二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.420 )
- 日時: 2019/11/19 11:31
- 名前: ガオケレナ (ID: O62Gt2t7)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「これが……あなたの、過去?」
メイは高野の視点で見続けながら、呟いた。
それは、深部とは無関係の惨事。
目の前の男に、今とはまるで違う雰囲気に大きな惑いを抱きながら、流れ出る映像が目を、脳を刺激する。
『人を殺してしまった』と泣きながらバルバロッサに助けを求める"彼"。
深部や議会の圧力で引いた警察。
そして処理される、"深部組織同士の争いの果ての事故"。
事実は全く違うにも関わらず。
『お前さんは……殺さないんじゃなかったのか……?人を』
『殺しちまった……。ポケモンなんて関係ない人を……表の世界の人間を……』
そこに在るのは長い永い時の中で後悔する"彼"の姿。
その時の心の中の圧迫感が記憶を伝って直接送られてゆく。
ーーー
『なぁ。俺……大学に行きたい』
2012年7月。
あの時の事件が忘れ去られようとしていたある日。
"彼"は突然似合わない進路の話をバルバロッサに持ち出した。
『何故……だい?大学の費用はお前さんが持っているだろうからそちらは問題ないが……何か理由でもあるのか?』
『深部に生きる以外の道が無い俺だけど……。大学に行けば他の道も見いだせると思うんだ』
ーーー
2012年12月18日。
この日、この世にSランクの組織が1つ、誕生した。
理由はひとつ。
特殊なツールで召喚したゼクロムを操る深部の人間を、数多の仲間を虐殺したその男に"彼"が勝ったからだ。
しかし、"彼"にとってはその話題はさほど大きくなかったようで、当たり前の日常の如く過ぎ去っていった。
ーーー
2013年。
"彼"は神東大学へと入学する。
今ある仲間やサークルメンバーと知り合う反面、深部の活動はより活発に、より過激に突き進む。
ーーー
『神の到来。それこそが私が追い求めていたものだ』
『クッソ下らねぇ理由で俺たちを裏切った訳かよ……バルバロッサぁぁ!!!』
映るのは大山でのバルバロッサとの戦闘。
3体の伝説のポケモンを操る嘗ての仲間を、親をその手で下す場面。
そして映像は更に切り替わる。
赤い龍との出会い。
メガストーン集め。
解散令状を携えた過激な思想を持った議員。
その戦闘。
ゼロットとの戦い。
崩れてゆく大学のサークルの平和。
アルマゲドンとの戦闘。
そして、最後の決戦。
"彼"の敗北。
去年までに起こった記憶、そして記録。
それは、あまりにも鮮明だった。
その記憶の旅は、ついこの前に発生したデッドラインの鍵の死で幕を閉じる。
「待……て……」
倉敷は驚きの表情で現へと戻る。
「何故だ……?何故、無かったんだ?」
見るべきでない記憶のみが残り、有るべき記憶が無い。
「お前の記憶に……ッッ!!何で財産に関するものが一切存在しないんだ!!」
倉敷は叫ぶ。
同じく、現世へ舞い戻った高野洋平は頭を手で抑えながら、よくも見たなと言いたげな忌々しい目付きで2人を睨む。
「答えろジェノサイド!……いや、デッドラインッッ!お前は……金を何処に隠した!?その記憶を何処に隠したんだ!!」
「そんなモン……ハナからねぇよ……」
ひたりと。
高野はゆっくりと足を踏みしめながら2人の元へ歩む。
その顔は、記憶の中で見た"あの時の"ものと同じだ。
「俺の知らないところで……俺の見ていないところで組織ジェノサイドの財産が移動した……。議員を勤められる頭の良い人間が……どうしてそんな答えを導けない?」
「クッッソッッ!!」
こうなれば力づくで。
あの日彼を苦しめたゴルーグとエレキブルで再び押さえ込んでやろうとボールを取り出したその時。
一直線上に現れた毒針が、彼を、倉敷の体を突き刺した。
「なっ……?片、平……?」
「倉敷。悪いが君の身柄を拘束させてもらうよ?一般人を手にかけた容疑だ」
スピアーを従えた片平光曜。
そんな彼が、遅すぎるタイミングで現れては無法者を捕らえにやって来る。
「倉敷。お前の話はそこの女性から聞いている。ご同行願うよ?今から君は議長の前で証言をしてもらう。方法は……先程のムシャーナの力を使うのがいいかな?自分の首を絞めるとは正にこういう事か」
呑気な口調のまま、片平は煙草に火を付ける。
その目はメイを、そして大きな告白をした高野を横目に見つめて。
「……まぁいい。君には色々と言いたい事が……感謝したい事でいっぱいだが、それ所じゃなくてな。とりあえずは、ちえみを殺したコイツをどうにかするのが先だ。おっ、そうだ。過去に学ぶのが主義だ。君と同じ轍を踏もうとはこれっぽっちも思っちゃいないよ」
「礼なんか誰が受けるかよ……」
すれ違いざまに高野は吐き捨てる。
片平と倉敷の姿が見えなくなったのを確認すると、高野は大きく息を吐いた。
「よりによって……お前に見られるなんてな」
「貴方が強く抱いた信念……。すべて"その子"の為だったのね?」
「いや、結局は自分の為だ。無実の人間を殺した罪は一生消えない。俺は死ぬまでコレを背負う。その中で……俺は決して表と裏の世界を混同させない。表の人間は表の世界で。裏の人間は裏の世界で。キッチリと分けられるよう深部を生きる。そう決めたんだ」
「だから、貴方はバルバロッサが裏切った時強く怒ったのね」
今ある世を破壊する。
それは、"彼女"と"彼女の世界"を破壊するに等しかった。
例え闇に生きる事になっても、自らの罪を背負いながらも、光という"彼女"とその世界を守る為に闇の世界で生き続ける。
その為の"すべての脅威の殲滅"。
これまでの過去、記憶。
その1つひとつを噛み締めて、彼は。
ジェノサイドは、デッドラインは。
高野洋平は、現在を生き続けると決めた。
すべては過去の罪の為。そして、"彼女"の未来の為に。
ーーー
目的を失い、会場へと戻ろうとした彼と彼女は見た。
一際大きな星が瞬いたのを。
その瞬間、空が、空間が震えたのを。
空の色が塗り替えられたのを。
それは、一瞬だった。
空は突如として、"かつて見た空色"を高野に、メイに、地上に座すすべての人間に見せつけてゆく。
「あれは……?そんな、まさか……」
高野は絶句した。
それはまさに、いつか見た物と同じであったからだ。
「空が……金色に輝いている……!?」
嘗ての敵が見せた芸当。
天国の再現。
現実の物理法則では有り得ない現象が、再び、その目の前で起こっていた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.421 )
- 日時: 2019/11/17 12:51
- 名前: ガオケレナ (ID: TaHLTR3K)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
世界は1度、崩壊する直前にあった。
こう話して、信じる者がどれ程居るだろうか。
少なくとも、その場に居た当事者のみが容易く頷くことだろう。
だが、今回は違う。
「えっ……なぁに?あれ」
「すごーい!きれーい!!」
「うおっ!凄い晴れ方してやがる!」
「なんか星見えてね?」
観測者の数が桁違いだった。
それだけではない。
『はーい!皆さん本日もドームシティから中継していま〜す!天気はぁ……晴れ!なのですが……凄いんです!空が黄金色に輝いています!こんなの観たことがありません!!』
それは、ラジオやテレビ、そして動画配信を通して多くの人間へと伝えられてゆく。
その数は何千何百……。計り知れない事だろう。
「一体……何が起きているんだ……?」
呆然と立ち尽くす高野と、その景色を確かにたった今見たばかりのメイ。
お互い、言いたい事が山積みで上手く言えずにいるのもまた確かな事だ。
「この空……さっきのあなたの記憶で観たわ?……何かを、知っているわね?」
「うるせぇ、そんな事は後だ。とにかく……今あそこで何が起きているのか調べる必要がある!」
そう言って高野は走り出す。
本来歩いていた方向、ドームシティへ。
緩い坂を登りきり、会場の敷地内に足を踏み入れた彼が見たのは、荘厳な景色に圧倒され、見つめている多くの人々と、ポケモンを従えて隊列を組むように歩く集団の姿。
その中に。
「お前……は……?」
ーーー
第1段階は成功した。
算出された演算結果に従い、空間に数値を入力。
その結果。
「見てる?お父さん……」
神を崇め、その道に突き進んだ1人の老人。
その子供たち。
「いつか……見たよね?この世界。今度は……アタシ達が、お父さんの夢を叶える番だよ……」
その少女は佇んでいた。
バトルタワーの屋上。ヘリポートの上で。
金色の空と真っ白の星で埋め尽くされた天国を表した空。
人工的に作り上げた、自然現象では決して起きない不気味な空をただ眺めていた。
だが、ここで彼女の仕事は終わりではない。
"計画"に則って、彼女の数値を入力する作業の手はまだ、止まらない。
ーーー
「おい!何やってんだよ!!レンとはまだ連絡付かないのかよ!!」
「やってるよ!でも、回線がパンクしてて中々繋がらないんだよ!」
香流慎司と岡田翔は狼狽していた。
今繰り広げられている世界は、2人にとっても必ずしも無関係ではなかったからだ。
「これ……綺麗だけど、前にも見た事なかったっけ?」
「ほら!あれだよ!レンが……」
自分たちの背景と化している高畠と石井がそんな事を話している。
どうやら、彼らの中でも記憶の中に留めてある断片程度にはなっているようだ。
「絶対何かが起きているはずだ!早くレンに知らせないと……っ!」
香流は必死な思いで何度も何度も通話ボタンを押しては消し、押しては消しを繰り返して遂には繋がった。
ーーー
「これは……香流か?」
高野は突然鳴り響いたスマホを片手に首を傾げた。
こんな状況に何なんだ、と。
「もしもし?お前……」
『レン!!今何処にいるんだ!?大変な事になっているんだ!』
「なら大丈夫だ。俺もその場に居る……」
高野は異常までに光る空を、バトルタワーを睨む。
『これって前にもあったよね!?何か知っていたりする!?』
「いや、俺は何も……つかお前今どこよ?」
高野は念の為に辺りを見てみるも、そこに彼らの姿は無い。
冷たくも熱くもない風を頬に受けて高野は顔をしかめながら。
『ドームから出たところだよ……人の流れが凄すぎて中々動けないんだ!』
そこで高野は通話を切った。
それだけ知っていれば、後は無駄に長話する必要はない。
目の前にいる"おそらくどこかで見たような顔"をした人間と接触し、状況次第では香流たちと合流する。
彼の中での行動パターンが作られていく。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.422 )
- 日時: 2019/11/24 09:06
- 名前: ガオケレナ (ID: tDifp7KY)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
テルは改めて、空を見た。
いつか大山で見た、天国を模した空。
それにそっくりである。
湧き上がる思い、感情をとにかく押し潰して我慢し、今自分が置かれている状況とこれからの計画を頭の中で再構築していく。
(レミがやりやがった……。と、なると俺の役割は此処で……"時間"まで邪魔が入らない為の足止め……)
黒く、わざと鋭く尖らせたような髪型をした褐色肌の男。
アルマゲドンのテル。
彼は今、仲間を引き連れてドームシティの入口付近にて佇んでいた。
まさか本当に上手く行くとは思わなかった。
元々怪しいデータであったのに加え、下準備が地味で小難しく、更に時間を要した。
これで上手く行きませんでしたとなるとその場限りの大いなる怒りが湧くものであったが、結果はいい意味で裏切られたといえる。
「まさか……本当に演算結果でこうなっちまうんだな……」
「テルさん。自分たちは何を?本当にこのままこの場に居るだけでよろしいので?」
伝達が上手く行き渡っていなかったらしい仲間の1人がそう尋ねてきた。
懐かしさに浸っていたテルは水を差された事でしかめっ面をしながらその仲間を見る。
「あそこ。あのテッペンにレミがいる。お父さんの夢見たこの空が見えた、という事はレミが上手くやれたという事だ。俺たちに求められている作戦内の動きはなんだ?ズバリ、敵の排除と足止めだ」
「で、ですが……こんな状況を理解出来る者など居ないのでは?」
「その通り。ほとんどはな。だが……」
言いかけたその瞬間と。
攻撃を仕掛けた瞬間が。
偶然にも交差した。
テルが見たのは、赤と黒で染まった光線。
それを掌に圧縮して今すぐにも放とうとしていたゾロアークが、眼前にも駆けてきたその刻だった。
「テメェみたいなのがいちいち沸いてくるんだよなぁ!!」
テルは叫ぶ。
そしてボールを地面に叩きつけるように投げ、出てきたポケモンに命令する。
「グレイシア、'ミラーコート'っ!!」
グレイシアの身にまとった薄い膜のようなベールが、その特殊技を防ぎ、跳ね返す。
「見たことあるぞ、その顔……」
「それは俺とて同じだ。また何か企んでやがるな?テメェら……」
高野洋平とテル。
互いに顔が割れ、命のやり取りを何度も繰り返してきた猛者が再び邂逅する。
ーーー
「これは……?」
本選中のブロック内対戦が滞りなく進み、名勝負の数々が生まれたということでバトルとバトルの休憩時間中に、これまでのダイジェストを大きなモニターに流しながら暑さを逃れて日陰で飲み物を飲んでいた実況のリッキーは見た。
その空の有り様を。
即座にマイクを切り替えた。
ラジオのスタジオへ。
「リッキーです。今のお天気は流したでしょうか?」
まだその声は公共の電波には送らない。
あくまでも、現地からの報告、そして状況確認だ。
同じ局の天気予報士から返事が来た。
たった今NOW ON AIRのDJが伝えていると。
「一体……何が起きているんだ……?」
念の為にリッキーは大会運営事務局に一報を入れた。
このまま大会は続行するか、一旦中止にするのかを。
ーーー
「すべて話してもらおうか。アルマゲドン……。お前たちは何を企み、何を行っているのかをな」
「その顔、その声……。やっぱりお前はジェノサイドだな?あの後どさくさに紛れて行方不明になっていたみたいだが、まさか此処に居たなんてなぁ。ワイシャツに黒のズボン、そして眼鏡……。随分とイメージが変わっているが?」
一向に本題に入ろうとしないテルに、高野は舌打ちをする。ゾロアークを動かそうと手を振ろうとしたが後ろにいるメイの「待って」に動きが止まった。
「いつか見たよなぁ。この空……」
テルは見上げながら口元を緩める。我慢していた感情が溢れる一歩手前だ。
「なぁ、ジェノサイド。この空は一体何を意味していると思う?」
「前置きなんていらねぇんだよ。お前は今すぐ事実だけを言えばそれでいい」
「いや、事実を話すにはこんな前置きが必要なんだ。お父さんの夢が叶う……まさにその日なんだからな?」
その言葉を聴いて高野は瞬きした。
気になった単語を彼は繰り返す。
「お父さん……?お前らの……?バルバロッサの事か!?じゃあこの異変はやっぱりお前らが原因なんだな!?」
「異変なんて言うな。これは、不完全で悪に染まったこの世界を光で満たす、完全な世界に生まれ変わらせるための反動……余震みたいなものだ」
高野は知っている。
嘗ての仲間であり、敵であったバルバロッサが何を考えていたのかを。
何を抱き、心の支えにしていたのかを。
「また神の到来だとか、神世界だとか言って荒し回るだけのテロか。それに何の意味がある?」
「言い分や行為を正当化しようとして宗教とか正義を持ち出そうとするような奴らと一緒にするな!俺は……俺たちは真の意味で新しい世界を作るだけだ!!」
テルは激怒した。
彼らの想い。宗教観、哲学観。
それらに無知であるが故に蔑ろにするような言葉。
高野洋平の上辺だけしか知らないような軽んじるその発言に怒りを発せずにはいられなかった。
「何も知らないお前が……世界で何が起こっているのかを全く知らないお前が……知ったような口聞くなっ!」
「だからってその行動が許されると思っているのか?お前たちは」
「許されるんじゃない。俺たちが許すんだ」
彼が何を言いたいのか全く理解出来ずにいる高野は、ゾロアークを呼んで立ち塞がっているだけのテルの仲間の1人2人を'ふいうち'で倒してゆく。
「お前の難解な言葉を聞いているより、こうした方が早い」
「堪え性の無い男だなぁ……?素直に言えよ。俺が邪魔だと」
ピリピリとした触感が全身を包む。
火花が散り、今にも衝突が起きてもおかしくない空気。
戦いの予感を高野は、テルは、メイは悟った。
「お前と戦ったとして、お前は話すのか?一体どんなポケモンを使ってこんな事をした?」
「分かってんじゃねぇか……俺が本当の事を言うとも限らねぇしなぁ?」
テルは既に出ているグレイシアを前に、つられて高野もゾロアークをそのままの姿で戦場に送る。
2人のトレーナーの放つ戦意がそれぞれのポケモンにも呼応するかのように。
「また3体の伝説のポケモンか?写し鏡も無いのに、どうやってトルネロスとボルトロスとランドロスを用意したんだ?」
「ふはっ……。お前、全然分かってねぇのな?考え方が古すぎる。もう時代はデジタルなんだぜぇ?」
悪意のある笑みを浮かべるその様は、時代に取り残された年寄りを嘲るようだった。
同じ時代、これから大きなうねりが来るであろう時代を生きる同じくらいの歳の人を見るような目付きでないのだけは明らかで、自分とは違う考えを持っているという事だけは高野も薄々感じたようだった。
「コイツは今までのやり方とは全然違う。前回、お前に邪魔された時。あの時は、ポケモンの潜在能力を使って現したものだったが、今はそんな手間は要らない。他の方法を見出したのさ」
「その、他の方法って何だよ?」
「AKS」
「……はぁ?」
「聞いた事ないか?スーパーコンピュータAKS。コイツの力ってワケさ」
すると突然、ゾロアークが'かえんほうしゃ'を吐いた。
一直線に向かう単純な戦略に、テルもグレイシアも容易に避けることが出来る、正に無意味な手の内。
その炎はグレイシアとテルの横を過ぎるように進み、虚空へと消えてゆく。
「そろそろキレていい?」
「ホンットに我慢ってのが出来ねぇのなジェノサイド!!……だったらいいさ、俺も面白くなってきた。バトルしながらお話でもしようぜ?」
グレイシアが走り、ゾロアークも迎え撃たんと進む。
グレイシアの口から'れいとうビーム'が、ゾロアークも負けじと'かえんほうしゃ'を互いに放ち、炸裂。
白い煙が2人を包みだした。
「結果、俺たちは真理を見出した。この世の在り方やポケモンの存在そのものまでも。……だからこそ、俺たちやお父さんの意思がより強くなった」
「言い方を変えよう。いつまでも調子良く話が出来ると思わない事だな」
「脅しか?ジェノサイドらしいな。……まぁいい加減この場にいる当事者として少しカラクリを教えてやろうか」
気持ちを改めた意味なのか、テルは土の上で座った訳でもないのに、腰部分をパンパンと手で払う仕草をする。
「お前さ、"2045年問題"って聞いたことあるかな?」
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.423 )
- 日時: 2019/11/24 12:35
- 名前: ガオケレナ (ID: tDifp7KY)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
特殊技が悉く跳ね返される。
不毛なバトルを感じた高野はゾロアークを引っ込めてゴウカザルを呼び出す。
それはテルにも読めていたようで、同様にグレイシアをオスのニャオニクスへと交換させた。
その手に"ひかるねんど"を握りながら。
「また厄介なポケモンを……」
「時間はあるんだ、楽しめよ……?'リフレクター'だ」
"いたずらごころ"の影響で先制技となったその技はバトルフィールドと化した空間内を区切るような壁を展開し、特にテルとニャオニクスの前面に厚い盾を形成する。
「ゴウカザル、'じしん'」
即座に大地を大きく揺らす技を放つものの、ニャオニクスは姿勢を崩され四つん這いになるも、その時だけだ。
つまり、ダメージは全く入らない。
「2045年だと?今はまだ2015年なんだがな」
「ワザと言ってんのか?だとしてもつまんねぇぞジェノサイド。文字にしても面白くない」
「今……2045年問題と言ったわね?聞いた事があるわ、それ……」
その声は後ろに控えているメイだ。
「人間がコンピュータに置き換えられるとか、そういうのよね?」
目の前の彼とは違って話が分かる人が居たということに気分が高鳴る。
テルは自分だけが知っている話を言いたくてしょうがなかった。
「いいね……そこのレディは分かっているようだ。だが惜しい。正式にはコンピュータではなく人工知能だ」
「人工知能だぁ?それとこの空に何の関係があるんだよ」
ゴウカザルはニャオニクスの'サイコキネシス'を受ける。
宙に浮かされ、念波で体を押し潰されるような不可思議な力を受け、そして地面へと叩き落とされる。
だが、ニャオニクスの貧弱な攻撃面でもってしても、さすがのゴウカザルを倒す事は出来なかった。
とはいえ、"きあいのタスキ"を持っていたので当然といえば当然なのだが。
「そろそろかな……じきにシンギュラリティを起こすに足りる存在が現れる……。お前たちは正にっ!!神の降臨を目撃する事になるのさ!!」
ーーー
「んん??」
香流は見た。気がした。
まともに歩けるスペースも無い中、明るく綺麗な空を見上げながら歩いていた時のこと。
空が、空間が震えた気がした。
「どうかしたか?香流ぇー」
隣を歩く吉川だ。
前を進めずにいるせいか、煙草が吸えないせいか少しイライラしているようだった。
その声のトーンがとても分かりやすい。
「いや……今、空が」
「空ぁ?相変わらず変な天気してるだけじゃねぇか」
「これは天気じゃないよ!前にレンが言っていたじゃないか!ポケモンの力でおかしくなったって。これは前と同じ……。多分これも、ポケモンだ。それで今……空が揺れているように見えた気がしたんだ」
例えるなら震度0。
確かに起きてはいるが人間が感知出来ない小さなゆらぎ。
それが空の中で波を起こすように星が輝き、そして徐々に徐々にその揺れは強くなっていく。
「ほら!また起きた!」
まるで流れ星でも見つけたかのような声と指の差し具合でアピールをするも、吉川や高畠が見上げた時には波はもう消えていた。
ーーー
「イマイチ読めねぇな……2045年に起こりうる事をそっくりそのまま再現するのがお前たちの目的か?そんな未来を綺麗に作れるものなのか?」
「分かってねぇなら黙って眺めているがいいさ!所詮破壊する事しか出来ねぇジェノサイドには無縁の話さ!」
「人類が人工知能に置き換えられるという事はお前たちの最終目的は人類を支配出来るほどの人工知能か!?それがお前たちの言う神か!」
「無駄に深読みできるってのも才能の無駄遣いってヤツだよなぁ?そんなモンはチラシの裏にでも書いてろ」
ニャオニクスは追い打ちを与えるが如く'ひかりのかべ'を展開していく。
今、彼の前には赤と青の淡い色をした壁が立ち塞がった。
「簡単な話さ。本来であればあと30年待たなければならない事を今日までに短縮させるってだけさ」
「あなたたちはシンギュラリティを起こしたとして、その先に何があるのか分かっているのかしら?人工知能がヒトを支配するとは限らないのよ?」
ヒトを超える存在がヒトの考えうる事を成し遂げる筈がない。
この手の問題によく見られる批判、反論だ。
だが、テルはニヤニヤしながら首を横に振る。
「40点。落単だよレディ。何と言うか2人とも何も分かっていない。シンギュラリティを起こす事こそが目的なんじゃない。シンギュラリティを起こす存在に意味を見出しているだけだ」
「起こす存在?そんな高度な人工知能があると言うのかよ?それこそ2045年まで待たなければならねぇじゃねぇか」
「お前も落単だジェノサイド」
高野のゴウカザルが倒れた。
次に使うはメガストーンを手にしたヤミラミだ。
"いたずらごころ"の恩恵を受ける間もなく直後にメガシンカをさせる。
「既に存在しているんだよ……お前にはピンと来ないだろうけどな……?強いAIの代替となる存在がなぁ?」
「まさか……ポケモン!?」
メイは驚いているようだったが、本気かどうかまでは分からない。
彼女は感情を隠す事に長けている。
「シンギュラリティを起こした後に"あるポケモン"を降臨させる演算をコンピュータに施した。いいか?俺たちの目的は今日この日に2045年を到来させる事でも、人類を支配する程のAIを持ち出す事でもない。その先に起こる……新たな世界の創成だ。それを可能にできる程のポケモン。それを出現させる事」
「まさか……アルセウス……?あなた達はアルセウスを……世界を創るというポケモンの中の神話の記述を……」
「少し違う。初めに言っただろうがよ?完全な世界に創ると。だが鋭いな。アルセウスの部分は正解だ」
空が震える。
星が不可解な輝きを魅せる。
それは最早人の目でもはっきりと映るほどに。
テルは1つ戦い方を誤った。
マイナー故にその特性を知らずにいたメガヤミラミに対し、'あくび'を打ってしまう。
その結果、跳ね返された'あくび'がニャオニクスに移り、交代を余儀なくされる。
再びグレイシアが舞い戻った。
「どうやら時間だ……そろそろ現れるぞ。神が。刮目することだ!お前たちは今日、奇跡を視るのだからな!!」
テルは両腕を広げ、空の広さを、スケールの広さをその身をもって知らしめようとする。
背景の星空が映えているようだった。
そして、その時。
高野は見た。
1つの星が一際明るく輝いたかと思うと、それはゆっくりと地上に迫るかのように大きくなっていくのを。
少しづつ、ポケモンの形を造りながら。
時間が、終わりが、確実に迫っていた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.424 )
- 日時: 2019/11/24 16:09
- 名前: ガオケレナ (ID: tDifp7KY)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
それは、まるで流星だった。
遥か上空から舞い降りた1つの星は大きなスピードに乗りながら地上へ降りてゆく。
「降りてくる」と分かった時には、もうその形は星を思わせる楕円形から、ポケモンに詳しい者ならば絶対に分かるはずのシルエットへと変化していた。
「なっ……?あれは、まさかっ!!」
メイが言いかけたと同時。
そのポケモンは衝撃波を伴って地表へ衝突した。
場所はドームシティの敷地内だが辺りに何も無い地点。
緑地の名残として木々が生い茂るだけの、ドームからも、立ち並ぶ飲食店とも離れたその場所で。
神と呼ばれしポケモン。
空間を司るとまで云われた大いなるポケモン。
パルキアが、その姿を現した。
「な……何なんだよあれは!?」
隕石落下のニュースと比較して、落ちた際の衝撃波が小さすぎる事に違和感を感じていた。
それは、大きな風が吹いた程度のものでしかなかったからだ。
高野はそのように叫び、パルキアが地上に立ち蠢いている姿をその目に焼き付ける。
「俺たちは世界の破壊が目的ではないからな。あんな風に落ちてこられて自分たちにも被害が及んだら本末転倒だ。だから、'まもる'を覚えさせておいた」
言われてみれば、パルキアはベールを纏いながら落ちてきたようにも見えたが、問題はそこではない。
「んな事はどうだっていいんだよ!!大山の時もそうだったが……お前らはどうして毎度毎度呼び出せないはずの伝説のポケモンを操る事が出来るんだ!」
「操る事が出来ない……即ちデータに伝説のポケモンのそれが無いとするならばこちらから入力すればいいだけの事じゃないか?言っただろ?これは演算結果だと。まだ分からねぇって顔しているなぁ?」
'シャドーボール'を打つと見せかけてヤミラミは'イカサマ'で不意打ち紛いの拳の攻撃をグレイシアに見舞った。
そのため、グレイシアの'ミラーコート'は不発に終わる。
「ポケモンの正体。今この世に存在するポケモンの真の姿。それはな……。量子コンピュータによって生み出された人工知能だ」
ーーー
やけに店内が騒がしくなった。
吉岡桔梗は、3人で行動する際の行きつけのファストフード店で昼食代わりのハンバーガーを食べ終えたその時、やたらとうるさくなっている事に気が付いた。
東堂煌はゴミを捨てに行き、相沢優梨香はトイレに行っているため、席に居るのは彼1人だ。
そのため、何やら外で起きているらしい騒ぎが何なのかよく分からない。
「おう、相沢が戻ってきたら店出ようぜ」
東堂が戻って来る。
自分もゴミを捨てようかと席から立ち上がる。
「なぁ〜、東堂。なんか騒がしいと思わないか?」
「あ〜?まぁうるせぇっちゃうるせぇが、どーせ馬鹿騒ぎしたいだけの奴らだろ。あっ、ほら相沢戻ってきたし早く出よーぜ」
「あっ!!ちょっと待ってってば〜!」
相沢と東堂が吉岡を置いて先に行こうとしていたので、駆け足気味に事を済ませると3人横に並んで店を出る。
涼しげな顔をした3人が見たものは、
「うっわなんだアレ!!」
「ポケモンだよポケモン!伝説のポケモンじゃない?」
やけに空を見て騒いでいる人だかりであった。
「伝説のポケモン?」
東堂が真面目に2人に尋ねた。
「そんなモンって確か使えないハズだったよな?」
「そのはずだけれど……」
周囲の人間が見上げている方向へ、3人も振り返りつつ眺めてみる。
そこには、大空を悠々と翔ぶポケモン、パルキアの姿が、
「えええええぇぇぇぇぇーーーー!!!?」
信じられないモノを見てしまった時の絶叫がこだました。
ーーー
「なん……だって……?」
高野洋平は震えた。
その真実に。今まで全く分からなかった問題の答えを突然突き付けられたことに。
確かに今まで、組織ジェノサイドに居た頃はよく仲間と論争をしたものだった。
ポケモンはデータの塊か、生き物かについてと。
そんな哲学にも倫理にも関わる問題に対し、この男は平然と答えを告げた。
それは、あまりにも残酷で信じ難く、そして生々しく。
「ポケモンが……人工知能だと?だって待てよ……。ポケモンには命が、血が通っているじゃねぇか!」
「確かにお前の言う通り、ポケモンは命と密接に繋がっている。胸の辺りに耳を近づけてみれば心音が聴こえるし、時には食べ物も欲する。そこらの生き物と何ら変わりはない。ただ、強いってだけのな。だが、それを"込み"でコンピュータから生み出したに過ぎないんだよ。何故だか教えてやろうか?そのコンピュータの生みの親がお父さんと知り合いだったからだ」
確かにおかしいとは思っていた。
ゲームと連動しただけで何故ポケモンが姿を現せられるのか。
モンスターボールは何処から出てきたのか。
「何も無い空間にデータを打ち込んでいるのさ。だからモンスターボールもゲームから無事に反映されている。スーパーコンピュータを超える量子コンピュータAKS。これがこの世の理だ」
「じゃあ……あなたたちは……。その、コンピュータの製作者と同じような作業でパルキアを呼び出したって事?」
メイも同様に震えていた。
あまりにも続く現実離れした光景は、精神が強いはずの彼女を戦かせるには十分だった。
「そういう事だ。そして、俺たちが打ち込んだポケモンは何もパルキアだけじゃない……」
言ったそばで異変は既に起きていた。
何も無い空間。
漂うものが何も無い空が突然、真っ二つに引き裂かれた。
別次元から来たとしか思えないそれも、パルキア同様に地上へと落ちてくる。
「あれは……ディアルガだとっ!?」
「さぁ顕現した……あとは時を待つのみ!!この日この世界は……新たに生まれ変わる!!」
神と呼ばれし時を司ると云われた伝説のポケモン、ディアルガ。
そのポケモンは再び空へと翔んで行くとパルキアと対峙する。
互いが互いを見つめ合い、暫くの間静まり返る。
だが、平穏を破るかの如く。
2柱のポケモンは突如大きく叫び出した。
「何よ!?今のは……?」
メイは耳を押えながらポケモンを見つめる。
その瞬間、体が少し重くなるのを彼女は直感で感じた。
「えっ?これは?」
「合図だ。これから神によるシンギュラリティが始まる……。今まで概念上の存在でしか無かった時間と空間が3次元において発現するようになったんだ!!これで……このポケモンが存在するただそれだけの理由で……本来30年掛かる作業があと4時間で完了する!!全人類の夢が……俺やお父さんの夢が叶うその時が遂に来たんだ!!」
高野は歯噛みした。
自分の思っている以上に敵は高度な力を持っていた事。
自分はひたすらにバトルする事しか出来ないこと。
そして、そのバトルが単なる時間稼ぎでしかない事に気付いたことに。
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