二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Another Mythology
- 日時: 2016/11/05 01:36
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。
珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——
目次
プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63
16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213
59話〜119話『継承する語り手編』
>>369
『侵革新話編』
120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415
■
Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213
Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355
■
番外編
東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528
■
東鷲宮中学校放送部
第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299
■
登場人物目録
>>57
- Re: デュエル・マスターズ A・M —オリキャラ募集— ( No.59 )
- 日時: 2014/05/10 08:17
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
タクさん
ルビサファのリメイクは、後輩がエイプリールフールに言ったことが現実になったので驚きました。いやまあ、いつか出るとは思っていましたが、まさかメガになってあいつらが出て来るところまで合致してるとは……
超次元ゾーンならどんな形状でもいいんでしょうけど、やはり普通のカードサイズが一番ですからね。しかしその口振りだと、タクさんの方も《ガイギンガ・ソウル》が切り札になるのですか……まあ、こういうと見も蓋もないですが、他作品なわけですし被りをそこまで気にすることもないですか。こちらには《語り手》たちがいますし。
ファンタジスタ12で《カチュア》が再録され、《トリプレックス》や《ブオン》とのデザイナーズコンボを見てから。モノクロの中にカチュアシュート熱が芽生えました。今後、柚にはその手のデッキを使わせる予定です。
《ドラピ》はモノクロも好きです。なによりあの軽さとコンボ性がいいです。多色は例外にするとして、後は《バグナボーン》や《カンクロウ》、それから地味に《ミルドガルムス》も好きです。
そしてオリキャラ投稿ありがとうございます。随分と癖の強そうなキャラで、上手く扱えるか不安ですが、数少ない男のキャラなので大切にしたいです。
そういえばいましたね、焔って苗字のシノビ使い。しかし、時系列的には汐が中三なので、彼が弟になるんじゃないですかね? モノクロの勘違いだったらすみません。
デッキに関してですが、意外なほどアバウトでちょっと困り気味です……四色にしたカウンターバイケンや、カウンターマッドネスのような形、という認識でよろしいでしょうか?
とりあえず採用は前向きに検討します。
……しかし、本編では(モノクロの記憶する限り)一人もいなかった眼鏡キャラが、スピンオフになって急増していますね(スピンオフ本編で一人、未確定のオリキャラで二人)。
モノクロはそこまで眼鏡は好きではない(というか基本的に嫌い)のですが、最近はわりといいと思い始めていたりいなかったり。特に途中で外したりするのが好きですね。
と、話がずれましたが、オリキャラはとりあえず募集人数の定員には達しました。ちょうど男女バランスがいい感じになっていますし、ひとまずはこれらの四人の採用を考えて物語を考える予定ですが、まだ募集は継続します。
具体的に期限は設けませんが、ある程度本編が進んでからと、モノクロの中で烏ヶ森編の構想がある程度練られたら締め切ります。なので、それまでならいくらでも投稿可です。
- 14話「デッキ構築の基本講座」 ( No.60 )
- 日時: 2014/05/10 09:56
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
「ただいまー」
ちょうど中学校における授業がすべてが終わるであろう時間。暁は家の玄関を開き、今まさに帰宅したところだった。
そして暁が家に入ったところで、とある人物が目に入る。
「お帰り」
「うわっ、お兄ちゃん!?」
そこにいたのは、あまり外見的な特徴のない少年。強いて言えば、体つきが男のわりに華奢だったり、少々女顔だったりする点だが、それでも常識の範囲は超えない。
その少年は、現在高校一年生になったばかりの暁の兄、空城夕陽だった。
「お兄ちゃん、なんか今日は早いね。学校は?」
「実力テストで学校は午前中で終わりなんだよ。そう言うお前は、部活とやらはどうした?」
「今日は部長と霧島が休むんだって。だから私たちも帰ってきたの」
「誰だよ霧島って……っていうか、私“たち”?」
「お、お邪魔します……」
控えめに玄関の扉が開くと、恐る恐るといった風に柚が顔を出した。
「柚ちゃん……いらっしゃい。こうして会うのは久し振りだね」
「あ、はいっ、お久し振りです、ゆーひさん」
暁と柚が幼馴染ということもあり、夕陽と柚もそれなりに面識があった。少なくとも、名前で呼び合う程度には。
「じゃ、私たちは部屋にいるねー。行こ、ゆず」
「は、はひっ。ゆーひさん、それじゃあ」
「うん。あとでお茶でも持って行くよ。あと暁、あんま柚ちゃんに迷惑かけんなよ」
「分かってるよ」
釘を刺す夕陽に、暁は拗ねたように口を尖らせる。
「まったく、お兄ちゃんはゆずには甘いんだから……」
「そ、そんなことないですよ……あきらちゃんだって、ゆーひさんに大事に思われてますよ」
「そうかなぁ? お兄ちゃん、私とこのみさんには、いっつも厳しいと思うけど」
兄への不満を漏らす暁だったが、ここで愚痴っても気分が悪いだけだ。
そんなことは忘れて、暁はさっさと自室へと向かっていった。
「やらないって言ってたわりには、けっこー持ってるね、ゆず」
「えぇ、まぁ……イラストは、かわいいのも多いですし、集めてみたくはあるんですよね」
「分かる分かる。ってまだあるんだ、私より持ってるんじゃない?」
「そ、そうでしょうか……?」
「そうだよ。ちょっと分けて欲しいくらい、胸と一緒に」
「む、胸は関係ないですよっ!?」
「…………」
扉の前で、二人分のお茶を盆に乗せた夕陽は固まっていた。
「なんの話をしてるんだ、女子中学生……」
あまり楽しそうにしていると、お茶を持ってきたというだけで水を差すのは気が引ける。持っているのはお茶だが。
とはいえ今更引き返すこともないだろうと思い直し、扉をノックした。
「入るぞー」
「どうぞー」
ドアノブを捻り、夕陽は妹の部屋へと入る。
そして目の前に広がっていたのは、大量のカードが散乱しているという光景だった。
「……なにやってる?」
「デッキ作りだよ。ゆずが新しいデッキを作りたいって」
「へぇー……ん? 柚ちゃんが?」
思わず流しそうになるが、夕陽も柚がデュエマをしないことは知っている。だが、最近になって始めたことは知らない。なので疑念の眼差しを暁に向けた。
「お前、まさか……」
「ち、違う違う! 私が無理やりやらせたとか、そーいうんじゃないよ!?」
「そんなに狼狽えてると、怪しいな」
「違うってば! ねえ、ゆず!」
「は、はひ……っ」
急に振られて戸惑ったが、柚もコクコクと首を縦に振る。
「あきらちゃんの言う通りです。わたしが、自分の意志で始めたことで……今回も、わたしがあきらちゃんにお願いして、デッキ作るのを手伝ってもらって……」
「……そっか。まあ、君がそう言うならそうなんだろうね」
案外あっさりと納得する夕陽。そんな彼に、暁がじっとりとした視線をぶつける。
「相変わらずゆずには甘いなぁ」
「なんか言ったか?」
「なにも」
不機嫌そうにそっぽを向く暁。いつものことなので、夕陽も深くは詮索しなかった。
「ふむ、まあそういうことなら、微力ながら僕も手伝うよ。こいつに任せるのも不安だし」
「最後の一言は余計だよね。って言うか、微力なら手伝わなくていいから」
「デッキの作り方は色々あるけど、一番作りやすいのは切り札から決めるパターンかな。柚ちゃんは、使いたいカードとかあるの?」
暁の言葉を無視して、夕陽は言う。そして幸いにも、柚が切り札としたいカードは決まっていた。
「えっと、これと、このカードです」
「《帝王類増殖目 トリプレックス》と《幻想妖精カチュア》か……渋いチョイスだねぇ」
柚が提示したのは、この前、クリーチャー世界で手に入れたばかりの二枚だった。勿論、夕陽がそのことを知る由もないのだが。
「この二枚で作るとなると、カチュアシュートしかないかな」
「カチュアシュート?」
「うん、デッキの型の一つというか、こういう形のデッキ、っていうものの名称だよ」
カチュアシュートとは、端的に言ってしまえば《幻想妖精カチュア》の能力で素早く山札からドラゴンを呼び出して殴るというデッキだ。このデッキで肝となる点は、その呼び出すドラゴンを好みに応じて変えられるというところ。
「勿論《カチュア》と相性の良いドラゴンを入れた方が強力ではあるけど、基本的にドラゴンならなんでもいいから、使う側も見てる側も楽しめる、面白いデッキになるよ」
「なるほどです……でも、どこからデッキを組みたてればいいのかが分からなくて……」
以前作ったデッキは、構築済みデッキの中身を入れ替えて作ったものなので、いざ一からデッキを作ろうと思ったら、途方に暮れてしまう。
「まあ、最初はそうだよね。とりあえずデッキ作りの基本から教えていこうか」
まず、デッキには大きく分けて、ビートダウン、コントロール、コンボの三つに分類できる。
ビートダウンは、積極的に攻撃して早く相手のシールドを割り切り、勝利を目指すタイプ。
コントロールは、相手のクリーチャーや手札を破壊するなど、相手を妨害してなにもさせず、場を制圧した後に勝負を決めるタイプ。
コンボは、その名の通り複数のカードを組み合わせてコンボを決めるタイプ。
「これらの分類とは別に種族デッキっていうのもあるけどね。これは種族どうしでサポートするようなカードが使えるから、初心者にもお勧めかな」
そしてカチュアシュートを作るのなら、デッキ構成としてはドラゴンという種族で固めたビートダウン、ということになる。《カチュア》の特性上、少々コンボによるギミックも搭載することになるか。
「次に、根本的な問題としてデッキをどう作るかってことだけど、デュエマにはデッキ構築における基本五大戦略っていうのがあるんだ」
それは、手札補充、マナ加速&コスト軽減、妨害、ブロッカー、S・トリガーの五つの戦略のことだ。
まずは手札補充。そもそも手札がなくてはカードを使うことができないので、ある意味一番重要だ。自分のターンの選択肢を増やしたり、切り札を早く持って来る戦略である。
次にマナ加速&コスト軽減。これも当然のことだが、デュエマはマナを払ってカードを使う。なのでマナがなくてはカードが使えない。そのマナを早くに用意したり、支払うマナコストそのものを軽減したりする戦略だ。
妨害。自分のことばかりに気を取られていては、相手の攻撃を受けて負けてしまう。だが逆に、相手の動きを止められれば、その分自分の戦術もはまりやすくなる。相手のクリーチャーを除去したり、手札を破壊したりする戦略だ。
ブロッカー。ある意味これも妨害戦略の一つだが、相手の攻撃を防ぐことで自分のための時間を稼ぐという目的がある。このブロッカーを軸にしたデッキも存在するのだが、いずれにせよ相手の攻撃から自分を守る、という戦略だ。
最後にS・トリガー。デュエマの最大の醍醐味であるS・トリガーは、負けそうな時にピンチを救ったり、そこから一発逆転に繋げてくれることもある重要な要素。運が絡むが、いざという時に思いもよらない逆転劇を生む可能性のある戦略である。
以上のことを踏まえて、それぞれの戦略に合致するカードのバランスを考えながら、デッキを構築するのだ。
「カチュアシュートを作るなら自然は絶対に入るし、とりあえずマナ加速は必須かな。とにもかくにも《カチュア》を出さないと始まらないし、《カチュア》は重いしね。色はステロイド——火と自然の二色で組むくらいが最初は扱いやすいかも。いっそ自然単色でもいいけど。手札補充には《ディメンジョン・ゲート》とか《未来設計図》を入れて、できるだけ早く《カチュア》を手札に入れたいね。《ライフプラン・チャージャー》なら、手札補充とマナ加速が同時にできるからお勧めだよ」
「あの、ブロッカーはどうすれば……」
「火と自然じゃブロッカーは入れられないから、ブロッカー戦略は無視しよう。代わりに除去ができるS・トリガーを多めに入れれば、カバーできるよ」
「なるほどです……えっと、S・トリガーは、《ナチュラル・トラップ》と《リーフストーム・トラップ》と《父なる大地》と——」
「……むぅー」
完全に夕陽に仕切られてしまい、まったく出る幕のない暁。本来なら、柚に手取り足取り教えるのは自分の役目だったはずなのに、すべて兄に持って行かれてしまった。
悔しいが、デッキ構築については自分より夕陽の方が上だ。より的確で丁寧に教えてくれることだろう。
だが、だからといって暁のもやもやした気持ちが晴れることはない。暁は不貞腐れたように、夕陽の持ってきたお茶を一気に飲み干した。
「……つまんないの」
- Re: デュエル・マスターズ A・M —オリキャラ募集— ( No.61 )
- 日時: 2014/05/10 10:22
- 名前: Orfevre ◆ONTLfA/kg2 (ID: /IDVKD3r)
久々の本編ですね、デッキ構築について語っているように、アットスターより親しみやすさがありますね
しかし暁ちゃんは貧ny(ry
女主人公の悲しいテンプレートですねw
まあ、うちの若菜は主人公のくせに
お色気要員という異色キャラですからw
メイド服編では谷間を筆頭に絶対領域など
男性読者向けのサービスとなっております((殴
若菜は【身体とデュエマ以外残念な子】
というイメージで書かれてます、一応
……途中から脱線してしまったのでこの辺で
- Re: デュエル・マスターズ A・M —オリキャラ募集— ( No.62 )
- 日時: 2014/05/10 14:14
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
Orfevreさん
最近はオリキャラ募集で少し空いてましたからね。三日ぶりの本編更新です。
デッキ構築の回は一度やってみたかったんですよね。何気にスピンオフで夕陽初登場ですし。
まあ、言っても小学校から上がりたての中一ですからね。
そのステータスが女主人公のテンプレだとは思ってませんが、暁はやや小くらいのイメージです。年相応ではありますが。
逆に柚は、このみほど極端ではないですが、その身体的特徴を受け継いでいる感じですかね。どちらも自然文明メインですし。
というより、実はこのスピンオフに出て来る東鷲宮のメンバーは、本編のレギュラー陣の特徴を少しずつ受け継いでいます。柚なら、容姿はこのみ、性格は姫乃を意識しています。暁は夕陽とこのみをミックスした感じですかね。デュエマは強いが頭は弱い感じで書いています。
- 15話「従兄」 ( No.63 )
- 日時: 2014/05/10 23:03
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
暁が帰宅する数十分ほど前、まだ部活が休みだと知らなかった時、暁は柚を連れていつものように部室を訪れていた。
「こんにちわー……ってあれ?」
「お、やっぱり来たわね二人とも」
「あ、部長。どもです……じゃなくて!」
「あきらちゃん、落ち着いてください……」
誰もボケていないはずだが、一人でノリツッコミを始める暁。とりあえず気を取り直して。
「霧島はどうしたんですか? トイレですか? 便秘ですか?」
「真っ先に思いつく理由がそれって、年頃の女の子としてどうかと思うけど……はずれ。今日は普通に欠席よ」
学校じゃなくて部活をね、と沙弓は補足する。
「かいりくんが部活をお休みですか? 珍しいですね……というか、初めてじゃないですか?」
「あいつが部活休むなんて……やっぱりべん——」
「違うから安心しなさい。あの子、今日はちょっと用事があるのよ」
「用事?」
暁が復唱すると、なぜか沙弓は含みのある笑みを浮かべる。
「そう。従兄の格好良いお兄さんが来る日なのよ。それで欠席」
「いとこ……家庭の事情ってやつですか」
「そんな重いものじゃなくて、ほとんど私事だけどね。というわけで私も帰るわね」
と言うと、沙弓はさっさと鞄を持って部室から出ようとする。
「えぇ!? なんですか? 部長は関係ないでしょう!」
「うーん、そうでもあるような、ないような……まあカイがいないとなんか物足りないし、ね?」
「いやでも、今日はゆずのデッキを作り——」
「問答無用よ。部長命令で今日の部活はお休み。じゃ、また明日ねっ」
「あぁー! ちょ、待ってください部長!」
ウィンクされて帰られた。暁が引き止めようとするも、あっという間に沙弓は廊下の奥へと消えてしまった。
所変わって、霧島家。
学校が終わって早々に帰宅した浬は、今か今かと待ち人を待っていた。
そわそわしながら落ち着きなく玄関前で待っていると、インターホンが鳴る。
「来た……っ!」
待っていましたと言わんばかりに玄関の戸を開ける。するとそこには、浬と同程度の背丈の男が立っていた。
「……まさか、インターホンを押した瞬間に扉が開くとは思わなかったな」
どこか陰気そうな雰囲気があったが、長めの前髪に隠れがちな顔は凛々しく、精悍な顔つきだ。
男は若干皮肉気にそんなことを言ったが、すぐに表情を緩め、浬を見据えた。
「久し振りだな、浬」
「はい。お久し振りです……形人さん」
「そうか、お前ももう中学生か……正直、でかくなりすぎて高校生と見間違えた」
「形人さんは、今年から高校の教師でしたっけ。どこの学校ですか?」
「雀宮だ。まあ、別段なにかに優れている学校、というわけではないがな」
浬の待ち人、それは従兄の黒村形人だった。
今年から教職に就くことになったらしいが、それ以外でもなにやら忙しい身らしく、会うことはあまり多くないのだが、しかし年に一回は必ず霧島家を訪れる。
それが、この日だった。
「なら俺、中学を卒業したら雀宮に行きます」
「気が早いな。だが、やめておけ。教師をしている俺なんて見ても面白くない。それにお前の学力なら、もっと上の学校を目指せるだろう」
そもそもお前が高校に進学する前に転勤しているかもしれないしな、と付け加える黒村。
黒村は目つきや雰囲気から、少々陰気に思われがちで、言葉もわりときついのだが、しかし浬は彼を尊敬している。というのも、浬にデュエマを教えたのは黒村で、つまり浬にとって黒村は師匠のような存在なのだ。
「それより、今はお前だけか?」
「はい。母さんたちは、帰りが少し遅くなるみたいです」
「そうか……あのませた娘はどうした。同じ中学に行ったんじゃないのか」
「ゆみ姉なら、一度部活に顔を出すって……他の部員に連絡してから来るって言ってたんで、たぶんそろそろ来ますよ」
「そうか。なら、先に始めるか」
言って黒村は、ポケットからケースを取り出した。瞬間、浬の目が輝く。
「……はい!」
浬は黒村が霧島家を訪ねるたびに、彼とデュエマで対戦している。
そのため、今日も今日で対戦を始めていた。
現在、浬のシールドは四枚、場には《アクア・ティーチャー》と《アクア戦闘員 ゾロル》。
黒村のシールドも四枚で、《闇戦士ザビ・クロー》と《福腹人形コダマンマ》がいる。
「俺のターン《アクア・ビークル》を召喚。《アクア・ティーチャー》の能力でカードを引き、今引いた《アクア・ティーチャー》の二体目を召喚します」
「青単、リキッド・ピープルのバニラビートか……俺の真似をしていた青黒のビートダウンはやめたんだな」
「まあ、色々ありまして……《ゾロル》で《ザビ・クロー》を攻撃しターン終了です」
「あまり迂闊にクリーチャーを破壊しない方がいいぞ。俺のターン《ダンディ・ナスオ》を召喚」
黒村が使用するのは、闇と自然の速攻、俗に言う墓地進化速攻デッキだ。軽い墓地肥やしから、軽量墓地進化獣を呼び出して攻めまくるデッキである。
「山札から《特攻人形ジェニー》をマナに置き、マナゾーンの《コダマンマ》を墓地へ落とす。そして墓地進化、墓地の《ザビ・クロー》を進化元に《死神術士デスマーチ》を召喚」
「う……っ」
「さらに墓地の《コダマンマ》も進化だ。二体目の《デスマーチ》を召喚し、《ゾロル》を攻撃。もう一体の《デスマーチ》と《コダマンマ》でシールドをブレイクだ」
一気にクリーチャーが展開され、攻められる浬。
「くっ、だけど、S・トリガー発動! 《アクア・サーファー》で、《デスマーチ》をバウンス!」
「……ターン終了だ」
S・トリガーを出せた浬だが、しかしだからと言って状況が好転したわけではない。今の浬では、もう一体の《デスマーチ》は除去できないのだ。
「……俺のターン《アクア・ビークル》を召喚し、二枚ドロー。続けてもう一体《アクア・ビークル》を召喚、二枚ドローします」
二体の《アクア・ティーチャー》により、カードを引きまくる浬。そして遂に、目当てのクリーチャーを引き当てた。
「来た……! 俺のバトルゾーンにはバニラクリーチャーが三体、よってG・ゼロ発動! このターン召喚した《アクア・ビークル》二体と、《アクア・ティーチャー》を進化! 《零次龍程式 トライグラマ》!」
「ほぅ、ここで出るか」
「行きます。《トライグラマ》でTブレイク! 続けて《アクア・ビークル》でシールドをブレイク!」
《トライグラマ》によるTブレイクと、《アクア・ビークル》のブレイクで、黒村のシールドはなくなった。最後に、S・トリガーで出た《アクア・サーファー》がとどめを刺そうとするが、
「残念だったな、浬。お前の最後の攻撃は届かない」
浬がS・トリガーを引いたように、ここで黒村は逆転手を繰り出す。
「S・トリガー《父なる大地》。お前の《アクア・サーファー》と、マナゾーンの《蒼狼アクア・ブレイド》を入れ替える」
「っ!」
「俺のターンだ」
攻撃を凌がれた浬。場にブロッカーがおり、黒村のクリーチャーでは打点は足りていないが、
「《ジオ・ナスオ》を召喚。山札の上から一枚目をマナに置き、マナゾーンの《特攻人形ジェニー》を墓地へ。そして墓地進化《デスマーチ》」
あっという間に墓地を増やして再び《デスマーチ》が現れる。
「それから、無意味だとは思うが《無頼封魔アニマベルギス》も召喚だ。《デスマーチ》をWブレイカーにする。《デスマーチ》で攻撃」
「《アクア・ティーチャー》でブロック!」
「《コダマンマ》と《ダンディ・ナスオ》でシールドブレイク」
「S・トリガーは……ありません……」
「だったら《デスマーチ》でとどめだ」
「……負けました」
素直に投了する浬。実際はダイレクトアタックが決まっているので、投了もなにもないが。
「やっぱり強いですね、形人さん。今回も勝てませんでした」
「あまり簡単に勝たれると、俺の面子と沽券にかかわるのでな」
だが、と黒村は逆接し、
「お前は、以前と比べてかなり強くなったな……いや、変わったというべきか」
「変わった?」
「ああ。俺の真似ではなく、自分だけのスタイルを見出そうとしているようだ。と言っても、まだ模索している段階のようだがな」
「俺だけの、スタイル……」
自覚はしていなかったが、言われてみればそうかもしれない。
少なくとも自分は、中学生になってから変わった。もっと言えば、暁や柚、エリアスたちと出会ってからだ。
その変化が、今の自分のデッキに現れているということなのだろうか。
「……まあ、こんなものは陰気な男の戯言だ。お前はお前であればいい、あまり気にするな」
「あっ、いえ、そんなことは——」
「お? やってるわね」
と、その時。
いつの間にか沙弓が部屋に入って来た。
「ゆみ姉……いつ来たんですか」
「さっき。それより形人兄さん、おひさでーす」
「ああ……お前は相変わらずだな」
少しだけ鬱陶しそうに黒村は答える。
「高校の教師してるって聞いたんですけど、今日って平日ですよね? 授業はどうしたんですか?」
「うちの学校は今日、実力テストでな。科目に社会が存在しないから俺の役目は試験監督だけだ」
「他に仕事はなかったんですか?」
「正午には仕事はすべて片付いた」
「さっすが。じゃあ次、私といいですか?」
「……仕方ないな」
口はそう言うが、しっかりと相手はする。黒村はカードを揃えてデッキをシャッフルし始める。沙弓も浬と入れ替わり、位置についた。
そんな二人を見つめながら、浬は心中でふと呟く。
(俺のスタイル……俺だけの技、か)
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