二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.200 )
- 日時: 2019/01/21 14:36
- 名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「まさ……か」
ジェノサイドは遅すぎるタイミングですべてを理解した。
ゼロットが、此処自体が罠だったと。
友達らが拘束された時点でこの罠に飛び込むしか道は無かったと言うことに。
「やっと気づいたな……何も俺はゼロット単体でテメェに挑んでる訳じゃねぇ。テメェと違ってグルってモンがあんだよぉ!」
最後まで聞くことなくジェノサイドは走り出した。
とにかく急いで基地へと戻らなければならないと。
来た道を走り、所々をポケモンに乗って飛んだ先に、何人か仲間がいた。
「リーダー!さっき基地から連絡が……」
「リーダー!戦いはどうするんですか!?まだ終わっていませんよ!?」
「どうでもいいんだよ奴との戦いなんか!いいから急いで基地に戻れ!!物理的に基地が攻撃されてるぞ!このままじゃ残ってる奴らがヤバい!!」
ラティアスを呼び出してジェノサイドはそれに乗る。たとえどんなに速すぎるスピードで飛んだとしても知ったこっちゃない。
後になって気持ち悪くなるだろうがそんな事はどうでも良かった。
とにかく、少しでも早く基地に戻らなければならない。
途中、ミナミとケンゾウに会わなかった事に気づきはしたものの、すぐに忘れてしまった。
ーーー
工場が赤く燃えていた。
時折小さい爆発を伴ったのは、機材に可燃物が残っていたからか。
「ちょろいもんね。本当に此処がジェノサイドの基地なのか疑問になるレベル」
腰にまで届きそうなくらいの長い黒髪をした少女はその珍しい光景を基地の周りに広がる林から眺めていた。
段々と火が弱まっていく。恐らくあの中にいたジェノサイドの人間が水でも撒いているのだろう。
「よくもまぁ火中から水撒けるわね……その勇気は称えるわぁ」
「成程、あなたの仕業でしたか」
いきなり声がしたのでその方向へと振り向くと、長い白髪に白装束に身を包んだいかにも妖しそうでいかにも優しそうな男がいた。
その立派そうな白装束は乾いた血の痕で幾何学模様を創り出している。益々妖しい。
「我々のリーダーはゼロットと戦いに行きました。タイミングを見るにあなたもゼロットの人間か、それに関係する者ですね?」
「アタシが誰であろうと関係ない。そうじゃない?」
その少女はボールを取り出す。つられてレイジも懐からゲンガーの入ったボールを強く握ってそれを見せつけた。
(どことなく……似てますね。この小娘。私のリーダーに。そこが戦いづらいでしょうが……外見が違うから別人だと思える。だからこそ何とか戦える……やるしかないですかね)
レイジは、一人の愛する人を脳内に思い浮かべる。
雰囲気、外見……詳しくは当の自分でも分からない。だが、どこかがあの人に似ていた。
だが、基地を攻撃している以上、敵でしかない。無駄な思いはすべて省き、目の前を戦場にする覚悟を改めて決める。
ーーー
視界がまともに映らない。足が自由に動かない。全身が冷えきっている。
フラフラした足取りでジェノサイドは林を歩いていく。
ラティアスが人間の限界まで抑えてくれたものの、それまで乗ったリザードンやサザンドラ、オンバーンとは比べ物にならないくらいのスピードだった。
一時間せずに基地周辺へと到着した。
とにかく気分が悪い。ふらついた拍子にゆっくり地面へと倒れると、そのままジェノサイドはしばらく気絶してしまう。
生身で本気で翔ぶラティアスには二度と乗るもんかと強く思った事だろう。
偶然か否か、彼が倒れた四m先ではレイジが激突を繰り広げていた。
幸運だったのは、お互いがお互いの存在に気づかなかった事だろう。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.201 )
- 日時: 2019/01/21 14:41
- 名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
戦闘が始まってまだ五分も経っていなかったはずだ。
レイジの前にはメガシンカをしたゲンガーが、少女の前には倒れたナットレイがいた。
「'ほろびのうた'を使う型だったかぁ……」
わざとらしく悔しそうな素振りを見せながらナットレイを戻す。
「じゃあこの子はどう?」
誇らしげにその少女はバクオングを繰り出した。
あまりにもあからさますぎるそのチョイスに、事前に何か情報を入手したのだろうか。レイジがメガゲンガーを使う、という事を。
(バクオング……かなり厄介ですね。と言うより明らかな私の対策とでも読み取れます。このタイミングならば'ほろびのうた'対策でしょうか。ゴースト技も打てないですし、サブウェポンでチマチマと攻撃するしか……)
「ゲンガー、'ヘドロばくだん'」
ゲンガーの口から大量の毒の塊が放たれる。
いくつかをバクオングは避けるも、地面に着弾したそれは軽い爆発を生み出す。
「意外とすばしっこいんですね」
「嘗めないで。アタシのバクオングはそこらのノロマなバクオングと違うから。それと……」
距離を離していくバクオングを眺めるために一旦話を切ってから再び続ける。
「アナタが杉山のいる日本武道館を襲撃した際に、メガゲンガーを使ってスゴい活躍をしてくれたってのも全部知ってるから」
やはり、と言うかすべて対策されていた。
「アナタが'ほろびのうた'を使っていた事もね」
だとすれば先手のナットレイは何だったのか。そもそも先手でナットレイというのもおかしい。
一体何を考えているのか分からない人間だ。
「なるほど、ではそのポケモンに'ほろびのうた'が通用しないということですね。ならば……」
このタイミングでバクオングとするならば、その特性は'ぼうおん'か。
ただ'ヘドロばくだん'を打ち続けていても結局は相手の技を受けてしまえば終わりだ。
ともなればやる事は一つ。
「ゲンガー、'みがわり'」
瞬時にゲンガーがゲームでお馴染みの身代わりと入れ替わった。この間、本体がどこにいるか等は分からない。
「あなたへのダメージを最小限に抑えてから……」
「もらったーーー!!」
その少女は目を光らせ、いきなり叫ぶ。
と同時に「'ばくおんぱ'」などというドキッとする命令も一緒に。
(ばく……音波?どういうことですか……。ゲンガーに通用しないノーマル技をぶつけてくるなんて……いや、まさか!?)
'ばくおんぱ'は'みがわり'を貫通する。つまり本体に当たるのだ。
'みがわり'で体力を消費し、しかもバクオングの特性がゴーストタイプにノーマル技を当てられる'きもったま'だったとしたら。
「まさか!?そのバクオングは……っ」
「そのまさかよ!まんまと騙されたわね!」
レイジが間違いに気づいた時は、ゲンガーにその技が当たった時だった。
メガシンカを解きながら宙を舞い、元の姿となって地に伏せる。
「くっ、読み違えたか……ッ!?」
「次はアナタの番かなぁ?」
無防備となったレイジの前に大きく口を開いたバクオングが構える。
「バクオング!アイツに向かって'ばくおんぱ'!」
吹き飛ばされる……。そう思い咄嗟に顔を覆った時。
何やらスマートなビジュアルをしたポケモンが割って入り、それはバクオングを一瞬でしとめた。
ドン、と鈍い音と共に砂煙が少し散った。怖くてしばらく目を開けられなかったレイジだったが、いつまで経っても攻撃が来ないので勇気を振り絞って目を開け、腕を下ろす。
「なっ……えっ?エルレイド……?」
見ると、エルレイドがバクオングを殴り、太い木の幹に叩きつけている光景があった。
エルレイドを使ってレイジの助太刀に入る人間などあまり広くないコミュニティから見て一人に絞られる。
微かに草木を踏む音がするのでそちらを見てみた。
「来てくれたのですね……?リーダー!」
嘗て赤い龍としてレイジと共に組織をまとめていた一人の女性が、そこにいた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.202 )
- 日時: 2019/01/21 14:45
- 名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
赤い龍のリーダーミナミ。
彼女は、自身の仲間を守る為に無理矢理戦闘を中断させる。ついさっきまで戦っていた二人をそれぞれ見てみるが、レイジが意外にもぽかんとしているのが何だか気に食わない。
「あんたが此処にいるってことは……基地は大丈夫なの?」
その言葉をかけられた時には火はもう消えかかっていた頃だった。
「え、えぇ……えっと……」
今の状況が分からないレイジはここから基地を眺めようとする。分からないくせに犯人を探して戦おうとしたのだろうか。
「だ、大丈夫ですっ!」
「ホントーに?」
完全に信用しきってない目で見つめる。レイジはレイジで喜んでいるのがさらに気に食わない。
「あのさー、そろそろいいかなぁ?」
飽きてきた少女が二人の視線を集める。ミナミが振り向いた直前にバシャーモを繰り出し、彼女に直接攻撃をくらわせようと、蹴りを放つ。
「危ないっっ!リーダーッ!!」
辛くも仰け反る形か、そもそも軌道を逸らしていたからか、蹴りを躱す。仰け反りすぎて尻餅をついてしまった。
「いたっ、……」
「バカじゃないのぉ?」
場違いすぎる声とその反応に、少女も呆れを隠せない。
同時に、バシャーモとエルレイドが互いを睨む。
「……バカなのはどっちよ……」
砂埃を叩きながらミナミは立ち上がった。
闘争心剥き出しのポケモンがポケモンだからか、ミナミには絶対の自身があった。
エルレイドがバシャーモに相性的に見て負ける訳ないと踏んでいたからだ。
「赤い龍にしてジェノサイドの人間であるウチは負ける戦いはしないの。あんたはレイジに勝ったみたいだけど……ウチはそうはいかないからね」
「今ので終わってたの?アナタたちの勝ち負けの基準がよく分からないわねぇ……」
小さくため息をついて少女は一言付け加える。
「じゃあお望み通りいいんだね?勝っちゃっても」
首からさげたロケットが光に照らされて白く光る。
中身はキーストーンだ。
「あんたもメガシンカを……」
「当然でしょ。じゃなければここまで来て基地に攻撃しようだなんて思わないし」
ロケットから発せられた光はまるでバシャーモと共鳴しているようだった。
光とエネルギーに包まれてバシャーモはメガシンカを果たす。
よりスマートになった体つきをしており、腕からは炎が吹き出ている。
そして何より厄介なのが、
「特性の'かそく'……か」
ミナミは自分のエルレイドをチラっと見る。ORASになってからエルレイドのメガシンカが出たことは知っていたが、自分はエルレイドナイトはおろかキーストーンもデバイスも持っていない。メガシンカを扱うなど夢のまた夢だ。
「で、でも、一度戦うって決めたんだし……逃げる訳には、いかない……」
「その勇気は称えるわぁ。でも残念。アタシ勝っちゃうからさぁ!こんな戦いに!」
何を根拠に言っているのか無駄にテンションだけが高いのでミナミのストレスが溜まる一方だ。
だが、それと同時に絶対的かつ有利な状況ではない事も分かってきた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.203 )
- 日時: 2019/01/21 14:55
- 名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
ピリピリとした空気が三人を包む。
何もしていないのに追い込まれた感覚にミナミは陥る。助けに入ったはずなのに助けを求める形となってしまうことが何より悔しかった。
基地では火は消されたものの、まだ何やら騒いでいるらしく、不特定多数の混乱した声がここまで聴こえている。
その少女は腕をスッと振り下ろす。それを合図にバシャーモは身構えた。
来る……。
ミナミとレイジも察し、逃げようにも逃げられない状況へと誘われる。
「ブレイブ……」
バード、と言う予定だった。
だが、それは謎の呻き声によって邪魔される。
「……ール……。ゾロアーク……」
少女はそれに気づかなかった。だが、ミナミだけがそれをアイツだと瞬時に理解した。
声に反応し、ミナミが思い切り顔を上げた時。
バシャーモとエルレイドの前には漆黒のボディを見せつけるゾロアークの姿が。
「ゾロアーク……?」
命令の邪魔をされたことによって技を放つことなく呆然と突っ立っているだけとなる。
すると、
「やめておくことだな……。そのエルレイドに物理技をぶつけてみろ。その瞬間このゾロアークに負けるぞ?」
叢の中からジェノサイドが頭を抑えながらバッ、といきなり現れる。
「ジェノサイド……!?いつの間にそこに……」
「テメェか。俺の家に火放ちやがったのは。やったのはお前だけか?他にもいんのかよ、テメェの仲間ってヤツ」
少しぎこちない足取りでゾロアークの隣に立つ。その少女の目の前だ。
ミナミとレイジはホッとしたのか、少し離れて様子を眺めている。エルレイドはボールに戻された。
「何でアナタまでここに居るのよ……ゼロットは……キーシュは一体……」
「質問に答えろ。お前はどれくらいの仲間を従えてここに来た?それも、誰の命令でだ?何の為にここに……」
「質問は一個一個でお願いね?アタシ別に聖徳太子とかでもないからさ、一度で多くの質問に答えるのとかムリだから」
「そうか、じゃあこれだけは答えろ」
ゾロアークは一歩前に踏み出す。その手は幻影によって面白おかしく尖らせていた。
「テメェは何しに来た。理由によっては今この場で殺すぞ」
ゾロアークの爪のカラクリを知っていたからか、その言葉のせいからか、少女は口元を抑えて軽く笑う。
「殺す、ねぇ……。出来もしないくせに」
「なに?」
ジェノサイドは眉を潜める。馬鹿にされているだけでなく、別の意味も含んでいることに気づいたからだ。
「それじゃあ質問に答えようかなぁ〜。デモ、じきに分かることだと思うよ?変なところから宣戦布告とか来たら特に怪しんだ方がいいよ?そうねぇ……具体的な組織名を挙げるとするとー……」
少女はわざとらしく空を眺めると、悪女のような微笑みをして一言。
「『アルマゲドン』、とかね」
直後、ゾロアークの'ナイトバースト'がぶち撒けられ、木々が薙ぎ倒される。そのせいで土も大量に浴びてしまう。
土が落ちるようなパラパラとする音を聞きながら前を見るも、その少女はそこにはいなかった。
技が放たれたまさにその時、瞬間移動したように見えたのが最後だったはずだ。
後ろでミナミが「あっ!」と言って空を指している。不思議に思い、そちらを見るとポケモンに乗った少女の姿が。
「このご時世にフライゴンかよ」
「あらー?この子可愛いわよ?意外とバトルでも活躍してくれるし、アタシを何処へでも連れて行ってくれるし」
そう言いながら少女はフライゴンの背中を撫でる。愛情がある撫で方であった。
「とにかく、アタシは組織のリーダーじゃないから何も言えないけど、じきにアタシらも宣戦布告をするかもね。Sランクをまた相手にすることになるかもだけどぉー……せいぜい頑張ってね?」
言い捨てるように少女は飛び去っていった。ジェノサイドは強く拳を握ると、
「クソッ…!!」と怒りを抑えるように叫ぶ。
「さっきの女の子……アルマゲドンとか仰っていましたよね?ジェノサイドさんは……何かご存知なんですか?」
不安そうな足取りでレイジが寄ってきた。ミナミも一緒に。
ジェノサイドは悔しそうに、また、追い詰められたような顔をして空を眺める。
「一度……見た気がする……。さっきの奴は、自分はリーダーじゃないと言っていたが……もしそうならばおかしい事になる。そのリーダーは多分俺の知ってる奴だ」
何かを隠すように、勿体ぶったような言い方で濁そうとしているのが見え見えだった。
レイジがその事について問い詰める。
ジェノサイドは少し嫌そうな顔をすると、仕方ない、という一言と共にため息を吐く。
「お前達、組織の長は"紋章"と呼ばれる、その組織の名前が書かれた銀か何かの金属で作られたアクセサリーみたいなのを持っているだろ?」
と、言ってジェノサイドは胸ポケットから"cide"と書かれたアクセサリーのようなものを取り出した。長いので恐らく省略されたものだろう。
ミナミも、そう言えばと言いながら首に掛けていた"red Dragon"とある似たような首飾りを見せる。
これも一種の決まりのようなものであり、議会は、その組織の長は自身を証明するものとして自分が纏めている組織の印を常に持つことを奨励している。一種の身分証明みたいなものか。
「なぜ……そのような物を?」
「これ持ってるとトラブルが起きて議会頼みになったときに色々と使えるんだよ。勝敗がどっちについたかでジャッジを仰ぐ時とか、死んだ時の身分証明とか?俺まだ死んじゃいねぇけどな」
と言いながら乱雑に仕舞う。とにかく、とジェノサイドは話を続ける。
「俺は一度、大山で見た。アルマゲドンとある紋章を一瞬だがチラつかせた奴がいた。さっきのガキの言う事が正しいのならば……奴が……バルバロッサがまだ生きている事になる」
その人名を出すと、ミナミは口元を手で押さえて驚く様子を見せた。
彼女も、バルバロッサの話は少しだけなら聞いていたからだ。
「で、でも……バルバロッサは、その……前に戦った時に死んだはずじゃあ……」
「そのはずだ。あいつは戦いに巻き込まれて死んだ……。はずなんだけどなぁ。もしかしたら後任か何かがいるのかも。それか……」
ジェノサイドは先程、自分に対して言われた言葉を思い出す。
『殺す、ねぇ……?出来もしないくせに』
(出来もしねぇ、か……。案外そうかもしれねぇや)
続きを言うことなく、さらなる不安を抱えて彼らは基地へと戻った。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.204 )
- 日時: 2019/01/21 16:31
- 名前: ガオケレナ (ID: xrRohsX3)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「なるほど、この程度ねぇ……火はすぐに消したのか?」
あれからジェノサイドは焼け野原と化した基地の中へと進む。
火を消したであろう構成員が「ヤバいっすよ!」と言って行く手を阻もうとしたがそれを無視して進む。
可燃物がいつ燃えるかなんてそんな事は知っているからだ。
むしろその構成員も彼の言葉に答える始末である。
「は、はい。ここは元々廃工場でしたからね……。いつ使われていないタンクや機材に含まれている可燃物が燃えるかについての対策はしてましたからね。さほど火を消すこと自体は問題では無かったです」
「燃えたのはこの廃工場だけか?」
「は、はい!我々の部屋までは燃えなかったです。犯人がそもそも部屋の存在を気づかなかったのか、それか燃えなかったのかのどちらかかと……」
ジェノサイドは少し考えてみる。
燃えた範囲は廃工場のみ。つまり、ジェノサイド達が普段生活している地下の部屋までは燃えなかったのだ。
(コイツの言う通り……廃工場を基地としてあのガキが勘違いしたか……、燃えなかったかのどちらかだな)
廃工場と面している部屋の方角を見る。
そこは、鉄筋コンクリートで徹底的に守ってあり、その"基地"の建物の素材も断熱材で主に作られている。
深部にいる以上、基地が燃やされることも考えられることであった。今回それが上手く作用したといえる。
「とにかく、基地自体に被害はない。これまで通り生活していてくれ。廃工場を確認するのはたまにでいい」
特に見る物はもう無い。時折崩れる危険性のある機材を嫌な顔をして眺める程度であったが、現状での問題は何も無い。
基地へと戻ることにした。
ーーー
「アルマゲドンとは」
暖炉の火で暖かくなった談話室にいつもの三人が集まる。
レイジとミナミと、ジェノサイドだ。
あの騒動の後、詳細をまともに言えなかったせいもあり、きちんと言える時に言って対策を練って欲しいのが本音である。
面倒なのであまり言いたくないが。
「多分バルバロッサが抱えている、あいつのメインとなる組織の事だろうな。要するに俺達が大山でぶつかった組織の相手が、アルマゲドンの可能性がある」
「でも、うちらはよく分からないかも。うちらが来る前の事だったんでしょ?」
ジェノサイドは無言で頷く。
レイジも無言で隣のミナミを眺めるのみだった。
「正直、前の出来事については関係ないからどうでもいいんだけどな。とは言っても、俺もよくは分からないんだけどな。ただ言えることは一つ。奴等がSランクだって事」
「またぁ!?」
「と、言うことは現時点でSランクは三つあるという事ですか……?」
二人の驚きぶりを前にしても、ジェノサイドは特に気にする素振りを見せずに、指を三本立てる。
「そういう事。元々この世界は此処とゼロットの二強ではなく、アルマゲドンも加えた三つ巴の世界だったんだ。この三つの組織が互いに不可侵を守ってきたから今まで通りやれた。だが、今日でそれが崩れたことになる。まず俺達がゼロットと戦った事、それによるバランスの崩壊を恐れたアルマゲドンが俺達に宣戦布告した事だ」
「で、でもまだ、ある……マゲドン?は、宣戦布告していないよね?」
「現段階ではな。だが基地燃やそうとする奴の人間が所属する組織が宣戦布告しないはずがない。明日になれば発表される」
「ちょっといいですか?」
レイジが手を小さく挙げてそれらを遮る。二人はレイジに注目した。
「何故アルマゲドンがそんな動機で我々を攻撃すると分かりきっているのですか?」
「バランス崩壊云々のくだりか?そうとしか思えないからだよ。特にバルバロッサは……今は生きているか分かんねぇけど、アイツはとにかく俺を殺したがっている奴だ。何か大義名分があれば飛び掛ってくる奴等だからな。それに今回、俺らはそんな大義名分を受けるに足る悪役になっちまったんだよ」
何の事か……?と二人は考えるも、すぐに思いついてしまう。
「もしかして……ゼロット!?」
「……そうだ」
ミナミとレイジが互いに顔を見合わせる。事の本質を理解した瞬間でもあった。
「ゼロットは元々、危険人物となった俺らを排除するために立ち上がった。だから仮にゼロットが俺らに勝ったとしても正当化されちまう。でも、俺らはそのゼロットとかち合った。中断されて明確な勝敗がつかなかったバトルだったと言えるが……ゼロットのポジションからして後日なんて発表するかなんて目に見えている……。その結果俺らは何て言われるか?深部中を恐怖に貶める大罪人とされててもおかしくないだろ?アルマゲドンからしてもこのように向かせるのが作戦だったんだろうな」
つくづく現状が敵に囲まれている状況だと再認識してしまう。
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