コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- アイドルな彼氏に猫パンチ@
- 日時: 2011/02/07 15:34
- 名前: め〜にゃん (ID: AO7OXeJ5)
今どき 年下の彼氏なんて
珍しくもなんともないだろう。
なんせ世の中、右も左も
草食男子で溢れかえってる このご時世。
女の方がグイグイ腕を引っ張って
「ほら、私についておいで!」ぐらいの勢いがなくちゃ
彼氏のひとりも できやしない。
私も34のこの年まで
恋の一つや二つ、三つや四つはしてきたつもりだが
いつも年上男に惚れていた。
同い年や年下男なんて、コドモみたいで対象外。
なのに なのに。
浅香雪見 34才。
職業 フリーカメラマン。
生まれて初めて 年下の男と付き合う。
それも 何を血迷ったか、一回りも年下の男。
それだけでも十分に、私的には恥ずかしくて
デートもコソコソしたいのだが
それとは別に コソコソしなければならない理由がある。
彼氏、斎藤健人 22才。
職業 どういうわけか、今をときめくアイドル俳優!
なーんで、こんなめんどくさい恋愛 しちゃったんだろ?
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- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.472 )
- 日時: 2013/05/20 15:08
- 名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)
「ゆき姉、まだぁ〜!?服なんて、着てりゃなんだっていいからっ!
せっかく早起きしたのに、これじゃ美術館寄ってく時間なくなるよー!」
玄関先で待ちぼうけの健人が、しびれを切らして叫んでる。
只今午前10時。
演劇学校の入校が午後1時からなので、その前に近くの美術館を見て、
どこかで早めのランチしてから学校へ行こう!と話が盛り上がっていた。
なのに雪見ときたら、さっきから小一時間ほども洋服を取っ替え引っ替え。
今だ寝室から出てこない。…と、やっとお出ましのようだ。
「ごめんごめんっ!どう?やっぱこれにしたんだけど…。
あ…なんか靴履いたら今イチかな…。あっちの方が良かったか…。」
玄関ホールの大きな鏡の前で、クルクル回りながらまたしても悩み始めた雪見。
それを見て、寝室に逆戻りされちゃかなわん!と危機感を抱いた健人が
後ろから雪見をギュッと抱き締め、一芝居打って事の収束をはかろうとした。
「ねぇ…。ゆき姉は何を着てても綺麗だよ。
これ以上綺麗になったら俺、ここでゆき姉を襲っちゃうよ?」
さすがにこの急いでる時にそんな気は起きないが、健人は雪見の首筋にキスをする。
陽の光が差し込む鏡に、大きく映し出された二人の姿。
真昼だというのにエロティックな映画のワンシーンのようで、背筋がゾクッと弓なりになる。
が、我に返った雪見が慌てて健人に待ったをかけた。
「ちょ、ちょっとストーップ!わかった!もう行こ!
うん、これでいいや。少しはちゃんとしたカメラマンに見えるよね?」
「うん、見える見えるっ!」
健人は作戦成功!と、サッと雪見の首筋から唇を離す。
「てゆーかさぁ。ちゃんとしたカメラマンて何?
学校に撮影の許可もらってんだから、カメラマンに見えるとか見えないとか関係なくね?」
ヘンなこと言うなぁと笑って聞いた。
だが…。雪見から返ってきた返答は、ここまでの自分のセリフを後悔させた。
「だって私…。カメラマンだけど健人くんの奥さん…なんだよ?
健人くんに不釣り合いだとか…思われたくない…。」
「えっ…?」
鏡の中の雪見が急に顔を曇らせ、視線を落として言ったのだ。
その瞳に、見る見る間に涙が浮かぶのが見えた。
「ちょっ!ゆき姉っ!?なんで泣くのさっ!」
慌てて雪見の肩に手を掛け、自分の方を振り向かせる。
が、その振動で、決壊ギリギリだった涙はあっけなく頬を伝って流れ落ちた。
「だって…。1時間も悩んだのにお洋服決まらなくって…。
健人くんの奥さんでカメラマンって…どんな格好したらいいのか…
ぜんぜんわかんなくなっちゃった…。」
「そんなこと…悩んでたの?ばっかだなぁ…。」
ポロポロ涙しながら話す少女のような雪見に、胸がキュンと熱くなり
思わず強く抱き締めた。
「ゆき姉はゆき姉のまんまでいいんだって!俺もう百万回は言ってるよね?
服だって何だって、自分の好きなようにしていいんだよ。
つーか、いきなり変えられたら俺がヤダ!
今のゆき姉が好きなのに、違う人みたいになったら俺が居心地悪い!」
「ほんとに…?ほんとに私、何も変わらなくて大丈夫…?
だってあの演劇学校、ハリウッドデビューするチャンスはたくさん与えてくれるけど
役者や周りの環境も精査するって聞いてるから…。」
「だから?だからなに。そのために品行方正な奥さんになろうとしてんの?
言っとくけど、俺はチャンスが多いからあの学校をチョイスしたわけじゃないよ。
あそこに行けば、世界中の演劇論を学べると思ったから選んだだけ。
そりゃいつかは役者として世界を見てみたいって気はあるけど、芝居をすんのは俺だよ?
周りの環境とかってなに関係あんだろ?
そんなもんで決められちゃ、たまったもんじゃない!
そこだけが唯一ムカツクとこなんだが、どーしてもあの学校で勉強したくてさ。
ごめんねっ!そのお陰でゆき姉に嫌な思いさせちゃった。
てゆーわけで、俺に気を使うこと一切ありません!
今まで通り、ガンガン突っ走っちゃって下さいっ!」
健人はそう言ってニッコリと笑って見せた。
やっと安心したように笑顔になった雪見。
成熟した色気を漂わす格好いい大人だと思った次の瞬間、もう純真無垢な少女だったりする。
この人がその時々で見せる全く違った顔は、いつも健人の意表をつきドキッとさせる。
だが今の言葉を反すうすると、雪見の心の底辺が今だ何も変わってないことに愕然とした。
自分が斉藤健人の妻として、どんな時も過不足無くふさわしく見えないといけない。
健人の評判を、自分が落とすことがあっては決してならない。
雪見が自らに課してる間違った重圧から、どうしたら俺は解放してやることが出来るだろ…。
キスして抱き締めて頭を撫でながら、ぼんやりと考える。と…。
「ごめん…。」
雪見が腕の中で小さく呟いた。その声が胸にチクッと針を刺す。
なんで謝んだよ…。何が「ごめん」なんだよっ…。
「なに…が?」
聞き返すのには勇気がいった。もしも最悪な事を言い出したら…。
「あの…ね…。お腹すいたから…先にご飯食べに行きたい。」
「…え?ゴハン…って……ははははっ!お腹空いたのぉ?
そっか!朝飯作ったのに、ゆき姉カフェオレしか飲まなかったもんね!そーなんだぁ!」
健人はお腹を抱えて大笑いした。
笑いながら安堵し、結婚を断られることを一瞬でも想像した自分を更に笑った。
「だってぇ!緊張して喉を通らなかったんだもん…。
お腹すいた…。美味しいランチに行きたい!」
「よっしゃあ!じゃあ今日の芸術鑑賞はやーめたっ!
行こうと思えばいつでも行けるもんね。腹が減っては戦は出来ぬ!
カメラマン浅香雪見が戦闘開始するには、まずはエネルギーを満タンにしないとねっ。」
「うんっ!コンシェルジュさんにお薦めのお店、聞いちゃお♪」
雪見の頬にパッと赤みが差す。
嬉々としてエレベーターに乗り込む雪見の背中を見つめながら、だけど健人は苦笑いした。
俺もまだ…振られる恐怖と戦ってんだな…。知らなかった…。
本物の結婚式まで、あと11日…。
二人の心の転がる石は、それまでにどこか安定した窪みを見つけられるだろうか…。
- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.473 )
- 日時: 2013/05/22 13:34
- 名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)
「あー美味しかったぁ!お腹いっぱいで幸せ〜♪
コンシェルジュさんに良いお店教えてもらったね!帰ったらお礼言わなくちゃ。」
「コンシェルジュさんじゃなくて、マーティンさんっ!(笑)」
相当早いランチを終え、雪見と健人は上機嫌でお洒落な店を後にした。
東京にいる時はどこへ行くにも車だったが、ここはニューヨーク。
マネージャーのお迎えもなければ雪見の車もない。
しっかりと手を繋ぎ、てくてくと歩いて最寄りの地下鉄駅へ。
勿論東京じゃ二人で地下鉄に乗ったためしなど一度もない。
いつも敵から逃れるようにそそくさと車に乗り込み、黒い窓ガラスの向こうを
自由に行き交う人々に、羨ましげな視線を送ってた。
それが今はどうだろう。
眩しい太陽を浴びながら二人で街を闊歩し、ふざけながら地下鉄の階段を軽やかに下りる。
ホームで目にするカップルのマネをして、ふざけて雪見にキスを迫る健人の
はしゃいだ笑顔ときたら。
すべての束縛から解放されると、人ってこんなにも笑顔が倍増するんだ…。
良かったねっ!健人くん。
幸せそうに笑ってる健人を見てると、なんだかウルウルしてきた。
この人の幸せが私の幸せなんだ…。
確かにそう思える自分がいた。
地下鉄に乗り込んでも涙が出そうになる。
誰からの視線も注がれない。隠し撮りされる恐怖もない。
握手を求められたり、いきなり写メされたり、キャーキャー騒がれて
周りの迷惑を気にかけることもない。
人気者になった代償として失った自由。
もう元には戻れないと諦めてた人間らしい普通の暮らしが、まだここにはあった。
今、健人の心はどんなだろう…。
それを思うだけで胸がいっぱいになり、必死で涙を堪えてた。
が、そんな様子に気付いた健人が、笑いながら頭にポンと手を置き、
小首を傾げて顔を覗き込む。
「まーた泣こうとしてるし。今度はなに?
デザートもう一品食べたかったのにぃー!とか?
あ!なんで健人くんてそんなにカッコイイのよぉ〜!か?
いや、今のは取り消す!自分で言ってみたら冗談でも恥ずかった(笑)」
「ばぁーか!」
泣きそうな私を笑わそうとして、普段口にしないセリフもおちゃらけて言う。
優しすぎて余計涙が出るじゃない…。だから大好き。
地下鉄を降り、また手を繋いで階段を上ると、地上の風が優しく二人の頬をくすぐった。
地下鉄駅から真っ直ぐ十分ほど歩くと、正面に重厚な建物が見えてくる。
ここが今日から健人が学ぶ、ハリウッドアクターズアカデミーだ。
「さて…と。ちょっと早く着きすぎたね。どしよっか?どっかで時間潰す?」
健人はさして緊張してる様子もなく雪見を見た。
「いや、もう中に入れるなら先に少し写真を撮らせてもらいたい。
私が交渉してきてもいい?」
「うん。俺は構わないよ。んじゃ、乗り込みますか!」
由緒漂う風格を身にまとった建物を前にして、雪見の瞳はもう仕事モード全開だ。
人格が変わるとはまさにこのことで、先程までの泣き虫雪見はどこへやら。
戦隊ヒーローよろしく、戦いの前にはすでに変身を遂げていた。
「聞いた?マーティンさんて若い頃、俳優やってたんだって!
やっぱそんな感じしたよなー。絶対格好良かったよね。」
「健人くんはみんなに、どう見られるのかなぁ?
きっと、可愛い男の子が入ってきたぞ!って注目の的だろーな。」
「やっべ!そんなこと言うから緊張してきたー!」
「うそだーっ!綺麗な女優さんでもいないかなー?ってワクワクしてるくせに(笑)」
「あれ?またバレた(笑)」
二人は学校の扉に手を掛ける寸前まで戯言を言いながらも、お互いの中に
静かな熱い炎を燃やし始めていた。
今から二ヶ月間の真剣勝負が、いよいよ始まる!
「こんにちは!私、カメラマンの浅香雪見と言います。彼は斉藤健人。
彼が今日からここにお世話になるんだけど…。」
学校の受付でここまで話して、はたと気付いた。
なんか私って、過保護な母親みたいじゃない?これじゃイカン!
「健人くん!あとは健人くんが話してみて。もし通じないとこがあったら私が訳するから。
結構ギリギリまで勉強してたよね?英会話。習うより慣れろ!だよ。
さぁ、Give it a shot!(挑戦してみて!)」
「…わかった。」
健人は、雪見が想像したよりもずっと流暢な英語を話した。
この留学が決まる前から、時間があれば英会話のレッスンを受けたり
少しの空き時間にも聞き流す英会話教材で学んだり。
努力家の彼は着実にその日に備えてた。
『今日』…ではなく、世界に飛び出す『いつかその日』に向かって…。
「OK!じゃご案内します。どうぞ!
もう自主レッスンに集まってる生徒もいるから紹介するわね。」
受付のお姉さんが席をにこやかに立ち上がり、長い廊下を先に歩き出す。
その後ろで健人が子供のように小躍りしてた。
「やった!俺の英語、全部通じたってこと?」
「何も問題なかったわよ!ちゃんと私の仕事の交渉もしてくれたし、発音も綺麗だった。
完璧です!良く出来ました♪」
「ひゃっほーい♪ゆき姉に褒められた〜♪」
突然ぴょーんと跳びはね大声を出した健人に、前を歩く受付嬢がビックリ顔で振り向く。
『しまった!』と思った健人がにっこり笑って「Sorry!」
それがまた可愛くて可愛くて、一気に心が和みリラックスした。
さーて!仕事が楽しみになったぞ。
あそこまで健人くんが話せるなら、私は撮すことに集中できるもんね。
今度の写真集…健人くんの世界進出の後押しにしたい…。
よしっ!いっちょ本気モード全開で行きますかぁ!!
- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.474 )
- 日時: 2013/05/27 18:00
- 名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)
「みんなっ!ちょっと聞いてくれる?
今日から二ヶ月間レッスンに加わる新しい生徒さんを紹介するわ♪
ケントよ!私もネットで見て驚いたんだけど、日本で凄く人気のある俳優さんなの!
ねぇ、とってもキュートだと思わない?」
「いやいやいや、そんなことないです!」
早くもブロンドの受付嬢に気に入られた様子の健人は、照れて思わず
日本語で反応してしまった。
だが雪見は、健人の耳がきちんとネイティブな会話を聞き取り理解出来てると一安心。
健人を満面の笑みで「キュートだってぇ!良かったねー♪」と冷やかし
「さぁ頑張って自己紹介!」と小声でエールを贈った。
ゆき姉の笑顔見ると、なんか落ち着く…。
英会話…あんま自信無かったけど大丈夫な気がしてきた。
ゆき姉の事もみんなに受け入れてもらえるよう、ちゃんと紹介しなきゃな…。よーしっ!
健人のスイッチが俳優モードに切り替わる。
凛とした顔で前を向き、セリフのように滑らかに英語を操りだした。
パーソナルデータや留学動機、ダンスが好きなことやルービックキューブが得意なこと等々。
日本での俳優業に関してはあまり触れず、ただの生徒として皆に接して欲しかった。
身振り手振りを交えて一生懸命自分を表すさまを、皆が『Wow♪』という顔をして
にこやかに見守ってる。
雪見はその反応を目で確かめ『いいぞいいぞー!』と小さくガッツポーズした。
自己紹介の後には、隣の雪見を紹介した。
なぜかイタズラな目をして話し始めたのが気になるが…。
「彼女は日本の優秀なカメラマン、ユキミと言います。
あ、ついこの前までシンガーでもあったんですよ!彼女もキュートでしょ?
歌もめっちゃ上手いです!聞きたいって言ったら披露してくれますよ、きっと!」
「ちょ、ちょっと健人くんっ!なに言ってんのよ!余計な情報いらないってば!
こんなとこで私が歌えるわけないでしょっ!」
平和な顔して突っ立ってた雪見は、いきなりの健人のフリに大慌て!
そのイタズラ心を収めようと全力で否定したが、時すでに遅し…。
そこに居合わせたノリのいい8人ほどが間髪入れず拍手して、歌の披露を要求した。
ちょうど後から入ってきた生徒6人と先生らしき人まで「何事っ?」と
周りに事情を聞き、なんと拍手に賛同。
教室中が日本からやって来た小柄な二人組に、大いに興味を示してた。
困ったのはもちろん雪見である。
健人も、ほんのおふざけのつもりが収拾つかないほどの事態になって
さぞかし焦ってるであろう…と雪見は思い込んで健人に目をやる。
が…彼はなぜか不敵な笑みを浮かべて腕組みし、教室の盛り上がりを冷静に見渡してた。
『なんで?どういうこと?』
時計を見ると、あと少しで午後のレッスンが始まる時間。
この事態は雪見が歌わない限り収まりそうもない。
仕方ない、と雪見は覚悟を決めて一度だけ深呼吸。
騒がしさも気にせず目を閉じてスッと歌い出した。
それは雪見の十八番、「涙そうそう」
欧米にはないメロディーラインを「聖母マリアの歌声」と呼ばれた声に乗せて
教室の隅々を一気に満たす。
するとどうだろう。あれほどまでに騒がしかった人達が水を打ったように静まり返り
みんなが息を飲んで聞き入ってるのがわかった。
その反応に安堵した雪見は、久々に大声で歌うことの心地良さと幸福感を思い出し
ワンフレーズどころかフルバージョンを歌いきってしまった。
「ふぅぅぅ…。」
いつもと同じく息を吐ききって我に返る。
と、一瞬の間のあと割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こり、口々に賞賛の声を持ち寄って
雪見と健人を取り囲んだ。
そこで健人はおもむろに雪見紹介の続きをスピーチし始める。
「彼女は、僕の写真集撮影のために同行してもらいました。
レッスン風景なんかを、極力皆さんに迷惑が掛からないよう撮影するので
どうかよろしくお願いします。
あ、彼女の名前は覚えといて下さいねっ!
きっといつか、世界でも名の知れたフォトグラファーになりますから。」
「OK♪一生忘れないよ。日本の歌姫、ユキミだねっ!」
「違う違う!私はフォトグラファーよ!それに世界でなんか活躍しないし、歌は忘れて!」
「あんな歌を聴かせられて忘れろなんて、どうかしてるぜ!
脳ミソでもかち割らない限り、そりゃ無理な注文だ(笑)
でも俺たちは二人を歓迎するよ♪
俺はJames!こっちはJohn。それとLindaにMaryに…あーめんどくせぇ!
あとは自分たちで名乗れっ!」
教室中が笑いに包まれる。
二人を取り囲んだ年齢様々な生徒達が、次々と健人と雪見に手を差し出し
笑顔で「よろしくねっ!」と名前を名乗った。
「ハーイ!自己紹介はもう済んだわね?じゃあレッスンを始めるわよ!
ユキミ!みんなのこと、格好良く撮してあげてねっ♪
どこでどう撮してもらっても構わないから、自由にやってちょうだい。じゃ頑張って!」
「あ…いいんですかっ!?ありがとうございますっ!」
講師が雪見の健闘を祈るように、ウインクしてから授業が始まった。
どうやら健人の作戦は成功したようである。
「レッスン初日お疲れ様っ!カンパーイ!うーん、美味し〜い♪
今日のワインは格別な味がする!ね、これ食べてみて!
マーケットで変わった野菜見つけたからお肉とグリルしてみたんだけど
ワインとめっちゃ合うと思わない?こっちも自信作!
アーンてして!食べさせてあげる♪」
今夜は風が少し強いのでバルコニーでの夕飯はあきらめ、大きなソファー前にある
ローテーブルに料理を並べ、今日一日の労をねぎらった。
…にしても、雪見がさっきからテンション高くはしゃいでる。
「いいって、いいって!もう自分で食べるからっ!(笑)
ねぇ、そんなに今日は楽しかった?いい写真は撮れたの?」
健人が料理を頬張り赤ワインをゴクリと飲んで、隣に嬉しそうに座る雪見に聞いた。
「うん!めっちゃ楽しく仕事出来たよ!初日から良いショットがいっぱい撮れた!
健人くんは楽しかった?楽しかったでしょ?だっていつもの百倍輝いて見えたもん!」
「百倍…って(笑)俺いつもどんだけ輝いてないわけ?」
「違うよ!いつだって輝いてるけど今日は眩しくて目が開けられないくらいだったのっ!
すっごく楽しそうで笑顔がキラキラしてて、あんなに生き生きした健人くん、
今まで写真に撮ったことがない。本当に良かったね!留学を決めて…。
健人くんが幸せそうに笑ってるの見て、何回も泣きそうになったよ…。
やだ…。思い出したら今でも泣けるかも…。」
雪見が感極まったように涙ぐんでる。
その肩を、健人が笑いながらそっと抱き寄せた。
「俺が幸せそうに笑ってたとしたら、それはゆき姉のお陰だよ。
ずーっとね、『大丈夫だよ。心配しないで。』って声が聞こえてた気がする。
もし解らない言い回しが出てきても、ゆき姉に聞けばいいや!って安心してられた。
だから不安が何一つなくて、楽しくて仕方なかった。
ありがとね。ここまで付いてきてくれて…。」
「…えっ?」
「ほんとは病院に付いててあげたかったよね…。おばさんが大変な状態なのに…。」
「あ…!」
「今野さんに昨日空港で聞いたんだ。今まで知らなくてごめん…。
だから…。だから結婚式済んだら…日本に戻っていいよ。」
それはあまりにも悲しく微笑んだ、健人の精一杯の優しさだった…。
- グッチ バッグ メンズ ( No.475 )
- 日時: 2013/05/30 07:26
- 名前: グッチ バッグ メンズ (ID: UwVt.KGx)
- 参照: http://www.fjjyyw.org/guccibag.html
亀岡
- エルメス 財布 ( No.476 )
- 日時: 2013/05/30 12:35
- 名前: エルメス 財布 (ID: UwVt.KGx)
- 参照: http://www.qnkfw.com/hermes.html
漢字
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