コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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アイドルな彼氏に猫パンチ@
日時: 2011/02/07 15:34
名前: め〜にゃん (ID: AO7OXeJ5)

今どき 年下の彼氏なんて
珍しくもなんともないだろう。

なんせ世の中、右も左も
草食男子で溢れかえってる このご時世。

女の方がグイグイ腕を引っ張って
「ほら、私についておいで!」ぐらいの勢いがなくちゃ
彼氏のひとりも できやしない。


私も34のこの年まで
恋の一つや二つ、三つや四つはしてきたつもりだが
いつも年上男に惚れていた。

同い年や年下男なんて、コドモみたいで対象外。

なのに なのに。


浅香雪見 34才。
職業 フリーカメラマン。
生まれて初めて 年下の男と付き合う。
それも 何を血迷ったか、一回りも年下の男。

それだけでも十分に、私的には恥ずかしくて
デートもコソコソしたいのだが
それとは別に コソコソしなければならない理由がある。


彼氏、斎藤健人 22才。
職業 どういうわけか、今をときめくアイドル俳優!

なーんで、こんなめんどくさい恋愛 しちゃったんだろ?


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Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.387 )
日時: 2012/02/24 14:19
名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)

「えー、ほな本日のゲストを呼ぼーか、どーしよか考え中!」

「どっちやねん!はよ呼べーや!
ゲストの二人は、これからライブがあるんやから、忙しいねんて!
見てみぃ!お客さんの冷たい目!とっとと紹介せんか、ボケぇ!言うてるて。
もうええわ!わしが呼んだる!
本日のゲスト、日本一のイケメン俳優、斎藤健人くんと、今、巷で赤丸急上昇中の
カメラマン兼アーティスト、浅香雪見さんですっ!どうぞー!!」

紹介されてセットの扉を開け、二人でスタジオに足を踏み入れた途端、
観覧席からは、本人達はもちろん共演者、スタッフも驚くほどの悲鳴と
大きな歓声が巻き起こった。

大阪出身の超人気若手お笑いコンビがMCを務める、全国放送の午後のバラエティー番組。
その冒頭のワンコーナーに、生ゲストとして登場した健人と雪見は、
のっけから東京とはまるで違うスタジオのノリに戦々恐々、すでに及び腰である。

「ちょっと、お二人さん!別に取って食おうってわけやないんやから、
そんなビビらんくてもええやんか!まぁどうぞ、座って下さい。
しっかし斎藤くんは、いつ会うても爽やかでカッコ良すぎやなぁ!」

「お前のその挑戦的な目つき!ごっつ、いやらしいでぇ!
なんで日本一のイケメン俳優に、ライバル心剥き出しにしとんの!
ほんま、すんませんねぇ!じゃ改めて紹介します。日本一の…」

「あの、普通に斎藤健人でいいです。よろしくお願いします!」
健人が苦笑いしながら、二人を取り囲む出演者達にペコリペコリと頭を下げる。

「あれ?日本一って言われるの嫌い?世界一の方が良かった?」

「だから、いやらしいて!やめとき!ほんま、すんません!帰らんといて下さいねっ!
それより隣のべっぴんさんを、はよ紹介せんと!」

「そうやった!いつまでもイケメン、いじっとる場合やない!
俺にとってのメインゲスト、浅香雪見さんでーす!どうも初めまして!
お近づきのしるしに、これどうぞ!」

「なに、いきなりアドレス渡しとんの!
あ、これ、僕のケータイの番号です!もらって下さいっ!」

「お前もかっ!どーりで挙動不審なわけや!」

「いや実はですね、僕たち二人とも、浅香さんのめちゃくちゃファンなんですよ!」

「えーっ!そうなんですかぁ?ありがとうございます!
初めて芸能界の方にファンだって言われました!ビックリです!
ありがとうございますっ!」
雪見は驚きながらも、とても嬉しそうに頭を下げてお礼を言った。

それを隣で見ている健人も、自分の事のように嬉しかった。
一気に緊張が解け、何度かテレビで顔を合わせたことのある二人を相手に、
滑らかにトークに参加し出した。

「ゆき姉のファンって、結構レアですねぇ!
ほんと、この世界では俺と当麻ぐらいしか知らない!」
そう言って健人が笑うと、すかさず二人も笑ってうなずいた。

「でしょ?俺らもそう思うてるもん!マニアックなとこ、突いてるなぁーと。」

「何がきっかけでゆき姉を知ったんですか?」
健人が、興味津々といった顔で、身を乗り出して二人に聞く。

「僕らの猫好きは結構有名な話なんですけど、ファンから浅香さんの
猫の写真集をもらいましてね。きっかけはそこなんです!
…って、なんで俺らがインタビュー受けとんのや?ゲストはそっちでしょ!
けど、どうせやから喋らせて!
その写真集がめちゃ気に入って、それから速攻全部買い揃えたんですよ。」

「ほんとですか?それ、すっごく嬉しい!」
雪見は子供のように、手を叩いて喜んだ。

「で、どないな人が写したんかなぁ?思うてるとこに、これも奇蹟としか
言いようがないんやけど、たまたま乗ったタクシーで、三ツ橋当麻くんの
ラジオがかかってて…。
そこで浅香さんが『涙そうそう』を歌うてはったんですっ!
もう、車ん中で不覚にも泣きました!タクシーの運ちゃんに白い目で見られながら。
そっからの大ファンです!今日のライブも、もちろん行かせてもらいます!」

「そうなんですかーっ!?うわぁ、嬉しい!三人でお待ちしてます!」

「あ、斎藤くんのブログも、たまーに見とるよ!
ゆき姉の写真が、アップされとる事があるから。
今日のライブも、まぁ、ゆき姉目当てやけど、斎藤くんと三ツ橋くんも
ついでに見といたる!」

「あざぁーっす!なんにしても嬉しいっす!」
健人は、何を言われても終始ニコニコと上機嫌である。

しかもこのお笑いコンビ、相当な雪見ファンであるらしく、事あるごとに
雪見を持ち上げては健人を落として笑いを取りつつ、まだまだ認知度の低い雪見を
ぐいぐいアピールしていった。

スタジオの隅で、健人のマネージャー及川と共に見守っていた今野も、
この様子には驚いた。

「まさかあの二人が、ここまでの雪見ファンだとは…。予想外の展開だな!
どう考えても今日のメインは健人のはずなのに、雪見も同等に扱ってくれてる。
俺としては大層有り難いが、視聴者的にはどうなんだろ…。」

「いや、大丈夫じゃないっすか?
健人に対して毒を吐いてるようにも見えるけど、実はワンセットで応援してくれてる。
俺にはそう見えますけど…。」

及川の言う事は当たってた。
次々スタジオに送られてくるファクスやメールには、『今日のライブが
益々楽しみになりました!』とか、『今度、当麻くんのラジオにみんなで出て欲しい!
ほろよいトークとか、めっちゃ楽しそう!』と言った好意的な内容が続々届いた。

そうして話が弾むうちに、このコーナーの締めくくり。
毎回ゲストに思い出の一曲を歌ってもらうのだが、健人達が選んだのは『WINDING ROAD』。
当麻の歌うパートが予め録音されてるカラオケで、二人はいつものように
最高に息の合った歌声を披露し聴衆を大いに湧かせ、名残惜しそうにスタジオを後にした。





















Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.388 )
日時: 2012/02/26 14:27
名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)

「なんか、わけわかんないうちに終っちゃった!
私、最後の歌しか記憶に無いっ!」

生放送の出番を終え、大急ぎでスタジオを飛び出した健人や今野たち。
その後ろを、置いていかれないよう必死に早足で歩く雪見の声も無視して
ライブ会場に向かうべく、急いで地下駐車場に待機していたタクシーに乗り込んだ。

が、地上に出た途端行く手を阻むのは、スタジオ観覧の抽選に外れ、
健人の出待ちをしていた大勢のファンたち!
ひと目健人を拝んでからライブ会場へ移動しようと、テレビ局周辺は
若い女の子達で溢れかえっていた。
それを数名の警備員がチームワークも鮮やかに、素早く手際よく対処して
タクシーの進路を確保する。

健人は、そこにいるのがライブのお客さんだと思うと無視することは出来ず、
窓越しに微笑んで小さく手を振った。
それを見て、隣りに座る雪見も慌てて手を振る。
芸能人たるや人に見られてる限り、一時たりとも気は抜けないのだと勉強になった。


やっと走り出したタクシーに、やれやれと安堵する健人と雪見。
そこへ今野のケータイに、東京の事務所から電話が入る。

「え?雪見の猫の写真集に問い合わせが殺到!?
そりゃまた凄い話だが、あいにくうちの事務所に入る前の仕事だからなぁ。
へぇ!ライブの当日券は二回分とも売り切れたの!もう早?
すっごいなぁ!あの二人の人気は、関東の俺らが思ってる以上らしい。
こりゃ思わぬところで、強力な宣伝部長を見つけたぞ!
これを逃すわけにはいかないよな…。
よし!あの二人に雪見の応援団になってくれないか、正式にオファーしてみよう!」

「ええーっ!?」
後ろの座席で今野と事務所のやり取りを聞いてた雪見と健人は、同時に声を上げた。

どうやら、今野から雪見に課せられた、ほぼ達成不可能と思われた目標
『三月中に有名になる!』は、思いもしなかった応援団の出現によって
一気に現実味を帯びてきた様子。

「ゆき姉、なんだか凄い事になりそうじゃん!」

「凄い事って言ったって…。どうなっちゃうの?私…。」

楽しいことが始まりそうで、ワクワクと目を輝かせてる健人と違い、
雪見はこの先の展開が読めず、不安でオドオドしてた。

「まぁ、まずは今日のライブをきっちりこなすのが先決だからな!
今回は一日二回公演だし、相当体力を消耗するだろうが、来てくれる
お客さんに対しては、一回目も二回目も同じレベルじゃないと失礼だぞ!
そこんとこモチベーションをしっかり保って、気合いを入れて望め!」

「はいっ!!」

そうだった。先の事など考えてる場合じゃない。
まず会場に着いたら真っ先に、ロビーで行われる写真展のチェックに
取りかからなくては。
それからリハーサル前に、関西地区のマスコミが集結した囲み取材があって
それからそれから…。

札幌に続き二ヶ所目のライブ。
大体の構成は同じだとしても、今野の言う通り一日二回公演は初めての体験だ。
果たしてどれほどのものになるのか、さっぱり見当もつかない。
とにかく一回目の開始時刻まで、あと2時間半あまり。
今更、悩んだり立ち止まったりしてる時間は一分たりとも無いのだ!

…と雪見は自分に気合いを入れてみたのだが、お腹だけは正直にグゥーッと返事した。


会場周りには、すでに大勢のファンが集まっていた。
それを横目で見ながら、またタクシーは地下へと潜り込む。
今野は「まずは腹ごしらえしてからスタートしよう!」と言ったが、
雪見はどうしても先にロビーの様子を確認しておきたくて、楽屋へは寄らず
真っ直ぐ写真展を見に行った。
相変わらずお腹の虫は鳴いていたけど、それは無視して。

すでに準備は整っていて、二人残ったスタッフがパネル写真の微調整をしている。
広いロビーに合わせ、札幌会場よりも展示数は増やしてあった。

「お疲れ様です!どうもありがとう!凄くおしゃれな空間にしてくれたんですねっ!」
雪見がにこやかに後ろから声をかけると、スタッフは驚いたように振り向き頭を下げた。

そこから先はスッとカメラマンの顔に切り替わり、きりりとした表情で
全体のバランスや配置を見て歩く。
ゆっくりと最後に一回りしたあと、自分の中で力強い確信が持てた。
やっぱり私は写真が一番に好き!この仕事こそが私の天職だ!と…。

そう思ったら、歌う事は自分が楽しめて、聞いてるみんなも心地良かったら
それでいいんじゃないかという気がして、ストンと肩の力が抜けてきた。

「よしっ!こっちは完璧です!
じゃ私、ライブの準備にかかるから、あとはお願いしますねっ!よろしく!」
またいつもの笑顔に戻りスタッフに頭を下げて、雪見は大急ぎで楽屋へと駆け込んだ。

「雪見ちゃん、急いで急いで!
お弁当食べながらでいいから、髪を先にやっちゃおう!」
雪見の到着を待ち構えてたヘアメイクの進藤が、取りあえず囲み取材用に
ヘアスタイルを整える。

「あー、お腹がぺっこぺこ!いただきまーす!」
本当はがっつりお弁当を食べたいところだが、そんな猶予はなさそうなので、
サンドイッチとコーヒーでひとまずお腹を満たしておこう。

「そうだ!雪見ちゃんにお花届いてるよっ!熱烈なファン二人組から。」
進藤が指差す方を見ると、そこにはつるで編んだお洒落なバスケットに入れられた
綺麗な花が置かれていた。
送り主はもちろん、先ほどのお笑い二人組である。

「わぁーっ!めっちゃ、おしゃれー!このまま家に飾りたいっ!」
好みを知り尽くした二人ならではの、ナチュラルカントリー風アレンジメントに、
雪見は大興奮である。

「また、随分と凄い二人に好かれたものねっ!
こんな大きなライブの前にテレビの仕事だなんて、時間が無いのにぃ!
とか思ってたけど、今日の生出演は雪見ちゃんにとって、もしかしたら
ターニングポイントになったかもよ!」

「またぁ!進藤さんは大袈裟なんだからっ!」
そう言いながら雪見はカラカラと笑ったが、まさしく進藤の予感は大当たりであった。


それから二十分後。

集まった報道陣の数は、今野らの予想を遙かに超えていた。
しかもあろう事か、健人に向けられる質問より、雪見に対する質問の方が
確実に多いのである。

「ま、まぁ、健人の事は、みんな大体は知り尽くしてるからぁ!
雪見は、謎の人物っちゃあ謎の人物だし…。にしても…な?」

「はぁ…。」


いつまでも終りそうにない雪見への質問に、時間を気にしつつも
今野と及川が首を傾げた。













Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.389 )
日時: 2012/02/27 20:14
名前: 蓬莱山 輝夜 ◆Q1E4PDAez6 (ID: RSw5RuTO)

読んでて楽しい小説です♪頑張ってください!

Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.390 )
日時: 2012/02/28 09:35
名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)

「申し訳ありませーん!残念ながらリハーサルの時間となりましたので
これで本日の取材は終了とさせて頂きまーす!ありがとうございましたぁ!」

ロビーの写真展ブースを背にして行われた、各社一斉の囲み取材。
タイムアップにより取材を強制終了させた今野は、最後の最後まで
粘って質問を続けようとするインタビュアーから健人と雪見を引き離し
二人に早くステージへ移動するよう、背中をグイッと押す。

「ありがとうございましたっ!」
最後にもう一度取材陣に向かって一礼したあと、雪見は逃げるようにその場を立ち去った。

「もう、緊張してめっちゃ喉渇いたぁ!またしても、なに話したか記憶に無いんだけど。」
「大丈夫、大丈夫!関西人受けする、面白い取材だったから!」
「うそっ!?どの辺がぁ?」
「ぜーんぶ!」
「うそでしょっ!?」

健人と雪見がじゃれあうように、笑いながらステージに上って行くと
そこには当麻の姿があった。

「当麻ぁ!」

「いつ着いたの?ロビーに来れば良かったのに!」

「ほんっとゴメン!申し訳ないっ!まさかこんな事になろうとは…。
俺もついさっき着いたの!で、取材に合流しようと思ったんだけど、
今から出て行くと時間が押しそうだからって、みんなに止められて。
本当に申し訳ないです!二度とこんなミスはしないから許して下さいっ!」
当麻が、健人と雪見に向かって深く深く頭を垂れる。
それに対して健人は…。

「あ、今日の取材ね、ぜんぜん当麻居なくても平気だった!
俺も居なくて良かったぐらい。」

「え?」

「ほぼ、ゆき姉に対する取材みたいになっちゃったから。ねっ!阿部さん!」
健人が笑いながら、そばで写真を写してたツアー帯同カメラマンの阿部に話しを振る。

「そーだねっ!当麻も健人も、写真展に飾ってある等身大のパネルで充分だったよ!」
大きな体を揺すって、阿部が大笑いした。

当の雪見はと言うと、そんな三人を尻目にすでにピアノの前に座ってる。
それを見た二人は、慌ててリハーサルのスタンバイをした。


そうしてバタバタと準備をして望んだ一回目のステージは、大声援の中
途切れることのないアンコールに大急ぎで二度答え、二回目準備のために
ファンにはお引き取り願った。


「あーっ!なんとか終ったぁ!疲れたぁ!」
楽屋に引き上げてきた雪見が、ドサッとソファーに腰を下ろし目をつむる。

「雪見ちゃん!一時間半後にはもう一回あるんだよ!大丈夫?」
ヘアメイクの進藤がすかさず寄ってきて、目をつむったままの雪見の化粧を直す。

「少し寝てもいい?15分だけ…。」
そう言い終わった時には、雪見はすでに眠りに落ちていた。

「あーあぁ!衣装がしわくちゃ!ま、しょーがないかぁ…。
きっと今日は、最大級に頑張ってる一日だもんね。
進藤ちゃん、30分くらい経ったら、雪見ちゃんを起こしてあげて!
私、先に健人くん達の衣装、やっつけてくるから。」
スタイリストの牧田が、あとはお願い!と言い残し、雪見の楽屋を出て行った。


トントンッ!

「はいっ!」
留守番をしてる進藤が、そっとドアを開ける。

「あっ!!」
なんとそこに立っていたのは、雪見に花を贈ったあのお笑いコンビであった!

「浅香さん、いてはりますかっ?」

「あ…いるんですけど、今ちょっと眠っちゃってて…。
でももう時間だから、起こしてきますねっ!」
そう言って進藤がドアから離れると、この二人は「かまへん!かまへん!」
と言いながら、勝手に楽屋の中へと入って来てしまった。

「ちょ、ちょっと!困りますっ!」

「シーッ!起きてしまうがなっ!うっわ、見てみ!白雪姫みたいや!」
コンビの背の低い方が背の高い相方に向かって、声を潜めて手招きする。

「どれどれっ?ホンマや!横に並んで写真撮りたいわぁ!」
と、背の高い方がそっと雪見の隣りに腰を下ろすと…。

「えっ!?えーっ!?」
気配に気付いた雪見の目がパチッと開き、この訳の解らぬ状況に驚いている。

「あー起こしてもうた!すんません!お休みのところ。
勝手に寄らしてもらいました!お花、受け取ってもらえましたか?」

「は…?あ、はいっ!頂きましたっ!ありがとうございますっ!」
雪見はガバッと立ち上がり、やっとこの状況を飲み込んで慌てふためいた。

「やだっ!私、寝てるとこ見られちゃいましたぁ!?
あの、昼間はほんっとーにお世話になりました!
なのに私、緊張しすぎてて、あんまり良く覚えてないんです。
番組に苦情とか来てませんか?
あーっ!衣装がしわくちゃ!え?今何時!?もう二回目始まっちゃう!?」
まだ半分寝ぼけてるのか、一人でドタバタ騒いでる雪見を見て、二人組が笑ってる。

「大丈夫やって!まだ一時間ありますから!落ち着いて下さいよ。
ほんま、天然なんですねぇ!思うてた通りの人や!」

「え?思ってた通り…って?」
不思議そうな顔をして雪見が聞いた。

「これ、勝手なイメージかも知らんのやけど、何かに秀でた人って、
案外それ以外の事に無頓着で、ボケかます率が多いと思うんです。
僕の中で浅香さんはそんな感じ。今日のトークもそうでした。狙い通りやった!」

「うそっ!私、そんなボケボケなトークしてたんですかぁ!?
やだ!なんで緊張してると記憶に残らないんだろ?
誰か録画してくれたかな?なに喋ったのか知りたいっ!!」
雪見はまたしてもバタバタし出す。
その様子を見て二人組は、なぜか満足げにニコニコと笑ってた。

「まぁまぁ落ち着いて!
浅香さんて、ほんまは凄いカメラマンやし歌もハンパないし、頭もめっちゃいいのに、
それ以外はおっとり天然いうか…。めちゃくちゃ、どんくさいとこもあるでしょ?」

「ま、まぁ…。けどカメラも歌も、みんなが過大評価し過ぎてます!
たまたま健人くんと親戚で、一緒に仕事したからカメラと歌が注目されて、
たまたま同じゼミの科学者が何とか賞をもらったから、私の学歴まで注目されて…。
全部誰かのお陰で仕事もらってるようなもんで、私個人にそんな実力は
無いと思ってます!」

「じゃあ、今度はあなた一人の実力で仕事してみませんか?僕らと一緒に。」

「は?はぁ?」

雪見と進藤が目をぱちくりしてるところへ、今野がノックもなしに飛び込んで来た!

「雪見ッ!凄いぞ!あのお笑いコンビからお前に仕事のオファーが…!
えっ!?本人!?」

「どーもですっ!」


二回目のライブを前にして、心を落ち着かせるどころではなくなった雪見であった。


Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.391 )
日時: 2012/02/28 09:56
名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)

蓬菜山 輝夜 さまへ

こんな長いお話にお付き合い頂き、ありがとうございます!
嬉しいです!
まさか自分でも、こんなに長くなるとは思いもせず
最近はとみに、まっ、自分が楽しければいっか!
ぐらいに開き直って書いてます。

よろしければ、今しばらくお付き合い下さいねっ。
ではまた…。


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