二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.330 )
- 日時: 2019/02/20 17:13
- 名前: ガオケレナ (ID: 9hHg7HA5)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
もう一つの用事である、豊川の"メガイカリ"の受け取りに大貫の工房にやってきた高野と仲間たち。
豊川は受け取る際、「こんなにもふざけた注文はお前が初めてだ」と、正式に変態さん認定を受けながらそれを首に掛けた。
見た目に反して重くはなさそうだった。
ネックレスが多少大きくなった程度のようだ。
「満足か?豊川」
代わりに代金を払った高野が面白おかしい物を見ながら尋ねる。
当の豊川は割と喜んでいるようであった。
常にニヤニヤしているからである。
「そうだよ……こういうのだよこういうの!普通じゃつまんねぇって!」
「性癖はどうであれ喜んでくれるなら俺ァ満足だ」
「今回もありがとうね、お爺ちゃん」
メイは最後にそう言って扉を閉めた。
今度こそ個人レベルでの準備を終えた彼らは大学に戻るため、大貫の工房を後にする。
エレベーター方面を歩きながら高野は、何故かついて行こうとするメイにこう言った。
「お前確かこんな事言ってたよな?俺の安全を保障する的な事。それ撤回していいから代わりにコイツら守れ」
言いながら豊川と香流を示す。
メイは「別にいいけれど……」などと言うのみだ。
ルークは既に帰ったのか姿が無かった。
未だに稼働していない反対方向のバスターミナルを眺めながらメイは、
「それじゃあ、気をつけてね」
「なーにが気をつけろだ。既に片足が沼に嵌ってるっつーの」
「だからこそ、よ。決して油断しない事」
つまらなそうに高野はため息をつく。
とにかく面倒だった。
すべて終わったと思ったら最後の最後で仕事が増えてしまった事に。
一波乱起きる予想はしていたが、既にその片鱗を見てしまったのが彼にとっては精神的にくるものがあった。
ーーー
「どうする?誰がいる?」
1番気にする事はやはりもう1人の仲間についてだった。
明日までに用意しなければ香流と豊川は参加出来ない。焦るのも無理はなかった。
「吉川はピカチュウが強いだけだし、石井なんかはストーリーすらも終わってねぇから話にならねぇな。最悪佐野先輩あたりを呼ぶしかないかぁ?」
「それは無茶だろ。もう働いているんだろ?」
豊川の言う通り、彼等の先輩は大学卒業後それぞれ就職し、既に働いている。
大会には顔を出すかもしれないが、参加者として呼ぶのは少し無謀にも見えたのだ。
「とりあえず……学部の仲間や、過去作だけならやっている岡田を頼るしかねぇ。かな……」
「じゃあ同様に吉川と石井にも協力してもらおうよ!周りにポケモンやっている人が居るかどうか探してもらおう」
香流はそう言って提案する。
幸いにも明日はサークル活動がある日である。
間に合えばサークル中に顔合わせが出来るかもしれない。
これからやる事が見えてきた。
吉川と石井、そして岡田に声を掛けて仲間を探してもらう事。
3人に共通していた事は、それぞれの講義は二の次だったことだ。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.331 )
- 日時: 2019/02/21 09:11
- 名前: ガオケレナ (ID: 9hHg7HA5)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
時空の狭間
「誕生日おめでとう!」
友達から祝福された16の誕生日。
彼の目の前には、中学時代唯一の友達と、例の天使と、天使の友達の3人がいた。
後悔と悲しみと、少しの期待を持って迎えた高校の入学。
それまでの友達との日常を犠牲にして手に入れたものは決して良いものではなかったというのが彼の感想だった。
まず、抱いたものは"恐れ"。
周りの人間は知らない人のみ。
会話は一切成されていない異常な空間。
入学初日に見た光景がそれだった。
他人があまり好きでない彼は恐ろしさのあまり逃げ出したくなった。
今この場で窓から飛び降りたくもなった。
恐れと不安を抱きながら過ごした新たな環境ではあったが、それでも手放さないものがあった。
それまでの友人との交流である。
2010年の秋から冬にかけた境にあたる時期。
彼の誕生を祝う声があがった。
彼の友人は相変わらず面白おかしい性格で、天使の友人も明るく朗らかで、そして天使は相変わらず美しく輝いていた。
彼らは何ひとつ変わっていなかった。
自分がひどく臆病になった位だ。
『どう?高校生活半年過ぎたけど』
『勉強が難しくて忙しいかなぁ~』
『よっしーは?』
天使が中学の頃から呼んだあだ名で自分を呼ぶ声がした。
何を言えばいいのか戸惑いながら、
『い、忙しい……かな』
それだけしか言えなかった。
春に「決して裏切らずに大事にする」と約束した間柄であったにも関わらず、彼はこの時親友たちに隠し事を、嘘をついていた事を心の中では分かっていたものの、口に出そうとはしなかった。
自分は既に"深部"と呼ばれる環境に身を置いてしまっている事を。
自分が既に何度も命を狙われ、時には死にかけた事もあったことを。
ひたすら黙り続ける。
天使の泣く姿など見たくないからだ。
だが、この時彼も知らなかった。
天使の身に、彼女の環境に異変が起きていた事も。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.332 )
- 日時: 2019/02/21 10:25
- 名前: ガオケレナ (ID: 9hHg7HA5)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
Ep.4 夏のはじまり
「はじめまして。山背 恒平です」
火曜のサークル活動時間。
自身の学年を3年生として突如現れたその男は「新しい友達が欲しいから」という理由で今日やって来たとの事だった。
それは嘘ではない。
だが、本音は別に存在していた。
「僕は、吉川と石井と同じゼミ出身なんですけどー……」
この大学では3年生になると"ゼミ"と称したクラス単位の活動がある。
当然講義内容はゼミによってどれも違うのだが、山背と名乗った男はそのゼミで一緒だった石井と吉川と交流が少なからずあった。
そして、3人の共通点も。
「なんか、ここはポケモンのサークルって聞いたんですけれど……」
「違う!違うよ!!誰デマ教えたの!お前か、吉川!!」
今年からサークルの部長となった高畠が叫ぶ。
そして、あらぬ疑惑を吉川にぶつける。
高野らの目的は今度こそ達成された。
石井と吉川に事の顛末を説明すると、「ガチ勢が1人居る」とのこと。
それが山背恒平だった。
とても優しい顔つきと吉川に負けず劣らずのふくよかな体格をした彼は穏やかな性格が相まってサークルにはすぐに溶け込む事が出来た。
「これで決まりだな。香流と豊川は山背君と組んで明日から大会に参加する事。改めて照合は済ませてるか?」
「いや、まだだ。これからでも大丈夫だよな?」
豊川に言われて時計を見る高野。
ドームシティが何時までやっているかは分からないが飲食店と宿泊施設があるくらいだ。ある程度遅くまではやっている事だろうというのが彼の予想だった。
ちなみに今は18時を少し過ぎた程度である。
空はまだ明るい。
「まさかあなたに出会えるとは思ってもいませんでした……」
山背が少し緊張しながら高野の元へ近寄ってくる。
高野は何のことを言っているのかさっぱり分からなかった。初対面だからである。
「ジェノサイドだったんですってね?」
「……えっ、何で知ってんの?」
幾らガチ勢と言っても一般人に含まれる人間である。
深部の存在を知っている一般人などごく限られているはずなのだが、
「石井と吉川から……」
「お前らの仕業かよ……」
高野は手で顔を覆った。
自分の知らない所でペラペラとバラされていてはたまったものではない。
「でも、深部みたいなのがあるって言うのは前から知ってました!」
「それは何でだ?議会の連中はカモフラージュで徹底的に隠しているはずだが?」
「まず、僕は日本文化学科です。地理や歴史が得意なのですが……」
そこで高野はハッとした。
関連ワードが次々と浮かんできたからだ。
「神奈川の大山で起きた異変とか……」
「やっぱりな」
ここで高野は山背という男がどんな人間かを理解した。
物知りでカンが鋭く、そして意識が高い人間だと言うことを。
でなければその後に「深部を上手く利用してビジネスなんて出来ないかな?」などと言っているからだ。
上手く輪に溶け込めて高畠や後輩と共にトランプに興じている山背の背を見ながら、こっそりと高野は吉川に近付いた。
「アイツ大丈夫だよな?実は深部の人間だったなんてオチじゃねぇよな?」
「それは大丈夫だろ。さっきゲームをチラッと見せてもらったけど確かにウデの立ちそうなパーティだったから最初はそう思った……。でもあいつが知っているのは大山で起きた"異変"ってだけと、ポケモンを使う反社会的勢力があるっていう都市伝説から連想した結果、"たしかに深部らしいものがある"っていう結論を見出したってだけだ」
「……つまり、どういう事?」
「大山でどんな戦いがあったかってまでは知らない事と、深部として括られている組織があるはずだって気付いたってだけ」
「初めからそう言えよ分かりにくい……」
サークルが始まる前にコンビニで買ってきたチョコを1口食べると高野は、
「じゃあ、あいつは正真正銘の"表側の人間"って事でいいんだな?」
「あぁ。それは確実だ。信じてくれ」
信じて欲しいという言葉ほど信用出来ない言葉は無いと裏では思っている高野だが無駄に疑ってもしょうがない事である。
トランプがキリよく終わったところで高野は山背と香流を呼んだ。
「んじゃあ、あまり遅くなってもいい事ねぇからな。今からドームシティに行くか?」
「えぇー?もう行くのー?」
残念そうに呟くのは高畠である。
折角来た新人が早々に途中退室するのが面白い光景には見えないようだった。
「しょうがないだろ。大会はもう明日なんだぜ?今行かないと間に合わねぇよ」
ーーー
この時も空の移動だった。
オンバーンに乗った高野と、トロピウスに乗った山背、ぺリッパーの口の中にすっぽりとハマっている豊川、そしてネイティオに乗る香流。
豊川と香流の2人は何故かついてきているようだった。
訳を聞くとそれぞれ「暇だから」、「特訓したいから」との事だ。
ドームシティに降り立ち、今度も真っ直ぐバトルドームへと向かう。
流石に今度はメイは居なかった。
「そうだ、山背君。ゲームでメガシンカって使っているかな?」
「僕?使ってはいるけれど……この世界では何故か使えないっぽいよね?」
「だと言うと思った」
そう言って高野は自分の鞄からそれまで使っていた白い杖のメガワンドと、ジェノサイドの基地から逃げる際偶然見つけた、余っていたであろうキーストーンを取り出すと無言で彼に手渡した。
「えっ!?これは……?ってか貰っていいの!?」
「構わないよ。皆が勝ち残る為には必要なモノだろ」
「でもレン、今初めて山背君がキーストーンを受け取ったって事はさ、メガストーンは1個も持っていないんじゃないかな?」
「流石香流だな。俺も今気付いたところだ。そこまでは用意できねぇ」
「メガストーン??どういう事?」
事情を知らないであろう山背に、香流が説明を始める。
ドームまでの道のりには丁度いい暇つぶしだった。
「つまり、こっちでメガシンカするには1つひとつのメガストーンを探す必要があって、しかもその時見つかるメガストーンはランダムって事?」
「そう。結構根気要る作業だよー」
最も、1番面倒な"大山に赴いて高い金払ってキーストーンを手に入れる"、"デバイスを用意する"という作業が省かれたので彼等ほど苦ではないのだが。
4人はドームの自動扉をくぐる。
やはりと言うかメイは居ない。居たら逆に恐怖である。
話が通じていたのか、あっさりと山背は"438"の番号を取得出来ていた。
「これでやーーっと終わったな。お疲れ、みんな」
「ホント面倒だったぞ今まで!特訓あまり出来なかったんじゃないか?」
「じゃあ豊川、今からこっちとバトルする?」
等の会話を繰り広げながら4人はドームを後にする。
明日は開会式。
遂にこの日が来たのだ。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.333 )
- 日時: 2019/02/21 14:59
- 名前: ガオケレナ (ID: 9hHg7HA5)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
祭りを告げる号砲の花火が空に爆音を轟かせる。
高野はすでに眠りから覚めていたのか、それともこれによって起きたのか、やけにはっきりと目を開けていた。
(祭り……?夏祭りかな……)
若干寝ぼけたまま体を起こす。
何か変わったことでもあったのかと部屋を見回すも、白い壁と一通り揃えた家具以外におかしな物は無い。
ふと、枕元に置いていたスマホを手に取る。
号砲は相変わらず鳴りっぱなしだった。
「6月24日……今日は水曜かぁ……」
暫くボーッとする高野。
何か大切な事を忘れているような気がするが思い出せない。
「8時か……少し早いけど大学行こうかな……」
時計を見ながら立ち上がり、適当な私服を取り出そうとクローゼットを開く。
まず、目に映ったのはメイと一緒に居た時に買った白のワイシャツ。そして黒のスラックス。
またも固まり、今自分は何を忘れているのかを思い出そうとする。
「24日……?……今日大会じゃねぇか!!」
突如大量の情報が脳内に流れ込んでくる。
一瞬で寝ぼけから目覚めた。
急いで目の前のシンプルな服装に着替え、特別な眼鏡を掛けて昨日までの自分とは真逆な印象を与える格好になると、開会式が何時から始まるのかの確認をしようと資料を漁り始める。
部屋の何処かに放り投げた広告から、過去のメール。
とにかくあらゆる情報源を洗い出そうと部屋中をバタバタと駆け抜ける。
「あ、あった……」
つい一昨日のメールに日時が書いてあった。
開会式は10時と書かれている。
「なんだよ……焦って損したじゃねぇか」
ホッとしながら布団を眺めるも、今更改めて寝る事など出来ない。
冷蔵庫を開けて簡単な朝食を食べるとまずは大学に向かうことに決めた。
大会期間中も講義はあるが、時間の都合上受けられるものは受けて、不可能ならば特別に補講を行うとのことらしい。
今日は特別受けられない講義というものは無いみたいなので安心して過ごせられる。
香流や豊川ももしかしたら講義を受けてから開会式に臨むかもしれない。
そんな思いから高野はドームシティではなく大学に向かう事を決めたのだ。
8時45分頃に家を出た高野は癖でモンスターボールを取り出そうとするが、今日は時間の余裕もあった。
久しぶりに徒歩で向かうことにした。
花火の空砲が一旦なり止む。
曇り空の真っ白い空に変化は見られなかった。
せめて晴天だったら……と思った高野だがこの時期に晴れは期待出来なかった。
9時から始まるこの日最初の講義が始まる時間丁度に高野は到着した。
やはり今日が開会式というのもあってか、本来ならば少ないはずの人影が若干多く見える。
そこに知り合いは居ないが。
「来たはいいが……やる事ないよなぁ。とりあえず香流と山背君が何してるか連絡してみるか」
豊川に連絡しない理由は1つ。
この時間に何かをしている訳がないからだ。
大学から歩いて20分程で着く寮で寝ているに決まっているからだ。
2人に連絡を飛ばした直後、聞き慣れた声が自分を呼んでいる事に気が付いた。
「あれー?レンじゃん珍しいな」
「岡田か、おはよう」
岡田翔。
サークルのメンバーにして高野と同じ学部の友人である。
彼がこの時間にいる事が珍しく見えた高野は何故ここに居るのか尋ねてみる。
「全く同じことを俺も思ってたよ。レンがここに居るのが珍しすぎる。……俺?俺は大会の観戦の為に早めに来ただけだよ。その間まで此処で時間潰したり課題やったり、休講の確認に来たり色々さ」
「課題なんてあるのか?開会式までに間に合うのか?」
「俺は参加する訳じゃないから開会式に間に合わせようとは思っていないさ。課題と言っても大したものじゃないからすぐ終わるし」
一応彼にも目的はあったようである。
そうなると何の目的も無しに此処に来た高野の意味が無くなってしまう。
「……じゃあ俺はこっから歩いてドームシティ向かうかな。歩けば30分程度。暇潰しには丁度いいし」
「じゃあ一緒に行かね?俺すぐ終わらせてくるからさぁー」
と、言うと岡田は図書館のある方向へと走って行った。
図書館にあるPCでも使うのだろう。
高野も自然とそちらへと歩みが進んでいった。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.334 )
- 日時: 2019/02/27 18:00
- 名前: ガオケレナ (ID: pVjF2fst)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
岡田が図書館のPCで課題を始め、高野が隣で眺めること20数分。
岡田は宣言通りすぐにそれを終えた。
「ごめんなー待たせて」
「いや、課題を終わらせるって時間じゃねぇぞ……いくら何でも早過ぎないか?」
「課題が簡単すぎるからね。前回の授業の感想を絡めた例題を提出するだけだし」
「?意味が分からん」
「要は、自分で授業受けて疑問に思ったことを問題として提起し、自分で回答例を作るって感じ」
「メンドくせー……」
自分はこんな授業に受けなくてよかったと心底思った高野は、今度は格好について突っ込まれたのでそれに応える。
「あ?この格好か?大会期間中はこの姿で居るようにとお達しがあってな」
「凄く爽やかに見えるよな?いつもより雰囲気が全然違うというか……、サラリーマンかな?」
「……悪かったな普段テキトーな服装で……」
お互いボケとツッコミを繰り返しながら歩みを進める。
丁度今正門を潜ったところだ。
ここから聖蹟桜ヶ丘の方向にひたすら歩いていけば自然と会場には着く。
「でもさ、大会期間中だけってのが気になるんだよなー俺は」
「何でも、俺の顔を見ただけでジェノサイドだったって分かる奴が居るんだとさ。……ぶっちゃけスーツ着て眼鏡掛けるだけだと意味はないけどな。でも、こうすることで、人づてに聞いたって奴の目を掻い潜る事ができる。これだけで敵の6割7割は減るんじゃないか?」
「……えげつねぇんだな」
「やっぱり"元"とはいえジェノサイドだったってのがかなり強いみたいだからなぁ。物好きな戦闘狂なんかはいつ俺を狙って来てもおかしくねぇよ」
「てかさ、前々から気になってたんだけどさ……」
2人は車道沿いに出る。
大通り故に交通量も多く、時折岡田の声が掻き消されてしまい、聞き取れない。
耳を近付けて「なんだって!?」
と、高野が叫ぶ事で岡田も声のトーンを上げて会話を続ける事には成功した。
ちなみに、その続きは「なんでレンは深部なんかに入ったの?」と、いうある程度は予測出来た事柄だった。
高野はどこまで話そうか、どこまで脚色を加えようか空を眺めながら少し考えて、
「成り行きみてーなもんだ」
とだけのつまらない返答をする。
「どんな成り行きだよっ!」
と、岡田が笑いながら問いかける。
高野も内心(それはそうだろうな……)などと思いながらも、これまでの自分の記憶を思い返しながら簡単な話だけを始めた。
"歓喜の誕生"
そう呼ばれ祝われた日があった。
2010年9月20日。
ポケモンのデータが実体化した日である。
まず初めに思い浮かんだ情景は、当時高校1年だった高野はゲーム屋でひたすら遊んだ帰り道ゾロアを呼び出して遊びながら帰路に着いていた時の事だった。
「突然ポケモン持った奴に襲われてな……。俺らではそういう奴を'暗部の連中'って呼んでいた」
「暗部?」
「ポケモンを使って犯罪行為に走る人間たちさ。元々深部ってのはそういう奴らを一掃する為に作られたもの。んで、その時たまたまバルバロッサに会ってな……」
その瞬間を妙な髭面のオッサンに助けられた事、犯罪行為に走る者が存在している事、それを取り締まる側の人間達を集めている事などを聞かされ、勧誘され、いつしか高野は集団を組織するようになり……。
「ひたすら敵を倒しまくっていたね。やっぱり最初から"敵を殺す"って行為には抵抗があったから俺はどうしても出来なかったけど……」
「え、待って。じゃあレンはスカウトされたって事?」
「そういう事だな。助けた代わりに仲間になれ、的な」
高野の話は会場に着くまで続いた。
年が変わった頃にそれまで暗部集団と呼んでいた人達が居なくなったこと、代わりに自分らがそれの代わりになってしまったこと、それまで地獄だと思っていた世界が更なる地獄に、いつ死んでもおかしくない世界に自分は足を踏み入れてしまったんだと絶望したこと、血で血を争う組織間抗争に明け暮れたこと、それまで仲間だと思っていたクラスメートが翌日には敵の組織の人間だと知ったこと、泣く泣く昨日までの友達と戦ったこと、身勝手な大人達の陰謀に巻き込まれたこと、いつしか「敵も味方も含めたすべての人間が幸せに、平和に生きていけるように、それらの要因をすべて殲滅する……そんな意味合いで名付けた"ジェノサイド"」を組織名にし、自らも名乗ったこと、決して人を殺さないと誓った程のトラウマを浴びてしまった事など……。
それらすべての話を詳細には語らなかった。
あくまでも、例えるなら概要程度に。
自分でも何故こんなにもスラスラと自らの記憶を語ることが出来たのだろうと不思議でならなかった。
それを聞いていた岡田は怖がる様子もなく、かと言って同情を含めた哀れみの目を見せることもなかった。
それこそ、"不思議な話"を聞いている感覚のような、一見無表情にしか見えないが感情は表している顔で終始ただただ聞いていた。
そして、
「色々苦労してたんだね」
と、他人事でしかない感想を述べる。
「ま、まぁな……」
それだけかよ……と内心思った高野だったが、これまでの生きた印を途切れることなく喋り続ける人間というのも思い返すだけで気持ち悪いと思えてしまう。
ここはお互い様、と心の中で呟くと、2人は坂を登り切ることで見えてきた"開けた土地"へ辿り着くと、休むこと無く足を向けていった。
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