コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- アイドルな彼氏に猫パンチ@
- 日時: 2011/02/07 15:34
- 名前: め〜にゃん (ID: AO7OXeJ5)
今どき 年下の彼氏なんて
珍しくもなんともないだろう。
なんせ世の中、右も左も
草食男子で溢れかえってる このご時世。
女の方がグイグイ腕を引っ張って
「ほら、私についておいで!」ぐらいの勢いがなくちゃ
彼氏のひとりも できやしない。
私も34のこの年まで
恋の一つや二つ、三つや四つはしてきたつもりだが
いつも年上男に惚れていた。
同い年や年下男なんて、コドモみたいで対象外。
なのに なのに。
浅香雪見 34才。
職業 フリーカメラマン。
生まれて初めて 年下の男と付き合う。
それも 何を血迷ったか、一回りも年下の男。
それだけでも十分に、私的には恥ずかしくて
デートもコソコソしたいのだが
それとは別に コソコソしなければならない理由がある。
彼氏、斎藤健人 22才。
職業 どういうわけか、今をときめくアイドル俳優!
なーんで、こんなめんどくさい恋愛 しちゃったんだろ?
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- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.437 )
- 日時: 2012/09/04 23:55
- 名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)
開演十分前。
サポートメンバーやスタッフと共に組んだ大円陣が、ライブの成功を誓い合う
気合いの入った雄叫びと共に解き放たれ、再びステージ袖には緊張と慌ただしさが戻った。
何度も深呼吸を繰り返す雪見。それを隣で気遣うみずき。
健人と当麻はさすが場数を踏んでるだけあり、クイズを出し合ったりじゃれたりして
緊張感を逃す方法を知っていた。
「ねぇ!ゆき姉とみずきも一緒に考えてよ!健人の出す問題、めっちゃ難し過ぎ!」
当麻が笑いながら側らの二人に助けを求める。
だが健人は、雪見がまったく笑顔を見せない事に気付くとスッと近付き、
肩にぽんと手を乗せた。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫…だと思う。歌い出せば緊張なんてすぐ解けるんだけど…。」
雪見は終始うつむいたまま、顔も上げずに小さな声で呟いた。
しかし、緊張するのも無理はない。
なぜなら、今日のライブは歌以外にも重要な事が待っていた。
リハーサルにはない項目が、先ほど急遽追加されたのだ。
それは…ファンに向けての結婚宣言だった。
当麻とみずきは今日入籍した事をファンに報告。
健人と雪見は来月渡米し、6月にニューヨークで挙式する事を当人達の口から
直接みんなに伝えるのだ。
マスコミに発表した以上、これは動かしようのない決定事項。
ならば外部から耳に入るよりも先に直接ファンに報告しなければ、
騒ぎはさらに拡大してしまうだろうという事務所サイドの見解だった。
なのでマスコミには一切の報道を、明日早朝5時から解禁する旨の紳士協定を結んでもらい、
まずは今日来てくれたファンに報告。
その他のファンに向けてはライブ終了と同時に、健人、当麻それぞれの公式サイトから
連名の結婚報告をする手はずが整っていた。
そして明日の朝には、マスコミによって大々的に発表されるだろう。
どこの局のワイドショーも、この二組のビッグカップルの電撃発表に
早朝から大賑わいになるはずだ。
自分らで決断し事務所の承諾を得、全面的なバックアップを受けるにしても、
この発表が途轍もない緊張を伴うものである事実は変えようがなかった。
「ゆき姉、俺を見て。」
健人が雪見の正面に立ち、小首を傾げて顔を覗き込む。
上目遣いに恐る恐る顔を上げた雪見に、ニコッと健人が微笑んだ。
「俺は月でゆき姉は太陽だって、前に話したことあるよね?
太陽が俺を照らしてくんないと、俺は光れないんだよ。
真っ暗な月で、ゆき姉は平気?」
「平気なわけない!健人くんはいつだって、輝いてなくちゃダメっ!」
健人の瞳に向かって雪見が必死に訴えた。
その真っ直ぐな眼差しに、健人は思わず雪見を抱き締めそうになる。
「そう。だったらゆき姉も笑って!太陽らしくね。
大丈夫だから…。俺がゆき姉を守ってる。何にも心配はいらないよ。
それにみんなはきっと俺たちを祝福してくれる。俺はそう信じてる。
だからいつもみたいに笑って。じゃないと俺、頑張れないっ!」
健人は最後に茶目っ気たっぷり、すねて甘える振りをした。
普段滅多に見ることのない健人の可愛い芝居に、思わず雪見の顔がほころんだ。
「なにそれ!?ロミジュリの舞台でそんなお芝居あんの?
今のめっちゃ可愛かったよ!も一回やって!」
「んなこと、出来るかっ!」
やっと二人で顔を見合わせて笑えた。
「あーあぁ!まだまだ私も経験値が足りないなー。こんなに長く生きてんのに。
やっぱ健人くんは凄いや!尊敬する!カッコイイ!」
雪見はそう言いながらケラケラ笑ってる。
その笑顔は、太陽に向かって真っ直ぐに咲く向日葵のようでもあり、
一瞬で健人の心を明るく輝かせ、内なるエネルギーを沸々と湧き上がらせた。
雪見を元気づけるつもりが、反対に自分の方が勇気をもらってることに気付くのだった。
そう、ゆき姉は俺の太陽。ゆき姉無しじゃ俺は輝けないんだ…。
改めてそんな思いを強くした。
「本番5分前です!スタンバイお願いしますっ!」
スタッフの大声で、いよいよ三人が決戦の場へと移動を促される。
「よっしゃあ!んじゃ、張り切って行きますか〜!」
当麻が自分に気合いを入れるように威勢良く声を上げ、みずきに向かって
「行ってくる!」としばしの別れを告げて先に歩き出す。
みずきはその頼もしい後ろ姿を「行ってらっしゃい!」と笑顔で見送った。
胸には二つの写真立てを抱えて。
健人も雪見に「行こっ!」と明るい声で促し歩き出した。
その後を雪見が「うんっ!」と嬉しそうに返事して小走りで続く。
が、思い出したようにはたと立ち止まり、みずきを振り返って慌てて言った。
「あ、みずきっ!うちの父さんの写真、その辺に置いといていいからねっ!
じゃ、行って来まーす!あとでねーっ!」
雪見が笑顔で手を振ってる。
その横顔を眺めながら健人は、ステージまでの薄暗い足元をやけに明るく感じていた。
揃ってオープニング曲の定位置にスタンバイ。
目の前に垂れた薄いオーガンジーのカーテンの向こうから、会場の熱気と興奮が
肌にビンビン伝わってきて、否が応でも三人の緊張感が高まった。
『母さんもちゃんと見ててね。私、最後まで頑張るから…。』
雪見は、娘以上に客席で緊張してるはずの母に、テレパシーを送るつもりで
強く念じ心を静めた。
さぁ!ツアー最後の東京公演初日が幕を開ける!
- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.438 )
- 日時: 2012/09/10 17:11
- 名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)
♪曲がりくねった道の先に 待っている幾つもの小さな光
まだ遠くて見えなくても 一歩ずつ ただそれだけを信じてゆこう♪
暗闇の中、薄いカーテンの向こうの高い位置に三人のシルエットが浮かび上がる。
アカペラで息の合ったハーモニーを聴かせた後、ストンとカーテンが落ちると
ステージ上に組まれたやぐらの上に斎藤健人、三ツ橋当麻、浅香雪見の三人が登場!
ファンに向かってそれぞれが大きく手を振ると、超満員の客席からは大絶叫がこだました。
ツアーのオープニング曲は、もちろん絢香×コブクロの『WINDING ROAD』
緊張感など一切感じさせず、想い出の一曲を実に楽しそうに歌い終えた三人は
上気した笑顔でお互いハイタッチし完璧なスタートを讃え合った後、
やぐらの螺旋階段をトントンと軽やかに下りてきてステージ中央に整列した。
「みんなーっ!僕らのラストライヴにようこそーっ!
こんなに大勢集まってくれて、めーっちゃめちゃ嬉しいです!
今日は最後まで、思いっきり楽しんでって下さいっ!よろしくーっ!!」
健人が一番手で挨拶し、頭上で大きく両手を振ったあと頭をぴょこんと下げて
最高の健人スマイルを見せる。
するとファンからは「キャーッ!!けんとーっ!!」と、すでにトップギアの大歓声が。
続いての当麻も、手を大きく振って会場をぐるりと見渡しながらの第一声。
「みんな、元気だったぁ〜!?会いたかったよ〜!!」
当麻の弾ける笑顔が会場全体をキラキラビームで乱射したかのように、
心打ち抜かれたファン達が悲鳴を上げた。
「あ、さっき健人がラストライヴって言ったけど、『SPECIAL JUNCTION』はまだ解散しないよ!
健人がニューヨークから帰って来るまで休止するだけだから!
ほんっと、ちゃんと伝えろよー、健人ぉ〜!
明日のスポーツ紙に『もう解散か!?』とかって大見出し付けられるじゃん(笑)。」
「わりぃわりぃ!俺、最近日本語が苦手でさ(笑)。」
「嫌みかっ!」
仲良い二人のやり取りに、会場中が大爆笑!
観衆の興奮と緊張感が一気にほぐれ、場の空気が丸くなった。
それを受けての雪見の出番。
和気藹々とした笑いの中、雪見の緊張もほぐれ、軽やかに挨拶して手を振って
次の曲に移るはずだった。
だが…。
雪見はすでに泣きそうな顔をしていた。
瞳に涙を浮べて二階席の上を見上げ、涙がこぼれ落ちないよう懸命に堪えていた。
胸に下げた健人とお揃いのクロスペンダントを、右手でギュッと握り締めて…。
もう二度と立つ事のないこのステージ…。
もう二度と会う事はないファンのみんな…。
そしてもう二度と共に歌うことはない、愛しい二人…。
明日まだワンステージが残ってるというのに、雪見はたった今歌った歌が
ラストソングかのような錯覚に陥っていた。
「おーいっ!ゆき姉っ!なんで今から泣いちゃうの!?
これから始まるんだろーが、楽しい時間がぁ!」
左隣に立つ当麻が、笑いながら雪見の肩をトントンと叩く。
右隣の健人は小さな声で「大丈夫?」とだけ聞いて雪見を優しい眼差しで見守った。
「ゆきねぇーっ!頑張れぇーっ!!」
「ゆきねぇーっ!!」
会場全体から声援が飛んでくる。
多分、当麻のファンからも、健人のファンからも。
「悔いが残んないようにしなきゃね。思い残すことのないように…。」
健人の言葉とファンの声援が、雪見の背中をそっと撫でる。
やっと心が前を向いた雪見は足元を見つめ、ふぅぅぅ…と大きく息を吐いたあと
マイクをギュッと胸元で握り、そのまま深々とお辞儀した。
「みなさん、ありがとう!」
雪見が発した言葉に、会場中が静まり返った。
「ダメだなぁー私って。なんでいっつもこんなグダグダなんだろ。
せっかくオープニングが今までで一番の出来だったのに…。
よしっ!もう泣かないっ!たぶん…。」
「多分かよっ!しょーがねーなぁ!ゆき姉は俺らが付いてないと生きてけないね!
しゃーない!健人をゆき姉の一生の護衛に付けてやっか!」
突然の当麻の発言に、健人と雪見は『ええっ!?』と驚きの表情で同時に当麻の顔を見た。
会場からも、その言葉の意味に気付いた一部のファンから悲鳴に似た声が上がる。
「な、なんだよ、いきなりっ!」
そう、目を見開いて驚く健人の言う通り、いきなり過ぎた。
何故なら、打ち合わせではライヴのラストで結婚報告をすることになっていたから。
ステージ袖で腕組みしながら見ていた今野や小野寺も、突然耳に飛び込んできた言葉に
慌てふためいてる。
「また当麻の奴め、やりやがったなっ!なんであいつはいっつもこうなんだ!」
常務の小野寺がいまいましそうに吐き捨てたが、もう進むしかないと瞬時に判断すると
直ぐさま側にみずきを呼び寄せた。
「出番が早まったが、上手くフォローしてくれるよな!?
あいつをコントロールできるのは華浦みずきだけだよ。
負けたっ!俺達ゃお手上げだ!頼む、みずき!なんとか上手くやってくれっ!」
「わかりました。本当に申し訳ございません!」
みずきが落ち着き払った声で深々と頭を下げ、当麻の勝手な暴走を妻として謝罪した。
「いいっ!謝らなくていいから早くなんとか頼むっ!」
騒然とし出した会場に、焦って小野寺がみずきの背中をグイッと押し出す。
タンッ!とステージ上に一歩目を踏み出した途端、みずきはハリウッド女優
華浦みずきのオーラを身にまとった。
大輪の薔薇を思わせる華々しい笑顔を振りまき、優雅に手を振りながら颯爽と現れた大女優に
会場中から地響きを伴った大絶叫が巻き起こる。
めちゃめちゃ笑顔の当麻。
呆気にとられた健人。
茫然と立ち尽くす雪見。
そして…反対側のステージ袖で、にっこり微笑む夏美がいた。
- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.439 )
- 日時: 2012/09/27 01:31
- 名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)
「なんで!?みずきの出番は一番最後なのに…。」
「どゆことっ!?お前ら…また何か企んでんだろっ!」
雪見と健人が問いつめてるにも関わらず、当麻は近づいてくるみずきを
惚れ惚れと眺めながら「さぁ?」とだけ、にこやかに答えた。
「えへっ、来ちゃった!」
そこへみずきが合流する。
その瞬間見せた笑顔は、当麻と居る時にだけ見せる少女のような照れ笑いだった。
…が、そこからが一悶着。
あまりに突飛すぎる当麻とみずきの行動に、振り回されっぱなしの健人と雪見は
黙っちゃいない。
「ねえっ!どーゆーことなのっ?教えてくれたっていいでしょ!」
「どーすんだよっ!また常務を怒らせちまっただろ?確実に。」
「いーから、いーから!俺らに任せとき!」
「いーからじゃねーし!一日に何回思いつきで行動すんだよ!」
「思いつきなんかじゃないって!ちゃんと夏美さんと…。」
マイクを通さないオフレコ会話を続ける三人に、会場のざわつきが一層強まる。
そりゃそうだ。まだライブはさっぱり進んじゃいないのだから。
みずきは早急に自分の役目を果たすべく、健人らの会話を断ち切った。
「もぉーっ!私、先に進めるからねっ!」
みずきがマイクを手に前へ出る。
何を先に進めると言うのだ?そんな顔して健人と雪見がみずきを見た。
「みなさーん!こんばんは〜!華浦みずきです!
うわぁー凄いたくさんのお客様!今日はようこそ、SJとYUKIMI&のライブへ!
…って、なんだか私がMCみたいね(笑)。
あ、違う違う!ほんとにそうだと思っちゃった?ごめんね!
私はただの通りすがりの人です(笑)。
でも一度こういうの言ってみたかったんだぁ!念願叶っちゃった。」
みずきは一瞬で会場中の視線を集め笑いを誘い、そして巧みな話術で観客の心をつかむ。
その華のある容姿とウィットに富んだ会話センスは、さすがハリウッドで生き残る女優だと
ステージ袖で見守る小野寺や今野も感心しきりであった。
「さすがは華浦みずきだ。こっちにいる若手女優とはオーラがまるで違う。
彼女がうちの所属になるとはな…。
もしかすると、とんでもなくラッキーな出来事かも知れんぞ。本人には悪いが。
それに今日からは当麻のカミさんときたもんだ。
明日のマスコミ発表後、どえらい騒ぎが起きるぞ!覚悟しとけ。」
「はい、健人と雪見も…。まずはここにいるファンがどんな反応を示すか…。」
小野寺の言葉に今野がうなずき、今野の言葉に小野寺がうなずく。
明日からの事務所対応の忙しさを想像するとめまいがしそうだったが、
今はそれを置いといて、このライブの成功だけを祈ることにしよう。
口に出さずとも、お互いが心の中でそれに同意した。
「みんな、私が突然出て来てビックリした?なんだ、来ると思ってたの?
ありがとう!さすが当麻ファンさんは私の行動もお見通しなのね。光栄です!
ほんとはね、ライブの最後にちょっとだけご挨拶させて頂く予定だったの。
なんだけど…オープニングをあっちで聴いてたら急に私も歌いたくなっちゃって。
それで足が勝手にここに向かって歩き出したものだから、予定外の私の乱入に
この三人が揉めてるってわけ。お騒がせしました(笑)。
だってね、この人達が悪いのよ!すっごく楽しそうに歌うんだもん(笑)。
でね…今日は私にとって特別な日になったから、どうしても一曲だけ
歌わせてもらいたいんだけど、聴いてもらえるかなぁ?」
みずきの登場自体がサプライズなのに、更に歌まで聴けるとは!
会場中は大興奮に包まれた。
何しろみずきの歌はドラマや映画の中でしかお披露目されたことがないのだが、
そのプロ並みの歌唱力はデビューしないのが不思議との評判だ。
そんなレアな歌声を、今この場で聴ける!
なんだか自分達が、シークレットライブの特別な招待客にでもなったかのような気分で
観客らは見知らぬ隣同士とも喜びを分かち合い、不思議な一体感のもと
みずきに大きな声援を送っていた。
「今日は私にとって特別な日になったから…。」
どうやらこの言葉は頭から消え去ってるようだが…。
一方、雪見と健人こそビックリ眼でみずきを見た。
「うそっ!みずきが歌うの!?」
その驚きの表情を楽しむように、みずきは二人の前をクスクスと笑いながら横切り、
ストンとグランドピアノの椅子に腰を下ろした。
「ええーっ!弾き語りすんのぉ!?マジでぇ?」
健人のリアルな驚きに、会場中から笑いが起こる。
雪見が慌ててピアノのそばに駆け寄った。
「みずき、何歌うの?」 「ひ・み・つ!」
雪見とみずきのやり取りにも、会場からは笑いが聞こえた。
そして当麻はもちろんこの展開を知っていたので、観客と健人らの反応に
満足げに微笑みながら、みずきの一番近くに歩み寄った。
みずきが深呼吸を一つしてから、鍵盤の上に白く長い指を置く。
そして一瞬顔を上げ当麻と見つめ合ったあと、滑らかに前奏を奏で始めた。
その聞き覚えのあるメロディに会場からは「キャーッ!」という悲鳴が上がり、
同時に大きな拍手が巻き起こる。
みずきが透き通る声で歌い始めたのは、なんと木村カエラの『Butterfly』
ウェディングソングの名曲であった。
「えっ…!?」
「うそっ!自分で歌うか?これを…。」
呆気にとられる雪見と健人を尻目に、みずきは実に嬉しそうに伸びやかな声を披露する。
しばらくすると、我に返ったであろうファンの中から、自然発生的に
この歌を口ずさむ声が聞こえてきた。あちらからも、こちらからも。
やがてバラバラだった歌声は一つの大きな固まりとなり、みずきの歌と
重なりながらエンディングを迎えた。
と、その瞬間会場の照明が落ち、ピアノ周りの四人にだけスポットライトがあたる。
「な、なんだぁ!?この演出!リハじゃこんなの無かったぞ!
誰だ、スポット当ててんのは!夏美ぃ!何か変更事項でもあったのか?
夏…美?あれ?あいつどこ行った?」
小野寺がキョロキョロしてる間に、みずきがピアノ前から立ち上がり
当麻の隣に列んで二人深々と頭を下げた。
「みんなぁ!今日俺たち、めでたく夫婦になりましたぁー!!
今まで応援ありがとう!そしてこれからも、どうぞよろしくっ!!」
当麻が大きな声でそう叫んだあと、嬉しそうにみずきのほっぺたにチュッとキスをした。
会場からは大きな拍手と「おめでとう!」の嵐。
いつかはこの日がやって来ると思ってたので、すんなりその言葉を受け止めて
自分らが結婚式の参列者かのように、思いを込めて精一杯の祝福をした。
「次はお前らの番。ガンバ!」
当麻とみずきが温かな眼差しで、小声で健人と雪見にエールを送る。
思いの外早くやって来たその時に、緊張しながらも健人はスッと前を向いた。
その瞳には揺るぎない雪見への愛をたたえて…。
- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.440 )
- 日時: 2012/10/08 12:14
- 名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)
「ゆき姉、来て。」
雪見に隣に列ぶよう健人が促した。
だが…心の準備が済んでいない雪見の足は、ピアノの側から一歩たりとも離れられない。
「さぁ、健人の隣に行ってあげて!大丈夫。きっとうまく行く!」
「健人に任せとけば大丈夫だって!
とっとと終らせて、早くライブ始めようぜ!行ってきなさいっ!」
みずきが優しく微笑みかけ、当麻は雪見の背中をトンと前へ押し出した。
やっとステージ中央に列んだ二人に対し、全てを察したファンからは
「キャーッ!!」という悲鳴が飛び交う。
拒絶反応…だと思ってしまった。
その悲鳴こそが自分に対する返事なのだと…。
雪見は身体から血の気がサッと引き、目を伏せたまま顔もろくに上げられずにいた。
その時、ふいに健人が手をつなぐ。
温かくたくましい手でギュッと握り、雪見の顔を下から覗き込んで
不敵な笑みを見せた。
「大丈夫でしょ?これで。」イタズラっ子のように目が笑ってる。
大きく大きく澄んだ瞳。全てを包み込む優しい瞳。
真っ直ぐ前だけを見つめる力強い瞳。うそ偽りのない正直な瞳。
そう…この瞳には嘘がない。
彼が大丈夫だと言うなら本当に大丈夫なんだ…。
そう思った瞬間、冷たくなった指先に一気に健人の血潮が流れ込んだ気がした。
自分自身の気持ちを確認し、雪見はスッと顔を上げる。
そして健人に向かって「よろしくねっ!」と笑って見せた。
まったく健人の嬉しそうな顔ときたら!
やっと二人の心が一つになって、百万力のパワーを得た気がしてた。
目を見て微笑み合ったあと、健人と雪見は堂々と前を向き一礼する。
もちろんその手は固く繋がれたままに。
「みなさんに、聞いてもらいたい事があります!」
健人の第一声に会場は静まり返る。
次に出て来る言葉を、皆が固唾を呑んで待ってるのがよくわかった。
健人は思いのすべてをきちんと伝えようと、ゆっくり言葉を選んで語り始める。
「ずっと心苦しく思っていました…。
ブログで発表して以来、きちんとお話してこなかった事を…。
本当は今日もライブの一番最後まで、黙ってる予定だったんです。
でも…。それでほんとにいいのかな?って。
俺とみんなとがお互い気持ちを誤魔化し合って、そんなんでライブが
楽しくなるのかな?って…。
あれこれ考えるのに行動に移せないでたら、さっき当麻に背中をドンッと押されました。
やっぱヤツの行動力は、すげーや!ほんっと尊敬する。サンキュ♪当麻。」
「いやいや、お褒めにあずかり光栄です。」
当麻はそう言いながら『頑張れよ!』と目でエールを贈った。
「週刊誌なんかで色々読んだ人もいるだろうけど、俺の口から直接話すことだけが真実です。
どうか頭を真っさらにして聞いて下さい。
俺は来月から二ヶ月ほど、ニューヨークに芝居の勉強に行って来ます。
ずっとずっとやりたかった事なんだけど、みんなや現場にも迷惑かけるから
どうしても踏み切れないでいた。
だから今、念願叶ってめちゃめちゃ嬉しいです!
色々調整して仕事を空けてくれた事務所にも、心から感謝しています。
本当にありがとうございました!」
小野寺や今野が見守るステージ袖に向かい、いきなり健人と雪見が頭を下げたので
慌てて二人は腕組みを解き、背筋を伸ばしてお辞儀を返した。
「ニューヨークへ行ける!って決まった時…。
たった二ヶ月だけど、どうしてもここに置いてけないものに気が付いた。
それが…ゆき姉です。」
そう言いながら健人は、隣に立つ雪見を嬉しそうに見つめてニッコリ微笑み、
繋いだその手を再びギュッと握り締める。
愛しくて愛しくて、どうしようもないほど愛しくて…。
雪見を見つめるその瞳は真綿のように柔らかく、優しく温かくて
両手で大事な宝物をそっと抱えてるような眼差しだった。
その宝物を片時も離したくないという感情が、素直に瞳に表れている。
誰が見ても、健人はそんな顔をしていた。
今まで見たこともない健人の表情に、一体誰が異議など唱えられよう。
見守る会場中がそんな二人に納得し始めた時、健人が表情を正して前を向く。
「今回のことで、俺の人生にはゆき姉が必要で、ゆき姉の人生には俺が必要なんだって
はっきりとわかりました。だから…。
だから俺たち、6月にニューヨークで式を挙げる事に決めました!」
健人が言い終わらないうちに会場が揺れるほどのどよめきが起こり、
弾かれたように大きな拍手と「おめでとう!」の大声援。
…が、次の瞬間、それは耳をつんざく大絶叫へと今さら変化したのだ。
「おめでと〜!!おめーら、サイコー!!!」
大絶叫の少し前、聞き覚えのある声がモニタースピーカーから聞こえた気がした。
…気のせいか??
キャーキャー騒ぐ声が止まらない。
それほど衝撃的な発表であることには間違いないのだが、会場の視線が
なぜか健人達背後の巨大スクリーンに釘付けであると気付いた四人が
揃って振り向くと、なんとそこには香港にいるはずの翔平が大写しになり、
笑顔でみんなに手を振ってるではないか!
「翔平〜っ!?なんでぇ??」
いきなりの友人登場に、ビックリ仰天の健人ら。
それ以上に会場は、次々と訪れるサプライズの嵐に興奮度合いも頂点だった。
「やっほ〜♪みんな、元気ぃ!?俺、ちゃんと映ってる?」
「う、映ってるけど…。てか、映ってるじゃねーし!
なにやってんの、そんなとこで!?」
健人が、スクリーンの中の大きな翔平と嬉しそうに会話を始めるが、
それがVTRだとすぐ気付き、照れ笑いをした。
「えー会場にお集まりのみなさん!苅谷翔平です!
今日は俺の大事な親友四人…いや、みずきさんは恐れ多くて親友とはよべないな…。
ま、当麻の奥さんならいっか!俺も『みずき!』って呼び捨てしちゃお!(笑)
もとい!俺の大事な親友たちよ!結婚おめでとぉぉぉ!!
いやぁ、なんでこんなおめでたい瞬間に俺は立ち会えないの!?悲しすぎる!
けど俺一人の祝福なんかより、こんなに大勢のファンに祝福された方が
百万倍嬉しいに決まってるよね!
どうか会場のみなさん!
俺の代わりにたくさんの祝福を、この素敵な二組のカップルに贈ってやって下さい!
あれ?カップルって言葉、なんか古くさいよね?
ゆき姉と仲良くなってから、どーも俺の言葉が今ドキじゃなくなった気がする(笑)。
そんなわけで、あとのお祝いは会場のみんなに托します!
力一杯の祝福で、このライヴを盛り上げてやって下さい!
俺は香港から心の声で声援を送るから。…なんちゃって!
今の格好良かったでしょ!俺のことも応援よろしくねっ!
香港で撮影中の苅谷翔平でした!またね〜!!」
翔平の姿がスクリーンから消え、四人に再びライトに照らされた瞬間、
割れんばかりの拍手と「おめでとう!!」の大合唱が巻き起こった。
皆が次々と椅子から立ち上がり、今ここに誕生した二組の正式なカップルに
惜しみない祝福の拍手を贈る。
大事な友達と会場を埋め尽くすファン。
そして…夏美から贈られた素敵なプレゼントで始まったライヴはその後、
これ以上ないほどの盛り上がりを見せてラストを迎えた。
- Re: アイドルな彼氏に猫パンチ@ ( No.441 )
- 日時: 2012/10/24 20:05
- 名前: め〜にゃん ◆qUW4buJWjM (ID: nVQa3qMq)
「終ったぁ〜!とにかく初日終了!ラスト一日!メチャ腹減ったぁ〜!」
当麻がハイテンションに大声を出しながら、みずきと共に楽屋へと戻ってきた。
ガチャリとドアを開けると、そこには賑やかに談笑する女性達が。
「母さんっ!もう来ちゃったのぉ!?ちょっとは休ませてよー!」
そこに集っていたのは、当麻や健人らの母だった。
目一杯お洒落してきたであろう姿にバックステージパスを首からぶら下げ、
関係者席で揃ってライブを見たあと、スタッフに挨拶回りするために
楽屋で息子達の帰りを今か今かと待ち構えていたのだ。
「キャー帰って来たぁ!お疲れ様っ!我が息子ながら格好良かったよー!
そうだ!二人とも。ほんっとに結婚おめでとう!
まったくこの子ったら、相変わらず報告が突然なんだから。
先に電話をよこしたからまだマシだったけど、じゃなかったらみんなと一緒に驚いて、
大恥かくとこだったじゃない!
でもね、この日が来るのをずーっと待ってたのよ!
みずきさん!今日から当麻のこと、よろしくお願いしますねっ!」
今にも抱き付いて来そうな勢いで当麻の母が向かって来る。
が、当麻は寸での所でひらりと身をかわし、あとの相手をみずきに任せた。
すでに何度も会っている母とみずきは馬が合うようで、お互い手を取り合い
実の仲良し母娘のように楽しげにお喋りし始める。
その光景を当麻は、少しは親孝行ができたかな…と嬉しそうに眺めていた。
「当麻くん!結婚おめでとう。」
「あ、健人のおばさん!お久しぶりです。ご無沙汰してました!」
「いいえ、こちらこそ。いつも健人がお世話になって、ありがとねっ!
なーんにも出来ない子だから、また面倒かけてるでしょ?」
「いや、そんな事ないです。
今はゆき姉がついてるし、俺の出番はパソコン関係くらいに減りました。
あ、噂の二人が帰って来たみたいですよ!」
ドアの向こうに楽しげな声が聞こえてきた。
当麻が健人の母にペコリと頭を下げたあと、その隣に立つ見知らぬ女性にも会釈する。
と、そこへ晴れやかな顔をした二人が入って来た。
「母さんっ!大丈夫だった!?具合悪くない?
そんなとこに立ってないで、早くここに座って!」
母の体調を案じていた雪見が、心配げに駆け寄り椅子を勧めた。
「えっ!?ゆき姉のお母さんだったのぉ?あ、初めまして!三ツ橋当麻です。
いつもゆき姉…いや雪見さんにはお世話になってます!」
当麻がにこやかに初対面の挨拶をする。
「雪見さん…だって。」
「当麻くんの口から、今さら雪見さんなんて言われてもねぇ。なんか気持ち悪っ!」
顔を見合わせて笑う健人と雪見がとても幸せそうだったので、雪見の母も
幸せそうに微笑んだ。
「良かったね、あんた達。あんなに大勢のみなさんが祝福してくれて。
母さんも嬉しくて泣きそうになっちゃった。
でもね…健人くんが結婚話を切り出そうとした時、ほんとはあそこから
こっそり逃げだそうかと思ったのよ。」
「えっ…?」
本気とも冗談ともつかぬ顔で笑ってる母。だが雪見と健人は笑えなかった。
そんなにも心配させてたなんて…ごめん。
「だって、こんなに人気がある健人くんのお嫁さんが雪見だなんて、
きっとファンの皆さんが承知しないと思って…。
でも皆さん、温かい言葉を掛けて下さってホッとした。
やっと少しは安心出来たかな。これで治療にも専念出来そう。
思い残す事は、なーんにも無いや…。」
「な、なに言ってるのよ、母さんっ!」
静かな笑みを浮べてこっちを見た母を、雪見は強く叱責してしまった。
その荒げた声に楽しげな楽屋の空気は一変し、慌てて健人が取り繕った。
「あ…あのさぁ!挨拶回りするなら、そろそろ行こうよ!
あんまり遅くなると常務とか事務所に戻っちゃうし。
母さんも帰りの電車がなくなるだろ?さ、行こ行こ!」
健人が思いきり明るい声で皆を連れ出した。
当麻が先頭を歩き、その後ろをおばさまご一行様がお喋りしながらついて行く。
常務は明日最終日の打ち合わせをするため、関係者控え室に戻ったところだった。
スタッフ誰もが忙しくしてるので、恐縮しながら健人が母たちを簡潔に紹介して歩く。
ともすれば話し好きな当麻の母が、息子に対するお礼を長々と述べようとするが、
それを上手く丸め込んでは次々と挨拶を済ませ、また全員で楽屋へと戻って来た。
「あー終った終った!これで俺の任務は完了!母さんも疲れただろ?
早く帰って休みなよ。じゃーね!今日は来てくれてありがとなっ!」
当麻が母の背中を軽く押し退室を促したので、母は口をとがらせ不満げな顔をする。
そこへみずきが割って入った。
「ねぇねぇ!せっかくの機会だから、みんなで記念写真撮ろうよ!
ここに腕のいいプロカメラマンがいるんだし。ねっ!ゆき姉!」
「おっ!いいね、いいね!さすがみずきっ!ナイスアイディア!
じゃ、みんな集まって〜!」
当麻が声をかけると母たちは「ちょっと待って!」と一斉に化粧直しを始めた。
そのウキウキと嬉しそうな顔ときたら。
「直したって変わんないって!しょーがねーなぁ。早くしてよ!」
笑いながら当麻も鏡に向かって髪を直してる。
雪見がカメラを取り出し準備を始めた所へ、みずきがそっと近づいた。
「見て。ゆき姉のお母さんの嬉しそうな顔!幸せそうに輝いてるよ。
今が…一番輝いてる時かもしれないね。」
「えっ!?」
みずきはそれだけを呟くと、スッと離れて当麻のそばへと行ってしまった。
その言葉が何を意味してるのか…。雪見にはすぐに理解できた。
みずきの不思議な能力は、悲しいくらいに研ぎ澄まされているのだ。
忘れてた…。
母さんの笑顔を撮るために、カメラを持ってきたんだった。
人生最後の時を飾る、素敵な写真を撮るために…。
そう思うと同時に雪見は素早くカメラを手に取り、プロカメラマンの
凛々しい顔つきでシャッターを切り続ける。
一枚でも多く母の輝いてる笑顔を残したかったから…。
「ゆき姉。俺が写してやるから、健人と一緒にお母さんの隣に並びなよ。」
ファインダーを覗く背後から声がして振り向くと、そこに当麻が立っていた。
柔らかく、だけど少しだけ悲しい目をして…。
「あーっ!なに?その不安げな顔。元高校写真部の腕前を信じなさいっ!」
わざとおどけた当麻の優しさに、目が潤んでしまう。
「綺麗に撮ってくんないと怒るからねっ!プロの目は厳しいんだから。
母さん!当麻くんが私達を撮ってくれるって!」
涙をこらえ母に目をやると、みずきが化粧を直してやってるところだった。
「みずきさんって、プロメイクさんの資格を取ったんですって!
凄いわねぇ!大女優さんなのに。
雪見も、プロのカメラマンだからと言って精進を怠っちゃダメよ!父さんなんか…」
「はいはい!父さんは常に色んな事を勉強してたって言うんでしょ?
もう何百回も聞きましたっ!さ、時間がないから撮って撮って!」
雪見に急かされ、当麻が真剣な表情でシャッターを切り始める。
母を真ん中に挟み健人と共に写った写真は、プロの目から見ても上出来で
後に大きく引き延ばし部屋の壁に飾っておいた。
最後の記念写真として…。
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