二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.360 )
- 日時: 2019/05/14 17:57
- 名前: ガオケレナ (ID: sCyn8lHK)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
大会会場から少し離れた、バスターミナルとは真逆の位置に置かれた駐車場に雄叫びのようなサウンドが響く。
ガラガラに空いたそこに、夏の夜のような色をした真っ青のスポーツカーが入ってゆく。
ひと昔かふた昔前に流行っていた車だった。今となっては珍しいモノ程度でしかないが。
「あのなぁ……今更言うのも遅すぎるけどよぉ……」
その車の運転手であり持ち主である男が鬱陶しそうに言う。
「何でテメーが乗ってんだよミナミ……」
「え?もしかしてダメだった?ごめんね、今から靴脱ぐよ」
「土足厳禁とかじゃねぇよ!しかももう着いてるしな!」
4人乗りの雨宮の車からまず降りたのは旧ジェノサイドのメンバーにして現赤い龍のリーダー、ミナミ。
次いで助手席から降りたのは彼や彼の仲間であり、ルークと親交のあるモルト、運転手の雨宮が降りた後に、彼の真後ろに座っていたハヤテがアスファルトに足を付けた。
「ウチらも勝ち続けているとはいえ、あと2日だもんねー。少しは練習しておかないと」
「だからって俺の車で来るこたぁねーだろ」
「いいじゃない。そこにアシがあるのだから」
「だからテメーって奴はトコトンムカつくなぁ!!おぉん?」
「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ雨宮さん。たまには良いじゃないですか!4人でドライブと言うのも」
あまり話をしない癖に畏まった話し方をするハヤテがいるせいか、それまで募っていたストレスや敵意がその時限定で若干薄まる。
まぁいいや、とだけ吐き捨てた雨宮はロックをすると車から離れた。
平日であり、参加者の大半が学生との事だけあって駐車場は観客のものを除くと空きだらけであった。
「お前のメンバーって、あとは確かケンゾウとか言うのが居たよな?そいつはどうした?」
「ケンゾウは今日は用事があって来てないの。だから今日はハヤテと特訓かな?」
「僕では練習相手になるかどうかも分かりませんけど……」
「観る方が楽しいだろうなって思って初めから参加しなかったけどやっぱり戦いたくなるよなぁ!とにかくルークは元気でいるかなぁ?」
「賑やかなことだな……」
はぁ、とため息をついて雨宮は歩く。
はしゃぐ彼らと、楽しそうに歩く周りの学生たち。
深部の世界では考えられないほどの平和がそこにあった。
(思えば、ジェノサイドの野郎が負けてから奴の人間が赤い龍として再結成してからこんな感じだよな……?つまり、それはジェノサイド本人が争いを産む原因って事だよな……。まぁ、深部最強だから当たり前っちゃ当たり前か。害悪でしかねぇけどな)
などと考え事をしている雨宮の隣を、知的でとっつきにくそうな少女がすれ違う。
雰囲気から多少の違和感を感じ取った彼だったが、左目だけを動かしてその女をほんの少しの間追ってはみるものの、その程度の興味だったのか特に何もせずに視点が元に戻っていく。
「オイ、」
雨宮は、勝手に色々な話で盛り上がっている3人に対して問いかける。
それに唯一反応したのはハヤテだった。
「練習するとか言ってたが何処でやるつもりだ?あまり面倒だと勝手に帰るからな」
「試合会場の後ろにあるバトルタワーですよ。そこにトレーニングルームがあるので」
「はいはい、どーぞご勝手に」
ーーー
「いっっ……けぇぇぇ!!ワルビアル!'ストーンエッジ'!」
東堂の強い叫びに呼応して、彼のポケモンであるワルビアルが鋭利な石の刃を生み出し、射出する。
相手のポケモン、クリムガンに幾らか直撃するもそれだけで倒れるほどヤワではないようだ。
彼らの本来の作戦である『本気を出さない選出』を、ここに来て東堂は無視をする。
純粋に自分の力で育てたポケモンで本気で挑みにかかるつもりのようだ。
「ねぇねぇ〜、東堂のヤツ……」
「分かっているわ。キー君にはあえて自由にやらせる。此処で無駄に負けるのも嫌でしょう?」
「そうだけどさ〜……」
「大丈夫。キー君は自分で育てたポケモンを使わせるのならば強いから」
吉岡は多くの不安を抱きながら、フィールドに立つ東堂と彼のポケモンワルビアルを席からじっと見つめる。
"負けるかもしれない"とか、"敵に主戦力のデータを取られる"とか、そういった類のものではなかった。
確かにそれは1つの不安要素として抱いてはいたが。
「あいつ……す〜ぐ油断するから……」
吉岡の懸念通り、相手のクリムガンの'へびにらみ'でワルビアルは忽ち体を痺れさせる。
片膝をついて思うように動けない所を今度は'げきりん'で仕留めようとする。
鈍足ながらも走り、怒りのパワーをぶつけようと力を溜めた拳を振るおうとしたその時。
負けじとワルビアルも'はたきおとす'を放つ。
叩かれて落ちたクリムガンの"いのちのたま"が転がった。
対戦相手の学生は驚きつつ舌打ちをしたようだったが、一々相手の様子を見るほどの余裕を今の東堂は持っていない。
ここで決める。それが叶わなくば次点で決める。
東堂の戦略は相手の'げきりん'を挟まれる形ではあったが達成できたようなものだった。
辛くも怒りの乱撃に耐えたワルビアルは、次点となる予定だった'じしん'を放つ。
会場を揺らし、振動とエネルギーでダメージを受けた相手のクリムガンは、遂に倒れた。
それまでの蓄積ダメージと"いのちのたま"による反動によって。
「いよっっしゃぁああああ!!!」
これでもかと叫び、喜びを体で表す東堂。
熱くなるバトルを見て燃え盛る観客たち。
学生達で組まれた吹奏楽の応援団による演奏。
"祭典"がそこにあった。
人間的にはまだ若く未熟な学生たちが主体となって次世代を担う。
それを象徴する祭りが。
「派手に喜んでるよ東堂のヤツ〜……」
「吉岡の言う通り、調子に乗って油断しなければいいけどね」
冷静にバトルを見つめる仲間の2人であったが、その後の戦いの展開は読み通りであったのは言うまでもない。
ーーー
「はあぁぁぁーーーい、リッキーでぇぇぇーーす!!」
ミナミらがバトルタワーに向かう途中の事だった。
ドームシティの敷地のど真ん中にして会場であるバトルドームの前に、どこかで聞いたことのあるようなフレーズを言い放ってはしゃいでいる男を見かけた。
その男はマイクの前で、まるで動画投稿サイトにおける実況者のようなモノマネをするような調子で今自分がいる場所と、大会の説明を行っている。
傍から聞いていてそんな風に思えた。
「ねぇ、なにあれ」
「……本気で言ってんのか?オマエ」
「何処かで聞いたことのあるような声とフレーズな気がするのよねぇ……」
「……だから本気で言ってんのか?オマエ」
「あの人の姿もどこかで見た事がある気がするし……でも何でマイクの前で喋ってんだろう?なにかの実況?」
「……マジの本気で言ってんのか?オマエ」
本気で気付いていないミナミと、本気でそのワードを彼女に対して叩きつけるようにして言う雨宮。
そして、すべての状況を知った上で遠くから眺めつつニヤニヤしているハヤテとモルト。
だが、いつまでも天然でいるミナミに、それに対して異常なまでにイライラしているが故に決して答えを言おうとしない雨宮のやり取りを見て収拾がつかないと感じ取った2人は駆けながらやや興奮気味にこう言った。
「何言ってんですかミナミさん!!あれ、リッキーですよ!」
「リッキー……?」
「ほら!いつもバトルの解説をしているDJのリッキーですよ!どこかで聞いたことがある声だと思いませんか!?」
「………………。あーーーっ!!!大会実況者の声じゃん!!!」
「だから、さっきからコイツがそう言ってんだろうが!」
雨宮が、それでもとぼけているミナミに対しハヤテをビシッと指しながら叫ぶ。
それなりの大声だったはずだが、当のリッキーはそちらにマイクを向けることなく、そこから1番近い飲食店へと入っていった。
どうやらラジオ番組の実況のようであった。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.361 )
- 日時: 2019/05/16 14:48
- 名前: ガオケレナ (ID: cqX79mXG)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
試合を終えた相沢と吉岡は観客席へと移動し、これから始まるであろう試合を待ち侘びていた。
隣に1つ席を空けて。
「え〜っと……。これから始まるんだよね?高野さんの試合」
「そのはずだけれどね……さっきのアナウンスでも言っていたけれど、設備調整のため少し時間かかるってさ」
「う〜ん……早く始まらないかなぁ。改めて高野さんの戦いぶりを見てみたいんだけど。……あと、東堂のヤツ来るの遅くないか〜?」
「悪ぃ遅くなっちまった!席ずっと探してたよハハハ!」
と、ある意味絶好のタイミングで響いた仲間の声が。
「何やってんだよ〜……。ほら、席空けといたから座りなよ」
と、言って吉岡は自分のリュックを隣の座席から下ろすと彼の為の椅子が出来上がる。
「サンキューな」
と言いながら東堂も座り始めた。
「結局あの後負けちまってすまんな!でもあの後お前が勝ってくれて助かったわー」
「今の段階で負けてるようじゃ、この先が思いやられるわ……1週間の内に特訓ね」
相沢がため息混じりに呟く。
試合がまだ始まる気配は無かった。
ーーー
「こんな事ってあるのかよ……」
「何してんのよ!!とっくにアナウンス流れてるのよ!?もう諦めて早く来なさい!」
高野は頭を抱えていた。
と、言うのも彼とメイ、そしてルークで談笑しながらバトルドームへ向かっていた途中の出来事だった。
ここ最近ボールから出さないでいたことが災いして、悪戯好きのゾロアが自由と解放を求めて勝手に飛び出したと思ったら、何処かへ行ってしまったからだ。
今、彼らはそのゾロアを探しに右往左往していたのだった。
「もういいだろ。こんな下らねぇ事に時間費やすようならアイツ残してさっさと行くぞ」
「あー……悪い、そうしてくれると助かるんだが」
一連の流れに全く納得出来ないメイは顔を赤くし、何か言いたげだったが彼女の頭の中の情報量が多すぎて結果何も言えずにいる。
無言で2人は高野から離れると全速力で試合会場へと駆けて行く。
「はぁ……。さて、と」
しゃがみこんで建物の隙間を覗いていた高野はその合図で立ち上がる。
そして、北西に続いている細い道から、その先の、大貫の工房がある方向の道から、彼のゾロアを大事に抱えながら1人の少女がやって来る。
「すまない、助かったよ。助かったけれど……」
「よりにもよってお前かよ、と言いたげな顔ね」
デッドラインの鍵。
とっつきにくそうで彼のような一般人では話が通じなさそうな一風変わった少女。
質素な服装と軽く束ねたポニーテールと掛けている眼鏡から漂う知的で且つクールビューティといった雰囲気から、つい話をする事すらも何処か躊躇っている。
だが、今回は彼女からその壁を破ってきた。
「歩いていたら突然この子が走ってくるんだもの。それに、この子と目が合ったらこうしてみたくなるわ」
「ソイツかなりのいたずらっ子でな……。命令も無しに急にボールから出たりするんだ」
「きちんと育てる事ね」
「あぁ。だが今回ばかりはコイツを褒めたいところだよ」
何故か高野はゾロアを受け取る為の手を差し出そうとしない。
そんな異変に彼女が気付いた時には、次の単語が襲いかかって来た。
「こうして、"デッドラインの鍵"と話が出来たんだからな」
その刹那。
彼女の目の色が変わった。
目の前に居るのは自身のポケモンに逃げられて捜索するも、見つけられずにいる哀れなトレーナーから、"知られてはならない事を"知っている危険人物へと映りが変わる。
彼女は対象者を排除せんと、視線をポケットに移す。
しかし、両手がゾロアのせいで塞がっていてエレキブルのボールを出せずにいる。
怒りと驚きを混ぜたような眼差して高野を睨んだ少女はゾロアを放り投げると、ボールの入ったポケットへと手を忍ばせる。
だが、高野はその隙を見逃さない。
宙を浮かんでいたゾロアが、そのままニドキングへと変身すると地面へ着地し、彼女の手を掴んだのだ。
「ちょっ……離して!!」
「俺も手荒な真似はしたくなかった……。だが、どうしても俺はお前と話をしなくてはならないんだ」
「…………ぅっ、……このっ……!」
強く睨みながら手をばたつかせようとするも、たった1匹のポケモン、それも、ゾロアの腕力にすら適わない。
そろそろ蹴りでも入れようか考えたときだった。
「俺はジェノサイドだ。まぁ、元だけど」
少女の動きが止まった。
その顔から、怒りといった感情を抜き取った表情で彼を見つめながら、
「それ……本当……?」
とだけ呟く。
「去年の12月18日。俺は香流慎司という一般トレーナーに負けた。決まりに則ってジェノサイドは解散。俺は深部とは離れた事で一般人へとなった……。んだが、それでも証拠が必要か?この事実に加えてゾロアークでも出せばいいのかな?」
「そんな人間が……何の用!?」
「知りたいんだよ。お前が何者か。今、俺の周りで何が起きているのかをね」
高野は1歩進んでニドキングの肩辺りを叩く。
もういい、という合図のつもりだ。
その場で一回転するとゾロアは元の姿へと戻り、高野の背後へと走り回った。
「……ジェノサイドとデッドラインには何の関係が……?」
「何も無いよ。ただ、勝手に"次期ジェノサイド候補"なんて呼ばれていると気になるだろ」
「たかが一般人が……踏み込むんじゃないわよ」
「まぁ、普通はそうだよな。でも、そういう訳にはいかなくなった。……さっき言った香流という俺の友人が何者かから攻撃を受けた」
その言葉に、少女は一瞬だけ目を見開く。
だが、流石に高野はそれだけで彼女の感情まで読み取ることは出来なかったようだ。
「……私とどんな関係が?」
「はっきり言って無いだろう。だが、俺は個人的にこう思った。仮にもデッドラインを名乗っているんだ。お前の背後に、議員の1人くらい居てもおかしくないんじゃないかな、って」
「……」
「どんな形であれ今回の事件、議員が絡んでいるんじゃないか。そう思ってな。まぁ確かな証拠は無いし俺の勝手な想像だけどな。それで……」
「それで、議員が付いているであろう私に接触してきた……と?わざわざ私が通るタイミングで意図的にゾロアを放してまで」
「あからさま過ぎたのは悪かったと思っているよ。……でも、こうでもしない限り真相には近付けないと思ってな。……俺にも大事な人たちってのが居るんだよ」
何処からか風が吹いてきた。
大貫の工房の近くに、林のような木々が生い茂る場所があったはずだ。
そこからだろうか。風に揺れて葉と葉が触れる音が微かに聞こえた。
「私にも……大事な人たちが居た時があった……」
突如、少女が話し始めた。
向こうから自分の話をするのは珍しい、と思いながら風に掻き消されないよう、聴く事に意識を集中させる。
「毎日平和で楽しかった……。皆と居てよかった。そんな風に思う時が確かにあったわ」
それでも、彼女が何を伝えたかったのか、まだ分からない。
引き続き意識を傾けていた高野だった。
「おやおや、急に姿が消えたと思ったら……。こんな所に居たのかい?」
高野から見て遥か前方。
つまり、大貫の工房のある方角から、以前何処かで聞いたはずの声がした。
「あまり離れると心配するんだが……おや?君は……」
片平光曜。
この大会の開会式で、参加するすべてのトレーナーが見て、聞いていた議会の人物。
そして、その登場は、彼の予想が的中した瞬間でもあった。
しかし、
予想外の出現に、高野は目の前の彼女から注意を逸らしてしまうこととなる。
結果。
高野と少女の間に割って入ってくる形で現れたエレキブルの'かみなりパンチ'に、彼は殴り飛ばされることとなってしまった。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.362 )
- 日時: 2019/05/22 18:50
- 名前: ガオケレナ (ID: Se9Hcp4Y)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
突然吹き荒れた風に、メイは肩をびくつかせた。
この暑い真夏において冷たい風というのは心地良ささえも覚える。
しかし、心に余裕が無い状況に置かれるとあらゆる予期せぬ自体にいちいち過剰に反応してしまうものだ。
「遅いわね……」
メイの視界にはバトルフィールドに立つルークの姿が見える。
あと1勝か2勝かで本選出場決定となる大事な試合に今、彼が臨もうとしている。
せめてこういう試合には3人全員揃っておきたい。
そう思っていたメイだったが、高野が来る気配が無い。
試合はたった今始まろうとしていた。
ついさっき2人が到着した、というのもあったが。
対戦相手は学生のようには見えなかった。私服だからだ。
だが、大学生というのも有るし、もしかしたら深部の人間の可能性もある。
固唾を飲んで静かに見守る中、試合開始を告げるブザーが鳴り響いた。
ーーー
殴られた左頬と肩を中心に、体が痙攣する。
高野は土の上に横たわりながら自身の体の異変を感じ取る。
「やめるんだ」
「でも……っ、!……こいつは……」
「いいから、今はやめておくんだ」
敵意を周囲に迸りながら続けて命令しようとしたデッドラインの鍵と呼ばれた少女に、肩を優しく叩いて平静を促そうとする片平。
彼の眼差しは細く、強く、鋭いものだった。
片平はゆっくりと、倒れている高野に近付きながら問いかける。
「あまり嬉しくない情報を聞いてしまったねぇ。君、元ジェノサイドなんだって?」
「……」
立ち上がりたくとも立てない。
話したくとも口が思うように開けない。
しかし、声だけは聴こえる。
もどかしさを噛み締めながら高野は黙って聴いていた。
「まぁ……それは知っていた事だし改めてハッキリと確認できただけでいいのだが……。そんな君が彼女に何か用でもあるのかな?……それとも本当に用があるのはこの私とか?」
「……、……だ」
「ん?何か言ったかな?」
「……オ、れ……は、……お前、に。……」
「これはちょっと強く殴り過ぎじゃないかなぁ?もう少し手加減してあげても良かったんじゃないかな?」
「……これでも手加減した」
頭を掻きながら溜息をつく片平。
つくづく事は上手く運ばないばかりだ、と小さく独り言のように呟いた。
そうしている内に、痺れが無くなってきたのか高野が起き上がった。
まだ気だるさがあるのだろうか、その場で立たずに座り込んでいる。
「俺に用があるのは……お前だ……」
と、高野はまだ震えが残る手で片平を指した。
「やっぱりね」
「俺の友人が……突然襲われた」
「さっきの話のことかい?それならさっき聴いたよ」
「だったら……なんか言えよ」
「うん?」
「アイツの襲撃には……テメェら議会が、絡んでいるんだろ……?一体誰の命令だ……。そんなにジェノサイドを倒した男が邪魔か?だったら……」
「もういい、もういい。君がそこまで被害妄想激しい人だとは思わなかったよ。まぁ、これまでの経歴考えたら変ではないか。でもね、いいかい?私は……いや、実は多くの議員が、君が君のお友達に敗れて深部を離れたという事を知らないんだ。知っているとしたら……塩谷議長くらいじゃないかな?とにかく、」
塩谷利章。
久々にその名を聞いた気がした。
下院議長にして上院議員の1人であり、様々な場面で彼を助けてきた、議員の中では珍しく彼等深部に対しても優しい人物だ。
だが、引っ掛かる。
何故この場面でこの男がその名をピンポイントで挙げたのか。
議長だから何でも知っているという先入観の表れなのだろうか。
「とにかく、私は君の事情なんて知らないし、その香流慎司とかいう人も知らない。君の予想は鋭いのだけれど、怪しいものは全部議会のせいという固定観念だけはやめて欲しいね?」
「じゃあ……」
「?」
「じゃあ何で襲撃者は香流の事を知っていてアイツを襲えたんだよ?奴は深部とは無関係の人間だぞ!?」
「だから……、私にそれを聞くなって。何も知らないんだ。それとも、君はこう言いたいのかい?ジェノサイドを倒した男の情報を、議会という名のツテで入手した人がいる、と」
「……でなければおかしい」
「いやぁおかしくは無いね?情報なんて幾らでも手に入れられるだろう?君とその人の戦いに目撃者が居たとしても不自然ではないだろうし、その事実を知っている者からルートを辿る形で第三者が手に入れた、とか。ほら、パッと思い付いただけでもこんなにあるじゃないか?」
「お前が知らないだけで……他の議員ならば知っている奴だっているかもしれない。議会にとって……、俺がどんな見られ方をしていたか……。それを考えると……、」
「はぁ。分かった。もういい。君と言い合っても何の意味もない事が分かったよ。疑うだけ疑って、何も出来ないのならばそこで諦めた方がいい。だって、君は今"一般人"なんでしょう?」
小さく笑い、見下ろすようにして座り込む高野を眺める片平だったが、その時の高野の視線に異変を感じ取ることまでは出来なかったようだ。
高野は、何か信じられないようなものを見るような目をして真正面を見つめている。
はじめは、片平はそれを自分か、攻撃態勢を保ち続けているエレキブルに対してのものだと思っていた。
しかし、彼が見るのはそれよりも遥か後方。
デッドラインの鍵と呼ばれた少女を無視するかのように通り過ぎ、拳に氷の塊を形作りながら迫ってくるオーダイル。
高野は、そんなポケモンと、そのポケモンの持ち主であろう見知った顔の女子を捉えていたのだった。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.363 )
- 日時: 2019/05/29 08:53
- 名前: ガオケレナ (ID: KcroCul6)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
石井真姫は躊躇しなかった。
同じゼミの友人にして今や同じサークルのメンバーにもなった山背恒平から、大貫の工房の存在を知り是非とも自分もメガシンカを使ってみようかと思いながら見学がてら北川弘と高畠美咲と共に散歩していた時の事だった。
近くで不安を煽るような大きな音がした。
爆心地はすぐ近くのようだった。
高畠も北川もポケモンを所持していないせいで、自分が2人を守るしかない。
考えるよりも先に足が動く。
足が止まった先で見たのは、やはり不安の種でしかなかった。
ーーー
氷の塊を形成しながら力を溜め、エレキブルへと迫るオーダイル。
そこに誰かが制止しようとか、声を上げて中断させるといった間を入れる事すらも許されない。
短く咆哮を上げると、オーダイルは'れいとうパンチ'をエレキブルにぶち当てる。
高野洋平には、目の前に起きている光景が何故に繰り広げられているのかが理解できなかった。
しかし、それは当然の事である。
すぐさまに石井がこのように叫んだからである。
「レンっっっ!!逃げてっ!」
普段のゆったりしている彼女からは想像出来ない程の足の速さを周囲に見せつけながら、石井は高野の前に立ち、オーダイルと共にエレキブルと対峙する。
ここで高野は、彼女が勘違いしていると判明した。
「待てっ……!石井、俺は別に……」
高野が伝えようとした時にはもう遅かった。
2体のポケモンの戦闘が既に始まってしまったからだ。
それぞれのポケモンの拳と拳が激突する。
オーダイルからは氷の破片が、エレキブルからは火花が散る。
石井からも、向こうの少女からも敵意がひしひしと伝わってくる。最早言葉だけで止めるのは不可能だった。
「やれやれ……面倒な事になったな」
片平は感情が篭ってない声色で呟く。
彼は既に高野から離れ、少女の隣へと移動している。
「もういいだろ。終わらせてあげなさい」
片平は隣の少女に呟く。
と、同時にオーダイルの体から多量の水が噴き出した。
石井が'たきのぼり'を命令したからである。
オーダイルは、まるでサーフィンのように勢いのある水の上に飛び乗ると、そのままエレキブルへと突っ込んでいく。
対して、エレキブルは全身に電撃を浴びるとオーダイル同様突き進んでゆく。
'ワイルドボルト'だ。
どうなるかなど目に見えている。
相性の善し悪しがこの戦いの大きな差であるからだ。
石井でもポケモンの相性は知っているはずである。
そして、エレキブルが既に現れていることも知っていたはずである。
だが、彼女はオーダイルを選んだ。
いや、オーダイル"しか"選べなかったのだ。
エレキブルがオーダイルとぶつかり合うと、紙を切る刃の如く停滞と言うものを見せずに容易く貫いてしまう。
オーダイルは頭上遥かに弾き飛ばされ、遂には無防備な石井が視界に映る。
それでも、エレキブルは止まらない。
むしろ拳に小さな稲妻を魅せながら迫る。
その姿に、高野はまたもや戦慄した。
また自分の仲間が傷付いてしまうと。
しかも今度は目の前で。
だが、立ち上がって割り入る時間はもう無い。
ポケモンを出して返り討ちにしようにも、間に合わない。
「やめろ!!デッドラインの鍵!!」
高野は叫ぶ。
少しでも、自分に意識を逸らそうと。
その瞬間、エレキブルの動きが止まった。
恐らく、エレキブルにも直接"デッドラインの鍵"という言葉に反応するように現実で育てられているのだろう。
だからこそ、石井の前で止まることが出来た。
少しでも遅れたら殴り飛ばされていたであろう位置で。
「コイツは関係ないだろ。お前の敵は俺のはずだ。狙うなら……俺を狙え」
立ち上がって高野は石井とエレキブルの前に立って少女と片平を睨んだ。
標的を逸らすには十分な動きである。無防備だからだ。
ドシン、という鈍い音が聞こえた。
オーダイルが地面に叩き落とされた音だ。
「……先に狙って来たのはそっちだけれど?」
デッドラインの鍵と呼ばれた少女は石井を鋭く指す。
石井の表情が見れないのが高野にとって非常にやりにくかった。
彼女は元々意思を読み取るのが難しい人間だったからだ。
尚更彼女の動きが分からなくなる。
しかし、今は不思議と分かる気がした。
それは、自分の今ある立場と恐らく無関係ではない。
「こいつは、ただの勘違いだ」
「へぇ?」
「こいつも香流と同じ俺の友達だ。少なくとも、事実を知っている。だからこその、この行動なんだろう?」
と、言って高野はチラッと振り向く。
案の定石井は「えっ?」とでも言いたげな顔をしていた。
「俺を深部に連れ戻そうとするように見えたんだろう。こいつも"あの戦い"には少なからず関わっている節がある。だからこそお前たちが許せなかった。そういう風に見えたはずだ」
「だとしても……許されないね」
少女の声だと一瞬思ったが、その主は片平だった。
「だとしても駄目だ。きちんと君自身にも見せなければならない。私たちに敵意を向けたらどうなるか。……あの事件に関わるのならばどうなるのかをね」
その言葉に強い殺気を覚えた高野は、すぐさまポケットに手を入れボールを掴むと振り返る。
狙われる。
高野は石井を守る為、絶対に手出しをさせまいと意識を片平と少女から、エレキブルへと向ける。
彼の目が捉えたのは、
「えっ、」
石井真姫のみであった。
そこにエレキブルは居ない。
驚きつつ片平らを確認してそちらを見てみるも、そこに彼等の姿は無かった。
一瞬の内にポケモンをボールに戻し、'テレポート'あたりで逃げたのだろう。
高野は舌打ちをしてその場に座り込んだ。
ひどく疲れた。
見ると、やっと北川と高畠がこちらにやって来たようだった。
高畠が石井に「大丈夫!?」と声を掛けている。
本当に2人は仲がいいなと思いながら高野は、3人に対してこれまでの経緯の説明の準備と、疑惑から確信へと変わった"それ"の狭間で苦悩する。
それ故の、ひどい疲れであった。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.364 )
- 日時: 2019/06/03 16:15
- 名前: ガオケレナ (ID: LaYzdlO4)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
ルークはまず、頭の中で状況整理をしてみる。
今自分が立っているのは大会会場であるバトルドーム。
そのフィールド。
自分の前には対戦相手が立ち、今にもポケモンを繰り出そうとしている。
今自分が行おうとしているのは、"ポケグラ"の"予選"であり、状況としてはあと2、3回勝てば予選突破となる。
何故なら、1グループにつき決められた勝利回数を重ねることで予選を突破出来るからだ。そこにトーナメントといった形式はない。
予選は2対2のポケモンバトル。1グループ2勝すれば1つの試合が決まり、終わる。
(そして今……この会場に居るのは俺とあの女のみ……。ジェノサイドのクソ野郎は此処には居ねぇ……。だったらどうするか……)
ルークはポケットから1つのボールを取り出した。
「手っ取り早くこの試合を終わらせるなら……俺1人で2回勝つだけでいいんじゃねぇかよぉ!?」
叫び、放り投げた。
ルークのポケモンが現れた時、会場は沸いた。
サーナイトが降臨した。
対して相手が繰り出したのはフシギバナだった。
相性だけで見ればこちらの分が悪い。
だが、ルークには苦痛が感じられない。
確信している強い気持ちが、勝利に繋がる想いがそこにあるからだ。
「ゲームでの対戦環境ってのは退屈だ……。対戦に使えるポケモンと、そうでないポケモンとの間に大きな差があるからだ。余程の物好きでない限り、メガサーナイトなんてモンは使いはしねぇよな?他に有用なメガ枠があるからだ」
対戦開始を告げるブザーが鳴り響く時、ルークはメイに視線を一瞬向けた。
今までの作戦はもう使わない、という合図のつもりだった。
「だが、この世界では別だ……。ポケモンが実体化する以上、それまでの平面的なバトルは突如として空間的なバトルとなる。そこには、それまでの大きな壁は無い。必要なのは1つのポケモンのポテンシャルと、トレーナーに求められる頭脳、判断力、経験そしてポケモンのポテンシャルを引き出すための魅力そのもの……。それさえあればこの世界ではキノガッサでもバシャーモに勝てるってなぁ!!魅せてやるよ、俺とサーナイトの"強さ"ってヤツをよぉ!!」
ルークの首に巻かれているチョーカーが輝き出した。
呼応するかのようにサーナイトも光に包まれる。
やれ。
という、彼の命令と同時にサーナイトは動き、凛々しい姿へと変わると、相手のポケモンへの攻撃を開始した。
ーーー
「香流が……狙われる?なんで?どうして?」
「俺に勝っちゃったからだ」
手頃な太い木の幹に寄りかかりながら、高野は石井、高畠、北川に今日起きた事の説明を始める。
どうやら、3人は香流が怪我をした事自体まだ知っていなかったようだ。
「あの日、お前ら2人も見ていたから知っていると思うけど、香流と俺が戦ったよな?あれ自体にも意味があったんだ」
「意味?ポケモンバトルって遊びとかじゃねぇの?それで物事が決まるって簡単な世界だなー」
如何にも、一般人らしい北川弘の言葉だった。
高野もこの度に思うが、つくづく一般人と深部の溝はかなり深い。それ故の"深部"という名なのだが。
「まぁー、ポケモンなんて使い方変えれば誰でも持てる安価な兵器だからな。裏少しでも覗いてみれば死体なんて幾らでも転がってるさ」
「レン……北川の不安を煽るのはやめて」
高畠に釘を刺され、言葉に詰まる高野。
一応事実ではあったのだが、説明する為の言葉のチョイスに戸惑ってしまう。
「つ、つまりだ……。俺が深部に足突っ込んだのは5年前の2010年。まだ高校生の時だ。それからずーっと戦い続けてた結果、俺はいつしか深部最強なんてのになっちまった」
「ええっ!?先輩や香流との対戦ではいつも負けてるイメージしか無かったのに!?」
北川は、自身の記憶の片隅にあった、サークルの時間内に行われていた光景が蘇った。
かつて、高野が今は卒業してしまった先輩や、香流とゲームで対戦していた過去。
彼は傍からしか見ていなかったので、詳しくは覚えていないが、よく見たのは高野が対戦に負けて悔しがっていた場面だったはずだ。
「最強なのに……負けてたの?」
「……も、問題なのはゲームと現実の戦略の違いだ……。わざと負けた時もあったし、新しく育成したポケモンの実験として負けざるを得ない対戦もしたこともあった。でも、それはどうでもいいんだ」
問題なのは、現実世界において、高野がジェノサイドとして香流慎司と戦ったこと。
その戦いには深部のルールに則っていた事。
「深部の世界には確かに強さを示すピラミッド……ヒエラルキーがあった。俺が頂点に立つ強さの序列があった。そこに、香流が踏み込んだ、と言うことはだ……お前でも分かるよな?」
「香流が……最強のレンに勝っちゃったって事だよな……?それってつまり香流が最強になったってことだよな?」
北川の言葉に、高野はそういう事だと呟きながら何度も頷く。
「ちょっと待って?それって香流が襲われる理由になるの?強かったってだけでしょ?」
またもや、一般人らしい高畠の声だった。
認識の違いが何度も見れるのは面白い反面不安材料の1つだと高野は口には出さずとも思うだけに留まらせる。
「いいか?深部の世界にも過激派ってもんが存在する。俺も嘗ては、"最強であるジェノサイドを直接倒して俺が最強になる!"っていう考えを持つ奴らに何度も襲われた。実際そういう奴は今も存在する。そして香流は……そんな過激な思想を持つ奴に襲われたんだ」
「そんな……」
「最強に勝った香流を倒して自分が最強になる……ってことか?ひでぇ……」
絶句する3人を視界の片隅に入れながら高野は改めて決意する。
その為に立ち上がる。
「俺は、香流の安全を守るためと、同じ事を繰り返させないためにこれから動く。だから幾つかお願いがあるんだが、いいか?」
高野は彼等に指を3本立てたスリーピースを見せながら続ける。
「1つは、この事は秘密にしてほしいこと。一応表向きでは俺は通りすがりのトレーナーに襲撃されて負けた事になっていて、香流の存在は秘匿されているんだ。真実を知った過激派に香流はやられた、ということ。つまり、今話したコレは、ただでさえ一般人であるお前らが知っているという事がかなりヤバい。だから秘密にしておいて欲しい」
「……あとの2つは?」
「2つ目。さっきの石井の行動がそうだったけれども、如何なる理由であってもそちらから深部や議員にバトルを仕掛けるのはやめて欲しい。はっきり言ってかなり危険だ。香流の次に狙われるかもしれない」
「悪かったわね……攻撃しちゃって」
石井はバツの悪そうな顔でそう言う。
「いや、正直あれは助かったし嬉しかったよ。あの時渡したワニノコをきちんと育ててくれた事に。でも、あれで石井も分かったと思う。危ないって。最後に3つ目」
高野はそれまでの会話をぶった斬る形でそれまでの話を続ける。
説明の度に折った指を戻しつつ。
「今後俺が起こす行動に深入りしないでほしい。傍から見れば深部の人間のような行動をするかもしれんが、騒動を鎮めるためだ。そっちはそっちで、1人の学生としての生活を行っていてほしい」
「つまり、レンには関わるなってこと?」
「まぁ……そういう事だな」
「はぁ〜……」
高野の言葉を聞いて北川は深くため息をついた。
それにどんな想いが込められているのか、高野には分からない。
「分かったよ。その代わり気を付けろよ」
やれやれと言った表情で北川は高野を見つめ、肩を叩く。
引き止められるか拒否されるかと思った高野の予想を裏切る形ゆえ若干安心した高野は、今度こそ迷いを断ち切る事が出来た。
そんな心境だった。
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