二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/11/28 13:33
名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走カーチェイス>>536-

行間
>>518,>>525,>>535

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.55 )
日時: 2018/12/13 14:57
名前: ガオケレナ (ID: idqv/Y0h)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

煙がうっすらと晴れてきた。

それと同時に、金色の空にも異変が起きた。

眩しいくらいはっきりとした純粋な色彩が濁りだした。まるで黒の混ざった汚れた色をしている。
そうなった理由がはっきりと、目の前で起きていた。

ボルトロスが、倒れていた。

バルバロッサの天国を作り上げた三体の神の内の一体が倒れたことによるバランスの崩壊だった。

「馬鹿な……」

バルバロッサには、本来であれば有り得ない光景が広がっている。

「馬鹿なあぁぁぁぁ!!!!」

そして、思いっきり叫ぶ。

「くっ、!何故だ、何故お前のような……、只の人間が神を倒せるのだ!何故だ!」

氷タイプの'めざめるパワー'を受けても、自身が氷タイプとなったゲッコウガはピンピンしている。
ジェノサイドはそんな自分のポケモンを眺めながら声のこもっていない声を放つ。

「単に操る人間の問題だろ。一局一局を見るんじゃなくて、その先を、裏の手を、裏の裏も判断する。そうすることで見えなかった突破口も見えるってもんだ。少なくとも俺は今までそうやって生きてきた」

つまりそれは。
'くさむすび'によってボルトロスの'めざめるパワー'を誘い出し、それを読んだ上で'れいとうビーム'を放ち、相手に致命傷を与えつつ自分に対するダメージを最小限に抑える。そんな風に罠を張りつつその罠を破られる事を予測した上で決定力を放つ。
それを見抜けなかったお前の負けだ、とジェノサイドは言いたかったに違いない。
尤も、冷静さを失った今の老人にそんな言葉が通じるとは思っていなかったが。

「許さん……私の領域を侵し、神をも傷つけたお前を……私は許すことができん!!」

叫ぶと、光の輪を浴びている写し鏡からボルトロスが吸い込まれ、代わりにランドロスが出てきた。
ボルトロスと同じく、霊獣の姿だ。
相性だけ見ると、怖くない相手だ。

だが、今バルバロッサのポケモンは一瞬で別のポケモンに入れ換わることができる所謂'神の加護'を受けている。
ランドロスの'いかく'を無限ループのように使い回す事もできるし、ランドロスの弱点技を与えても瞬時に入れ換えられてダメージを抑えられてしまう。

(どう出るか……)

ジェノサイドが考えている内にバルバロッサが動く。

「'いわなだれ'」

言うと、ランドロスの頭上に無数の巨大な岩石が出現する。
それらが、物理法則を無視した速すぎる速度でゲッコウガに向かう。まさに、岩の雪崩であった。

氷タイプとなったゲッコウガにこの技は致命的である。

「避けろ、ゲッコウガ!」

迫り来る岩の群れから身を翻し、それでも避けきれない岩には'ハイドロポンプ'を放つ。

辛くも、ゲッコウガは'いわなだれ'から無事に逃げ切れた。
だが、そのランドロスは徐々に近づいている。
ランドロスの放つオーラに、ゲッコウガとジェノサイドは更に危機を感じることとなる。

(こいつ、さっきのようなやり方じゃ倒せなさそうな、そんな気がする……一体どうすれば……?)

ボルトロスは倒せた。
だが、言い換えてしまえば、相手のポケモン一匹を倒すのに何度も何度も読み合いを行い、下積みを重ねていき、最後に実体を見せた瞬間という一番隙の出来るチャンスを狙う。

気が遠くなるような作業を何度も行わないと倒せないということなのだ。
それを感じ、徐々にだが精神的に疲弊していくのが感じられる。

(疲れる……アイツを倒すのにこんなに疲れるとはな……)

ランドロスが出現しているせいか、大地からは花がより一層咲き乱れた。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.56 )
日時: 2018/12/10 16:56
名前: ガオケレナ (ID: 40Xm5sOX)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


ゲッコウガとランドロスが対峙している。
倒すのが面倒だからと、そのままでいる訳にはいかない。
ジェノサイドは、一旦は考えるのをやめた。

「'ハイドロポンプ'!」

口から大量の水が吹き出る。
ランドロスは耐久も危惧する程でもないため、とりあえず弱点の技を当てるだけでよかった。
だが、バルバロッサもランドロスもそう簡単にいける相手ではない。

「'いわなだれ'」

攻撃技に使った雪崩が、今度はランドロスの前に、盾として出現する。
一個の岩ならば簡単に砕ける。だが、その岩が一個から二個、二個から三個……徐々に岩の盾の出現するスピードが増していく。
そして、気づけばランドロスを守る盾……と言うよりかは、あらゆる攻撃を跳ね返す強固な壁がそこにあった。

ゲッコウガは岩の壁の前で立ち止まる。軽く背丈の三倍はあった。

ジェノサイドもその光景を見て失敗を悟る。
たかが岩一つならば破壊するのは容易であった。
だが、徐々に岩の出現スピードが上がっていった。'ハイドロポンプ'の速度に追い付かんとランドロスの発するエネルギーが徐々に放出された結果だったのだ。

ゲッコウガやジェノサイド、バルバロッサよりも高く位置する壁が目の前にあるため、その向こうで何が起きているのかは知らない。ランドロスがどうなっているかなどの情報が入ってこないのはかなり不安である。

だが。

「ゲッコウガ、ジャンプだ。壁を飛び越えろ!」

身軽なゲッコウガならば飛び越えるのも容易い。宙に浮かぶ写し鏡と光の輪に届く程飛び上がると、壁の先が見えた。

ランドロスが居ない。

ゲッコウガはその状況を「おかしい」と判断できたが、当のトレーナーはそのことを知らない。
どうすべきか悩みながら少しずつ地面へと近づいていったとき。

突然、地面の一部が不自然に盛り上がった。丁度、ゲッコウガの真下で。

「!?」

ジェノサイドが訳の分からないといった表情をしていたとき、バルバロッサは笑っていた。今度はこちらの計画通りだった、とでも言いたげな冷笑を浮かべて。

大地が轟音を上げて裂けた。

その中からは炎のようなオーラを纏い、鋭い爪を携えたランドロスが出てくる。

狙いは真上且つ無防備なゲッコウガ。

「なっ、嘘だろ!?」

「神の怒りを受けろ、ジェノサイド。'げきりん'!」

怒りと炎に巻かれた竜の爪がゲッコウガを捕らえる。

爆音と共にゲッコウガが地面へと落下した。
反射的にジェノサイドはゲッコウガのもとへ駆け寄った。よく見ると、倒れていた。
認めたくはないが、戦闘不能だった。

「くっそ……」

悔しさと怒りが彼のすべてを包む。
技で嵌めて勝ったジェノサイドが今度は似た手でやられた。
ゲッコウガをボールに戻すと、巨大な岩の壁を睨み付ける。
壁の向こうからバルバロッサの声が聴こえた。

「その壁はただのフェイクだ。お前さんの事だ。空中へと飛んだゲッコウガに対抗してランドロスも飛んで空中で戦うとでも思っただろう?その考え自体が間違いだ。ランドロスの外見のせいで、地面タイプだということを忘れたか」

憎らしい声が響く。
とにかくジェノサイドにとっては壁による見えない状況が嫌で仕方ないのに、勝利に浸っている奴の声も同様に嫌いだ。

今にでもあの壁をブチ壊したい。

(だが、そんなポケモンがいるような、そんな都合のいい事が……)

と、思いながらポケットを探る手が不意に止まった。

(いや、いるかもしれない。あの壁だけでなく、この状況を引っくり返す事の出来るほどのポケモンが……)

ジェノサイドは一つの希望を見つけるものの、それには限りなく不安であった。

何故なら。
そのポケモンがゲーム上で持っている道具が、他のポケモンとは違って反映されないからだ。

ゲッコウガが持っていた命の珠やファイアローの拘り鉢巻き、それから常にゾロアークに持たせていた気合いの襷とは違い、普通の持ち物とは少し違う道具。
それが使えないと、本領を発揮できないポケモン。

この状況で、このバトルで、そのポケモンを使うことは大きな賭けであるのと同じであった。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.57 )
日時: 2018/12/10 17:29
名前: ガオケレナ (ID: 40Xm5sOX)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


ジェノサイドは、例のポケモンのボールをポケット内で握ったまま、状況をおさらいする。

バルバロッサの使用ポケモンは特殊な力を得た伝説のポケモン三匹。
トルネロスとボルトロス、そしてランドロス。

その内のボルトロスを撃破。

対してジェノサイドは六匹で構成された手持ちポケモン。

今判明している手持ちはファイアローとゲッコウガ。この二体が倒された。
これから使う予定でいるのは例のポケモンと……

そこで一つ、ジェノサイドは今ある異変に気づく。

(バルバロッサは今、ランドロスを出している……だけど、さっきランドロスはどんな技でゲッコウガを倒した?)

岩の壁を囮にして、ランドロスはゲッコウガを倒した。

その時の技は、'げきりん'だったはずだ。
と、言うことは。

(次のターンも'げきりん'で固定されるはず!交代も許されないから絶対にこの状況は変わらない!ならば、確実にこいつで'カウンター'を狙える!!)

ジェノサイドが'カウンター'を狙うとするならば、あのポケモンしかいない。彼の相棒とも言えるあのポケモンだ。

'モンスターボール'を掲げながらジェノサイドは呟く。

「いっけぇ……コジョンド!」

真上にボールを投げると、中からはスマートすぎる体つきをしているコジョンドが出てきた。
カウンターが確実に決められるという確信を持っての選出である。

(さぁ来いバルバロッサ!そいつへの'カウンター'ならば、確実にランドロスを葬れる!)

勝利を確信したジェノサイドだった。

突如、岩の壁が向こう側から独りでに崩れだした。
見ると、'げきりん'を繰り出しながらランドロスが壁を破壊しながらこちらに向かってきている。

壁が破壊されたことにより、バルバロッサやランドロスの姿、反対側のフィールドまではっきり見えるようになる。

尤も、ランドロスはこちらに向かっているが。

「予想通りだぜ、バルバロッサァァ!」

思わずジェノサイドが叫んだ。
それを合図に、コジョンドにしては不自然な体勢で迎え撃とうとしている。

しかし。

こちらに来ると思っていたランドロスが突然光の輪へと吸い込まれていく。
強引に、ほぼ無理矢理に何らかの力がランドロスを引っ張っているように。

怒りの咆哮を上げながらランドロスが光の中へと消えていく。
と、同時にもう一体の神であるトルネロスが現れた。

「!?」

このトルネロスも霊獣の姿だった。
羽を大きく広げながら威圧する。
ジェノサイドはその威圧に負けじと声を荒げた。

「ちょっと待てよ!'げきりん'を使った場合交代も技の選択も封じられるだろ!何でトルネロス出せてるんだよ!」

納得がいかなかった。勝てるチャンスを失ったのもあるが、技の効果を無視している事に一番納得がいかなかったのだ。

「神を操る存在はこの世に存在しない。だがな、今こうして神の加護を受けたポケモンをお前さんの前で使っているのは誰だ?」

しかし、バルバロッサは動じることなく相変わらず意味不明な言葉を並べるだけだった。

「神と呼ばれしポケモンを、今こうして操っているのはどこの誰だ?紛れもなく私だ。神を操れし者は神の怒りすらをも鎮める。言っただろう?神に死角など無いと。これはただの交代とは違うと」

結局意味がわからず、歯噛みするだけだ。
たとえ'げきりん'を放ったとしても交代が出来るんだろう。
ポケモンのゲームにある「入れ換え」と「勝ち抜き」が混同したものだと捉えればいい。

ここで種明かしをするならば、このコジョンドの正体はゾロアークである。
コジョンドに化けたゾロアークが'カウンター'を決める事でランドロスを倒す予定だった。

だが、その作戦は失敗に終わる。むしろ追い詰められたといってもいい。
ランドロスがトルネロスに入れ換えられた事で'カウンター'は使えない。
むしろ、特殊技主体のトルネロスに'カウンター'がそもそも通用することなく、ダメージを与えられてしまう。
ゾロアークのような耐久が絶望的なポケモンに特殊技が一度でも当てられてしまうと襷も消費してしまう。
つまり、一度でも特殊技に触れてしまうと二度と'カウンター'が使えなくなるのだ。

本来ならばここで交代するのが普通である。
端から見ても相性の悪いコジョンドを交代するだけなので不自然な点も見当たらない。

ジェノサイドがモンスターボールを取り出してコジョンドに向けようとした時だった。
それを逃さんとトルネロスの周囲から暴風が吹き荒れた。

「逃がさんぞ、お前さんのコジョンドを!!トルネロス!'ぼうふう'だ!」

交代のタイミングを奪われた。
絶大な風が周囲に吹き散らされる。
トルネロスが羽を羽ばたかせると、暴風が襲ってきた。

「ぐっ……あっ、……!!」

その暴風はジェノサイドにも降りかかる。
立っていられるのが難しい。こちらも風の籠に巻き込まれそうだった。
体勢を出来るだけ低くして抵抗を押さえる。辺りの砂利がまとめて吹き飛ばされる。彼がいつも被っているハットも飛ばされてしまった。

「くっそ……どんだけ強いんだよこの風!俺まで飛ばす気か!」

本来だったら店の看板や木の枝が折れて飛ばされる程の強さだろう。年に一度は訪れる台風を彷彿とさせた。

いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。うかうかしていたら自分まで飛ばされてしまう。
下手したら樹木一本根本から飛ばされているかもしれない。

あまりの衝撃に目を瞑っていたジェノサイドだったが、思いきって目を開く。

眼前には、竜巻と化した暴風に飛ばされているコジョンドの姿があった。よく見るとまるでインクが溶けているかのようにみるみる内にコジョンドからゾロアークへと姿が戻っていく。

(くそ……作戦が失敗したとか言うレベルじゃねぇ……勝てるかどうかも怪しくなってきやがった……)
不意に風が一斉に止む。

遥か上空からゾロアークが落ちてきた。
襷で体力は残っているからか、立ち上がることはできた。
だが、もう'カウンター'は使えない。

悔しさを抑え、ゾロアークをボールへと戻した。

「残念だったな、ジェノサイド。お前さんのその手はもう見飽きたさ。お前と行動してもう4年だぞ?何度'それ'を見たと思っているんだ。私くらいになれば'どのポケモンが化けているか'など察することなんて容易いことなのだよ」

バルバロッサの強気な声が彼を追い詰める。

今度こそ、ジェノサイドは可能性を失った。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.58 )
日時: 2018/12/10 17:42
名前: ガオケレナ (ID: 40Xm5sOX)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「まだかなぁ……」

佐野は相変わらず窓の景色を眺めていた。
高野がここから飛び出してから二時間が経過した。
相変わらず、変化はない。

「先輩、そろそろ帰る時間ですけど、どうします?」

香流の声だった。
見ると、全員が遊んでいたボードゲームを片付けていて、いつでも帰れる準備をしている。
18時から始まるサークル活動は本来であれば20時に終わる。本来であれば。

「うん……本当だったらもう帰らなきゃだけど、ね。レン君ここから出るなって言ってたじゃん?」

「レンの言葉を信じるって言うんですか?」

強い口調で、迷っていた佐野に言い放ったのは吉川だった。
彼は高野や香流、高畠と石井たちとは違い、今年になって入った大学二年生だったので前者とは違い先輩とはあまりまだいい関係を築けてはいなかったが、それでも佐野とは仲が良かった。

だからこそ、強く言える。

「レンが全部本当の事を言ってるとは限らないっすよね?何か都合の悪い事があるから出るなって言ってるかもしれない」

「それでも……わざわざここまで来て話してくれたじゃん?しかも、ポケモンまで置いてきてさ」

佐野は机の上に置いてあるモンスターボールを眺める。
岡田が勝手に手に取って自身の掌で弄んでいたが。

「全部演技かもしれない。それに、連絡なんて無いんでしょう?それはつまり、逃げたか敵にやられたとか、そういうことも考えられるでしょう?」

「やめなよ、吉川。縁起でもない」

不吉な事を言ったからか、香流も乗じた。たとえジェノサイドであっても、今まで友達であったことには変わりない。彼の不幸は望んでいないというのは全員一致だった。

「うわぁっ!!」

シリアスな空気に包まれた教室から、いきなり間抜けな声が響く。

一斉に全員がそれを見ると、岡田が弄んでいたモンスターボールからポケモンが飛び出していた。
誤って開けてしまったのだろう。

笑い声に近いくらいの高い鳴き声をしながらロトムが勢い良く飛び出す。洗濯機の姿をしていた。

「これは……」

香流はそのポケモンを見て佐野と目を合わせる。普段からポケモン仲間としての共通点から分かることがあるのだ。

「これ、やっぱりレンのロトムですよ。いつもレンはゲームで洗濯機のロトム使ってた……」

「あぁ。皆ゲーム以外でポケモンを使う事はないからのと、これがロトムであることから100%レン君のだって分かったよ」

当のロトムは外に出たのが久しぶりなのか、教室中を飛び回っている。
一通り飛んだ後は窓際の机の上に乗っかり、金色の空を眺めると、唸り声をあげた。ロトムが唸るのは何か不自然に見える。

「ねぇ、香流くん」

佐野がロトムから香流に視線を移す。それに対して香流は「はい」と律儀に返していた。

「レン君の言ったことは本当かもしれない。もしかしたら、このポケモンは忘れたものじゃないんじゃないかな?」

やや遠目から聞いていた吉川が二人に近づきながら「どういう意味ですか」と聞いてきた。

佐野は二人を見ながら続ける。

「レン君はわざとロトムをここに置いてきたんじゃないかな。ガードマン的な役割として。と、言うことは本当に此処が危ないという意味かもしれない」

香流と吉川が互いに顔を見合わせた。二人とも驚いている様子だ。

「じゃあ、これから帰るのは……やっぱりマズいと?」

恐る恐る香流が聞く。佐野は無言で頷いた。その後にそれに、と前置きをした上で話を続けた。

「レン君は普通大事にしてるポケモンは置いてはいかないよ。レン君にとってロトムは大事なポケモンだし、重要な戦力であることは間違いない。だから……。きっと戻ってくるよ。ロトムを迎えに、レン君は。いつか絶対にね」


解散の時刻はとっくに過ぎていた。
にも関わらず、教室から出て勝手に帰る人は一人としていなかった。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.59 )
日時: 2018/12/18 15:25
名前: ガオケレナ (ID: eK41k92p)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


ジェノサイドはトルネロスを前に歯噛みした。

'ぼうふう'こそは止んだものの、敗北の予感は止まない。
ゾロアークをほぼ倒されたことで手持ちにコジョンドが居ることもバレた。
ジェノサイドは基本、戦闘中であるときは手持ちのポケモンに化けることは遵守している。一応のルールでもあるからだ。

(どうする……)

ジェノサイドは苦悩した。
ここで大きな賭けに出るか、バレているコジョンドを使うか、再度体力が1になったゾロアークを使うか。
3つの選択肢が浮かんだが、どれも手ではなかった。どう考えても勝利に直結しない。

そんな時、バルバロッサが低い声で彼の名を呼んだ。

「ジェノサイド、お前さんはこんな状況でも、勝利を考えるか?」

うっせぇ、こっちは今考えてるんだとでも言いたそうな表情をしてジェノサイドはバルバロッサを見つめる。

「私に勝利したら、その後はどうするかとか、色々考えていたのではないか?」

勝った後。
確かにジェノサイドは考えていた。
あいつに勝ったら、全員で基地に戻ろう。お疲れ様なんて言い合いながら飯でも食いながらゆっくり休もう。
それから、友達の元へ行こう。皆にすべてを謝りつつ、憧れていた素晴らしい世界で生きよう。なんて。

「こんな世界から抜け出して、普通の学生として生きたいとか思っているのではないか?」

バルバロッサの言葉に、ハッとした。一気に目が覚めた感覚に陥る。
すると、バルバロッサはそんな彼の思いを汲み取った事に成功したからか、声を上げて笑い出す。

「ははっ!!そんな事など起こるわけがない!そんなものすべて幻想だ!甘い幻想。お前さんは絶対に、一生この世界から逃れることなどできん。死ぬまでな」

「うっせぇな、そんなこととっくの昔に自覚している」

「いや、していないだろうな。だったら、わざわざお前さんは友人に会いに行ったりしないだろう?その為にスケジュールを調整なんてしないだろう?」

見抜かれていた。建前では「俺はジェノサイドとして生きる」と散々言ってきたが、すべて無駄だったようだ。
本音を見抜かれていた。

「ははっ!すべて無駄だ。この世界、そしてお前は深部ディープサイドの人間だ。さらにお前はその深部の頂点に君臨する。私はそんな事認めたくはないが世間ではそう認知されている。と、言っても深部のな」

深部の人間。一番言われたくない言葉だった。
組織が渦巻くこの世界の一員。それになってしまったからには安易に抜け出すことなどできない。今更そんな我が儘は通用しないのだ。

「だが安心しろ。私がお前さんを救ってやる」

急に口調が変わった。子供をあやすような、優しい声だ。

「私が今日殺すことでお前さんを救ってやる。そして私がこの世界の頂点となり、神世界を作り上げるのだ」

腕を広げながら高笑いするその光景にジェノサイドは再び怒りを覚える。

意味不明なオッサンのせいで'あいつら'に被害が向くのに納得できない。

「ふ、」

あまりの怒りに唇が震える。ポケットの中の手までも震えていた。

「ふっざけんじゃねえぇよバァルバロッサァァァァ!!!!!」

思いきり叫ぶと同時にボールを力一杯投げた。

「絶対に勝つ。アイツらを守る。その為にお前を殺す!!」

迷う暇などなかった。
コジョンドでもゾロアークでも、大きな賭けでもないまた別のポケモンを、ボールを選ぶ。

空に舞ったのは、暖かい色をしたネストボール。

「頼むぞ……エレザード!」

ジェノサイド4体目のポケモンは、エレザード。
軽いその体はトン、と地面へと着地する。

「エレザード……お前さんがよく好むポケモンだったな」

バルバロッサは静かにそのポケモンを見つめる。

バルバロッサは長い間ジェノサイドと行動を共にしていた。そのため、行動パターンも幾つか予想する事が出来る。

対して、ジェノサイドは。

「うるっせぇ!もうこいつしか居ねぇんだよぉぉ!」

半ばヤケクソ気味であった。


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