば攻撃と特攻の種族値が入れ替わるというものだ。
つまり、超火力が特攻にシフトする。

だが、その特定の条件というものは、

「お前馬鹿か!?そいつはダメージを受けていないと使い物にならない代物だ。しかもヒヒダルマの耐久はお世辞にも高いとは言えない……ダルマモードなんていう失敗があってこそギルガルドというポケモンが作られたのをお前は知らないのか?」

正確には残り体力が半分を切って初めてフォルムチェンジが成立する。
要するに使いにくいポケモンなのだ。

それでも相手はニンフィアである。
まだ本来のヒヒダルマで戦った方がマシだ。

「何とでも言えよ。俺のヒヒダルマは、作戦はここで終わるほど単純な物は持ち合わせていねぇぞ?」

ジェノサイドは嗤う。
そして、小さく呟く。

ルークは益々悩む。
最早彼がジェノサイドという男のすべてを理解するのは不可能だった。
とにかく今の状況を変えるために考えるしかない。

(下手にダメージを与えればダルマモードが発動してしまう……。だが奴の耐久だと耐え切るとは思えない……、でも襷を持っている可能性は?'フレアドライブ'の有無は?クソっ、わからねぇ……)

思い悩む末に一つの答えに辿り着く。

「ニンフィア、'めいそう'だ」

一見無防備とも取れる姿でニンフィアは佇み始める。
全神経を集中させ、火力と防御面を上げる技だ。


それを見たジェノサイドは今だと言わんばかりにヒヒダルマに指示を飛ばす。

「'フレアドライブ'」

直後、ヒヒダルマが巨大な炎を纏ってこちらに猛突進してくる。

「キタァ!!」

感激したルークは叫ばずにはいられなかった。

「'めいそう'はあくまでも陽動!ただの陽動で火力も上げられるんだから得しかねぇだろっつーの!」

すべて予想通りだった。
そしてこれからも、予定通りに指示を飛ばす。

「ニンフィア、'シャドーボール'っ!!」

ヒヒダルマと'シャドーボール'を衝突させることにより、相手にダメージを与え相手が地面に着地した瞬間を次の攻撃で仕留める。

ルークの思い描いた作戦は完璧だった。


ここまでは。

二つの技が衝突したことにより、黒煙が舞う。

何も見えない事で不安が過ぎったが、すぐに煙は飛散したので中がはっきり見えるようになってきた。

ニンフィアは立っている。だが、ヒヒダルマは倒れるどころかどこにも姿が無いのだ。


(……遠くに飛んでしまったか……?)

最初はそう考えたルークだったが、やはりどこにも見当たらない。

確認したいが為にニンフィアから目を反らした瞬間だった。


後ろから、何かがいきなり迫ってくる。

「!?」

かなり素早いそれは、一気にニンフィアの下へ駆ける。

ルークもニンフィアもそれに追い付けず、すべてを相手に許してしまう。

それもそのはず、トリックルームは前のターンで失ってしまい、光の壁はさらにその前のターンに消失してしまったからだ。


'それ'はニンフィアに対し、超至近距離で光線を放つ。

避ける術もないニンフィアはモロに光線を浴びてしまう。


だが、特徴的なその光線はルークから見て何か見覚えがあった。

赤と黒が混じったような、禍々しい色をしたそれは。


「まさか……'ナイトバースト'……?」

つまりは。


「ヒヒダルマは、奴を出したときから全部、お前が魅せた幻影だったのかよ!!」


それを聞いたジェノサイドの嗤いが合図となり、得体の知れないヒヒダルマは真の姿を現す。


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