コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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アイドルな彼氏に猫パンチ@
日時: 2011/02/07 15:34
名前: め〜にゃん (ID: AO7OXeJ5)

今どき 年下の彼氏なんて
珍しくもなんともないだろう。

なんせ世の中、右も左も
草食男子で溢れかえってる このご時世。

女の方がグイグイ腕を引っ張って
「ほら、私についておいで!」ぐらいの勢いがなくちゃ
彼氏のひとりも できやしない。


私も34のこの年まで
恋の一つや二つ、三つや四つはしてきたつもりだが
いつも年上男に惚れていた。

同い年や年下男なんて、コドモみたいで対象外。

なのに なのに。


浅香雪見 34才。
職業 フリーカメラマン。
生まれて初めて 年下の男と付き合う。
それも 何を血迷ったか、一回りも年下の男。

それだけでも十分に、私的には恥ずかしくて
デートもコソコソしたいのだが
それとは別に コソコソしなければならない理由がある。


彼氏、斎藤健人 22才。
職業 どういうわけか、今をときめくアイドル俳優!

なーんで、こんなめんどくさい恋愛 しちゃったんだろ?


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Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.397 )
日時: 2012/03/05 22:32
名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)

「ごめんね、健人くん。私やっぱ、バカなことしちゃったのかなぁ…。
今野さんに叱られちゃった。凄いチャンスを自分で捨てた、って…。
でもねっ…。」

ホテルに戻ったのは、すでに午前四時を回った頃。
打ち上げの後半はほとんどカラオケ大会状態で、酔ったお笑いコンビに雪見は、
酒を飲む暇も与えられぬほど散々歌わされた。
コンビは雪見の歌の合間に、ちょいちょいプロのつっこみを挟んでくる。
それがさすがに面白すぎて、参加者全員お腹を抱えて大笑い。
二人のお陰で、今までで一番楽しい打ち上げとなった。

今日一日でライブを三公演したようなもんだから、雪見はフラフラのクタクタで
ベッドへと倒れ込む。
だがどうしても寝る前に健人と話をしたくて、寝転がりながら電話をかけた。


「わかってるよ。ゆき姉のことは俺が一番よくわかってる。
俺ね…ここんとこ、なんからしくないなぁって思ってた。
ニューヨーク行くまでに売れなきゃ売れなきゃって、焦ってるゆき姉が。
だってさ、ゆき姉と結婚すんのは俺なんだから、俺が良ければそれでいいじゃん!」

「そうなんだけど…ね。別に私が売れたいわけじゃないんだけど、
なんだろ…健人くんに対する評価とか評判を下げちゃうのがヤダな、って…。」

「だーかーらぁ!俺に気ぃ使いすぎっ!しかも何?評価とか評判って。
俺、そんな事ばっか考えてる打算的な男に見える?」

「ゴメン…。もう言わない。
はぁぁ…。成るようにしか成らないか…。よしっ、開き直ろう!」

「そうそう!ゆき姉の得意なやつ。開き直り攻撃!
で、ついでに開き直って、そっちの部屋に行ってもいい?」

「だーめっ!こんな大阪のど真ん中のホテル、どこで誰に見られてるか
わかんないでしょっ!
今野さんにも言われたじゃん!今が一番大事な時だ!って。
さ、もう寝るよ!あー、あと三時間しか寝れな〜い!ちゃんと起きれるかなぁ?
健人くんも、すぐ寝てよねっ!」

「ゆき姉が隣りにいないと眠れないっ!」

「子供じゃないんだから、三時間ぐらい一人で我慢して寝なさいっ!
じゃ、おやすみっ!」

本当は、雪見だって健人の隣で眠りたかった。
だが今野の言う通り、ここで写真でも撮られるわけには絶対いかない。
必死に理性を保ち、甘える健人をあえて冷たく突き放して、ケータイ片手に雪見は
着替えもせずに気を失ったように眠りについた。



そして寝不足のまま大阪から戻った、その日の午後。
雪見は夕方からの撮影の前に母の見舞いへ行くため、行きつけの花屋へと立ち寄った。

「あら、雪見ちゃん!いらっしゃい!久しぶりね。元気にしてた?」

『どんべい』マスターの弟夫婦がやってる、小さくてお洒落な花屋
『Little Garden』は、雪見の癒やしの空間でもある。
この店のママは、ママと言うよりも雪見と年の離れた姉のような人だった。
今日も変わらぬ笑顔で迎えてくれてホッとする。

「ねぇ時間はある?ちょうど今、一息入れようと思ってたとこなの。
今朝焼いたケーキ、新作なんだけど味見してくれないかな。そこ座ってて!」

「ありがと!」

窓際に設けられた小さなカフェコーナー。
椅子に腰掛けて、小雨降る窓の外をぼんやり眺めていると、
テーブルにカフェオレと若草色のケーキが、コトンと置かれた。

「なになに、このケーキ!すっごい綺麗な色!春〜って感じ!」
大興奮の雪見にママは、「食べてみて!」とニコッと一言。

それは有機栽培の小松菜で作ったシフォンケーキだった。
今、巷では野菜素材のケーキがちょっとしたブームである。
それをいち早く試してみたそうだ。
春に芽吹く若草を思わせる緑の上には、うっすらと粉砂糖がふるってあり、
ケーキの横に生クリームも添えてある。
一口食べると思った通り、優しい優しい味がした。

「美味しい…。」
そう口にした途端、雪見の瞳からは思いもしない涙がぽろりと落ちた。

「そう?良かった。」
一瞬、ハッとした顔を見せたママだったが、それだけ言うとあとは何も聞かずに
ただ柔らかな眼差しでコーヒーを飲みながら、雪見のことを見守った。

「ご馳走さま。本当に美味しかった!細胞が生き返った感じ。」
雪見が小さく笑って見せる。

「で、今日のお花は?どんなの作ればいいの?」
涙の訳も聞かずにママが立ち上がり、たくさんの花の前で雪見の注文を待っている。

「母さんに…。うちの母さんのお見舞いに持ってくお花が欲しいの。」
「お母さん?入院なさってるの?」
「そう。乳ガンの再発で…。昨日から入院して抗癌剤治療してる。」
「そうだったの…。」
涙の理由に合点がいった。でも、それだけじゃない気もしてる。

「抗癌剤治療中なら、匂いのきついお花はダメね。
任せといて!どんなお花がいいかは、私がよく知ってる。」

「えっ?」

「だって私も、乳ガン患者だから。」
そう言ってママは、雪見が入って来た時と同じ笑顔でニコッと微笑んだ。

「うそ…。ママが?ママも乳ガンなの?いつから?手術はしたの?」
矢継ぎ早に雪見が質問する。
自分の母以外で、初めて身近で出会った乳ガン患者だった。

「うーん、今年で六年目になるかな?右胸は全部取っちゃったよ。
あ、でもぜんぜん判らないでしょ?
私、元々ガリ子さんだから、胸取っても誰も気が付かなかったもの!」
そう言って可笑しそうに笑ってる。

ママはプロの手際よさで、話しながらも次々と花をチョイス。
そして病院のベッドサイドに置くのに、丁度良い大きさのバスケットを選び
花にパチパチとハサミを入れて、瞬く間にお洒落で素敵なアレンジメントを完成させた。

「気分が沈んでる時は、これぐらい明るい花が丁度良いと思う。
もちろん抗癌剤の最中は匂いに敏感になるから、ほとんど香りの無い
お花を選んである。大丈夫だと思うよ。」

「ありがとう!ぜーったい母さん、喜んでくれる!お花が大好きな人なの。
けど一度もこんなお洒落なアレンジメント、プレゼントした事なかったな…。」
雪見は母とのこれまでを振り返り、あまりにもそっけなく接して来たことを後悔してた。


「ねぇ!今日お仕事何時に終るの?人気者になっちゃったから忙しい?」

「え?今日は夕方からグラビア撮影が一つだけだから…。
多分、八時頃には終ると思うけど。」

「おっ!うちの閉店時間とピッタリ!今日ね、ダンナが出張でいないんだぁ!
二人で女子会しない?女子会!」

「女子会!?」

ママがお茶目な顔して、ぺろっと舌を出す。
「47歳だって女子だもんねー!」と笑いながら…。


夜を楽しみにして、雪見は母の待つ病院へと車を発進させた。













Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.398 )
日時: 2012/03/06 16:07
名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)

「母…さん?どう?気分は。」

ナースステーションで教えてもらった四人部屋へと行ってみる。
母のベッドらしい周りには、白いカーテンがぐるりと引いてあり中が見えない。
具合が悪くて寝てるのだろうか?と、雪見は恐る恐るカーテンの中に首を突っ込んだ。

「あら、雪見!お帰りっ!どうだった?コンサートは。」
母はベッドに横たわったまま、イヤホンをつけてラジオを聴いてるようだった。

「うん、頑張ってきたよ!二回ともお陰様で満員だった。
あ、これお見舞い!素敵なお花でしょ?
私の大好きなお花屋さんで作ってもらったの。ここ置くねっ!」
そう言いながら雪見は、ベッドサイドにある木目調のデスクの上に
そっとバスケットを置いた。

この病院は、母が十年前に乳ガンを患ってからずっとお世話になってる乳腺専門病院だ。
こじんまりとした個人病院だが、四人部屋と言っても一人ずつのスペースが広く、
ベッドからクローゼットまで、すべてが木目調の家具で統一されており、
ちょっとお洒落な自分の部屋的空間なのである。

「変わらないねぇ!この病院。前もこの部屋だっけ?」

「いや、隣りの部屋だったと思う。病棟の婦長さんも変わってなかったよ!
あ、そこに椅子あるから出して座りなさい。缶コーヒーでも飲む?」

「いや、今お花屋さんで飲んで来たからいらない。
それより、久々の抗癌剤はどうなの?具合悪くない?」

「ぜーんぜん!前も一回目は大丈夫だったじゃない!
まぁ三回目四回目あたりから徐々にはくると思うけど、先生の話じゃ、
十年前よりは格段にいい薬が出てて、吐き気もかなり押さえられるそうよ。
なんか別に、入院までしなくても良かった感じ。」

「だめだめっ!今回は検査がいっぱいあるんだから、大人しくしてなさいっ!」


その時だった。カーテンの向こう側から静かに声がかかる。
「浅香さーん!血圧測りたいんですけど、入っていいですかぁ?」
「どうぞー!」

入って来たのは健人と同じ年頃に見える、若い看護師だった。
「あ、母がお世話になります!よろしくお願いしますねっ!」

新人看護師さんだぁ!と勝手に思い込み、ニコッと笑いながら会釈する。
と次の瞬間、カーテンの中が思いもしない大騒ぎとなった!

「ええーっ!?うそーっ!?ゆき姉だぁぁ!!キャー!本物ぉ??」

その時の母の顔と言ったら!
突然カーテンの中に、ネズミでも放り込まれたかのような顔で驚いた。
と言うか、この若い看護師自体が放り込まれたネズミなのだが、
一番キャーキャー言ってるのはそのネズミだった。

まさか看護師が病室の中で、こんな大声を上げて騒ぐとは…。
呆気にとられて驚いた母と雪見であったが、いつまでも騒いでるその人を見てると、
雪見の存在がそこまで大騒ぎされる存在になってる事に、今度は新たな驚きを感じた。

「ちょっと、何事なのっ!どうしたの?田中さんっ!?」

ドヤドヤと人の気配と声がして、シャーッとカーテンが開かれる。
その「田中さん」らしき人の『しまったぁ!』という顔は、コメディドラマの
主人公ばりのオーバーアクションだった。

「何かあったんですか?どうしたんです、田中さん!」
そう言って先頭を切って入って来た小柄な中年看護師に、雪見は見覚えがあった。

「あ!婦長さん!お久しぶりです!母がまたお世話になります!」

雪見は十年ぶりに再会した婦長が、自分を覚えているかどうか定かではなかったが、
取りあえずこの窮地に立たされた「田中さん」を助けるため、いかにも懐かしそうに
ニコニコと挨拶をする。

「え?あら!浅香さんの娘さん?十年ぶりねぇ!
なんだか女優さんみたいに綺麗になって!元気だった?
あ…でもあなたにとっては、嬉しくもない再会よね。
大丈夫よ。お母さんのこと、あまり心配し過ぎないで。
あれから色んなお薬が出てきてるし、治療法も随分と変化してきてる。
詳しいお話は、近々院長先生からお母さんと一緒に聞いてね。
そうそう、田中さん!さっきは何を大声出してたのっ!?
ここは病室ですよ!患者さんがビックリして、詰め所に飛んで来たでしょ!」

やっぱり叱られてしまったか…。
まぁ、あんだけの大声を、寝てる人もいる病室で上げたのだから致し方ない。
その張本人の田中さんはと言うと…。

「だ、だって婦長!この人、誰だか知ってます?
昨日もテレビに出てたけど、今、グーグルの検索ワードランキング一位の
ゆき姉本人ですよっ!?」

「えっ!?あ、ほんとだぁ!やだ、うそみたーい!
握手してもらっていいですかぁ!?ちょっと、みんなを呼んで来なきゃ!」
そう言いながら、婦長と共にやって来た若い看護師と田中さんは、
バタバタと走ってどこかへ行ってしまった。

「な、なに?ゴーグルのなんたらかんたら、って…。」

「婦長。ゴーグルじゃなくてグーグルです。」
あとに残された「主任」と呼ばれてた人が、一度は婦長に説明しかけたが、
きっと理解出来ないだろうと判断したのだろう。
単純に「芸能人です。」とだけ説明をした。すると…。

「えっ!?浅香さんの娘さん、芸能人になったのぉ!?
どーりで女優さんみたいに綺麗になったと思った!
やだ!私もマジック持って来るから、サインもらってもいいかしら!」
なんと婦長までもが小走りに、病室を出て行ってしまったではないか!

それを見た主任は小さく苦笑いをし、「ああ見えて婦長は韓流ファンなんですよ。
結構ミーハーなんです。じゃ失礼します。」と頭を下げて出て行った。

あとに残された雪見と母が、同室の三人に「すみませんでした!
なんだかお騒がせしちゃって!」と申し訳なさそうに頭を下げて詫びを入れる。
だがその三人はかなりの高齢者で、なんの騒ぎやら、とんと理解できなかったらしい。
取りあえずはホッとする。


「あんたって…本物の芸能人になっちゃったわけ?」
母が雪見のことをマジマジと見回した。

「さぁ…。そうなの…かな?」

雪見もまだ半信半疑であった。
グーグルの検索ワードランキング一位って、一体…。


雪見も知らない世の中で、一体何が起きているというのだろう…。

Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.399 )
日時: 2012/03/08 10:05
名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)

それから母のベッド周りは、ちょっとした騒ぎになってしまった。

さっきの看護師たちが、ナースステーションから同僚を引き連れて来るわ、
話を聞きつけた同じフロアの若い患者たちも、大勢詰めかけるわ…。
もちろんその中には小柄な婦長の姿も紛れてて、集まった患者らに一声掛けた。

「みんな!いい?静かにねっ!
これ以上人が増えると、サインの価値が下がっちゃう!」

「はーいっ!」 

「ええーっ!?」
雪見と母は同時に声を上げ、顔を見合わせて大笑い!

静かにしなきゃならない理由がそれかいっ!と婦長に突っ込みたかったが、
『婦長の言う通りよ!』と言わんばかりに、みんなが一瞬にして口をつぐんだので、
そのタイミングを逃してしまった。

雪見は、ともかく早くにこの騒ぎを収めなくてはと、並んでる順番にサインを開始。
だが、サイン自体まだそんなにする機会がないので、なんとなくぎこちない。
その手元を、ベッドの上から覗き込んだ母が一言。

「価値が下がると言うより、価値が無いように見えるけど…。」

すると、騒ぎの発端となった田中が、またしても声を大にして力説する。
「浅香さん!あなたの娘さんはほんっとーに、世間で注目を浴びてる人なんですって!
その人のお母さんが私の受け持ち患者さんだなんて、信じらんなーいっ!」
田中がまわりの人達と、またキャッキャと言い出したその時だった。

「皆さん!よく聞いて下さい!」

婦長がトーンを抑えながらも、本来の婦長に戻った威厳ある声で一人一人を見渡した。
その姿に、浮かれ気分の空気が一瞬でピシッと引き締まる。

「いいですか!このことは、絶対に内密にお願いしますよ!
いえ、私達だけがサインをもらったとか、そんな事を言ってるのではありません。
もしも誰かがこの病院に、浅香さんのお母様が入院してる事を漏らした場合、
どうなると思いますか?
ここに大勢の報道関係者が集まることは目に見えてます。
そうなった場合、浅香さんは勿論のこと、他の多くの患者さんのプライバシーまでもが
侵害される恐れがあります。どういう事かは、お分かりですね?」

婦長の言葉に、みんながハッと我に返る。
このアットホームな病院の雰囲気に、誰もが忘れそうになる事実。
自分は癌患者なのだと言うことを…。

実際この病院は、色々な科が入る大きな総合病院とは違い、ほぼ九割方が
乳ガン患者という、特化された個人病院。
それゆえに女性しかいないし、同じ病気をもつ仲間意識か、とても病院とは思えぬほど
明るく賑やかに暮らしていた。病気の重大さとは裏腹に。

今だって、あちこちの病室から笑い声が聞こえるし、看護師さんも交えて
お茶してる部屋もある。
十年前、母の入院に付添った雪見は、このあまりにも病院らしからぬ雰囲気に
ビックリしたのを覚えているが、そのお陰で親子共々落ち込む事もなく、
入院生活を送ることができた。

だが今回は、雪見の立ち位置が前回とは違う事を、婦長の言葉によって気付かされる。
そうだ、病院に迷惑はかけられない。これからの行動に注意を払わなくては…。
そう思った時だった。

「私…病室に戻ります。」「私も、戻ろっかなー。」

雪見のサインも貰わずに、一人また一人と離れて行くではないか。
雪見と母の事を、厄介な人が来たもんだという無言の言葉を残して…。
先程までの空気とは明らかに一変したことを、婦長や他の看護師たちも感じ取り、
まずいことになったぞという表情でお互いを見る。

「あの…。私、もうここへは来ませんから…。
だけど母だけは、どうしてもこの病院で治療を受けさせてやりたいんです!
母のこと…よろしくお願いします!」

雪見が、残った人達にそう言いながら頭を下げる。
それから母を見ると、母も同意してコクンとうなずいた。すると…。

「ちょっと待って!浅香さんも待って下さい!
私も婦長も、決してそんなつもりだった訳じゃないんです!
お願いだから、お母さんには会いに来てあげて下さい!」
田中が雪見に向かって、悲しげな目をして訴えた。

「そうだ…。婦長!三階のホール、これから使ってもいいですか?」
「えっ?あぁ、別にかまわないけど…。何するつもり?田中さん。」

「浅香さん!あ、お母さんじゃなくてゆき姉!
良かったら…ここのみんなに一曲歌ってもらえませんか!?」

「えっ!?私が…ですか?」
田中からのあまりにも唐突な提案に、雪見はまたしても母と顔を見合わせた。

「三階のホール、判りますよね?あそこで待ってて下さい!
私もすぐに準備して行きますからっ!」

「田中さんっ!ちょっと!」
雪見の返事がイエスなのかノーなのかも聞かずに、田中は病室を飛び出して行った。

「婦長!いいんですかっ!?三階は個室の患者さんたちがいるし…。」
残った看護師が困った顔して婦長の判断を仰ぐ。

「土曜日だから、もう外来診療は終ってる時間ね…。
誰か田中さんを捜して伝えて!一階の外来ロビーでやりましょうって!
浅香さん。私からもお願いできるかしら?
三連休だって言うのに、みんなには楽しみがないの。
もしあなたが歌ってくれたら、それは素敵なプレゼントになると思う。
お願いします!みんなにあなたの歌を聴かせてあげて下さい!」
婦長が雪見に向かって、最敬礼で頼み込む。
雪見が、どうしたらよいものかと悩んでいると…。

「雪見の歌、母さんも聞いてみたいな。
あんたが本当に歌手になったのか、どうも未だに信じられなくて…。
だってカラオケでさえ、子供の時以来一緒に行ってないし…。」

「母さん…。」

そう母に言われて、初めて雪見は自覚した。
今までいかに自分が母を振り向きもせず、一人でとっとと歩いていたのかを…。
母はいつまでもそこにいるものだと、疑いもしなかったから。
勝手に生きてる私を、後ろで笑って見ててくれると思ってたから。
でも違うんだ…。母は私の歌も聴かずに逝ってしまうのか…?


「歌わせて下さい。私で良ければ…。私もみなさんに聴いてもらいたいです!
そして母さんにも…。」

自分の口から出た言葉が不思議だった。
私はそう思ってるんだ。みんなに聴いてもらいたい、って…。
そうだったんだ…。


婦長の声で、ロビーコンサートのお知らせがアナウンスされる。
ガヤガヤとみんなが病室から出てきて、廊下でひとつの帯になり、
広い一階ロビーへと集まってきた。
その中には笑顔の雪見と母の姿も含まれているのだが、まだ誰も気付く様子はない。

そうだ!健人くんに伝えておかなくちゃ!

これから初の単独ライブ!
今夜急遽女子会入った。
悪いけど遅くなるから。
ごめんねっ!
   by YUKIMI








Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.400 )
日時: 2012/03/09 18:58
名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)

「初の単独ライブって…どーゆーこと?
今の時間は、おばさんのお見舞いに行ってるはずなんだけど…。」
雪見からの短い意味不明メールに、健人が首を傾げてる。

大阪から東京に戻り、真っ直ぐCMの撮影スタジオ入りした健人。
メールが届いた時は丁度、セットチェンジのための待ち時間であった。

「ねぇねぇ、俺にも見せて!」
今回のCMで共演する翔平が、隣からケータイを覗き込む。

「なに?この短いメール!しかも字ばっかだし!
今どきこんなのあり?っつーか、これって完璧、業務連絡でしょ!
彼氏に送るメールとは思えないんだけど。大丈夫なの?おたくら。」
翔平が、割とマジで心配してるらしくて健人は笑えた。

「これがゆき姉なのっ!最初っからだから、別に何とも思わないけど。
俺のメールだって、こんなもんでしょ。」
そう言いながら健人は、翔平に見られないうちに素早くメールを返信する。

「まぁそっか!健人のメールも、最後にヒヨコが出てくるぐらいだもんね。
で、なんでヒヨコ?」

「なんとなく黄色くて、かわいっかなーと思って。
それよりさ、今日これ終ったら飯食いに行かない?
ゆき姉、女子会で遅くなるってゆーから。誰と女子会なんだろ?真由子さん達かな?」

「ねぇ。女子会って、一体何歳まで使っていい言葉なんだろね?」

「女はみんな女子なんだから、いいのっ!」


一方その頃、雪見はと言うと…。
母と二人、一階ロビー後方の隅っこで、この状況に茫然としていた。

患者さんや見舞客は勿論のこと、病棟看護師や外来看護師、先生や検査技師、
はたまた給食のおばちゃん達までもが、ガヤガヤと集結している。
いくら土曜午後の空いた時間帯とはいえ、ここまで集まらなくても…。

「ねぇ…。このままこの出口から帰ってもいいかな?」
雪見が隣の母に聞いてみる。

「母さんも、家に忘れ物取りに帰ろっかな…。」

今更ながらに後悔してると、手の中のケータイが震えて着信を告げた。
「あっ!健人くんからだっ!」


ここで聴いてるよ!
初ライブ、頑張れぇ〜

  by KENTO


いつも通りに短い言葉だったが、それで充分健人の気持ちが伝わってきた。
元気と勇気も湧いて来た。

そうだ。離れてる健人くんにも届くように歌えば、きっとみんなの心にだって届くはず。
それにみんな、私の事なんて知らない年代っぽいし…。
知らないで聴いてくれる方が、こっちも気負わなくていいや!

たった二行のメールで雪見の気持ちは切り替わり、心のスタンバイが整った。
…のはいいんだけど、一体何を歌えばいいの?

その時だった。
「ゆきねぇーっ!お待たせっ!選ぶのに時間かかっちゃったぁ!
もう、遠い方の駐車場に車止めちゃったから、取りに行くのが大変で。
しかも雨がひっどいしぃ!
はいっ!これ。こん中から好きな曲、選んで!私が音出しするから。」

そう言って、雨に濡れた田中が差し出したのは、五枚のCDだった。
通勤中はいつもこのカラオケCDで、大声で歌いながら車を運転するそう。
「仕事前はテンション上がる曲を歌って、帰りは気持ちを静める曲を歌うの。
だから車の中は、ショップ並みにCDが積んである!」
可笑しそうに笑ったあと、雪見の目を見て田中が言った。

「みんなが元気になる曲がいいなと思って選んできたの。
少しでもみんなの心が、前向きになれる曲がいいなって…。」

あれっ?と思った。この人、優しい人なんだ。なんか第一印象と全然違う。
きっと患者さん想いの、いい看護師さんになれるよ!新人さん!

雪見が勝手に新人だと思い込んでるだけで、本当は凄腕の優秀な看護師であることを
まだこの時は知るよしもなかった。


「どれどれ?わっ!私の大好きな曲ばっかだ!えーっ、どれにしよう!
こん中から一曲となると、この歌もいい歌だし、こっちも捨てがたいなぁ。
…あっ!これがいいかも!
これならおばあちゃんでも知ってそう!いいですか?これかけてもらって。」

「了解っ!じゃ、みんなの前に行きましょ!私がゆき姉のこと紹介するから!」

「よしっ!行ってくるねっ!母さん、ちゃんと聴いててよ!」
そう母に言い残し、雪見は田中と共に大勢の聴衆の前へと出て行った。

ワイワイとした騒ぎが静まり、みんなの目が雪見一点に集中する。
このあまりにも近すぎる距離が、今までのライブとは別の、新たな緊張感を生み出した。

「やばっ!結構つらい状況だなぁ。みんなの視線が…。」
小声で隣の田中に訴える。

「大丈夫ですって!私に任せといてっ!」
そう言って彼女は、雪見を安心させるように自信満々に微笑み、
良く通る声で第一声を発した。

「おーい!みんなぁ!元気ぃーっ!?」
「元気ぃーっ!!」

「はぁぁ?」
予想外の第一声と、それに答え慣れてる様子の聴衆の返答に、雪見は呆気にとられる。
一番前にいる副院長先生の大声も聞こえたんだけど…。

「今日はねぇ!みんなのためにお姉さんが、素敵なプレゼントを用意したよー!
いっつもお姉さんの歌ばかりじゃ飽きちゃうかと思って、本物のアーティストさんに
来てもらいましたぁーっ!
紹介するねーっ!浅香雪見さんでーす!拍手ぅー!」

「ど、どうも初めまして!浅香雪見と言います。」
どのテンションでいけばいいのかわからなくて、取りあえずは普通に挨拶してみる。
が、今イチみんなの反応が悪い。
田中はどうやら、歌のお姉さんに成り切ってる様子。
仕方ない。もうこうなったらヤケだっ!

「みなさーん!改めて、こんにちはーっ!
今日は皆さんに歌を聴いてもらいたくて、やって来ましたぁーっ!
隣のお姉さんより下手くそかも知れないけど、聴いてやって下さいねぇ!
では、いきものがかりさんの『ありがとう』を歌いますっ!」

イントロが始まりざわつきが収まると、雪見はいつものように目を閉じて
フッと小さく息を吐く。
そして歌い出した最初のワンフレーズで、おおーっ!という驚きの声が上がった。

いつまでも ただいつまでも あなたと笑っていたいから…

幅広い世代が知ってる歌だと思い雪見は選んだのだが、その歌詞は当然のように
雪見によって深く心の中に染み込んで、歌い終って目を開けると患者も看護師も、
副院長さえも目頭を押さえていた。
一呼吸置いて雪見は、大きな大きな拍手に包まれる。
みんなの弾ける笑顔と共に。

鳴りやまないアンコールに二度答え、握手責めからやっと解放されて母の元へと戻る。
「どうだった?」

「あんたって、凄い才能を持って生まれた子だったんだね。
あんたを産んで33年目にして、初めて知った!」
そう言って母は、嬉しそうに目を細めて笑ってる。


その頬には、拭き忘れた涙の跡が光っていた。
















Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.401 )
日時: 2012/03/10 10:52
名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)

母の病院からグラビア撮影のためにスタジオ入りした雪見は、手慣れた仕事ぶりで
予定通りに撮影をこなし無事終了。
時刻はちょうど八時過ぎ。さぁ女子会、女子会っと!

「お疲れ様でしたぁ!じゃ、お先に失礼しまーす!」

「あれ、雪見ちゃん、デートかなぁ?
ツアー帰りで疲れてるはずなのに、やったら元気だよねぇ?」
撤収作業をしていたカメラマンが、ニヤニヤしながら手を止めて雪見に声をかける。

「残念ながら女子会でーす!けど私って、ここんとこ毎日飲み過ぎかなぁ?
明日は休肝日にしないと…。」
独り言のつもりだったが、カメラマン氏から「無理無理!」と言われてしまった。

「飲み会もいいけど、大阪で一気に顔が広まったんだから、少しは周りを気にしないと!
なんせ検索ワードランキング一位って事は、今一番注目されてるって事なんだから!」

「それって、ほんとーに私のことなのかなぁ?
誰か似た名前の人と、間違えてるとかじゃなくて?どうも信用ならない。」
未だに雪見は半信半疑だった。
だがこの後すぐに、ネット社会の凄さを思い知らされる。

「じゃ、帰りまーす!お疲れ様でしたぁー!」
車は今野に乗って帰ってもらい、雪見はタクシーで本日の女子会会場へ。


「こんばんはー!遅くなってごめんなさいっ!お店の外でちょっと捕まっちゃって。」

タクシーを降りてすぐ女の子グループに囲まれた雪見は、みんなと握手したあと
大急ぎで店内へと駆け込んだ。
それにしてもこんな夜に、ひと目見てゆき姉だってわかった!って、
凄い子たちだなぁ…。

「ううん、私も今来たとこ!ごめんねぇ!こんな店しか取れなくて。
よく考えたら、巷じゃ三連休なんだもんね!
どーりで人気のお店は、どこも予約が一杯なわけだ!」

「悪かったなっ!連休なのに空いてる、こんな店で!」
そこは花屋のママの義兄の店『どんべい』だった。

店内を見渡すとテーブル席はさすがに満席で、ママはカウンターに座ってた。
「あれ?いつもの部屋空いてるんだよね?マスター、あっちでもいいでしょ?」

「俺もそう言ったんだけど、こいつがカウンターでいいって。
ほら、豚串とつくね!取りあえずビールでいいんだろ?」

「だってあっちは雪見ちゃん達の特別室でしょ?悪いもの。
それに久しぶりに、辰巳ちゃんとも飲みたいじゃない。」
ママがマスターの事を「辰巳ちゃん」と呼んだのが可笑しくて、雪見がクスクス笑ってる。

「笑うんじゃないっ!しゃーないだろっ!昔っから『辰巳ちゃん』なんだからっ!
ほらっ!由紀恵の好きな海鮮サラダ。ホタテ大盛りバージョンだ!」

「やった!さすが辰巳ちゃん!さ、食べよ食べよ!
あ、その前に乾杯がまだだった!じゃ雪見ちゃん、お疲れ様でした!」

「ママもお疲れ様でした!カンパーイ!」

「おーいっ!俺と飲みたいとか言ってたくせに、乾杯には入れてくんないわけっ!?」

「だって今日は女子会だもんねーっ!
たまには会話に参加してもいいけど、基本、女子会ですからっ!」

「お前ねぇ!そんな大声で女子会女子会って、連呼すんじゃねーよ!
一体いくつだと思ってんの?みんながこっちをジロジロ見てんだろっ!
しっかし、女子会って言葉に年齢制限無くていいのかね?」

「相変わらず失礼ねっ!昔っから辰巳ちゃんて……。」
二人のやり取りを、本当に血の繋がった仲良し兄妹みたいでいいなぁと、
雪見がビールを飲みながら、微笑ましく見ていたその時だった。

「あのー、浅香雪見さん…ですよねっ?」
突然後ろから男の人が寄ってきて、声を掛けられた。

「あ…はい、そうですけど…。」

「一緒に写真撮ってもらってもいいですか?」
「あ…。」
雪見が判断に困ってマスターの顔を見る。

「悪いねぇ!店内は撮影禁止なの。
あ、個室とかで自分たちだけしか写らないなら構わないんだよ!
けどホールじゃ他のお客さんも映り込んで、迷惑かかる事もあるから。
雪見ちゃんのファンなの?握手してもらいなよ。」
マスターがにこやかに、やんわりと断ってくれた。

が、その人は写真撮影を断られると「じゃ、いいです。」と、握手もせずに
あっさりと戻って行くではないか。

「なんだい!あれ。ただの冷やかしかいっ!
雪見ちゃんも、だいぶ顔が知られるようになってきたみたいだから、
変な奴には気を付けろよ!
昔は変な奴って見た目で判ったもんだけど、最近の変な奴は普通の顔してっからな!
しかもネット社会とやらで、噂話なんてあっという間に世界中に広まるってんだから、
恐ろしい世の中になっちまったもんだ。
まぁ俺なんてパソコンいじれねーから、ぜーんぜん関係ねぇ話だけど。
ほいっ!手羽先お待ちっ!」

熱々の手羽先にかぶりついたところで、またしても声をかけられた。
「ゆき姉ですよねっ!私達ファンなんです!握手してもらってもいいですかぁ?」
今度は二十代の女の子四人組だ。

「いいですよ!応援してくれてありがとうございます!」
雪見が一人ずつと握手してやると、四人はキャーキャー言いながら戻って行った。

「ごめんなさい!なんだか落ち着いて飲めないなぁ。」
雪見が隣りのママに頭を下げて詫びた。
どうやらみんなにジロジロ見られてたのは、女子会を連呼したママのせいではなく
雪見がここに居るのを気付かれての事らしい。

「凄い事じゃない!だって、こんな店にいるのにみんなが気付いてくれるんだから!
それだけ有名になったって事でしょ?嬉しいじゃないの!」

「こんな店って、何回も言うなっ!」
マスターがママを睨み付けたので、雪見が大笑いする。

いいなぁ!こういう時間。昔に戻ったみたいだ。
昔はよくここに座って、マスターや常連客仲間と馬鹿話して大笑いしたっけ。
まわりなんかひとつも気にせずに…。

少ししか顔の知れてない自分でさえ、落ち着いては飲めないのだから、
健人や当麻の生活とは、いかに不自由で心休まらない暮しなのだろう。
有名になることと引き替えに失う自由…。

私はやっぱり、自由の方がいいや!
有名になんかならなくても、いい仕事を地道に重ねて密かにみんなが認めてくれたら
少しは健人くんのお嫁さんとして、堂々としていられるかな?
そうだよね!健人くんと二人して有名人になっちゃったら、どこに行っても
目立ってしょうがない。
良かったぁ!テレビの仕事なんて断って。
ぜーんぜん有名になんかならなくたって、いいじゃん!

そう思ったら、有名に有名にって言ってた昨日までの自分がバカバカしくて、
一人で思い出し笑いをしたようだ。

「あ!今、俺らの話聞かないで、健人のこと思い出してただろ!
いやらしー顔でにやけてたぞっ!」
マスターに指摘され、雪見は慌てて否定する。

「うそだーっ!昨日なんて何にもしてないもんっ!」
「なに自分から白状してんだよっ!そんなこと聞いちゃいねーからっ!」

三人が笑っていられたのもここまでだった。

雪見が、有名にならなくていいやと思ったのも手遅れで、店の外では
大変な騒ぎがすでに始まっていた。




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