二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/11/28 13:33
名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走カーチェイス>>536-

行間
>>518,>>525,>>535

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.500 )
日時: 2020/06/23 00:37
名前: ガオケレナ (ID: 8rukhG7e)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


早朝の5時。

高野洋平は言われた通り、約束の地を歩いていた。
彼にもその意味が分かっていた。
敵であるキーシュから、日時と場所の指定。
それは、アラビア半島を舞台にしたこの逃走劇の終わりを示している。

はじめはミスリードかと思った。
言われた通りに従えばその場所において悲惨な結末を迎えるのではないか。
何かとんでもない罠があるのではないか。
そう思ったのだが到着して1時間、まだ何も無い。

そこは、確かにシスルという小さな街の中にあった。

「ウバールの……遺跡……。アードの街か……」

陽は昇り、既に明るくなっている。
場所は変われど、知らない土地であることに変わりはない。
不安を抱きつつも砂利を踏む。

「よう、本当に来たんだな?マジメか?」

「お前が……そう言ったんだろうが」

高野洋平はその目で見た。

まるで狐が化けたかのような、男の割には長い髪、純白の一枚布。
紛れもなく、キーシュ・ベン=シャッダードだ。

「本当に1人で来ているみたいだが……?何処かにオトモダチは隠れているのか?」

「俺だけだ……。いや、"今は"居ない」

「なるほど、じゃあ早くしないとだな」

仮にも敵地に1人で突き進んでいる。
無茶なことこの上ない。
なので、ある程度の時間が経ったうえで仲間がやって来るよう相談した。
すべて、昨日の夜の内に話し合ったことだ。

「それじゃあ始めようか?ジェノサイド、貴様にも協力してもらおうか」

「何をする気だ?ギラティナを扱う為の実験か?」

「発掘調査だ」

ーーー

包み隠さずすべてを吐いた。
NSAのイクナートンに捕まったテウダは、命の惜しさ、そして組織での決まり事を守った上で今回の騒動について喋った。

"捕まった際はすべて話しても構わない"

それは、キーシュがあらかじめ仲間に対して命令したものの1つであった。

命を優先にして敵の言う通りにしろ。あとは俺がやる。

何とも男らしい彼の言葉が記憶の中で唱えられる。
確かに、拘束された事は変わらずとも、目隠しは解かれ命の保証も約束された。
一先ずテウダは安心していた。

「シリアの騒乱を終わらせる……か。ギラティナの力ならば不可能ではないのかもしれんな」

「で、でも……そんな事実があったら……」

テウダの尋問のせいで狼狽えているミナミ。
聞いていた事実と全く違う話により慌てるのも無理は無かった。

「初めにお前達に嘘を付いた事は謝ろう。実の所、あまり分かっていなかったというのがある」

出会った当初、高野洋平を含むミナミらは、「ゼロットはギラティナを使ってテロを画策している」と聞かされていたのだから。

「で、でも……」

だが、戸惑う最大の理由とするものは。

「それだと……本当に彼等は悪い集団なの?」

シリアの騒乱を終わらせる。
世界一危険とまでに言われてしまった国の平安。
それが達成されてしまえば、救われる人間の方が数としては多いのではないのだろうか。
そうなってしまえば、そんな人を捕まえようとしている自分たちは本当に正しいのか。
それが、分からないのだ。

だが、イクナートンはつまらなそうにため息を吐く。

「いいか。何が善くて何が悪いかではない。奴等がギラティナを持っている事が問題なんだ。仮にシリア騒乱を終わらせてみろ。次は何をする?その次は?……。偏った思想の集団に持たせる事が1番の問題だって事を理解しろ」

少なくともイクナートンは騒乱後に彼等が憎む国々を攻撃すると読んでいるようだ。
そちらの話に疎いミナミにはどうしてもピンと来ない。
故に彼等が絶対悪なのか否かに揺らぎを覚える。

なんとも言えない思いだ。

「デッドラインから話は聞いているだろうが……」

イクナートンは空を眺めた。
早朝にも関わらず、既に外は暑い。
空も青白かった。

「奴は今単独で遺跡に向かっている。奴がどうなろうが知ったこっちゃないが……昨夜の作戦通りに動くぞ。合図があるまでは決して動くな。いいな?」

そう言っては無傷な方の腕で腰に手をかけた。
そこには銃がある。

「分かっているわよ……でも、アイツは皆の為に動いているの。どうでもいいなんて言わないで」

見れば、彼女の目が若干潤んでいた。
敵が敵だけに色々と想像してしまったのだろう。
だが、イクナートンは何も言わず、何事も無かったように無言でそっぽを向いてしまった。

ーーー

「発掘調査だと?」

「あぁ、そうだ。普段、此処では専用の作業員が居るのだが、どうもやる気が無いみたいでな。全く捗っていない」

適当に歩くと看板が見えてきた。
此処がウバールであり、嘗ての街であった旨を伝えている。丁寧に地図付きだ。

「貴様は、アードについてどれ位知っている?」

妙だった。
これまで互いに敵意を向き合って来た人間が世間話をするなどと。
それも、彼の仲間が堂々と闊歩している中でだ。

危険な香りしかしない。

「いや、全然……。知る術が無いからな」

「だろうな。ま、それが普通だろう」

言葉に反し、キーシュの顔は軽蔑で満ち溢れていた。
傍から見ても分かるほどに。

「俺様はこれまでに『予言者の回顧録』の写本と断片を集めて来た」

「知ってるよ。だから何度も会ったんだろうが」

「言語が外国語なせいであとどの位の断片があるのか正直分からないが……それなりに読んだところすべて集まったか、残り1枚らしいところまでは来た」

「だからなんだよ?」

「内容がおかしいのさ」

キーシュは突然足を止め、振り向く。
油断した所を不意打ちするのだろうかと深読みした高野は反射的にポケットの中のボールに触れる。

「アードについて書かれた書物に『クルアーン』ってのがある。イスラームの聖典だ」

「バカにしてんのか?それぐらいは知ってる」

「これによると、アードとサムードの連中は神の警告を無視したが為に滅んだらしい。だが、俺様が最近手に入れた古い本には全く違う記述があってだな?」

神殿でもあったのだろうか。
建物跡の前まで2人はやって来た。

「そこでだ。戦いは一旦止めにして、貴様にも発掘を手伝ってもらおうと思ってな」

「……は?いや、待て。話について行けないのだが」

文献によって記述が違うのはよくある事なので分かる。
キーシュがアードを追っているので遺跡に来ることも分かる。
だが、それを敵である自分が手伝うと言うのが分からないのだ。

「細かい事は気にするな。確かに俺様の仲間には少なからず貴様を敵視する者もいるが安心しろ。俺様がよく言って聞かせたし、ギラティナも居る。流石に神に対して勝てない戦いをしようとは思わんだろ」

見れば、上空には黒い翼を大きく広げたギラティナが地上を睨みつけている。

「……俺は何をすればいい?」

最早考えば考えるだけ無駄だと悟った高野は、何かあれば仲間が駆けつけられる状況とキーシュの言葉を信じてまずはそこら辺の砂利をどかす。

「そうだな。無闇矢鱈と掘るのはやめろ。貴重な出土品に傷がつくかもしれねぇ」

「……何故俺を呼んだ?」

「待て待て。貴様は目視で探せ。特に大穴を見つけたら俺様を呼ぶことだ。いいな?」

「大穴?それだけでいいのか?」

益々訳が分からない高野だが何かしらの意味があるのだろう。
そう思いつつチラリと時計を眺めた。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.501 )
日時: 2020/06/24 10:38
名前: ガオケレナ (ID: 8rukhG7e)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


1時間が経った。
と、言うよりそろそろ2時間が経とうとしている。

高野洋平は開始早々に飽きが回って退屈でならなかった。

(暇だ……暇すぎる……。遺跡なんて大層な事言うけど何も無い"跡地"だからなぁ……。俺には良さが分からん)

作業を頼まれても高野は地表を掘る事は許可されていない。
言われた通り眺めて回る事しか出来ないのだ。

(大体アードが何だってんだよ……俺には関係ないだろ?そもそも、山背と石井は何処だ?)

ならば、と高野は2人を探す方向にシフトする。
これならば辺りを見て回る動きに変化は無い。

だが不思議なことに、見方を変えたせいでまた別の景色が見えてくる。
それは、主にゼロットの構成員と思しき人達だ。

その手に詳しいのだろうか、2、3人ほどが掘り進めているが、それ以外は高野同様石ころや砂利を払う程度に留めている人から高所から外を見ている者までいる。

だが、その中に2人の姿は無かった。

「俺様は……最近までシリアに居た」

唐突にキーシュが語り始めた。
自分が通り過ぎた時に声を掛けられたかのような雰囲気だったので、恐らくそれは高野に向けて放った言葉だろう。

冷静に考えれば、この中でその事実を知らないものは高野洋平ただ1人だ。

「シリアだと?本気で言ってんのか?」

「貴様に負けたせいってのもあるがな……。とにかく、俺様はそこで今の仲間と出会った」

「そう言えば大会にはお前のような人間は見かけなかったな。ずっとか?」

高野は探すのを止めてキーシュの背中が見える位置で岩の上に腰を下ろした。
本人としては休憩のようだ。

「ルラ=アルバスが軽く言っていたが……シリアでの戦争を終わらせるんだってな」

「あぁ、そうだ」

「俺とお前が此処に居る事に意味なんてあるのか?ギラティナがあるならこのまま攻撃しちまえばいいだろ」

仲間たちの視線が強くなった。気がした。
果たして彼らに日本語が理解できるのかまでは分からないものの、何かが変わったような空気を肌が感じ取る。

「俺様と……俺様の今の仲間達が集まった事にアードが少なからず関係しちまったのさ。同じ様な事を仲間にも言われたがな……。だが、俺様的には今知りたいのさ」

高野はラケルの話までは聞いてはいなかった。
それはルラ=アルバスも同じなのだが、そこまでは話す気が無いのだろう。
結局は分からずじまいだ。

「ギラティナは……あの日突然出現した」

「?」

「これは貴様にも関わりがあるんじゃないか?少し調べたら理由が分かったぞ?」

風が少し強くなった。
しかしだからと言ってちっとも涼しくならない所に苛立ちを覚えてしまう。

高野はそれもあってか、勢いをつけて着地するように立ち上がる。
そのまま彼へと近付いた。

「あの日……。ラケルが死んだあの日。8月の3週目の事だ。心当たりは当然あるよなぁ?」

そう言って彼は八重歯をチラ見せしながらニヤリと笑う。
敵対関係も相まって非常に不気味で、突如として緊張感が全身に回る。

「8月……だと?大会でのあの騒ぎしか……」

それでもピンと来ない。
ディアルガとパルキアが出現したのは8月8日。
2週目の土曜だ。

「原因はそれだ。何処ぞの阿呆がやらかしたようだな?」

「Sランクの人間が……よりにもよって量子コンピュータを使って直接データを打ち込んだ」

「知っている。貴様こそ馬鹿にしているのか?」

キーシュは発掘途中の地層から石の破片を取り出した。
だが、ただの砂粒だったようで、じっと見た後に放り捨てる。
土まみれの手を臆することなく真っ白なトガで拭く仕草をすると、高野と向き合った。

「まだ分からないか?ディアルガとパルキアが地上に放たれた結果、どうなった?」

「どうなったって……戦いを鎮めてからは何も……。何処かへ去って行ったぞ?」

この世のポケモンはすべて、あらかじめ入力されたデータが元となっている。
だが、言い換えてしまえば未だデータ入力されていないポケモンも存在する。
ディアルガとパルキアが"それ"だったので彼等はあのような騒動を巻き起こした。

では、ギラティナは?

キーシュがギラティナを持つと言う事は、

「まさか……お前が量子コンピュータを用いたのか?」

「全然違う。期待外れどころか殺意すらも覚えるぞ?」

キーシュはゆっくりと、ユラユラと体を揺らしながら近付く。
空を飛ぶギラティナを見つつ。

「奴らはディアルガとパルキアを使いこなせなかった。コンピュータで時空を表す事が出来なかったからだ。だから、2体のポケモンのあらゆるデータを初めに打ち込んだ。その2体のポケモンで時空を再定義して表現し直そうとしたんだな」

だからこそのタイムラグ。
その間に高野たちはオラシオンを起動する事に成功した。

「だが、貴様はそれで終わった。成功したと思っているな?」

「まだ……何かあるのかよ……」

ひどく追い詰められた気分と、海に面しているせいでジメジメとした暑さとで最悪だった。
今すぐにでも倒れたい。

「実はな……?ディアルガとパルキアはただ世界から消えただけじゃねぇ……。この世界と一体化した。この世界において曖昧な存在だった時間と空間が、ふたつのポケモンによって存在が証明させられたのさ」

「言っている事の意味が分からねぇぞ?それとギラティナが……」

まさか、と。
高野の中で大量に汗が流れ出た。
今、自分の思った事が正しければ、途轍もない大失敗を晒した事になる。

「世界の……バランスが、崩れた……?」

「そうだ。そのバランスを保たせる為にギラティナが産まれた……。自然発生したのさ。いや、世界"そのもの"がそうさせるようにバージョンアップしたのさ」

ポケモンが、人工知能が世界の有り様に介入した。
それは、法則そのものを塗り替えてしまう事への証明。

高野洋平はここで、自分ひとりではどうにもならなかった事をたった今、自覚した。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.502 )
日時: 2020/06/24 14:03
名前: ガオケレナ (ID: 8rukhG7e)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


休憩時間をいただいた。
暑さに敵わないのはキーシュらも同様であったようで、あまりにも発掘が進まないのも相まって不満が高まりだしていた。

そんな中での休憩時間の宣言。
彼がその旨を叫んだ瞬間、彼の構成員たちは道具を放り投げて走り去った。
もしかしたら、彼等の中では忠誠心や仲間意識というものが低いかもしれない。
それを思わせる光景を垣間見た高野洋平は、

「8時半……クッソ、まだまだじゃねぇか……」

時計を見ては項垂れた。

そこには、建物があったのだろう。
崩れた跡地には、上階なのか屋根なのかよく分からないが陽射しを防いでくれる天井と壁があった。
高野はそこで1人、水を飲む。

燃えるように熱くなった全身に冷えきった水が注がれる。
その瞬間、全身から汗が吹き出た。
高野はこれが感覚的に気持ち悪さを覚えるため、大嫌いである。

こうなる前にしっかりと休みたかったのだが、本人からは言えない。
だが、先程の仲間たちのやる気のなさを見て、自分もやる気を出さなくていい事が分かったのでその代償と考えればまだ許せた。

今、自分の号令1つでシスルに潜んでいるミナミやレイジ、そしてNSAの人間らが此方に突入する事が出来る。
そのタイミングを何度か伺っていた高野だったが、それが必ずしも正しいこととは思ってはいない。
ギラティナの存在もあるし、勘違いも甚だしいが少なからず敵対関係に変化が表れている。

(最後まで付き合う気はねぇが……しょうがねぇ。もう少し付き合うか)

少しは外の様子が見てみたい。
そう思った高野は日陰から離れてみる。

やはり、遺跡には誰1人として残って居なかった。
各々が休憩に行ってしまったせいでキーシュ位しかそこには居ない。

「ん?」

だが、それでも1人だけ作業しているのを彼は見た。
もしかしたら、キーシュの言葉を理解できない外国人なのだろうか。
休憩である事を知られておらず、1人黙々と作業しているのかもしれない。

高野は、彼に近付いた。

「えーっと……、今休憩時間だぞ?」

その人は、男性であった。
だが、高野の発した言葉が理解出来なかったのか不思議そうな顔をしてこちらを見る。
それに高野が戸惑うと、男は再び作業の手を動かした。

「えっと……Why……did、you……」

慣れない英語で会話を試みようとする高野。
当然発音も適当でたどたどしい。

「放っておけジェノサイド。奴は好きにやらせろ」

背後から聞こえるのはキーシュの声。
振り向いた瞬間に刺される事を頭の片隅に置きながら、用心するような面持ちで振り向く。

「奴の名はメナヘム。考古学に興味がある奴だ。奴は好きで勝手にやっている。そのままでいい」

「他の仲間は……?お前が叫んだ途端どっか行っちまったぞ?」

「それぞれ休んでいるだけだ。問題ない」

「とか言って、逃げられてちゃいねぇだろうな?」

キーシュは高野の指摘に苦笑いしたようだった。

「……貴様も気付いちまったか。その通り、この組織は俺様に対する不満だらけだ。俺様が好き勝手動いてきたってのもあるからな……」

「アードへの探究か」

「ゼロットの大多数の人間はシリア騒乱の終わりを望んでいる……。俺様が振るえば終わっちまうからな。だが、それを後回しにしてまでこんな事をしている事に不満を持つ人間たちが居るってことさ。逃げられる可能性に関してはさほど大きな問題ではねぇ。俺様は去るものは追わず……ってな。勝手にやってろと言いたい。ま、逃げて尚も生きていられればの話だがな」

どうにもモヤモヤしていて仕方がない。

NSAの連中はキーシュとその仲間たちを極悪人に仕立てあげたかったのか、恐ろしいイメージを植え付けているところがあった。
恐怖と力で支配し、組織を意のままに操る。

どこか、そんな姿でキーシュを捉えていた。

「じゃあ、その気になれば……石井と山背も?」

「コレが終わって本人達が帰りたいってんなら解放してやるよ……。自分たちから志願しておいて辞めたいなんて言うのは身勝手極まりねぇがな……。ま、その時ぐらい1発殴っても問題ねぇだろ」

高野としては、2人を保護出来ればあとはどうでもよかった。
その過程で平和的に解決出来ればそれに沿いたい思いもあることにはあった。

「あの2人は……どう言った形でお前の元へ行ったんだ?」

「夏の大会が終わり、俺様が一時日本に戻って来た時の事だ。どういった情報を手に俺様の所へ来たのか分からないが……突然こう言った。"僕と彼女を仲間にしてくれ"ってな」

それはつまり、その段階で石井と山背が付き合っていたと言うことだろう。
そしてその言葉から察するに、山背からの申し出である事が伺える。

「俺様ははっきりと答えた。Noとな。だが、やけに男の方が引き下がらなくてな……。何故そこまで深部に拘るのか聞いてみた。そしたら言ったのさ。"ジェノサイドが再び深部に身を落とした"と」

「……」

高野の大学の友人たちに共通する事は、"高野洋平はジェノサイドだった。だが、香流慎司に破れた事で深部からは手を引いた"という認識を持っていたことだ。

だが、それは大会時に粉々に砕けることとなる。

「ジェノサイドはデッドラインとして新たに活動している……。あの時の行動が無駄だった。そんな事を言っていたっけなぁ?」

他にも、"深部にはチャンスがある"、"稼ぐにはピッタリ"、"強くなれる"などと山背は何も知らない癖に堂々と主張していた事をキーシュは教えてくれた。

確かに山背という男は深部という世界に少なからず興味を持っていた人間だ。
そこに、高野洋平というある種の魅力に溢れた人間と関わる事が出来て尚且つ、再び深部の世界に身を落としたと聞けば、行動にも変化が現れてしまうのだろう。

「要するに、俺のせい……。って事か」

「だろうな。試しにジェノサイドを殺せるかと聞いてみたらなんの根拠もなしに"殺せる"なんて言いやがってなぁ……?こういう人間を何て言うんだっけか?意識高い人?」

カテゴリがあるとするならばどちらかと言えば"意識高い系"だろう。
見せかけでしかないのだから。

「休憩時間はあとどの位だ?」

「1時間だ」

「そぉかよ」

高野は時計を見つめながらそう尋ね、そして元の建物の跡へと戻って行った。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.503 )
日時: 2020/06/26 17:21
名前: ガオケレナ (ID: 8rukhG7e)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


そろそろ休憩時間も終わりとなる頃。
キーシュが高野の元へとやって来た。

「大穴は見つかったか?」

「ねぇよ……あったら伝えてる」

WiFiを繋いだ状態で高野はスマホの画面に集中している。
今更キーシュへ意識が向くわけが無い。

キーシュは日の陰に入りつつ壁とその向こうを上半身を乗り出すように眺めた。

すると彼は、無言で真下に座っている高野に拳を振り下ろした。

「いてっ……」

「見つけたら言えと言ったはずだ……貴様、まともな探し物すらも出来ねぇのか?」

小声で文句を垂れながら高野はキーシュの合図のままに、それまでよりかかっていた壁をよじ登り、その向こう側を見る。

そこは暗くてよく見えなかったが、更なる闇が広がる事だけは瞬時に理解出来た。

そちらへスマホの画面をかざす。

「あれは……?」

巨大な裂け目がそこにはあった。
まるで、巨人が大地を掴んでは思い切り真横に引き伸ばしたかのような、決して不自然には見えない、大きな穴が。

「おい、あそこに何か変なのが……」

「メナヘム!!メナヘムッッ!!」

高野が振り向いてキーシュに声を掛けたのと、仲間の考古学者を呼ばんとキーシュが叫んだタイミングが偶然にも一致する。

声を聞き、メナヘムが走ってやって来た。

「あれなんだが……分かるか?」

「見てみよう。少しライトをいいかな?」

高野が立っていた位置に今度はメナヘムが登る。
何かを求められているのを察した高野は、明らかに彼の手の先にあるスマホを与えた。
辺りが陽の光で明るく、画面の光量を最大且つ照明時間を15分程に設定したせいで最早電灯代わりになっている。

何もそこまでしなくていいだろうに、自分のを使えよと心の中で呟いた高野は、言葉が通じない代わりに表情でそれを示す。

「……」

メナヘムは2分ほどその先を眺め、すました顔をすると壁から降りる。

「どうだ?分かったか?」

「やはりな……思った通りだ」

メナヘムは、高野には通じない言語でキーシュと会話しつつ感謝の言葉のひとつも無しにライトを彼の手の上に置く。

「穴の先は暗く、深すぎて見えない。恐らく何十メートルとあるだろうな」

「流石にその先は無理か……」

「だが、あれでハッキリとした。建物の真下にポッカリと空いた穴……。今でも仮説でよく唱えられているものと一致している。アードの滅んだ原因はズバリ地盤沈下だ」

「そうなってしまうのかよ……」

キーシュはどこか落胆しているようにも見えた。
互いの言語が外国語なので、後になってキーシュが高野に日本語でそれを教えてはくれたが。

「聖典の記述は少なからず間違いではあるな。じっと耳を澄ませばそれでも遠くからではあるが水の流れる音が聞こえる。地下水の地盤沈下。それ以外に答えは無いね」

「ハハッ、じゃあなんだよ?それは……」

キーシュは突然、ふざけた物を見る調子で笑い出す。

「俺様の先祖は……好き勝手やった挙句にこんな事にも気付けず、この地下に埋まっちまったって訳か?」

「流石にこんな事が突然1つの街規模でやられたらどうしようもないだろ……。恐らくコレから逃れる事の出来た人々がイスラーム勢力などと合流して同化したのだろう。そして、その子孫が……」

「俺様……か」

そこに、聖典の記述のような暴風は無かった。
あるのは、過去の栄光と共に埋没したただの"跡地"だ。

「預言者の回顧録にも大穴の記述がある。この時代から既にあのような状態だったのだろう」

「コレで……終わりだな」

キーシュは、2人がどんな会話をしているのかさっぱり分からないせいで、きょとんとしている高野を見ると、

「此処での調査は終わりだ……。貴様の友達は此処には居るはずだから話でもなんでもして連れ去るなりしろよ」

「それは……ちょっとアッサリし過ぎてないか?いいのかよ?そんなんで」

「黙ってろ、これは俺様の事情だ。貴様は貴様の用事だけ済ませてしまえばいいだろうが」

状況がうまく飲み込めず、本当に言う通りにしてしまっていいのだろうか。
最後まで戸惑う高野だが、そこに2人が無事に居てくれれば問題は無い。
言われた通り遺跡の中を走り回り始めたのだが、

銃声が間隔を空けずに鳴り始めた。

姿を隠して潜んでいたゾロアークが、彼の襟を掴んではぶん投げる。
高野はその反動で倒れ込んだ。

「一体……なにが……?」

明らかに拳銃1つで鳴る音では無かった。
ライフルを装備した人間が乱射し、更に乗り物に取り付けた火器も加勢しているような身の毛もよだつ恐怖の音だ。

「遅ぇな……。連絡が遅すぎるぞデッドライン」

入口方向から聴こえたのは彼の知る人物の声。

「イクナートン……?」

「お前は個人で動いているのではなく、集団で動いているという自覚が足りないよなぁ?何度注意した?何度同じ事を言わせた?本当に……連絡は必ずしろと言ったはずだ」

ハッとして高野は時計を覗く。
だが、示されている時刻は10時。
逆に、彼の行動が分からない。

「お前こそ何をやっているんだ!?俺は"連絡を攻撃合図とみなす"としか伝えられていないんだ!何時に送れだなんて聞いていないぞ!?」

「それで?悠長に穴掘りしてましたってか?ふざけるのも大概にしろよ」

彼の背後から。
銃火器で武装された兵士が数名なだれ込んで来る。
一方的な攻撃が、戦闘が始まった。

ーーー

「やられたな……」

「大丈夫か?キーシュ」

物陰に隠れたキーシュとメナヘムは外を気にしつつ上空を飛ぶヘリに憎しみの眼差しを向ける。

「奴のことだ……。こうなる事は予想していた。少し乱暴な所はあるが……、まぁNSAの連中のことだしな。俺様を殺したくて仕方がないらしい」

キーシュは無言で腕を掲げる。
ギラティナがそれに気付くと同時に挨拶代わりのように巨大な尾を使ってヘリコプターを両断した。

「"敵"が攻めてきたぞっ!!全員持ち場に着けっ!!」

キーシュが叫ぶ。
すると、休憩で離れていたはずのゼロットの面々がこれを待っていたかの如く、方々にバラけるとそれぞれの反撃を展開し出す。

無防備に寝ていた高野も流石に危機感を感じ、隠れられそうな場所を探しに駆ける。

その間にも敵味方関係なく倒れる人影があった。

(クソッ……なんだよこれ……、これじゃあまるで戦争じゃねぇかよっ!!)

高野はそれまで自分が休んでいた建物跡の中へ飛び込んだ。
しかし、助走が強すぎたようで岩の壁に背中を強打してしまう。
痛みに悶えつつ身を屈めて様子を見た。

味方は人間とポケモンを使って攻めているようだった。
対してゼロットはポケモンを主として、そうでない人間が手榴弾を投げて抵抗しているように見える。

当然ながら、状況が分からない。
高野洋平が昨日、やぶれたせかいから戻って来た後もこのような展開を見せる作戦など1つとして知らされていなかったからだ。

どちらに向かって攻撃すればよいのか、判断出来ない。
一瞬そのように過ぎるも、

一つの爆発で数十人が吹き飛ぶ。
その誰もが武装した兵士であり、その爆発の原因はギラティナがやぶれたせかいから発した遠隔操作である事に間違いは無かった。

「一方的じゃねぇか……」

ギラティナの前ではどれ程までに身を固めても無意味だと言うことを知らしめてくれる。
その圧倒的な力に、人間もその辺のポケモンでも及ばない事がたった今証明された。

徐々に味方からの勢いが弱くなっていく。
主戦力であるだろう部隊が尽く潰され、そちらから響くのはポケモンの発する技の音のみという始末だ。

「イクナートンっ!!イクナートンッッ!!」

高野は無線機越しに叫ぶ。
だが、どうせ文句が飛んでくる事を感じ取っているのか、そちらからは何も聴こえない。

暫く固まっていると、一方から物音が全くしなくなった。
どうやら、味方はどれもギラティナに倒されたらしい。

高野は、今姿を現しても大丈夫かどうか、試しにとボールを1つ投げる。

出て来たのはラティアスだ。

そのポケモンは地上に出されるやいなや、空を、宙を飛び回る。
状況に反して楽しそうだ。

「大丈夫……か?」

しかし、そのポケモンに対し誰も彼もが攻撃を放とうとしない。
あくまでも、戦意が無ければ互いに様子を見ているようだ。

高野は恐ろしさを抑えつつ外へと出た。

NSAの面々とミナミ、レイジが、

5m程の高さのある岩の上に座り、地上を見下ろしたキーシュとその真上を飛ぶギラティナを睨んでいる。

「どういう……つもりだよ?」

一転して静寂に包まれた中で、高野はキーシュらに対し背を向ける。
その先に居るのはルラ=アルバスとイクナートンだ。

「テロリストを確保する。それ以外にあるか?」

「ふざけんな!!此処には俺の友人だって居るんだぞ!?勝手な真似すんなよ!!」

「その友人も……テロリストの仲間だろ?捕まえようとして何が悪い?」

「てめぇ……」

今この場で彼を殴りたくもなったが、思わぬ反撃が飛んできそうなのでそれは思い留めた。
彼の他にも銃を持った人間が3人ほど見えたからだ。

「そういう事だ!!貴様は少し違うようだったが、NSAの連中は何としてでも俺様と戦いたいようだ。ならば……それに応えるのが礼儀ってモンだろう?」

「何が礼儀だよ……俺は、」

しかし、敵も言い訳が答えられる時間を与えてはくれない。

ポケモンを手にしたゼロットの構成員が溢れ出てきた。

「クソッ……結局こうなるのかよっ!?」

今度はイクナートン達を見る。
ポケモンを使う人間が限られているのか、相手の期待に答えようとしているのがミナミとレイジのみとなっている。
このままでは、袋叩きにされるのが目に見える。

高野も対抗せんとボールを幾つか握っては放り投げた。
ラティアスとゾロアークと合わせて5匹程のポケモンが高野の周囲に展開される。

「貴様もその道を選ぶのか?」

「勘違いするな。俺は……お前たちと戦う為じゃねぇ。……俺の仲間を守る為に戦うんだ」

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.504 )
日時: 2020/06/29 22:09
名前: ガオケレナ (ID: pkc9E6uP)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「ニャオニクス、'リフレクター'だ」

呼び出したポケモンの内の青い体色の1匹が誰よりも早く半透明な壁を自身の周囲にめぐらす。
ここに来て昨日の経験が役に立った。
これならば、高野洋平が拳銃の餌食になる事はない。

前を見る。

相変わらず、ポケモンとその使い手で溢れていた。
明らかに数で圧倒されてはいるが、もうここまで来て引き下がれない。

やるしかないのだ。

(とにかく俺の方へ引きつけるしかねぇ……。幻影の映る範囲に寄せるしか方法が分からないっ!!)

メガシンカさせたメタグロスで迫り来る前線を、ゾロアークの'ナイトバースト'で左翼の一部分を吹き飛ばす。

こうする事で少しでも自分に意識を集中させる。

「おい、この野郎!!」

前方から声が聴こえる。
昨日やぶれたせかいで戦った男だ。

「お前は……昨日の……」

「僕達はもうすぐで悲願が達成されるんだ!!1番大事な所で邪魔するなよおおおおぉぉ!!!」

その、口髭を生やした男は怒りのあまり涙をうっすらと浮かべているようだった。
高野はいまいち、その男が何に怒っているのかが分からない。

「とか言ってよぉ!!お前さっきまでの発掘調査ロクに協力もせずにサボりやがってたよなぁ!?なのに何が悲願だよ訳分かんねぇんだよ!」

「そんなのどうでもいいんだよぉ!僕達にはもっともっともっと大事なものがあるんだ!!それの……邪魔をするなよぉぉぉっっ!!」

彼の叫びがポケモンにも直接響いているようだった。
それと同時に彼の操るポケモン、ノクタスの'ニードルアーム'が大きく振るわれる。

大胆且つ大きな攻撃なため避けるのは容易だった。
ゾロアークは難なく翔ぶ。

しかし。

「うっ……ぐあっっ!!」

高野は不意に声を漏らした。
ノクタスの技は問題なかった。
その腕から吹っ飛んだ棘が彼に突き刺さったのだ。

右腕で顔を覆ったのが幸いだった。
その痛みは腕に集中していたからだ。

だが、高野も目の前のアスロンゲス1人に集中している訳にはいかない。

その後ろから、既に追っ手が迫っている。

(やるしかない……。前線の敵が俺に集中している今だ……っ……!いっ、、けぇーーーっ!!!)

高野とノクタスの間に入ったゾロアークが両腕から光線を発する。

射程圏内を暗黒に包んで目くらましをさせる。
その間に不意打ちを当てて無効化させる。

高野の作戦が今、成されようとする中。

「俺様の事忘れてんじゃねぇよバァーカ」

離れた位置に居るはずのキーシュの声が響く。

突如として突風が吹かれた。
ゾロアークが幻を魅せようとしたその瞬間を、ギラティナが巨大な翼と尾を使って撹乱して来たのだ。
技と同じで発動されなければいい話。

「だったら……貴様のゾロアークに幻影を魅せる暇を与えなければいいだろう?」

5m越しの声が何故か聞こえる。
どうやら、異空間を伝って届けているようだ。

吹き飛ばされたゾロアークは上空で何度か体を回転させるものの、その瞬間は来た。

今度こそ幻を発動させようとした所を、

ギラティナが虚空から現れてはそのポケモンを薙ぎ払う。

「なっ……なんだよそりゃあ!?」

動きが読めない。

高野洋平という1人の男の、これまで培って身に付いた常識をこのポケモンは軽々と破ってしまう。

その間にも、ゼロットの軍勢は今にもやって来る。

(どうしたら……?)

現世と異界を行ったり来たりするギラティナは捉える事が出来ない。
それどころか、やぶれたせかいから放った、世界線を無視した遠距離攻撃がレイジとエーフィを掴んでは遥かに飛ばしてしまう。

「レイジ!?」

ミナミは血を撒き散らしたレイジのその姿を見て動揺する。
いくら以前にディアルガとパルキアとほんの少し戦ったとは言っても性質が違いすぎる。

「どうしたら……どうしたらいいの……?」

彼女はまた別の戦いを見る。

弾き飛ばされた高野のゾロアークが、回り込んで待機していたバラバの手持ちポケモン、カポエラーが'フェイント'をかます。

技を受けたゾロアークが'カウンター'を打とうとしたその隙を、背後に現れたギラティナの'シャドーダイブ'で叩き潰される。

完璧なまでの連携。
隙が存在しない。

戦えるうちの1人、レイジが離脱した今、その結末は誰が見ても明らかとなり。

高野洋平は視線を腕に落とした後に目を瞑る。

その時。

近くで爆発が起きた。

白い煙が立ち上る。
その中から、カメックスと思しきポケモンが姿を見せては変身しつつ、技を放つ。
その鉄砲水はカポエラーを呑み込むことで、しばしの余裕がゾロアークに生まれた。

「だ、誰だ……?」

キーシュは突然の事に驚くも、その刹那その瞬間だけは赦しを与えてしまった。

視界を奪う闇が、目が使い物にならなくなったのではと思いたくなる程の、あまりにもリアルすぎる錯覚がゼロットの構成員の"すべて"を惑わせる。

結果として。
全体的な攻撃が止んだ。

そこへ、

「待たせてごめんなさい!!やっと会えましたね、リーダーっ!!」

それは、親の声よりも聴いた声だった。

「いや、時間通りじゃねぇか助かったぜ……ハヤテ」

それは、日本に居た赤い龍の構成員たち。
元ジェノサイドの仲間がこの為にと駆け付けて来たのだ。

彼らはゾロゾロと遺跡の中へと入り込んでくる。

「3日も掛かってしまいました……」

「何言ってんだ、後から連絡した事の方が多いのによく此処まで来てくれたよ……。それで、相手なんだが……」

「ギラティナ……ですか」

ここで戦士たちは見た。
この争いの根源ともいえる、圧倒的な力を。その正体を、その目で見たのだ。


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