二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/11/28 13:33
名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走カーチェイス>>536-

行間
>>518,>>525,>>535

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.155 )
日時: 2019/01/11 16:31
名前: ガオケレナ (ID: 1Lh17cxz)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


運転は乗る側も運転する側もずっと不安であった。
遅れたブレーキングにより急に停まったり、衝撃で前のめりになったり、逆に早すぎて停まるのが途切れ途切れになったりと。
この中に乗り物酔いする人が居なくて本当に良かったとジェノサイドは本気で思ったことだろう。汗が大量に流れている。ハンドルもびしょびしょだ。

「何とか……何事もなく……着いた……」

呼吸も荒く、手も若干震えていた。そこに、深部最強の人間の姿などどこにも無い。

さすがに議会場の真ん前に停めると怪しまれるので、少し離れた位置でその建物を眺めている状態だ。

とても現代風の建物だった。出来た時代が四年前なので建物自体とても新しい。
とびっきり豪華という訳でもないが、少し特別感のあるその建物は議会場と言われても納得はする。

だが、その割には建物が小さすぎる。
会議室が一箇所しかないのではないのかと思うぐらいに。
恐らくこのような議会場は他に何箇所もあるのだろう。それを考えると、そこに杉山がいる可能性は……

「よし」

ジェノサイドは強くハンドルを握りしめ直した。
今度はルールに縛られることなく走らせる、と。

「このままあの建物に突っ込むぞ」

「え?」

信じられない言葉が聴こえた気がした。
ミナミやハヤテ、ケンゾウの他に、見知らぬ深部の人間が乗っていたが、その誰もが目を丸くしている。

こいつ本気で言ってるのかと。

「え?え?ちょっと待って、それどういう……」

「皆ベルトしてるし大丈夫だな。この車で多少スピード出してぶつけてもこっち側に被害は一切ない。憎き議会を潰すチャンスだ。いくぞ」

言って、思い切りアクセルを踏む。今まで我慢していた不満をすべてぶつけるかのように。
そのクルマは獰猛な野獣のように走り始める。もう獲物はすぐそこだ。
ぐん、と急発進したもんだから体が引っ張られる。

「え、え、ちょっと待って……」

などと言ってもただ一直線に議会場に向かうのみだ。
「待って待って待って!!!」

とうとう車専用の出入口にかけてある門をぶち破った。
ゴン、と車にしては嫌すぎる音が車内に響く。

門を破り、敷地内を停まる事なく走る。
もう入口が目の前に見えてきた。

「いや、ちょっと待ってってばいやあぁぁぁぁーー!!!」

反射的に叫ぶも、効果は無し。

窓ガラスや壁を思い切り破壊して車体の半分程を建物内に埋める形で車はやっと静止した。

普通の車とは違って反動で頭を強く当てるような物、例えるならダッシュボードなどがなく、ガラ空きだったので怪我をすることはなかった。

ただ、後部座席の人が心配だった。
自分が座っている椅子のせいで怪我をしていないか。

ミナミは隣で運転していたジェノサイドを強い怒りを持って睨みつける。

「ちょっとふざけんのもいい加減にしてよ!お前周りを考えて行動できないの!?」

珍しく強すぎる程に当たってみるが、それに耳を貸すことなくジェノサイドは車から颯爽と降りてしまった。

「ちょ、聞いてんのあんた!」

釣られて彼女も車から降りる。

中はえらい騒ぎになっていた。

その場に倒れる者が多数。
受付辺りをやっていたのか、議員にしては若い女性が黄色い声を上げている。そのせいで余計混乱に塗れる。
腰が抜けて動けない者、逃げ惑う人々など文字通りの惨事が広がっている。

「情けねぇ……それでも議会の人間かよ」

ジェノサイドはボールを二つ取り出す。一つはメガシンカ要因のボスゴドラ、もう一つはゾロアークのものだ。

「俺らを束ねる人間気取るつもりならこれくらいの対策しろやあぁぁぁ!!!」

ボールから巨体にして文字通りのモンスターともいえるボスゴドラが出る。状況も相まってかなり恐ろしく見えてしまうようだ。

次々と到着した深部連合の人間がポケモンを出し始める。遂に、突撃が始まった。

「杉山どこだぁぁ!!」

「探せ!あの野郎を探して見つけ出してぶっ殺しちまえ!」

今にも彼等はポケモンを使って建物ごと破壊でもするのではないかと議員が、非戦闘員が、ミナミが、ジェノサイドが思った。

しかしその瞬間、ジェノサイドは指を鳴らす。

すると、破壊されたはずの壁が、飛び散ったガラスが一気に吹き飛び、一箇所に集まり出す。
突っ込んだはずの装甲車の姿が消える。

次の瞬間には、つい三分前までの、今まで通りの綺麗な議会場がそこにあった。

「えっ……?」

不思議に思い、外に出てみると、明らかに先程とは離れた位置に車が止めてある。
そういえば、自分の座席に人がぶつかるような衝撃があったかどうか思い出すと……

「ま、まさか……!?」

議会の人間も全員が呆気に取られている。一分後に殺されると思いつい腰が砕けた初老の議員は、綺麗な壁を見つめて結局動けずにいる。

「あんた、まさか!?」

言おうとしたところでジェノサイドが手を向けてきた。静止の合図だ。

「しっかりと正直に答えろ。杉山はどこだ」

目の前のよく分からない状況に空いた口が塞がらない人たちはその質問に応じることなかった。

今の空気を感じて、もう一度。

「もう一度答える。杉山渡はどこにいる。答えろ。またやるぞ?車で突っ込むの。今度は本当に」

再び叫び声が聞こえる。
逃げ惑う姿が目に映る。

その光景にジェノサイドはつい嗤ってしまう。

(こいつら……議会の癖してポケモンの特性……'イリュージョン'すらも知らねぇってのかよ)

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.156 )
日時: 2019/01/11 16:43
名前: ガオケレナ (ID: 1Lh17cxz)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


入口含むロビーに杉山の姿は無かった。
普段来ないような場所なので建物の内部を知っている訳が無い。
ここにある部屋をすべてくまなく探すしかなかった。

相変わらず今がどんな状況か分からない議員たちは逃げるばかりで何も言おうとしない。

「はぁ……仕方ねぇ。あんま乱暴な事まではしなくていいからとりあえず探すしかねぇな。杉山見つけたらちゃんと連絡しろよ。勝手に殺すのはNGな」

果たしてこれを聞いていた者は居たのだろうか。
言っている途中から他の仲間たちが逃げ惑う議員を面白がりながら追って、しまいには攻撃している。

「集めた仲間は三百五十七人……全員にルールを課して守らせ、命令するのは流石に無理があるか。こりゃ死人でるかもな」

ニヤッと不気味な笑みを浮かべ、近くでのびていた中年の議員に近づき、胸ぐらを掴む。

「恨むなら俺らじゃなく杉山を恨むことだな……?奴がいなけりゃそもそも俺達は結託してここに来る事が無かったんだからな。奴が動いた結果だと思え」

「や、やめてくれ……命だけは……」

「安心しろ」

掴む手の力を弱める。が、殺意を込めた目を維持したまま、まだその手を離さない。相手の不安を煽るためだ。

「俺はアイツらと違って無闇に殺したりはしねぇ。ただ杉山の居場所を教えるだけでいいからよ」

「教えて……どうする気だ」

「決まってんだろ。殺すんだよ」

「……!?」

その中年の議員は文字通り青ざめた。目の前の人間がジェノサイドであり、この状況を見ると本気で言っているとしか思えない。

「お前は……ここまでやっておきながら……議員を殺害する気なのか……そんな事したら、どうなるか……分かってるのか?」

「どうなるかって?おいおい、今まで俺は戦いに明け暮れてたんだ。それが多少増えるだけだろ?別に痛くも痒くもねぇよ」

話がズレていき、無駄な会話を続けている時だった。

奥から皮衣を来た、相変わらず寒そうな格好をした黒須が出てきた。

「おいジェノサイド。何そこでオッサン虐めてんだよ。こっちは適当にジジイボコってたら吐いてくれるみたいだぞ。杉山の居所をよ」

ジェノサイドはため息をつくと掴んでいた手を離した。反動でその議員は床に倒れる。

相変わらずこいつらは野蛮だとつくづく感じた。自分は自分たちの仲間や、今まで戦った敵の評価から、まだまともだと思っていた。
そんな自分が人をまとめても野蛮な人間は野蛮なままだと思い知らされる。

「まぁどうせ今日限りだしな」

「あん?何がだよ」

何でもねぇ、と吐き捨てるように言いつつ黒須のもとへ歩き、彼がさっきまで居たであろう部屋へと向かう。

そこは何かの資料室のようで、本棚で壁を埋め尽くしている部屋だった。
あまり広くないその部屋の奥で、辺りに本やプリント類で散らかした中に、一人の議員が本棚に寄り掛かる形で座りこんでいる。
ジェノサイドはしゃがみ、その男に声をかけた。

「なぁ。杉山の居場所知ってんだってな。どこにいるんだ?」

「……。」

薄く目を開けて伺おうとする男だったが、口をぱくぱくと動かすだけで声は聴こえない。
しばらくしてその男は再び目を瞑ってしまう。

「気絶……か。おめぇやりすぎなんだよ。聞き出せるモン聞けなくなっちまったじゃねぇか」

「わりーわりー。日頃から議会にゃ不満ばかりあったもんでよー」

頭の後ろで手を組んで上機嫌そうにその部屋を出ていったので、ジェノサイドも彼について行く。

「あとまともに話せて居場所知ってる奴はどれほど居るかだな」

「しらね。適当に探して無差別に殴っときゃいいだろ」

「だから殴るにしても加減しろっつの。一番の目的は議員の殲滅じゃなく杉山の打倒だからな」

「へいへーい。リーダー様は俺らと違って言葉も違けりゃ心も違うのな」

今では一応味方でいるはずだが、黒須の言動がかつて戦った時から変わっていない気がする。
やはり本音ではジェノサイドの事が嫌いなのであろうか。あまり喋ると今度は自分の背中が刺されかねないので黙ることにした。

ジェノサイドは次に、廊下を歩き、さらに奥にある会議室に入ってみる。
深部の仲間が結構おり、それぞれ議員を攻撃している。
彼らも加減せずにやっているように見えるため、ここでも収穫は無しと判断し、他へ移る。

他の会議室も、ついでにトイレも眺めたが何処も同じだった。

不満気にロビーへと戻ると、先程会話していた中年の議員が相変わらず倒れていた。
恐らく、あれから倒れていたせいで誰にも相手にされなかったのだろう。

まずは受付嬢に聞いてはみるものの、

「わ、私達は……一人ひとりの議員のスケジュールまでは把握しておらず……その、申し訳ないのですが……分かりかねます……」

睨みつつ舌打ちをして中年議員へと寄った。
そろそろストレスが溜まってきたところだ。ここまで上手く行かないとなるとイラついてしょうがない。

「お前からはまだ聞いてなかったな。言え。杉山はどこだ」

その議員は目を開けた。

「またお前か……私は知らない……他をあたってくれ」

その言葉を聞いた途端、ジェノサイドは首を掴み、力を加える。

「……ひぃっ……!?……がぁっ……」

「いいから答えろよ。こっちは思う様に事が運ばなくてイライラしてんだ。同じ議員の人間が知らない訳ないだろ?死にたくなければ言えよ」

周りに影響されつつあるせいか、ジェノサイドにも殺意が芽生えてきている。
このままでは本当に殺めてしまいそうだ。

「分かった分かった……言う、言うよ……」

苦しいのか、ジェノサイドの手を叩き、もがきながら話す。
それで少し冷静になったのか、ジェノサイドも力を抜く。

「げほっ……杉山さんは……今……武道館にいる……明日……イベントがあるらしくてな……準備に取り掛かってるはずだ……」

その男は咳をしながら苦しみつつ、絶え絶えに言う。そのせいで若干聞き取りにくかった。

「本当だろうな?それ」

立ち上がって入口へと目をやる。外にもチラホラと仲間が待機している。

「あぁ……本当……だよ。私も……死にたくないから、な」

「おいジェノサイド。おめぇまたそのオッサン虐めてんかよ。好きだなーお前も」

廊下から黒須が現れた。相変わらず機嫌は良さそうだ。

「仕方ねぇだろ。まともに話せたのこいつだけだったんだぞ?」

「へぇー。それで話は聞けたの?俺もちょっと混ぜてよ」

と、言って顔目掛けて足を上げた。踏みつぶす気か。

「やめてやれ。もう話は聞いた。そいつに価値はねぇよ」

「とか言って俺が今踏もうとしてんのを止めてんじゃん。無用な攻撃はしないってか。やっさしーなぁ。ジェノサイドも」

足を振り上げるのをやめ、代わりに背中を軽く蹴った。

「んで?あの野郎は何処にいんのよ」

「武道館」

「はぁっ?」

面倒からか、振り向きもせずにジェノサイドは外へと出ていってしまう。

「んだよ、あいつも少しくらい暴れればいいのに。こんな奴ら野放しにするからそもそもこうなるんだろうが……」

さぞつまらないと言いたげに吐くと、黒須も出ていった。


ーーー

「もしもし、私だ。塩谷だよ」

「塩谷ィ?なんでお前が俺の番号を知ってんだよ」

いきなり電話が掛かってきたのは議会場から外に出て装甲車に乗ってすぐの事だった。
教えてもいない番号を塩谷が知っているのが何とも不気味だ。

「ちょっとしたツテでね。何とかして手に入れた。ま、使うのは今日限りだろう。ずっと持っていてもリスクになるだけさ」

即座に武内が頭を過ったが実際は分からなかった。そもそも武内に番号を渡してなどいないからだ。

「それで何の用だ。今ちょっと忙しいんだが」

「知っているよ。君、今立川の議会場にいるみたいだね。すぐにこちらに伝わったよ」

そりゃ前例のない騒動を起こせば情報の伝わりが速くなるのは当然の事だ。
黙って彼の言葉を聴く事に徹する。

「彼はそこにはいないよ」

「知ってる。さっきそれを無理矢理聞いた」

「では何処にいるのかも知っているのかな?」

「あぁ。武道館だってな」

地名を挙げた途端、電話の向こうで沈黙が広がった。何かあったのだろうか、やや不安になるも、すぐに彼の声がした。

「そうか……。じゃあ大丈夫だな。私もそこにいるよ。いい結果を期待しているからね」

と、だけ言うと一方的に切られた。

「やっぱ議員の人間は皆こんな感じじゃねぇか……どんだけ自分が正しいと思ってるんだか」

そっくりそのまま自分たちに当てはまる言葉だった。
深部連合の全員にはメールやスマホのアプリを使って武道館に行くよう支持を飛ばす。
すぐさま、自分の視界にはレックウザに乗って空を飛ぶ者や、他の装甲車を走らせて先に走る者などが多数だ。

「んじゃ、俺らも行きますかね。最後にパーッと革命成功させちゃおうぜ」

正確には革命ではなく反乱なのだが、彼等からして見れば正にそれは革命のようだった。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.157 )
日時: 2019/01/11 16:53
名前: ガオケレナ (ID: 1Lh17cxz)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


日本武道館。
東京都千代田区に建つその厳かな建物は見る者を圧倒させる。

スーツ姿で九段下側の入口にて佇む影が一つ。

塩谷利章。

下院議員の一人であり、ジェノサイドら深部の人間を煽った張本人である。
彼は今、明日行われる杉山渡の表彰式の準備に備え、ここに来ていた。

「明日は杉山君の、下院議長になったことへの表彰式があるもんだが皮肉かな、まさか今日あの子たちが立ち上がるとはね……」

皺の多い初老の男性は空を見上げてみる。

何物にも染まっていない、綺麗な青空だった。
議会もこれくらい綺麗であればいいのにと思ってしまうくらいに。

「ん?」

だからこそ、それは目立った。たとえ一点であっても、周りとは異質な存在であれば嫌でも目立ってしまう。

それは、緑色の流星だった。

隕石の如く、地上へと迫り、落ちてゆく。
辺りに強風と大量の砂埃を起こしてそれは着陸し、何事も無かったかのように乗っていた人間が降り立つ。

「君……たちは?」

あれほどの負担を負いながら平然と立つ人たちに疑問が拭えない。
彼らがジェノサイドが呼んだ深部連合の者達であり、流星の正体がレックウザだというのは流石に詳しくない塩谷でも分かったことだが、だからこそおかしな点が生まれてくる。

深部の者達は塩谷の存在になど目もくれることもなく、次々と降りてゆく。

「ご苦労、ランクルス」

そんな中、一人の人間が同乗していたランクルスをボールに戻した姿を偶然見かける。
そこで疑問は解消された。

(なるほど……エスパータイプのポケモンの力を使って直接体に浴びるエネルギーを変換したか……)

「ジェノサイドはまだ来てねぇようだな」

乗っていた一人の人間が仲間らしき人に言っている。

「まぁ……あいつら車だろ?時間かかるだろ」

「そうだな。それまでどうする?先に中に入って杉山殺るかここで待つか」

持ち主であろう男が、レックウザをメタモンに姿を戻してからさらにボールへと入れる。その時に、塩谷と目があった。

「よう。どこかで見覚えがあると思ったら」

メタモン使いの男は握手を求め手を差し出した。

「わざわざ俺の元へ出向いてくれたオッサンじゃんかよ」

「覚えていてくれたのか。嬉しいね」

二人で握手を交わした。意外と塩谷の手がガッシリとしている。

「そりゃ、金払ってくれるんだろ?ジェノサイドからもアンタからも貰えたら万々歳さ」

一部を除き、塩谷と接触した深部の人間の中には、見返りを貰うことを約束されている人もいる。
偶然にも、ジェノサイドも同じ行動を取ったのでそれに従うつもりで彼らは此処に来ていたのだ。

「ふむ、見た限りだとジェノサイド君などもまだ此処には来ていないようだね?」

塩谷は今ここにいる深部の人間の数を数え、その結果が十五人であった。三百人には程遠い。

「他の奴らは車でここまで来ている。じきに来るだろ。あと俺らと同じくポケモンで来てる奴とかも」

「なるほど」

などと会話をしていた時だった。
遠くから、光線のようなものがこちらに迫ってきた。

「!?」

その男は塩谷を見捨て、自分だけその場から離れ様子を見守る。

塩谷を狙っていたわけではわけでは無かったので彼には当たらなかった。その場に動かずじっとしていても、直撃はしなかったのだから。

「だ、誰だ!?」

「おい大丈夫か!!」

仲間の声が聞こえる。男は大丈夫だと答え、光線が出た先を見つめると、やはり原因はあの男だった。

「現れたか……」

憎むべき対象が現れ、気分が高ぶる。

「杉山……っ!!」

「ご苦労だったな塩谷ィ!君のお陰で深部のガキ共を誘い出すことが出来たよ」

自信あり気な力強い声だった。

「杉山……くん……!?」

塩谷はその姿に対し内心ヒヤヒヤしていた。
彼は自分が深部と手を組んでいることを一切極秘としている。ましてや、仕事上仲間である人間を殺そうとするなど大問題だ。
この時点でそれがバレるのではと思ったが……。

「君は無事か?彼らは手段を選ぼうとしない非道な人間たちだからな。先程情報が入ったよ。何でも立川議会場が彼らによって襲撃を受けたそうじゃないか。全く、酷いことをするもんだな」

てめぇが言えることかと、そこに居合わせた深部の者達は思った事だろう。

光線の正体がルカリオだと言う事を知ると、各々ボールを取り出す。

「いいタイミングじゃねぇか。まさかお目当ての人間がわざわざここまで来てくれるなんてよぉ!」

ボールを投げ、それぞれメタモンやハッサム、メタグロス等を展開する。

「いいか、俺達のポケモンバトルにルールなんざねぇ!直接あの野郎をぶん殴って殺すぞ!!」

メタモン使いの男が入口前へと佇む杉山に向かってメタモン共々駆ける。

その瞬間、メタモンもルカリオへと変身した。

「俺のメタモンの特性は'かわりもの'だ!テメェだけが有利な状況なんて存在しねぇからな!!」

それまでは遅かったメタモンが、変身した瞬間、走る速度が速くなる。
階段を一気に翔け、狙いを定めた時だ。

「ほう、メタモンが変身したルカリオねぇ。面白い戦いをするようだが……甘いな」

杉山の右腕が光る。当然、光源はメガリングだ。
眩い光を纏い、何かしらのエネルギーが辺りに飛んだと思った時には、姿が変わっていた。

「メガシンカだと!?」

メガシンカの道具を持っていない彼らにとっては衝撃的であり、驚異的な存在である。

ルカリオよりも速く、より正確にメガルカリオが動く。
ルカリオは階段を翔けたところだった。だが、メガルカリオはその場でひとっ飛びし、空中に留まるルカリオの懐へと一撃を放つ。

「'インファイト'」

思いが込められていない、ただ敵を排除するためだけの動作としか考えていない冷たい声が突き刺さる。

「まずっ……」

その一瞬で危機を感じた。
メガシンカしたポケモンがここまで恐ろしいとは思わなかったからだ。

(速さ、技の正確さ……そして回避能力すべてにおいて逃げれねぇ……やべぇっ!!)

思った時は遅かった。

避けることの出来ない状況において、立ち上がっていた二つの影はすぐさま一つへと減ってゆく。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.158 )
日時: 2019/01/11 19:05
名前: ガオケレナ (ID: cFBA8MLZ)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「ねぇ、まだ着かないの?」

「仕方ねぇだろ。都内は常にグニャグニャしてんだ。そう簡単に行けるかっての」

「とか言ってさっきからノロノロじゃない!」

ジェノサイドたち装甲車組は都会の交通事情の犠牲者と化していた。

ただでさえ運転に慣れていないのに、流れとはいえ都内に放り出されたらたまったものではない。
汗が止まらなかった。

「ほら、今だよ!早く行って!」

「お、おう……」

さっきからこの調子な気がする。
自分よりも助手席に座っているミナミの方がこの運転に向いている気がするのは気のせいだろうか。
恐る恐るハンドルを切り、アクセルを強く踏んだ。

「……」

内心、ヤバいと思った。本来進むべき道を間違え、直進してしまったからだ。
だが、誰も何も言わないため、バレていないことを祈る。しかし、

「リルートします」

と言うナビの音声が静寂に包まれた車内にこだました。

「……あんた、なに道間違えてんの」

「ごめん、どう頑張っても曲がれなかった」

「あんなの無理矢理入るべきなのよ!何でそこで狼狽えてんのよ!」

今ここにあるのは果たして深部最強のジェノサイドなのだろうか。
慣れないことをしてオロオロしながら、それを仲間に強い口調で叱責されるなど誰が予想しただろうか。

遠回りしつつ、本来のルートへと戻る。

「……」

「イメージガタ落ちね」

「頼むから今それを言うな……」

今あるのはただの気弱な大学生高野洋平だった。

「これじゃ、すぐには着きそうには無いッスね」

「んー、事故ってもこの車じゃ俺らは平気だと思うがそれだけでも問題だよな……」

後ろは後ろで盛り上がっているが、確かに彼らの言う通りすぐには着かないだろう。


ーーー

形勢が変わってしまった。
最初に日本武道館に到着したポケモン移動組は全員散り散りとなってしまう。

理由は簡単。

杉山の呼び出したメガルカリオとプテラによって苦戦を強いられ、背後から彼の部下が群れを成して反撃してきたからだ。

そのせいで最初に彼に挑んだ四人は倒れ、後の者は逃げるなどしてバラバラになった。
その結果、日本武道館は杉山と彼の部下に占拠、包囲され、迂闊に近寄ることすら難しい状況へと変貌してしまったのだ。

「ったく……簡単に行けると思ったばっかりによぉ……何でこうなるかな?」

車組の中では真っ先に到着したルークは状況確認した後、最寄りの駅である九段下駅で待機する運びとなってしまった。

「仕方ないっすよ。レックウザ組が失敗したせいで、ってかそこまで視野を入れていた杉山の糞野郎の作戦だったんですよ」

彼の仲間が気楽そうに言う隣でルークは舌打ちする。

「大体皆バラバラなせいで集まりが悪ぃんだよ。ちゃんとまとめた上で一箇所に集めろってーの」

そんな彼等を纏めなければならないリーダーが、都内の道路に悪戦苦闘していることなど知る由もなかった。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.159 )
日時: 2020/01/27 14:30
名前: ガオケレナ (ID: cL1TK97H)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


ルークが九段下駅でイライラしていた頃に、車組が次々と到着しだした。
情報が既に出回っていたため、当駅に集合する運びとなっている。

「遅ぇぞ、モルト」

Bランク組織、"爆走組"のリーダー、モルトと呼ばれた男が駅に到着した。
彼とルークは交流があったため、互いに仲は良好である。

「すまん、道が混んでたんだ。でもジェノサイドよか速いからまだいいだろ」

「逆にアイツが遅すぎるんだよ」

思いを共有させ、増えた人数で貧乏揺すりをしていたときだった。

「ごめん!!かなり遅くなっちまった!」

入口の方から聞き慣れた声が聞こえる。

「テメェ!遅すぎんだよ!!一体どんな移動してたらこんな遅くなんだゴルァ!」

不満をすべてぶちまけるように怒鳴る。地上には息を切らしたジェノサイドが立っていた。

「状況は?」

「ったく、情報回したっきり変わってねぇよ。武道館はヤツらが占拠、俺ら連合軍は全員この駅にて待機。逆に俺達がこの駅を占拠した感じだぞ」

「武道館の状態は……」

限りがあるが、地上から眺めてみる。

「常にポケモン?が飛んでいるな」

「敷地内はヤツらで溢れ、上空からゴルバットが監視している。入口も封鎖されてるよ」

モルトも話に加わり、持っている情報をジェノサイドに与える。それを見たルークは呆れからかため息をついた。

「なんであいつらってゴルバットをよく使うんだろ」

ジェノサイドが眺めながらふと、呟く。

「あぁ?」

状況を忘れた発言により威圧的に発するルークだったが、こちらに意識が向いていない辺り効果は望めなかった。

「そりゃ、あれだろ。俺もよく分かんねーけど、隠密性と強襲性に優れているのがヤツらにとってはゴルバットなんだろ。アニメとかでもよく悪役が使ってるイメージあるし、多分そのイメージもあんじゃね?」

「ふーん、そっかぁ……」

何も考えずにふらっと歩くように見えたジェノサイドを見て、

「お、おいテメェ何やってんだ、迂闊に出歩いてんじゃねぇ!」

ルークが走り、後を追おうとしたとき。
いきなり立ち止まったせいで、彼はジェノサイドと衝突した。

「いてっ、」

「ぐあっ……、テメェ……立ち止まってんじゃねぇよ……」

ぶつけた肘を押さえながら、ジェノサイドを睨みつけるも、大してダメージが無かったのか何食わぬ顔で彼は振り向いた。

「別に何も考えてるって訳じゃねぇよ」

「じゃあ何なんだよ……」

「とりあえず皆出よう。それから……」

ジェノサイドは再び武道館の方向を見つめ、また全員に顔を向けた。

「入口まで行ったら、強行突破で行く。この状態でこの人数で作戦とか何か組んだとしてもバラバラになっちまう。ならば、バラバラになる前提として強行突破という名の作戦で行く」

「おいおいマジで言ってんのかよ……」

全員を外に集めて歩きつつ、不安そうに尋ねるも、この人数を見て納得しかける。

入口には三人の杉山の部下が銃器を構えて突っ立っている。
敷地内に多く配備しているせいか、手薄だった。

「やっぱアイツ本格的な馬鹿だな」

「あぁ。入口の守りを強化しないと意味がねぇってのに。よっぽど自分の命を守るのに精一杯らしいな」

ルークのその言葉が合図替わりとなったのか、彼らは一斉に走り出す。
三百人超えの人間がいきなり突入しては、たとえ銃を持っていたとしても捌けるわけがない。
突然のことに黒のスーツを着た部下たちは戸惑いながら銃を構える。

が、誰かが出したロトムにより、全員'でんじは'を浴びたことで無力化してしまう。
呻いてその場に倒れると全員が無傷のまま、突入に成功する。

入口を越え、橋の辺りに差し掛かると、警備にあたっていた黒スーツ軍団が彼らを見て叫び、人を集める。
が、総数は四十人弱。

何ら怖くないただの低い壁だ。

「ゴルバットだ!上空にいるゴルバットを降ろせ!」

一人の部下が叫び、一斉に各々のゴルバットを手元に寄せると、彼らを迎え撃つ構えを見せた。

だが。

「うおらぁっっ!!」

ルークのクチートが、モルトのドラピオンが、黒須のダーテングが、ミナミのエルレイドが、ジェノサイドのゾロアークが舞う。

「邪魔なんだよ雑魚共ォ!!」

四十人の黒スーツ軍団がそれぞれのポケモンを呼び出し、八十の壁となったとしても、三百の人がそれぞれポケモンを出して応戦すればそれは六百の槍となる。
壁にしては、乗り越えるのに容易な壁だった。

黒スーツと深部連合が入り乱れ、それを抜ける者が多数。そして、倒れる者は少数。

そこを突破するのに時間は必要としなかった。

橋を抜け、門をくぐり、遂に建物が見えてくる。
レックウザ組が撃破された九段下側入口に到着はするものの、彼らはそこでふと足を止めてしまう。

「おい、何止まってんだ走れ!」

後方から怒号が飛んでくるも、その足を進めることができない。

「ンだよ……これ……」

彼らの先には。

「今までの警備が手薄な意味が分かった……」

ジェノサイドはここに来て状況を理解した。

深部連合約三百人。それを余裕で超える程の黒い壁が、そこで待ち構えていたからだ。


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