コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- アイドルな彼氏に猫パンチ@
- 日時: 2011/02/07 15:34
- 名前: め〜にゃん (ID: AO7OXeJ5)
今どき 年下の彼氏なんて
珍しくもなんともないだろう。
なんせ世の中、右も左も
草食男子で溢れかえってる このご時世。
女の方がグイグイ腕を引っ張って
「ほら、私についておいで!」ぐらいの勢いがなくちゃ
彼氏のひとりも できやしない。
私も34のこの年まで
恋の一つや二つ、三つや四つはしてきたつもりだが
いつも年上男に惚れていた。
同い年や年下男なんて、コドモみたいで対象外。
なのに なのに。
浅香雪見 34才。
職業 フリーカメラマン。
生まれて初めて 年下の男と付き合う。
それも 何を血迷ったか、一回りも年下の男。
それだけでも十分に、私的には恥ずかしくて
デートもコソコソしたいのだが
それとは別に コソコソしなければならない理由がある。
彼氏、斎藤健人 22才。
職業 どういうわけか、今をときめくアイドル俳優!
なーんで、こんなめんどくさい恋愛 しちゃったんだろ?
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- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.6 )
- 日時: 2011/02/08 14:15
- 名前: りえ@ezweb.ne.jp (ID: EFs6h6wo)
- 参照: りえだす(・ω・`) インフルエンザに捕えられた可哀想な中1だす(;ω;)
私は携帯で打って、それをメールでパソコンに送ってコピペしてますよ^^
描写がとても気に入ってます!
かわいらしい大人の女性だいすきです^ω^
- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.7 )
- 日時: 2011/02/09 11:09
- 名前: め〜にゃん (ID: AO7OXeJ5)
母を家まで送り届け、
自分のマンションへ帰る道すがら
雪見は考えていた。
それにしても 健人くん、
昨日の俳優さんにそっくりだったなぁー。
今度会ったら、写真撮らせてもらうかな?
そうだ!写真撮って、
イケメンおたくの真由子に見せてやろう!
きっと、本物だと思ってビックリするぞー!
へへへっ、楽しみ楽しみ。
…って、おいおい!誰も教えなかったわけ?
さっき会った、遠い親戚の健人と、
昨日テレビで見た、今をときめくイケメン俳優 斎藤健人は
同一人物だってことを。
て言うか、普通もうそろそろ気が付く頃じゃない?
どこまでもどこまでも、オメデタイ雪見であった。
「ただいまぁ!帰ったよ、めめ!いい子にしてた?」
してたにゃ〜ん と言いたげに、
めめは雪見の足にまとわりついては
体をすり寄せた。
めめは四歳ぐらいになる、オスの茶トラ猫。
生まれて間もない頃、近くの公園に捨てられていて
近所の子供達が必死で新しい飼い主を捜しているところに
偶然、撮影旅行帰りの私が通りかかった。
「おばさん!猫を飼ってもらえませんか?」
お、おばさん!って、私の事?
どう見ても、私の方を見てるよね。
確かに三十才はおばさんかもしれないけど、
撮影旅行でお肌がボロボロかもしれないけど、
おばさんと呼ばれて
「はい」と素直には返事したくないわ。
で、聞こえなかった振りをして
その場をスルーしようかと思ったけど
ちらっと横目で箱の中を見てしまったのが運のつき。
その子猫は、やっと目が開いた頃らしく
箱の中でみぃみぃと、か細く鳴いていた。
きっと、母親のおっぱいをさがしているのだろう。
しきりによたよたと歩き回る。
胸がぎゅっと締め付けられた。
どうしても、その場を立ち去ることができなかった。
そして私の両手は、自然と箱を受け取っていた。
こうして家に連れ帰った子猫は
みぃみぃ鳴くから、「みーくん」と名付けられた。
夜中も三時間ごとにミルクを欲しがり
慢性の寝不足状態ではあったが、
子猫のいる生活は、そんな疲れを吹き飛ばしておつりがくるくらいの
幸せに充ち満ちた毎日だった。
寂しがり屋の「みーくん」は、
いつも私の後ろをついて歩く。
トイレに入れば ドアの前にお座りし、
お風呂に入れば 開けてくれ!とガラスを引っかく。
やがて大きくなった「みーくん」は、
マンションのベランダにやってくる すずめや鳩を見ては
「めぇぇぇぇ めぇぇぇぇ」とヒゲを震わせ
まるで やぎのように鳴くようになった。
で、「みーくん」が本名だが
私は「めーくん」と呼ぶようになり
そこから「めめくん」に変化していったのだ。
「めめ、今日ね。めめとそっくりなお友達に会ってきたよ。
虎太郎くんっていうの。
めめよりは体が小さかったけど、同じ模様だったよ。
あとね、プリンちゃんっていう、目が水色のお友達もいた。
今度 会えるといいね。」
めめは、まだ私の膝の上に残る匂いを嗅ぎつけ
しきりに頭をこすりつけた。
でも、なんで虎太郎とプリンは
初対面の私の膝の上から 離れなかったんだろう?
めめの匂いがしたから?
それとも、今朝焼いた鮭の匂いでもついてたのかな。
体を二つに折って、くんくんと犬のように嗅いでみたが
よくわからなかった。
「そうだ!早くコタとプリンの写真、選ばなくちゃ!
健人くんとつぐみちゃん、
すごく楽しみにしてるみたいだから。」
私はご飯もそこそこに、作業に取りかかった。
いつもの作業と同じはずなのに
なぜかワクワクしながら仕事をしている。
ワクワクというか、ドキドキというか
うきうきというか、そわそわというか。
一日も早く二人に届けたくて、毎晩遅くまで作業を進めた。
そして一ヶ月後、ついにコタとプリンの写真集が完成!
昔、駆け出しの頃お世話になった小さな出版社に
相当な無理を聞いてもらって
特急仕上げで十冊、作ってもらった。
普通の出版社だと、十冊しか作らないなんてあり得ない。
そんな話は門前払いだ。
ところが、偶然思い出して恐る恐る交渉に出かけたその出版社は、
幸か不幸か経営が傾いていて(不幸に決まってるだろ!)
どんな仕事でもお引き受けします!
と言わざるを得ない状態になっていた。
私は、そんな状態の時にお金にもならない仕事を発注するのは
人間として間違ってる気がして
一旦は「やっぱり、やめときます。」と
別のところを当たってみることにしたのだが
案の定、他の出版社は鼻で笑われた。
で、やはりここしか方法はないか…と
重い足取りで、最初に行った出版社のドアを開けた。
「あのぉ〜、やっぱりお願いできますか?」
ここに頼むことに決め、打ち合わせに取りかかる。
たった十冊であることを平謝りし、
次の私の仕事は 必ずここにお願いすることを約束した。
私が選び抜いたコタとプリンの写真を見てもらい
一緒にレイアウトのアイディアを出し合う。
「あ、一番最後のページだけは決めてるんです。この写真って。」
そう言って一枚の写真を差し出した。
それは健人とつぐみがソファに座り、
健人がコタを、つぐみがプリンを頬ずりしている一枚だった。
つぐみにせがまれて、最後に撮した一枚。
それはそれは二人とも、幸せそうな最高の笑顔で
この本の最後を飾るにふさわしい
我ながら見とれてしまうほどのベストショットだ。
だが、この一枚を差し出したことによって、
まさかこんな騒ぎになるとは夢にも思っていなくて…。
- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.8 )
- 日時: 2011/02/09 15:51
- 名前: め〜にゃん (ID: AO7OXeJ5)
健人とつぐみの写真を見せた次の瞬間、
私の両隣にいた若い女性スタッフが、ほぼ同時に大絶叫!
他の男性社員からも、「おおっ!!」と声が上がり
小さな社内は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
私は、みんなが突然騒ぎ出した理由が解らず
ただ唖然とするばかり。
みんなが口々に聞いてくる。
「ねぇねぇ!なんでここに斎藤健人がいるの!?
どこで撮したの?一緒に写ってる女は誰?」
はぁ?なんでいきなりタメグチなわけ?
「おい!どうしたんだ、この写真!」
え? 私、怒られるようなこと した?
知り合いなのか?
どういう関係?
いつの写真だ?
どういうことなんだ!
次々に浴びせられる言葉の意味が理解できず
もはや、私の頭は思考回路停止寸前であった。
ただ、「斎藤健人」「斎藤健人」という
声だけは耳に入ってきた。
あれ?まてよ?
なんでみんな、健人くんのこと知ってんだろ。
一切の声を無視して、隣の人に聞いてみた。
「ねぇ、なんで健人くんのこと、知ってるの?」
「知ってるに決まってるじゃないですか!
あの斎藤健人ですよ!!」
「俺でも知ってる!」
と、かなりくたびれたネクタイをしたおじさんが言った。
そうなの?健人くんって そんなに有名人なの?
なんか、スポーツとかやってたっけ?
甲子園かなんかで活躍でもしたのかな…。
雪見の頭には、健人=遠い親戚 以外の発想は生まれなかった。
だが、やっとピンときた。
「あぁ!わかった! 似てますよねぇ〜、イケメン俳優さんに。
私も似てるなぁーと思ったもの。
しかも 同姓同名なんて、あり得ないですよね。
世の中には、自分にそっくりな人が三人もいるっていうけど、
顔も似てて名前も同じだと、怖くないですか?
なんか、たとえば、私はここにいるのに
うり二つの誰かが銀行強盗して、
何にもしてないのに私が逮捕されちゃったり、とか。」
みんななぜか、ぽか〜んとした顔して
辺りが静まりかえった。
へ? 例えが悪かった?
一瞬の静寂のあと、またざわめきだした。
「本物じゃないの?ただのそっくりさん?」
「でも、こんなに似てて、しかも同姓同名って
そんなこと、本当にあるか?」
「親戚なら、知らないはずなくない?」
「そうだな。しかも本物だとしたら、妹の写真 出すか?
妹も大変な騒ぎに巻き込まれるぞ。」
ざわめきを終了させるために、雪見が立ち上がった。
「あのぉ〜、もうそろそろ、次に進みませんか?
一日も早く、これを完成させたいんです。
じゃないと、私の本当の仕事に戻れない。」
この言葉を合図に、みんな魔法から覚めたように我に返り、
それぞれの作業を再開させた。
そして一ヶ月後。
出来上がったとの連絡を受けて、出版社へと急いだ。
机の上には、完成したばかりの
インクの匂いが立ち上るような写真集が十冊、積まれている。
私はいつもと同じにドキドキしながら
そっと一冊に手を伸ばした。
スーッと深呼吸をして、表紙をめくる。
そこには、たった二匹の写真集とは思われないほどの
さまざまな表情をした、コタとプリンが満載だった。
ものの一時間ほどで撮った写真が、
一ヶ月かけて撮った写真よりも上手く撮れてる気がして
ちょっとだけ複雑な心境…
でも、これならきっと健人くん、喜んでくれるはず!
嬉しかった。
なぜか、フリーになって初めて出版した写真集の時よりも
嬉しい気がした。
早く健人くんに見せてあげたい!
メールしなくちゃ!
私は、お世話になったスタッフの一人ひとりにお礼を言い、
十冊をかかえて足早に自分の車に乗り込んだ。
そして、エンジンをかける前に、健人に初メール。
なぜかドキドキして、思うように指先が動かない。
なんとか打ち終えて、送信ボタンを押す。
元気にしてる?
約束の、コタとプリン
の写真集、無事完成!
かなりのいい仕上がり
だよ、自信作です。
早く見せたいんだけど
どっかで会える?
送信した文を読み返して、
また一つも絵文字を入れてないことに気が付いた。
しまったぁ〜!またやっちゃった。
よくメールしあう飲み仲間の香織に、
「あんたのメールは字ばっかりで読みにくい!」
と、いつも叱られる。
「だってめんどくさいんだからしょうがないでしょ!
あんたのメールこそ、絵文字ばっかで解読するの
苦労するわ!」と反撃するのだが、
「そんなメールじゃ男も寄りつかないよ!」と逆襲されて
あえなく撃沈…
まったく可愛げのない、仕事のメールみたいなのを打つ女は
男にパスされて当然!
とか、平気で言ってくる。
なんとなく解らないでもないが、ほんとかな…
健人に送ったメールを見ては、かなり後悔していた。
できることなら、さっきのメールは無かったことにして
改めて、女の子らしい絵文字たっぷりのメールを送信したかった。
女の子らしい?
なに考えてんだろ、私。
ただ写真集を渡すだけなんだから、要件だけでいいじゃない。
さっきのメールで充分、充分。
と、自分に言い聞かせてはみたが
なかなか返信がこないので、正直あせった。
健人くんって、大学生だっけ?
それとも社会人?
なにやってるのか、聞きそびれちゃったな。
まぁ、サラリーマンってかっこはしてなかったから
大学生だよね。
まだ授業中かな?
と、ケータイの時計をながめた。
ふぅ……
ため息を吐き終わった瞬間、
手の中のケータイがブルブルと震え出した。
健人くんからだ!!
- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.9 )
- 日時: 2011/02/10 11:04
- 名前: め〜にゃん (ID: AO7OXeJ5)
恐る恐るケータイを開くと
それはやっぱり健人からのメールだった。
やっほ〜ぃ!
ゆき姉、ありがとう
(^.^)チュッ
めっちゃ楽しみィ
今すぐ飛んで行きたいんだけど
いま台湾なもんで。
あさって帰るから待っててや!
お土産買ってくよん☆
ではでは…
by KENTO
台湾かぁ。じゃあ無理だね。
え?台湾?なんで台湾?
友達と旅行?それとも大学のゼミのなんか?
待っててや!だって。
なんか彼氏からのメールっぽくない? (^.^)チュッ だって。
それに健人くんのメールも、わりとシンプルだよね。
もっとデコメとかだらけかと思った。
あさってか…。どこで渡そう。
そうだ!車で空港まで迎えに行っちゃう?
きっと荷物もあるだろうし。
内緒で行ったら、健人くんビックリするだろうなぁー。
楽しみ、楽しみ!
それから私は 街へと車を走らせ
久しぶりに洋服をあれこれ買い込んだ。
ついでに美容室にも寄って、髪を切った。
それはまるで、初デートの二日前といった光景である。
そしていよいよ、健人が帰ってくる日。
朝早くに目覚めたので、そのままベッドから飛び起き、
熱いシャワーを浴びてお化粧をした。
ちゃちゃっとサンドイッチを作り、熱いコーヒーをポットに入れ、
カメラバッグを肩に担いで、早々に家を出発する。
もちろん、コタとプリンの写真集も持った。
道路が混んでる時間帯は嫌だし、
何時の便で到着するかわからないし。
家を早くに出た理由を、自分自身にいいわけしていた。
本当は、ドキドキして家にいられなかっただけなのに。
待ち時間は、飛行機でも撮って遊んでよう。
昔お金が無い頃、よく空港に来て
飛行機やら鳥やらを撮して遊んだっけ。
懐かしいな。
運転しながら ふと考えた。
健人くんと私って、一回り違うんだよね。
私が33才だから、健人くんは21才?
なんか、おばさんと若者って感じ。
だって私が大学生の頃、三十過ぎた女の人って
「おばさん」だと思ってたもん。
健人くんも私のこと、「おばさん」って思ってるかな…
そう考えると、喜々として今日のために洋服を買い
髪を切った自分が恥ずかしくてたまらなくなり,
いっそ このまま、Uターンして帰ろうかと
本気で考えた。
いや、だめだ!
やっぱり、今日渡す約束してるんだから。
健人くん、あんなに楽しみにしてくれてるんだもの。
どうしても早く 渡さなきゃ。
そう。私は親戚のお姉ちゃんとして届けるだけ。
もう、デート前のようなルンルン気分はどこかへ行ってしまった。
今はただ、早く写真集を渡してしまいたい。それだけ。
羽田空港に到着。
台湾からの第一便が着くまでには、まだ時間がある。
私は到着ロビーの片隅で、今朝作ってきたサンドイッチと
コーヒーの、遅い朝食を楽しむことにした。
サンドイッチをつまみながら、しばしの人間ウォッチング。
朝っぱらから若い女の子が、ずいぶんといるもんだなぁー。
今日って 何曜日だっけ?
あぁ、土曜日か。みんな、学校休みなのね。
それにしても、みんな遠距離恋愛でもしてるのかな。
彼氏待ちって感じ。
第一便が到着。
よく見てたけど、健人くんらしい人は降りてこなかった。
第二便の到着まで、お土産屋さんめぐりをすることにする。
わぁ、美味しそうな新作スィーツが勢揃い!
今日のデザートに、なんか買って帰ろう。
第二便が到着。
なんか さっきより、若いコが増えてる感じ。
みんな、誰を迎えにきてるんだろ。
この便にも 健人くんはいないみたい。
次の便まで、ちょっと外の空気を吸ってこよう。
私はカメラを片手に、送迎デッキへ足を延ばした。
ここへ出るのは本当に久しぶり。
一年に何度も この空港を利用するが、
仕事とあっては ただの中継地点に過ぎない。
仕事抜きで、の〜んびり旅行でも行きたいな。
カメラのファインダー越しに、
これから飛び立つであろう翼を見つめて
気持ちだけは一緒に飛び立とうと思った。
プライベートで旅行するなら どこがいいかな。
海外は気持ちが休まらないから、沖縄の離島がいいな。
竹富島の民宿に泊まって、一ヶ月ぐらい
ぽけ〜っと 海だけ眺めて暮らしたい。
そう言うの、命の洗濯っていうんだよね。
私もそろそろ、一回目の洗濯が必要な年頃かもな。
第三便の到着時間が近づいたので、
私は慌ててロビーへと荷物を持って移動した。
そこには、私の知らぬ間に溢れんばかりの人だかりができていて
私の立つスペースなど、どこにも空いていなかった。
なんなの!? この人達。
いったい 誰の出迎えに来てるわけ?
誰か、人気アイドルでも降りてくるのかな。
みんな、カメラを構え始めたんだけど…
こうなったらプロとして、黙って見てるわけにはいかないな。
こんなところで、予定外のプロ魂がメラメラと燃え上がり
私は足元のカメラバッグから、一番の望遠レンズを取り出した。
まわりのコたちが、ちょっと引いてる気がする。
冷静に観察すると、みんな私より十以上は年下か。
いや、中学生ぐらいの子もたくさんいるぞ。
またしても自分の年齢を意識しだした。
くっそー!負けるもんか!!
私はプロのカメラマンに徹することで、
自分の意識にバリアを張ろうと心に決めた。
車から三脚持ってくればよかったな。
どこか、ちょっと後ろでもいいから登れるとこないかな?
私はあえて後ろに下がって、植栽スペースの角に立ち
望遠レンズで被写体を探した。
次の瞬間、「キャーッ!!」という悲鳴と共に、
まわりをたくさんの人でガードされた人が
揉みくちゃにされながら 足早に目の前を立ち去った。
えっ!?今のって…
- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.10 )
- 日時: 2011/02/10 10:43
- 名前: め〜にゃん (ID: AO7OXeJ5)
ほんのわずかな時間ではあったが、
プロの動物カメラマンにとって
動く被写体を捕らえてシャッターを切るには
充分すぎる時間であった。
だが、ファインダー越しに見えたものは…
帽子を目深にかぶり、顔の半分以上をマスクが隠し
そして黒縁の大きな眼鏡をかけた、小柄な男性。
服装からして、今どきの若い男性だとは一目で判ったが
なんせ顔がほとんど隠れていた。
でも、あの黒縁眼鏡とその奥の瞳……
見たことが絶対にある。
それも、つい一ヶ月前。
ちっちゃいばあちゃんちで…
いや、テレビの画面の中で?
望遠レンズの先の被写体が、ほんの一瞬
私のことを見つめた気がした。
あの人は いったい…
気がつけば、あんなに出来てた人だかりが
跡形もなく消えていた。
私は慌てて、まだ残って余韻に浸っていた女子高生二人組に
さっきの人は誰だったのかを聞いてみた。
彼女らは、いまだ興奮覚めやらずといった感じで
「健人!俳優の斎藤健人!!」
と言ったかと思うと、また二人できゃーきゃー言い始めた。
やっぱり「斎藤健人」だ…
でも……
心のもやもやは、いつまでたっても消えることがなく
それどころか さらに勢いを増して覆い被さってきた。
どうしよう…。
母さんに聞いてみようかな…。
「けんちゃんって、俳優さんなの?」って。
でも、違ってたら笑われるだろうしな。
メールして聞こうかどうしようか、うじうじと悩んでると
お尻のポケットに入れてたケータイが震えだした。
メールだ。誰からだろ?
開けてみて驚いた。それは健人からのメールであった。
ただいまぁ、ゆき姉!
今、成田に到着です(^_^)V
台湾はウマイ国だったぁ〜。
でも、やっぱ日本飯が恋しくて
仕方ないので、俺おごるから
晩飯付き合って下さいです★
あ、コタ&プリンの写真集
忘れないで持ってきてネ。
では、次の指令を待て!
by KENTO
次の指令を待て!って…
ええっ!?成田ぁ?
羽田便じゃなかったの??
あたしったら、なんで勝手に羽田だと思い込んでたんだろ。
せっかく迎えに行って、驚かそうと思ってたのに!
なんて そそっかしいんだろ、あたし。
健人からの、突然のご飯の誘いに舞い上がり
雪見は、ついさっきまで抱いていた疑惑など
とうにどこかへ飛んで行ってた。
しょうがない。一旦、家に戻るか…。
カメラをバッグにしまい、雪見は小走りでロビーを後にした。
マンションへ戻り、めめにえさを上げてから
散らかった部屋を片づける。
今朝、バタバタと出かけて行った痕跡が
あちこちに散らばっていた。
はぁーっ。なんだか一日分のエネルギーを
使い果たしちゃった感じ。
疲れたぁ〜。
そうつぶやいて、めめの寝ていたソファーに
ごろんと横になる。
目を閉じると、地中に吸い込まれるように眠りに落ちていった。
雪見は夢を見ていた。
お気に入りの猫カフェに、健人を連れて行った夢だ。
二人で向かい合わせにコーヒーを飲みながら、
飽きずに猫たちを眺めている。
時折近づいてくる子猫に、
健人はねこじゃらしを上手にあやつって
実に楽しそうに 幸せそうに相手をしてやっている。
そんな健人の横顔を、私がほおづえつきながら
うっとりとながめていた。
………雪見!
……雪見!!
誰かが私を呼んでいる。
…雪見ってば!起きなさいよ!!
え??なに???
肩を叩かれ、びっくりして跳ね起きた!
目の前には真由子が立っている。
「え?真由子?なんでここにいるの?」
「なんでじゃないわよ!
朝から何回も電話してるのに、家電にもケータイにも
出やしないから、家でぶっ倒れてるかと心配になって
様子見に来たんじゃない!!
呼んでも起きないから、本当に死んでるのかと思って
倒れそうになったわよ!」
仲の良い真由子と香織には、ここの合い鍵を渡してあり
私が仕事で長く家を空けるときには、
二人が代わる代わる、めめの面倒をみに
ここへやって来てくれるのだった。
「ごめん、ごめん!
朝早くからバタバタと出かけちゃったもんだから
留守電にしてくの 忘れてた。私、爆睡してた?
で、なんか用事?」
「いや、別にたいした用はなかったけど…。」
「ありがと!こんなに私の事を思ってくれてる友達がいて
いつ、ぶっ倒れても安心だ!!」
と言いながら、ぎゅーっと真由子に抱きついた。
「ねぇねぇ、来たついでだから、どっか飲みに行こうよ!
明日は日曜だしさ、久しぶりに朝までカラオケなんか どう?」
そう言われて、ハッ!と健人との約束を思い出した。
「ごめーん!今日は先約があるんだ。また誘って!」
と、両手を合わせて謝る。
「なに?誰よ、誰?」
「別に。友達にご飯誘われてるだけ。」
「さては男ぉ?ねぇ、そうでしょ!絶対そうだ!!
顔が一瞬、にやけたもん! ねぇ、誰!誰!」
「遠い親戚の大学生だよ、親戚の!」
「親戚ったって、男なんでしょ、ぴちぴちの!!」
「なによ、それ!変な言い方、やめてよ!」
「なんで、親戚の男の子とご飯なんて行くわけ?
ねぇ、そのコ、イケメン?写真とかないの?」
「写真?あ、あるわ。これ見て!
先月、親戚の家へ行って撮った猫で写真集作って、
おとつい出来上がったから、今日はこれを渡すために会って
ついでにご飯食べるだけ。」
「ふーん…」といいながら、真由子がパラパラと
コタとプリンの写真集をめくっていた。
が、突然、耳をつんざく大絶叫!!
「ぎゃーっっ!!なに、これ!!
なんで健人が最後のページにうつってんのよぉ〜!!!」
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