二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/11/28 13:33
名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走カーチェイス>>536-

行間
>>518,>>525,>>535

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.210 )
日時: 2019/01/21 17:12
名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


普段から、平日の昼間という時間帯には人は集まってこない。
各々事情があり、そちらに出向いているからだ。高野が大学生であるように。
扉を開けると、普段は一桁代の人数しか集まっていないが、今日はざっと確認しただけで十人以上はいる。
たまたま用事がないだけなのか、それとも深部全体がピリピリしているから此処に集まってしまうのかのどちらかか。

「あれっ、どうしたんですか?リーダー。こんな時間に」

構成員の一人であるリョウがこちらに気がつく。彼も自分と同じか、やや年下な感じがするので学生なのだろうか普段はこの時間にはいない。前に来た時も彼はいなかった。

「まぁちょっとな。都合悪くなったから一旦帰ってきた」

「都合って、まさか……」

そのまさか、と言おうとしたところでジェノサイドの後ろからバタバタと階段を急いで駆け上がる音がした。
今彼は扉の真ん前に立っているので邪魔になると言うことで扉は開けたままにしてリビングへと入る。

案の定基地中を走ったせいかバテそうになっている白衣を着た少年が「みんな、大変だ」と叫ぶ。

白衣ということは研究員の一人であろう。
ぜーぜー言いながら特にジェノサイドに注目して何やら報告を始め出す。手元には資料があった。

「また深部間で抗争が起きた……AランクとDランクでの組織の争いだ……負けたDランクのメンバーは全滅。またやられた……」

深部ではよくあるはずの出来事を何故大変な事柄として話すのか、この少年のやろうとしていることが分からない。

「リーダー……問題は弱いものイジメがあったとか、結果とかじゃないんです……負けたDランクは……、僕達を支持していた組織だったんです」

要するに、今まで懸念していた代理戦争が起きてしまったということだろうか。
それでもあまり驚かないのはここ最近の異常なまでの状況に慣れてしまったからか。
「今回だけで五件目です……。僕達の支持者非支持者による争いが日に日に増えてきています」

「五件もあったのかよ……。でも、直接な被害は俺らに対して皆無だろ?目くじら立てて言うほどの事じゃねぇよ」

「今は、です。その内に起きますよ。議会がそろそろ動き出そうとしています」

そう言って手に持っている書類の何枚かを探すと、ジェノサイドに見せる。
それには【重要】とは書いてあったがそこから先は目に入らなかった。読むのも面倒だ。

「ゼロットが議会に圧力をかけて僕達に対する追討令の願いを申し出ていました」

「知っているよ。大山にいるエセ神主から聞いた。奴は俺らと戦いたいが為に杉山とも塩谷とも他のアンチジェノサイドとも組んでいやがった」

「そうだったのですか?では話が早いです。先程、議会でその追討令が承認されました」

「えっ?」

自分の周りの時間だけがゆっくり進んでいるかのような、一瞬研究員の声が遅れて聞こえたのと、理解するのにその分タイムラグが発生した。
だが、それを別の言葉に変えるのに時間はいらなかった。

「つまり、俺らは正式に議会の敵になっちまった訳か」

「えぇ……じきに議会がこちらを調査しに来るでしょう。もしかしたら、杉山のような惨劇がまた起きるかも……」

ジェノサイドらは杉山によって失った仲間は一度を除くと一人もいないが、その悲劇は知っている。

だからこそ、その最悪の事態だけは避けたい。

「どうするかな……表向きは解散にしといて、実際は別の基地で行動するとか……とにかくカモフラージュが必要になってくるな」

「ですが、そうですと非公認の組織となってしまいます。バレたら即刻排除されてしまいますよ?」

ジェノサイドは強く歯噛みして手で口元を隠す。彼が本気で考える際の癖だ。

「ところで、リーダーは先程何かを言おうとしてましたよね?」

そういえば、とリョウがそんなジェノサイドを見ていて思い出す。
逆にジェノサイドは苦い顔をする。

「今こんなタイミングで言いたくねぇよ」

「何でですか?大学すっぽかしてここまで来るなんて普通じゃないですよ!何があったんですか?教えてくださいよ!」

「うえーーー……」

気分が悪くなってジェノサイドは壁に寄りかかるとそのまま真下にズルズルと下がる形でしゃがんだ。
顔は手で、特に目元部分を隠している。

「大学でアルマゲドンの奴等に宣戦布告された」

「えぇ!?」

「あいつらマジで容赦ねぇよー。一般人沢山いるんだよ?俺だってその中の一人よ?なのにいきなり'ソーラービーム'ぶっ放すとか頭おかしい」

「と、とにかくそれが本当なら厳しい状況にありますよ!ただでさえ敵が増えてしまっているのに余計面倒になってしまって……」

「それだけじゃねぇ。アルマゲドンのボスが最悪だった」

リョウも研究員も顔が引きつっていた。たまたま聞いていたのか、やや離れたところからは「まだあんのかよ……」という声まで聞こえる。

「だ、……誰だったのですか?」

研究員が唾を飲み込んで恐る恐る聞いてくる。時折手元の資料を何度もチラッと見ていた。

「バルバロッサだ。あいつ生きていやがった」

ジェノサイドの告白により、しばらく口を開く者がいなかった。
ただただ皆が呆然と突っ立っているのみだった。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.211 )
日時: 2019/01/21 17:42
名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


16日の夜はいつもよりも増して騒がしく、そして静かだった。
議会とアルマゲドン。二つの存在から敵視された事は深部最強とはいえ、重いものがある。
特に議会が相手ではどうしようもなかった。

ストレスが溜まっていたからなのか、夕飯を誰よりも早く平らげると談話室へと一人歩く。
ちなみに、夕飯時はいつも騒ぎに騒いでいるのでうるさいのだが、今日は葬式モードだったとか。
誰一人として喋ろうとしないのでそれに耐えきれず、ジェノサイドは急いでその場を離れたのだ。

談話室の木製の扉を開ける。
中には当然誰もいなかったが、暖炉の火が明るく燃えていた。
温もりを求めていたジェノサイドは、ロッキングチェアに座りながら手をかざす。
その暖かさは冷えきった手と心を暖めているかのように感じた。まるで、尊くも儚い友情のように。

「俺に暖かいのはコイツだけかぁ……」

ため息混じりにつまらない事を吐いていると、扉の開く音がする。ご飯を食べ終えたミナミとレイジだ。

「今なんか言ってた?」

「いや、何も言ってねぇよ」

反射的にかざしていた手を遠ざける。そのせいで寒さが余計に身に染みた。

「今日は冷えますね~。やはり夜になると寒いの何の……」

ソファの上に置いてある毛布を掴むと、レイジはソファに座ってそれにくるまった。

(寒いならここ来いよ……)

今度はミナミを見てみる。

どこからか用意した急須にお茶っ葉を入れて紅茶を用意している。

(お前さっき飲んでたじゃん……)

何故かさっきから心の中で突っ込みを入れるジェノサイドだがそれ以降は気にしなくなる。
彼らは元から自由人だったからだ。

「……お前らに話があんだけどさ」

ミナミがカップに紅茶を注いで口にお菓子を咥えながらそれを持ってくると、レイジの隣に座る。
二人の前には、彼らから背を向けているジェノサイドの姿があった。

「お前らは杉山から逃れる為に此処に来たわけだろ?でもさ、今となってはそれは終わった。お前達はここが一番平和だとか言ってたけど、そうじゃなくなる刻になりつつある」

「んむ?結局あんたは何が言いたいのさ」

「せめて食うのか喋るのかどっちかにしろ……」

後ろをチラ見すると、紅茶を含んで食べ終えたようなのでジェノサイドはそのまま続けた。

「お前らは、身の安全の確保の為に此処に来た……。だけどその元凶はいなくなった。ここが戦場となる前にお前達は元の仲間連れて逃げろ」

「はぁっ!?」

「リーダー、ちょっと落ち着いて」

いきなりの失礼な言葉にミナミは憤激するも、レイジがそれを身を呈してなだめる。
彼女はかなり不満げにジェノサイドを見つめ、心の底から何も分かっていないと強く念じた。

「これまでは、お前らに関わる戦いだった。俺はお前らを含む組織のリーダーとして戦ってきたんだ。だから守る意味はあった。だが、これからの戦いにお前らは関係ない。したがって俺が守る意味もない。だから逃げろと、出てけと言っているんだ。お前らにはやろうと思えばここよりも平和な場所があるだろ?」

ミナミはそれを聞いて握り拳を震わせている。怒りも相当のようだ。
レイジが黙ってその手を握るも、払われてしまう。

「無いよ……」

「ん?今なんて」

「ここよりも平和な場所?そんなもんあるわけないでしょバッカじゃないの!?」

怒鳴るように荒らげると、ミナミはダン、とテーブルを思い切り叩いた。振動で紅茶が揺れている。

「さっきから黙って聞いてたら訳の分からないことをベラベラとさぁ!!何?戦いに関係ない?守る意味がない?カッコつけてんじゃないわよ!!たかだか面倒な敵に囲まれたぐらいで弱気になっちゃってさぁ……」

「弱気になんてなってねぇ。戦う覚悟なんて杉山と戦う時からあったさ」

「じゃあ何でうちらを戦いから遠ざけようとするの!?邪魔なの?」

「ちげぇよ。傷つかなくてもいい戦いで傷ついてほしくねぇから言ってんだよ」

「だーかーらー!」

ミナミはソファから立つとつかつかと歩く。まるで足音さえも怒っているようだった。

「そもそもそんな戦いないから。ウチはジェノサイドのミナミ!決して私はもう赤い龍のミナミなんかじゃない」

ミナミはジェノサイドの隣に立った。普段の姿とは想像し難い威圧感を放っている。

ジェノサイドは横目でミナミを見る。

「じゃあ今からリーダー命令。二人共出てけ」

「なんでよ!!」

ミナミは、ジェノサイド肩をガシッと掴んで何度も揺らす。まるで行き場の無い怒りをそこにぶつけるように。
だが、ジェノサイドは反応がない。すべて諦めたかのような無表情を貫いている。

「そんなの全然納得出来ない。ウチやレイジはジェノサイドの仲間として今ここにいるの!そんな理不尽な命令聞くことなんてできないから」

「……」

「ねぇ……、何か言ってよぉ……。どうしてそんな冷たい事が言えるの……?」

揺らす手がどんどんゆっくりに、穏やかになってくる。遂には止まってしまうも、ジェノサイドは最後まで顔色を変えなかった。
逆にミナミは目に涙を溜めている。今にも泣き出しそうだ。

「どうして分かってくれないのよ……」

「お前こそ何で分かってくれないんだ。今度の敵は俺の敵なんだ。何も関係ないお前を巻き込んで死なれたくない」

「そんな事分かってるよ!!分かってるうえで戦うって言ってんじゃん!!」

とうとうミナミは力が抜け、肩に手を置いたまま暖かい床の上でしゃがみ出した。肩が震えているので恐らく泣いているのだろう。

「ウチは……いたいの……。ずっと、ずっと一緒にあんたと居たい……」

涙声を伴う弱々しい声だ。聞いているだけでも胸が痛くなる。

「ウチはあんたに死なれたくない……。だから一緒にいられる時は一緒にいたい。だからあんたが戦うならウチも戦ったっていいじゃん……」

肩から手を離したと思ったら涙を拭いている。彼女の整った泣き顔を見たのは初めてだ。

「好きだから……、ずっと、一緒に……。そばにいてもいいじゃない……?」

ジェノサイドは黙って暖炉の火を見つめる。告白をされても顔色を変えることはなかった。
ただ黙ることしかできない。意味が分かるから、言葉の重みが分かるからこそ笑うことができない。
とうとうミナミは泣きじゃくる。ジェノサイドの反応がないからでなく、自分そのものを否定された気がしたからだ。

「……ん?」

レイジは遠目から二人を眺めていたが、彼から見るとジェノサイドが小さく笑ったように見えた。
そして、軽くミナミの頭をポンと叩く。

ミナミは泣きながら頭上を見つめると、何故か優しい顔をしたジェノサイドがいる。いきなりどうしたのかと問いたくなった。
だが、

「自分の身は自分で守るから」

そう言い放つとミナミの手を払って椅子から立ち上がり、そそくさと出て行ってしまう。

弱い奴はいらない。
遠回しに言われたようなものだ。彼が出ていくまでに涙が止まってしまう。
が、扉が強く締められると再び溢れてしまった。

(こんな所で強がらなくても……)

レイジは少しニヤけるとミナミの方へ行き、頭を優しく撫でた。
が、かける言葉が見つからない。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.212 )
日時: 2019/01/21 17:45
名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


17日の朝もいつもと変わらなかった。
体が慣れているのか、いつもの時間に起きるとひどい寝癖のまま部屋を出て食堂へと向かう。

途中談話室の前を通ってみたがその扉を開けようか悩んだ。
その末に結局開けずにそのまま前を通り過ぎる。

昨日のやり取りが未だにすごく胸を締め付ける。
「はぁ……いてぇな……」

深くため息をついて薄暗い廊下を歩く。

「どうしたんすか、リーダー。元気ないっすよ」

隣でシリアルを食べているケンゾウがため息ばかりついて全く食が進まないジェノサイドを不思議に思っていた。

「朝が弱いだけだ。いつもの事だろ」

「えーっと……そう言えばそうだっかもしれないっすね」

ひどく食欲がない。半分程度パンを食べると「ごちそうさま」と、言って席を立った。

「えぇ!?リーダー全然食べてないっすよ!?何言ってんすか?」

「ガッコー行ってくる。何かあったら連絡して」

あらかじめ用意していた鞄を肩に掛けるとパパッと無駄な動きが一切ないまま行こうとする。

「えぇー!?リーダーなんか様子おかしいっすよ!?」

ケンゾウの吠えも虚しく、何も反応がないままジェノサイドはとうとう基地から出てしまった。

「様子おっかしいなぁー。何があったんだ一体……」

ブツブツ呟きながらケンゾウは廊下を歩く。どこに行こうとしているのか自分でも分からない。

すると、目の前の部屋の扉が開いた。

「おっ、」

「あっ」

元気の無さそうなミナミの姿だ。
ケンゾウは若干苦手な彼女に少し後ずさりする。

「何よそれ。おはようの挨拶も無しかい」

「お、お前だってアイサツしてねーじゃんかよ……」

無言でケンゾウの前を通り過ぎようとする。その意外な反応に「ホントに挨拶ねぇのかよ!」と吠えた。

「……朝からうるさい」

「んだよーったくよぉ……。リーダーの次はお前も元気ねぇのな。ったく二人して何なんだよ……」

二人、という言葉にミナミはピンと来るものがあった。

そして、ケンゾウを前にしてある事柄を思い付いた。

「二人って、リーダーも何かあったの?」

「あぁ。今のお前みたく暗ーくてやーなかんじだったよ。なんか、いつものリーダーじゃねぇ的な感じか?」

「ねぇケンゾウ今日ヒマ?」

「唐突に話題変えんなお前!!」

何やら廊下が騒がしい。聞きなれた声がおかしな状況を生み出しているようだ。目を覚ましたレイジが顔を覗かせている。

「ねぇ今日マーヒー?」

「ま、マーヒーってなんぞ?でもあれだ。今日は暇だが?」

「じゃあさじゃあさ!!」

ついさっきとは打って変わって元気を取り戻したかのように飛び跳ねる。さっきの暗い感じはどこいったと突っ込みたくなる。

「連れて行ってほしいところがあるんだけど」


ーーー

大学に変わった様子はない。
普段通り生徒として過ごしているうちはその生活に変化はなかった。

(今日はアイツらも来ねぇみたいだな。まぁ、毎回来られても困るが)

大学構内を歩いていると、偶然にも一人で歩いている岡田が。

「確か次の授業は……」

スマホの時間割アプリを開き、次の授業を確認すると、岡田とは一緒のものではなかった。

「……まぁ、いいか」

同級生として、彼は自らの友達に近づく。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.213 )
日時: 2019/01/21 17:50
名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「なんでまたこんな時期に……」

12月の中旬ともなると大分冷えてくる。
ただでさえ外を動き回ろうとは思えない。

それに加え、ケンゾウは薄着である。
単なるキャラ作りという訳ではなく、本当に寒いと思わないからだ。

だが場所が変われば別。それも、標高1200mの山だと尚更だ。
そもそも、そんな服装での登山自体が許されないのだが。

「さっっみぃぃんだよ!ふざけんなぁぁ!!」

「あんたがそんな服でいるのが悪いんでしょうが」

一気に山頂まで飛び、寒さに耐えながら本殿へと歩く。

「お前が外まで連れ出してすぐに飛行タイプのポケモン取り出したと思ったらお前がここまで連れてきたからだろうが!」

「はいはい、言い訳はあとでねー」

「言い訳じゃねぇよぉぉ!!」

叫ぶ事で寒さを打ち消そうと無意味な努力をしようとしているのか、やけに声が大きい。

「でも本当寒い……雪積もってるし……」

今降っている訳ではないが、山の山頂まで来ると雪が積もり、真っ白になっている。踏むとザクザク音がする辺り新雪だろう。

「呆れたー。まさか12月になってもやってくるなんて……」

本殿の方から声がしたのでミナミは振り返る。
白い和服に身を包んだ長身の男性が立ち、こちらを不思議そうに見つめ、笏で口元を隠していた。

「もうこの時期になれば誰も来ないものと思っておりました。此処へ来る頻度をなくそうか考えていたところです」

「おい、誰だよあいつ……」

震えながら、それまで離れていたケンゾウが距離を寄せてこちらに来た。だが掛けてきた言葉は反応に困るものだった。

「分かるわけないでしょ……ウチに聞くなっての」

「あぁ、申し訳ありません。私、こちらの神主を執り行っております武内と申します」

二人の言葉に気づいたのか、笏を袖の中へと仕舞い二人とは微妙な距離を保ちつつ話を始める。

「こちらにいらした、と言う事は此処がどんな所か、私がどんな人間かをご存知でいらっしゃいますね?」

「ここは前に、戦いがあった場所だ」

唯一事情を知り、実際に当事者となったケンゾウだからこそ分かる事だ。目を少しずらすと、崩れた社の跡がある。

「よくぞご存知で」

「俺は此処で実際に戦った人間だからな」

そう言うと、ポケットから"genocide"と綴られたネックレス状のアクセサリーをジャラジャラと言わせながら取り出した。

「どうしてあんたがそれを……?」

「これはコピーだ。議会相手には使えないがこれを使うことで騙せた敵をおびき出す事ができる」

「なるほど……」

武内は二人に近づき、ケンゾウが見せるネックレスに触れてみる。リーダーが持つ"cide"とある紋章と区別するためかこちらは省略されずに"genocide"と書かれている点が目に入った。

「と、言う事はあなたは深部の……それも、ジェノサイドの方ですね?」

「あぁ。設立当初からのな。と言っても、今日はこいつに連れてこられたんだが」

と、言ってケンゾウはミナミの肩を叩く。力が少し強かったか、ミナミが一瞬睨んだ。

「なるほど、と言うことは今日のお客様はあなた様でいらっしゃいますか」

武内はミナミの方へ意識を変えた。何かの決心をしているのか、強い目とショートな髪型以外は特徴の無さそうな娘だ。
だが、よく見ると後方から以前知り合った人がこちらに来るのが見えた。
状況から見るに、彼らの知り合いか。

「よろしい。ではあなた方、どうぞご本殿にいらしてください。きっとあなたの求めている物がございますよ。それから……」

目線をミナミから後ろに移す。
それにつられて二人も後ろへと見ると、何故か普段見慣れた人がそこにいた。

「なっ、いつの間に……!?」

「あなた方の知り合いでしょう?と、言うのも以前彼がこちらに来る際にこう仰っておりました。近い内に自分の仲間が来る、と。その仲間とはあなたの事でございましょう?」

「レイジ、あんた此処に来たことあったの!?」

「外は寒いでしょう、またいつ雪が降ってもおかしくはありませんからね。こちらへどうぞお越しください」

レイジはミナミと武内二人の言葉に対し、一度だけではあるが同じ意味としてその場でお辞儀する。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.214 )
日時: 2019/01/21 17:53
名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「そもそも、おかしいとは思わなかったのですか?」

本殿内を歩きながらレイジが喋り出した。和服の男二人に挟まれると何かの行事かと錯覚してしまいそうだ。

「私は、リーダー、あなたと離れた時。あんな絶望的な状況からどうやって脱出したのか、リーダーと再び会えた武道館で私が見せたゲンガー。普通に生活しているとするならば違和感を感じますよね?」

「そりゃあ、まぁ、ね。でも、時期が時期だし気まずくて言えなかったよ」

杉山の一件はミナミからしてもいい物ではなかった。当時もそうだったし、今の状況も元を辿ればこれに結びついてしまう。

「私も、ジェノサイドさんがメガシンカの力を手に入れたことに興味を持ちましてね……、色々と話を聞いている内にこの山に秘密がある事を突き止めました。そして、タイミングを見計らって一人この山を登ってみた訳です。」

「知らなかった……。いつの間に行ったの?」

「リーダーが横浜に行っていた日に」

「うそっ!あれから秘密にしてた訳!?どうしてウチにも言わなかったのよ!」

後ろでギャーギャー騒ぎ出した。うるせぇなと思いながらケンゾウは前を歩く武内に黙って続いていく。
が、ふと武内が大きな扉の前で急に止まった。
それにより、ケンゾウもいきなり止まったので、後ろにいるミナミに激突される。

「いてっ」

「急に止まるな!」

「はぁー……?」

そんな彼らをよそに、武内は無言で扉を開く。
同時に、やっと口を開いた。

「ご覧下さい。こちらには、わが敷地内で発見された多数のキーストーンを保管しております」

その部屋には真ん中に縦長のショーケースが幾つか並べられていた。その中には綺麗に輝くキーストーンが。

「えっ、すごい。こんなに?」

武内の立っている隙間を潜り、何の許可もなしに部屋へと入るミナミ。その莫大な量のキーストーンを見て目を輝かせていた。
同様に、ケンゾウも武内の後ろから、ただでさえ大きいその体にも関わらず背伸びをして伺おうとしている。

「以前、ここで不思議な戦いが行われ、それが終わってから何故か大量にキーストーンが発見されるに至りました。今はもう冬で雪も積もっておりますので発見は難しいでしょうが、今でもこの敷地内からは見つかるそうですよ」

「不思議な戦いってのは、バルバロッサとのやつか?」

やっと入れた部屋の中で、キーストーンを見つめながら言ったのはケンゾウだ。

「はい。原因は今でもよく分かりかねるのですが、戦いの最中発せられた不思議な力が暴発して、それの具現化されたものが……」

「キーストーンって訳か」

ジェノサイドがメガストーンを探す際、写し鏡を使っていた事を思い出す。三体の伝説のポケモンと、メガストーンという共通点が確かにあったからだ。

「ところで今日あなた方は……」

キーストーンと部屋を眺めているミナミとケンゾウ二人に対して武内が言う。

「こちらにいらした、と言う事はキーストーンをお求めで宜しいんですね?」

「は、はい!ここに来ればキーストーンが手に入ると聞きました!一つ分けてください」

やけに必死そうな形相でミナミに見つめられ、今までやって来た人間とは違う雰囲気を感じ取る。次に、ケンゾウに対しても聞いてみる。

「い、いや俺は……コイツに無理矢理連れてこられたと言うか……で、でも貰えるんすよね?」

二人の正反対ともいえる温度差にくすっ、と小さく笑った。

「では、」

武内はどこからかキーストーンを取り出したのか手元にあるそれを二人に見せながら続ける。

「そこのお嬢様。何故そこまでしてこれを欲しがるのでしょうか?話を聞く限りだと、あなたもジェノサイドの一員のように思われますが」

ジェノサイドという組織においてメガシンカを扱える人間が何人かいる状態でおりながらそれを求める姿に武内は興味があるようだ。
答え次第によっては金と情報を貰おうか考えていたところでもある。

「それは……」

ミナミは言い渋る素振りを見せて中々言おうとしない。時折レイジとケンゾウ、そして武内を交互に見ると決心したかのように、

「ウチには、守りたい人がいるからです」

それまでとは違う、大きく高らかに宣言するように言い放った。


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