二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.185 )
- 日時: 2019/01/20 13:47
- 名前: ガオケレナ (ID: GTyVogOk)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「オイオイ……何の為にあいつらにゴミ処理任せたんだよ。ここまでゴミが流れてくるなんて意味ねぇだろうがよぉ!!」
ゾロアークの入ったボールを投げ、何物にも化けていない正真正銘本物のゾロアークが出てくる。
「吹き飛ばせ。ゾロアーク」
威圧を込めた低く唸る声でボソッと呟くと、ゾロアークの両手から赤黒いオーラが出現し、その両手を地面に思い切り叩きつけ、オーラを増幅、衝撃を生み出して一瞬の速さで刺客を飲み込む。
ドドッ、と爆音が鳴り、広くはない通路に振動が伝わる。
ポケモンもろとも彼らは吹き飛ばされ、遥か後方へと姿を消す。
だが、その技を軽々と避けた一匹のポケモンの姿が。
(何だ……? あのタイミングであればまず人間が反応できずに吹き飛ぶのに、それを察知した奴がいたのか……?)
暗くてよく見えないが、壁を伝い、ゾロアークの前に対峙する小さい影がひとつ。
そして、何とか先程の技を避けたそのトレーナーの姿も。
その者は'ナイトバースト'で倒れたゼロットの刺客たちを踏みつけ、ジェノサイドの前へと姿を現す。
蝋燭の火がそのポケモンを、その者を照らした。
(ピカチュウだと……?電気玉でも持たせてるのか。ったく物好きなヤツ……!?)
ケンゾウの電話、目の前にいるピカチュウ。
ジェノサイドの体が急に震えを発した。
今自分が見ているのは幻影か、それとも真実か。
「どういう……ことだよ」
前者であってほしかった。と、言うよりそうであるに決まっている。
わざと呆れる素振りを見せて「ゼロットも幻を使ってんのかよ。惑わされねーよ」と強がってみるも、それらすべては次の一言で無駄な努力へと変わる。
「幻影なんかじゃねぇよ、レン……」
あだ名で呼ばれた瞬間、背筋が凍った。
何故なら、ゾロアークが見せる幻影が人やポケモンであった場合、それらは言葉を発する事は出来ないからだ。
「って事は本物かよ」
「こんな形で悪いけど……レン……お前を倒しに来たよ」
胸の鼓動が早くなる。どうしてこんな事になるのか。全く検討がつかない。
そもそも、何故目の前の人間は無事でいられているのか。
人質のはずではなかったのか。
その見知った顔は何故この世界へと踏み入れてしまったのか。
「何でお前が此処にいんだよ……吉川……」
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.186 )
- 日時: 2019/01/20 13:52
- 名前: ガオケレナ (ID: GTyVogOk)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
吉川祐也。
ジェノサイドがレンと呼ばれている環境での友達だ。
当然深部との関わりが無いごく普通の一般人。ごく普通の大学生。
のはずだ。
そのはずなのに、今その友達はゼロットの居城にてジェノサイドの前に立ち塞がる。
それはつまりどういうことか。
「……。てめぇ、一体どういうつもりだよ。俺が今ゼロットと戦っているのは知ってただろ?俺はお前達が人質にされてるってんで飛んで来たんだよ。そのお前が、こうして俺の前に現れて……俺の邪魔をしているって……」
声が震える。いや、震えているのは声だけでない。既に全身が震えていた。
今のこの状況の理解ができない。
「何でテメェがここにいんだよ吉川ァァッ!!」
ジェノサイドがこれまで避けてきた、望まれない戦いを自ら起こしてしまった。
であるにも関わらず、今のジェノサイドは怒り狂う事しか出来ない。
戦いに巻き込まれて欲しくない人間に、牙を向けてしまう時が来てしまった。
トレーナーとポケモンの意思が完璧に一致している非常に珍しい組み合わせのため、命令せずともゾロアークが動く。
ジェノサイドが腕を振るうだけでゾロアークは動いてくれる。
ジェノサイドは心の中でこう叫んだに違いない。
'ナイトバースト'、と。
(吉川のピカチュウはストーリー未達成の割には速いと聞いている……。それはつまり、純粋に強さだけを求めたポケモンと渡り合えるって事……。だが……!!)
ゾロアークは両手に赤黒いオーラをまとらせ、地面に叩きつける。
「いくらピカチュウとはいえ、俺のゾロアークより速いわけがねぇだろ!!」
進化の輝石が無い限り、それは壁にも満たない紙だ。
「吹っ飛べ!!吉川ぁっ!!」
通路一面を包むかのような範囲が大きい衝撃波がすべてを飲み込もうと襲いかかる。
しかし。
吉川は涼しい顔でサトシばりに「避けろ」と言うと壁を利用して軽々と'ナイトバースト'を避ける。
ジェノサイドも計算してか、吉川に当たるギリギリでそれは消えた。
壁を越え、一気にピカチュウとゾロアークとの距離が縮まる。
「'エレキボール'!」
五秒前までは侮っていた紙が、神速の速さを持って眼前に迫る。
状況が一変した。
(速ければ速いほど威力が増す技か……。ピカチュウの威力なんざたかが知れてるが……今ここで食らえばタスキが消える……っ!?)
ゾロアークもジェノサイドと同じ事を考えたのか、'エレキボール'がピカチュウの尻尾から放たれた瞬間に、口から'かえんほうしゃ'を吐き、打ち消す。
互いの技がぶつかり合い、爆発、黒煙が舞った。
ドォン、と鈍い爆発音を轟かせ、視界が真っ黒い煙で遮られる。
「うわっ!大丈夫かピカチュウ!」
慣れない光景に、思わず目を覆うとする吉川。
だがそれよりも、自分のポケモンの状態が気になるところだ。
不安になり、つい何も命令せず黙る時間が続く。これは初心者故の油断か。
煙の中で強く何かを握る音が聞こえたと思ったら、今度は何かを叩きつける音が響いた。
「お、おい!どうしたんだ?……ピカチュウ!!」
吉川が叫んで暫くすると、煙がやっと晴れる。
そこには、
ゾロアークの腕に捕まり、動きを封じ込められているピカチュウがいた。
小さいねずみポケモンは苦しそうに悶えている。
「おい!やめろ!!レン!」
「これがお前との差……お前が俺と深部でやり合おうなんざ5年……10年早ぇ」
怒りと冷酷を秘めたその目で"かつての"友を見つめる。
どのように止めを刺そうか考えた矢先に、吉川が走ってきた方向からさらに足音が聞こえた。
ヒールを履いたような、甲高い音だ。
「大丈夫っすかリーダー!」
「あんたたち無事!?」
ケンゾウとミナミだ。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.187 )
- 日時: 2019/01/20 14:00
- 名前: ガオケレナ (ID: GTyVogOk)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「お前ら……」
二人が間に入ったことで戦闘を中断せざるを得なくなった。
ゾロアークはピカチュウを離し、跳ぶ事で一気に距離を広げる。
「お前らにあそこを任せたんだぞ。逃さずあの地点で抑えてほしかったんだが」
「ご、ごめん……見馴れた人がいたから思うように動けなくて……」
ゾロアークをボールに戻しつつジェノサイドはミナミの話を聞いていた。よくもまぁあの大群から見知った人間を見つけられたなと自分には出来ないことについて感心していた。
「とにかく、リーダー。あんたは先に行って。ウチはこいつと話がしたい」
突如、ジェノサイドに対し背を向けるミナミ。彼女は吉川に強い視線を送るも、彼は目を逸らした。
「はぁ?さっきそう言われてここまで走ってきたんだぞ。今更信用できるかっての」
「ウチは何も手出ししない!ただ話をしたいだけなの。それが済めばこいつも保護する。それでいいでしょ?」
「……」
ジェノサイドは突然無言になる。と思うと、ゆっくりと前に進んで行った。
「あまりそいつだけに時間かけるなよ」
自ら作り上げた沈黙を突如破る。
「奴が言う情報が正しければ、俺の友達はあと二人いる。偶然かどうかは知らねぇがこの二人もポケモンをやっている。いずれ出てくるぞ」
忠告のような言葉を放つと、ジェノサイドの姿は暗闇へと消えていった。
「さて、と」
ジェノサイドがいなくなった事を確認し、ミナミは吉川に近づく。
「教えて。何であんたがここにいて、リーダーと戦おうとしたの?ウチやリーダーは、あんたたちがゼロットの人質にされてるって聞いたんだけど……」
「……お前一緒に横浜に来てた奴だよな?やっぱ深部だったんだな……」
吉川は一瞬何か考え事をしたからか、嫌な顔をするも、その後に覚悟を決めたかのようなため息を一息。
「俺がここに来た理由……か」
ーーー
走っているうちに忘れていたが、ここは地下一階である。
元からこの建物に存在していた空間。それを改造してか、暗いダンジョンみたくなっているがこの先にこの先に何があるのか。
答えは明白だった。
「行き止まりかよ……」
蝋燭の弱い灯りは石でできた冷たい壁しか照らさなかった。
ここには何も無い。
吉川と接触してからは誰とも会っていなかった。途中で道を間違えた可能性もあったかもしれないが、あの狭い通路に隠し通路を作るのは防衛の問題柄適当とは言えない。
ジェノサイドは無言でサザンドラのボールを手に取り、無言で投げる。
もしもジェノサイドが同じ立場にあり、ここに基地を構えるとしたらどう考えるか。
問題は、今ジェノサイドがいる空間が元から存在する階であるということ。
ならばやるべき事はひとつ。
「道具を'いのちのたま'から'こだわりメガネ'に変えて、と。よし、サザンドラ。思い切りここに向かって'あくのはどう'だ」
ジェノサイドはこれと言って特徴のない床を指す。
高威力となった光線が床を、地面を吹き飛ばす。
サザンドラも躊躇はしなかった。
ーーー
まるで大砲でも飛ばしたような物騒な音が響く。
それだけならまだいいが、音そのものがかなり近い。
パラパラと天井から砂埃が少し舞う。
「来たかジェノサイド……やはりテメェも同じ事を考えるか」
一度ドン!と鳴る。真上の階にでもいる感覚を覚える。
また更にドン、と響くもこの階の天井はビクともしない。
他の階よりも頑丈に作られているらしかった。
今度轟音が響く時はさらに砂埃が舞った。
四度目で何かが軋む音がした。
五度目にはその軋む音がさらに大きくなる。
(決して諦めねぇのな……あの野郎)
砂埃を頭に被りながらイライラした調子で肘掛をトントンと叩く。
六度目には砕くような鈍い音が発される。
七度目には痺れを切らしたか、ポリゴンZを呼び出し、サザンドラと道具を取り替え、'はかいこうせん'を撃つことで床を無理矢理破壊した。
天井である石の塊を彼の居る部屋へと大量に落とし、多くの落下物と砂塵を撒き散らして深部の王はその姿をもう一人の深部の王へと見せつける。
「やる事が無茶すぎるとは思わんのかね?」
「やっと見つけた……俺の仲間と安全を利用してここまでやりやがって……俺を今日ここに呼び出した事を後悔しろ」
ジェノサイドは、遂にキーシュと相見えた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.188 )
- 日時: 2019/01/20 20:06
- 名前: ガオケレナ (ID: 9hHg7HA5)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
ジェノサイドは今いる地下三階を眺めてみる。
かなり広い空間だった。このビルにある広さとは思えない。
と、思ったが、無駄な壁がないから広く見えるだけだろう。確かに、壁は少なかった。
代わりにあったのは、目の前に王のオーラを魅せる玉座と、それに座るキーシュ。その後ろに映るのは薄く白く光る円柱形の柱のモニュメント。
耳を澄ませばこの部屋に讃美歌のような歌が流れている。
この部屋にいる人間はかなり少ない。いたとしても心配そうに二人を眺めるゼロットの人間くらいだ。
ジェノサイドが知っている人はいなかった。
「俺の知り合いはどこだ」
「さぁてね。テメェを探しにどっか言っちゃったよ」
ジェノサイドは歯噛みする。そうじゃねぇ、と。
何をしているのかではなく、何でここにいるのかを知りたいだけなのだ。
「……知りたいか?ジェノサイド。だったらそうだな……」
キーシュが椅子の中で姿勢を変える。その手に持つのは古そうな本と、モンスターボール。それを意味するのは、両者の激突。
「俺と戦え。ザコが」
椅子に座りながらキーシュはボールを投げる。
出てきたのは、ジャローダだ。
長く大きい体と威圧的な目でそのポケモンはジェノサイドを睨む。
まるで動きでも止められそうなまでの恐ろしい目を、思わずジェノサイドは逸らす。
その光景を見てキーシュも鼻で笑った。
「自己紹介がまだだったな。俺はキーシュ。テメェと同じく、深部の王にしてその王国を束ねる者だ」
一々例える言葉の意味が分かりにくい。
深部の王はSランク。王国とは彼の組織ゼロットの事か。
「俺はジェノサイド。自分の名を冠する組織の……」
「いいよそんなの。俺は知ってるから」
途中で遮られる。だがジェノサイドは諦めない。再び口を開く。
「神を殺す存在。そんな意味をも含む、そのための"ジェノサイド"だ」
言った途端。キーシュの目が変わるのを確認した。
ジェノサイドが相手の組織の名前を聞いた時。今こうして大広間に来た時。
思ったのは「宗教に関係している」ということだ。
ゼロットとは古代においてのユダヤ教の過激派。今にして言えばテロ組織か。
この部屋も、宗教施設に関係ありそうな円柱の柱や、讃美歌と表現方法に共通点がある。それが宗教、神だ。
なので彼の反応を見る限り挑発は成功したようだ。
キーシュもジェノサイドの言葉に低く笑う。
「へぇ……面白い事言うな。テメェ……。面白いよ。興味持った」
ついにキーシュは椅子から立ち上がり、ジャローダの後ろに立つ。
「だからこそ、戦う意義が存在する……。俺はずっとテメェと戦いたいと思ってたところだ」
もう後戻りはできない。
ジェノサイドは一つのボールを強く握る。
サファリボールを。
「行くぜ……バンギラス!!」
ーーー
ジェノサイドと別れ、別方向の道を走り続けたハヤテはその道中、ゼロットの人間らしき男にその道を塞がれ、動けないでいた。
「そこをどいて下さい。私は、今すぐにでもゼロットに会いに行かなければならないんです」
「この先にゼロットはいません」
ジェノサイドがそうであったように、この先の道は何も無い。結局こちら側も行き止まりしかないのだ。
だがハヤテが気になったのはその点ではない。
(僕もそうであったが……この人は彼らのリーダーをゼロットと言った……?)
ハヤテは通せんぼしている男の顔をまじまじと眺める。
決して会って見たわけではないが、その気がしてきた。
「眼鏡をかけていて、見た感じリーダーと同年代のような外見……。あなた、リーダーの友達ですね?」
彼の顔が強ばる。何かを考えているようだが、手は止まらなかった。ボールを手にしている。
「私やリーダーはあなたたちの救出に参りました。友達があなたである以上戦う理由はありません。こちらに来ていただけませんか?」
「こっちは、最初から戦う気でここにいるんです!!」
香流はボールを投げた。
ボールからは彼が常日頃「大好きなポケモンだ」と高野らに語っていたギルガルドが出てくる。
(やはり、ダメなんですかね……)
彼の戦う姿勢、ポケモンの姿にハヤテもついに折れてしまう。
(ただ対話するだけではダメ……戦いを通じて話をしていくしか……っ!)
ジェノサイドとキーシュ。香流慎司とハヤテ。
それぞれの男がそれぞれの目的、思いを抱いて交差する。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.189 )
- 日時: 2019/01/21 11:59
- 名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
ハヤテは無言でボールを放り投げる。
元気そうなウォーグルが出てきた。
「ひとついいですか」
香流は身構えつつも話に耳を傾ける。
「あなた"たち"と言うべきですかね……?何故あなたたちは此処にいるのですか?ここはあなたたちが来るべき場所でないことくらい理解しているはずです」
「そ、それは……」
香流は顔を暗くし、俯くと覚悟を決めたように叫ぶ。
「'かげうち'!」
それに呼応し、ギルガルドは全身に力を込めながら突き進むと斬り掛かる。
だが、ノーマルタイプのウォーグルにそれは効かない。それくらいお互いは理解していた。
念のためウォーグルはそれを躱し、体を折りたたむようにコンパクトな格好になると、低飛行のままギルガルドに突っ込む。
「'ブレイブバード'」
「'キングシールド'!」
迫るウォーグルに対抗し、全身を完璧に覆う厚い壁が出現する。
(あれに触れると攻撃力が……)
「避けなさいウォーグル」
命令が間に合い、壁をギリギリ避けてウォーグルはそのまま旋回し、ハヤテの元へと戻っていく。
「私は聞いているのです。答えてください」
「……ゼロットの人が……、大学に来たんです」
「えっ」
予想だにしなかった事実に、ハヤテは目を丸める。
「じゃあ本当にあなたたちを人質に……」
「いいえ、ここまで来たのは自分たちの意志があってです」
益々衝撃的だった。どこに自分の友達を相手に命懸けの戦いをする者がいるだろうか。
「ゼロットの人は、自分たちのサークルの部室に来たんです。特に何もせず、平和的にですよ?手荒な事は一切してなかったです。普通に来て……」
「何を仰っていたのですか?」
「ジェノサイドはどこかって……」
ここまで聞いてハヤテはなるほどと思った。
情報源は不明だが、キーシュはこの時点でジェノサイドの基地や電話番号はおろか、深部とは一切関係のない大学の居場所まで突き止め、さらに彼が所属しているサークルまで把握していた。
その情報収集力と判断力は恐ろしいまでに高すぎる。
「では、あなたたちはどうしたのですか?それからは」
香流はその時の話を始めた。
ーーー
夕焼けに染まる頃。香流はサークルの部室にその時いた石井と吉川と話をしていた。
話題は特にどうでもよかったが、適当に話していた時。奇抜な格好をした見慣れない男がいきなり扉を開けたのだ。
「うっす。ちょっといいか?」
その男は扉を閉め、開いていた窓も閉めると、小声で彼らにこう言った。
「なぁ。この大学のこのサークルにジェノサイドがいるってことは分かってんだ。ソイツが今どこにいるか知ってたりするか?」
その単語が出てきた辺りからだろうか。
三人とも何故か目を丸めて互いに顔を見合わせている。
恐らくキーシュもこの話が通じるとは思ってもいなかったのだろう。
「知っていたらラッキー」程度だったに違いない。
普通でない彼らの反応から、ジェノサイドを知っていることを察する。
「……どうやら知ってるみたいだな」
「失礼ですが、どちら様ですか?」
冷静を装いつつも、緊張と不安で強ばる顔をしながら石井がその男を睨む。
その恐ろしい目に臆することなく「んー、」と上の空に一瞬なりながらも結局はこう答えた。
「ゼロット」と。
またも彼らは顔を見合わせ、ガタッと吉川が席を立つ。
「ゼロットって確か……」
「今レンが戦っているっていう……ヤバい奴だよね?」
「どうして此処に……」
「ん、あぁ。単に何処に居て何をしてるのかを知りたかったんだ。やはり、知っているな」
ジェノサイドの敵を目の当たりにし、彼らはひとつ閃く。
ーーー
「なるほど、彼を利用しようとしたのですね」
ハヤテはそこですべて理解した。何故彼が今目の前にいるのか、その意味を。
「あなたたちはゼロットに協力する形でジェノサイドと戦いたかったのですね?自分たちが協力する形でゼロットを勝たせ、リーダーが負ける……。そしてあなたたちは深部としてでなく、一般人と化したリーダーを助けたかった。そうでしょう?」
事の本質をダイレクトに言われたからか、香流は唇を締め、視線を不自然なまでに逸らす。
「レンを……助けたかったんです。彼は……、自分たちと同じ大学生なんです。前にレンが自分に悩みを言ってくれた時があって、そこで気づいたんですよ。レンは無理をしているなって。このままじゃ余計に苦しんでしまう。レンを自分たちと同じただの学生に変えてやりたい。もう、これから訳の分からない変な事をしてほしくない。皆そう思っているし、レンも苦しんでいる。チャンスは今しかないと思ったんです!」
「なるほど……」
複雑な気分だった。
ジェノサイドはどんなに悩んでいてもその素振りは見せず、普通にいつも通りのリーダーの姿だけを見せていた。
だが実際は自分よりも交友期間の短い友達に本音を吐露し、弱さを見せつけ、彼らを立ち上がらせた裏の姿があったのだから。
そればかりでない。
ジェノサイドが一般学生として成り下がる。ゼロットが勝ちジェノサイドが負ける。
それは組織としてのジェノサイドの解散を意味している。リーダーが仮に幸せになるとしても、自分たちは一気に不幸に突き落とされる。明日から路頭に迷うことになってしまう。
それらの事があるからか、ハヤテの考えは一つにまとまる。
「それは無理な話ですね」
この不幸にも友達を助けたいという無茶な思いを持った学生に厳しく言い放つ。
「あなたの友達は、ただの大学生をやっている傍ら、私たちのリーダーでもあるのです。リーダーが負けて一般人になる?無理な話ですよ残念ながら。何故か。私たちの生活が保障されなくなるからです」
香流はその言葉を聞き、分かっていると思われるような仕草をしつつ、驚きを見せている。
「それに深部の、しかもその頂点に立つ者同士の戦いですよ?戦いに負けた者が無傷でいられるはずがありますか?そんな訳がない。最悪殺されますよ。そうでないと戦う意味がない。何故私たちがゼロットと戦っているか分かりますか?敵だからですよ」
歩み寄るようにハヤテはじりじりと、ゆっくりと歩く。それに合わせてウォーグルも少し前進する。
「私たちの安寧を破壊しようとする、敵だからですよ?」
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