二次創作小説(新・総合)
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- ポケットモンスター REALIZE
- 日時: 2020/11/28 13:33
- 名前: ガオケレナ (ID: qiixeAEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355
◆現在のあらすじ◆
ーこの物語に、主人公は存在しないー
夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険が今、始まる!!
第一章『深部世界編』
第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争』>>167-278
第二章『世界の真相編』
第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-
Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-534
Ep.3 追って追われての暴走>>536-
行間
>>518,>>525,>>535
~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。
四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。
そんな悪なる人間達<闇の集団>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。
分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。
はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。
【追記】
※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※
※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.410 )
- 日時: 2019/11/10 21:30
- 名前: ガオケレナ (ID: 7hzPD9qX)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
Ep.6 時間と空間の漂う中で
8月5日。水曜日。
Pokémon Students Grand Prixの再開日にして、待ちに待った本選が始まる日だ。
数多の戦士と、興奮と喜びを求めにやって来た観客で埋め尽くされるドームシティの中で。
高野洋平はと言うと、
「どう?怪我の具合は」
「問題ねぇよ。歩けるし大きな怪我もない。骨折もしてねぇしな」
医務室にて、メイと共に休んでいた。
開いた窓から風が入り込み、完全に開いていないカーテンがバサバサと音を立てて揺れる。
音だけ楽しめば十分涼しく感じるものだが、その実蒸し暑い以外の何物でもなかった。
「俺はいいから、お前は先行ってろよ」
「えー?何でよ?あなたも合わせて3人でメンバーじゃないの。動けるのに行かないのなら私も行かない」
「ったく……やかましい」
高野は差し出された水を飲む。
大して喉も乾いていないのに一気に飲み干した。
それは水と一緒に流したい、忘れたいものがあるからか。
「どう?立てるかしら?」
「……行きたくねぇ」
この1日で高野は大会に対する目が、イメージが、印象が変わった。
最早、頂点のポケモントレーナーを目指す輝かしい祭りというイメージは遠い彼方へと消え失せてしまった。
「もう俺は……戦いたくねぇ。楽しみたいとも思わねぇ」
「ごめん……なさい」
突然、メイが頭を下げて謝りだした。
だけでなく、抱き着いてきた。
「あなたを守ると言っておきながら……私は何も出来なかった。それどころか、すべてをあなたに背負わせてしまって……。何も出来なくて、ごめんなさい」
最近CMで目にする新商品のシャンプーの香りが高野の鼻腔を刺激した。
優しく、ふわりとした甘い香りだ。
そのメイの行動に、高野の心は揺れた。
異性の意識という意味ではなく、それまで彼にまとわりついていた孤独だとか寂しさ、そしてある種の諦念といったものをまとめて取り払うかのような、他者から分け与えられた"優しさ"というものに。
これまで敵意や悪意を一方的に受け続けて来た高野にとっては到底手には出来ない正の感情。
最後にこのような温もりを感じたのは去年の12月だったはずなので、自分を含めた人間というのは日頃から優しさや温もり、そして愛を受けなければダメになってしまうのではないのか。
そうは思った高野だったが、小っ恥ずかしさから
「おい、いい加減離れろ」
と言い放ったその矢先。
「おーい、れーんー。怪我したって聞いたけどだいじょーぶー?」
噂をすれば、というやつだった。
彼の大学の友達の高畠美咲、香流慎司、岡田翔、そして山背恒平が見舞いにやって来た。
部屋の扉は元から開いていたので、その声ははっきりと聴こえた。
そして、気兼ねなく入ってくる。
だが、彼らが見たのは変に察してしまう光景。
まず最初に高畠が「あっ……」と言うと来たままの姿勢で、後ろ歩きのまま部屋から出ていこうとする。
「お取り込み中でしたかー……」
「失礼しましたー」
おふざけにも、真面目にも聞こえる友人のそれに、高野は叫ぶ。
「いや、ちょっと待てェェェ!!違う、これ違うやつや!!だから言ったじゃん早く離れろって!」
と、高野は半ば無理矢理にメイを引き離した。
すると、待ってましたとばかりに、
「……違う?だとしたら何?」
と、高畠がニヤニヤしながらひょっこりと壁から顔だけ出して覗き込むように2人を見つめながらそう言う。
「そうだぜー、レン。そこは正直になりなって」
と、この手のノリには珍しく乗ってきた岡田も何かを期待するような顔をして促そうとしてきた。
「正直ぃ!?これ以上正直になってどうしろと!?」
「これはやってしまいましたなぁ」
「ってかレンも罪だねぇ。ミナミちゃんが居ながら二股なんて」
誰1人として彼をフォローする者は居なかった。
香流と高畠が続け様に火に油を注ぐような発言をぶちかまして勝手にヒートアップしていく。
「おい待て……俺とミナミはそんな関係じゃねぇから……勝手に話盛るな高畠ァ!!」
「え?ミナミちゃんって誰?僕の知らない人?」
「あれだよ。レンの前の組織の仲間だよ。凄い良いムードだった」
事情を知らない山背は、香流にそう尋ねる。
香流は香流でここぞとばかりに高畠同様、事実だけれども盛られた話をぶっ込んで場のノリを盛り上げんとわざとらしく言う。
「お前まで乗っかるな香流ぇぇー!!」
「えー?なにアナタ他に女居た訳ぇ〜?それなのに私に突然抱き着くなんて、それってどうなのー?」
と、まさかのメイまで彼等に乗っかる始末。
今度こそ彼の味方は居なくなった。
「す……すべての元凶のお前が言うなァァァ!!!」
なお、この後医務室の看護師に高野含め全員が強く注意されたのは、言うまでもない。
ーーー
「つー訳で後で来いよ女たらしー」
「だーれが女たらしじゃぁぁ!!……分かった、後で行くよ」
最後まで岡田にネタにされた高野は、本来大会の観戦に来た友人らと一旦別れる。
「どう?少しは元気になったかしら?」
「少しは……な」
1人部屋に残ったメイは高野と会話を続ける。
思ってもみなかった副産物のお陰で笑顔を取り戻した高野を見て、彼女も内心ホッとした。
「でも俺はこれからも心から楽しめる事は出来ないかもしれない。自分だけ楽しくなろうとすると……あいつの姿がどこかチラつく」
「あの人は確かに不幸だったわ……救われるべき存在だったし、そんな目に遭わせた人は絶対に許されないわ。でもね……どんな理由であれあなたがあなた自身を強く責める必要は無いのよ?」
「……俺の行動と存在でああなっちまったようなモンじゃねぇか」
「でも、あなたはそれを意図してやった訳じゃない。ひねくれた考えを持った人間が権力を持ってしまった事が間違いなだけなのだから。……むしろあなたはその立場の割にはとても頑張ってくれたわ。亡くなった者の魂があるとしたら……きっとあなたの事を恨んではいないと思うわよ。だって、あなたは最後の最後まで彼女を本気で救おうとしたじゃない」
魂なぞ存在するかも分からないものを持ち出されてもピンと来ないものがあるが、それでも今の高野には救われるものが確かにあった。
「それに、私がもっと早く来れたら……未来は変わったかもしれない……。だからあなた1人が責められる事じゃないわ」
「あ、あぁ……ありがとう」
「え?今なんて?」
高野の声が小さくてよく聞き取れなかったが、そこには多少のわざとらしさがあった。
メイは意地悪そうな笑顔を浮かべている。
「うるせぇ、何でもねぇよ」
そう言って高野はメイの肩を叩くとベッドから立ち上がる。
窓を閉め、荷物をまとめ始めた。
「行くぞ。あいつらの顔見たら、こんな所に居るのが馬鹿らしくなってきた」
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.411 )
- 日時: 2019/11/10 07:39
- 名前: ガオケレナ (ID: G/Xeytyg)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「んあ?」
初めに異変に気付いたのはこの男だった。
大貫銀次。
ドームシティ内にある自身の工房にてポケモントレーナー専用のアイテムやアクセサリーを製作していた彼は、突然の異音に集中力を乱されて手を止めてしまう。
今度の依頼主も、また高野洋平だった。
なんでも、『転んで怪我をしてメガメガネを割ってしまった。作り直してくれ。出来ればナイロールで』との事だ。
壊れた眼鏡と共に直接依頼しに来たのがメイだったというのが更に気になるポイントであるが。
「なんでい、勝手に割れやがった……」
音のする方へ見てみると、台の上に置いていたフラスコが弾けたように割れていた。
小さな破片が周辺に散乱している。
窓際に置いていたとはいえ、勝手に割れる理由が分からない。
ガラスが割れるレベルの急激な温度変化も無く、誤って刃物がそちらに飛んでいった事などもない。
まさに、"何も無い"のに起きた異変だった。
「ったく……面倒臭ぇ」
掃除する気も失せた大貫は、とにかく今ある仕事を終わらせんと机に戻った。
高野の依頼で済んでいるはずが無く、何がなんでも今終わらせられる作業は終わらせたい。そんな思いだった。
「物は大事に使えと言ったはずだがなぁ……。あいつには高く付けてやる」
ーーー
「よーし、レン。今度はどっちに賭ける?」
「んーーー……。じゃあ左のチームで」
両者のポケモンの激突と共に湧く歓声。
その盛り上がりは予選の比ではなかった。
鍛え上げられたポケモンだというのは遠目で見ても明らかだ。
ポケモンの動きとトレーナーの動かし方、そしてポケモンそのもの。
どれも質が高い。
高野は、深部の世界でも十分通用しそうな戦いを見ながら低く唸る。
「ところでさー、これってもう本選だよね?トーナメントじゃなかったっけ?」
後ろの観客席から岡田の声が聞こえる。
1試合前に来た高野よりかは事情が知っているはずなのだが、そんな事を言っている。
隣の高畠が説明してくれていた。
「そのはずだったよね?なんかー、トーナメントやる前にブロック内対戦する事になってるみたいだよ?」
大会実況者リッキーの真後ろに巨大なモニターが映っているのだが、そこにあるのはトーナメント表ではなく、各ブロックの表だった。
1つのブロックに4つほどのチームが振られており、その塊が8つか9つほどあった。
もしかしたら、その塊が"グループA"みたいな感じでもっと有るのかもしれない。
「じゃあ、そのブロック内で1番勝ち数が大きいチームが次に……トーナメントに進める的なやつ?」
「だと思うよー?」
果たしてこの2人はバトルを見ているのか互いの顔を見ているのか分からなかったが、高野は高野で思うところがあった。
「でも、分かってるよな?レン。この賭けが外れたら……」
「分かってるっての。近くのファミレスで全員分のメシ奢るんだろ?」
「レンさっき外したからリーチだぜ?」
大会参加勢の香流、山背、豊川と夕食を賭けた予想の最中だった。
バトルの観察にも集中出来て一石二鳥じゃないか、という高野本人の提案だったのが言い出しっぺの法則というやつである。
徐々に押され気味の左側チームのムードを見て高野の心も同様のムードを放っている。
「あのー……別に全員じゃなくていいんじゃないかな?こっちたち参加者だけでも……」
「いやいや香流、それじゃつまらんだろ!どうせならサークルの人全員!それにどうせレンの仲間も来るだろうしそいつらも追加で!これの方が燃える」
「うわー、容赦ないね豊川ぁ……」
賭けの相手が自分でなく高野で良かったと内心ホッとしつつ山背は苦笑いする。
右側のチームのヤドランの'サイコキネシス'が、左側のチームのギガイアスに命中し、倒れる。
最悪な事にこれで左側チームの敗北が決定した瞬間だった。
リッキーの熱い実況に応えるが如く周囲の観客も熱い声援を送っている。
しかし、高野だけは真逆の思いだ。
「おーーっしゃぁぁ!勝ったぁ!んじゃあ今日のメシよろしくなーレン」
「あー……ごめん、俺眼鏡壊れてよく見えなかったわー。勝ったのどっち?右?左?俺確か最初右側ってー……」
「レン、今日あんたがコンタクトなの知ってっから」
後ろから高畠のにやけを含んだ声がした。
恐らく、色々思い出す過程で先程の光景も思い出したのだろう。
「コンタクトか。どーせさっきの女に付けるの手伝ってもらったんだろ?」
「それで我慢出来なくて抱きついちゃったかー……」
「流石女たらし」
「ってかレン絶対マザコンだよね?すぐに抱き着くとか」
「おめーらさっきから辞めろやうっせーーよ!!だから違うって言ってんだろうが!」
必死で否定している割には口元が微かに緩んでいる。
自分でもそんな違和感に気付きながら、いつまでネタにされ続けるのだろうと戦きつつも真の仲間たちとの時間が過ぎてゆく。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.412 )
- 日時: 2019/11/07 17:31
- 名前: ガオケレナ (ID: TdU/nHEj)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
観戦を始めて2時間経過。
そろそろ飽きてきたようで、スマホに目を落としていた豊川は、自分たちのチームに通知が来ていたことにいち早く気付く。
「オイ!次の次俺らの番だぞ!」
談笑していた香流と山背に向かって叫び、3人は足早に観客席から去っていく。
「あっ、そうだ。レン!今度俺が無双してやっからな!よく見てろよ!」
と、首から下げたメガイカリを握りながら自信満々な笑みを豊川は浮かべた。
「出来んのかよーお前に」
高野もまた、小さな笑みで返す。
ひと試合3体のポケモンで戦うとなると、その分時間も長引く。
1ブロック6試合する内の、1試合目を今日1日使う予定ではあるのだが、これを全ブロック行うとの事だった。
今観ている試合が何ブロック目なのかは最早覚えていないが、高野が来るまでに幾らか試合は行われていた。
もしかしたら自分の番もそろそろ来るかもしれない。
そう思っていたら、いつの間にか試合は終わり、彼の仲間たちの出番がやって来た。
3人の友が入場し、対戦相手とフィールドを挟んで対峙する。
その姿を何千何万という人々が見つめる。
ここまで来ると聞き慣れた、何処かの高校の吹奏楽の演奏が雰囲気を殊更に燃え上がらせる。
はじめは特定の高校の応援の為の演奏かと思っていたが、予選を終えてその面が弱まりつつある今、どうやら参加者を鼓舞するためのもののようだ。
と、なるとボランティアだろうか。
などと考えるのは高野洋平1人のみである。
試合開始を告げるリッキーのラップが合図となった。
「おっしゃぁぁー!!俺から行くぜ」
と、瞬間的に豊川が前へ出る。
予選では勝つことは勝ってはいたがあまり目立っては居なかったせいか、そのやる気が傍から見ても分かる。
「いけっ、ペンドラー」
私服姿の対戦相手がその予告通りメガムカデポケモンのペンドラーを繰り出した。
対して豊川は「とにかくエースで倒しまくる」という考えなのか、ヘラクロスのボールを投げる。
「豊川気をつけろー。多分相手のペンドラーは'かそく'だぞ」
後ろの控えベンチから香流の声が聴こえる。
豊川は振り向き、頷いた。
「見てろよ……メガシンカ使えるのは山背や香流……そしてレン、お前だけじゃないんだからな?」
と言うと巨大なネックレスにしか見えない、かなり重そうなメガイカリの鎖の部分を強く握る。
それは共鳴の合図。
瞬時にしてメガイカリから光が放たれ、ヘラクロスは眩い光に包まれる。
そして、
「でっ、出たぁぁーーー!!メガシンカの中でも強力と言われているポケモン……メガヘラクロスの爆誕だぁー!!」
リッキーが叫ぶ。
表の世界では珍しいメガシンカに、観客は湧いた。
この大会におけるメガシンカとは、一種のパフォーマンスにも見えなくもない。
豊川の指示のもと、ヘラクロスは'ロックブラスト'を撃つものの、相手のペンドラーの行動は'まもる'。
防がれると思いきや、5つの巨石はあらぬ方向へ飛んでいってしまった。
技が外れたのだった。
「うわー……やっぱり外れるものかー。でも助かったー。相手守ってきてて良かったわホント」
一旦はホッとする豊川だったが、これで相手のペンドラーが加速持ちだと言うことが確定した。
と、なるとバトルを早めに終わらせる以外に道はない。
相手は'メガホーン'を命令する。
ペンドラーも角を剥き出しにして駆けて来た。
だが、そのスピードが尋常でない。
命令が飛ばされた瞬間、まるでロケットスタートでもしたかのような加速をすると距離は瞬間的に半分に縮む。
これでは間に合わない。
ヘラクロスのスピードで避ける事は不可。
かと言って技を打って迎え撃つのも間に合うとは思えない。
ならば。
「仕方ねぇ、一旦受けるしかねぇな……」
豊川はあえて命令はしない。
迫るペンドラーに対し無視を決め込んだ。
結果、真正面から'メガホーン'を受けたヘラクロスは真上に弾き飛ばされた。
だが、防御面が一層厚くなったヘラクロスである。
この一撃では倒れない。
減速しきれずに真っ直ぐへと進み続けるペンドラーに対しヘラクロスは、豊川は。
「今だ!ヤツの背中に岩の3つ4つブチ込めぇぇ!!」
再び'ロックブラスト'が放たれた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.413 )
- 日時: 2019/11/10 07:35
- 名前: ガオケレナ (ID: G/Xeytyg)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
ペンドラーは倒れた。
リッキーはこれでもかと言うぐらいにヘラクロスを、豊川を称えた。
「素っっ晴らしいィィ!!あのメガシンカを……しかもヘラクロスという男ならば是非使いこなしたいポケモンをこんなにもカッコよく扱える彼に拍手だァァーー!!」
実況というものは本来中立でなければいけない気がするのだが、ここまで煽てるのは正直どうなのかと思いつつ高野は周りに合わせて拍手を送る。
ここまでされると潰れてしまう対戦相手だが、それは予選までの話。
ここまで勝ち上がった人間はそうそう簡単に折れるはずもなく。
むしろ反発してでも勝ちに行くという貪欲な姿勢を見せてきた。
その証拠が、
「うおっとぉぉ!出たぞぉー!今度のポケモンはファイアローだぁー」
豊川の対戦相手の2体目はファイアロー。
この大会でやたら見るポケモンである。
「チッ……」
反射的に舌打ちをした豊川はヘラクロスをボールに戻すと今度はバンギラスを出す。
と、同時にどこからか砂嵐が巻き上がった。
「くそっ、戻れファイアロー」
対戦相手もまた、自身のポケモンを戻してゆく。
そして、入れ替わって出てきたのはカバルドンだ。
「交代&交代のオンパレードぉぉ!!さぁ、互いのポケモンが入れ替わった今!決着は着くのだろうかぁ!?」
2人のトレーナーはその後しばし固まった。
互いのポケモンもそれに合わせて動かなくなる。
2人の、特に豊川の頭の中では無数の展開が流れている。
自分の動き1つで変わる相手の対応。
それの裏を、さらにそのまた裏を、その更なる裏を……と、考えていくうちに瞬時の判断が出来なくなる。
それは相手も同様であった。
砂嵐が吹くだけの何も起きないバトル。
次第に観客からもブーイングが巻き起ころうとしたその時。
「しゃーない。戻れバンギラス」
豊川が1つの動きに出た。
それに応じて相手もカバルドンを交代させる。
豊川はヘラクロスを、相手はファイアローに。
しかし、相手も交代して来たのが予想外だったのか、驚きに満ちた顔を見せた豊川は、再びバンギラスに任せんとボールを2つ構える。
それを見た対戦相手も同様にファイアローとカバルドンを入れ替えた。
それを見た豊川は、
「かかったな!?ヘラクロス、'タネマシンガン'だ!」
この時この瞬間を待っていたとばかりにヘラクロスをボールに戻すはずもなく、試合を続行。
俗に言う"交代読み"を決めた瞬間だった。
相手がきちんと見れたのかどうかは不明だが、相手が交代したのも、わざとらしく自分が驚いたのも、ボールを2つ手にしたのもすべてが演技。
すべてはこの場を作るために用意した下準備に過ぎない。
地面タイプに効果抜群の草技が、それも連続技が炸裂する。
巨体を誇るカバルドンの顔あたりにヘラクロスの技が幾度か当たると、銃火器の名を冠した技名に恥じる事はないと言ったほどに黒煙を伴って爆発、炎上した。
フッと煙が晴れながら審判の声が上がる。
「カバルドン戦闘不能!」
これで恐れるものは無くなった。
この状況でのファイアローなど恐るるに足らず。
この1戦の後。
そして、いつかの宣言通り豊川は本当に自身のみで勝利を収め、その無双ぶりを周囲に、観客に、そして高野洋平に見せつけた。
- Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.414 )
- 日時: 2019/11/10 21:21
- 名前: ガオケレナ (ID: 7hzPD9qX)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
大会本選が始まって3日目の昼。
前日に1勝を済ませ、あと2勝且つ残り3日で今あるブロック内対戦が終わる事を考えながら高野洋平はドームシティを歩いていた。
と、言うのも先程まで彼は大貫銀次の工房におり、彼から新しくなったメガシンカ用のデバイス兼眼鏡を受け取ったその帰りだったのだ。
お昼時と言うのもあり、そろそろ何か食べたいと思いながらそれぞれの店を見つつ歩いていたその時。
「やーっと見つけたわ!レン!何処に居たの?」
メイがマニューラを従えながらこちらに向かって普段は出さない大きな声を発していた。
大声なのは周りに多くの人が居たからだろうか。
だが、高野としてはいい迷惑である。
「どこって……さっきまで大貫さんの所に居ただけだ。……ったく、怪我や他人に壊されただけなのにクソ長い説教垂れてきただけじゃなく多めに取りやがって……」
「仕方ないわよ。おじーちゃんはそちらの事情を知らないんだから。いつか今日取られた分倉敷とか議会相手に請求しちゃいましょー!」
「……俺がそんな事出来る人間に見えるのか?」
「いつか、って話よ。それくらいあなたも私も大きくなりましょうって話で……あれ?何処行くのよ?」
メイが話している最中であるにも関わらず、高野は勝手に歩を進め、飲食店が立ち並ぶ大通りから遠ざかってゆく。
「お前の顔見てたら途端に食欲が失せた」
「何よそれ酷くない?私のせい?」
「そうだ、お前のせいだ」
「むっ……私が何をしたって言うのよー?」
「俺の食欲を消し去った」
「堂々巡りやめて?」
ふざけ合いながらも、高野は大会会場や飲食店とは真逆の道を進む。
即ち、街のある方であり、聖蹟桜ヶ丘駅の方向だ。
しかし、今となっては駅まではバスが出ている。
つまり駅に向かいたければ停留所へ行けばいいのだが、そちらに行く気配が無い。
徒歩で街へ下る道を進もうとしていたのだ。
「ちょっと、何処へ行くつもりなのよ?」
「大学」
「歩きで?なんで?その間に試合始まるわよ?それに……あなたもう講義はすべて終えたんじゃなかった?」
嘘が見破られた。
やはり彼女の前で適当な嘘は吐けないと痛感した高野は舌打ちをしながら振り向いた。
「あのな……1人で居たいんだよ!少しは察してくれ!」
「それならそうとはっきり言ってくれれば良かったのに……でも、どうして?何かあったの?」
「別に何かがあった訳じゃない。気分的に」
「なによそれー……」
高野洋平という男はこれまでメイに確かに振り回される所があったが、こういう意味では彼もメイを振り回している。
ここはお互い様だと言うところだが、高野がそのように思ったかどうかは不明だ。
「あっ!そうだ!どうせこれからどっか行くんでしょう?その前に1つだけいい?」
と、言うとメイはポケットではなくポーチからモンスターボールを1つ取り出す。
「なんだよ、何をするつもりだよ?」
「じゃーん!この子についてです!」
言いながらメイはそのボールからポケモンを、スリーパーを呼び出した。
メイがマニューラ以外のポケモンを使う事が珍しいが、バトルでも深部組織絡みでも滅多に見ないポケモンのチョイスに違和感を感じる。
「……なんで、コイツを?」
「さて問題です!この子の特徴は何でしょう!?」
「……は?」
そんな事を言われても高野には分からない。
エスパー単体の第1世代のポケモンとしか言えない彼はそれでも必死に何かあったか色々な情報を引き出しては思い出そうとする。
そして、1つの回答を導いた。
「催眠術使って子供を攫うやべーやつ」
「あの……なんと言うか……私が悪かったわ」
目を逸らし、頭を軽く掻いてメイは言い直す。
「特徴は……この子の進化前のポケモンでいいわ」
「進化前?となるとスリープか。それがどうしたんだよ?」
スリーパーがやべーやつなら、スリープも同様にポケダンで似たような話があったようなとよく思い出せずにいた高野だったが、またしてもロクでもない答えしか出なさそうなのを察したメイは自ら正解を言った。
「いい?スリープは夢を食べるポケモンよ!」
「特徴ってそっちか。それは知ってる。それがどうした?」
「そして、スリープはたまにだけれど、食べた夢を見せてくれるのよ!」
「だから……それがどうしたんだよ?」
「私のスリーパーは、そんなスリープの長所をとにかく伸ばして育てたわ。いつどんな時でもこの子は夢を見せてくれるわ」
「?」
「ところで……夢と記憶の関係性についてはご存知かしら?」
「あー、あれだろ?寝ている時に見ている夢は記憶の整理だとか、強い思いが夢として出たりとか……そういうやつか?」
メイが何を伝え、何をしたがっているのかがよく分からない。
だが、突然記憶について話してくる事に更なる違和感を高野は覚えてしまう。
「そう!極端な話、この子は人の記憶を見せる事が出来るのよ!そこでね……?いつか話したじゃない?過去の事についてどうとか……」
「まさかお前……そいつを使って俺の記憶を……過去を見るってのか!?」
確かに以前、予選を終えた日に山背の家で飲んだ時にそんな話をしていた気がするが、まさかそのような手段に出るとは高野も予想していなかった。
エスパータイプのポケモンを出されては抵抗するのに限界があるからだ。
「ふっざけんな!俺の事を見て……お前に何のメリットがあるんだよ!」
「そ、それは〜……」
単純に知りたいから。
そうとしか思えないメイは言い訳に困った。
目を尖らせているあたり、本気で嫌がっているようだがそれのせいで更に答えに悩む。
「うん?メリットかい?財産の在り処だろ?」
唐突に響いた声。
いつか聞いた嫌な声。
高野とメイは音の発信源のあった東へと振り向く。
「ムシャーナ、'さいみんじゅつ'!!」
そして、その先に居た人間の放った命令と、その命令に従ったポケモンの放った精神攻撃は高野の体に命中した。
「お……前、は……」
催眠術を受けた高野の体はまるで無理矢理変な力で浮かせられ、体も見えない鎖で縛られたかのように固められる。
一切の抵抗が出来ない状況の中、必死に呟いた言葉だ。
「やぁ。元気にしていたかい?あの時回収出来なかったモノを取りに来たぞ?」
倉敷敦也。
気が動転した事と利用価値の低下という理由だけでデッドラインの鍵を殺した黒幕。
そんな人間が今、再び高野の前へと姿を現した。
「ムシャーナも、スリープやスリーパーと同様に夢や記憶を実体化させる事ができる。お前の記憶を見る事でジェノサイドの財産の在り処を見せてもらおうか?おっと、そこの嬢ちゃんは決して攻撃するなよ?俺は殺せるかもしれないが、その瞬間夢はパーン!!……弾けてしまう。俺の言いたい事が分かるよな?」
メイは歯噛みした。
ここで倉敷を倒す事は出来ても、その代償として1つの願望が消え失せてしまう。
高野の過去や記憶には大いに興味のあった彼女は複雑な思いを抱きながら、敵意丸出しのマニューラに対して自身の腕を広げて"待て"の合図をする。
ムシャーナのエスパーによって宙に浮かされ、力の一切を封じられた高野は、自身の真ん前に1つの大きな煙が出た所まではその意識で確認できた。
3人を阻む壁のようにそれは出現した。
1つの、大きな紫色の煙。その塊だ。
どうやらこれが、ムシャーナの力によって現れた、今から流れる夢、記憶を映すモニター代わりになるもののようだ。
これから始まろうとしていた。
高野洋平という、1人の男が歩んだ過去。
その記録を辿る、1つの旅が。
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