コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- アイドルな彼氏に猫パンチ@
- 日時: 2011/02/07 15:34
- 名前: め〜にゃん (ID: AO7OXeJ5)
今どき 年下の彼氏なんて
珍しくもなんともないだろう。
なんせ世の中、右も左も
草食男子で溢れかえってる このご時世。
女の方がグイグイ腕を引っ張って
「ほら、私についておいで!」ぐらいの勢いがなくちゃ
彼氏のひとりも できやしない。
私も34のこの年まで
恋の一つや二つ、三つや四つはしてきたつもりだが
いつも年上男に惚れていた。
同い年や年下男なんて、コドモみたいで対象外。
なのに なのに。
浅香雪見 34才。
職業 フリーカメラマン。
生まれて初めて 年下の男と付き合う。
それも 何を血迷ったか、一回りも年下の男。
それだけでも十分に、私的には恥ずかしくて
デートもコソコソしたいのだが
それとは別に コソコソしなければならない理由がある。
彼氏、斎藤健人 22才。
職業 どういうわけか、今をときめくアイドル俳優!
なーんで、こんなめんどくさい恋愛 しちゃったんだろ?
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- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.432 )
- 日時: 2012/07/20 14:14
- 名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)
健人と当麻、二人の広い楽屋前にて。
「失礼します…。」
恐る恐る健人を先頭にドアを開け中に入る。
自分の楽屋に入るのに失礼も何も無いのだが、今日ばかりはそんな屁理屈もまかり通らない。
自分らは、たぶん説教されるために楽屋に戻って来たのだから…。
神妙な面持ちで中に入った途端、コーヒーの芳しい香りが鼻をくすぐる。
途端コーヒー好きな雪見は反射的に「いい匂いっ!」と叫んでしまい、
当麻ら3人に白い目を向けられた。
楽屋中央にある応接セットの一人掛け椅子に、お待ちかねの小野寺常務が座ってる。
小野寺は、入ってきた4人の顔を一通り眺めた後、「そこに座れ…。」
と一言言っただけで腕組みをし、瞑想にでも入るかのようにそっと目を閉じた。
常務の斜め後方では、見覚え有る後ろ姿の女性がトレーにカップを並べ、
コーヒーのスタンバイをしてる。
それは『YUKIMI&』をキャラクタープロデュースした小野寺の右腕とも言うべき人物、
今は常務秘書を務める小林夏美であった。
ゆったりと大きな3人掛けソファーの一番奥に健人がまず座り、雪見、
当麻、みずきが順に詰めて腰掛ける。
いくら大きなソファーとは言え、3人掛けに大人4人で座れば無論窮屈に決まってた。
細身のこのメンツだから、ギューギュー詰めでもなんとか4人座れたが、
もしもこのうちの一人が『ヴィーナス』の巨漢カメラマン、阿部だったとしたら…。
なぜに突然阿部を思い出したのかは不明だが、そんな妄想をこんな緊迫した局面で想像し、
必死に笑いを堪えてる不届き者がいた。雪見だ!
常務がまだ目を閉じ、夏美も後ろを向いてるから良いものの、口元を手で押さえ
肩を震わせてるのが、密着してる両隣の健人と当麻にはすぐに振動として伝わってきた。
この、どこにも笑いの要素など転がってない真面目な場面で、何に対して雪見が
そんなにも笑いを堪えているのか。
想像出来るはずもなかったが、雪見を知り尽くす二人は『また始まった!』
と言わんばかりに、ほぼ同時に雪見に軽い肘鉄を食らわした。
時に大人であったり子供であったりする天然系の雪見は、常に常識的に
生きてる健人からすると、ハラハラドキドキする場面も多く目が離せない。
一体どっちが年上なんだ?と思うこともしばしば。
でも、だからこそ健人も当麻も、自分が年下であることを意識することなく、
雪見に説教できるし甘える事もできるのだった。
笑いをとがめられた雪見は、『ご・め・ん!』と両手を合わせペコリと頭を下げる。
みずきがそれを不思議そうにチラリと見た。
そこへ夏美がコーヒーを運んでやって来る。
「あなたたちって人は…。まぁ次々と色々やらかしてくれるわね。
コーヒーなんか飲んでる場合じゃないけど、リハーサルは30分待ってもらってるから。
とにかくこれ飲んで、少しは落ち着きなさい。」
久しぶりに会った夏美は、相変わらずの冷静沈着美人であった。
いつも通りダイナマイトボディを格好良いスーツで武装し、背筋もシャキッと伸びる
ハイヒールを履いている。
全身抜かりなく磨き上げられた彼女を、雪見は自分とはまったく別の生き物を見るように
惚れ惚れと眺めていた。…と、その時である!
テーブルの向い側から前屈みになり、健人の前にコーヒーカップをコトンと置いたその胸元に
4人の目が釘付けになった。
雪見もみずきも持ち合わせてはいない、夏美のダイナマイトな胸の谷間が、
見る気は無くとも視界に飛び込んできたのだ!
突然の出来事に遭遇した時こそ、その人の本性が表れると言うが、まさしくそうだった。
何も見なかったかのように、スッと視線を外す健人と雪見。
…に対して当麻は…凝視していた。
本人的にはそれでも見て見ぬ振りをしたつもりかも知れないが、明らかにその目は
夏美が4人にコーヒーを配り終えるまで、さり気なく胸元を追いかけていた。
ドンッ! 「痛っ!」
勿論当麻は、みずきから肘鉄を一撃お見舞いされた。
それでなくともみずきはヤキモチ焼きなのに、大丈夫か?この夫婦。
夫婦…?そうだ…。当麻とみずきは結婚したんだった。それも今朝…。
そして私達まで…結婚宣言をしてしまったんだ。
だから今、こうして常務に呼び出されて…。
やっと雪見は我に返り、背筋を伸ばして座り直した。
それとほぼ同時に、小野寺も腕組みを解き目を開ける。
部屋の空気がピンと張り詰めた。
「お前達…。なんで呼び出されたかは重々承知の上だよな?
こんな大事なライヴ前に、俺だって説教なんて垂れたくもない。
だがな、言うべき事は言っておかねばならん。
わかってるよな?今回の事後承諾は相当なルール違反だぞ!当麻っ!」
「は、はいっ…。すみませんでした…。」
突然当麻が名指しで叱られたが、それは暗に他の3人も同罪だぞ!と言ってる気がして
健人ら3人も神妙な面持ちで「申し訳ありませんでした!」と頭を下げ、
再び背筋を延ばした。
「今は時間がない…。本来ならじっくり話を聞かせてもらうとこだが、
ツアーの締めくくりを台無しにするわけにはいかないからな。
簡潔に事務所側の見解だけを伝えよう。」
小野寺の言葉に皆が息を呑んだ。
後ろに控えてるマネジャーの今野や及川でさえも、まだその内容を知らされてはいない。
それほどまでに緊急事態で、急遽重役だけの電話会談で決まった話のようだ。
「まずは当麻たち…。これは少し前から話が水面下で進んでた事だが、
今日の入籍発表で決定事項とさせてもらう。」
「えっ!?な、なんですか…?」
当麻とみずきは、小野寺が何を言おうとしてるのかまったく心当たりがなくうろたえた。
だが重大な決定事項であるのは無論間違いなく、思わず身震いをする。
それは隣りに座る健人や雪見も同じ反応だった。
何かとんでもない事が待っている…。
もしかして、大きく人生が変るような何かが…。
「みずきが所属する津山泰三事務所を、我が社が吸収合併する事に決まった。
よって4月1日付より、華浦みずきは我が社の所属となる!」
「うそっ!?」「なんでっ!?」当麻と健人が大声をあげる。
「ちょ、ちょっと待って下さいっ!
私、何にもおじいちゃんから聞いてませんっ!!一体どういう事ですか!
吸収合併って、おじいちゃんの会社がなくなるってこと!?どうして!?
なんで私達の結婚に関係があるの!?納得いきません!説明して下さいっ!!」
みずきが立ち上がり、凄い勢いで小野寺に食ってかかる。
それを隣りの当麻が手首をつかみ、「落ち着けって!」となだめて座らせた。
雪見はというと…みずきの後ろ姿を茫然と見つめながら、なぜか自分の身にも
大きな波が押し寄せてくる気配を感じていた。
ただ漠然とした不安…。こころ落ち着かない自分…。
あと6時間ほどでライヴが幕を開ける。
母も見に来る『YUKIMI&』最後のステージが…。
- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.433 )
- 日時: 2012/07/22 20:23
- 名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)
まだ話は始まったばかりだと言うのに、スタート早々しばしの静寂が訪れた。
だがそれは常務の小野寺が、あえてすぐには言葉を繋がずに、
みずきに少しの猶予を与えてのことだった。
みずきが膝の上で握り締めてる拳の上に、横から当麻がスッと左手を伸ばす。
そして自分の大きな手でみずきの拳を優しく柔らかくそっと包み込み、
みずきの取り乱した心を落ち着かせようと、ただ温もりだけを伝えていた。
大丈夫だよ、俺が付いてるから…。
当麻の手の平は温もりだけではなく、確かにみずきに心をも伝えていた。
人の心を読むことくらい、みずきにはたやすいこと。
ましてや直接触れられた皮膚からは、読もうと思えば心の隅々まで読み切れる。
当麻は…当麻はただひたすら一言だけを繰り返し念じていた。
大丈夫だよ、俺が付いてるから。だから大丈夫…。
その単純なまでに真っ直ぐな心。
何の計算もなく、ただ心のおもむくままに向かってくる一途な気持ち。
そうだった…。もう私は一人じゃない。当麻がいるんだ。
父さんが亡くなって私の魂がひとりぼっちになった時、当麻が私を救ってくれた。
誰にも見せることが出来なかった絶望的な悲しみに、当麻だけは気付いてくれて
何も言わずに側にいてくれたんだ…。
初めて本当の自分をさらけ出すことが出来た人。
私をステイタスとしてではなく、素の華浦みずきを好きになってくれた人。
だからこの人と、一生を共に歩んで行こうと決めたんだ。
だったら…だったら私はどこにいたっていいじゃない。
事務所なんて、そんなに重要なこと?
むしろ当麻と一緒にいれる事を感謝するべきでは?
でも…どうしておじいちゃんの事務所が無くなるの?
一体、私の知らぬ間に何が起こったの…?
おじいちゃんはどうなるの…?
次々と疑問が湧いてはくるが、もう先ほどのような心の乱れは感じない。
みずきは当麻の手の温もりと、ただ一途な心に平常心を取り戻し
この先の事態と真摯に向き合うために、まずはコーヒーに口をつけて
気持ちを立て直した。
キリッと苦いコーヒーは意識を覚醒し、楽屋一杯に充満した芳しい香りにも
鎮静効果があるのが良くわかる。
もしかして夏美はこの展開を初めから予想して、
あえてコーヒータイムを設けてくれたのでは無かろうか…。
だとしたら、やはり話に聞いてた通り凄腕の常務秘書。
夏美の心遣いに感謝しよう。
すっかり落ち着きを取り戻したみずきの姿に安堵して、
他の皆もホッと一息コーヒータイム。
雪見も、次に回ってくるであろう自分たちの番に備えてカップを手に取った。
すると間髪入れずに横から手が伸びて、「あげる。」
と当麻がミルクをくれる。
「私のは健人にあげて。」みずきも横送りにミルクを差し出した。
二人は、健人と雪見がカフェオレしか飲めない事を知ってて
気遣ってくれたのだ。
「あ、ありがと!」
こんな場面においても気に掛けてくれてることが、雪見には
ことのほか嬉しかった。
自分の分と当麻のミルクを入れた少し冷めたコーヒーは、
心を落ち着かせるどころか強い勇気さえも与えてくれた。
4人でいれば大丈夫。きっと何を言われても大丈夫。
なぜか根拠もなくそう思えた雪見だった。
「よし、じゃあ話を再開するぞ。時間がないからな。」
小野寺が、一気に飲み干したコーヒーカップをテーブルに置くと同時に
早口加減で4人に言い渡す。
「みずき…。お前にとっては何とも辛い話だが…。
津山泰三事務所が不渡りを出したんだ。事実上の倒産だ…。」
「えっ…!?そ、そんな馬鹿なっ!嘘でしょ?嘘ですよねっ!!
嘘だ…。私、一生懸命頑張って来たのに…。」
みずきは、それだけ言うのがやっとで後は茫然とうつむいた。
「すまないが話を先に進めさせてもらう。まずは一通り説明するぞ。」
小野寺は気の毒そうな顔をみずきに向けたが、時間がないとばかりに
当麻に対して淡々とした声で話の続きを急いだ。
それは、すでに小野寺が当麻をみずきの夫として認めてるからに他ならなくて
当麻も、妻であるみずきに代わって話を聞くのは当然と、
小野寺の言葉を受け止めるために真剣な表情で身を乗り出した。
その横顔を健人が不思議な思いで眺めてる。
当麻って、こんなに大人な奴だっけ…?
俺の知ってる当麻は優柔不断でマイペースで、感覚だけで行動するような奴で
大人っぽいと思った事は一度もなかったのに…。
けど今の当麻は、頼りがいある立派な大人に見える。
結婚するって、そういうことなのか…。
頼りがいのある男になるって事が結婚するってことなんだ。
だって奥さんを全力で守るのが使命なんだから。
俺は…今の俺は…頼りがいなんてきっと…ないな。
健人よりも一つ年下で、子供っぽいとばかり思い込んでいた当麻が
あまりにも凛々しくたくましく、自信に満ち溢れ輝いて見えた。
自分よりも明らかに格上のハリウッド女優である年上妻に対し、
何のさげすみも気負いもなく、ましてや卑屈になったり遠慮がちにもならずに
当麻は堂々とした見事な夫ぶりである。
そんな親友の姿を横で眺めてた健人は、自分の頼りなさが
ひどく子供じみて見え、当麻より自分の方が大人だと思ってたのは
まるで独りよがりな勘違いだったと恥じ入った。
俺はゆき姉を…守ってやれるのかな…。
12も年下の俺を、ゆき姉は頼ってくれるのかな…。
図らずも同時期に結婚する親友同士。
思いがけない場面で、合わせ鏡のように自分の現実に遭遇した健人は
そこから透けて見えた自分の姿に一抹の不安を覚えた。
その隣で雪見は、健人がそんな心境にいるとも知らず、
ただ親友夫婦の行く末を心配そうに見守っている。
- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.434 )
- 日時: 2012/07/30 22:09
- 名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)
「津山泰三は…これを機に芸能界を引退するそうだよ…。」
小野寺が、顔を上げたみずきに向かって静かに告げた。
「うそっ!おじいちゃんが引退っ!?
死ぬまで現役が口癖のおじいちゃんなんですよ!?
どうしてそんな唐突に…。私に何にも言わないでどうして…。」
一度収まったみずきの心にまた波風が立つ。
いっそのこと、声を上げて泣き出してしまった方が正気に戻れるのかも知れない。
だが…今は三人の大事なライブ前。私だけのために時間を費やすわけにはいかない。
グッと喉の奥の苦いものを飲み込んで、みずきは小野寺の瞳をキッと見据えた。
「わかりました。引退の真意は帰ってから直接祖父に聞くとして…。
津山泰三事務所は、今や私と祖父だけが所属する事務所。
他のタレントを抱えてなかったのが不幸中の幸いです。
ですがなぜ私一人しかいないのに、吸収合併という形をとるのかがわからない。
単純に事務所を清算して、私がどこかへ移籍すれば済む話なのに…。」
「津山泰三事務所はみずきの他に…もっと大きなものを抱えているだろ?」
小野寺が椅子の背もたれから上半身を起こし、前屈みになるようにして
みずきの瞳に探りを入れた。
「えっ?私の他に、もっと大きなものって…?
あ…!猫カフェ…ですか!?不渡りって、もしかして猫カフェが?
猫カフェが不渡りを出したんですかっ!?
だとしたら私のせいだ…。父さんから私が引き継いだのに…。
私がしっかり管理しなくちゃいけなかったのに…。」
もう涙を留めておくことなど不可能だった。
亡き父からオーナーを托されたのに、自分の運営のまずさで父の命とも呼べるあの店を
潰してしまうなんて…。
父は私が継ぐと言ったから、安心してあの世に旅立ったのに…。
みずきは止めどもなく流れる涙を拭おうともせず、ただただ父に申し訳なくて
子供のように声を上げて泣いていた。
その震える肩を、当麻が無言でギュッと抱き寄せる。
そしていつまでも泣き止まない子供をあやすように、そっと頭を撫で続けていた。
「ちょっと待って下さいっ!『秘密の猫かふぇ』が無くなっちゃうんですかっ!?
嘘だ!そんなの嫌ですっ!!」
突然勢いよく立ち上がり、小野寺に食ってかかったのは雪見だった。
それを健人が慌てて止めようとする。
が、すでに雪見の背中のスイッチは、みずきの涙によってパチンとONになり、
こうなるといくら健人と言えども止められるすべは持ち合わせてはいなかった。
「常務!あのお店がどんな大切なお店か、知ってるんですか!?
私達にとって、大事な大事な場所なんです!
あのお店で癒やされてたからこそ、健人くんや当麻くんも、ハードスケジュールに耐えて
今まで頑張ってこれたんですよ!
あそこを無くすんだったら、もっと健人くんや当麻くんにお休みあげて下さいっ!
それに他のお客様たちだって、あそこが無くなったら困るに決まってる!
常務が恨まれても知りませんよ!この業界のお客様が大勢いらっしゃるんだからっ!」
「お、おいっ!俺を脅す気かっ!」
小野寺が、雪見のニコリともしない真剣な顔つきに、「ほ、ほんとかよっ?」と
半ば話を信じ込んでビビってる。
その後ろで夏美が、下を向きながらクスクスと笑いを堪え、なぜか雪見に向かって
OKサインを送った。
え?なに?OKって…。
意味はわからなかったが、雪見の怒りは自然と収まってきた。
「あの場所からすべてが始まったんです。みずきさんと出会ったのも、あのお店で…。」
雪見が過去を振り返りながら、噛み締めるように話し出した。
「私の歌を聴いて、津山さんが声を掛けて下さったんです。
あの時、もしも津山さんが私を誉めて下さらなかったら…。
きっと私、今日ここでライブなんてやってなかった。
『YUKIMI&』は生まれてこなかったんです。
それに宇都宮さんと出会わなかったら私、一生猫カメラマンのままだったと思う。
宇都宮さんが、娘であるみずきさんに托した猫カフェ…。
そんな簡単に潰させるわけにはいかない…。」
楽屋全体がシーンと静まり返るほど、雪見の思いがみんなの胸に染み込んだ。
そしてその猫カフェが、どれほど重要な役目を果たした店なのかもよく伝わった。
「だからお願いです!あのお店だけは何とか救ってあげて下さい!
私、そのためだったら何だってします!あ!今月分のギャラもいりません!
私のギャラなんかじゃ、どうにもならないとは思うけど…。
そうだっ!ライブ終って引退するまでたった5日間しかないけど、
みずきさんと当麻くんの、結婚記念写真集の撮影とかどうですか!?
それもノーギャラでいいです!その売り上げでどうにか猫カフェ救えないですかっ!?」
「ゆき姉、ちょっと落ち着いて!
あんな大きな店、俺らのギャラぐらいじゃどうにもなんないって!
もっと現実的な方法を探さないと。」
「だってぇ!」
常に理論的に物事を考える冷静な目を持った健人は、感覚的に行動を起こす雪見の
良きストッパー役でもあった。
真剣に救済への道を話し合う健人と雪見を、みずきと当麻はただ感謝の思いで眺めている。
が…小野寺だけは何故かニヤリと笑って雪見を見た。
してやったり!という顔つきの不気味なこと。
「お前…。今、何だってします!と言ったよなぁ?」
「えっ!?な、なんですか?やだ!こわっ!」
小野寺のその顔を見て、雪見はハッと我に返る。
しまったぁ!私、とんでもないこと言っちゃった?
「女に二言は無いな?じゃあお前には、猫カフェを救済するために、
もう一働きしてもらうとするか!お望み通りにな。」
「えーっ!女に二言は無いな!って、そんな言葉無いですよぉ!」
雪見の、さっきまでの威勢はどこへやら。
小野寺が何を言い出すのかと戦々恐々、健人にすがるような目を向けた。
「雪見!お前達の結婚宣言を許す代わりに…うちの事務所との契約を半年間延長だ!
その間に、猫カフェ再建に力を貸してもらう!」
「えっ!?半年延長って、そんな!待って下さいっ!
私、あと少しでフリーカメラマンに戻れると思ったから、ラストスパートで頑張ってるのにぃ!」
雪見の戸惑いと驚愕は、そっくりそのまま健人の…とはいかなかった。
大好きな人とあと半年同じ事務所にいれる!
隠しきれない喜びの表情とは、たとえそれが若手演技派俳優と言えども
隠しきれないものだった。
- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.435 )
- 日時: 2012/08/10 18:29
- 名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)
「ねぇっ!健人くんからも常務に言ってよ!
ゆき姉はアーティスト活動続ける気は更々無いって!
四月になったらフリーカメラマンに戻るんだって!
ちょっ…健人くん?なんで健人くんまでニヤけてんのよっ!まったくもーぅ!!」
そう雪見に指摘された健人は慌てて顔を立て直したが、すでにその嬉しげな顔は
皆に目撃されたあと。
どう取り繕っても周りからのツッコミに反論の余地は無かった。
「そりゃ嬉しいに決まってるよなぁーっ!
大好きなゆき姉と、あと半年も一緒に仕事出来んだから。」
「そうそう!でもねっ、いくら外でクールに決めてても、今みたいな顔したんじゃ
イケメン俳優の名が台無しだからねっ!斎藤健人くん♪」
「う、うるっさいわ!」
真っ先に容赦なく突っ込んできたのは、当麻とみずきだった。
しかもみずきのなんて明るい声!
さっきまでの涙はどこへ行ったやら、当麻と二人ではしゃいでる。
だが、よくよく見渡すと、その控え室にいるみんなが微笑んでいた。
当の雪見を除いては…。
その微笑みの意味は、当麻とみずきのツッコミが的を得て絶妙だったせいもあるが
本当は健人の笑顔と同様、あと半年間雪見が事務所に残るということが
単純に嬉しかったのだ。
そしてみずきが泣き止み笑ってるのも、健人の顔が可笑しかっただけでは勿論なく、
大好きな雪見と一緒に猫カフェを立て直す事が出来るかも知れない、という
絶望から希望へと転換された笑顔でもあった。
「お前らっ!冗談言って笑ってる場合じゃないぞ!
リハーサル時間ってもんがあんだからなっ!
それに雪見!誰がアーティストとして半年引き留めると言った?」
「えっ?違うんですか!?」
「お前には今のポジションを生かして、色々やってもらいたい事がある。
あの猫カフェを何としてでも救いたいんだろ?だったら俺に力を貸せ!
いいか!時間がないから今は黙って俺の話を聞くんだ。
反論はライブの後でゆっくり聞く!いいなっ!」
小野寺が腕時計に目をやりながら姿勢を正す。
それを見て雪見も、取りあえずはアーティスト活動ではないという事に安堵し、
話の続きを聞く体勢を整えた。
「津山泰三事務所が一等地のビル地下に所有している『秘密の猫かふぇ』だが…。
相当な金をかけて全面改装した負債並びにビルの地価上昇に伴う家賃の値上げ、
客足低下その他諸々の理由により津山事務所が維持する事が困難な状況に陥り、
手放さざるを得なくなった。」
「えっ…!?客足低下?」「静かにっ!」
思わず反応してしまった雪見は、素早く夏美から注意を受けた。
今すぐ聞き返したい事は山ほどあったが、なんせ今は小野寺が言う通り時間がない。
なぜこんな時にこんな重要な話を始めたのか、小野寺の真意を掴みかねたが
それさえも問いただす時間が無いことは明白である。
とにかく最後まで話を聞くより手立ては無かった。
「津山さんが…うちの事務所に助けを求めに来たんだ。
親友から預かった大事なものを、自分の手で潰す訳にはいかない、とな。
あの店を変らず存続出来るのなら、自分の事務所など惜しくもない、ともおっしゃった。
もはや自分にはあの店を救済するほどの力が無いと知り、引退を決意したそうだよ…。」
「おじいちゃん…。」
みずきは、薄々感じていた大御所俳優の潮時を、自ら認めてまでこの事務所に
頭を下げた祖父の心中を想い、再びの涙が滲んできた。
「俺、実は若い頃、津山さんにはえらい世話になってな。ま、色々とあって…。
だから津山さんの願いは何としてでも聞いてやりたかったし恩返しがしたかった。
久々に社長に口角泡飛ばして直訴したよ。説得するのに難儀した。
なんせリスクの大きな秘密の店を抱える事になるんだからな。
あ、言っとくが、うちの事務所が『秘密の猫かふぇ』を運営する話は、
トップシークレットだからそのつもりで。
社内でも必要最低限の人間にしか知らされていない。
だけどな、まぁ一番は俺があの店を潰したくなかったからなんだけどよ。
つい最近会費払って、また3ヶ月延長したばっかだし。
あそこが潰れたら、お前らからのストレスを癒やす場が無くなる!
ま、せっかく癒やされてても、お前らがワイワイ言いながら入ってくると
ガッカリするんだけどな。あっはっは〜!」
「えっ?ええぇ〜っ!!??」
神妙に話を聞いていた健人、雪見、当麻が、同時に素っ頓狂な大声を張り上げた。
無理もない。目の前に座ってる小野寺が『秘密の猫かふぇ』会員だなんて!
しかも店で遭遇してる時があったなんて!
「う、ウソですよね!?常務が猫カフェの会員だなんて!
てか、みずきは知ってて黙ってたのかよぉ!?」
当麻が長いまつげをぱちくりさせながら、みずきと小野寺を交互に見た。
「だって私はオーナーよ!いくら当麻たちが相手だって、お店の会則を
破るわけないじゃないのっ!」
みずきが隣りに座る当麻の太ももを、バシッ!と叩く。
「なんで俺も嘘をつかにゃならんのだ!ほら、見てみ!ゴールド会員カード!
それに俺が会員じゃダメだってーのかっ!?」
小野寺が、仕立ての良いスーツの内ポケットから長財布を取り出し、
素早くその中から一枚のカードを抜いて、テーブルの真ん中にペシッ!と置いた。
「常務!ご、ゴールド会員なんですかぁ!?凄すぎっ!」
「ねぇ、なぁに?ゴールド会員って?」
大きな目を見開いてビックリしてる健人に、隣の雪見がヒソヒソと聞く。
するとそれに答えたのは健人ではなく夏美だった。
「ゴールド会員は、あなた達一般会員と違ってアルコール類も飲み放題なの。
まぁ会費もその分たくさん払ってるけどね、三ヶ月で30万。
ちなみに私もゴールド会員だけど、この急いでる時に他に何かご質問でも?」
「さ、さんじゅうまん〜!?い、いや、ありません…。」
雪見は呆気にとられて次に呆れた。
どんな会費よ、30万って!この不況の世の中に。
いくら業界人や財界人がターゲットのお店にしたって、それを払ってまで
会員になる人がいるなんて!
けど、客足低下の原因はそんな事も関係してるんじゃないのかな。
今まで気にも留めなかったけど、案外いろんな所に改善の余地があるのかも…。
早口で大まかな説明を終えた小野寺は、最後に雪見の目を見てもう一度問いただす。
「雪見。俺たちに力を貸してくれるよな?
これはうちの事務所内でも秘密のミッションなんだ。」
即答はできなかった。
一体自分ごときに何が出来ると言うのだろう…。
アーティスト活動を辞めたら、私はただのカメラマン。
無名の猫カメラマンなのに…。
…猫カメラマン?
そうだ!私って猫カメラマンだったんだ!忘れてた。
もしかしたら私にも、力になれる事があるかも知れない…。
みずきや宇都宮さんに恩返しが出来るかも知れない!
よしっ!!
「私で良ければ喜んでっ!」
今日一番の雪見の笑顔は、秘密の仲間に力強い結束感を与えた。
さぁ気持ちを切り替えて、後は心をひとつにライブの成功を勝ち取ろう!
- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.436 )
- 日時: 2012/08/15 08:04
- 名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)
「もぅ、めっちゃ腹減って倒れそう〜!みずきぃ!俺、飯食う時間あるぅ?」
午後三時半。昼食も取らずにノンストップで続いたリハーサルをやっと終了し、
ガヤガヤと楽屋へと戻る狭い廊下。
健人と並んで歩いていた当麻は、雪見と話しながら前を歩くみずきの背中に
大袈裟にドカッと倒れかかる仕草で覆い被さり、甘えた声で後ろから顔を覗き込んだ。
「大丈夫だよ!まだ一時間半あるから。
さっきいつものお店に行って、当麻の好きなシーフードマリネとアンチョビサラダ、
大量に作ってもらって来たよ!お弁当ばっかじゃバランス悪いしね。
スタッフさんにも差し入れておいたから、あとはみんなで食べて。」
「やった!さすが俺の奥さん!気が利くぅ〜♪」
当麻が抱き付いた肩越しに、みずきのほっぺにチュッ♪とキスをする。
それをみずきはとがめる訳でもなく、いつもの事という風にニコニコ笑って受け入れた。
「お、お前らさぁ…。少しは人目とか気になんないの?
自分んちならともかく、みんなが見てんだけど…。」
健人の方が恥ずかしそうに、キョロキョロ周りをうかがいながら
当麻に小声で聞いてみる。
「え?なんで?俺ら結婚してんだよ?
やっとコソコソ生活から解放されたのに、なんでまた気ぃ使わにゃならんの。
健人だって結婚宣言したんだから、遠慮しないでベタベタすればいいじゃん!」
「んなこと、出来るかっ!!」
力一杯否定したあと、まずかったかな?と思ったのか、健人が後ろから
雪見の背中を指で突いた。
「いや、別に嫌だって言ってるわけじゃないからっ!」
「わかってるよ。私だってこんなのされたら困っちゃう!」
雪見が笑いながらみずきを見たので、健人はホッとした表情を浮かべた。
健人の愛情表現は、人前じゃいつもぶっきらぼうで素っ気ない。
でもねっ。二人きりになったら、ねっ。ちゃーんとわかってるから安心して。
雪見の楽屋には、リハーサルで留守してた間にそれはそれはたくさんの
お祝いの花が届けられていた。
ドアを開けた瞬間、むせかえるほどに華やかな香りに包まれた雪見とみずきは、
花園に迷い込んだかのような幸せに満たされる。
「すっご〜いっ!こんなにたくさんのお花!ゆき姉ってみんなに愛されて引退するんだね。
ゆき姉の歌、みんながいっぱい大好きだったんだね…。」
みずきが、所狭しと置かれた花々をぐるりと見渡して、しんみりと呟いた。
雪見も、花かごに添えられたカードを一枚一枚手に取りながら、届け主の名前と
添えられたメッセージに目を通す。
一番目を引く花は思った通り、どんべいマスターの弟さん夫婦がやってる
大好きなお花屋さんからだ。
他のどのアレンジメントよりも斬新で、花のチョイスもひと味違って
みんなに見せて歩きたくなるような素敵さだった。
たくさんのミニ向日葵がメインのアレンジメントは、一足早く楽屋に
夏の太陽を運んで来たかのよう。
『どうぞあなたの笑顔がこれからも 輝く向日葵のようでありますように 由紀恵より』
ママさんに言われた事を思い出した。
「あなたは健人くんにとって、いつも輝く向日葵のようでなくっちゃね。」
同じこと、今野さんにも言われた気がする。あれ?常務だったかな?
なんだか可笑しくってクスッと笑ったら、ジワッと涙が滲んだ。
こっちは真由子と香織からだ!随分と奮発したなぁ!
まさか真由子が会社経費で落としたとか?
『ほろよいトーク くれぐれも飲み過ぎて醜態晒さぬよう祈ってる 真由子&香織』
どんなメッセージよっ!失礼な。
でも真由子らしいや。笑わせてくれようとしたんでしょ?ありがとう。
そう思うとやっぱり涙が滲む。
うわ!あのお笑い二人組からもある!
『俺たち諦めてまへんで!NYから帰国したら再びアタ〜ック!!』
えぇ〜っ!まだ諦めてないって…。半年延長してこの業界にいるとか知れたら
速攻来そう。どうしよ…。
涙が思いっきり引っ込んだ。
あっ!翔平くんからも来てる!
『ゆき姉お疲れ!最後のライヴ行きたかったよぉぉ!香港より 苅谷翔平』
今頃翔平くんも映画の撮影、頑張ってるかな。
もしライヴに来てたら緊張してる私達のこと、一生懸命笑わせてくれたんだろうな…。
またしても鼻の奥がツンとした。
他にもいっぱいいっぱいメッセージや差し入れが届いてる。
「ありがたいな。どうやったらみんなに恩返しが出来るのかな…。」
雪見がぽつりと呟いた。
「最後の一曲までゆき姉らしく歌うこと…。それをみんなが望んでるんじゃないのかな。
きっとそうして欲しくて、お花で和ませてくれてるんだと思うけど。」
みずきが振り向いて、にっこり微笑んだ。
「そうだよね…。うん、そうする。ありがとね、みずき。
一緒にいてくれるから心強いよ。私、最後まで頑張る!」
雪見にもやっと笑顔が広がった。それはパッと咲き誇る向日葵のような明るさだった。
トントン♪ 「入るよー!」
ノックと同時になだれ込んで来たのは、ヘアメイクの進藤とスタイリストの牧田であった。
「雪見ちゃん、お疲れっ!さーて、大至急『YUKIMI&』を仕上げなくちゃね!そこ座って!
あ、みずきちゃん、ありがとね!私の代わりに囲み取材前のメイクしてくれたんだって?」
「あー!出過ぎた真似してゴメンナサイっ!」
みずきが首をすくめて鏡前の進藤に謝ると、進藤は忙しく手を動かしつつ
笑いながらみずきを見た。
「なんで謝るの?みんな誉めてたよ!いつもと同じメイクだったって。
メイキャップアーティストの資格、向こうで取ったんだってねっ!
凄いなぁ!忙しいのに。みずきちゃんはどうして資格取ろうと思ったの?」
「私ですか?私…そのうち女優を辞めて、当麻のサポートに入ろうと思って。
当麻の活躍を一番近くで見ていたいから。
もっと腕を磨いて、行く行くは専属メイクになれたらいいなって。」
「うそっ!辞めちゃうのっ!?」
雪見と進藤が大声を上げ、お互いに「シィーッ!」と戒める。
「あ、まだ自分で思ってるだけだから、ここだけの話ねっ。」
照れ笑いを浮かべたみずきの顔は、実に少女のようだった。
自分の地位も名誉も惜しくはない。大好きな人の力になって共に同じ夢を見る。
それ以上に素敵な事ってこの世にある?そう少女の瞳は語っていた。
私は…私は健人くんと、これからどんな道を歩いて行くのだろう…。
衣装に着替えヘアメイクも完了。準備の整った健人と当麻も雪見の楽屋に集合。
四人でおしゃべりしながらドキドキな気を紛らわせ、その時を待つ。
トントン♪「そろそろ移動をお願いします!」とスタッフが呼びに来た。
「よしっ!行こ、ゆき姉!」 「うんっ!」
健人が雪見の手をサッと取り、長い地下通路をずんずんと力強く前を歩く。
その背中はたくましく自信に満ち溢れ、キラキラと輝くオーラが見えるようだった。
大丈夫。私もこの背中だけを追ってればいいだけ。
迷うことなど何もない!
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