二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/11/28 13:33
名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走カーチェイス>>536-

行間
>>518,>>525,>>535

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.230 )
日時: 2019/01/25 18:33
名前: ガオケレナ (ID: 1T0V/L.3)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「えっ?えっ、うわあああ!!」

一番驚いたのは正面に立って戦っていた佐野だった。
彼は戦うことしか考えておらず、どのように攻略しようか知略を巡らせていたところだ。
そこにいきなりピカチュウが割り込み、電撃を放ったと思ったら相手の男は膝から崩れ落ちたのだから、佐野からしたら予想外にして意味の分からない出来事だった。

「えっ、なに今の?バトルは?」

「しなくていい」

倒れた男の様子を見て完全に気絶しているのを確認した常磐は辺りを警戒しつつ男から離れた。

「えっ?でもハッサムは出てるまんまじゃん」

「お前冷静に考えろ。トレーナーが居なきゃそもそもバトルは成り立たないだろーが」

「それは知ってる。でも今のが有りになるのかがよく……」

「分からないってか。そしたらあそこに突っ立ってる当事者サマに聞きな」

常磐が顎を使って場所を示す。佐野がそちらを向いた方向にはジェノサイド……ではなく高野がいた。


ーーー

「俺達のバトルに、基本的なポケモンバトル以外のルールはありません」

高野は、自身の友達と歩きながら説明を始めている。

「不意打ちなんてしょっちゅうっすよ。だからこそ俺はゾロアークを使って化かしたりとかしているんすよ」

「ほらな?言ったとおりだ」

最初は信じられなかった佐野も、高野の話を聞いて黙り込んでしまう。本当にヤバい所に足を踏み入れてしまったと思いながら。

「にしてもナイスだったなさっきの。誰のポケモン?ってか、この中だったら一人しかいねぇか」

「まーゾロアークとも渡り合えるピカチュウだからな」

「盛るねぇ。結局負けそうになったくせに」

話の内容とメンバーのせいか、普段のテンションとなる高野。だが、うっすらと基地が視界に入った事でジェノサイドへとならざるを得なくなる。

「とにかく、皆帰れ。ここはお前らがいる場所じゃない」

「でも、レン君が危ない目にあってるじゃないか」

「これは俺がしくじった結果です。先輩達には何ら関係はない」

「だったらさ、」

松本がひょっこりと顔を出してきた。

「何でこれまでレン君はわざとらしく僕達に深部の存在を教えたり、横浜へ連れて行ったりしたんだい?今考えると深部へのアピールが露骨なようにも見えたんだけど?」

「それは……」

ただのノリ、話の流れとか色々言い訳が思い浮かぶ。実際本当っちゃ本当なので言い訳として片付けられたくはないが。

「それは、ノリ……」

「助けが欲しかった。そんな思いも少しはあったからじゃないのか?」

高野は、予想だにしなかった言葉を受けて固まった。

少なくとも間違ってはいないからだ。
深部の頂点とは言っても、それは孤独との戦い以外の何物でもなかった。
誰も助けてくれる人はいない。仲間になることを求めても、皆結局欲しいのは深部のトップという肩書きだけだった。
勿論組織内での仲間同士では助け合うことはあるしそれは最早常識だ。

だがジェノサイドに協力しようとする外部機関が存在しなかった。

同じSランクのゼロットは外部と協力し、出回っていない新戦力を手にしていた。

同じくアルマゲドンも、目的を同一としていたゼロットと協力関係にあった。

ジェノサイドだけが、自分たちの力だけで道を切り開いてきたのだ。
自分のやり方が違っていたのかもしれない。そもそも同じ目的を持つ組織自体を知らなかったかもしれない。

それも、深部連合の時までは。

だがそれも今となってはほとんど役に立っていない。これを機にジェノサイドに入った人以外での音沙汰はあれから何も無いからだ。

連合を設立し、議会を相手に戦った。

そんな巨大すぎる功績を打ち立てたものの、現状に満足できない我がままなジェノサイドは舌打ちするしかなかった。

「好きにしろよ。ストレスを発散できるいい場だしな」

本音を言えないジェノサイドは強がるしかなかった。

そう言って、ジェノサイドは基地とは真逆の林の奥へと進もうとする。

「待てよレン。お前どこ行こうとしてんだよ」

常磐が手にする銃器を動かして金属音を響かせる。しかしこんな事がよくあるジェノサイドにはなんの意味もなかった。

「まさか自分だけ逃げようってか?」

素人の割には深部事情を心得ていることに少し感心し同時に疑いへと変わるも、本当に"ただ知っているだけ"なのでそれ以上の詮索はしない。

「似たようなものっす。もうこの基地は使えない。防戦一方としては狭いこの敷地ではどんどん不利になっていく。だから仲間引き連れて逃げるんすよ。一定の組織間の接触がなければ戦闘はなくなったものとみなされる。そんな決まりがありますしね。だからその為の準備を」

仮に逃げ続けていても、議会からも追われる。その時になってももし逃げ続けることが出来たら少しは状況も変わるかもしれない。

ジェノサイドにはミナミとバルバロッサを見つけることと、リグレーを設置するという仕事がまだあるのだ。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.231 )
日時: 2019/01/26 17:06
名前: ガオケレナ (ID: UMqw536o)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


目の前の少女めがけてキノガッサが駆けた。
始まりはそんな単純なものだ。一方の意思などどうでもいい。
片方の「戦う」という意思表示がされれば戦いは始まる。

「'マッハパンチ'」

言い終わる頃に目の前の少女、レミはポケモンを出す。

「この子には効かないよ。お疲れー」

余裕なのが明らかなレミが出したのはオーロット。
眠りも格闘技も効かない、キノガッサにとってみれば最悪の敵だ。
'マッハパンチ'は透かされ、不発に終わる。

「じわじわと死んでいきな……'おにび'っ!」

オーロットの周囲に怪しいという感情でも思い浮かびそうな小さな火の玉が数個出現すると、一直線にキノガッサに迫る。
現れた三つの火の玉のうち二つは避けることができた。だが最後の一つ。
二つ目の火の玉を避けた位置にそれは進んでいったので避ける程のスペースとスピードが無かった。

ドン!!と鈍い音が響くと、直撃により吹っ飛んだキノガッサが大きな木の根元まで転がる。

「あっ……キノガッサ、大丈夫!?どうしよう……」

一つ間違えたのはミナミが油断していたことだった。
'おにび'の命中率からして、"避けることのできるもの"という認識に過ぎなかった。これまでもそのように戦ってきた。
しかし、経験したことのないSランクの実力者の前ではそれまでの未熟な技は通用しない。
今ここでミナミは、何故自分がAランク止まりなのかを悟った。

「アナタには必ずとりあえずデカい門番がいた」

レミがぼそっと言ったのと同じタイミングでオーロットの姿が消える。
レミは犠牲を払ってまでキノガッサ相手に'ウッドハンマー'など撃とうとはしない。
この状況で'ゴーストダイブ'など、「交換してください」と言っているようなものだ。彼女もそれを思ってあえて少なくとも格闘タイプ相手にはダメージが入るであろうこの技を選択した。

しかしいつまで経ってもミナミはキノガッサを交代しない。

(何故!?そろそろオーロットは虚空から姿を現す時……なのに何故あの子は交代しようともしないの!?ただ突っ立ってるだけの戦法なんて有り!?)

心の中ではこんな事を思いつつも、レミは話を続ける。

「赤い龍では何でもやってくれるレイジとかいう男がいて、今度はジェノサイドという立派な門番がいる……。楽よね、箱入り娘なんて。それで?今度はその門番を守る?守る事が仕事な人を守るだなんてよくもまぁそんな軽々しく言えたもんよね」

オーロットがキノガッサの背後に現れる。
闇討ちのような、斬撃にも似た鋭い攻撃がキノガッサの背中を打った。

どうにかキノガッサはその場に踏み止まり、耐えたようにも見える。

「確かに、すごく簡単に言ったんだと思う。軽々しく言ったと思う」

ミナミのその言葉に呼応するかの如く、キノガッサは火傷に苦しみつつもオーロットを睨むと走り出した。

「言った当初はすごく軽い気持ちで、どうにかなると思った。でも今こうして"本物"を見るとその言葉の意味がどれだけ重いかが分かったの。でもね」

遅いオーロットが躱す事のできるものではなかった。
ついにキノガッサはオーロットの頭上へと跳ぶ。

「今までアイツらがそんな本物を前にしてもウチらを守ってくれた事も同時に分かったしどれだけ難しいことかが分かったから想いは変わらない……むしろやってやるんだっていう強い想いに変わったのよ!!」

周囲に小さな石が五、六個ある事に気づいた時はもう遅かった。
キノガッサは、オーロットに向かってその石を投げつける。一個一個では大したことはなくとも、すべてが合わさればその身を封じるのにはうまく作用できる。

(この期に及んで'がんせきふうじ'?一体何故……)

レミは益々不思議に思うも、技を放った後に着地したキノガッサがそのまま倒れたのでそれがせめてもの悪あがきだという事に気づく。

「これで一体目。しかし可哀想ね。今のキノガッサに一番ダメージを与えることの出来る技がそれだったとはね。でもあんまし意味無いみたい」

「じゃあこの子はどう?ゴロンダ!」

その名前に対し体の反射神経が反応した。
すぐ様「今度はこっちの相性が悪い」と思わされる。

真っ赤なモンスターボールからは想像出来ない程の巨体を持った"獣"が出てくる。

「また格闘タイプ……本当に好きなのね」

やや呆れてこのポケモンに対しどう出るか考える。
交代することも考えたが、このままオーロットでじわじわと時間稼ぎするのもいい。
このままで行くことにした。

「'かみくだく'」

ゴロンダがその鋭い歯を見せ飛び掛ってきたその瞬間にオーロットが、レミも動く。

「'やどりぎのタネ'」

今までキノガッサ相手に使えなかったからか、まるで封印が解かれたかのように、地面から無数の蔓が生え、それらがゴロンダを縛り付けようと伸びてゆく。

だが一歩遅い。ゴロンダがオーロットに噛み付いたときにはその蔓がゴロンダに巻き付くことはなかった。
オーロットは苦しそうに、腕を思い切り振り上げてゴロンダを放り投げる。

「そうか、さっきの……」

何故オーロットの動きが一歩遅れたか、その意味をレミは理解した。

「死に際のキノガッサの'がんせきふうじ'の追加効果ね?アナタはこんな展開になると見込んであの技を放ったのかしら」

「さぁね!都合のいい様に考えているのが一番よ」

強気を取り戻したミナミを見て、レミはうっすらと笑みを浮かべた。
これだ、こんな対等でいつギリギリになってもおかしくない戦い。

それこそが、レミの求めていたバトルだった。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.232 )
日時: 2019/01/26 17:10
名前: ガオケレナ (ID: UMqw536o)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


人気が全くない、基地が燃える炎の輝きすらもあまり見られることの出来ない奥底で、ジェノサイドは特定のリグレーを呼び出す。
もしものための緊急脱出用に教育を施させた特別なリグレーだ。

「頼んだぞ。もしもの時にはお前のお陰で救われる命だってあるんだからな」

頭をポン、と叩くとジェノサイドは暗闇にリグレーを置いて次の箇所へと進む。

今自分の友達先輩が何をしているのかがすごく気になる。
たとえ部外者に見えても、戦場に立っている時点で、相手が知らない存在とかち合ってしまったら敵と判断されてしまう可能性もある。
今度こそジェノサイドは人の命の危機を感じ取った。
今度こそ、自分のせいで失われる命があるのかもしれない、と。


ーーー

オーロットは二発目の'かみくだく'で倒れた。
こちらは無傷の状態で、一先ずレミの一体目のポケモンを倒すことができた。

「まー、端からAランクとSランクなんて差がありすぎるから一方的な戦いになるかと思ったけど、ねぇ。これくらいは当然だよね?」

休む暇も与えることなく、次のポケモンを呼び出す。

「それじゃーお願いね。ギャラドス」

ルアーボールからはこの世では珍しいであろう真っ赤なギャラドスが地に尾をつけて、まるで待ち構える大蛇のような姿でゴロンダを、ミナミを睨みつける。

「……っ!」

ほんの少し圧倒されそうになったミナミだがそうはしていられない。
ゴロンダに'かみくだく'を命じて、走りゆくゴロンダを見つめていた。

「遅いねぇ」

迫るゴロンダをまるで蝿でも叩くような感覚で、ギャラドスは自身の尾を振り払って叩き飛ばす。
一直線にゴロンダは巨木の幹に直撃した。

「ひっ!?」

反動で起きた風圧を受けてミナミは変な声を出した。
よく見ると水の雫が滴り落ちているのが見える。

「'アクアテール'よ。本当は'たきのぼり'でもよかったけど、あの追加効果には期待できないし」

何とか立ち上がるゴロンダを見て、ミナミは内心ホッとした。
不遇だ何だと言われ続けているポケモンだが、数値だけ見れば大したものだ。
再びギャラドスの前に立つ。

すると、命令も無しにまた同じように走り出してしまった。

「だめ!それじゃあまたさっきの技を……」

主の命令が聴こえなかったのか、そもそも聞かなかったのかは分からない。
だが、ゴロンダに芽生えた闘争心がその身体をフルに動かしているのはミナミなりに感じ取れた。

しかし、同じような攻撃パターンは相手からしたら隙でしかない。
同じ方法で、レミはその方向に腕を伸ばすと、荒波のように大きく迫力のある尾がゴロンダを捉え、そして再び叩き飛ばした。

……ように見えた。

ゴロンダは、吹き飛ぶこと無く大きな尻尾にしがみつく形でダメージを受け流していたのだ。

「あれは……」

「……どうして!?」

双方から見てもミラクルな光景だっただろう。誰の命令もなしに、ただ表れた闘争本能だけが、自己のポテンシャルを上回る程の動きを魅せてくれている。

どんなに振り回してもゴロンダは落ちない。
いい加減イラついたレミは、

「地面か木に叩きつけろ!」

それに応じ、ギャラドスは真下に向かって自身の尾を思い切り大地に叩きつける。

ゴロンダが、インパクトの直前で離れる形で。

痛みにもがくギャラドスを見てチャンスだと感じたミナミは今度こそ聴こえるように命令する。

「今よ!'ストーンエッジ'!」

無数の鋭い岩の刃が、ギャラドス目掛けて突き進んでゆく。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.233 )
日時: 2019/01/26 17:18
名前: ガオケレナ (ID: UMqw536o)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


ドン!ドドドン!!と、鋭利な刃物が勢いよく射出されて突き刺さっているかのような嫌な音がしばらく耳に続く。

ギャラドスはまず倒れそうになりつつも、重い胴体を踏ん張って支えることで態勢を立て直して再びミナミとゴロンダを睨んだ。

「'いかく'込みだもの。一発でやられるようじゃあアタシが辛くなるわぁ」

「アンタの事情なんてどうでもいい」

ミナミは、一つの可能性を感じながら再び'ストーンエッジ'を命令する。

しかし。

「'じしん'」

レミのギャラドスが地を揺らしてゴロンダを攻撃すると共に、'ストーンエッジ'も外してみせた。
二度の技を受けてとうとうゴロンダは地に伏せてしまう。重いものが倒れるような轟音が響いた。

(やっぱり……)

だがミナミからは絶望が感じ取れない。彼女が感じた可能性が見事に的中していたからだ。

(さっきの'じしん'……あれはダメージを与えるためじゃない。ウチの技を外すために、間接的に避けることであの技を使ったんだ!)

思えば'かみくだく'の時も'アクアテール'で吹っ飛ばしていたし、技を当てられた時と言うのは、自分でも予想できなかった幸運によりできたものだ。これらの出来事からギャラドスの突破口が開かれてゆく。

(あのギャラドスは……ウチの技を避ける程のスピードを持っていない!!)

それに呼応するかのようにゴロンダが最後の力を振り絞って立ち上がった。
もう体力がないのは見るだけでなく感じ取るものだけで理解した。

「お願い……最後だけ力を貸して!」

「はぁ、結構しぶといねぇ。でもいいわ。次で倒してあげる」

ゴロンダが走り出した時、レミの目が敵を叩き潰す目へと変わった。そして、迫り来る小熊を、冷酷かつ無慈悲に振り払うかのようにギャラドスに冷たく指示をする。

「'アクアテール'で吹き飛ばす」

呼応し、ギャラドスは尾に水をまとわりつかせてゴロンダに叩きつけようと振るう。

「ジャンプ!」

しかし予想してたとばかりにミナミが直前に命令。
ゴロンダに届き、その通りに動くまでの時間の余裕があった。
'アクアテール'をジャンプで越え、途中の木を足場にすることでさらに高くへと飛んだゴロンダはギャラドスの頭上遥か上に到達する。

「まさか……あの子……っ!?」

「よし!そのまま真下に向かって……」

「させない!'こおりのキバ'で迎え撃って!!」

レミにとっても予想外の動きに出られてしまった。'アクアテール'をあらかじめ予想して真上から攻撃するつもりだったようだ。
しかし絶え絶えのゴロンダに技の一つでも与えられれば倒すことはできる。そして恐らくだが空中戦になれば自由に動けるギャラドスが有利だから負ける要素もないように思っていたところだ。

上空からのゴロンダの'かみくだく'とギャラドスの'こおりのキバ'。
顎の対決になるかと思った時だ。

「'すてゼリフ'!!」

再び予想外の言葉が聴こえた。

「……、えっ?」

ゴロンダが空中で何やら叫ぶとその地点からボールに吸い込まれていく。
レミは、彼女が何を考えて何をしたいのかが全く分からなかった。頭が真っ白になり、視線が固まる。

そしてガラ空きとなった胴体、即ち地上部分に、ミナミの最後のポケモンエルレイドが参上する。

思考停止となったレミが追いつける訳がなく、

エルレイドの肘から飛ばされた'サイコカッター'が横一閃に放たれた。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.234 )
日時: 2019/01/26 17:22
名前: ガオケレナ (ID: UMqw536o)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


無防備な身体に刃が当てられる。

接触した反動でギャラドスは吹っ飛び、その長い身体をなびかせるようにスローモーションでレミの頭上を越えていく。
重い音が大地を揺らす。
レミはその方向へと目をやると微笑み、無言でギャラドスを戻した。

そして、浅く息を吐くとこれまでとは違い、ボールを持つ手に力を込める。
本気になった瞬間だった。

「ふふっ。ゾクゾクするわぁ。こんなにもギリギリな戦いをするの久しぶり。泣いても笑ってもこれで最後よ?バシャーモ」

虚空に舞ったボールが開く。

足を大地につけ、凛々しい姿をしたバシャーモが登場する。

「アナタはついて来れる?アタシたちのこの、スピードに」

直後。

ドッ!と音がしたと思うとバシャーモがすぐ眼前に迫ってきていた。
バシャーモが放つ蹴りをエルレイドは肘でガードする。
先ほどの音の正体が風を切る音だということを理解するのに時間は要さなかった。

(やっぱり最後の最後にバシャーモか……でも大丈夫。相性ならこっちが上。ここからチャンスを見つけてみせる!!)

「あらぁ。忘れてた。これやんないとダメじゃない」

決心したミナミに邪魔を入れる形でレミが口を出し、首にかけていたロケットに触れる。
すると、バシャーモとロケットから眩い光が生まれ、それらを徐々に飲み込んでいった。

「メガシンカ……」

「二度見るアナタならこの子の特性は分かるわよねぇ?……と言っても初めて見た時からバレていたっけ」

光から開放されたバシャーモは、かつて同じ場所で見たことのあるスマートなバシャーモとなっていた。
その姿を見せただけで恐れ戦いたミナミだったが。

心を決めた目は揺るがない。

真っ直ぐ力強くバシャーモを見つめ、ゆっくりと自分の手を身につけたアクセサリーに手を伸ばす。

キーストーンが埋め込まれてあるかんざしへと。

「もう逃げないし諦めない……」

今度はエルレイドとかんざしから怪しげな光が生まれ、それらを包み込んでいく。

「この光……」

先程自分が見せたものを逆に見せられて若干気持ちの悪い感覚に陥るが、ここまで来てようやく彼女が自分に戦いを挑んだ理由を理解した。

「そうか……。アナタ、手に入れたのね。キーストーンを。それだけじゃない。エルレイドのメガストーンまで。でなければ此処で、アタシの前でこんな事はしない。アナタ……アタシに勝つためだけにメガシンカを手に入れたのね!?」

ミナミはそれに返事しようとはしなかった。
お互いそれ以降は言葉を交わさずとも察することが出来たからだ。

エルレイドの真の力が解き放たれる。
腕そのものが長く鋭い剣へと変化し、風でなびくマントに似た装飾がその姿をより際立たせている。

遂にここまで来た。

彼女に負けまいと、協力できる仲間と共にキーストーンを手に入れ、休む間もなくメガストーンをくまなく探し求めた。
そこまで彼女を動かした感情は一つ。

「負けたくない……」

ここまで共に戦ってきた相棒の背中がより強く、頼もしく見えた。

「ここまで生きてきて……部外者なんかにすべて奪われるわけにはいかない。こんな所で絶対に負けたくない。助ける事も大事だけど、その思いよりどうしてもっ!」

言いかけたところで、エルレイドが腕を差し出してきた。まるで彼女を止めるかのように。

少し冷静になり、戦っているのは自分だけでないことに改めて気づく。

「そっか……そうだよね。アンタも戦ってるんだもんね。……よし、頑張ろう。ここで勝って最後にウチらで笑って泣こう。ね?」

その言葉に、エルレイドが少し振り向き、口元を緩めてみせた。

絶対に負けられない戦いが、今度こそ始まった。


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