二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.150 )
- 日時: 2019/01/09 16:18
- 名前: ガオケレナ (ID: WHyGh.XN)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
その言葉を聞き、
ルークは再び笑った。
「おいおい、俺を馬鹿にしに来たのかよ。まぁ、あの戦いの後何もして来なかったから今更そのお返しに来ても別に違和感はない」
「俺も、仲間を殺された」
その言葉で、空気が、彼らの目が一変した。
「杉山に狙われているとさっき言ったろ?それの影響もあって昨日、俺の仲間が死んだ。俺を守る形でな」
「その言い方からすると、一人か」
ルークは薄く笑って見せた。先ほどされた笑みのお返しと言いたげに。
「死んだのは一人かと聞いている」
「あぁそうだ」
「そうかよ……」
言いながら、ルークは自分の仲間を一人ひとり見た。四人なのですぐに終わった作業だ。
「俺は二十人だ」
「……」
「二十人。俺の仲間"たち"は一日のうちに奴の意味の分からない、下らない理由の下に理不尽に殺された……。俺達は奴らに守られながら必死に逃げた。その結果がこれだ」
ルークは椅子から立ち上がり、ジェノサイドに近寄る。その目は、怒りと哀しみが混ざり合った、何とも言えない目をしている。見ているこっちまで悲しくなりそうな目を。
「なぁお前に分かるか?一人と二十人。失った命の数が違いすぎんだよ。それに加え、俺は金も、組織も失ったよ」
「ちげぇだろ」
「あ?」
「失った数じゃない。命の重みは、俺もお前も一緒だ。辛く、苦しく、そして悲しかった……。俺はこの悲劇を止めたいんだ」
本気で言っているのか、とルークは一歩後ろに下がってしまう。それが示すのは、組織の強さだけでなく、己の強さも如実に表している。
「杉山を殺すため、議会を相手に戦うと心に誓った」
「本気で言ってんのかよ……最強のテメェが出たとしても相手は法そのものの議会だぞ?」
「本気だ。だからこそ、俺はこうして同じ道を辿っているお前達に会いに来たんだ」
「馬鹿馬鹿しい。目的のためなら敵も味方も選ばない程必死になって頭を下げる、と。ジェノサイドのブランドが聞いて呆れる」
「そうでもしないと倒せない敵だからだ」
「じゃあその敵と何故戦おうとしている!!」
ルークが怒鳴り出す。だが、その原動力が怒りでないことは自分でも気づいていた。
「戦う理由があるだろ!?その理由は何だ、赤の他人に悲劇を見せたくない。お前はそう言うのか?そうだろ!?そして、それが理由だろ!赤の他人って誰だよ。深部の人間のことか。目的のためなら、金の為なら手段を選ばない野蛮な人間のために、お前は動くと言うのかよ!!」
最早自分でも何故怒鳴り散らしているのか分からなくなってきた。
ただ、思い付く限りの事を言い並べているようにしか思えない。
「もしも本気でそう言ってんのなら、テメェは深部失格だ」
言いながら歩いて、ルークは仲間の前に立ちふさがる。まるで、彼らを守るかのように。
まるで、レイジが自分たちを守ったのと同じように。
ジェノサイドの頭の中であの光景がまた蘇った。
「深部の人間は、他人を思いやる人間が来る世界じゃねぇ。逆に、そういう奴は決まってこの世界に入った瞬間、その生命を絶つんだ。俺も何人もそう言った奴を殺してきた」
「俺も別に、そんな人間を目指そうとしてる訳じゃねぇ」
今度は、ジェノサイドがルークやその仲間に近づこうとした。
反射的に、彼らは退く。
「今回、死んだ奴は俺を頼って自分たちの組織を解散させてまで俺の下に来た奴だったんだ。言い換えれば、死にたくないから、俺の所にな。……でも、そいつは死んだ。俺の為に、俺を殺そうとしている奴に……殺された」
先程ルークが叫んでいた言葉を思い出す。戦いの理由を。
「なぁ、ルーク。失った数はお前のが多い。それは否定しないし出来ないからな。でもな、重みは同じじゃないか?何で俺じゃなくてこいつが死んだんだって思わないか?」
答えになっていないのは自分でも分かっていた。だが、ジェノサイドに真の答えを言う気はなかった。
自分が否定されかねないからだ。
「俺は悔やんだよ。人一人も守れないのに深部最強を騙ってるんだからな。だから決めたんだよ」
ジェノサイドはルークの目を見たが、彼が一方的に逸らした。代わりに、彼の仲間が見てくれてはいたが。
「杉山を打ち倒すことで、そいつを慰めようって」
「権力に抗うつもりなんだな、テメェは」
顔を見ずに、あさっての方向を見つめながら、口だけを動かしている。
「だったら好きにしろよ。そんな"死ぬ事前提"の、要は難易度の高すぎる戦いはゴメンだね。テメェには訳の分からない戦う理由があるだろうが、俺にはねぇし」
「タダで戦うなんて言ってねぇだろ」
思いもよらなかった返しに、ついルークは反射的に顔を動かした。
「一人に三十万出す。俺達の戦いに参加してくれた人間に、金を出すよ」
ルークは一瞬聞き間違いをしたと思ったことだろう。
一つの組織に、ではなく、"一人に"三十万出すと言ったのだから。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.151 )
- 日時: 2019/01/09 16:26
- 名前: ガオケレナ (ID: WHyGh.XN)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「本気かよ……」
ルークはその一言で一気に信用を失いかけた。
いくら金持ちとはいえ、一人に大金を出せる訳がない。
「本気さ。今ここに五人いるからそれだけで百五十万か。余裕だよ。少なくとも、あと二百人まではいける」
ジェノサイドの組織だけで二百人。つまり四百人を従えて杉山と戦うと、かつての敵に言っているようなものだった。
「天下のジェノサイドと言ってもピンとは来ねぇよな。嘘だと思うかもしれないし。仕方ねぇから何か紙でも書こうか?ってか書いてきたんだけどな」
胸ポケットから一枚の紙切れを取り出し、彼らに渡す。
そこには人一人に金三十万を贈与すると明確に書かれている。ご丁寧に、署名と判子付きで。
「おいおい……これ本物だよな?イリュージョンで作った偽物じゃねぇよなぁ!?お前、本気で言ってんのかよ!?」
「何度も言わせんなよ。本気だっつってんだろ。あぁ、それと答えなんだが、今言わなくてもいい。水曜日に、その紙に書いてある場所で待ってるから、来るか来ないかだけでいい。俺は待ってるがな」
渡すものは渡した。言いたいことは言った。
無防備にも、かつての敵に背を向けたときだった。
「待てよ、テメェは誰に対してものを言ってんのかちゃんと分かってんだろうな?」
分かってるに決まっている。あえて無言を貫くことにしてみる。
「敵だぞ?テメェを殺そうとした人間だぞ?そんな奴に、金渡す約束なんてしてみろ。暗殺されないとか思わないのかよ!?」
いつか言われると思った。
と、言うより実際される事も想像した。だからこそ、常にゾロアークを携帯している訳だが。
「思わないね。これから共に戦う仲間に、そんな不信感抱けるかっつーの」
待ってる、と付け足した形でジェノサイドは戸を閉めた。
必ず来ると強く淡い思いを抱いた上で。
ーーー
ジェノサイドが基地に帰った時は、もう夕暮れ時だった。
この勧誘に一日を使った気がする。そして、メガストーンの探索以上に疲れている。
「あれー?リーダー、大学の帰りの割には遅すぎません?」
仲間の一人がこんな事を言って、リビングに姿を見せたジェノサイドにこんな事を言った。
そう言えば、自分は今日大学に行くと皆に言った事を思い出す。
「ん?あ、あぁ、悪ぃな。友達と帰り際に軽くお茶しながら愚痴聞いてたから遅れたわー」
わざとらしく頭を掻いて、リビング専用の小さい冷蔵庫を取り出してペットボトルのジュースを取り出すと、部屋から出ていった。
きちんと、リーダー専用とペットボトルに紙を貼り付けていたので、その紙を取って通りがかりのゴミ箱へと捨てる。
「今日で五箇所……かぁ。まぁ後はあいつらが他の奴らに話を持ち出してくれるだろうから、今日ほど動かなくとも人は集まってくるだろうな」
なんて独り言を呟いて廊下を歩いている時だった。
ふと、通りがかった部屋の扉が開いた。
「ミナミ?」
「あっ……リーダーか……」
相変わらず病人のようにやつれ、元気をなくしたミナミの姿があった。
髪も乱れて、掻き分けていないせいで余計に不健康に見える。
「今日、何人かと話をしたよ。戦うための仲間を募っているところだ。思ったよか相手方の反応は良かったよ」
「そう、……。あんたは、本気で戦うつもりなんだね」
笑っているつもりなのか、口元を緩ませるが、目が全然笑えていなかった。虚ろな目も相まって非常に怖い。
「あ、あぁ……決めた事だからな……。水曜に集まるよう言っといたし、後で皆にも言わなきゃだな。大学サボった事もバレちゃうから、ハヤテ辺りから怒られるかもだけどー」
言いかけた途中で、ジェノサイドは言葉を止めた。
ミナミがいきなり、後ろから抱きついてきたからだ。
「戦うんだね、みんなも、あんたも」
「……あぁ」
「もうこれ以上何も失いたくない」
「あぁ。分かってる」
「……死なないでね?」
「死なせねぇよ、もう誰も」
頭を撫でて離したあと、ジェノサイドは一人、部屋へと戻っていった。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.152 )
- 日時: 2019/01/09 16:34
- 名前: ガオケレナ (ID: WHyGh.XN)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「今日もいない!?」
寡黙でおとなしい性格の香流が珍しく焦りを見せていた。
「レンって月曜も休んでたよね?」
「あぁ。幾つか同じ講義があるんだけど、一緒になったのは昨日だけだった」
時刻は12時になる手前。今日で二回目の講義が終わる時間だった。
岡田は珍しく時間よりも早く終わったこの時に、部室へ行こうか悩んだ時、偶然香流と出会った。
本来、この時間の講義は岡田と高野が共に受けている。にも関わらず、高野は今日も来ていない。
講義を受ける上では真面目な彼が大学ごと休むことが普通考えられない。今日が水曜である事を考えると、益々不自然なのだ。
「高野昨日は大学来てたんだよなー……珍しくサークルにも顔出してきたし」
「えっ、マジ?俺昨日バイトでサークル来れなかったから分からないけど、どんな感じだった?」
「それがさー……」
余計に不自然である事の顛末を思い出す。
確かあれは、高野がサークル開始時刻にピッタリと来ていて珍しかったことから始まる。
「レンは昨日……メガストーンがほとんど、あと一個で全部揃うとかって言ってたんだよ」
「あと一個?かなり早いな」
「うん。それにあと一個に関してはいつでも手に入れられるからサークル休んでまですることじゃなくなったって結構機嫌が良かったんだよ」
「ん?それじゃあさ……」
岡田もおかしな点に気づいたようだ。その証拠にポン、と手を叩く彼特有の癖が表れている。
「今日何で休んでるの?」
「そこなんだよ……」
今まではサークルを放り投げてメガストーンを探すことはあっても、講義までは投げなかった。
にも関わらず今となってはその講義すらも投げて何かをしているとのことだ。メガストーンも集まりきった今、彼が何をしているのか気になって仕方がない。
「今のレンにメガストーンを集めること以上に必死になれることなんてあったのか?」
「ぶっちゃけそう思うよなー」
平和な世界で生きる彼等には到底想像出来ないのも無理はない。
同時刻。
ジェノサイドは軽く寝ていたその眼をあけた。
早朝に一度起きてから、意識が残っていたので浅い眠りを続けることが出来、気分的にも凄く楽だった。
(時間か……そろそろ集まってるかな)
なんて思っていたその時だった。
「リーダーリーダー!!大変です!!」
廊下の床を強く蹴るように走る音が聞こえてきた。
その足音の主はノックもせず、部屋のドアを開ける。
「ハヤテ?おはよう。どうしたんだ?」
「外です外!!外になんかめっちゃ人いますよ!!」
「んー、どんくらい?」
真面目に聞かないまま適当に頭を掻いて壁を見つめるが、当然変化などない。
「完全には確認出来ていませんが……二百名ほどの人の波が……」
来た。
一瞬にして目が倍以上に開いた気がした。そのまま一直線に階段を駆け上がり、リビングよりももっと上の、廃工場に直結する廊下を通り、鉄製の重いドアを開ける。
外の景色が広がる。自分が今いるのは地上三階に位置する。
廃工場の地下に基地を有しているが、入口は防衛を考慮して地上の地面に埋もれてる(ように見せかけてる)ドアから入り、地下を通って地上一階の秘密基地、ジェノサイドの部屋や他の仲間の部屋などが集合している空間へと繋がり、その上にリビングや食堂があるという構造だ。
出口は二階にあり、廃工場の裏から、そして駅方面へと繋がっている。
ちなみにこの基地、廃工場側から見るとただの壁にしか見えないため、一見ここに数百人の人が住んでいるなど想像できないくらいだ。
その為、この組織を結成して四年、この場所が敵に暴かれることは今までに一度もなかった。
その記録を今日、ジェノサイド本人が破る。
外の景色に混じって、一階部分、言い換えれば工場の入口付近に、地上に大量の人だかりができている。
ジェノサイドがこの二日間に呼んだ新たな仲間だ。
「おー、すげぇ。本当に集まってんのな」
「言ってる場合ですか!?何があったんですか!どうすんですかこれ!」
「何もしなくていいよ。俺が集めたんだし」
「はぁ!?」
思わず変な声が出て口元を押さえるハヤテだが、ジェノサイドの言っている意味が分からない。
「まー、今は分からないだろうけどどこかの窓から見てて。いいか。絶対に窓から顔出すなよ。じゃなきゃ秘密基地の存在がバレる。あいつらはこの廃工場そのものが基地だとか俺の住処だとか思っているだろうからさ」
その場でオンバーンを呼び出し、彼はそれに乗り、人だかりのやや上の位置に止まる。
オンバーンを出してから歓声にも似た声が上がっている。
「今日は来てくれてありがとうな、お前ら」
ここにいるほとんどは自分が誘った人間ではなく、噂か何かで嗅ぎつけた者たちがほとんどだろう。やや危険に思えてもそれを抑えてゆっくりと降下していく。
「信用もクソもなかっただろう。俺が怪しげな書面手渡して、これで金やるって言っても恐らく普通ならば信じないだろう。でも、お前達は来てくれた。共通の目的の為に」
見にくかったが、人だかりの中にはルークとその仲間の姿もあった。
やはり彼も来てくれたようだ。
その他にも、何処かで見たことのあるような顔が幾つか。
「それじゃあやってくれるか。今から議会に突入して杉山をぶっ倒しに行くぞ」
ここに集まったのは野蛮な人間や、この機に乗じてジェノサイドを殺そうと画策している人間でもなかった。
同じ目的、同じ考えを持った人間、即ち仲間であった。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.153 )
- 日時: 2019/01/10 20:02
- 名前: ガオケレナ (ID: CWUfn4LZ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「何の説明もナシにこれから行こうって時に悪ぃけどよぉ」
人ごみを割ってルークが出てきた。前に会った時よりかはテンションが全く違う。
「これからどうやって行くってんだ。てか何人集まってんのよ?何の確認もナシに行くってのか?」
「質問どーも。それについては……そうだな、頭上を見てくれ」
ジェノサイドが天に向かって指を差す。
ルーク含め話を聴いていたすべての人間が上を向いた。
「シンボラーが飛んでいるだろ?」
カラフルな彩りのとりもどきポケモン、シンボラー。
トーテムポールのような、原始的宗教で見られそうな姿をしたポケモンがのんびりと彼等の頭上を飛んでいた。
「今からコイツが、お前ら一人一人の体温を計る。その計測結果が俺の脳内に直接送られるから後は俺が把握すればいいだけの話だ。……という事で少し待っててくれ」
と、言うとシンボラーは上空で静止する。
傍から見ると何も起きていないように見えるが、シンボラーのサイコパワーで計測は既に始まっている。
対象者に特別作用する事は何もない為、異変を感じないのは当然といえば当然だった。
計測は二分経過するかしないかで終わり、その結果がジェノサイドに送られる。
脳に伝わり、その影響でまるで視界にシンボラーが見たサーモグラフィーのような映像が流れるような錯覚に陥られ、それは次第に人間の脳でも理解できるように簡略化されていく。
一人の赤く染った体温を示す映像が流れ、それをカウントするとまた一人、また一人へと体温が示される。
後は間違いなく数えるだけだ。
その間、集まった彼らは動ずること無くただじっと待つのみだった。
思えば、何故こんなにも律儀に従うのかジェノサイド本人にも完全に分かったわけではない。
外面だけでは皆を信じ、受け入れているようには見せてはいたが、実際は半信半疑だ。
いつ裏切られるのか分からない、そんな思いに駆られて共に行動するのは精神的に負担がかかる。
(こいつらにどう伝わったのか知らんが……まるで俺以外にも誰か似たようなやり方で集めたようにしか思えねぇ……)
今のジェノサイドと同じことをする人間など限りがある。特に思い浮かぶ者と言えば……
(武内か……いや、あいつはここまで動く奴じゃない……と、すれば……塩谷か)
思えば、ジェノサイドも横浜で塩谷に依頼を受けたのが始まりだった。
それが直接的なものでないにしても、少なからず遠因にはなった。
彼等にとっても自分と同じ道を辿ったのだろう。それで満足することにした。
「解析が……終わった」
目元を抑えながらジェノサイドはシンボラーを見る。
シンボラーもこちらを見ていたようで、互いを繋いでいたサイコパワーが切れた事を確認するとまた悠々と空を飛び始めた。
「なるほど……集まったのは百五十七人、か。まぁそんくらいだな」
組織ジェノサイドの人間と集めて三百五十七人。悪くは無い集まりだった。
「いいか。これから俺達は杉山がいる議会場へと向かう。場所は立川。ここからはそう遠くないがこれだけの人数だと移動するのも一苦労だ。そこで」
と、言いながらジェノサイドは廃工場の方向を指す。その方向に全員の目がいった。
「一台に十人乗れる装甲車が十五台ある。元は俺らジェノサイドが敵対組織と戦うために用意したものだ。結局使うことは無かったけどな。これに乗れるだけまず乗ってくれ」
「何でそんなモンがこの国にあんだよ……」
まず一般人が持てない代物を、社会的に見たらただの一般人のジェノサイドが何故持てるのか疑問だが恐らくジェノサイドも答える気はないし、そもそも分からない。
これは元々バルバロッサが用意したものだからだ。
「乗りきれない奴はどーすんだよ」
またもや見慣れた姿があった。
以前包囲網を使ってジェノサイドにタネボー爆弾を大量に放り投げた黒須とか言う奴だったか。
「そいつらはポケモンで移動するしかねぇな。確かこの中にメタモンを使う奴が居たはずだ。そいつのメタモンを何体か使ってレックウザ辺りに'へんしん'させて移動するのが手っ取り早い」
「レックウザって……騒ぎになるどころじゃねぇぞ……」
ミュウツーと同じく使えないポケモンのレックウザであるが、変身させてしまえば使えるようだ。
それはゾロアークの力で実証済みである。
「さて、と。人通り準備終えたらもう勝手に出発していいぞ。立川の議会場と言えば場所は分かるだろ」
ジェノサイドは振り向く。そこには自身の基地がある廃工場が見えるだけだ。
「話は聞いたなお前ら!今すぐ準備して外に出てこい。杉山ンとこに行くぞ!」
ジェノサイドは自らの仲間にそう伝える。
これから始まろうとしていた。彼等の、反抗が。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.154 )
- 日時: 2019/01/11 16:23
- 名前: ガオケレナ (ID: 1Lh17cxz)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
ゾロゾロとジェノサイドの構成員が廃工場が出てきた。
窓から様子を見、リーダーの命令によって今何が起きているのか、全員がそれを理解している。
「本当にやるんですね……リーダー……」
自信無さそうな足取りでジェノサイドの隣まで歩いてくるのはハヤテだ。
「やるよ。もうここまで来たら後戻りできねぇからな」
「いえ……それ以外にも気になることが」
「?」
外を歩くとすぐにそれを発見した。誰が落としたのか分からない誓約書だ。
「集まった人間は何人だったのですか?」
「百五十七人」
「一人に三十万円払うんですよね……四千七百一万円も払えるんですか?と、言うより払うんですか?」
普通でない数字である、とハヤテは思ったことだろう。ハタチにもなってこんな金額に触れる機会なんて普通はある訳ないのだから。
ハヤテどころか、ジェノサイドの全員が今自分が所属している組織に、どれほどの貯蓄があるなどと言う事を知らない。
そもそも、誰も知らず、リーダーだけの極秘事項だからだ。
装甲車が大量にある時点でおかしいとは思ったが、今回の法外な数字を目の当たりにして自分たちが今、深部の頂点の人間だということを自覚する。
いや、そもそもな話、深部の頂点に居てもそれほどの大金持ちになれるのか不思議でたまらない。
事実を発掘してもまた新たに疑問が生まれるだけだ。結局何も解決しなかった。
「払うよ。それくらいなら失っても問題ない。それとも、自分の生活が心配か?だったら安心していいよ。お前達の生活費を省いた上で出した値だから」
今目の前にいる男は石油王か何かか、と一瞬思いもしたが今なら自称されても納得がいく気がする。
などと二人で会話しているうちに味方が集まりつつあるときに。
ザワザワと不穏な騒ぎが起きた。
何事かと思い、入口へと目をやると、ミナミが外に出てきたところだった。
「ミナミ……?」
無言でジェノサイドのもとへと寄ると、一言。
「あんた馬鹿じゃないの?基地の居場所教える組織の長がいていいわけ?」
口調が元に戻ってる。
顔色もどことなく元気の良さそうに見える。
そんな直ぐに変わるものなのかとキョトンとしていると、
「んで?深部の人間集めて今からやっつけにいきましょー、お礼に四千万バラまいちゃいまーすとか言っちゃってさぁ……あんたどんだけ頭のネジ吹っ飛ばしてんのよ!今どんな事しようとしてるか分かってるの!?」
「分かんねぇよ。生まれた反動で頭のネジが飛んじまったからな。そもそもそんな考えが思いつかねぇよ」
状況も忘れて冗談を言ってみる。真顔での発言だったので本気と捉えたショウヤ辺りが頭を抱えだした。
すると、
「ぷふっ」
と変に吹き出してミナミが笑った。
あの時以来で彼女が笑ったのは今日が初めてだったかもしれない。その顔を見て、ジェノサイドも笑う。
「はぁ。さて、と。笑い疲れたところでそろそろ出発するぞ。お前は来るのか?」
廃工場の裏に、やや大きめの倉庫がある。これも元は工場の物だったが、今となってはそこに装甲車などを置いている車庫のようなものだ。
その倉庫へと自分の仲間、深部の人間を連れてそこへと向かう。その途中、隣を歩くミナミに一つ最後の確認をしてみた。
「行くよ。あんたにここまでされたら行かないのも気まずいからね」
何ともつまらないが真面目な理由だった、とため息混じりに「あっそ」と返す。
装甲車に乗らない人たちはそれぞれポケモンを出し、その内のメタモン使いの人間が自分のメタモンを'へんしん'させてレックウザやルギア、カイリュー等に姿を変えて一人でも多くの人間を乗せようと努力している。
「それじゃあ乗れる奴から車に乗ってくれ。最低でも一人は運転出来る奴乗せてけよ。まぁ事故っても頑丈だから死んだりはしねーと思うけど」
「そういう問題じゃないでしょ……」
「あ、公平ではないと思うけど早いもの順な。乗れなかった奴は悪いけど、ポケモンか別の手段で移動してくれ。特に集合時間はないから交通機関でもいいし」
万が一装甲車に乗れない人間がいても、今日ここに来た深部の人間に、メタモン使いがいる。そいつの使い方次第によるが、ここに集まった全員が移動できるようにしてはいる。最悪到着次第襲撃としているので、いつ来ても問題は無い。
「んじゃ、乗ってくれ。予めナビに目的地に入れといたからそれに従うだけでいい。交通マナーだけは守れよ。最悪事故起こした場合金払わないってこともあるからな」
これだけ釘を刺せば大丈夫だろう。「なんで装甲車にナビなんか……」とか、「用意周到だなぁ……」などチラホラ聞こえたが別に問題は無い。
自らの仲間を乗せ、ジェノサイドはエンジンを始動させる。
「あんた、車運転できたんだ」
「去年免許取ったから本免以降運転してねーけどな」
「は?」
ミナミの中で一気に不安が広がる。教習所の最終試験以降運転していないと言われると流石にビビる。
深部の活動で忙しいのは仕方ないにしても率先して運転席に向かうのはちょっと違うんじゃないかと思える。
それでも。
「……ありがとね」
「えっ、何が?」
「なんでもない」
ほぼ病む寸前だった自分を、行動できるまでに手助けしてくれた事に、感謝の気持ちでいっぱいだった。
自分のため、レイジの為にここまで頑張ってくれた彼に、ミナミは言葉に表さずとも感動していた。
当の本人はその事に気づかなかったが。
2014年11月19日。
オメガルビー、アルファサファイアの発売日の二日前。
この日、「流れ星にしては遅い緑の流星が見えた」とか、「米軍でも自衛隊でもない謎の装甲車の群れを見た」だの、多くのな物騒な目撃情報がされたが、特に注目すべきは深部の世界全体としての反応だ。
ジェノサイドと、彼と同じ思いを持った有志で集まったこの集団は「深部連合」と名付けられ、議会に対し反乱を起こそうと立ち上がった事例として人々に記憶されることとなる。
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