二次創作小説(紙ほか)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

デュエル・マスターズ Another Mythology
日時: 2016/11/05 01:36
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
 今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
 一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
 カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。

 珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——



目次

プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63

16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213

59話〜119話『継承する語り手編』
>>369



『侵革新話編』

120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415




Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213

Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355




番外編

東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528





東鷲宮中学校放送部

第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299






登場人物目録
>>57

Another Mythology 2話「超獣世界」 ( No.7 )
日時: 2014/04/18 19:08
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

「う……ここは……?」
 しばらく意識が飛んでいたように感じられる。気が付けばそこは、いつもの見慣れた通学路ではなかった。
 見渡す限り荒野が広がっている。草はほとんど生えておらず、干からびかけた樹木には葉っぱが一つもついていない。
「なに、ここ……?」
「超獣世界だよ」
 後ろから声がする。
「もっとも、それは君らに合わせた言い方だけどね」
「……さっきの!」
 帰り道でぶつかった青年だ。
「さて、とりあえず……神殿に行こうか。こっちだよ」
「あ、うん……じゃなくて!」
 あまりにも自然な流れだったのでつい同伴しそうになるが、暁はすぐに反発する。
「その前に教えてよ! ここはどこなの? あなたは誰? というかこれってどういう状況?」
「ん? あー、んー……どうしよう。一言で言えるようなことじゃないし、詳しい説明は後で——」
「さっきもそれ言ってたじゃん」
「そうだっけ?」
「そうだよ!」
 とぼけたような仕草を見せる青年。恐らくは素なのだろうが、その挙動には些かの違和感を感じる。
 だがとにかく今は状況を把握したい。よく兄に能天気だとか緊張感がないとか言われる暁だが、それでもいつもの通学路からいきなり荒野に飛ばされれば混乱する。情報の開示を求めるのは当然だろう。
「せめて、ここがどこで、あなたが誰なのかくらいは教えてよ」
「ここがどこかはさっき言ったんだけどなぁ……まあいいや。分かったお、今から説明するよ」
 青年は観念したように両手を上げて、説明を始める。
「まずは僕の名前だけど……そうだな、リュン、とでも呼んでよ」
「リュン? 中国人みたいな名前……」
 中国人名などは知らないが、暁はなんとなく語感でそんなことを言う。
「続いてここがどこかの補足説明だけど、ここはさっきも言ったように、君らで言うところの超獣世界だ」
「……そのちょーじゅーってのがよく分からないんだけど、なにそれ? なんか小学校の頃、蛙が歩いてる墨の絵を見せられた気がするんだけど……」
 残念ながらそれは鳥獣戯画のことだが、当たらずと言えども決して完全に的外れということでもなかった。
「蛙が歩く……《ケロディ・フロッグ》のことかな? その様子だとあんまり分かってないみたいだけど……他に言い換えるなら、クリーチャー世界、かな?」
「え、クリーチャー? この世界ってもしかして、デュエマの世界?」
 意外なワードに目をぱちくりさせる暁。ここでクリーチャーという言葉が出て来たのが驚きだった。
「君らの世界ではデュエル・マスターズって言うらしいね。その通り、ここは君らの言うデュエマのクリーチャーが存在している世界だ。他にもこの星の近辺にはクリーチャーが存在している世界はいくつかあって、アウトレイジやオラクルという種族が共存する世界、龍の勢力が争い合っている世界など、複数のクリーチャー世界が存在するうちの一つだ」
 世界というより、星だけどと付け足すリュン。
 なお、その複数存在するクリーチャー世界は、存在は知っていても干渉し合うことがないため、各世界のクリーチャーは自分たちの世界がクリーチャー世界だと認知し、区別していないのだという。
 そこまで込み入った話は暁の頭では理解できなかったが、要するにここはクリーチャーがいる世界だということは理解した。
「……続きは歩きながら話すよ。今は最初のステップだ、ゆっくりしてられない」
 そう言ってリュンは、視線を暁の後ろに向ける。その視線に気づいた暁は振り返り、それを初めて視覚で捉えた。
「とりあえずあそこに行くよ」
 そこにあるのは、高くどっしりと構えた——山だった。



「数あるクリーチャー世界は、それぞれ同じような発展をしているけれど、どこかで決定的に差異が出て来るんだ。たとえば、ある種族はある世界では滅びているけれど、他の世界では多種族と共存している、とかね」
「えっと……私たちの知る背景ストーリーにはないクリーチャー世界もある、ってことかな……」
「背景……? まあ、そういうことじゃないかな」
 適当にリュンは頷く。明らかによく分からず頷いている。
 だが暁のその解釈は、決して間違ってはいなかった。背景ストーリー上でもエピソード3とドラゴン・サーガというエキスパンションの間では舞台が変わっているため、他の世界があっても不思議はない。
「そして、この世界が他の世界にない唯一無二の存在というものがある。それが十二神話だ」
「十二神話? なにそれ?」
「この世界の中心となっている十二体のクリーチャーさ。絶大な力を持っていて、この世界を治めていたんだけど……色々あってね。今はもうこの世界にはいない存在なんだ」
 そう語るリュンの表情は、どこか寂しげだった。
「だけど、この世界にはいないというだけであって、彼らはきっと他の世界で生きているはず。そしていつかこの世界に舞い戻って来るはずだ」
 だから、と続け、
「その時に備えて、この世界に残された僕らは、この世界を本来のあるべき姿に戻すべきなんだ」
 そう言ってリュンは振り返る。暁もそれにつられて振り返った。
 もう随分と山を登っている。まだ中腹にも達していないが、草木のほとんど生えていない岩山からなら、荒野の一部を広く見渡すことができたい。
 そこは不毛の地だ。草木はほとんど枯れており、クリーチャー世界と銘打ちながらもクリーチャーの姿なんて見えない。
「十二神話がこの世界を去った原因でもあるんだけど、その昔、この世界では神話戦争と呼ばれる大規模な戦争が起こってね。その爪痕が、今も残されているんだ」
 ここだけでなく、この世界の他の場所でも、同じようなことになっているのだろう。暁でもそのくらいは想像がつく。
「君をここに呼んだのにはいくつか理由があるんだけど、基本的に僕からのお願いは一つ。この世界を元通りにするために、君の力を貸して欲しい」
「っ……そんな、いきなり言われても……」
 正直、困る。この世界、と世界単位でものを言われてしまえば、断りづらくなる半面、受け入れるのも躊躇ってしまう。
 しかし切実なリュンの瞳を見れば、すっぱりと拒否することだけはできず、結局はリュンの行く方へとついて行くことしかできなかった。
「いきなりなのは分かってる。君にメリットがないのも重々承知だ。だけど、今のこの世界には治安が足りていない。昔は十二神話が統治していたけど、その統治者がいなくなって、残ったクリーチャーたちはバラバラになってしまっているんだ」
「……もしかして、私にこの世界のクリーチャーをまとめろって言いたいの?」
「流石にそんなことは言わないよ。君に僕らクリーチャーを統治できるだけの器があるとは思えないしね」
 さらりと酷いことを言われたが、否定できることではないので、というかクリーチャーの長なんてむしろ願い下げなので、暁は黙っている。
「これも後で詳しく言うけど、十二神話はこの世界を去る時に、自らの最も信頼する配下のクリーチャーを一体、それぞれ封印したんだ。彼らの力は、十二神話ほどの強大さはないものの、この世界においては最も強く十二神話の力の影響を受けているはず」
「そのクリーチャーたちに、この世界を治めさせるってこと?」
「そういうこと」
 だんだん話が見えてきたが、しかしそのために暁がこの世界に呼ばれた理由はいまいちはっきりしない。
 その十二神話の配下とやらに治めさせるのであれば、勝手にそうしてくれたらいいというのに、なぜにわざわざ他の世界の住人である暁を引っ張って来たのか。理解ができない。
 その答えを聞こうとするが、その前にリュンの足が止まった。
「ここだ」
「……? 洞窟?」
 岩山の岸壁に、ぽっかりと穴が空いていた。
「この先に、《太陽神話》の配下が封印されている」
「《太陽神話》……?」
 さっき言っていた十二神話という奴だろう。その響きにはどことなく親近感を覚える。
 二人は洞窟へと入る。中は一本道のようで、外からの光が入るので思ったよりも暗くない。
「って言うか、なんか暑いね、ここ……」
「当然だよ。今は活動していないけど、ここは火山だからね。《太陽神話》の支配地域というか、根城の一角さ」
 そんな話をしながら進んでいくと、ほどなくして少し広い空間に出た。その空間だけは、明らかに雰囲気が違う。
 壁には壁画染みた絵のようなものや、幾何学的な紋様が描かれていた。中央には祭壇のようなものがあり、台座には翼の生えた太陽の像ようなものが置いてある。
「あの祭壇に封印されているんだ」
「へぇ……」
「君にその封印を解いて欲しい」
「うん……え?」
 今なんて、とでも言いたげにリュンを見遣る。するとリュンは、
「この封印は僕らには解けないんだ。そもそも、十二神話がかけた封印っていうのは、この世界のクリーチャーには解けないようになっている。他の星の生命体じゃないとダメなんだ」
「なんでそんな面倒なことをするかな……」
「そういうことだから、ほら」
 トンッ、と背中を押され、暁が前に出る。
「ほらって、こんなのどうするのさ……」
 とりあえず祭壇を上り、台座の前に立つ暁。目の前にあるのは、謎の置物。これをどうしろというのだろうか。
 考えても理解が及ばないので、とりあえず暁は、その像に触れた。

 刹那、太陽の殻が破れる——

Another Mythology 3話「太陽の語り手」 ( No.8 )
日時: 2014/04/18 20:11
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

 中から光と火を発しながら、太陽の殻が綻び、破れる。そして——
「……やったー! やっと封印解けたー!」
 歓喜の声と共に、クリーチャーらしきものが飛び出す。
 二頭身の体躯に、人間のような風貌をしているものの、背中から伸びる一対の翼が純粋な人であることを否定している。
 やはり、クリーチャーだろう。
「お? お前が封印を解いてくれたんだな。オレはコルル、《太陽の語り手 コルル》だ。お前は?」
「あ、暁……」
 よく兄から能天気だのなんだのと言われる暁だが、《太陽神話》などという仰々しいものの配下の封印が解かれたというのだから少し身構えていたというのに、出て来たのはやたらハイテンションに飛び回る鳥人間のようなクリーチャー。そのギャップに、そしてコルルの勢いに少し戸惑ってしまう。
「リュン……これはいったい……」
「彼が名乗ってたじゃないか。彼こそが《太陽神話》がこの世界に残した《太陽の語りサンライト・ストーリー》だ」
「さ、サンライトストーリー……? なにそれ……」
 それがなにを意味するのか、暁には理解できなかった。というより、リュンの説明も不足しているところが多々あり、どうしたって理解しきれない。もう少し頭が働けば、推測することまでは可能だろうが、暁は残念ながら頭が弱いため、疑問符を浮かべるだけで、推測するところまでは行かない。
「そうだ。暁、ちょっと待っててくれ」
「え、なに?」
 コルルは壁へと飛んでいくと、そこに描かれている紋様の一つに手を触れる。
「この神殿は、アポロンさんたちと共に戦ったクリーチャーたちが眠る場所でもあるんだ。オレの封印が解けるのと同時に、共に戦ってきた戦友たちの魂も蘇るはず。ほら——」
 コルルが手を触れた一ヶ所が赤く光ると、その光が火の玉のような形を成して、暁のところまで飛んでいく。そして、暁の手元で、暁の良く知る形となり、収まった。
「これって……デュエマのカード?」
 暁の手に収まったのは、一枚のカードだった。
「この世界にもカードってあるんだ……」
「いや、たぶん君が、その戦友とやらの魂を手にしたからカードに変化したんだと思うよ」
 気味が来たことでこの世界にカードという概念も出来たってことだね、とリュンはまた意味深なことを言う。
「……そろそろはっきりさせたいんだけどさ。この世界って、どういう——」

 ドォン!

 暁の言葉を遮って、神殿が衝撃で揺さぶられる。
「な、なに!?」
「奴らに嗅ぎつけられたか……早く出よう! 入口を潰されたら閉じ込められる!」
 リュンがいち早く出口へと駆けるのが見え、暁とコルルもその後を追う。
「なんなの! なにが起こってるの!?」
「今は詳しい説明をしてる暇はない!」
「またそれ!? いい加減ちゃんと話してよ!」
「簡単に言うと敵だ!」
 そんな問答をしながら、三人は洞窟から飛び出す。
「はぁはぁ……なんだ、なにもいないじゃん」
「気を緩めちゃダメだ。とにかく、できるだけ遠くに——」
 と、その時。
 近くの岩が砕け散った。
「っ!?」
 文字通り粉砕された岩石の破片が飛び散る。同時に、ジャラジャラと銀色に鈍く光る鎖の音が聞こえた。
 岩を砕いた鎖が引き寄せられていく方を見遣ると、その鎖は龍が飲み込んでいる。よく見れば鎖を飲み込む龍はもう一体おり、その二体の龍を従える、いや、その二体の龍を我が身の一部として操っている龍がいた。
「あれって……」
「《トルネードシヴァ》だ!」
 コルルが少し嬉しそうに叫ぶ。
「オレたちと一緒に戦った奴の一体だ」
「でも今は、正気を失っているというか、暴走しているようなものさ。ここは彼のテリトリー、そこに無断で入った僕らに怒っているんだ」
「え? それって、やばいんじゃ——」
 暁の最後の言葉を待たずして、トルネードシヴァは従える双頭の龍から鎖を吐き出す。
「うわっ!」
「とにかく逃げるんだ! 僕らはともかく、君は人間で相手はクリーチャーだ。しかも一際強い力を持ったドラゴンとなると、真っ向からじゃ勝ち目はない。テリトリーから出るまで走るよ!」
 リュンの言葉に異論を唱える者はなく、暁もリュンの後を追うように走るが、ここは岩山。足場は決していいとは言えず、このようなところを走るどころか歩き慣れてすらいない。なので、
「わっ、うわっ!」
 危うげに走っていた暁のすぐ隣の地面が抉られた衝撃でバランスを崩し、その場で転んでしまった。
 さらにその時、デッキケースの蓋も開き、中からカードが地面に撒かれてしまう。
「っ、デッキが!」
「暁!」
 コルルが叫ぶ。地面に広がったカードを拾い集める暁に、トルネードシヴァは照準を合わせて鎖を吐き出す。
「——っ!」
 鎖の切っ先が、暁に襲い掛かる——

 キィンッ!

 ——が、その鎖は、なにかに弾かれた。
 咄嗟に瞑った目を恐る恐る開いてみると、そこには薄透明な盾のようなものが浮いている。周りも見れば、暁の周囲をその盾が五枚、旋回していた。
「……? なにこれ、シールドみたい……」
 どうやらこの盾がトルネードシヴァの鎖を弾いたらしい。
 さらに暁の手元に、五枚のカードが引き寄せられる。
「これ……手札?」
 そのカードが来た方向を見れば、さっきまで散らばっていたはずのデッキが、そこに浮かんでいた。
「これ山札……! え、ってことは——」
 ふと向こう側を見れば、トルネードシヴァも似たような状況であった。五枚のシールドに守られ、目の前には五枚の手札、その横には、山札。
 普段とは大きく乖離しているところはあるが、それでも分かる。これは、自分が最も得意とするものだ。
「——デュエマしろってこと?」
 そのことを理解すると、今まで困惑や驚愕の連続だった暁の表情が綻ぶ。考えることの苦手な暁だが、これなら、この形式なら、自分でもわかる。水を得た魚のように、生き生きとした表情を見せた。
 そして、右横の山札にそっと手を添える。
「……上等だよ!」
 暁の超獣世界における初めてのデュエマが、始まった。

Another Mythology 3話「太陽の語り手」 ( No.9 )
日時: 2014/04/19 06:31
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

「私のターン! 《激流アパッチ・リザード》を召喚して、超次元ゾーンから《ガイアール・カイザー》をバトルゾーンに!」
 暁のターン。暁は序盤からマナ加速を繰り返し、早い段階で《激流アパッチ・リザード》から《ガイアール・カイザー》を呼び出す。
「一気に攻めるよ! 《ガイアール・カイザー》でWブレイク! さらに《青銅の鎧》でもシールドブレイク!」
「ウゥゥゥ……!」
 一度に三枚ものシールドを叩き割り、流れを一気に引き寄せる暁。しかし、
『グゥ、ガアァァァ!』


爆竜トルネードシヴァXX(ダブルクロス) 火文明 (7)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/フレイム・コマンド 7000
相手がこのクリーチャーを選んだ時、自分の山札を見る。その中から名前に《XX》とあるクリーチャーを1体選び、相手に見せてから自分の手札に加えてもよい。その後、山札をシャッフルする。
このクリーチャーが攻撃する時、バトルゾーンにあるクリーチャーを2体選んでもよい。そうした場合、選んだクリーチャー同士でバトルさせる。
W・ブレイカー


「うわ、出た……!」
 《コッコ・ルピア》の補助を受け、遂に《トルネードシヴァ》本体が出て来る。しかも《キリモミ・ヤマアラシ》から出ているので、《トルネードシヴァ》はスピードアタッカーだ。
『ウゥ……ガァッ!』
 《トルネードシヴァ》が早速攻撃を仕掛けた。同時に《トルネードシヴァ》の鎖が、《ガイアール・カイザー》を縛り付ける。
「っ! 《ガイアール・カイザー》!」
 《ガイアール・カイザー》は《トルネードシヴァ》に引き寄せられ強制的にバトルが発生し、一方的に殴り倒されてしまう。そして直後に、暁のシールドが二枚吹き飛ぶ。
「っ、痛……!」
 割られたシールドの破片が暁に降り注いだ。その破片が、暁の身を切り裂く。
「なにこれ……っていうか、制服! 買ったばかりなのに——」
 などと言っている間もなく、《コッコ・ルピア》《紅神龍バルガゲイザー》の攻撃が繰り出され、《バルガゲイザー》の能力で《フレイムバーン・ドラゴン》が現れる。
「《青銅の鎧》まで……」
 クリーチャーは破壊され、逆に《トルネードシヴァ》はクリーチャーを並べて来ている。この戦力差は大きい。
「残りシールドは一枚……ちょっピンチかも……」
 ちょっとどころではなくピンチなのだが、どちらにせよ暁は焦燥感を抱いていた。全身を走る痛みが、その焦りを助長させる。
 しかし、
「諦めるな!」
「コルル……?」
 いつの間にかすぐ横にコルルがいた。もしかしたらずっといたのかもしれないが、気付かなかった。
 コルルは弱気になりかけていた暁を叱咤する。
「まだ勝てる可能性は残ってるはずだ! 可能性がある限り、諦めるな!」
「……うん、そうだね。私としたことが、らしくないや」
 気を取り直して、暁はカードを引く。そして、
「よし……まずは呪文《超次元ボルシャック・ホール》! 《コッコ・ルピア》を破壊して《勝利のガイアール・カイザー》をバトルゾーンに! そして呪文《鼓動する石版》!」
 山札からマナを追加し、追加したカードがクリーチャーなら自分のクリーチャーすべてのパワーが2000上昇する。
 この時マナに落ちたのは《次元流の豪力》。クリーチャーだ。
「よし……じゃあパワーアップした、スピードアタッカーの《勝利のガイアール・カイザー》で、《バルガゲイザー》を攻撃!」
 素のままならどちらもパワー5000で相打ちだが、今は《勝利のガイアール・カイザー》の方が強い。一方的にバトルで勝利した。
 そう、勝利したのだ——バトルによって。
「私の火文明のドラゴンがバトルに勝ったから、手札からこのクリーチャーをバトルゾーンに出すよ!」
 《太陽神話》と共に戦ったコルルの戦友の一体、神殿に眠り、遂に目覚めた戦闘龍。その熱き魂が今、解放される。

「暁の先に勝利を刻め——《爆竜勝利 バトライオウ》!」


爆竜勝利 バトライオウ 火文明 (7)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/フレイム・コマンド 8000
自分の火のドラゴンがバトルに勝った時、このクリーチャーを自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
自分の他の火のクリーチャーが相手クリーチャーとバトルする時、かわりにこのクリーチャーにバトルさせてもよい。
W・ブレイカー


『グァゥ……!』
 《バトライオウ》の登場により《トルネードシヴァ》がたじろぐのが分かる。それに乗じて、暁は攻めに出た。
「《アパッチ・リザード》で《トルネードシヴァ》に攻撃!」
 《鼓動する石版》で《アパッチ・リザード》もパワー7000、《トルネードシヴァ》と相打ちだが、暁はそんなことは狙わない。
「《バトライオウ》の能力発動! 私の火文明のクリーチャーがバトルする時、そのバトルは《バトライオウ》が代わりに引き受ける! 行って《バトライオウ》!」
 《アパッチ・リザード》の代わりに《バトライオウ》が前線へと飛び出し、《トルネードシヴァ》とのバトルを行う。そしてバトルの結果は、《バトライオウ》の勝利だ。
「グウゥゥ……!」
 これで本体も破壊され、トルネードシヴァは1ターンで三体ものクリーチャーを破壊されてしまったことになる。対する暁の場には、三体のクリーチャーが構えている。
「グ、ガアァァ!」
 トルネードシヴァは、《無双竜鬼ミツルギブースト》で《アパッチ・リザード》こそ破壊し、暁の最後のシールドもブレイクしたが、そこまでだ。
「さあ決めるよ! 呪文《超次元シューティング・ホール》で、《ガイアール・カイザー》をバトルゾーンに! 《ガイアール・カイザー》でWブレイク!」
 トルネードシヴァのシールドが、《ガイアール・カイザー》によりすべて砕け散った。
「ウゥゥ……ガアァァァァ!」
 そして最後に、勝利を司る戦闘龍が駆ける。

「《爆竜勝利 バトライオウ》で、ダイレクトアタック——!」



 デュエルが終わり、周囲の空間が変化したような感覚に囚われる。いや、それはさっきまでいた空間に戻った、と言うべきか。
「ふぅ……あ」
 一息つくと、暁の手元にカードとなった《トルネードシヴァ》が落ちて来る。
「やったな暁!」
「え? あ、うん。そだね」
 よく分からないが、とりあえず《トルネードシヴァ》に襲われる危険は、ひとまず去ったようだ。
「ところで、この《トルネードシヴァ》はどうするの? カードになっちゃったけど……」
「カードになったのは、恐らく君が《トルネードシヴァ》をデュエルで鎮めたからだね。カードを操って戦うという、君のルールでクリーチャーを手なずけた、とでも言うのかな」
「だったら、そいつは暁が持ってた方がいいな。《トルネードシヴァ》も、きっとそれを望んでる」
「そう……なら遠慮なく貰っちゃうね」
 微笑みながら、暁は一度《トルネードシヴァ》を見遣り、それをデッキと共にケースへと仕舞い込む。
 その時、彼女は気付いた。
「あ! そうだ……今、何時!?」
 暁は慌てて携帯を取り出すが、少なくとも一時間は経過しているはずなのに時間は変わっておらず、アンテナも立っていなかった。どう見てお圏外である。
「それは君の世界の通信端末だよね。それは、他の星にいても自分の星と通信できるのかい?」
「星!? そんな遠くまでは電波届かないな……やばい、どうしよう……」
「どうしたんだ?」
「早く家に帰って、夕ご飯作らないと……!」
 深刻な面持ちでそんなことを言う暁。少々場違いな発言ではあるが、リュンもコルルも、その意味は理解していない。
「リュン! どうにかして帰れないの!?」
「んー……まあ、ここまで一瞬で飛べたんだし、もう一度地球に行くことも不可能じゃないと思うよ。ちょっと待ってて」
 と言って、リュンはまた古ぼけた携帯をのろのろと操作する。
「えーっと、こう、だった、かな? いや、こうか……」
「なにしてるのさ! 早く早く! ちょっと貸して!」
「これでオーケーって、ちょっ、それ、待っ——」
 暁がリュンの携帯をぶんどると同時に、携帯から光が発せられる。
 そして暁は、その光に飲み込まれていった。



「……ここは」
 見慣れた通学路。夕焼の光は闇夜に浸食されつつあり、暗くなりかけている。
「あきらちゃん!」
 ふと、大声が暁の耳に届く。柚だ。
「心配しましたよぅ……急にいなくなって、わたしどうしたらいいか——」
「ゆず……今、何時?」
「え?」
「今、何時!? 早く!」
「え、えーっと……七時、ちょっと前です」
「うわ、もうそんな時間なの!? やばいよやばいよ、早く帰らないとお兄ちゃんがお腹空きすぎて死んじゃうよ!」
「いや、ゆーひさんはそのくらいじゃ死なないと思います……て、あ、あきらちゃん!」
「じゃあね、ゆず! また明日!」
 まだ困惑している柚に一方的に別れを告げると、暁は一目散に家へと駆け出していった。

 空城暁。彼女の兄、空城夕陽が、やがて彼が巻き込まれる“ゲーム”と称される神話戦争における重要人物になるのと同様に、彼女もまた、《太陽神話》を継ぐものの片割れとして、兄とは別の形で名を残すことになる——

Re: デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.10 )
日時: 2014/04/19 09:34
名前: 大光 ◆HynV8xBjBc (ID: RO2w0Fxj)

どうも、冒頭の言葉のネタがなくなった大光です。

Mythologyの方で存在を仄めかされていた「神話カード」たちが元々いた世界ですが、理由は分かりませんが、やはりこの世界でも大きな戦いがあったみたいですね。
十二神話たちの世界からやって来たリュンですが、別世界へ移動する方法が携帯?ですか...。どういう原理ですかね?
《トルネードシヴァ》とのデュエルは、《勝利のガイアール・カイザー》からの《バトライオウ》で、何とか勝利できましたね。やっぱり生姜と《バトライオウ》は強力ですね。
《太陽神話》の配下だったと思われるリュンとコルルですか、姿はもしかしてアウトレイジやオラクルみたいな感じの人型ですか?
今日発売のファンタジスタ12ですが、《ドラゴ大王》や《ジャックポット・バトライザー》を登場させる予定はもうありますか?自分は最近暇潰し《ジャックポット》の連ドラを考えていたりします。
久しぶりにデュエマのアニメを見ましたが、あるキャラがデュエマ台を投げているところにツッコミをいれたくなりました。それと《龍素王 Q.E.D》の能力は、何だか悪用されそうな気がしてしまいました。

デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.11 )
日時: 2014/04/20 17:43
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

大光さん


 モノクロも同じような感じです。途中からはネタが切れたことがネタになっていた感じですが。

 あちらでもある程度は明かす(予定)ですが、できるだけこちらの方で十二神話などのことは明かしていきたいなと思っています。
 移動方法は携帯電話です。詳しくはそのうち説明が入ると思いますが、実際はパソコンやスマホでも移動できたりします。
 暁の使用デッキは、何気にシューティングガイアールなんですよね。プロキシで組んだデッキを何度か動かしましたが、《バトライオウ》の出番がなく、《ガイアール・カイザー》たちが暴れまわっていました。
 《太陽神話》の配下であるコルルは、姿形も《アポロン》と似ています。基本的な身体の作りは同じで、人型に翼が生えた感じですね。一方リュンは、外見だけなら普通の人です。クリーチャーなんですけどね。
 このように人型(に近い)の姿をしているのは、やはりアウトレイジたちの影響があったりします。
 一応、《ドラゴ大王》や《ジャックポット・バトライザー》を初めとする、各種文明のドラゴンは近いうちの登場を考えています。しかしドラグハート・ウェポンはどうしようかなと悩んでいますね。とりあえずは情報の公開を待っている状態ですが……
 アニメは今まで3Dだったので、急に2Dになって慣れません。というか、正直3Dの方が良かったです。特にクリーチャー。《GNEJI・XX》とか、2Dになった途端ダサく感じました。
 作画に関してはそのうち慣れると思うのですが、展開とか台詞とかが古いスポ根染みていて、低年齢層はともかく、ある程度高年齢になると、どうなのかなーって思ったりします。いやまあ、対象年齢の関係で仕方ないところはあるんでしょうけど……前作が良かったせいか、いまいちパッとしない感が。
 もしかしてあの台って、毎回投げるんですかね。ということは、あのヒロインは毎回必ずデュエルに同席するということになりますが、その縛りはどこまで行けるのか……
 《龍素王 Q.E.D》はやばいですよね。もう情報が公開されていますが、現時点でも色々悪巧みしている人が多いみたいです。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。